(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067696
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240510BHJP
C23C 16/505 20060101ALI20240510BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240510BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240510BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H05H1/46 L
C23C16/505
H01L21/302 101C
H01L21/205
H01L21/31 C
H01L21/302 101M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177963
(22)【出願日】2022-11-07
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】松尾 大輔
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
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5F045EH02
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5F045EH20
5F045EK07
(57)【要約】
【課題】真空容器の外部にアンテナを配置し、誘電体板とスリット板とを重ねて磁場透過窓を構成したプラズマ処理装置において、スリット板のメンテナンス性を向上させる。
【解決手段】処理室を形成する真空容器の外部に設けられたアンテナに高周波電流を流して前記処理室内にプラズマを発生させるプラズマ処理装置であって、前記真空容器の前記アンテナに臨む位置に形成された開口を塞ぐように設けられたスリット板と、前記スリット板に形成されたスリットを前記真空容器の外側から塞ぐ誘電体板とを備え、前記スリット板が、環状の枠体と、当該枠体に並べて架け渡された複数の梁状部材とを具備し、当該複数の梁状部材間の隙間により前記スリットを形成するものであるプラズマ処理装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室を形成する真空容器の外部に設けられたアンテナに高周波電流を流して前記処理室内にプラズマを発生させるプラズマ処理装置であって、
前記真空容器の前記アンテナに臨む位置に形成された開口を塞ぐように設けられたスリット板と、
前記スリット板に形成されたスリットを前記真空容器の外側から塞ぐ誘電体板とを備え、
前記スリット板が、環状の枠体と、当該枠体に並べて架け渡された複数の梁状部材とを具備し、当該複数の梁状部材間の隙間により前記スリットを形成するものであるプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記枠体の内周縁部にはその開口を挟んで対をなす複数の溝が形成されており、
当該対をなす各溝に前記梁状部材の両端部が掛けられている請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記溝の断面形状がV字形状又は部分円形状である請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記梁状部材が、前記溝に架けられる両端部以外の領域に、前記処理室側に向かって突出する突起部を有している請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記スリット板が、板厚方向において高さ違いで前記枠体に架け渡された第1の前記梁状部材と第2の前記梁状部材とを具備し、
前記第1の梁状部材と前記第2の梁状部材とが前記アンテナの長手方向に沿って交互に並んで配置されている請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記アンテナの長手方向において、前記第1の梁状部材間の隙間寸法と前記第2の梁状部材の幅寸法とが略同一である請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記スリット板が、前記第1の梁状部材と前記第2の梁状部材との間において、前記アンテナの長手方向に沿って運動する荷電粒子を遮蔽するための遮蔽壁を有する請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて被処理物を処理するプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンテナに高周波電流を流し、それによって生じる誘導電界によって誘導結合型のプラズマ(略称ICP)を発生させ、この誘導結合型のプラズマを用いて基板等の被処理物に処理を施すプラズマ処理装置が従来から提案されている。このようなプラズマ処理装置として、特許文献1には、アンテナを真空容器の外部に配置し、真空容器の側壁の開口を塞ぐように設けた磁場透過窓を通じてアンテナから生じた高周波磁場を真空容器内に透過させることで、真空容器内にプラズマを発生させるものが開示されている。
【0003】
この特許文献1のプラズマ処理装置は、真空容器の開口を塞ぐ金属製のスリット板と、スリット板に形成されたスリットを真空容器の外側から塞ぐ誘電体板とを備えるようにしている。このプラズマ処理装置では、金属製のスリット板と、このスリット板に重ね合わせた誘電体板とに磁場透過窓としての機能を担わせているので、誘電体板のみに磁場透過窓としての機能を担わせる場合に比べて磁場透過窓の厚みを小さくすることができる。これにより、アンテナから真空容器内までの距離を短くすることができ、アンテナから生じた高周波磁場を効率良く真空容器内に供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のプラズマ処理装置の構成では、スリット近傍に生成されたプラズマによる堆積物やスパッタ等による粒子の回り込みによる堆積物がスリット板に付着してしまうため、スリット板の定期的な清掃が必要となるが、この際スリット板に形成された複数のスリット穴を1つ1つ清掃する必要があり手間を要する。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するべくなされたものであり、真空容器の外部にアンテナを配置し、誘電体板とスリット板とを重ねて磁場透過窓を構成したプラズマ処理装置において、スリット板のメンテナンス性を向上させることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るプラズマ処理装置は、処理室を形成する真空容器の外部に設けられたアンテナに高周波電流を流して前記処理室内にプラズマを発生させるものであって、前記真空容器の前記アンテナに臨む位置に形成された開口を塞ぐように設けられたスリット板と、前記スリット板に形成されたスリットを前記真空容器の外側から塞ぐ誘電体板とを備え、前記スリット板が、環状の枠体と、当該枠体に並べて架け渡された複数の梁状部材とを具備し、当該複数の梁状部材間の隙間により前記スリットを形成するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成した本発明によれば、真空容器の外部にアンテナを配置し、誘電体板とスリット板とを重ねて磁場透過窓を構成したプラズマ処理装置において、スリット板のメンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図。
【
図2】同実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す横断面図。
【
図3】同実施形態のスリット板の構成を模式的に示すものであり、アンテナ側から視た平面図。
【
図4】同実施形態のスリット板の構成を模式的に示す縦断面図であり、(a)梁状部材を取り外した状態、(b)梁状部材、誘電体板及びアンテナを設置した状態をそれぞれ示す縦断面図。
【
図5】他の実施形態のスリット板の構成を模式的に示すものであり、アンテナ側から視た平面図。
【
図6】他の実施形態のスリット板の構成を模式的に示す縦断面図であり、(a)
図5のA-A’線断面、(b)
図5のB-B’線断面を模式的に示す縦断面図である。
【
図7】他の実施形態のスリット板の構成を模式的に示す横断面図である。
【
図8】他の実施形態のスリット板の構成を模式的に示す横断面図である。
【
図9】他の実施形態のスリット板の構成を模式的に示す縦断面図であり、(a)第1の梁状部材近傍の構成、(b)第2の梁状部材近傍の構成をそれぞれ示す縦断面図である。
【
図10】他の実施形態のスリット板近傍の構成を模式的に示す横断面図である。
【
図11】他の実施形態のスリット板近傍の構成を模式的に示す縦断面図である。
【
図12】他の実施形態のスリット板近傍の構成を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
<装置構成>
本実施形態のプラズマ処理装置100は、誘導結合型のプラズマPを用いて基板Oに処理を施すものである。ここで、基板Oは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。また、基板Oに施す処理は、例えば、プラズマCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。
【0012】
なお、このプラズマ処理装置100は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0013】
具体的にプラズマ処理装置100は、
図1及び
図2に示すように、真空排気され且つガスが導入される処理室を形成する真空容器1と、真空容器1の外部に設けられたアンテナ2と、アンテナ2に高周波を印加する高周波電源3とを備えたものである。かかる構成において、アンテナ2に高周波電源3から高周波を印加することによりアンテナ2には高周波電流IRが流れて、真空容器1内に誘導電界が発生して誘導結合型のプラズマPが生成される。
【0014】
真空容器1は、例えば金属製の容器であり、その壁(ここでは上壁1a)には、厚さ方向に貫通する開口1xが形成されている。この真空容器1は、ここでは電気的に接地されており、その内部の処理室は真空排気装置4によって真空排気される。
【0015】
また、真空容器1内には、例えば流量調整器(図示省略)や真空容器1に設けられた1又は複数のガス導入口11を経由して、ガスが導入される。ガスは、基板Oに施す処理内容に応じたものにすれば良い。例えば、プラズマCVD法によって基板に膜形成を行う場合には、ガスは、原料ガス又はそれを希釈ガス(例えばH2)で希釈したガスである。より具体例を挙げると、原料ガスがSiH4の場合はSi膜を、SiH4+NH3の場合はSiN膜を、SiH4+O2の場合はSiO2膜を、SiF4+N2の場合はSiN:F膜(フッ素化シリコン窒化膜)を、それぞれ基板上に形成することができる。
【0016】
この真空容器1の内部には、基板Oを保持する基板ホルダ5が設けられている。この例のように、基板ホルダ5にバイアス電源6からバイアス電圧を印加するようにしても良い。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のバイアス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマP中の正イオンが基板Oに入射する時のエネルギーを制御して、基板Oの表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。基板ホルダ5内に、基板Oを加熱するヒータ51を設けておいても良い。
【0017】
アンテナ2は、
図1及び
図2に示すように、真空容器1に形成された開口1xに臨むように配置されている。なお、アンテナ2の本数は1本に限らず、複数本のアンテナ2を設けても良い。
【0018】
アンテナ2は、
図2に示すように、その一端部である給電端部2aが、整合回路31を介して高周波電源3が接続されており、他端部である終端部2bが、直接接地されている。なお、終端部2bは、コンデンサ又はコイル等を介して接地されてもよい。
【0019】
高周波電源3は、整合回路31を介してアンテナ2に高周波電流IRを流すことができる。高周波の周波数は例えば一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではなく適宜変更してもよい。
【0020】
このプラズマ処理装置100は、真空容器1の壁(上壁1a)に形成された開口1xを真空容器1の外側から塞ぐスリット板7と、スリット板7に形成されたスリット7xを真空容器1の外側から塞ぐ誘電体板8とをさらに備えている。
【0021】
スリット板7は、アンテナ2から生じた高周波磁場を真空容器1内に透過させるとともに、真空容器1の外部から真空容器1の内部への電界の入り込みを防ぐものである。具体的にこのスリット板7は、
図3に示すように、その厚さ方向に貫通してなる複数のスリット7xがアンテナ2の長手方向に沿って等間隔に並んで形成された平板矩形状のものである。このスリット板7は、後述する誘電体板8よりも機械強度が高いことが好ましく、誘電体板8よりも厚み寸法が大きいことが好ましい。そして複数のスリット7xは、厚さ方向から視て、互いに平行であって、且つアンテナ2に交差するように(具体的には直交するように)形成されている。複数のスリット7xはいずれも同形状(具体的には平面視矩形状)であり、アンテナ2の長手方向に沿った長さ(幅)は、例えば5mm以上30mm以下であるがこれに限らない。
【0022】
このスリット板7は、平面視において真空容器の開口1xよりも大きいものであり、上壁1aに支持された状態で開口1xを塞いでいる。スリット板7と上壁1aとの間には、Oリングやガスケット等のシール部材S1(
図1及び
図2参照)が介在しており、これらの間は真空シールされている。
【0023】
誘電体板8は、スリット板7において真空容器1の外側を向く外向き面7a(真空容器1の内部を向く内向き面の裏面)に設けられて、スリット板7のスリット7xを塞ぐものである。
【0024】
誘電体板8は、全体が誘電体物質で構成された平板状をなすものであり、例えばアルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックス、石英ガラス、無アルカリガラス等の無機材料、フッ素樹脂(例えばテフロン)等の樹脂材料等からなる。なお、誘電損を低減する観点から、誘電体板8を構成する材料は、誘電正接が0.01以下のものが好ましく、0.005以下のものがより好ましい。
【0025】
ここでは誘電体板8の板厚をスリット板7の板厚よりも小さくしているが、これに限定されず、例えば真空容器1を真空排気した状態において、スリット7xから受ける真空容器1の内外の差圧に耐え得る強度を備えれば良く、スリット7xの数や長さ等の仕様に応じて適宜設定されてよい。ただし、アンテナ2と真空容器1との間の距離を短くする観点からは薄い方が好ましい。誘電体板8とスリット板7との間には、Oリングやガスケット等のシール部材S2が介在しており、これらの間は真空シールされている。
【0026】
かかる構成により、スリット板7及び誘電体板8は、アンテナ2から発生した磁場を透過させる磁場透過窓Wとして機能を担う。すなわち、高周波電源3からアンテナ2に高周波を印加すると、アンテナ2から発生した高周波磁場が、スリット板7及び誘電体板8からなる磁場透過窓Wを透過して真空容器1内に形成(供給)される。これにより、真空容器1内の空間に誘導電界が発生し、誘導結合型のプラズマPが生成される。
【0027】
しかして、本実施形態のプラズマ処理装置100では、
図1-
図4に示すように、スリット板7が、環状の枠体71と、当該枠体71に並べて架け渡された複数の梁状部材72とを具備し、当該複数の梁状部材72間の隙間によりスリット7Xを形成するものである。なお、スリット板7を構成する枠体71及び複数の梁状部材72は、いずれも真空容器1に電気的に接続されて共に接地電位となっている。
【0028】
枠体71は、例えばCu、Al、Zn、Ni、Sn、Si、Ti、Fe、Cr、Nb、C、Mo、W又はCoを含む群から選択される1種の金属又はそれらの合金(例えばステンレス合金、アルミニウム合金等)等の金属材料からなる板状のものである。この枠体71は、アンテナ2側からの平面視において矩形状の開口71aを縁取る形状を成すものであり、その外周縁71o及び内周縁71iはいずれも矩形状をなしている。枠体71の内周縁71iには、開口71aを挟んで対をなす複数の溝71gが形成されている。具体的にこの複数対の溝71gは、アンテナ2の長手方向に沿って平行な一対の対向する辺をそれぞれ切り欠いて形成したものであり、アンテナ2の長手方向に沿って等間隔に並んで形成されている。本実施形態では複数の溝71gは、いずれも同一の断面形状(ここでは矩形状)を有し、かついずれも略同一の深さとなるように形成されている。
【0029】
梁状部材72は、アンテナ2に直交する方向に伸びる長尺状をなすものであり、本実施形態では長手方向に沿って略同一の断面形状を有するものである。梁状部材72の長手方向に沿った両端部72aは、枠体71の溝71gと略同一の断面形状を有しており、その両端部72aが枠体71の溝71gに嵌まり込むことで、複数の梁状部材72が枠体71に同一高さとなるように架け渡されている。複数の梁状部材72は、いずれも同一の長さ及び幅を有する同一形状のものであり、アンテナ2の長手方向に沿って略等間隔で枠体71に着脱可能に取り付けられている。
図4に示すように、梁状部材72の高さ寸法は、枠体71の溝71gの深さ寸法と略同一又はそれよりも小さい。
【0030】
梁状部材72は、Cu、Al、Zn、Ni、Sn、Si、Ti、Fe、Cr、Nb、C、Mo、W又はCoを含む群から選択される1種の金属又はそれらの合金(例えばステンレス合金、アルミニウム合金等)等の金属材料からなるものである。例えばSUS等、枠体71よりもヤング率が高い材料により構成されている。
【0031】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のプラズマ処理装置100によれば、スリット板7が、枠体71と、枠体71に架け渡された複数の梁状部材72とにより構成され、梁状部材72間の隙間によりスリット7xを形成するようにしているので、清掃時には、堆積物の付着等のより汚れた梁状部材72を枠体71から取り外して交換すればよいので、複数のスリット7xを1つ1つ清掃する手間が省くことができ、メンテナンスを簡単に行うことができるようになる。さらに、スリット板7を、枠体71と梁状部材72の2種類の部材に分けて構成することで、1枚の金属板を加工してスリット板7を形成する場合に比べて、個々の部材の加工を簡単にすることができる。そのため、切削が容易なアルミニウムのような材料を用いる必要がなく、より強度が高いSUS等の金属材料を用いることができ、スリット板7の薄型化を図ることができる。これにより、アンテナから真空容器までの距離を一層短くでき、アンテナから生じた高周波磁場をより効率良く真空容器内に供給することができる。
【0032】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0033】
例えば前記実施形態では、複数の梁状部材72は全て同一高さとなるように枠体71に取り付けられていたがこれに限らない。他の実施形態のスリット板7は、
図5、
図6及び
図7に示すように、高さ違いで枠体71に架け渡される第1の梁状部材721と第2の梁状部材722とをそれぞれ複数有しており、第1の梁状部材721と第2の梁状部材722とが、アンテナ2の長手方向に沿って交互に並んで配置されていてもよい。具体的にこの実施形態では、深さが互いに異なる第1の溝と第2の溝712gがアンテナ2の長手方向に沿って交互に枠体71に形成されており、この第1の溝711gと第2の溝712gに、第1の梁状部材721と第2の梁状部材722とがそれぞれ架け渡されればよい。なお
図5-
図7の形態では、第1の梁状部材721が、第2の梁状部材722よりもアンテナ2側に位置するように(すなわち、第2の溝712gが第1の溝711gよりも深くなるように)構成されている。
【0034】
この実施形態において、第1の梁状部材721と第2の梁状部材722は、互いに接触しないように枠体71に取り付けられている。具体的には、第2の溝712gに嵌め込んだ第2の梁状部材722の上面(アンテナ2側の面)が、第1の溝711gの底面の位置よりも低くなるように構成されており、第1の梁状部材721の底面(処理室側の面)が第2の梁状部材722の上面よりも高くなるようにしている。
【0035】
またこの実施形態では、アンテナ2側からの平面視において、第1の梁状部材721と第2の梁状部材722とが、隙間なく、かつ互いに重複することなく並べられている。具体的には、アンテナ2の長手方向において、第1の梁状部材721間の隙間寸法と第2の梁状部材722の幅寸法が等しく、かつ第2の梁状部材722間の隙間寸法と第1の梁状部材721の幅寸法が等しくなるようにしている。なお当然ながら、アンテナ2側からの平面視において、第1の梁状部材721と第2の梁状部材722との間には隙間があってもよく、また互いに重複するように並べられてもよい。
【0036】
また、第1の梁状部材721と第2の梁状部材722とを有する場合、
図8及び
図9に示すように、スリット板7は、第1の梁状部材721と第2の梁状部材722との間においてアンテナ2の長手方向に沿って運動する荷電粒子を遮蔽するための遮蔽壁73を有していてもよい。この遮蔽壁73は、アンテナ2の長手方向に対して交差する(具体的には直交する)ように形成された壁面73aを有してよい。この壁面73aは、アンテナ2に交差する方向に伸びる長尺状をなし、枠体71の開口71aの長さと略同一長さであるのが好ましい。例えばこの遮蔽壁73は、第1の梁状部材721及び第2の梁状部材722の一方の梁状部材から、他方の梁状部材間の隙間に向けて突出する突起部により構成されてよい。スリット板7は、アンテナ2の長手方向に沿って複数の遮蔽壁73を有していてもよい。
【0037】
また前記実施形態では、溝71gの断面形状は矩形状であったが、これに限らない。他の実施形態では、
図10に示すように、溝71gの断面形状は、V字形状であってよく、あるいは部分円形状であってもよい。また、溝71gの断面形状に合わせて、梁状部材72の断面形状が三角形状や円形状であってもよい。
【0038】
また梁状部材72は、溝71gに架けられる両端部72a以外の領域に、処理室側に向かって突出する着膜抑制突起部74を有していてもよい。この着膜抑制突起部74は、梁状部材72が架けられる溝71gへの堆積物の付着を防止するためのものであり、アンテナ2の長手方向から視て、枠体71の内側周面71sに対向するとともに、当該内側周面71sを覆う被覆面74aを有している。着膜抑制突起は、
図11に示すように、梁状部材72の両端部72aの近傍にのみ設けられてもよく、
図12に示すように開口71a全体に亘って形成されてもよい。
【0039】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【0040】
さらに本明細書の開示は、以下の態様1-7を含み得る。
【0041】
(態様1)処理室を形成する真空容器の外部に設けられたアンテナに高周波電流を流して前記処理室内にプラズマを発生させるプラズマ処理装置であって、前記真空容器の前記アンテナに臨む位置に形成された開口を塞ぐように設けられたスリット板と、前記スリット板に形成されたスリットを前記真空容器の外側から塞ぐ誘電体板とを備え、前記スリット板が、環状の枠体と、当該枠体に並べて架け渡された複数の梁状部材とを具備し、当該複数の梁状部材間の隙間により前記スリットを形成するものであるプラズマ処理装置。
このような構成であれば、スリット板が、枠体と、枠体に架け渡された複数の梁状部材とにより構成され、梁状部材間の隙間によりスリットを形成するようにしているので、清掃時には、堆積物の付着等のより汚れた梁状部材を枠体から取り外して交換すればよいので、複数のスリットを1つ1つ清掃する手間が省くことができ、メンテナンスを簡単に行うことができるようになる。さらに、スリット板を、枠体と梁状部材の2種類の部材に分けて構成することで、1枚の金属板を加工してスリット板を形成する場合に比べて、個々の部材の加工を簡単にすることができる。そのため、切削が容易なアルミニウムのような材料を用いる必要がなく、より強度が高いSUS等の金属材料を用いることができ、スリット板の薄型化を図ることができる。これにより、アンテナから真空容器までの距離を短くすることができ、アンテナから生じた高周波磁場を効率良く真空容器内に供給することができる。
【0042】
(態様2)前記枠体の内周縁部にはその開口を挟んで対をなす複数の溝が形成されており、当該対をなす各溝に前記梁状部材の両端部が掛けられている態様1に記載のプラズマ処理装置。
このような構成であれば、溝に梁状部材をかけることにより梁状部材を枠体に取り付けられるので、梁状部材の位置ずれを防止することができ、また梁状部材の取り付け及び取り外しが容易である。
【0043】
(態様3)前記溝の断面形状がV字形状又は部分円形状である態様2に記載のプラズマ処理装置。
溝の断面が矩形状である場合にはザグリに起因して溝内で梁状部材の位置ずれが生じる可能性があるが、溝の断面形状をV字形状や部分円形状とすることで、このような位置ズレの問題を解消することができる。
【0044】
(態様4)前記梁状部材が、前記溝に架けられる両端部以外の領域に、前記処理室側に向かって突出する突起部を有している態様2又は3に記載のプラズマ処理装置。
このような構成であれば、処理室側に突出する突起部が、枠体の内側周面への堆積物の付着を抑制するカバーとして機能し、枠体に付着する堆積物を低減することができ、メンテナンス性をより向上することができる。
【0045】
(態様5)前記スリット板が、板厚方向において高さ違いで前記枠体に架け渡された第1の前記梁状部材と第2の前記梁状部材とを具備し、前記第1の梁状部材と前記第2の梁状部材とが前記アンテナの長手方向に沿って交互に並んで配置されている態様1-4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
このような構成であれば、平面視において、アンテナの長手方向に沿って第1の梁状部材と第2の梁状部材とが交互に並ぶようにすることで、真空容器の内側から視て誘電体板が隠れるようにしているので、導電性の飛来物等が誘電体板に付着して汚染するのを防止できる。これにより、誘電体板の表面が導電化されるのを防ぎ、高周波磁場の透過率の低下を抑制できるとともに、誘電体板の表面に誘導電流が流れることによる発熱も防止することができる。
また、第1の梁状部材間に第2の梁状部材が位置するようにしているので、第1の梁状部材間のスリットから露出する誘電体板がプラズマや被処理物に直接晒されないので、輻射等による誘電体板の温度上昇を抑えて破損を防止できる。
しかも、第1の梁状部材と第2の梁状部材とを高さ違いにしているので、アンテナに沿ってスリット板に生じる誘導電流を小さくでき、高周波磁場の透過率の低下を効率よく抑制できる。
【0046】
(態様6)前記アンテナの長手方向において、前記第1の梁状部材間の隙間寸法と前記第2の梁状部材の幅寸法とが略同一である態様5に記載のプラズマ処理装置。
このようにすれば、真空容器の内側から視て誘電体板がしっかり隠れるようになるので、導電性の飛来物等が誘電体板に付着して汚染するのをより防止できる。
【0047】
(態様7)前記スリット板が、前記第1の梁状部材と前記第2の梁状部材との間において、前記アンテナの長手方向に沿って運動する荷電粒子を遮蔽するための遮蔽壁を有する態様6に記載のプラズマ処理装置。
このようにすれば、第1の梁状部材と第2の梁状部材との間の間隙内におけるアンテナの長手方向に沿った荷電粒子の運動を遮蔽壁により抑制でき、間隙内での放電発生を防止できる。
【符号の説明】
【0048】
100・・・プラズマ処理装置
P ・・・誘導結合プラズマ
2 ・・・真空容器
3 ・・・アンテナ
7 ・・・スリット板
71 ・・・枠体
71i・・・内周縁
72 ・・・梁状部材
7x ・・・スリット
8 ・・・誘電体板