(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067703
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】条件演算装置、及び学習装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/92 20190101AFI20240510BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20240510BHJP
B29C 48/25 20190101ALI20240510BHJP
B29C 48/305 20190101ALI20240510BHJP
B29C 48/07 20190101ALI20240510BHJP
B29C 48/355 20190101ALI20240510BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20240510BHJP
B26D 7/30 20060101ALI20240510BHJP
B26D 5/00 20060101ALI20240510BHJP
B26D 1/56 20060101ALI20240510BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240510BHJP
B29K 7/00 20060101ALN20240510BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/88
B29C48/25
B29C48/305
B29C48/07
B29C48/355
B26D3/00 601E
B26D7/30
B26D5/00 Z
B26D1/56 F
G06N20/00
B29K7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177972
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 陽平
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AA45
4F207AG02
4F207AH20
4F207AJ08
4F207AM23
4F207AP05
4F207AP11
4F207AP14
4F207AR06
4F207AR11
4F207AR12
4F207AR15
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK55
4F207KL84
4F207KW23
(57)【要約】
【課題】トレッドゴム部材を形成する切断装置に対して、適切な切断条件を予測することができる技術を提供する。
【解決手段】制御装置14は、未加硫のゴム材料Gを切断し帯状のトレッドゴム部材2を形成する切断装置8の切断条件を求める。制御装置14は、ゴム材料Gの切断装置8への搬送及びトレッドゴム部材Gの切断装置8からの搬送に関する1又は複数の搬送パラメータ、及び、ゴム材料G及びトレッドゴム部材2の物性に関する1又は複数の物性パラメータのうち、少なくとも1つのパラメータを取得する第1処理と、切断されてから所定時間経過後のトレッドゴム部材2の第2長さL2及び少なくとも1つのパラメータが入力されると切断条件を出力するように学習された学習モデル38aに対して、第1処理で取得した少なくとも1つのパラメータを入力し、第2長さL2を所望の長さとし得る予測切断条件を求める第2処理と、を実行する処理部36を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に押出成形される未加硫のゴム材料を切断し帯状のトレッドゴム部材を形成する切断装置の切断条件を求める条件演算装置であって、
前記切断条件は、切断直後の前記トレッドゴム部材の第1長さ、及び、前記第1長さを設定するための設定値のいずれかを含み、
前記ゴム材料の前記切断装置への搬送及び前記トレッドゴム部材の前記切断装置からの搬送に関する1又は複数の搬送パラメータ、及び、前記ゴム材料及び前記トレッドゴム部材の物性に関する1又は複数の物性パラメータのうち、少なくとも1つのパラメータを取得する第1処理と、
切断されてから所定時間経過後の前記トレッドゴム部材の第2長さ及び前記少なくとも1つのパラメータが入力されると前記切断条件を出力するように学習された学習モデルに対して、前記第1処理で取得した前記少なくとも1つのパラメータを入力し、前記第2長さを所望の長さとし得る予測切断条件を求める第2処理と、
を実行する処理部を備える
条件演算装置。
【請求項2】
前記切断装置は、前記ゴム材料を切断するカッタと、前記カッタを前記ゴム材料の長手方向に沿って移動させ前記カッタの切断位置を調整する移動機構と、を含み、
前記設定値は、前記切断位置、及び、前記カッタによる前記ゴム材料の切断タイミングの少なくともいずれか一方を含む
請求項1に記載の条件演算装置。
【請求項3】
前記ゴム材料は、前記ゴム材料を成形する押出成形機と、前記切断装置との間で、水冷されつつ搬送され、
前記1又は複数の搬送パラメータは、前記ゴム材料の搬送速度、前記水冷に用いられる冷却水の温度、前記水冷前の前記トレッドゴム部材の周囲温度、前記切断装置の周囲温度、前記所定時間、前記所定時間経過中において保管状態にある前記トレッドゴム部材の周囲温度、及び、前記所定時間経過後における前記トレッドゴム部材の周囲温度のうちの少なくともいずれかであり、前記1又は複数の物性パラメータは、前記水冷前の前記ゴム材料の厚み及び温度、前記水冷後であって切断直前の前記ゴム材料の厚み及び温度、並びに、切断直後の前記トレッドゴム部材の重量のうちの少なくともいずれかである
請求項1又は2に記載の条件演算装置。
【請求項4】
前記水冷は、前記押出成形機と、前記切断装置との間の冷却区間内で行われ、
前記冷却水の温度は、前記冷却区間に沿った複数の地点の複数の温度を含む
請求項3に記載の条件演算装置。
【請求項5】
前記複数の地点は、前記冷却区間の上流端部地点、前記冷却区間の下流端部地点、及び前記冷却区間の中間部地点を含む
請求項4に記載の条件演算装置。
【請求項6】
請求項1に記載の条件演算装置が用いる前記学習モデルの学習装置であって、
前記第2長さ、前記少なくとも1つのパラメータ、及び、前記切断条件を取得する処理と、
前記第2長さ、前記少なくとも1つのパラメータ、及び、前記切断条件に基づいて、前記学習モデルに学習させる処理と、を実行する学習処理部を備える
学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのトレッドゴム部材を形成する切断装置の切断条件を求めるために用いられる条件演算装置、及び学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造においては、未加硫のトレッドゴム部材の形成が行われる。このトレッドゴム部材は、所定の長さに裁断された帯状の部材であり、生タイヤを構成する一部品として用いられる。トレッドゴム部材は、押出成形機から押し出される未加硫の帯状のゴム材料を、切断装置によって所定の長さに切断することで形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、押出成形機によって押し出されることで形成されたトレッドゴム部材には、内部ひずみの残留によって、経時的な収縮(シュリンク)が生じる。
このため、押出成形された直後のトレッドゴム部材は、所定時間保管される。これにより、トレッドゴム部材がある程度収縮するのを待ち、収縮後のトレッドゴム部材を生タイヤの成形に供する。
【0005】
ここで、所定時間経過後のトレッドゴム部材の長さは、生タイヤの成形に際して予め定められた適切な数値である必要がある。
このため、切断機による切断条件として切断直後のトレッドゴム部材の長さを設定する場合、所定時間経過後のトレッドゴム部材の収縮度合いを想定しつつ切断直後のトレッドゴム部材の長さを設定する必要がある。
【0006】
しかし、シュリンクによる収縮度合いは、多様な要因によって定まるため、切断直後のトレッドゴム部材の長さから、所定時間経過後のトレッドゴム部材の長さを推定することは困難である。
このため、所定時間経過後のトレッドゴム部材の長さが所望の長さとなるように、適切な切断条件を予測する方策が望まれる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、切断装置によってトレッドゴム部材を形成するに際して、適切な切断条件を予測することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本願発明の発明者は、トレッドゴム部材のシュリンクについて鋭意研究を行った結果、押出成形機から連続的に搬送される未加硫の帯状のゴム材料及びこのゴム材料から切断されるトレッドゴム部材の搬送及び物性に関するパラメータと、トレッドゴム部材のシュリンクとの間に相関があることを見出し、この相関を利用すれば、適切な切断条件を予測できるとの知見を得、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、連続的に押出成形される未加硫のゴム材料を切断し帯状のトレッドゴム部材を形成する切断装置の切断条件を求める条件演算装置である。前記切断条件は、切断直後の前記トレッドゴム部材の第1長さ、及び、前記第1長さを設定するための設定値のいずれかを含む。前記条件演算装置は、前記ゴム材料の前記切断装置への搬送及び前記トレッドゴム部材の前記切断装置からの搬送に関する1又は複数の搬送パラメータ、及び、前記ゴム材料及び前記トレッドゴム部材の物性に関する1又は複数の物性パラメータのうち、少なくとも1つのパラメータを取得する第1処理と、切断されてから所定時間経過後の前記トレッドゴム部材の第2長さ及び前記少なくとも1つのパラメータが入力されると前記切断条件を出力するように学習された学習モデルに対して、前記第1処理で取得した前記少なくとも1つのパラメータを入力し、前記第2長さを所望の長さとし得る予測切断条件を求める第2処理と、を実行する処理部を備える。
【0009】
上記構成によれば、学習モデルに対して、第1処理で取得したパラメータを入力するとともに、第2長さとして所望の長さを入力することで、切断されてから所定時間経過後のトレッドゴム部材の第2長さを所望の長さにし得る予測切断条件を求めることができる。つまり、切断されてからトレッドゴム部材に生じるシュリンクが考慮された適切な切断条件を予測することができる。
【0010】
(2)前記切断装置が、前記ゴム材料を切断するカッタと、前記カッタを前記ゴム材料の長手方向に沿って移動させ前記カッタの切断位置を調整する移動機構と、を含む場合、前記設定値は、前記切断位置、及び、前記カッタによる前記ゴム材料の切断タイミングの少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。
この場合、第2長さを所望の長さにし得る適切な予測切断位置及び予測切断タイミングを求めることができる。
【0011】
(3)また、前記ゴム材料が、前記ゴム材料を成形する押出成形機と、前記切断装置との間で、水冷されつつ搬送される場合、前記1又は複数の搬送パラメータは、前記ゴム材料の搬送速度、前記水冷に用いられる冷却水の温度、前記水冷前の前記トレッドゴム部材の周囲温度、前記切断装置の周囲温度、前記所定時間、前記所定時間経過中において保管状態にある前記トレッドゴム部材の周囲温度、及び、前記所定時間経過後における前記トレッドゴム部材の周囲温度のうちのいずれかであり、前記1又は複数の物性パラメータは、前記水冷前の前記ゴム材料の厚み及び温度、前記水冷後であって切断直前の前記ゴム材料の厚み及び温度、並びに、切断直後の前記トレッドゴム部材の重量のうちのいずれかであることが好ましい。
この場合、各搬送パラメータ及び各物性パラメータのうち、少なくとも1つのパラメータに基づいて、第2長さを所望の長さにし得る適切な切断位置及び切断タイミングを求めることができる。
【0012】
(4)上記条件演算装置において、前記水冷が、前記押出成形機と、前記切断装置との間の冷却区間内で行われる場合、前記冷却水の温度は、前記冷却区間に沿った複数の地点の複数の温度を含んでいてもよい。
この場合、パラメータが冷却区間に沿った複数の地点の複数の温度を含むことで、水冷によるゴム材料に対する冷却態様及び冷却履歴に応じて適切な予測切断条件を求めることができる。
【0013】
(5)また、前記複数の地点は、前記冷却区間の上流端部地点、前記冷却区間の下流端部地点、及び前記冷却区間の中間部地点を含んでいてもよい。
【0014】
(6)また本発明は、上記(1)に記載の条件演算装置が用いる前記学習モデルの学習装置である。この学習装置は、前記第2長さ、前記少なくとも1つのパラメータ、及び、前記切断条件を取得する処理と、前記第2長さ、前記少なくとも1つのパラメータ、及び、前記切断条件に基づいて、前記学習モデルに学習させる処理と、を実行する学習処理部を備える。
この構成によれば、前記上記条件演算装置に適した学習モデルを得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トレッドゴム部材を形成する切断装置に対して、適切な切断条件を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係るトレッドゴム部材製造システムの全体構成を示す図である。
【
図3】
図3は、制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、パラメータデータベースの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、処理部が行う条件演算処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔トレッドゴム部材製造システムの全体構成〕
図1は、実施形態に係るトレッドゴム部材製造システムの全体構成を示す図である。
トレッドゴム部材製造システム1(以下、単にシステム1という)は、トレッドゴム部材2を製造するためのシステムである。
トレッドゴム部材2は、未加硫の生タイヤを構成する一部品として用いられる部材である。トレッドゴム部材2は、所定の長さに裁断された帯状の部材である。トレッドゴム部材2は、システム1によって形成された後、生タイヤを成形する成形機3に与えられる。
【0018】
システム1は、押出成形機4と、搬送コンベア6と、切断装置8と、冷却装置10と、リーフトレイ12と、制御装置14と、を備える。
押出成形機4は、帯状のゴム材料Gを連続的に押し出す機能を有する。押出成形機4は、未加硫のゴム材料Gを混練するスクリュー4aと、ゴム材料Gを帯状に形成するための押出ダイ4bと、を有する。
押出成形機4から押し出される帯状のゴム材料Gの押出速度は、スクリュー4aの回転速度に基づいて制御される。押出速度は、制御装置14によって制御される。
【0019】
搬送コンベア6は、複数のコンベア部6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6hを含む。搬送コンベア6は、押出成形機4から連続的に押し出されるゴム材料Gを、ゴム材料Gの長手方向に沿って連続的に搬送する。さらに、搬送コンベア6は、ゴム材料Gを切断することで形成されるトレッドゴム部材2を連続的に搬送する。
搬送コンベア6は、押出成形機4と、リーフトレイ12と、の間に設置されている。
搬送コンベア6は、押出成形機4によって押出成形されたゴム材料Gを冷却装置10へ搬送し、冷却装置10を通過したゴム材料Gを、切断装置8へ搬送する。さらに、搬送コンベア6は、トレッドゴム部材2を切断装置8からリーフトレイ12へ搬送する。
このように、搬送コンベア6は、ゴム材料G及びトレッドゴム部材2を押出成形機4からリーフトレイ12まで搬送する。
【0020】
搬送コンベア6の搬送速度は、押出成形機4の押出速度に応じて設定される。
搬送コンベア6の搬送速度は、制御装置14によって制御される。
【0021】
図1中、冷却装置10は、搬送コンベア6上のゴム材料Gに対して放水することでゴム材料Gを水冷する機能を有する。冷却装置10は、押出成形機4と、切断装置8との間に配置されている。よって、ゴム材料Gは、押出成形機4と、切断装置8との間で、放水冷却されつつ搬送される。
搬送コンベア6の経路上において冷却装置10が配置されている区間は、ゴム材料Gの水冷が行われる冷却区間である。
【0022】
冷却装置10は、第1冷却部10aと、第2冷却部10bとを備える。第1冷却部10aは、コンベア部6c上に配置されている。第2冷却部10bは、コンベア部6d上に配置されている。
コンベア部6cは、コンベア部6a、6bの上方に配置されている。コンベア部6aは、押出成形機4の直後に配置されている。コンベア部6bは、コンベア部6aの下流端から斜め上方へ折り返すように配置されている。よって、コンベア部6bの下流端は押出成形機4側に向く。
コンベア部6cは、ほぼ平行に配置されている。コンベア部6cの下流端はリーフトレイ12側に向いている。よって、コンベア部6cは、ゴム材料Gを押出成形機4側からリーフトレイ12側へ搬送する。
【0023】
また、コンベア部6dは、コンベア部6cの下方に配置されている。コンベア部6dは、ほぼ平行に配置されている。
コンベア部6dの下流端は、押出成形機4側に向いている。よって、コンベア部6dは、ゴム材料Gをリーフトレイ12側から押出成形機4側へ搬送する。
ゴム材料Gは、コンベア部6a、6bを通過した後、コンベア部6cに到達し、第1冷却部10aの直下を通過する。その後、コンベア部6dに到達し、第2冷却部10bの直下を通過する。
【0024】
第1冷却部10aは、複数の放水ノズル11aを有する。放水ノズル11aは、コンベア部6c上のゴム材料Gに対して放水する。第1冷却部10aは、放水ノズル11aによる放水によってコンベア部6c上のゴム材料Gを冷却する。
【0025】
第2冷却部10bは、複数の放水ノズル10b1を有する。放水ノズル11bは、コンベア部6d上のゴム材料Gに対して放水する。第2冷却部10bは、放水ノズル11bによる放水によってコンベア部6d上のゴム材料Gを冷却する。
なお、コンベア部6dの長さがコンベア部6cの長さよりも短いため、放水ノズル11bの数は、放水ノズル10a1の数よりも少ない。
【0026】
コンベア部6dを通過したゴム材料Gは、切断装置8の直下に配置されたコンベア部6eへ搬送される。
切断装置8は、ゴム材料Gを切断しトレッドゴム部材2を形成する機能を有する。切断装置8は、コンベア部6e上に配置される。
コンベア部6eは、コンベア部6dの下方に配置される。コンベア部6eは、ほぼ平行に配置されている。
コンベア部6eの下流端は、リーフトレイ12側に向いている。よって、コンベア部6eは、ゴム材料Gを押出成形機4側からリーフトレイ12側へ搬送する。
【0027】
切断装置8は、カッタ8aと、モータ8bと、を備える。モータ8bはカッタ8aを支持しつつカッタ8aを回転させる機能を有する。カッタ8aは、搬送コンベア6によって搬送されるゴム材料Gを切断する機能を有する。
【0028】
図2は、切断装置8の構成を示す図である。
図2に示すように、切断装置8は、カッタ8a及びモータ8bに加えて移動機構8cを備える。移動機構8cは、カッタ8a及びモータ8bを上下方向、ゴム材料Gの長手方向、及びゴム材料Gの幅方向に沿って移動させる機能を有する。
切断装置8は、コンベア部6e上のゴム材料Gに対してカッタ8aを接触させ、ゴム材料Gを切断する。
切断装置8は、幅方向に沿ってカッタ8aを移動させることで、ゴム材料Gを切断する。
また、切断装置8は、カッタ8aをゴム材料Gの長手方向に沿って移動させることで、カッタ8aによるゴム材料Gの長手方向における切断位置を調整することができる。切断位置は、コンベア部6e上における長手方向所定の範囲に設定される。
【0029】
さらに、切断装置8は、ゴム材料Gを切断する切断タイミングを調整することができる。搬送コンベア6による搬送速度に対して、切断位置及び切断タイミングを調整することで、ゴム材料Gから切断されるトレッドゴム部材2の切断直後の長さが調整される。
切断装置8による切断位置及び切断タイミングは、制御装置14によって制御される。
なお、切断位置及び切断タイミングは、切断直後のトレッドゴム部材2の長さを設定するための設定値である。切断位置及び切断タイミングを含む設定値は、切断装置8の切断条件に含まれる。
本実施形態において、切断装置8の切断条件は、切断直後のトレッドゴム部材2の長さを設定する設定値を含む。
【0030】
図1に示すように、切断装置8によって形成されたトレッドゴム部材2は、コンベア部6eによってリーフトレイ12側へ搬送される。
コンベア部6eのリーフトレイ12側(下流側)には、コンベア部6fが配置されている。コンベア部6fは、重量測定部16上に設けられている。
重量測定部16は、コンベア部6f上のトレッドゴム部材2の重量を測定する機能を有する。コンベア部6eからコンベア部6f上へトレッドゴム部材2が搬送されると、重量測定部16は、トレッドゴム部材2の重量を測定する。
重量測定部16の出力は、制御装置14へ与えられる。
【0031】
重量測定部16による重量測定を終えたトレッドゴム部材2は、コンベア部6fによって、リーフトレイ12側へ搬送される。
コンベア部6fのリーフトレイ12側(下流側)には、コンベア部6gが配置されている。コンベア部6f上には、第1寸法測定装置18が設けられている。
第1寸法測定装置18は、測定対象にレーザを照射することで寸法測定を行う装置である。第1寸法測定装置18は、コンベア部6g上のトレッドゴム部材2の長さ(長手方向の寸法)を測定する機能を有する。
第1寸法測定装置18は、切断装置8によって切断された直後のトレッドゴム部材2の長さを測定する。
第1寸法測定装置18の出力は、制御装置14へ与えられる。
【0032】
第1寸法測定装置18による寸法測定を終えたトレッドゴム部材2は、コンベア部6g及びコンベア部6hによってリーフトレイ12へ搬送される。
リーフトレイ12は、複数のトレッドゴム部材2を保管するための装置である。リーフトレイ12は、複数のトレイ部12aを含む。複数のトレイ部12aのそれぞれには、複数のトレッドゴム部材2が並べて保管される。
リーフトレイ12に保管されるトレッドゴム部材2は、ある一定期間経過した後、リーフトレイ12から取り出され、成形機3に与えられる。
【0033】
成形機3の直前には、第2寸法測定装置20が設けられている。第2寸法測定装置20は、成形機3の近傍に配置された台22上に設けられている。台22には、リーフトレイ12から取り出されて成形機3へ与えられる直前のトレッドゴム部材2が載置される。
第2寸法測定装置20は、第1寸法測定装置18と同様の装置であり、台22上のトレッドゴム部材2の長さ(長手方向の寸法)を測定する機能を有する。
第2寸法測定装置20は、切断装置8によって切断されてから所定時間経過後のトレッドゴム部材2の長さを測定する。
第2寸法測定装置20の出力は、制御装置14へ与えられる。
【0034】
第2寸法測定装置20による寸法測定を終えたトレッドゴム部材2は、成形機3へ与えられ、生タイヤの成形に用いられる。
【0035】
また、システム1は、複数の温度センサ23、24、25、26を備える。
第1温度センサ23は、コンベア部6b近傍に配置されている。第1温度センサ23は、冷却装置10によって冷却される前のゴム材料Gの周囲温度を測定する機能を有する。
第2温度センサ24は、切断装置8近傍に配置されている。第2温度センサ24は、切断装置8の周囲温度を測定する機能を有する。
第3温度センサ25は、リーフトレイ12近傍に配置されている。第3温度センサ25は、リーフトレイ12に保管されているトレッドゴム部材2の周囲温度を測定する機能を有する。
第4温度センサ26は、成形機3及び台22の近傍に配置されている。第4温度センサ26は、成形機3に与えられる直前のトレッドゴム部材2の周囲温度を測定する機能を有する。つまり、第4温度センサ26は、切断されてから所定時間経過後におけるトレッドゴム部材2の周囲温度を測定する。
複数の温度センサ23、24、25、26の出力は、制御装置14へ与えられる。
【0036】
また、システム1は、ゴム材料Gの温度を測定する表面温度センサ27、28を備える。表面温度センサ27、28は、搬送コンベア6上のゴム材料Gの表面温度を測定する機能を有する。
第1表面温度センサ27は、コンベア部6bの上方に配置されている。よって、第1表面温度センサ27は、冷却前のゴム材料Gの温度を測定する。
第2表面温度センサ28は、コンベア部6eの上方かつ切断装置8の直前に配置されている。よって、第2表面温度センサ28は、冷却後のゴム材料Gの温度を測定する。
表面温度センサ27、28の出力は、制御装置14へ与えられる。
【0037】
また、システム1は、ゴム材料Gの厚みを測定する厚み測定センサ29、30を備える。厚み測定センサ29、30は、搬送コンベア6上のゴム材料Gの厚みを測定する機能を有する。
第1厚み測定センサ29は、コンベア部6bの上方に配置されている。よって、第1厚み測定センサ29は、冷却前のゴム材料Gの厚みを測定する。
第2厚み測定センサ30は、コンベア部6eの上方かつ切断装置8の直前に配置されている。よって、第2厚み測定センサ30は、冷却後のゴム材料Gの厚みを測定する。
厚み測定センサ29、30の出力は、制御装置14へ与えられる。
【0038】
さらに、システム1は、水温センサ32、33、34を備える。水温センサ32、33、34は、冷却装置10によって放水される冷却水の温度を測定する機能を有する。
第1水温センサ32は、第1冷却部10aの放水ノズル11aのうち、最上流端の放水ノズル11a1に設けられている。第1水温センサ32は、放水ノズル11a1から放水される冷却水の温度を測定する。つまり、第1水温センサ32は、冷却区間の上流端部地点における冷却水の温度を測定する。
第2水温センサ33は、第2冷却部10bの放水ノズル11bのうち、最下流端の放水ノズル11b1に設けられている。第2水温センサ33は、放水ノズル11b1から放水される冷却水の温度を測定する。つまり、第2水温センサ33は、冷却区間の下流端部地点における冷却水の温度を測定する。
第3水温センサ34は、第1冷却部10aの放水ノズル11aのうち、最下流端の放水ノズル11a2に設けられている。第3水温センサ34は、放水ノズル11a2から放水される冷却水の温度を測定する。つまり、第3水温センサ34は、冷却区間の中間部地点における冷却水の温度を測定する。冷却区間の中間部地点とは、冷却区間の上流端部地点と下流端部地点との間の地点である。
水温センサ32、33、34の出力は、制御装置14へ与えられる。
【0039】
〔制御装置14の構成〕
図3は、制御装置14の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御装置14は、処理部36と、記憶部38と、を備えるコンピュータ等により構成される。処理部36は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。記憶部38は、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)等である。
記憶部38には、処理部36に実行させるためのコンピュータプログラムや、必要な情報が記憶されている。処理部36は、記憶部38のようなコンピュータ読み取り可能な非一過性の記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、制御装置14が有する各種処理機能を実現する。
また、記憶部38には、学習モデル38a、及び、パラメータデータベース38bが記憶されている。
これらについては、後に説明する。
【0040】
制御装置14には、上述の各センサが接続されている。制御装置14には、各センサからの出力が与えられる。
また、制御装置14には、搬送コンベア6、切断装置8、及び冷却装置10が接続されている。
制御装置14の処理部36は、制御処理36aを実行する機能を有する。制御処理36aは、搬送コンベア6、切断装置8、及び冷却装置10に必要な命令を与え、搬送コンベア6、切断装置8、及び冷却装置10の制御を行う処理である。
また、処理部36は、条件演算処理36bを実行する機能を有する。条件演算処理36bは、切断装置8の予測切断条件を求める処理である。処理部36は、記憶部38に記憶された学習モデル38aを用いて予測切断条件を求める。
予測切断条件とは、切断されてから所定時間経過した後の成形機3へ与えられる直前のトレッドゴム部材2の長さを所望の長さとし得る切断条件である。
【0041】
ここで、所定時間とは、ゴム材料Gが切断されトレッドゴム部材2が形成されてから成形機3へ与えられる直前に至るまでの時間である。より、具体的には、所定期間は、ゴム材料Gが切断されトレッドゴム部材2が形成されてから、形成されたトレッドゴム部材2が台22上に載置されるまでの時間である。よって、所定時間は、トレッドゴム部材2が切断装置8からリーフトレイ12まで搬送される時間、トレッドゴム部材2がリーフトレイ12に保管される時間、及びトレッドゴム部材2がリーフトレイ12から台22へ搬送されるまでの時間を含む。
このように、本実施形態の制御装置14は、切断条件を求める条件演算装置として機能する。
【0042】
なお、本実施形態における切断装置8の切断条件は、上述のとおり、設定値(切断位置及び切断タイミング)を含む。よって、条件演算処理36bでは、予測切断条件として、予測設定値(予測切断位置及び予測切断タイミング)を求める。
さらに、処理部36は、学習処理36cを実行する機能を有する。学習処理36cは、学習モデル38aに機械学習させるための処理である。つまり、本実施形態の制御装置14は、学習モデル38aの学習装置として機能する。
【0043】
〔学習処理について〕
処理部36は、学習処理において、まず、システム1の稼働時における各種パラメータを含むデータを取得する処理を行う。
処理部36は、取得したデータをパラメータデータベース38bに登録する。
次いで、処理部36は、パラメータデータベース38bに登録されたデータを用いて、学習モデル38aに機械学習させる処理を行う。
【0044】
図4は、パラメータデータベース38bの一例を示す図である。
パラメータデータベース38bには、第2長さL2、搬送パラメータ、物性パラメータ、及び切断条件が対応付けて登録されている。
処理部36は、システム1の稼働時において、第2長さL2、搬送パラメータ、物性パラメータ、及び切断条件を取得し、パラメータデータベース38bに登録する。
【0045】
搬送パラメータは、押出成形機4から切断装置8へのゴム材料Gの搬送、及び、切断装置8から成形機3へのトレッドゴム部材2の搬送に関するパラメータである。
物性パラメータは、ゴム材料G及びトレッドゴム部材2の物性に関するパラメータである。
【0046】
より具体的に、搬送パラメータは、下記の数値を含む。
ゴム材料Gの搬送速度V
放水冷却に用いられる冷却水の温度Tw
冷却前のトレッドゴム部材2の周囲温度Ta1
切断装置8の周囲温度Ta2
ゴム材料Gが切断されトレッドゴム部材2が形成されてからトレッドゴム部材2が台22上に載置されるまでの所定時間tp
所定時間tpの経過中において保管状態にあるトレッドゴム部材2の周囲温度Ta3
成形機3へ与えられたトレッドゴム部材2の周囲温度Ta4
なお、
図4では、これらのうちの一部を省略して示している。
【0047】
さらに、温度Twは、下記の数値を含む。
冷却区間の上流端部地点における冷却水の温度Tw1
冷却区間の下流端部地点における冷却水の温度Tw2
冷却区間の中間部地点における冷却水の温度Tw3
【0048】
搬送パラメータのうち、搬送速度Vは、上述のように、制御装置14によって制御される。よって、処理部36は、搬送速度Vを把握することができる。
温度Tw1は、第1水温センサ32の出力に基づいて得られる。温度Tw2は、第2水温センサ33の出力に基づいて得られる。温度Tw3は、第3水温センサ34の出力に基づいて得られる。
【0049】
周囲温度Ta1は、第1温度センサ23の出力に基づいて得られる。周囲温度Ta2は、第2温度センサ24の出力に基づいて得られる。周囲温度Ta3は、第3温度センサ25の出力に基づいて得られる。周囲温度Ta4は、第4温度センサ26の出力に基づいて得られる。
所定時間tpは、処理部36によってカウントされる。処理部36は、台22にトレッドゴム部材2が載置されたか否かを検知することができる。よって、処理部36は、トレッドゴム部材2が切断装置8によって切断された後、台22に載置されるまでの時間をカウントする。処理部36は、このカウントした時間を所定時間tpとして取得する。
【0050】
また、物性パラメータは、下記の数値を含む。
放水冷却前のゴム材料Gの厚みh1
放水冷却前のゴム材料Gの温度Tg1
放水冷却後であって切断直前のゴム材料Gの厚みh2
放水冷却後であって切断直前のゴム材料Gの温度Tg2
切断直後のトレッドゴム部材2の重量W
なお、
図4では、これらのうちの一部を省略して示している。
【0051】
厚みh1は、第1厚み測定センサ29の出力に基づいて得られる。温度Tg1は、第1表面温度センサ27の出力に基づいて得られる。厚みh2は、第2厚み測定センサ30の出力に基づいて得られる。温度Tg2は、第2表面温度センサ28の出力に基づいて得られる。重量Wは、重量測定部16の出力に基づいて得られる。
【0052】
第2長さL2は、切断装置8によって切断されてから所定時間tpが経過した後のトレッドゴム部材2の長さである。
第2長さL2は、第2寸法測定装置20の出力に基づいて得られる。
切断条件は、設定値(切断位置及び切断タイミング)を含む。
なお、切断条件は、設定値に代えて、第1長さL1であってもよい。
第1長さL1は、切断装置8によって切断された直後のトレッドゴム部材2の長さである。
第1長さL1は、第1寸法測定装置18の出力に基づいて得られる。なお、第1長さL1は、取得されない場合がある。
【0053】
システム1の稼働時において、処理部36は、第2長さL2を取得すると、第2長さL2に対応する上述の搬送パラメータ、物性パラメータ、及び切断条件を取得し、パラメータデータベース38bに登録する。
処理部36は、第2長さL2を取得すると、取得した第2長さL2の測定対象であるトレッドゴム部材2、及びこのトレッドゴム部材2の切断前のゴム材料Gの部分に対応する搬送パラメータ及び物性パラメータを取得する。
なお、ここで、処理部36は、第2長さL2が取得されたタイミングより前に測定された搬送パラメータ及び物性パラメータを取得する。
処理部36は、搬送パラメータ及び物性パラメータを取得すると、一定期間、記憶部38のうち、パラメータデータベース38b以外の領域に一時的に記憶する。その後、第2長さL2が取得されると、一時的に記憶部38に記憶された搬送パラメータ及び物性パラメータの中から、取得した第2長さL2の測定対象に対応する搬送パラメータ及び物性パラメータを取得する。
【0054】
また、処理部36は、第2長さL2を取得すると、取得した第2長さL2の測定対象であるトレッドゴム部材2を切断したときの切断装置8の切断条件(設定値)も取得する。
【0055】
処理部36は、第2長さL2、及び、第2長さL2に対応する搬送パラメータ、物性パラメータ、及び切断条件を取得すると、第2長さL2、搬送パラメータ、物性パラメータ、及び切断条件を互いに対応付けてパラメータデータベース38bに登録する。
処理部36は、第2長さL2、搬送パラメータ、物性パラメータ、及び切断条件の組み合わせを多数取得する。
例えば、互いに異なる切断条件や搬送パラメータの組み合わせを複数パターン用意し、複数パターンそれぞれで各データを取得する。これにより、処理部36は、第2長さL2、搬送パラメータ、物性パラメータ、及び切断条件の組み合わせを多数取得することができる。
【0056】
パラメータデータベース38bに登録されるデータは、学習モデル38aの教師データとなる。
学習処理におけるデータの取得処理は、データ取得を目的としてシステム1を稼働して行われる場合もあるし、トレッドゴム部材2を製造しつつ、行われる場合もある。
【0057】
処理部36は、第2長さL2、搬送パラメータ、物性パラメータ、及び切断条件の組み合わせを必要数取得すると、処理部36は、パラメータデータベース38bに登録された第2長さL2、搬送パラメータ、物性パラメータ、及び切断条件の組み合わせを用いて、学習モデル38aに機械学習させる処理を行う。
【0058】
本実施形態の学習モデル38aは、第2長さL2、搬送パラメータ、及び物性パラメータが入力されると切断条件を出力するように機械学習された学習済みモデルである。つまり、学習モデル38aは、第2長さL2、搬送パラメータ、及び物性パラメータを説明変数とし、切断条件(設定値)を目的変数とするモデルである。
【0059】
学習モデル38aは、パラメータデータベース38bに登録された第2長さL2、搬送パラメータ、物性パラメータ、及び切断条件の組み合わせを教師データとして用い、機械学習させることで構築される。
本実施形態において、機械学習のアルゴリズムとしては、非線形回帰アルゴリズムの1つである遺伝的アルゴリズムを用いて、学習モデル38aを構築した。しかし、これに限定されるわけではなく、ディープニューラルネットワークを用いてモデルを構築してもよいし、他のアルゴリズムを採用することもできる。
処理部36が学習モデル38aに対して学習処理を行うことで、学習モデル38aは、学習済みモデルとして構築される。
【0060】
上述のように学習モデル38aは、第2長さL2、搬送パラメータ、及び物性パラメータが入力されると切断条件を出力する。
ここで、切断装置8の切断条件に含まれる設定値は、切断直後のトレッドゴム部材2の長さを調整する値である。よって、設定値は、切断直後のトレッドゴム部材2の長さ(第1長さL1)を示していると言える。
つまり、学習モデル38aは、切断されてから所定時間tpが経過することでシュリンクした(成形機3に与えられる直前の)トレッドゴム部材2が第2長さL2となるような第1長さL1の予測値(予測切断条件)を出力することができる。
【0061】
〔条件演算処理について〕
図5は、処理部36が行う条件演算処理の一例を示すフローチャートである。
まず、処理部36は、システム1が稼働中か否かを判定する(
図5中、ステップS1)。
ステップS1においてシステム1が稼働中と判定する場合、処理部36は、ステップS2へ進む。処理部36は、稼働中と判定するまで、ステップS1を繰り返す。
【0062】
ステップS2へ進むと、処理部36は、第1処理として、パラメータの取得を行う(
図5中、ステップS2)。
ステップS2では、上述のように、第2長さL2を取得すると、処理部36は、第2長さL2に対応する搬送パラメータ、物性パラメータ、及び切断条件を取得する。取得した第2長さL2、及び、第2長さL2に対応する搬送パラメータ、物性パラメータ、及び切断条件は、パラメータデータベース38bに登録される。
なお、ステップS2では、少なくとも、搬送パラメータ及び物性パラメータが取得されればよい。
【0063】
ステップS2においてパラメータの取得を行うと、処理部36は、第2処理として、取得した搬送パラメータ及び物性パラメータに基づいて、予測切断条件を求める(
図5中、ステップS3)。
処理部36は、記憶部38に記憶された学習モデル38aを用いて予測切断条件を求める。
【0064】
処理部36は、ステップS2で取得した搬送パラメータ及び物性パラメータを学習モデル38aに入力するとともに、第2長さL2として所望の長さを学習モデル38aに入力する。
所望の長さは、システム1において形成されるトレッドゴム部材2が成形機3へ与えられるときに、生タイヤの成形に際して予め定められた適切な数値である。
所望の長さは、システム1のオペレータから与えられる。処理部36は、制御装置14が有する入出力部(図示省略)が有するキーボード、マウス、タッチパネル等を介してオペレータからの所望の長さに関する入力を受け付ける。処理部36は、所望の長さについて予め受け付けておくこともできるし、必要なときに、オペレータに向けて所望の長さに関する入力を要求することもできる。
【0065】
図5中、ステップS2において、処理部36が、取得した搬送パラメータ及び物性パラメータ、及び、第2長さL2としての所望の長さを学習モデル38aに与えると、学習モデル38aは、これらに応じた予測切断条件(予測設定値)を出力する。
【0066】
上記構成によれば、学習モデル38aに対して、ステップS2で取得した搬送パラメータ及び物性パラメータを入力するとともに、第2長さL2として所望の長さを入力することで、切断されてから所定時間tp経過後のトレッドゴム部材2の第2長さL2を所望の長さにし得る予測切断条件を求めることができる。つまり、切断されてからトレッドゴム部材2に生じるシュリンクが考慮された適切な切断条件を予測することができる。
【0067】
学習モデル38aを用いて得られた予測切断条件によって、切断装置8にゴム材料Gを切断させれば、切断直後のトレッドゴム部材2の長さである第1長さL1は、その後に生じるシュリンクが考慮されることで、所望の長さよりも長くなる。
その後、切断されてから所定時間tpが経過するとトレッドゴム部材2の第2長さL2は、シュリンクによってほぼ所望の長さとなる。
この結果、成形機3には、適切な数値の長さを有するトレッドゴム部材2が与えられる。
【0068】
本実施形態では、切断条件である設定値が、切断位置及び切断タイミングを含むので、第2長さL2を所望の長さにし得る適切な予測切断位置及び予測切断タイミングを求めることができる。
また、本実施形態では、放水冷却に用いられる冷却水の温度Twが、冷却区間の上流端部地点における冷却水の温度Tw1、冷却区間の下流端部地点における冷却水の温度Tw2、及び、冷却区間の中間部地点における冷却水の温度Tw3を含むので、放水冷却によるゴム材料Gに対する冷却態様及び冷却履歴に応じて適切な予測切断条件を求めることができる。
【0069】
図5中、ステップS3において予測切断条件が求められると、処理部36は、求めた予測切断条件を外部へ出力し(
図5中、ステップS4)、処理を終える。
処理部36は、前記入出力部に含まれる、ディスプレイや、プリンタ、スピーカ等によってオペレータへ向けて予測切断条件を出力する。
オペレータが、切断装置8の切断条件を、処理部36が出力した予測切断条件に設定することで、学習モデル38aを用いて得た切断条件がシステム1に反映される。
また、ステップS4において、処理部36が、学習モデル38aを用いて得た予測切断条件を切断装置8に反映させてもよい。これにより、適切な切断条件が速やかにシステム1に反映される。
【0070】
〔その他〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
上記実施形態では、搬送パラメータが、搬送速度V、冷却水の温度Tw(Tw1、Tw2、Tw3)、周囲温度Ta1、Ta2、Ta3、Ta4、切断されてから成形機3へ与えられるまでの所定時間tpを含み、物性パラメータが、ゴム材料Gの厚みh1、h2、ゴム材料Gの温度Tg1、Tg2、切断直後のトレッドゴム部材2の重量Wを含み、処理部36は、これら全てのパラメータを用いて処理する場合を例示した。
しかし、処理部36は、条件演算処理において、これら搬送パラメータ及び物性パラメータのうち、少なくとも1つのパラメータを取得し、この少なくとも1つのパラメータに基づいて予測切断条件を求めるように構成することもできる。この場合、学習モデル38aは、第2長さL2及び少なくとも1つのパラメータが入力されると切断条件を出力するように学習される。
【0071】
また、搬送パラメータには、押出成形機4の押出速度を含めてもよい。
物性パラメータには、ゴム材料G(トレッドゴム部材2)の配合や、冷却前後のゴム材料Gの硬さ、切断後のトレッドゴム部材2の硬さ等を含めてもよい。
【0072】
上記実施形態では、冷却装置10の冷却水の温度を測定する水温センサを、冷却区間の上流端部地点、下流端部地点、及び中間部地点の3箇所に設置した場合を例示したが、冷却区間に沿った複数の地点それぞれの冷却水の温度を測定すればよく、冷却区間に沿った2箇所の地点に水温センサを設置してもよいし、より多数の水温センサを設置してもよい。
この場合、処理部36は、設置した複数の水温センサから複数の冷却水の温度を取得し、予測切断条件を求める。
また、上記実施形態では、冷却装置10がゴム材料Gに対して放水冷却を行う場合を例示したが、冷却装置10は、ゴム材料Gを水槽内に浸漬させて水冷するように構成してもよい。この場合、水槽内が冷却区間であり、水温センサは、水槽内の各部の水温を測定する。
【0073】
また、上記実施形態では、切断条件の設定値が、切断位置及び切断タイミングを含む場合を例示した。しかし、設定値は、切断位置及び切断タイミングのうちのいずれか一方のみを含んでいてもよい。この場合、切断位置及び切断タイミングのうちのいずれか他方は、固定値とされる。
また、切断条件は、設定値に代えて、第1長さL1を含んでいてもよい。この場合、学習モデル38aは、予測第1長さL1を出力する。この場合、切断装置8に対して予測第1長さL1となるような切断位置及び切断タイミングを与えることで、第2長さL2を所望の長さとすることができる。
【0074】
本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
2 トレッドゴム部材
4 押出成形機
8 切断装置
8a カッタ
8c 移動機構
14 制御装置(条件演算装置、学習装置)
16 重量測定部
36 処理部
38a 学習モデル
G ゴム材料