(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067715
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】多層型化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/03 20060101AFI20240510BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240510BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20240510BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240510BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240510BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61K8/03
A61Q19/00
A61K8/891
A61K8/31
A61K8/37
A61Q1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177995
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】593084649
【氏名又は名称】日本コルマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】河渕(三島) 英莉
(72)【発明者】
【氏名】藪内 崇
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB332
4C083AC011
4C083AC122
4C083AC392
4C083AC422
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD172
4C083BB13
4C083CC03
4C083DD05
4C083EE03
(57)【要約】
【課題】化粧料の需要者が使用前に容器を振とうした際に、容器内側面に油滴が付着しないようにし、しかも使用後の各層の濁りは速やかに解消できるようにして、振とうにより油滴が生成される前の濁りのない水層と油層の成層状態に速やかに復帰できる多層型化粧料にすることである。
【解決手段】油相成分中に、常温で動粘度が10cSt以下の油剤、及びトリメチルシロキシケイ酸を含む油溶性界面張力調整剤が含有されており、トリメチルシロキシケイ酸が液状化粧料100質量%中に0.0015質量%以上3.5質量%未満含有されており、静置した容器内では水層と油層に分離し、容器の振とうによって水中に油滴を分散可能な多層型化粧料とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相成分と油相成分を含んで静置状態で2層以上に成層し、振とうによって前記水相成分中に前記油相成分からなる油滴を分散可能な液状化粧料からなり、前記油相成分中に、常温で動粘度が10cSt以下の油剤、及びトリメチルシロキシケイ酸を含む油溶性界面張力調整剤が含有されており、前記トリメチルシロキシケイ酸が前記液状化粧料100質量%中に0.0015質量%以上3.5質量%未満含有されている多層型化粧料。
【請求項2】
前記液状化粧料100質量%中に前記水相成分が50~95質量%含まれ、前記油相成分が5~50質量%含まれている請求項1に記載の多層型化粧料。
【請求項3】
前記油相成分中に、ジメチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、カプリリルメチルポリシロキサン、トリシロキサン、イソヘキサデカン、イソドデカン及び水添ポリイソブテンから選ばれる1種以上の前記油剤を含有する請求項1または2に記載の多層型化粧料。
【請求項4】
前記液状化粧料100質量%中に、エステル油が0~0.8質量%配合されている請求項1または2に記載の多層型化粧料。
【請求項5】
請求項1に記載の多層型化粧料を透明性のある容器に充填してなる透明性容器入り多層型化粧料。
【請求項6】
請求項4に記載の多層型化粧料を透明性のある容器に充填してなる透明性容器入り多層型化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液相の一方が他の一方に微細な液滴として分散した状態で使用され、静置した容器内で2層以上に成層する多層型化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油性成分と水性成分を併用した化粧料は、液相の一方が他の一方に微細な液滴として分散した状態で使用されるが、容器に充填して静置された状態では、油層と水層が分離して2層またはそれ以上の成層状態になるタイプがあり、このような化粧料は、使用直前に容器を振とうさせて、前記分散した状態で使用される。
【0003】
上記化粧料は、成層状態であることを需要者が見てわかることにより、油性成分を比較的多く配合できること、肌にべたつかず軽い使用感でありながら、高いエモリエント性が得られること、乳化のための添加物が多く配合されていないことなどがアピールできるので、成層せずに常に乳化されている化粧料と区別するために、多層型化粧料と称されている。
【0004】
また、このような多層型化粧料は、外観から他の乳化化粧料と容易に識別できるように、透明性のある容器に収容され、油層と水層とが分離している状態が分かるような状態で販売され、また保管および流通されている。
【0005】
特許文献1には、肌面に噴霧してメイクアップの保護のための被膜を形成可能な多層型メイクアップ保護化粧料が記載されており、細かい霧を発生させるためにトリメチルシロキシケイ酸等のシリコーン系の油溶性被膜形成剤を0.05~8質量%、水40~95質量%、揮発性ジメチルポリシロキサン(ジメチコンとも別称される)等の揮発性油剤1~40質量%を含有されたものが記載されている。
【0006】
上記した多層型化粧料は、揮発性油剤に含有される油溶性被膜形成剤を、肌に付着した状態で乾燥させてメイクアップを保護する被膜が形成されるように、霧状で均等に噴霧できるようにしたものであり、成分の油剤を動粘度(25℃)2mm2/s以下にし、また油溶性被膜形成剤の配合量を8質量%以下に限定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載された従来の多層型化粧料は、水相成分中に油相成分を混合して水相成分中に油滴を分散させる際に、化粧料を入れた容器の内壁面に油滴が付着することがあり、水層から離れて容器の内壁面に付着した油滴は、透明性の容器の外部から見て目立つので、需要者が好む爽やかな使用感のある化粧料であることが認識され難くなることに加え、視覚的な魅力が失われる。
【0009】
また、上記従来の多層型化粧料は、振とう後に容器内で静置すると、成層した状態でも油層中および水層中に、微細な粒子状の液滴が分散して濁った状態が長時間続きやすいので、爽やかな使用感が求められる化粧料のイメージが減じられてしまう。
【0010】
そこで、この発明の課題は、上記した従来の多層型化粧料の問題点を解決し、化粧料の需要者が使用前に容器を振とうした際に、容器内側面に油滴が付着しないようにし、しかも使用後の各層の濁りは速やかに解消できるようにして、振とうにより油滴が生成される前の濁りのない水層と油層の成層状態に速やかに復帰できる多層型化粧料にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明は、水相成分と油相成分を含んで静置状態で2層以上に成層し、振とうによって前記水相成分中に前記油相成分からなる油滴を分散可能な液状化粧料からなり、前記油相成分中に、常温で動粘度が10cSt以下の油剤、及びトリメチルシロキシケイ酸を含む油溶性界面張力調整剤が含有されており、前記トリメチルシロキシケイ酸が前記液状化粧料100質量%中に0.0015質量%以上3.5質量%未満含有されている多層型化粧料としたのである。
【0012】
この発明の多層型化粧料は、水相成分中に所定の油相成分からなる油滴を分散させることにより、常温での動粘度10cSt以下という所定動粘度の油剤に溶け込んだ所定濃度のトリメチルシロキシケイ酸を含む油溶性界面張力調整剤が、水中に分散する油滴の界面膜強度を高めて容器壁面との接触角を調整し、結果として容器壁面に対する油滴の非付着性(撥油性)が高められる。
【0013】
そのため、所定動粘度の油剤が形成する油滴の界面張力が調整されて、化粧料を入れた容器を振とうさせて水相成分と油相成分を混合して油滴を分散させた際に、前記容器の内壁面に油滴が付着せず、その後、容器を静置して油層と水層が分離するように成層させても、油滴が水層から離れた位置に取り残されず、爽やかな使用感のある化粧料のイメージが損なわれない。
【0014】
また、物理的な振とう攪拌により形成される油滴は、トリメチルシロキシケイ酸が所定量の配合割合で含まれていることにより、静置すると速やかに分散相から連続相になり、水層中に濁りとなって取り残されることがない。
【0015】
ガラス製やプラスチック製の化粧品の容器の壁面に対して、できるだけ付着し難い油滴が形成されるように、トリメチルシロキシケイ酸は、化粧料100質量%中に0.0015質量%以上3.5質量%未満配合される。トリメチルシロキシケイ酸は、添加効率よく配合できるので、0.0015質量%以上0.05質量%未満だけ含有されていることも好ましく、例えば0.0015~0.04質量%配合してもよい。
【0016】
また、このような配合割合になるようトリメチルシロキシケイ酸を、予め油相成分100質量%中に0.015質量以上35.0質量%未満、0.015質量%~18質量%、0.015以上0.5質量%未満または0.015質量%~0.4質量%含有させておき、このような油相成分を水相成分によって例えば2~20倍程度に希釈してもよい。
【0017】
このように油相成分と水相成分とを配合して調製される液状化粧料100質量%中には、前記水相成分が50~95質量%含まれていることが好ましく、前記油相成分は5~50質量%含まれることが好ましい。
【0018】
この発明に用いる油剤は、所定の油溶性界面張力調整剤と組み合わせて配合されることにより、多層型化粧料の容器内壁面に対して非付着性の油滴を形成できる。動粘度(常温、例えば25℃)が1~10cStである油剤として、ジメチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサンまたはカプリリルメチルポリシロキサン等を用いることができる。
【0019】
またこの発明に用いる油剤は、エステル油を任意成分として含むことを排除するものではなく、化粧料の感触の改良やエモリエント効果などを期待して少量を配合してもよい。ただし、この発明の効果を阻害しないように、さらには油層と水層の界面に泡立ちができるだけ生じないように、前記液状化粧料100質量%中に、エステル油は0~0.8質量%配合されることが好ましい。
【0020】
上記のように所定成分が配合された多層型化粧料は、油滴が容器の内壁面に付着せず、静置すると速やかに振とう前の透明性のある油層及び水層に復帰するという効果が得られ、この状態が化粧料容器の外観からも視認しやすいように、前記容器が透明性のある容器であることが好ましく、すなわち、この発明の効果が認められやすくするために、透明性または半透明性の容器に充填された透明性容器入り多層型化粧料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
この発明は、トリメチルシロキシケイ酸を含む所定の油溶性界面張力調整剤を所定量含み、しかも常温での動粘度が10cSt以下という比較的低い動粘度の油剤を併用して油相成分に配合しているので、化粧料の需要者が使用前に容器を振とうした際に、化粧料中の水相中に分散する油滴の界面張力が大きくなって、容器内壁面に対して付着し難くなり、しかも使用後の各層は、油滴が水中に分散する前の透明な水層と油層の成層状態に速やかに復帰できる利点がある。
また、この発明は、需要者が化粧料に求めるような爽やかな使用感の化粧料のイメージが損なわれない多層型化粧料になるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1および比較例1を比較して示す多層型化粧料の振とう直後の透明性容器の外観を示す斜視図
【
図2】実施例6および比較例2を比較して示す多層型化粧料の振とう後に静置した透明性容器の外観を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態の多層型化粧料は、油相成分中に、常温で動粘度が10cSt以下の油剤、及びトリメチルシロキシケイ酸を含む油溶性界面張力調整剤が含有されており、トリメチルシロキシケイ酸は液状化粧料100質量%中に0.0015質量%以上3.5質量%未満含有されているものであり、水相成分と油相成分を含んで静置状態で2層以上に成層し、振とうによって前記水相成分中に前記油相成分からなる油滴を分散可能な液状化粧料であって、これを透明性容器に充填して透明性容器入り多層型化粧料としたものである。
【0024】
この発明でいう「動粘度」は、例えば常温(15~25℃)での動粘度(cSt)で示される物性値であり、例えば25℃における動粘度をいう。なお、常温での動粘度が10cSt以下であれば、常温を超える測定温度での動粘度も参考にすることができ、例えば水添ポリイソブテンの37.8℃での動粘度が、1.4~3.1cStであれば、この発明に用いる油剤として好ましい。
【0025】
この発明に用いる油剤は、常温での動粘度が10cSt以下であれば、油滴のまとまりやすさが適切に得られ、油溶性界面張力調整剤の所期した作用効果も得られやすい。
【0026】
具体的な油種としては、化粧料に使用可能なシリコーン系油、炭化水素系油が好ましいものとして挙げられる。ただし、エステル系油は、トリメチルシロキシケイ酸との相性が悪く、混合すると粘性が高められて油層と液層の界面に泡立ちが生じやすくなるので好ましくない。
【0027】
使用可能なシリコーン系油の具体例としては、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、シクロペンタシロキサンまたはカプリリルメチルポリシロキサン、トリシロキサンが挙げられる。
【0028】
好ましい炭化水素系油の具体例としては、イソヘキサデカン、イソドデカン、水添ポリイソブテンが挙げられる。
【0029】
また前述のように、油層と水層の界面に泡立ちが生じないようにするために、任意成分であるエステル油をできるだけ含まない油剤であることが好ましく、例えばトリエチルヘキサノイン、イソノナン酸イソノニル、炭酸ジカプリリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルなどを配合することは、あまり好ましくない。そのため、化粧料の目的に応じて必要があれば配合されるエステル油は、化粧料100%中に0~0.8質量%配合されることが好ましい。
【0030】
また、炭化水素系油であっても常温(25℃)での動粘度10cStを超える炭素数15-19の直鎖状炭化水素油、同20cSt以上のジメチコン、同10.6cSt以上の水添ポリイソブテンなどは、この発明に好ましい成分ではない。
【0031】
この発明に用いられる油剤は、実施例に示されるように、化粧料100質量%中に4.994質量%以上(実施例22、油相成分:水相成分=5:95)、49.994質量%(実施例25、油相成分:水相成分=50:50)以下の割合で配合されることが好ましい。
【0032】
また、この発明に用いる油溶性界面張力調整剤は、上記した油剤に対する相溶性があって、さらに水中に分散する油滴の界面膜強度を高め、容器壁面と接触する油滴の接触角が充分大きくなり、ガラス製や合成樹脂製の容器内壁面に対する油滴の付着性が無くなるように所要量が配合される。
【0033】
このような油溶性界面張力調整剤は、化粧料100質量%中に、トリメチルシロキシケイ酸が0.0015質量%以上3.5質量%未満、好ましくは0.0015質量%以上0.05質量%未満または0.0015~0.04質量%含有するように配合される成分であり、その他にも、この発明の効果を阻害しないように周知の界面活性剤等を配合することができる。
【0034】
トリメチルシロキシケイ酸は、化学式がC3H10O4Si2、分子量166.28で安全性の高い周知の化粧品成分であり、一般的には日焼け止めクリームなどの化粧品中に、皮膚表面に保護皮膜を形成するための皮膜形成剤として、ジメチコンやシリコーン系の溶剤と共に用いられる成分でもあるが、この発明では、油剤の動粘度を適度に下げ、振とうで生じた油滴の界面張力を調整する作用があるものと推定し、油溶性界面張力調整剤として用いる。
【0035】
このような作用があることは、後述する実験結果からも明らかであり、同実験結果によると、所定の油溶性界面張力調整剤が配合された油滴は、粒径に関わりなく粒状にまとまりやすくなっており、その粒径は、ばらつきがなく均一になり、ガラス製や合成樹脂製の容器の内壁面に対する付着力は小さくなって、付着し難くなっている。
【0036】
トリメチルシロキシケイ酸の配合割合は、液状化粧料100質量%中に0.0015質量%以上3.5質量%未満含有される。このようにトリメチルシロキシケイ酸は、液状化粧料中に極めて微量が含まれていれば良い。
【0037】
また後述する実験結果では、トリメチルシロキシケイ酸は、極微量の0.0015質量%の配合量でもガラス製またはプラスチック製の滑らかな容器内壁面に油滴の付着は認められず、また静置された状態では、油層に濁りが殆ど認められない。
【0038】
しかしながら、3.5質量%以上にトリメチルシロキシケイ酸を配合すると、容器内壁面に油滴の付着は認められないものの、振とうによる攪拌を受けた後に静置した油層に濁りが認められ、化粧料の製品としての価値が外観によって損なわれるので、好ましくない。
【0039】
このような傾向から判断すると、より好ましいトリメチルシロキシケイ酸の配合割合は、液状化粧料100質量%中に0.0015質量%以上3.5質量%未満である。
【0040】
このような油剤及び油溶性界面張力調整剤として、トリメチルシロキシケイ酸を3.5質量%未満含有する油相成分は、油滴をO/W型に分散させるために、化粧料(100質量%)中に10質量%程度を目安にして所定範囲内の割合で配合することが好ましい。
【0041】
また、この発明の多層型化粧料は、例えば5~25質量%程度の油相成分を含み、75~95質量%程度の水または水相成分から構成されてもよく、さらにまた25~50質量%の油相成分を含み、50~75質量%の水または水相成分から構成されるものであってもよい。
【0042】
水性成分には、化粧料の保湿性改善またはその他の目的に応じて、以下のようなアルコール類、アミノ酸、糖質、炭水化物、食塩、ヒドロキシ酸またはその塩、化粧料用粉体、界面活性剤など種々の成分を、この発明の目的を阻害しないように配合できる。
【0043】
上記配合可能な成分として、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロパンジオール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、フェノキシエタノ―ル、エチルヘキシルグリセリン、エタノール、ベタイン、トレハロース、エリスリトール、キシリトール、イノシトール、スクロース、グルコース、マルチトール、ソルビトール、キサンタンガム、ヒアルロン酸Na、グアーガム、ジェランガム、ヒドロキシエチルセルロース、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸、乳酸、塩化ナトリウム、ココイルアルギニンエチルPCA、セトリモニウムブロミドなどが挙げられ、さらに粉体として、シリカ、ナイロン、カオリン、ベントナイト、結晶セルロースなど、界面活性剤としてヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル等も挙げられる。
【0044】
以上のような成分が配合された液状化粧料は、水相成分と油相成分を含んでおり、静置状態で前記成分がそれぞれ1層以上に成層し、また振とうによって、前記水相成分中に前記油相成分からなる油滴を分散することが可能である。
【0045】
化粧料を2層以上に成層させるには、調製する際に周知技術によって行なうことができ、例えば1層の油相成分と2層の水相成分からなる3層のメイクアップリムーバーとなるように、シリコーンオイルを含まない1層の油相成分と、界面活性剤のヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル及び三価アルコールであるグリセリンからそれぞれなる2層の水相成分の層で構成することができる。
【0046】
また、例えば2層の油相成分と1層の水相成分からなる3層の美容液となるように、シリコーンオイルを含まない1層の油相成分と、シリコーンオイルからなる他の1層の油相成分、水またはその他の周知成分からなる1層の水相成分の層などで多層を構成することもできる。
【0047】
また、上述した組成の液状化粧料を収容する容器は、特に素材や形態を限定したものではなく、通常の化粧料容器として汎用されるガラス製や、例えばポリプロピレン等の合成樹脂製の容器であり、収容した液体化粧料の成層状態が、室内や戸外で外部から視認できるように、透明または半透明の素材(表面がすりガラス等)で形成されたものであり、その内壁面については油滴の非付着性を敢えて阻害しないようにできるだけ滑らかな面に形成されたものが好ましい。
このような容器は、例えば容器の開口部から掌などに適量を注ぎ取りやすいように、周知のポンプアップ機構を備えたものであってもよく、また噴霧機能のない容器や周知の噴霧機構を備えた容器を採用することもできる。
【0048】
また、この発明の多層型化粧料は、皮膚に塗布して用いることができればよく、その用途や使用法については特に限定されない。例えば、非噴霧用の多層型化粧料とすることもでき、またメイクアップ保護性の有無は問わず、油剤の揮発性は必ずしも必要ではない。
【実施例0049】
[実施例1]
液状化粧料中の組成として、油剤として25℃での動粘度3cStのジメチルポリシロキサン(以下、ジメチコンと称します。)9.8質量%、油溶性界面張力調整剤としてトリメチルシロキシケイ酸を0.12質量%、前記トリメチルシロキシケイ酸の溶媒を兼ねる油剤として、25℃での動粘度6cStのジメチコン0.08質量%からなる油相成分とした。
【0050】
液状化粧料が上記油相成分量となるように、その10倍濃度の油相成分10質量部と精製水に保湿剤として塩化ナトリウム0.5質量%およびブチレングリコールを10質量%程度含ませた水相成分90質量部とを、200ml容量のポリプロピレン製の蓋つき透明容器に150ml注入して配合された多層型化粧料を10秒間、手で可及的に激しく振とうさせて水中に油相成分からなる油滴を分散させた。
振とう直後の上記透明容器の外観を写真撮影により記録し、これを模写した図面を
図1に示した。
【0051】
図1中の実施例1にも示されるように、実施例1の多層型化粧料は、油相成分からなる油層1と水相成分からなる水層2を収容した透明なプラスチック製の容器3の内壁面に対し、油滴4が振とうによって付着する現象が防止されていた。
【0052】
[比較例1]
油相成分として、油剤としての25℃での動粘度3cStのジメチコンを100質量%で用い、油溶性界面張力調整剤を配合しなかった油相成分を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして液状化粧料を調製し、振とう直後の上記透明性の容器3の外観を写真撮影により記録し、これを
図1に模写した図面として示した。
【0053】
図1中の比較例1に示されるように、比較例1の多層型化粧料は、油層1と水層2を収容した容器3の内壁面に油滴4が付着する現象が認められ、特に鎖線で囲まれる部分には比較的大きな油滴4が油層1から離れた位置に付着していた。
【0054】
[実施例2-12、比較例2]
液状化粧料中の組成として表1に示すように、油溶性界面張力調整剤(A成分)としてトリメチルシロキシケイ酸を実施例2-12では0.0015~3.45質量%、比較例2では3.6質量%配合した。それ以外の油剤(B成分)として、実施例2-12及び比較例2ではトリメチルシロキシケイ酸の溶媒を兼ねる油剤としての25℃での動粘度6cStのジメチコン0.0010~2.4質量%、それ以外の油剤としての25℃での動粘度5cStのジメチコン3.6~9.5975質量%及び25℃での動粘度10cSt以下の天然油性成分のエステル油である(カプリル酸/カプリン酸)ヤシ油アルキル0.4質量%からなる油相成分を用いた。
【0055】
液状化粧料が上記油相成分量となるように、その10倍濃度の油相成分10質量部と、精製水に保湿剤として塩化ナトリウム0.5質量%およびブチレングリコールを10質量%程度含ませた水相成分90質量部とを、200ml容量のポリプロピレン製の蓋つき透明容器に150ml注入し、10秒間、手で可及的に激しく振とうさせることにより水中に油相成分からなる油滴を分散させ、その後、5分間机上で静置した。
【0056】
静置後の上記透明容器の外観を写真撮影により記録し、代表例として実施例6及び比較例2を模写した図面として
図2に示し、表1中には各例の容器内壁面への油滴の付着の有無と、油層の濁りの有無を併記した。
【0057】
【0058】
表1及び
図2に示される結果からも明らかなように、実施例6を代表例とする実施例2-12の多層型化粧料は、これを収容した容器内側面に油滴が付着する現象が防止され、また実施例2-12では、油層1に濁り(懸濁物)が目視されなかった。
【0059】
これに対して、比較例2は、トリメチルシロキシケイ酸が3.6質量%含まれる油溶性界面張力調整剤を用いており、油層1には濁りが認められた。
【0060】
[実施例13-17、比較例3-5]
液状化粧料中の組成として表2に示すように、油溶性界面張力調整剤(A成分)としてトリメチルシロキシケイ酸を0.12質量%、油剤(B成分)として、25℃での動粘度6cStのジメチコン0.08質量%(トリメチルシロキシケイ酸の溶媒を兼ねる油剤)、環状シリコーンのシクロペンタンシロキサン、アルキル変性シリコーンのカプリリルメチコン、25℃での動粘度(cSt)が、1、3、10、20または100のジメチコンまたはエステル油であるトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル)を用いて、実施例13-17、比較例3-5の液状化粧料の油相成分を前記の実施例2-12と同様の手順で組成した。
【0061】
上記油相成分10質量部と、精製水に保湿剤として塩化ナトリウム0.5質量%およびブチレングリコールを10質量%程度含ませた水相成分90質量部からなる液状化粧料を、200ml容量のポリプロピレン製の蓋つき透明容器に150ml注入し、10秒間、手で可及的に激しく振とうさせて水相成分中に油相成分からなる油滴を分散させた後、5分間机上で静置した。
【0062】
静置後の上記透明容器の外観を写真撮影により記録すると共に表2中に各例の容器内壁面への油滴の付着の有無と、油層の濁りの有無を併記した。
【0063】
【0064】
表2に示される結果からも明らかなように、実施例13-17の多層型化粧料は、これを収容した容器内側面に油滴が付着する現象が防止され、しかも油層の濁りが視認されなかった。
【0065】
これに対して、比較例3、4は、常温で動粘度が20cSt以上の油剤を油相成分中に80質量%以上配合しているので、容器内側面に油滴が付着する現象が認められると共に、油層の濁りが認められた。
【0066】
また、油相成分の油剤として、エステル油を用いた比較例5は、トリメチルシロキシケイ酸との相性が悪く、振とうにより攪拌混合すると、油相成分の粘性が高められて油層と液層の界面に泡立ちが生じた。
【0067】
[実施例18-21、比較例6]
液状化粧料中の組成として表3に示すように、エステル油を配合した場合の例を示した。すなわち、油溶性界面張力調整剤(A成分)としてトリメチルシロキシケイ酸を1.2質量%、トリメチルシロキシケイ酸の溶媒を兼ねる油剤(B成分)として、25℃での動粘度6cStのジメチコン0.8質量%、それ以外の油剤としての25℃での動粘度5cStのジメチコン7~8質量%、及び25℃での動粘度10cSt以下の天然油性成分のエステル油である(カプリル酸/カプリン酸)ヤシ油アルキル0~1質量%からなる油相成分を用いて、実施例18-21、比較例6の液状化粧料の油相成分を前記の実施例2-12と同様の手順で組成した。
【0068】
上記油相成分10質量部と、精製水に保湿剤として塩化ナトリウム0.5質量%およびブチレングリコールを10質量%程度含ませた水相成分90質量部からなる液状化粧料を、200ml容量のポリプロピレン製の蓋つき透明容器に150ml注入し、10秒間、手で可及的に激しく振とうさせて水相成分中に油相成分からなる油滴を分散させた後、5分間机上で静置した。
【0069】
静置後の上記透明容器の外観を写真撮影により記録すると共に表3中に各例の容器内壁面への油滴の付着の有無と、油層の濁りの有無を併記した。
【0070】
【0071】
表3に示される結果からも明らかなように、実施例18-21の多層型化粧料は、エステル油を含有するが、その配合割合が0.8質量%以下と微量であったため、収容した容器内側面に油滴が付着する現象が防止され、しかも油層の濁りが視認されなかった。
【0072】
これに対して、比較例6は、エステル油が0.8質量%を超えて1質量%という配合割合であるため、収容した容器内側面に油滴が付着し、静置した後に油層の濁りが残るものであり、また油相成分の粘性が高められて油層と液層の界面に泡立ちが生じた。
【0073】
[実施例22-25]
液状化粧料中の組成として表4に示すように、油溶性界面張力調整剤(A成分)としてトリメチルシロキシケイ酸を0.006質量%、トリメチルシロキシケイ酸の溶媒を兼ねる油剤(B成分)として、25℃での動粘度6cStのジメチコン0.004質量%、それ以外の油剤としての25℃での動粘度5cStのジメチコン4.99~49.99質量%からなる油相成分を用い、実施例22-25の液状化粧料の油相成分を前記の実施例2-12と同様の手順で組成した。
【0074】
上記油相成分に、精製水に保湿剤として塩化ナトリウム0.5質量%およびブチレングリコールを10質量%程度含ませた水相成分を、全量が100質量%となるように水相成分と油相成分の割合を変えた液状化粧料を、200ml容量のポリプロピレン製の蓋つき透明容器に150ml注入し、10秒間、手で可及的に激しく振とうさせて水相成分中に油相成分からなる油滴を分散させた後、5分間机上で静置した。
【0075】
静置後の上記透明容器の外観を写真撮影により記録すると共に表4中に各例の容器内壁面への油滴の付着の有無と、油層の濁りの有無を併記した。
【0076】
【0077】
表4に示される結果からも明らかなように、実施例22-25の多層型化粧料は、水層成分量が50~95質量%の範囲で変化した場合でも所定量のトリメチルシロキシケイ酸が含有されているものであったため、収容した容器内側面に油滴が付着する現象が防止され、また静置した際に油層の濁りが視認されなかった。
【0078】
このようにしてトリメチルシロキシケイ酸を含む所定の油溶性界面張力調整剤を所定量含み、しかも比較的低い動粘度の油剤を併用した油相成分に水相成分を配合した多層型化粧料は、使用前に容器を振とうした際に水相成分中に分散する油相成分からなる油滴が容器内壁面に付着し難く、しかも使用後の各層は、透明な成層状態に速やかに復帰できることが確認された。