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特開2024-67721マクロファージの貪食能活性化剤及びこれを含む組成物
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  • 特開-マクロファージの貪食能活性化剤及びこれを含む組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067721
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】マクロファージの貪食能活性化剤及びこれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240510BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20240510BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240510BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61K36/752
A61P17/02
A61P3/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178015
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悠
(72)【発明者】
【氏名】梶原 篤史
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 知佳
(72)【発明者】
【氏名】三谷 信
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083EE12
4C088AB62
4C088BA08
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC22
(57)【要約】
【課題】本発明は、マクロファージの貪食能を活性化させる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus)に属する植物の精油を有効成分として含有する、マクロファージの貪食能活性化剤。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus)に属する植物の精油を有効成分として含有する、マクロファージの貪食能活性化剤。
【請求項2】
前記ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus)に属する植物の精油が、ベルガモット精油、オレンジ精油、及びユズ精油からなる群から選択される一以上である、請求項1に記載の貪食能活性化剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の貪食能活性化剤を含む、生体組織の老化及び/又は損傷の改善又は予防のための組成物。
【請求項4】
前記生体組織が皮膚組織である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の貪食能活性化剤を含む組成物であって、化粧料、医薬部外品、又は医薬品である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マクロファージの貪食能活性化剤及びこれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
白血球の一種であるマクロファージは、免疫機能の中心的役割を担っている細胞である。マクロファージは、外部から侵入してきた様々な異物に対して食作用(貪食能)を有することから、貪食細胞とも呼ばれる。マクロファージは、種々の組織や末梢血に存在し、組織マクロファージには、結合組織の組織球、肝臓のクッパー細胞、肺の肺マクロファージ、皮膚のランゲルハンス細胞、骨の破骨細胞等がある。よって、マクロファージは、体内の全ての場所に存在し、異物を処理する重要な免疫細胞であることから、近年、マクロファージの貪食能を活性化させることによって、感染症やがん等を治療する治療法が注目を集めている。
【0003】
ところで、ミカン科ミカン属植物から得られる精油はアロマテラピーに広く用いられており、例えば、ミカン科ミカン属植物であるベルガモットの精油の香りは、抗うつ作用、抗菌作用、鎮静作用、安眠作用等を有することが知られている。具体的には、ベルガモット精油の香りは、ストレスホルモンであるコルチゾールの濃度を低下させる効果を有し、心理ストレス軽減効果を有することが報告されている(非特許文献1)。
しかしながら、ミカン科ミカン属植物の精油が、マクロファージの貪食能を活性化させる作用を有することについては、知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】アロマテラピー学雑誌 20巻3号, 28-37 (2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、マクロファージの貪食能を活性化させる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus)に属する植物の精油が、マクロファージの貪食能を活性化させることを見出した。
【0007】
本発明は下記の態様を含む。
[1]ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus)に属する植物の精油を有効成分として含有する、マクロファージの貪食能活性化剤。
[2]前記ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus)に属する植物の精油が、ベルガモット精油、オレンジ精油、及びユズ精油からなる群から選択される1以上である、[1]に記載の貪食能活性化剤。
[3][1]又は[2]に記載の貪食能活性化剤を含む、生体組織の老化及び/又は損傷の改善又は予防のための組成物。
[4]前記生体組織が皮膚組織である、[3]に記載の組成物。
[5][1]又は[2]に記載の貪食能活性化剤を含む組成物であって、化粧料、医薬部外品、又は医薬品である、組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、マクロファージの貪食能を活性化させる技術を提供できるという効果を奏す
る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】蛍光ビーズを添加したヒト単球由来M1マクロファージの蛍光顕微鏡写真。
図2】蛍光ビーズを貪食したヒト単球由来M1マクロファージの割合を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0011】
本発明のマクロファージの貪食能活性化剤(以下、本発明の剤ともいう。)は、ミカン科(Rutaceae)ミカン属(Citrus)に属する植物の精油を有効成分として含有する。
ミカン科ミカン属に属する植物の精油は、特に限定されないが、ベルガモット(Citrus
x bergamia)精油、オレンジ(Citrus sinensis)精油、及びユズ(Citrus junos)精油からなる群から選択される一以上が好ましく、ベルガモット精油がより好ましい。なお、本発明における「精油」とは、植物から抽出された成分のうち、水に不溶又は難溶の油性成分を指す。
【0012】
抽出に用いる部位としては特に限定されず、例えば、花、茎、葉、枝、根、果実、果皮、蕾等が挙げられ、これらの中でも、果皮を用いることが好ましい。抽出に際しては、これらは生の状態でも乾燥状態でもよい。
【0013】
精油の抽出方法は特に限定されず、例えば圧搾法、水蒸気蒸留法、溶媒抽出法、油脂吸着法、超臨界流体抽出法等が挙げられ、好ましくは圧搾法が用いられる。また、市販されている精油を用いてもよい。
【0014】
本発明において、「マクロファージ」とは、白血球の一種である単球(単核白血球)から、各組織において様々な環境因子及び誘導因子の影響を受けて分化した細胞をいう。本発明において、「マクロファージ」には、種々の組織や末梢血に存在するマクロファージが含まれ、特に限定されないが、例えば、末梢血に存在するマクロファージが好ましい。すなわち、末梢血由来のマクロファージが好ましい。
【0015】
マクロファージは、その分化型により、M1型のマクロファージ(M1マクロファージ)及びM2型のマクロファージ(M2マクロファージ)に大別される。M1マクロファージは、古典的活性化マクロファージ、炎症性マクロファージとしても知られ、TNFα等の炎症性サイトカインを産生して免疫を亢進し、炎症を促進するマクロファージである。M2マクロファージは、創傷治癒マクロファージ、抗炎症性マクロファージとしても知られ、IL-10等の抗炎症性サイトカインを産生して免疫を抑制し、炎症を抑制するマクロファージである。
本発明においてマクロファージは、M1マクロファージであってもよく、M2マクロファージであってもよいが、M1マクロファージであることが好ましい。
【0016】
ミカン科ミカン属に属する植物の精油は、マクロファージの貪食能を活性化させる作用を有し、体内の不必要な物質を効率的に排除することができる。マクロファージの貪食能とは、マクロファージが、生体内の不必要な物質を取り込み、これらを分解する機能であり、食作用又はファゴサイトーシスとも呼ばれる。マクロファージが貪食する物質としては、ウイルス又は細菌等の病原体、がん細胞、加齢により組織や臓器に蓄積する老化細胞
、分化能や増殖能が低下した老化幹細胞、外部刺激(外傷や熱傷等)を受けた損傷細胞、死細胞、表皮から真皮に滴落したメラニン顆粒、老廃物(酸化悪玉コレステロール、認知症の原因となるアミロイドβ、メラニン)等が挙げられる。
よって、ミカン科ミカン属に属する植物の精油は、マクロファージの貪食能活性化剤の有効成分として用いることができるほか、美白剤や免疫増強剤の有効成分としても用いることができる。本発明の剤及び本発明の剤を含む組成物は、生体組織の老化及び/又は損傷の改善又は予防のために用いることもでき、生体組織は皮膚組織であることが好ましい。
【0017】
前記生体組織が皮膚組織である場合、本発明の剤は、真皮層に蓄積した真皮老化細胞、老廃物、外部刺激(外傷や熱傷等)等に起因する、皮膚組織の老化及び/又は損傷の改善又は予防のために使用することができる。また、本発明において、「改善」は「治療」を含む。
さらに、本発明の剤は、皮膚組織の老化及び/又は損傷により引き起こされる疾患等(本明細書では、疾患、症状、症候、障害を含む。)の改善又は予防のために使用することができる。ここで、皮膚組織の老化又は損傷により引き起こされる疾患等としては、限定はされないが、シワ、タルミ、ハリの低下、色素沈着(シミ)、くすみ、皮膚の肥厚、毛穴のひらき、ニキビ痕、皮膚萎縮症(線状皮膚萎縮症、日光弾性症、white fibrous papulosis of the neck、硬化性萎縮性苔癬等)、蕁麻疹、接触性皮膚炎(かぶれ)、アトピー性皮膚炎、表皮、真皮、及び/又は皮下組織における創傷(切創、裂創、刺傷、咬創、挫創、挫傷、擦過傷等)、褥瘡、熱傷、瘢痕、ケロイド等が挙げられ、薄毛や脱毛等の頭皮や毛髪の損傷も含まれる。これらの中でも、表皮、真皮、及び/又は皮下組織における創傷(切創、裂創、刺傷、咬創、挫創、挫傷、擦過傷等)、褥瘡、熱傷、瘢痕、ケロイドが好ましい。
また、前記生体組織が皮膚組織以外である場合、生体組織の老化又は損傷により引き起こされる疾患等としては、加齢に伴い蓄積される老化細胞の分泌物質による臓器や組織の破壊や機能低下に関連する様々な加齢性疾患(動脈硬化症、変形性関節症、白内障、加齢黄斑変性症等)、感染症(インフルエンザ、肺炎、結核)、アレルギー性疾患(花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支喘息等)、自己免疫性疾患(関節リウマチ、多発性筋炎、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎等)、がん、炎症性腸疾患、認知症(アルツハイマー型認知症等)、神経障害性疼痛、代謝異常及び低下等が挙げられる。
【0018】
本発明において、マクロファージの貪食能が活性化するとは、本発明のマクロファージの貪食能活性化剤を対象に適用した場合に、マクロファージの貪食能が示されることを含む。すなわち、本発明において、マクロファージの貪食能が活性化するとは、マクロファージの貪食能が誘導されること又は亢進することを含む。
【0019】
マクロファージの貪食能が活性化しているか否かは、公知のマクロファージの貪食能の測定方法により確認することができる。マクロファージの貪食能の測定方法としては、例えば、対象に本発明のマクロファージの貪食能活性化剤を経口投与、腹腔内投与、静脈内投与等により投与し、腹腔細胞等を回収し、接着法で回収したマクロファージに蛍光ビーズを添加して貪食させ、蛍光顕微鏡を用いた観察により、貪食したマクロファージの割合や貪食した蛍光ビーズの数を計測する方法が挙げられる。また、公知のマクロファージ細胞に本発明のマクロファージの貪食能活性化剤を添加し、培養液中で常法により培養し、細胞を回収し、回収した細胞に蛍光ビーズを添加して貪食させた後、蛍光顕微鏡を用いた細胞の観察により貪食したマクロファージの数を測定する方法が挙げられる。
【0020】
本発明の剤は、当該剤を原液で利用しても良いし、当該剤を任意の濃度に希釈して利用してもよい。また、本発明の剤は、製剤化に用いられる任意の成分と適宜組み合わせて配合することにより、外用剤又は経口剤の形態とすることができる。
本発明においては、マクロファージの貪食能活性化剤を含む外用剤又は経口剤の形態とすることが好ましく、外用剤の形態とすることがより好ましい。
【0021】
外用剤としては化粧料、医薬部外品、医薬品等が好適に例示でき、本発明の効果を損ねない限度において、通常使用される任意成分を含有することもできる。すなわち、本発明のマクロファージの貪食能活性化剤を含む組成物を、化粧料、医薬部外品、医薬品として用いることができる。
任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボカド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、2,4-ヘキサンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類フェノキシエタノール等の抗菌剤等が好ましく例示できる。
【0022】
経口剤としては、例えば、菓子やパン、麺等の一般食品、ドリンク製剤、カプセル剤や錠剤の形態をとる健康増進の目的を有する食品群(例えば、特定保健用食品等)、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤や、錠剤の形態をとる経口投与医薬品等が例示できる。
経口剤の形態とする場合においては、許容される任意成分を含有することができる。この様な任意成分としては、食品であれば、塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、酢等の調味成分、着色成分、フレーバー等の矯臭成分、増粘剤、乳化・分散剤、保存料、安定剤、各種ビタミン類等が好適に例示でき、健康増進の目的を有する食品群や医薬品であれば、結晶セルロース、乳糖等の賦形剤、アラビヤガムやヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、クロスカルメロースナトリウム、デンプン等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、矯味、矯臭剤、着色剤、各種ビタミン類等が好ましく例示できる。これらを常法に従って処理することにより、経口剤を製造することができる。
【0023】
外用剤におけるミカン科ミカン属に属する植物の精油の総含有量は、特に限定されないが、例えば、0.0001~5質量%、好ましくは0.001~1質量%とすることができる。
経口剤におけるミカン科ミカン属に属する植物の精油の総含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01~100質量%、好ましくは10~80質量%とすることができる。
また、外用剤又は経口剤において、ミカン科ミカン属に属する植物の精油を、1日あたり10~1000mgを1回又は数回に分けて適用する形態とすることができる。
【実施例0024】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
<実施例1>マクロファージの貪食能活性化作用の評価
ミカン科ミカン属に属する植物の精油によるマクロファージの貪食能活性化作用を、以下の手順で評価した。
ヒト単球由来M1マクロファージ(PromoCell社製、製品番号:C-12914)を、フィブロネクチンコートした24wellプレートに播種し(20×104cells/well)、M1マクロファージ分化培地(PromocCell社製、製品番号:C-28055)を用いて37℃、5%CO2環境下で24時間培養した。その後、2~3日毎に、培地を、新たなM1マクロファージ分化培地に交換し、37℃、5%CO2環境下で培養した。
その後、培地を、最終濃度0.01質量%のベルガモット精油を含むM1マクロファージ分化培地に交換した。なお、ベルガモット精油としては、ベルガモットの果皮を圧搾し、蒸留して得られた精油を用いた。また、陰性対照としては、ベルガモット精油を含まないM1マクロファージ分化培地に交換した。37℃、5%CO2環境下で24時間培養した後、培地を除去し、PBS(-)1000μL/wellで洗浄した。
【0026】
その後、直径1.0μmの蛍光ビーズ(Invitrogen(商標)、FluoSpheres(商標) Carboxylate-Modified Microspheres、ThermoFisher社製、製品番号:F8789)を含むM1マクロファージ分化培地を蛍光ビーズの最終濃度(質量%)が0.005%となるように添加し、37℃、5%CO2環境下で3時間培養した後、培地を除去し、PBS(-)1000 μL/wellで洗浄して培地中の蛍光ビーズを除去した。
その後、4%パラホルムアルデヒド溶液を500 μL/well添加することで細胞を固定し、蛍光顕微鏡を用いて、×10の倍率の対物レンズで細胞を観察した。また、視野範囲のうち任意の一定の面積(横355 μm×縦266 μm)における細胞の総数及び細胞内に蛍光ビーズ
を含む細胞の数を数えて、当該面積における細胞の総数に対する、蛍光ビーズを貪食した細胞の数の割合(%)を算出した。
【0027】
図1に示される結果の通り、ベルガモット精油を添加したマクロファージでは、貪食能が活性化されたことが認められた。
また、図2においても、陰性対照における蛍光ビーズを貪食したマクロファージの数の割合は25.8%であったのに対し、ベルガモット精油を添加した場合における蛍光ビーズを貪食したマクロファージの数の割合は49.5%であったことから、ベルガモット精油を添加したマクロファージでは、貪食能が活性化されたことが認められた。
図1
図2