(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067726
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
G01P 21/00 20060101AFI20240510BHJP
G01P 15/18 20130101ALI20240510BHJP
【FI】
G01P21/00
G01P15/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178027
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】平野 呈
(72)【発明者】
【氏名】中西 雷太
(72)【発明者】
【氏名】北浦 亮
(57)【要約】
【課題】軸方向の加速度を検出する加速度センサの車両への取り付け誤差の補正を、安価な構成により精度よく行うことができるようにする。
【解決手段】補正モード時に、車両を傾きが水平に管理された定盤上に載置した状態で、加速度センサによる上下方向(Z’軸方向)の加速度検出値に基づき、車両上下方向(Z軸方向)に対する取り付け誤差の補正値を導出し(ステップS1)、導出した取り付け誤差の補正値に基づき、加速度センサのZ’軸をZ軸に一致させた状態で、車両に対して水平方向の加速度を与え、加速度センサによる前後方向(X’軸方向)及び左右方向(Y’軸方向)の加速度検出値に基づき、車両前後方向(X軸方向)及び車両左右方向(Y軸方向)に対する加速度センサの取り付け誤差の補正値を導出し(ステップS2)、導出した取り付け誤差補正値に基づいて加速度センサのX’軸、Y’軸をX軸、Y軸に一致するように補正する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前後方向、左右方向及び上下方向の3軸方向の加速度を検出する加速度センサの前記3軸方向の車両前後方向、車両左右方向、車両上下方向それぞれに対する取り付け誤差を補正して前記車両の制御を行う車両用制御装置であって、
前記加速度センサによる前記3軸方向それぞれの加速度検出値を取得する取得部と、
前記補正モード時に、前記取得部により取得された前記加速度センサによる前記3軸方向の少なくとも2軸の加速度検出値に基づき、前記3軸方向の前記加速度センサの取り付け誤差を補正する補正値を導出する補正部とを備え、
前記取得部は、
前記車両を傾きが管理された定盤上に載置した状態で、前記加速度センサによる前記上下方向の加速度検出値を取得し、
前記車両に対し水平方向への加速度を与えたときの前記加速度センサの前記前後方向及び前記左右方向の少なくともいずれかの加速度検出値を取得し、
前記補正部は、
前記取得部により取得される前記加速度センサによる前記上下方向の加速度検出値に基づき、前記上下方向の車両上下方向に対する取り付け誤差の補正値を導出し、
前記取得部により取得される前記加速度センサによる前記前後方向及び前記左右方向の少なくともいずれかの加速度検出値に基づき、前記前後方向、前記左右方向の車両前後方向、車両左右方向それぞれに対する前記加速度センサの取り付け誤差の補正値を導出する
ことを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記補正部は、
前記取得部により取得される前記加速度センサによる前記前後方向及び前左右方向の加速度検出値であって、前記車両に対して水平方向への加速度が与えられる間のピーク値を保持し、保持した前記前後方向及び前記左右方向の加速度検出値のピーク値の比率から前記前後方向及び前記左右方向の前記加速度センサの取り付け誤差の補正値を導出する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載された加速度センサの3軸方向の検出軸の車両前後方向、車両左右方向、車両上下方向それぞれに対する取り付け誤差を補正して車両の制御を行う車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加速度センサの検出データに基づき車両の制御を行う装置として、ヘッドランプの光軸の傾き角度を制御するいわゆるオートレベリング制御装置や、車両の横滑り防止装置などの車両用制御装置がある。この種の装置では、車両前後方向(X軸方向)、車両左右方向(Y軸方向)及び車両上下方向(Z軸方向)の3軸方向の車両傾斜角度(車両姿勢角度)或いは加速度を検出可能な検出手段を車両に搭載し、この検出手段により検出される各軸方向の車両傾斜角度或いは加速度に基づき車両の姿勢角を検出することで、車両の制御が行われる。
【0003】
ところで、3軸方向の車両傾斜角度或いは加速度を検出する検出手段を車両に組み付ける場合に、検出手段のX,Y,Zの各検出軸それぞれが車両の前後、左右、上下の各方向に一致していれば問題はないが、作業者が検出手段の組み付け作業を行うことから検出手段の組み付け誤差が生じるため、従来、特許文献1に記載のように、組み付け誤差を補正することが行われている。
【0004】
この特許文献1では、検出手段は3軸方向の車両傾斜角度(車両傾斜角度)を検出する傾斜検出装置であり、このような傾斜検出装置を車両に設け、オートレベリング制御専用のECUElectronic Control Unit)により、車両が第1状態にあるときの傾斜検出装置の検出値、及び車両の傾斜角度が第1状態と異なる第2状態に車両があるときの傾斜検出装置の検出値から得られる補正情報を得て、補正後の傾斜検出装置の検出値に基づき、ヘッドランプの光軸の傾き角度の制御を行うようになっている。ここで、具体的に第1状態とは、車両が水平面におかれた状態であり、第2状態とは、第1状態にある車両の前部または後部に荷重をかけた状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した特許文献1に記載の補正手法は、補正時に車両に荷重をかける工程が必要になって補正作業の効率化の妨げになるとともに、荷重をかけることによって、傾斜検出装置の検出値が車両のサスペンションのばらつきやタイヤの空気圧のばらつきの影響を受け、その結果、車両ごとに傾斜検出装置の車両傾斜角度(車両傾斜角度)の検出値にばらつきが生じ、補正精度に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
本発明は、3軸方向の加速度を検出する加速度センサの車両への取り付け誤差の補正を、安価な構成により精度よく行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明の車両用制御装置は、両に搭載され、前後方向、左右方向及び上下方向の3軸方向の加速度を検出する加速度センサの前記3軸方向の車両前後方向、車両左右方向、車両上下方向それぞれに対する取り付け誤差を補正して前記車両の制御を行う車両用制御装置であって、前記加速度センサによる前記3軸方向それぞれの加速度検出値を取得する取得部と、前記補正モード時に、前記取得部により取得された前記加速度センサによる前記3軸方向の少なくとも2軸の加速度検出値に基づき、前記3軸方向の前記加速度センサの取り付け誤差を補正する補正値を導出する補正部とを備え、前記取得部は、前記車両を傾きが管理された定盤上に載置した状態で、前記加速度センサによる前記上下方向の加速度検出値を取得し、前記車両に対し水平方向への加速度を与えたときの前記加速度センサの前記前後方向及び前記左右方向の少なくともいずれかの加速度検出値を取得し、前記補正部は、前記取得部により取得される前記加速度センサによる前記上下方向の加速度検出値に基づき、前記上下方向の車両上下方向に対する取り付け誤差の補正値を導出し、前記取得部により取得される前記加速度センサによる前記前後方向及び前記左右方向の少なくともいずれかの加速度検出値に基づき、前記前後方向、前記左右方向の車両前後方向、車両左右方向それぞれに対する前記加速度センサの取り付け誤差の補正値を導出することを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、取得部により、車両を傾きが例えば水平などに管理された定盤上に載置した状態で、加速度センサによる上下方向の加速度検出値を取得し、車両に対し水平方向への加速度を与えたときの加速度センサの前後方向及び左右方向の少なくともいずれかの加速度検出値を取得し、補正部により、取得部により取得される加速度センサによる上下方向の加速度検出値に基づき、加速度センサの上下方向の車両上下方向に対する取り付け誤差の補正値を導出し、加速度センサの前後方向及び左右方向の少なくともいずれかの加速度検出値に基づき、加速度センサの前後方向、左右方向の車両前後方向、車両左右方向それぞれに対する加速度センサの取り付け誤差の補正値を導出する。
【0010】
そのため、車両傾斜角度(車両姿勢角度)の検出値ではなく、上下、前後、左右の3軸方向に検出軸を有する加速度センサの加速度検出値に基づく補正であることから、従来のように補正時に車両に荷重をかけることによるサスペンションやタイヤ空気圧等のばらつきに起因した車両傾斜角度(車両姿勢角度)の検出値のばらつきをなくすことができ、精度よく加速度センサの取り付け誤差を補正することができる。このとき、車両に既に搭載されている加速度センサを利用することができ、搭載済みの加速度センサを利用して車両制御を行う既存の制御装置の制御ソフトウェアを変更するだけで加速度センサの取り付け誤差の補正が可能になり、加速度センサの取り付け誤差の補正を行う専用の制御装置を必要とせずに加速度センサの取り付け誤差を補正できることから、コストの増加を抑制することができる。
【0011】
また、前記補正部は、前記取得部により取得される前記加速度センサによる前記前後方向及び前記左右方向の加速度検出値であって、前記車両に対して水平方向への加速度が与えられる間のピーク値を保持し、保持した前記前後方向及び前記左右方向の加速度検出値のピーク値の比率から前記前後方向及び前記左右方向の前記加速度センサの取り付け誤差の補正値を導出するようにしてもよい。
【0012】
このようにすると、例えば一定時間に取得した加速度検出値の平均をとる場合に、平均のとり方によっては明確な加速度検出値を取得することができないのに比し、ピーク値を保持することで、より明確な加速度検出値を取得することができ、加速度センサの取り付け誤差の補正精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、車両傾斜角度(車両姿勢角度)の検出値ではなく、3軸方向の検出軸を有する加速度センサの検出加速度に基づく補正であることから、従来のように補正時に車両に荷重をかけることによるサスペンションやタイヤ空気圧等のばらつきに起因した車両傾斜角度(車両姿勢角度)の検出値のばらつきをなくすことができ、、安価な構成により精度よく加速度センサの取り付け誤差を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の車両用制御装置の一実施形態が適用される車両の外観斜視図である。
【
図2】
図1における車両用制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る車両用制御装置をヘッドランプの光軸の傾き角度を制御(オートレベリング制御)に利用する場合の一実施形態について、
図1ないし
図5を参照して詳述する。
【0016】
図1に示す車両1に車両用制御装置2が搭載され、車両用制御装置2は、車両1の前部に配置されたエアバッグECU(Electronic Control Unit)3に内蔵された加速度センサの検出値を利用し、車両用制御装置オートレベリング制御を行うものであり、
図2に示すように構成される。なお、
図1中において、X,Y,Zの各軸は、それぞれ車両前後方向、車両左右方向及び車両上下方向を表わす。
【0017】
図2に示すように、オートレベリング制御に使用する車両用制御装置2は、上記した車両の乗員を保護するために運転席、助手席等に設けられた各種エアバッグの展開制御を司るエアバッグECU3、及び、左右のヘッドランプの光軸の傾き角度の制御(オートレベリング制御)を司るボデーECU4を備える。
【0018】
エアバッグECU3は、前後方向(X’軸方向)、左右方向(Y’軸方向)及び上下方向(Z’軸方向)の3軸方向の加速度を検出する加速度センサ3aと、マイクロプロセッサ、メモリを有するMCU(Micro Controller Unit)3bと、CAN(Controller Area Network)通信によりボデーECU4とデータの送受信を行う送受信部3cとを備える。加速度センサ3aによるX’,Y’,Z’軸方向の各加速度検出値は、MCU3bに取り込まれ、MCU3bにより取り込まれた各加速度検出値が、送受信部3cによるCAN通信によりボデーECU4に送信される。
【0019】
ボデーECU4は、エアバッグECU3の送受信部3cから送信される加速度検出値を受信する送受信部4aと、送受信部4aにより受信された加速度検出値を取得し、加速度センサ3aの検出軸であるX’,Y’,Z’軸の方向と、加速度センサ3aを車両1に取り付ける際の車両前後方向(X軸方向)、車両左右方向(Y軸方向)及び車両上下方向(Z軸方向)に対する取り付け誤差の補正用の補正値を導出してオートレベリングのための制御角を演算するMCU4bと、MCU4bにより演算された制御角に基づいて左、右ヘッドランプの光軸の傾きを変える左右のレベリングアクチュエータ5L,5Rを駆動するオートレベリング駆動部4cとを備える。
【0020】
ボデーECU4のMCU4bは、送受信部4aにより受信された加速度検出値を取得する取得部4b1と、加速度センサ3aの検出軸であるX’,Y’,Z’軸の方向と、加速度センサ3aの車両前後方向(X軸方向)、車両左右方向(Y軸方向)及び車両上下方向(Z軸方向)に対する取り付け誤差補正用の補正値を導出する補正部4b2と、補正部4b2により導出された補正値に基づき、左右のヘッドランプの光軸の傾き角度を演算により補正してオートレベリングのための制御角を演算する演算部4b3とを備える。
【0021】
ここで、取得部4b1は、上記しように送受信部4aにより受信された加速度検出値を取得するものであり、車両1を傾きが例えば水平(傾きがない)に管理された定盤上に載置した状態で、加速度センサ3aにより検出される上下方向(Z’軸方向)の加速度検出値を取得し、車両1に対し水平方向への加速度を与えたときの加速度センサ3aの前後方向(X’軸方向)及び左右方向(Y’軸方向)の加速度検出値を取得する。
【0022】
また、補正部4b2は、上記したように加速度センサ3aの検出軸であるX’,Y’,Z’軸の方向と、加速度センサ3aを車両1に取り付ける際の車両前後方向(X軸方向)、車両左右方向(Y軸方向)及び車両上下方向(Z軸方向)に対する取り付け誤差補正用の補正値を導出するものであり、補正モード時に、取得部4b1により取得される加速度センサ3aによる上下方向(Z’軸方向)の加速度検出値に基づき、車両上下方向(Z軸方向)に対する取り付け誤差の補正値を導出し、車両上下方向(Z軸方向)に対する取り付け誤差の補正値に基づいて、加速度センサ3aのZ’軸方向の検出軸を車両上下方向に補正(Z軸方向に一致)した状態で、車両1に対して水平方向の加速度与えることによって取得部4b1により取得される加速度センサ3aによる前後方向(X’軸方向)及び左右方向(Y’軸方向)の加速度検出値に基づき、車両前後方向(X軸方向)及び車両左右方向(Y軸方向)に対する加速度センサ3aの取り付け誤差の補正値を導出する。ここで、補正部4b2は、外部ツール(有線接続による装置、無線通信による装置)などからの補正開始信号による開始トリガを起点として補正モードに遷移する。そして、補正モードへの状態遷移後、取得部4b1が取得した加速度検出値を用いて補正値を導出する。
【0023】
具体的には、
図3(a)に示すように、車両1の車両上下方向、車両前後方向、車両左右方向がそれぞれZ,X,Y軸方向と表わされるときに、加速度センサ3aの3軸の検出軸が同図(a)中のZ’,X’,Y’軸で表わされるように加速度センサ3aが誤差をもって取り付けられている場合に、車両1を傾きが水平(傾きがない)に管理された定盤上に載置した状態での加速度センサ3aの上下方向(Z’軸方向)の加速度検出値は、Z軸とZ’軸とのずれがなければ重力加速度G(≒9.8m/s
2)となる。
【0024】
ところが、加速度センサ3aの取り付け誤差によりZ’軸がZ軸からずれていると、加速度センサ3aの上下方向(Z’軸方向)の加速度検出値は重力加速度G(≒9.8m/s2)よりも小さい値となることから、加速度センサ3aの上下方向(Z’軸方向)の加速度検出値が、重力加速度G(≒9.8m/s2)に最も近い値になるように、例えば公知のロドリゲス回転公式の演算によりZ軸周りにZ’軸を回転し、回転後のZ’軸方向の加速度検出値Gz’は、回転後のZ’軸とZ軸とが成す角度をαとして、
Gz’=G・cosα …(1)
の式で表わされるため、(1)式より、重力加速度GとZ’軸方向の加速度検出値Gz’との比率から角度αを導出することができる。
【0025】
そこで、上記したZ’軸のZ軸周りの回転角度、及び、回転後のZ’軸とZ軸とが成す角度αに基づき、Z軸に対するZ’軸の取り付け誤差補正値を得ることができ、このような導出処理が補正部4b2により行われて、加速度センサ3aの上下方向(Z’軸方向)の検出軸の車両上下方向(Z軸方向)に対する取り付け誤差補正値が導出される。なお、係る補正値によりZ’軸を補正することにより、
図3(b)に示すように、Z’軸がZ軸に一致した状態となる。
【0026】
次に、
図3(b)に示すように、Z’軸がZ軸に一致した状態でX’,Y’軸の補正を行うために、車両1の例えば上下に開閉するバックドア(電動式のバックドア、いわゆるパワーバックドアでもよい)を閉塞するなどにより、車両1に対して外部から水平方向の加速度を与えたときの加速度センサ3aによる前後方向(X’軸方向)及び左右方向(Y’軸方向)の加速度検出値を取得部4b1により取得する。このとき、取得部4b1が、加速度センサ3aによる前後方向(X’軸方向)及び左右方向(Y’軸方向)の加速度検出値を取得すると、取得した加速度検出値のピーク値を保持するようになっている。なお、バックドアの閉塞により外部から車両1に与える水平方向の加速度のうち車両前後方向であるX軸方向の加速度Gxがどれくらいの値であるかを実験等により予め求めておく。
【0027】
いま、Z’軸がZ軸に一致した状態であるので、X軸とX’軸、Y軸とY’軸にずれがない場合には、外部からのX軸方向の加速度Gxを与えたときの加速度センサ3aの加速度検出値のピーク値は、
図4(a)に示すようにX’軸成分のみとなり、その加速度検出値は、外部から与えたX軸方向の加速度Gxと同じ値となる。他方、X軸とX’軸、Y軸とY’軸がともにずれている場合には、バックドアの閉塞によりX軸方向の加速度Gxを与えたときの加速度センサ3aの加速度検出値のピーク値は、
図4(b)に示すようにX’軸成分Gx1及びY’軸成分Gy1の2つの成分になり、Gy1は与えた水平方向の加速度GxからX’軸成分Gx1を差し引いた値に等しくなり、しかもX軸とX’軸とが成す角度をθとすると、X’軸成分Gx1及びY’軸成分Gy1はそれぞれ、
Gx1=Gx・cosθ …(2)
Gy1=Gx・sinθ …(3)
で表わされる。
【0028】
そして、少なくともX’軸成分Gx1とX軸方向の加速度Gxとの比率から、(2)式によりX軸とX’軸との成す角度θを導出することができ、X軸とX’軸との成す角度θをゼロにするような車両前後方向(X軸方向)に対する加速度センサ3aのX’軸方向の取り付け誤差補正値が補正部4b2により導出される。ここで、Y’軸はX’軸に直交するため、X軸方向の取り付け誤差補正値を導出すれば、車両左右方向(Y軸方向)に対する加速度センサ3aのY’軸方向の取り付け誤差補正値も導出できる。こうして導出した取り付け誤差補正値に基づいてX’軸、Y’軸を補正することにより、
図3(c)に示すように、Z’,X’,Y’軸それぞれがZ,X,Y軸に一致する。
【0029】
なお、車両1に対し外部から与える水平方向の加速度として、例えば運転席ドアなどのヒンジドアの閉塞により車両左右方向(Y軸方向)への加速度を与え、加速度センサ3aによるY’軸成分とY軸方向の加速度との比率から、Y軸とY’軸との成す角度を導出して、Y軸とY’軸との成す角度をゼロにするような車両左右方向(Y軸方向)に対する加速度センサ3aのY’軸方向の取り付け誤差補正値を導出するようにしてもよい。
【0030】
このように、
図5のフローチャートに示すように、車両1を傾きが水平(傾きがない)に管理された定盤上に載置した状態で、補正モード時において、取得部4b1により取得される加速度センサ3aによる上下方向(Z’軸方向)の加速度検出値に基づき、加速度センサ3aのZ’軸方向の車両上下方向(Z軸方向)に対する取り付け誤差の補正値を導出し、導出した車両上下方向(Z軸方向)に対する取り付け誤差の補正値に基づき、加速度センサ3aの上下方向(Z’軸方向)が車両上下方向(Z軸方向)に一致するように補正した状態で(ステップS1)、車両1に対して水平方向の加速度与えることによって取得部4b1により取得される加速度センサ3aによる前後方向(X’軸方向)及び左右方向(Y’軸方向)の加速度検出値に基づき、車両前後方向(X軸方向)及び車両左右方向(Y軸方向)に対する加速度センサ3aの前後方向(X’軸方向)、左右方向(Y’軸方向)の取り付け誤差の補正値を導出し(ステップS2)、導出した取り付け誤差補正値に基づいて加速度センサ3aの前後方向(X’軸方向)、左右方向(Y’軸方向)を車両前後方向(X軸方向)、車両左右方向(Y軸方向)それぞれに一致するように補正する(ステップS3)。
【0031】
したがって、上記した実施形態によれば、車両傾斜角度(車両姿勢角度)の検出値に基づく補正ではなく、3軸方向に検出感度を有する加速度センサ3aの水平方向の加速度検出値に基づく補正であるため、従来のように補正時に車両に荷重をかけることによるサスペンションやタイヤ空気圧等のばらつきに起因した車両傾斜角度(車両姿勢角度)の検出値のばらつきをなくすことができ、安価な構成により精度よく加速度センサ3aの取り付け誤差を補正することができる。
【0032】
また、車両1に既に搭載されているエアバッグの展開制御用の加速度センサ3aを利用することができ、搭載済みの加速度センサ3aを利用してオートレベリング制御を行う装置の制御ソフトウェアを変更するだけで加速度センサ3aの取り付け誤差の補正が可能になり、加速度センサ3aの取り付け誤差の補正を行う専用の制御装置を必要とすることなく加速度センサ3aの取り付け誤差を補正できるため、コストの増加を抑制することができる。
【0033】
また、補正部4b2は、取得部4b1により取得される加速度センサ3aによる前後方向(X’軸方向)及び左右方向(Y’軸方向)の加速度検出値であって、車両1に対して水平方向への加速度が与えられる間のピーク値を保持するため、例えば一定時間に取得した加速度検出値の平均をとる場合に、平均のとり方によっては明確な加速度検出値を取得することができないのに比べ、ピーク値を保持することで、より明確な加速度検出値を取得することができて、加速度センサ3aの取り付け誤差の補正精度をより向上することができる。
【0034】
(変形例)
上記した実施形態の変形例として、
図6(a)に示すように、加速度センサ3aの3軸の検出軸であるZ’,X’,Y’軸それぞれと、車両上下方向(Z軸方向)、車両前後方向(X軸方向)、車両左右方向(Y軸方向)との間に取り付け誤差がある場合に、補正モードにおいて、車両1の例えばバックドアを閉塞するなどにより、車両1に対して外部から水平方向の加速度を与えたときの加速度センサ3aによる前後方向(X’軸方向)または左右方向(Y’軸方向)の加速度検出値に基づき、車両前後方向(X軸方向)、車両左右方向(Y軸方向)に対する加速度センサ3aの前後方向(X’軸方向)、左右方向(Y’軸方向)の取り付け誤差の補正値を導出し、
図6(b)に示すように、導出した取り付け誤差補正値に基づいて加速度センサ3aの前後方向(X’軸方向)、左右方向(Y’軸方向)を車両前後方向(X軸方向)、車両左右方向(Y軸方向)それぞれに一致するように補正した後、車両1を傾きが水平(傾きがない)に管理された定盤上に載置した状態での加速度センサ3aの上下方向(Z’軸方向)の加速度検出値を取得し、取得した上下方向(Z’軸方向)の加速度検出値に基づき、車両上下方向(Z軸方向)に対する加速度センサ3aの上下方向(Z’軸方向)の取り付け誤差の補正値を導出し、
図6(c)に示すように、加速度センサ3aの上下方向(Z’軸方向)を車両上下方向(Z軸方向)に一致させる補正を行うようにしてもよい。
【0035】
ここで、車両1に対して外部から水平方向であるX軸方向の加速度を外部から与えたときの加速度センサ3aによる前後方向(X’軸方向)加速度検出値に基づき、車両前後方向(X軸方向)、車両左右方向(Y軸方向)に対する加速度センサ3aの前後方向(X’軸方向)、左右方向(Y’軸方向)の取り付け誤差の補正値を導出する場合、上記した実施形態におけるZ’軸の補正と同様、加速度センサ3aの例えば前後方向(X’軸方向)の加速度検出値が、外部から与えられたX軸方向加速度に最も近い値になるように、例えば公知のロドリゲス回転公式の演算によりX軸周りにX’軸を回転し、回転後のX’軸とX軸とが成す角度を求めて、X’軸のX軸周りの回転角度、及び、回転後のX’軸とX軸とが成す角度に基づき、X軸に対するX’軸の取り付け誤差補正値を導出することができる。なお、Y’軸方向の補正値は、Y’軸がX’軸に直交することから、X’軸の取り付け誤差の補正値から容易に導出することができる。
【0036】
その後、X’軸方向、Y’軸方向の補正値に基づき、X’軸及びY’軸をそれぞれX軸、Y軸に一致させた後、車両1を傾きが水平(傾きがない)に管理された定盤上に載置した状態での加速度センサ3aの上下方向(Z’軸方向)の加速度検出値とZ軸方向の重力加速度G(≒9.8m/s2)との比率から、Z’軸とZ軸との成す角度を求めてZ軸に対するZ’軸の取り付け誤差補正値を導出することができる。
【0037】
そして、本変形例では、
図7のフローチャートに示すように、車両1に対して水平方向の加速度与えることによって取得部4b1により取得される加速度センサ3aによる前後方向(X’軸方向)及び左右方向(Y’軸方向)の加速度検出値を取得し(ステップS11)、補正モード時において、取得した加速度検出値に基づき、車両前後方向(X軸方向)、車両左右方向(Y軸方向)それぞれに対する加速度センサ3aの前後方向(X’軸方向)、左右方向(Y’軸方向)の取り付け誤差の補正値を導出し(ステップS12)、導出した取り付け誤差の補正値に基づき、加速度センサ3aの前後方向(X’軸方向)、左右方向(Y’軸方向)が車両前後方向(X軸方向)、車両左右方向(Y軸方向)それぞれに一致するように補正した後、車両1を傾きが水平(傾きがない)に管理された定盤上に載置し、取得部4b1により取得される加速度センサ3aによる上下方向(Z’軸方向)の加速度検出値に基づき、加速度センサ3aの上下方向(Z’軸方向)の取り付け誤差の補正値を導出し、導出した取り付け誤差の補正値に基づき、加速度センサ3aの上下方向(Z’軸方向)が車両上下方向(Z軸方向)に一致するように補正する(ステップS13)。
【0038】
この場合も、上記した実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0039】
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上記したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。
【0040】
例えば、上記した実施形態では、上下に開閉するバックドアを閉塞することにより、車両1に対して水平方向への加速度を与えるようにしたが、運転席や助手席、後部座席のヒンジドアの閉塞や、スライドドアの閉塞によって水平方向への加速度を与えるようにしてもよい。さらに、製造ラインにおけるベルトコンベアに車両1を載置し、ベルトコンベアの作動開始時、或いは停止時に生じる加速度、減速度が車両1に対して水平方向に生じることから、ベルトコンベアの作動開始時、或いは停止時の加速度、減速度の値を予め実験等により求めておき車両1に与えるようにしてもよい。また、ワイパを駆動、好ましくは最高速駆動したときの水平方向の加速度を車両1に与えるようにしてもよく、要するに車両の水平方向への加速度を与える手段はどのようなものでもよい。
【0041】
また、上記した実施形態では、車両1を傾きが水平に管理された定盤上に載置して加速度センサ3aのZ’軸方向の補正を行う場合について説明したが、この場合の定盤の傾きは必ずしも水平でなくてもよく、定盤の傾き角度が既知であって既知の傾きに管理されているものであればよい。
【0042】
また、上記した実施形態では、X’軸方向及びY’軸方向の補正値を導出する場合に、加速度センサ3aの前後方向(X’軸方向)または左右方向(Y’軸方向)の加速度検出値に基づいて導出する場合について説明したが、加速度センサ3aの前後方向(X’軸方向)及び左右方向(Y’軸方向)の両加速度検出値に基づいて導出するようにしてもよい。
【0043】
また、上記した実施形態では、エアバッグの展開制御に使用するためにエアバッグECU3に内蔵された3軸の検出軸を有する加速度センサ3aを利用する場合について説明したが、加速度センサはエアバッグの展開制御のものに限らず、また他の制御用に搭載された既存の加速度センサを利用してもよい。
【0044】
また、上記した実施形態では、3軸の検出軸を有する加速度センサ3aの加速度検出値を用いオートレベリング制御を行う場合について説明したが、横滑り防止制御など加速度センサの検出値に基づく制御を行うものに、本発明を適用することができる。
【0045】
そして、本発明は、車両に搭載され、前後方向、左右方向及び上下方向の3軸方向の加速度を検出する加速度センサの3軸方向それぞれに対する取り付け誤差を補正して車両の制御を行う車両用制御装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 …車両
2 …車両用制御装置
3a …加速度センサ
4b1 …取得部
4b2 …補正部