(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006774
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】搬送方法
(51)【国際特許分類】
B64D 1/10 20060101AFI20240110BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240110BHJP
B64D 1/22 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B64D1/10
B64C39/02
B64D1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107971
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】519015117
【氏名又は名称】株式会社SkyDrive
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】野村 敦
(57)【要約】
【課題】荷物の搬送を安定して行い得る搬送方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、飛行体による荷物の搬送方法が提供される。この搬送方法は、吊下部材を使用して飛行体と荷物とを接続し、飛行体に対する荷物の位置関係を調整した状態で、荷物を吊り下げて搬送する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体による荷物の搬送方法であって、
吊下部材を使用して前記飛行体と前記荷物とを接続し、前記飛行体に対する前記荷物の位置関係を調整した状態で、前記荷物を吊り下げて搬送する、搬送方法。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送方法において、
前記位置関係は、搬送時に前記飛行体の重心位置と前記荷物の重心位置とが鉛直方向において略一致した状態を維持し得る位置関係である、搬送方法。
【請求項3】
請求項1に記載の搬送方法において、
少なくとも3本の前記吊下部材を使用して、前記荷物を吊り下げたとき、前記吊下部材が互いに略平行となるように、前記飛行体と前記荷物とを接続する、搬送方法。
【請求項4】
請求項1に記載の搬送方法において、
前記飛行体及び前記荷物の少なくとも一方は、前記吊下部材の取付位置を変更可能な調整機構を有する、搬送方法。
【請求項5】
請求項1に記載の搬送方法において、
前記飛行体は、プロペラを有し、
前記荷物の吊下位置は、前記飛行体によるダウンウォッシュの影響を受ける位置である、搬送方法。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送方法において、
前記位置関係は、前記飛行体と前記荷物との総重量である離陸重量と前記プロペラの推力との関係を考慮して調整される、搬送方法。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送方法において、
前記位置関係は、さらに、前記吊下部材の長さ、前記飛行体の加速度、前記飛行体の実速度及び前記飛行体の傾き度のうちの少なくとも1つを考慮して調整される、搬送方法。
【請求項8】
請求項1に記載の搬送方法において、
1本の前記吊下部材を使用して、前記飛行体と前記荷物とを接続する、搬送方法。
【請求項9】
請求項8に記載の搬送方法において、
前記飛行体は、プロペラを有し、
前記荷物の吊下位置は、前記飛行体によるダウンウォッシュの影響を受けない位置である、搬送方法。
【請求項10】
請求項1に記載の搬送方法において、
前記飛行体は、無人飛行体である、搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マルチコプターのような飛行体を使用して荷物を運搬することが検討されている。
特許文献1には、資材を空中輸送するための飛行運搬システムが開示されている。この飛行運搬システムは、遠隔操縦可能なマルチコプターと、マルチコプターから吊下されて資材を吊持する吊材とを備えている。吊材の一端はマルチコプターに回動可能に取り付けられており、吊材の他端は資材に玉掛けされる。また、吊材の少なくとも一部に緩衝部材が介設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者の検討によれば、マルチコプターと資材との位置関係が適切でないと、搬送時(特に、加速時や減速時)に、マルチコプターのバランスが不安定になる場合がある。
本発明では上記事情に鑑み、荷物の搬送を安定して行い得る搬送方法を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、飛行体による荷物の搬送方法が提供される。この搬送方法は、吊下部材を使用して飛行体と荷物とを接続し、飛行体に対する荷物の位置関係を調整した状態で、荷物を吊り下げて搬送する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、飛行体と荷物との位置関係を適切に設定することにより、荷物の搬送を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】バッグを搬送する飛行体(安定した状態)の構成を表す概念図である。
【
図2】飛行体の下面図及び取り外された状態のバッグを示す斜視図である。
【
図3】飛行体が備えるマイコンのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】バッグを搬送する飛行体(安定しない状態)の構成を表す概念図である。
【
図5】バッグに取り付けられた位置決め機構の構成を示す斜視図である。
【
図6】バッグを搬送する飛行体(安定した状態)の他の構成を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0009】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバーからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0010】
また、本実施形態において「部」又は「手段」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、電圧・電流といった信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0011】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0012】
<第1実施形態>
まず、本発明の搬送方法で使用される飛行体の第1実施形態について説明する。
1.構造
本節では、第1実施形態の搬送方法に係る飛行体1の構造について説明する。
図1は、バッグを搬送する飛行体(安定した状態)の構成を表す概念図である。
図2は、飛行体の下面図及び取り外された状態のバッグを示す斜視図である。
【0013】
好ましくは、飛行体1は、無人飛行体である。より具体的には、飛行体1は、ドローンであり、これが物品を収納したバッグ(荷物)2を搬送する。換言すると、飛行体1は、4本の吊下部材3を使用してバッグ2を接続(固定)し、吊り下げた状態で搬送可能に構成されている。
以下、各構成要素について詳述する。
【0014】
1.1 バッグ2
図1及び
図2に示すように、バッグ2は、立方体状の箱体で構成され、飛行体1によって懸吊されて搬送される。搬送可能な物品の数量、質量、大きさ等の仕様は、飛行体1の用途、大きさ、バッテリ容量、動作環境温度、ホバリング精度等の仕様によって決定される。
飛行体1の質量が大きいと、搬送可能な物品の質量も大きくなる。
【0015】
ここで、飛行体1の質量に対する搬送可能な物品の総質量の比率、すなわち(物品の総質量/飛行体1の質量)は、好ましくは、0.5以下であり、より好ましくは、0.3以下であり、さらに好ましくは、0.1以下であるとよい。
バッグ2は、例えば、樹脂製のシート材の端部を融着(例えば、熱融着、超音波融着、高周波融着)することにより作製されている。なお、融着部は、補強を目的に、さらに縫い合わされてもよい。
なお、バッグ2に代えて、モッコを使用してもよい。
【0016】
1.2 飛行体1
図1に示すように、飛行体1は、機体11と、プロペラ12と、アーム13と、脚部14とを備えている。なお、図示の構成では、飛行体1についてプロペラタイプで説明するが、プロペラタイプに限られず、翼タイプなど他のタイプのドローン全てに適用可能である。
【0017】
<機体11>
機体11は、飛行体1の略中央部に位置し、略柱状で中空な構造を有する。機体11の内部には、不図示の電源ユニットと、後述のマイコン8(
図3参照)とが設けられる。マイコン8は、飛行体1の飛行に関する制御を司る。
また、第2実施形態のように、飛行体1がウィンチ5を有する場合、マイコン8は、ウィンチ5に関する制御も司ることが好ましい。
【0018】
機体11の形状は、円柱、又は三角柱、四角柱等の多角柱が好ましいが、飛行体1が安定的に飛行できるような形態であれば、特に限定されるものではない。
機体11の材質は、好ましくは、アルミニウム、マグルシウム合金等の金属であり、より好ましくは、プラスチック、炭素繊維強化プラスチック等の非鉄金属材料である。また、機体11の材質は、軽量で高い強度及び剛性を有するものが好ましい。
機体11の大きさは、飛行体1の飛行速度、搬送する荷物の数量、質量、大きさ、形状等の仕様によって適宜選択可能である。
【0019】
<プロペラ12>
プロペラ12は、不図示のモータからの動力を受け、回転可能に構成される。プロペラ12が回転することで飛行体1が揚力を得て、飛行することができる。
プロペラ12の数は、3つ以上であれば特に限定されるものではなく、図示の構成では4つである。また、各プロペラ12は、上下一対のブレード121を一組として構成されているが、1枚のブレード121のみで構成されていてもよい。
【0020】
プロペラ12は、すべて同一方向に回転可能であり、独立して回転することも可能である。後述するマイコン8の制御部83によって、不図示のモータの回転方向及び回転数が制御されることで、プロペラ12における回転方向及び回転数が制御されうる。これにより、飛行体1は、空中において上昇下降、前進後退又は旋回することができる。
【0021】
<アーム13>
アーム13は、その先端部(一端部)にプロペラ12を回転可能に支持するように構成され、その基端部(他端部)が機体11に直接接続されるように構成される。
なお、機体11とアーム13とは、一体的に成形されてよいし、各々別部材として構成され、互いに接続されてもよい。
【0022】
具体的には、アーム13の先端部には、不図示の軸受が取り付けられ、一端がプロペラ12のブレード121に嵌合された回転軸が当該軸受に対して回転可能に取り付けられている。
かかる回転軸の他端は、アーム13内にある不図示のモータ又は減速機の回転軸が、不図示の軸継手を介して連結される。
モータがダイレクトドライブモータであれば、モータの回転軸にプロペラ12のブレード121が直接嵌合されてもよい。
【0023】
好ましくは、アーム13の内部に伝送ケーブルが配線され、不図示のバッテリから電力が供給されるとよい。また、好ましくは、かかる伝送ケーブルを介して、後述のマイコン8から電気信号が伝送されるとよい。
これにより、アーム13の先端部に回転可能に保持されたプロペラ12が駆動制御されうる。
【0024】
<脚部14>
脚部14は、機体11の底面から下方に向かって突出して設けられている。
脚部14の数は、3つ以上であれば特に限定されるものではなく、図示の構成では4つである。なお、
図2では、脚部14が省略されている。
また、機体11の底面には、脚部14の取付位置の近傍に、バッグ2を接続する吊下部材3を取付可能な取付部111が設けられている。
取付部111は、例えば、フック等で構成することができる。
【0025】
1.3 吊下部材3
吊下部材3は、線状又は帯状の長尺部材で構成されている。
本実施形態では、吊下部材3の下端部(一端部)には、バッグ2に縫い付けられ、上端部には、例えば、フック(図示せず。)が設けられている。このフックが機体11の取付部111に取り付けられる。これにより、バッグ2が吊下部材3を介して飛行体1に接続される。
【0026】
吊下部材3の構成材料は、耐候性に優れる材料であることが好ましく、例えば、クロロスルホン化ポリエチレン等が挙げられる。
かかる材料で吊下部材3を構成する場合、その幅は15mm以上75mm以下であることが好ましく、その厚さは1mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0027】
2.電気的構成
本節では、飛行体1の電気的構成について説明する。
図3は、飛行体が備えるマイコンのハードウェア構成を示すブロック図である。
マイコン8は、飛行体1の動作を制御するように構成される。マイコン8は、通信部81と、記憶部82と、制御部83とを有し、これらの構成要素が通信バス80を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0028】
通信部81は、マイコン8から種々の電気信号を外部の構成要素に送信可能に構成される。また、通信部81は、受信機を備え、外部の構成要素(例えば、送信機等)からマイコン8への種々の電気信号を受信可能に構成される。さらに好ましくは、通信部81がネットワーク通信機能を有し、これによりインターネット等のネットワークを介して、飛行体1と外部機器との間で種々の情報を受信可能に構成される。
【0029】
記憶部82は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部83によって実行される飛行体1に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。記憶部82は、制御部83によって実行される飛行体1に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0030】
制御部83は、例えば不図示のESC(Electric Speed Controller)や中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部83は、記憶部82に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、飛行体1に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部82に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部83によって具体的に実現される。なお、制御部83は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部83を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0031】
3.搬送方法
本節では、飛行体1によるバッグ(荷物)2の搬送方法について説明する。
まず、機体11の取付部111に対応するサイズで吊下部材3が取り付けられたバッグ2を準備する。
次に、吊下部材3の各フックを、対応する取付部111に取り付ける。すなわち、吊下部材3を使用して飛行体1とバッグ2とを接続する。なお、吊下部材3の数は、図示の構成では4本であるが、3本でもよく、5本以上であってもよい。
そして、バッグ2に搬送すべき物品を収納する。
【0032】
続いて、バッグ2を目的地点まで搬送するために、飛行体1の操作者が送信機を操作して、飛行体1を離陸させる。これにより、飛行体1は、飛行体1に対するバッグ2の位置関係を調整した状態で、吊下部材3を介してバッグ2を吊り下げた状態で搬送する。
このとき、上述したように、バッグ2には、機体11の取付部111に対応するサイズで吊下部材3が取り付けられているので、バッグ2を吊り下げたとき、
図1に示すように、吊下部材3が互いに略平行となる。このため、搬送時に飛行体1の重心位置とバッグ2の重心位置とが鉛直方向において略一致した状態を維持し易くなる。このように、飛行体1とバッグ2との位置関係を適切に設定することにより、バッグ2の搬送を安定して行うことができる。
【0033】
本実施形態では、バッグ2の吊下位置が、飛行体1(プロペラ12)によるダウンウォッシュの影響を受ける位置とされている。
かかる状態では、
図4に示すように、吊下部材3が互いに略平行とならず、鉛直方向に対して傾斜する場合、バッグ2が大きく揺動することが、本発明者の検討により判明した。なお、
図4は、バッグを搬送する飛行体(安定しない状態)の構成を表す概念図である。
ここで、吊下部材3が互いに略平行とは、搬送時(水平飛行時)の飛行体1の側面視において、各吊下部材3の長手方向と鉛直方向とのなす角度(
図4中、θ)で説明すると、角度θが十分に小さいことを言う。吊下部材3が互いに略平行であると言う場合、角度θの具体的な値は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましく、1°以下であることがさらに好ましい。
【0034】
また、飛行体1に対するバッグ3の位置関係は、飛行体1とバッグ2(収納される物品を含む。)との総重量である離陸重量とプロペラ12の推力との関係を考慮して調整されることが好ましい。すなわち、離陸重量がプロペラ12の推力に対して大きくなる場合に、飛行体1に対するバッグ3の位置関係を調整することが好ましい。これにより、搬送時(特に、加速時や減速時)に、バッグ2が揺動して飛行体1のバランスが不安定になるのをより確実に防止することができる。
具体的には、離陸重量に対するプロペラ12の推力は、2未満であることが好ましく、1.8未満であることがより好ましく、1.6未満であることがさらに好ましい。
【0035】
さらに、上記位置関係は、さらに、吊下部材3の長さ、飛行体1の加速度、飛行体1の実速度及び飛行体1の傾き度のうちの少なくとも1つを考慮して調整されることが好ましく、少なくとも2つに基づいて調整されることがより好ましく、少なくとも3つに基づいて調整されることがさらに好ましく、4つに基づいて調整されることが特に好ましい。
なお、飛行体1とバッグ2とを吊下部材3により接続する作業の容易さも考慮して、バッグ2の吊下位置は、機体11とバッグ2との最小離間距離(すなわち、吊下部材3のバッグ2からの突出長さ)が150mm以下であることが好ましく、120mm以下であることがより好ましく、100mm以下であることがさらに好ましい。下限値は、20mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましく、40mm以上であることがさらに好ましい。
【0036】
バッグ2には、吊下部材3の取付位置を変更可能な調整機構4を設けるようにしてもよい。
図5は、バッグに取り付けられた位置決め機構の構成を示す斜視図である。
図5に示す位置決め機構4は、ガイドレール41と、ガイドレール41に案内されるアイボルト42と、アイボルト42に螺合されるナット43とを有している。
吊下部材3の下端部には貫通孔が形成されており、この貫通孔にアイボルト42を挿通し、アイボルト42にナット43を螺合する。これにより、吊下部材3がナット43とガイドレール41とにより挟持され、この状態で位置決めされる。
かかる位置決め機構4は、バッグ2に代えて、飛行体1に設けるようにしてもよく、飛行体1及びバッグ2の双方に設けるようにしてもよい。
【0037】
<第2実施形態>
次に、本発明の搬送方法で使用される飛行体の第2実施形態について説明する。
以下、第2実施形態の飛行体1及び搬送方法について説明するが、上記第1実施形態の飛行体1及び搬送方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図6は、バッグを搬送する飛行体(安定した状態)の他の構成を表す概念図である。
【0038】
図6に示す飛行体1は、ウィンチ5を備え、このウィンチ5に1本の吊下部材3(ワイヤ)が巻回されている。吊下部材3の下端部(ウィンチ5と反対側の端部)には、フック31が設けられている。すなわち、1本の吊下部材3を使用して、飛行体1とバッグ(荷物)2とが接続されている。
ウィンチ5は、回転により吊下部材3を巻き上げ又は巻き下げ可能に構成されている。なお、飛行体1の飛行(搬送)中には、原則的にはウィンチ5による吊下部材3の巻き上げ又は巻き下げが行われないため、好ましくは、巻き上げ又は巻き下げを引き起こす回転が規制されるとよい。
【0039】
これにより、飛行体1は、飛行体1に対するバッグ2の位置関係を調整した状態で、吊下部材3を介してバッグ2を吊り下げた状態で搬送する。特に、本実施形態では、バッグ2の吊下位置が、飛行体1(プロペラ12)によるダウンウォッシュの影響を受ない位置とされている。このため、搬送時に飛行体1の重心位置とバッグ2の重心位置とが鉛直方向において略一致した状態を維持し易くなる。このように、飛行体1とバッグ2との位置関係を適切に設定することにより、バッグ2の搬送を安定して行うことができる。
この場合、バッグ2の吊下位置(吊下部材3の巻き出し長さ)は、3m以上であることが好ましく、4m以上であることがより好ましく、5m程度であることがさらに好ましい。
【0040】
以上のような搬送方法によれば、飛行体と荷物との位置関係を適切に設定することにより、荷物の搬送を安定して行うことができる。
飛行安定性が向上することにより、飛行体のペイロードを増大することが可能となり、1度に搬送し得る荷物の量が多くなる。この場合、飛行体の飛行回数が減少し、操作者の負担も軽減する。
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0041】
(1)飛行体による荷物の搬送方法であって、吊下部材を使用して前記飛行体と前記荷物とを接続し、前記飛行体に対する前記荷物の位置関係を調整した状態で、前記荷物を吊り下げて搬送する、搬送方法。
【0042】
(2)上記(1)に記載の搬送方法において、前記位置関係は、搬送時に前記飛行体の重心位置と前記荷物の重心位置とが鉛直方向において略一致した状態を維持し得る位置関係である、搬送方法。
【0043】
(3)上記(1)又は(2)に記載の搬送方法において、少なくとも3本の前記吊下部材を使用して、前記荷物を吊り下げたとき、前記吊下部材が互いに略平行となるように、前記飛行体と前記荷物とを接続する、搬送方法。
【0044】
(4)上記(1)~(3)の何れか1つに記載の搬送方法において、前記飛行体及び前記荷物の少なくとも一方は、前記吊下部材の取付位置を変更可能な調整機構を有する、搬送方法。
【0045】
(5)上記(1)~(4)の何れか1つに記載の搬送方法において、前記飛行体は、プロペラを有し、前記荷物の吊下位置は、前記飛行体によるダウンウォッシュの影響を受ける位置である、搬送方法。
【0046】
(6)上記(5)に記載の搬送方法において、前記位置関係は、前記飛行体と前記荷物との総重量である離陸重量と前記プロペラの推力との関係を考慮して調整される、搬送方法。
【0047】
(7)上記(6)に記載の搬送方法において、前記位置関係は、さらに、前記吊下部材の長さ、前記飛行体の加速度、前記飛行体の実速度及び前記飛行体の傾き度のうちの少なくとも1つを考慮して調整される、搬送方法。
【0048】
(8)上記(1)又は(2)に記載の搬送方法において、1本の前記吊下部材を使用して、前記飛行体と前記荷物とを接続する、搬送方法。
【0049】
(9)上記(8)に記載の搬送方法において、前記飛行体は、プロペラを有し、前記荷物の吊下位置は、前記飛行体によるダウンウォッシュの影響を受けない位置である、搬送方法。
【0050】
(10)上記(1)~(9)の何れか1つに記載の搬送方法において、前記飛行体は、無人飛行体である、搬送方法。
もちろん、この限りではない。
【0051】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1 :飛行体
11 :機体
111 :取付部
12 :プロペラ
121 :ブレード
13 :アーム
14 :脚部
2 :バッグ
3 :吊下部材
31 :フック
4 :位置決め機構
41 :ガイドレール
42 :アイボルト
43 :ナット
5 :ウィンチ
8 :マイコン
80 :通信バス
81 :通信部
82 :記憶部
83 :制御部