(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067740
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】蛍光体粉末および発光装置
(51)【国際特許分類】
C09K 11/08 20060101AFI20240510BHJP
C09K 11/64 20060101ALI20240510BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20240510BHJP
【FI】
C09K11/08 G
C09K11/64
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178052
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小林 慶太
(72)【発明者】
【氏名】三谷 駿介
【テーマコード(参考)】
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CC02
4H001XA07
4H001XA08
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA20
4H001XA38
4H001YA63
5F142BA02
5F142CA02
5F142CF03
5F142DA12
5F142DA43
5F142DA44
5F142DA63
5F142DA72
5F142DA73
(57)【要約】
【課題】計量安定性に優れた蛍光体粉末を提供する。
【解決手段】本発明の蛍光体粉末は、蛍光体粒子と、無機微粒子と、を含む蛍光体粉末であって、底面限定注入法による安息角が53°以下を満たすものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体粒子と、無機微粒子と、を含む蛍光体粉末であって、
下記手順Aに基づいて測定される、当該蛍光体粉末の底面限定注入法による安息角が、53°以下である、蛍光体粉末。
(手順A)
直径φ33mmの底面を有する円柱台と、内径4φmmの先端口を有するチューブとを準備し、前記底面から40mmの高さに前記先端口が位置するように前記チューブを固定する。
測定試料として当該蛍光体粉末を前記チューブ内に供給し、前記先端口から前記底面の中心に向かって自由落下させ続け、測定試料が前記底面から定常的にこぼれ落ちる状態になるまで続ける。
その後、前記底面上に形成された円錐状の測定試料の堆積物の側面と前記底面とがなす仰角を求め、この仰角を、上記の底面限定注入法による安息角(°)とする。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光体粉末であって、
前記無機微粒子の含有量は、当該蛍光体粉末100質量%中、0.005質量%以上10質量%以下である、蛍光体粉末。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蛍光体粉末であって、
前記無機微粒子の平均粒子径が、10μm以下である、蛍光体粉末。
【請求項4】
請求項1または2に記載の蛍光体粉末であって、
前記無機微粒子の平均粒子径が、1μm以下である、蛍光体粉末。
【請求項5】
請求項1または2に記載の蛍光体粉末であって、
前記無機微粒子が、金属酸化物粒子および金属水酸化物粒子からなる群より選ばれる少なくとも一方を含む、蛍光体粉末。
【請求項6】
請求項1または2に記載の蛍光体粉末であって、
前記無機微粒子の一次粒子および/または前記一次粒子の凝集体が、前記蛍光体粒子の表面の一部に付着している、蛍光体粉末。
【請求項7】
請求項1または2に記載の蛍光体粉末であって、
前記安息角が、20°以上である、蛍光体粉末。
【請求項8】
請求項1または2に記載の蛍光体粉末であって、
下記手順Bに基づいて測定される、当該蛍光体粉末の固め嵩密度が、1.6g/cm3以下である、
る、蛍光体粉末。
(手順B)
乾いた一定容量の円筒形の測定用容器に補助円筒を装着し、補助円筒を通して測定用容器の内部内に測定試料として当該蛍光体粉末を導入する。補助円筒付きの測定用容器を、50~60回/分で、ストローク2cmの条件で上下方向に50回タッピングする。タッピング後、補助円筒を取外し、測定用容器の上面から過剰の測定試料をすり落とし、全体の質量を測定する。全体の質量から、予め測定しておいた空の円筒形容器の質量を差し引き、測定用容器内に充填された測定試料の質量を測定する。充填された測定試料の質量(g)を、測定用容器の内部体積(cm3)で除して、測定値を求める。3回の測定値の平均値を、上記の固め嵩密度(g/cm3)とする。
【請求項9】
請求項1または2に記載の蛍光体粉末であって、
前記蛍光体粒子が、β型サイアロン粒子、CASN蛍光体粒子、およびSCASN蛍光体粒子からなる群から選ばれる一または二以上を含む、蛍光体粉末。
【請求項10】
請求項1または2に記載の蛍光体粉末であって、
湿式によるレーザー回折散乱法で測定される体積頻度粒度分布において、小粒子径側から累積値が5%となる粒子径をD5、累積値が50%となる粒子径をD50、累積値が97%となる粒子径をD97としたとき、(D97-D5)/D50が、1.6以上5.0以下である、蛍光体粉末。
【請求項11】
請求項1または2に記載の蛍光体粉末であって、
湿式によるレーザー回折散乱法で測定される体積頻度粒度分布において、小粒子径側から累積値が50%となる粒子径をD50としたとき、
D50が、0.5μm以上30μm以下である、蛍光体粉末。
【請求項12】
発光光源と波長変換部材とを含む発光装置であって、
前記波長変換部材が、請求項1または2に記載の蛍光体粉末を含む、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体粉末および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
白色LEDは、半導体発光素子と蛍光体との組み合わせにより疑似白色光を発光するデバイスであり、その代表的な例として、青色LEDとYAG黄色蛍光体の組み合わせが知られている。しかし、液晶バックライトのような画像表示装置では色再現性が悪いという問題があった。そこで、黄色蛍光体の代わりに緑色蛍光体と赤色蛍光体を併用した白色LEDが開発された。緑色を発光する蛍光体として、β型サイアロン蛍光体が知られている。
この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が挙げられる。特許文献1の実施例には、(D90-D10)/D50で表される粒度分布が1.0~1.5となるβ型サイアロン蛍光体粉末が記載されている(特許文献1の表1等)。
【0003】
また、上記の青色LEDとYAG黄色蛍光体の組み合わせにおいて、この方式の白色LEDは、その色度座標値としては白色領域に入るものの、赤色発光成分が不足しているために、照明用途では演色性が低く、液晶バックライトのような画像表示装置では色再現性が悪いという問題がある。そこで、不足している赤色発光成分を補うために、YAG蛍光体とともに、赤色を発光する窒化物又は酸窒化物蛍光体を併用することが提案されている。赤色を発光する窒化物蛍光体として、CaAlSiN3(一般にCASNとも記載される)と同一の結晶構造を有する無機化合物を母体結晶として、これに例えばEu2+などの光学活性な元素で付活したものが知られている。さらに前記CaAlSiN3のCaの一部を、さらにSrで置換した(Sr,Ca)AlSiN3とも記される母体結晶(一般にSCASNとも記載される)に、Eu2+を付活した蛍光体(即ちEu付活のSCASN蛍光体)が得られることが記載されている。
【0004】
この種の技術として、例えば、特許文献2に記載の技術が挙げられる。特許文献2の実施例には、(D90-D10)/D50で表される粒度分布が1.0~1.4となるCASN/SCASN蛍光体粉末が記載されている(特許文献2の表1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/188631号
【特許文献2】国際公開第2019/188632号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1または2に記載の蛍光体粉末において、計量安定性の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はさらに検討したところ、蛍光体粉末について、無機微粒子を含ませた上で、底面限定注入法による安息角を所定値以下とすることにより、熱処理する際に容器に充填する際や製品をボトルに充填する際や乾式分級機やジェットミルなどに投入する際などのフィード量のバラツキを抑制でき、計量安定性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の一態様によれば、以下の蛍光体粉末および発光装置が提供される。
1. 蛍光体粒子と、無機微粒子と、を含む蛍光体粉末であって、
下記手順Aに基づいて測定される、当該蛍光体粉末の底面限定注入法による安息角が、53°以下である、蛍光体粉末。
(手順A)
直径φ33mmの底面を有する円柱台と、内径4φmmの先端口を有するチューブとを準備し、前記底面から40mmの高さに前記先端口が位置するように前記チューブを固定する。
測定試料として当該蛍光体粉末を前記チューブ内に供給し、前記先端口から前記底面の中心に向かって自由落下させ続け、測定試料が前記底面から定常的にこぼれ落ちる状態になるまで続ける。
その後、前記底面上に形成された円錐状の測定試料の堆積物の側面と前記底面とがなす仰角を求め、この仰角を、上記の底面限定注入法による安息角(°)とする。
2. 1.に記載の蛍光体粉末であって、
前記無機微粒子の含有量は、当該蛍光体粉末100質量%中、0.005質量%以上10質量%以下である、蛍光体粉末。
3. 1.または2.に記載の蛍光体粉末であって、
前記無機微粒子の平均粒子径が、10μm以下である、蛍光体粉末。
4. 1.~3のいずれかに記載の蛍光体粉末であって、
前記無機微粒子の平均粒子径が、1μm以下である、蛍光体粉末。
5. 1.~4のいずれかに記載の蛍光体粉末であって、
前記無機微粒子が、金属酸化物粒子および金属水酸化物粒子からなる群より選ばれる少なくとも一方を含む、蛍光体粉末。
6. 1.~5のいずれかに記載の蛍光体粉末であって、
前記無機微粒子の一次粒子および/または前記一次粒子の凝集体が、前記蛍光体粒子の表面の一部に付着している、蛍光体粉末。
7. 1.~6のいずれかに記載の蛍光体粉末であって、
前記安息角が、20°以上である、蛍光体粉末。
8. 1.~7のいずれかに記載の蛍光体粉末であって、
下記手順Bに基づいて測定される、当該蛍光体粉末の固め嵩密度が、1.6g/cm3以下である、
る、蛍光体粉末。
(手順B)
乾いた一定容量の円筒形の測定用容器に補助円筒を装着し、補助円筒を通して測定用容器の内部内に測定試料として当該蛍光体粉末を導入する。補助円筒付きの測定用容器を、50~60回/分で、ストローク2cmの条件で上下方向に50回タッピングする。タッピング後、補助円筒を取外し、測定用容器の上面から過剰の測定試料をすり落とし、全体の質量を測定する。全体の質量から、予め測定しておいた空の円筒形容器の質量を差し引き、測定用容器内に充填された測定試料の質量を測定する。充填された測定試料の質量(g)を、測定用容器の内部体積(cm3)で除して、測定値を求める。3回の測定値の平均値を、上記の固め嵩密度(g/cm3)とする。
9. 1.~8のいずれかに記載の蛍光体粉末であって、
前記蛍光体粒子が、β型サイアロン粒子、CASN蛍光体粒子、およびSCASN蛍光体粒子からなる群から選ばれる一または二以上を含む、蛍光体粉末。
10. 1.~9のいずれかに記載の蛍光体粉末であって、
湿式によるレーザー回折散乱法で測定される体積頻度粒度分布において、小粒子径側から累積値が5%となる粒子径をD5、累積値が50%となる粒子径をD50、累積値が97%となる粒子径をD97としたとき、(D97-D5)/D50が、1.6以上5.0以下である、蛍光体粉末。
11. 1.~10のいずれかに記載の蛍光体粉末であって、
湿式によるレーザー回折散乱法で測定される体積頻度粒度分布において、小粒子径側から累積値が50%となる粒子径をD50としたとき、
D50が、0.5μm以上30μm以下である、蛍光体粉末。
12. 発光光源と波長変換部材とを含む発光装置であって、
前記波長変換部材が、1.~11のいずれかに記載の蛍光体粉末を含む、発光装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、計量安定性に優れた蛍光体粉末、およびそれを用いた発光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】発光装置の構造の一例を模式的に示す断面図。
【
図2】底面限定注入法による安息角の測定方法を説明するための模式図である。
【
図3】フィード試験を説明するための模式図である。
【
図4】実施例1の蛍光体粉末の粒子表面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0012】
本実施形態の蛍光体粉末の概要を説明する。
本実施形態の蛍光体粉末は、蛍光体粒子と、無機微粒子と、を含む蛍光体粉末であり、下記手順Aに基づいて測定される、当該蛍光体粉末の底面限定注入法による安息角が53°以下を満たすように構成される。
【0013】
底面限定注入法による安息角を測定する手順Aは、以下の通り。
直径φ33mmの底面を有する円柱台と、内径4φmmの先端口を有するチューブとを準備し、底面から40mmの高さに先端口が位置するようにチューブを固定する。
測定試料として蛍光体粉末をチューブ内に供給し、チューブの先端口から円柱台の底面の中心に向かって自由落下させ続け、測定試料が底面から定常的にこぼれ落ちる状態になるまで続ける。
その後、円柱台の底面上に形成された円錐状の測定試料の堆積物の側面と円柱台の底面とがなす仰角(θ)を求め、この仰角を、上記の底面限定注入法による安息角(°)とする。
【0014】
本発明者の知見によれば、蛍光体粒子および無機微粒子を含む蛍光体粉末において、フィード試験(振動搬送時)における搬送量・搬送速度のバラツキを安定的に評価する指標として、底面限定注入法による安息角が必要であることが判明した。底面限定注入法では、測定試料を堆積させる底面の面積を限定する条件の点で、通常の注入法と相違するが、堆積物の円錐形状を安定的に形成できるため、繰り返し測定したときの安息角の計測値バラツキを抑制するため好ましい。底面限定注入法以外の注入法では若干凝集した凝集粉などが存在した場合、堆積物の傾斜を凝集物などの粉が転がることで堆積物のすそが局所的に伸長し、堆積物のすそが等方的に広がらず、堆積物が円錐形状にならない可能性が高いが、底面限定法では左記のような凝集物などは除外されるため、円錐形状が形成されやすく、より正確な測定が可能となる。
【0015】
本実施形態の蛍光体粉末を用いることにより、フィーダー等による搬送量のバラツキを抑制できる。つまり、同じ搬送条件で搬送しても蛍光体粉末の計量値が毎回変動してしまうことを抑制できる。これにより、容器詰め時の充填量の精度が上がり、乾式分級やジェットミル粉砕時のフィード量の精度が上がり、分級効率や粉砕効率のバラツキが抑制でき、精度が向上する。さらに、配管内やホッパーへの付着が低減し、ブリッジなどが抑制され、搬送が容易となる。
【0016】
本実施形態の蛍光体粒子は、賦活物質が賦活された蛍光体の粒子であれば特に限定されないが、例えば、LED分野で使用されるものを使用してもよく、具体的には、β型サイアロン粒子、CASN蛍光体粒子、およびSCASN蛍光体粒子からなる群から選ばれる一または二以上を含んでもよい。
【0017】
本実施形態では、蛍光体粒子がβ型サイアロン粒子を含む場合、蛍光体粉末の底面限定注入法による安息角の上限は、53°以下、好ましくは52°以下である。これにより、計量安定性を向上できる。
また、蛍光体粒子がβ型サイアロン粒子を含む場合、上記底面限定注入法による安息角の下限は、例えば、20°以上、好ましくは25°以上、より好ましくは30°以上、さらに好ましくは35°以上である。これにより、流動性が高すぎることで漏洩や流出する可能性が低減する。
【0018】
本実施形態では、蛍光体粒子がCASN蛍光体粒子またはSCASN蛍光体粒子のいずれかを含む場合、蛍光体粉末の底面限定注入法による安息角の上限は、53°以下、好ましくは52°以下である。これにより、計量安定性を向上できる。
また、蛍光体粒子がCASN蛍光体粒子またはSCASN蛍光体粒子のいずれかを含む場合、上記底面限定注入法による安息角の下限は、例えば、20°以上、好ましくは30°以上、より好ましくは40°以上、さらに好ましくは45°以上である。これにより、流動性が高すぎることで漏洩や流出する可能性が低減する。
【0019】
別の態様では、蛍光体粉末において、湿式によるレーザー回折散乱法により体積頻度粒度分布を測定したとき、小粒子径側から累積値が5%となる粒子径をD5、累積値が50%となる粒子径をD50、累積値が97%となる粒子径をD97とする。
別の形態として、蛍光体粉末は、(D97-D5)/D50が、例えば、1.6以上5.0以下を満たすように構成されてもよい。
また、蛍光体粉末は、D50が、1μm以上30μm以下を満たすように構成されてもよい。
【0020】
蛍光体粒子がβ型サイアロン粒子を含む場合、(D97-D5)/D50の下限は、例えば、1.6以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.1以上である。これにより、比表面積が小さく、散乱や反射が小さい大粒径の粒子が多く、LED化した際に輝度が向上できる。
また、蛍光体粒子がβ型サイアロン粒子を含む場合、(D97-D5)/D50の上限は、例えば、5.0以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下である。これにより、比表面積が大きく、散乱や反射が多くなる微粉が少なく、LED化した際に輝度が向上できる。また、粗粉が少なく、LED化する際に計量ばらつきが低減する。
【0021】
蛍光体粒子がCASN蛍光体粒子またはSCASN蛍光体粒子のいずれかを含む場合、(D97-D5)/D50の下限は、例えば、1.6以上、好ましくは1.8以上、より好ましくは2.0以上である。これにより、比表面積が小さく、散乱や反射が小さい大粒径の粒子が多く、LED化した際に輝度が向上できる
また、蛍光体粒子がCASN蛍光体粒子またはSCASN蛍光体粒子のいずれかを含む場合、(D97-D5)/D50の上限は、例えば、5.0以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下である。これにより、また、粗粉が少なく、LED化する際に計量ばらつきが低減する。
【0022】
蛍光体粒子がβ型サイアロン粒子を含む場合、D50の下限は、例えば、0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上である。これにより、比表面積の上昇を抑制し、散乱・反射が抑制され、蛍光特性が改善する。
また、蛍光体粒子がβ型サイアロン粒子を含む場合、D50の上限は、例えば、30μm以下、好ましくは28μm以下、より好ましくは24μm以下である。これにより、LED化やシート化、パターン化する際に蛍光体の分散状態のばらつきが低減し、蛍光特性にバラツキの少ないLEDやむらの少ないシートやパターンを形成することが可能となる。
【0023】
蛍光体粒子がCASN蛍光体粒子またはSCASN蛍光体粒子のいずれかを含む場合、D50の下限は、例えば、0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上である。これにより、比表面積の上昇を抑制し、散乱・反射が抑制され、蛍光特性が改善する。
また、蛍光体粒子がCASN蛍光体粒子またはSCASN蛍光体粒子のいずれかを含む場合、D50の上限は、例えば、30μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下である。これにより、これにより、LED化やシート化、パターン化する際に蛍光体の分散状態のばらつきが低減し、蛍光特性にバラツキの少ないLEDやむらの少ないシートやパターンを形成することが可能となる。
【0024】
別の形態では、以下の手順Bにより測定される、蛍光体粉末の固め嵩密度は、例えば、1.6g/cm3以下である。
【0025】
固め嵩密度を測定する手順Bは、以下の通り。
乾いた一定容量の円筒形の測定用容器に補助円筒を装着し、補助円筒を通して測定用容器の内部内に測定試料として当該蛍光体粉末を導入する。補助円筒付きの測定用容器を、50~60回/分で、ストローク2cmの条件で上下方向に50回タッピングする。タッピング後、補助円筒を取外し、測定用容器の上面から過剰の測定試料をすり落とし、全体の質量を測定する。全体の質量から、予め測定しておいた空の円筒形容器の質量を差し引き、測定用容器内に充填された測定試料の質量を測定する。充填された測定試料の質量(g)を、測定用容器の内部体積(cm3)で除して、測定値を求める。3回の測定値の平均値を、上記の固め嵩密度(g/cm3)とする。
【0026】
蛍光体粒子がβ型サイアロン粒子を含む場合、上記固め嵩密度の上限は、例えば、1.6g/cm3以下、好ましくは1.1g/cm3以下、より好ましくは1.0g/cm3以下である。フィード時に時間あたりにフィードする体積が一定の場合、嵩密度が高すぎる(質量あたりの体積が低すぎる)時、フィード量が重量として増加し、フィード速度のバラツキが大きくなる懸念があるが、左記の条件では時間あたりの重量としてのフィード量が多くなることを抑制し、比較的精密なフィードを行うことが可能となる。
また、蛍光体粒子がβ型サイアロン粒子を含む場合、上記固め嵩密度の下限は、例えば、0.3g/cm3以上、好ましくは0.5g/cm3以上、より好ましくは0.6g/cm3以上である。これにより、嵩密度が低すぎないこと(質量あたりの体積が高過ぎないこと)で、LED作成時に樹脂中に分散させる場合に効率的に樹脂への分散が可能となる。
【0027】
蛍光体粒子がCASN蛍光体粒子またはSCASN蛍光体粒子のいずれかを含む場合、上記固め嵩密度の上限は、例えば、1.6g/cm3以下、好ましくは1.4g/cm3以下、より好ましくは1.3g/cm3以下である。フィード時に時間あたりにフィードする体積が一定の場合、嵩密度が高すぎる(質量あたりの体積が低すぎる)時、フィード量が重量として増加し、フィード速度のバラツキが大きくなる懸念があるが、左記の条件では時間あたりの重量としてのフィード量が多くなることを抑制し、比較的精密なフィードを行うことが可能となる。
また、蛍光体粒子がCASN蛍光体粒子またはSCASN蛍光体粒子のいずれかを含む場合、上記固め嵩密度の下限は、例えば、0.3g/cm3以上、好ましくは0.4g/cm3以上、より好ましくは0.5g/cm3以上である。これにより、嵩密度が低すぎないこと(質量あたりの体積が高過ぎないこと)で、LED作成時に樹脂中に分散させる場合に効率的に樹脂への分散が可能となる。
【0028】
本実施形態では、たとえば蛍光体粉末中に含まれる各成分の種類や配合量、蛍光体粉末の調製方法等を適切に選択することにより、上記底面限定注入法による安息角、固め嵩密度および粒度分布を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、蛍光体粒子に適切な分級・解砕・粉砕処理を施すこと、必要なら蛍光体粒子に所定量の無機微粒子を添加すること、その場合、蛍光体粉末(蛍光体粒子)の固め嵩密度/蛍光体粉末(蛍光体粒子+無機微粒子)の固め嵩密度で表される固め嵩密度比が0.5~1.6程度になるように調整すること等が、上記底面限定注入法による安息角、固め嵩密度および粒度分布を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0029】
以下、本実施形態の蛍光体粉末の各構成を詳述する。
【0030】
本実施形態の蛍光体粉末の一例は、β型サイアロン粒子、CASN蛍光体粒子、およびSCASN蛍光体粒子からなる群から選ばれる一または二以上を含む蛍光体粒子と、必要なら無機微粒子と、含む。
【0031】
<β型サイアロン蛍光体粒子>
β型サイアロン蛍光体粒子は、賦活物質(例えばEu)が賦活されたβ型サイアロン蛍光体からなる粒子である。
Euが賦活されたβ型サイアロン蛍光体は、以下の一般式で表される組成を有してもよい。
一般式は、Si6-zAlzOzN8-z:Eu(z>0)で表される。
上記一般式中、zは0超であればよいが、通常、zは4.2以下である。ユウロピウムの含有量は、0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。
【0032】
β型サイアロン蛍光体粉末は、後述の原料混合工程とおよび焼成工程により製造される。
必要なら、アニール工程や酸処理工程を実施してもよい。
【0033】
(原料混合工程)
原料混合工程においては、少なくとも、ケイ素化合物と、アルミニウム化合物と、ユウロピウム化合物とを混合して、原料混合粉末を得る。混合には、各種の混合機(例えばV型混合機)、乳鉢などを用いることができる。
【0034】
原料のユウロピウム化合物は、特に限定されない。例えば、ユウロピウムを含む酸化物、ユウロピウムを含む水酸化物、ユウロピウムを含む窒化物、ユウロピウムを含む酸窒化物、ユウロピウムを含むハロゲン化物等を挙げることができる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、酸化ユウロピウム、窒化ユウロピウムおよびフッ化ユウロピウムをそれぞれ単独で用いることが好ましく、酸化ユウロピウムを単独で用いることがより好ましい。ユウロピウム化合物は、β型サイアロンにおける発光中心を形成するための材料である。
【0035】
原料のケイ素化合物は、典型的には窒化ケイ素を含み、原料のアルミニウム化合物は、典型的には窒化アルミニウムを含む。窒化ケイ素および窒化アルミニウムはβ型サイアロンの骨格を形成するための材料である。
【0036】
原料混合粉末は、酸化アルミニウムおよび/または酸化ケイ素をさらに含有してもよい。酸化アルミニウムおよび/または酸化ケイ素は、β型サイアロンの骨格を形成するための材料である。
原料混合粉末は、β型サイアロンをさらに含有してもよい。β型サイアロンは、骨材または核となる材料である。
【0037】
原料混合粉末に含まれる各成分の形態は、粉末状であることが好ましい。
また、調製した原料混合粉末が凝集物を含む場合は、ふるい分けなどにより凝集物を除くことが好ましい。
【0038】
各原料の混合比率は、ターゲットとするβ型サイアロン蛍光体の組成を踏まえて適宜調整すればよい。
本実施形態においては、原料混合粉末中の各元素のモル比を適切に調整することにより、最終的に得られるβ型サイアロン蛍光体粉末の発光強度を一層高めることができる。
【0039】
(焼成工程)
焼成工程においては、原料混合工程で得られた原料混合粉末を、1800℃以上2100℃以下、好ましくは1850℃以上2050℃以下で加熱して焼成物を得る。
原料混合粉末は、通常、焼成中に原料混合粉末と反応しない材質(例えば、窒化ホウ素)からなる容器に充填されたうえで、加熱される。
【0040】
焼成工程は、通常、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で行われる。不活性ガスとしてはアルゴンなどの希ガスを用いてもよい。
焼成工程は、好ましくは絶対圧が0.01MPa以上10MPa以下の不活性ガス雰囲気中で、より好ましくは絶対圧が0.05MPa以上5MPa以下の不活性ガス雰囲気中、さらに好ましくは絶対圧が0.08MPa以上1MPa以下の不活性ガス雰囲気中で行われる。焼成工程における絶対圧が適度に大きいことにより、焼成反応が進行しやすい。また、焼成工程における絶対圧が大きすぎないことにより、蛍光体内に意図せぬ欠陥が発生することが抑えられると考えられる。
【0041】
焼成工程は、好ましくは第一焼成工程および第二焼成工程を含む。そして、第一焼成工程と第二焼成工程との間には、好ましくは解砕工程が行われる。このような焼成方法は、焼成における過度な塊状化を抑制し、均質に焼成反応を進める観点で好ましい。
【0042】
第一焼成工程と第二焼成工程との間の解砕工程は、例えば、超音速ジェット粉砕器を用いて行うことができる。解砕によっても十分に小さくならなかった焼成物は、例えばふるい分けにより除去してもよい。ふるいを用いる場合、ふるいの目開きは典型的には100μm以下、より好ましくは50μm以下である。
【0043】
焼成工程の時間(第一焼成工程および第二焼成工程を行う場合は、これらの合計時間)は、好ましくは2時間以上60時間以下、より好ましくは10時間以上40時間以下である。
第一焼成工程および第二焼成工程を行う場合、第一焼成工程および第二焼成工程の時間は、それぞれ、好ましくは1時間以上30時間以下、より好ましくは5時間以上20時間以下である。
【0044】
焼成工程で得られた焼成物は、アニール工程の前に、解砕処理されることが好ましい。解砕処理により焼成物の表面積が大きくなり、混合ガスの接触面積が増えて、アニール工程による性能向上が一層見込めると考えられる。この解砕処理も、第一焼成工程と第二焼成工程との間の解砕工程と同様、例えば、超音速ジェット粉砕器を用いて行うことができる。
【0045】
アニール工程中の雰囲気温度は、例えば1100℃以上1800℃以下、好ましくは1300℃以上1750℃以下である。アニール温度を上記下限値以上とすることで、発光強度を向上できる。アニール温度を上記上限値以下とすることで、結晶性の改善効果が得られ、発光ピーク強度が低下することを抑制できる。
【0046】
アニール工程中の雰囲気ガスは、アルゴンガスなどの周期律表第18属元素の希ガスや窒素ガス等の不活性ガス、水素ガス、または水素ガス及びアルゴンガスの混合ガスのいずれかより選択される。
【0047】
アニール工程での特性向上効果は、減圧から加圧の幅広い雰囲気圧力で発揮されるが、1kPaよりも低い圧力は、β型サイアロン蛍光体の分解が促進されるため、好ましくない。また、雰囲気を加圧することにより、アニール効果を発現させるために必要な他の条件を広げる(低温化、時間短縮)ことができるが、雰囲気圧力があまりに高くても、アニール効果が頭打ちになるとともに、特殊で高価なアニール装置が必要となるため、量産性を考慮すると、好ましい雰囲気圧力は10MPa以下であり、より好ましくは1MPa未満である。アニール時に構成元素を含む化合物を添加してもよい。
【0048】
アニール工程における処理時間は、あまりに短いと結晶性向上効果が低く、あまりに長いとアニール効果が頭打ちになるため、1時間以上24時間以下であり、好ましくは2時間以上10時間以下である。
【0049】
(酸処理工程)
本実施形態のβ型サイアロン蛍光体粉末の製造方法は、好ましくは、アニール工程でアニールされた焼成物を酸と接触させる酸処理工程を含む。酸処理工程を行うことにより、焼成物表面の不純物や異相(発光に寄与しないか、または発光効率が低い相)を除去または低減することができ、発光強度を一層高められる場合がある。
【0050】
酸処理工程には、例えば、フッ化水素酸、硫酸、リン酸、塩酸、硝酸から選ばれる1または2以上の酸を含む水溶液を用いることができる。不純物や異相の除去効率を高める観点から、2以上の酸を併用してもよい。本実施形態においては、フッ化水素酸と硝酸を併用することが好ましい。
【0051】
酸処理工程は、通常、焼成物を酸水溶液に入れ、数分から数時間程度(例えば10分~6時間)、撹拌することにより行うことができる。攪拌終了後に沈殿した焼成物をろ過で分離し、β型サイアロン蛍光体粉末に付着した物質を水洗することが望ましい。
【0052】
<CASN蛍光体粒子/SCASN蛍光体粒子>
CASN/SCASN蛍光体粒子は、賦活物質(例えばEu)が賦活されたCASN/SCASNからなる粒子である。
一般にCASNとは、主結晶相がCaAlSiN3と同一の結晶構造を有し、一般式がMAlSiN3:Eu(Mは、Sr、Mg、Ca、Baの中から選ばれる、1種以上の元素)で示される蛍光体のことをいう。なかでも、主結晶相がCaAlSiN3と同一の結晶構造を有し、一般式が(Sr,Ca)AlSiN3:Euで表されるSr含有蛍光体のことをSCASNという。
CASNまたはSCASNは、主としてCaAlSiN3のCa2+の一部が発光中心として作用するEu2+で置換されていることにより、赤色発光蛍光体として働く。
【0053】
CASN/SCASN蛍光体粒子は、上述の原料混合工程とおよび焼成工程により製造される。必要なら、アニール工程や酸処理工程を実施してもよい。
ただし、原料混合工程において、出発原料としては、ユウロピウム化合物、窒化ストロンチウムなどのストロンチウム化合物、窒化カルシウムなどのカルシウム化合物、α型窒化ケイ素などの窒化ケイ素、窒化アルミニウム、などを挙げることができる。
【0054】
<微粒子>
蛍光体粉末中の無機微粒子は、その一次粒子および/または一次粒子の凝集体が蛍光体粒子の表面の一部に付着していてもよい。蛍光体粒子の表面に無機微粒子が付着することにより、蛍光体粉末の底面限定注入法による安息角を低下させることができる。
【0055】
無機微粒子の平均粒子径の上限は、例えば、10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。これにより、蛍光体粉末の底面限定注入法による安息角を低下させることができる。
上記一次粒子における平均粒子径の下限は、とくに限定されないが、例えば、1nm以上でもよい。
【0056】
無機微粒子の平均粒子径は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)または動的光散乱法(DLS)で測定できる。具体的には、TEMで測定する場合には、TEM画像中の無機微粒子100個の円相当直径を測定して、個数基準のメディアン径を求めることができる。また、DLSで測定する場合には、体積基準のメディアン径を求めることができる。一次粒子径については透過型電子顕微鏡(TEM)で、これ以上識別できない明確な境界を持った固体(粉体または凝集体を構成する粒子)を一次粒子として100個の直径を測定して、個数基準のメディアン径を求めた。本実施形態における一次粒子とは、電子顕微鏡等で観察される、これ以上識別できない明確な境界を持った固体を一次粒子と呼ぶ。粉体または凝集体を構成する粒子を一次粒子と呼ぶ。よって、単結晶、多結晶、アモルファスなども一次粒子となる場合もある。
【0057】
無機微粒子の含有量の下限は、当該蛍光体粉末100質量%中、例えば、0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。これにより、底面限定注入法による安息角を低下させることができる。
無機微粒子の含有量の上限は、当該蛍光体粉末100質量%中、例えば、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。これにより、底面限定注入法による安息角と固め嵩密度とのバランスを図ることができる。
【0058】
無機微粒子は、蛍光体粒子とは異なるものであり、金属酸化物粒子および金属水酸化物粒子からなる群より選ばれる少なくとも一方を含んでもよい。
好ましい金属酸化物微粒子としては、ZrO2、Al2O3、SiO2、TiO2、MgO、Gd2O3、Y2O3、ZnO、La2O3等を挙げることができる。これらの中でも特にZrO2、SiO2、Al2O3、およびTiO2が好ましい。
好ましい金属水酸化物微粒子としては、Al(OH)3等を挙げることができる。
【0059】
本実施形態の蛍光体粉末の製造方法について説明する。
蛍光体粉末の製造方法の一例は、蛍光体粒子と無機微粒子とをドライブレンドすることにより得られる。ドライブレンドでは、溶剤を用いずに蛍光体粒子と無機微粒子とを混合してもよい。
【0060】
工業的にドライブレンドを行うための装置としては、公知の混合装置を用いることができる。
実験室レベルでは、蛍光体粒子と無機微粒子とを、チャック付きのプラスチック袋に入れて激しく振ることによりドライブレンドを行うことができる。
【0061】
ドライブレンドなどを経て製造された蛍光体粒子(無機微粒子が付着している)からなる蛍光体粉末に粗大粒子が含まれている場合は、ふるい分けなどの操作を適宜行うことが好ましい。
【0062】
蛍光体粉末の製造方法の一例として、α型サイアロン蛍光体粒子と無機微粒子とを溶剤や水中などの溶媒中で湿式で混合させ、その後、溶剤を除去、乾燥させても良い。例えば、湿式ジェットミルなどにより無機微粒子を溶媒中に分散させ、その後に蛍光体粒子を混合し、溶媒を除去、乾燥することでより均一に無機微粒子を蛍光体表面に付着させることが可能となる。
【0063】
<発光装置>
本実施形態の発光装置の一例は、発光光源と、蛍光体粉末を含む波長変換部材とを備える。
波長変換部材は、蛍光体粉末と、蛍光体粉末を封止する封止材を含んでもよい。
波長変換部材では、蛍光体粉末中の蛍光体粒子が封止材中に複数分散されている。
封止材としては、周知の樹脂やガラスなどの材料を用いることができる。封止材に用いる樹脂としては、たとえば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの透明樹脂が挙げられる。
波長変換部材を作製する方法としては、例えば、液体状の樹脂またはガラスに、蛍光体粉末を加え、均一に混合した後、加熱処理により硬化させて作製する方法が挙げられる。
【0064】
図1は、本実施形態の発光装置の構造の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、発光装置100は、発光素子120、ヒートシンク130、ケース140、第1リードフレーム150、第2リードフレーム160、ボンディングワイヤ170、ボンディングワイヤ172および波長変換部材40を備える。
【0065】
発光素子120はヒートシンク130上面の所定領域に実装されている。ヒートシンク130上に発光素子120を実装することにより、発光素子120の放熱性を高めることができる。なお、ヒートシンク130に代えて、パッケージ用基板を用いてもよい。
【0066】
発光素子120は、励起光を発する半導体素子である。発光素子120としては、たとえば、近紫外から青色光に相当する300nm以上500nm以下の波長の光を発生するLEDチップを使用することができる。発光素子120の上面側に配設された一方の電極(図示せず)が金線などのボンディングワイヤ170を介して第1リードフレーム150の表面と接続されている。また、発光素子120の上面に形成されている他方の電極(図示せず)は、金線などのボンディングワイヤ172を介して第2リードフレーム160の表面と接続されている。
【0067】
ケース140には、底面から上方に向かって孔径が徐々に拡大する略漏斗形状の凹部が形成されている。発光素子120は、上記凹部の底面に設けられている。発光素子120を取り囲む凹部の壁面は反射板の役目を担う。
【0068】
波長変換部材40は、ケース140によって壁面が形成される上記凹部に充填されている。波長変換部材40は、発光素子120から発せられる励起光をより長波長の光に変換する。
波長変換部材40として、本実施形態の複合体が用いられ、樹脂などの封止材30中に蛍光体粒子10が分散されている。発光装置100は、発光素子120の光と、この発光素子120の光を吸収し励起される蛍光体粒子10から発生する光との混合色を発する。
【0069】
なお、
図1では、表面実装型の発光装置が例示されているが、発光装置は表面実装型に限定されず、砲弾型やCOB(チップオンボード)型、CSP(チップスケールパッケージ)型であってもよい。
【0070】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0071】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0072】
<蛍光体粉末の製造>
(比較例1)
・原料混合工程
グローブボックス内で、原料粉末の配合組成として、α型窒化ケイ素粉末(Si3N4宇部興産社製、SN-E10グレード)を96.5質量%、窒化アルミニウム粉末(AlN、トクヤマ社製、Fグレード)を2.7質量%、酸化ユウロピウム粉末(Eu2O3、信越化学工業社製、RUグレードを0.8質量%を、V型混合機(筒井理化学器械社製S-3)を用いて混合して、混合物を得た。次いで、得られた混合物を目開き250μmの篩に通過させて凝集物を取り除いた。このようにして、原料混合粉末を得た。
原料混合粉末200gを、内径10cm、高さ10cmの蓋付きの円筒型窒化ホウ素容器に充填した。そして、カーボンヒーターを備えた電気炉で、0.8MPaの窒素雰囲気中、2000℃で20時間の加熱処理を行った。
・焼成工程
得られた粉末を、超音速ジェット粉砕器(日本ニューマチック工業社製、PJM-80SP)により粉砕し、次いで、得られた粉砕物を目開き45μmのナイロン篩に通過させて、解砕焼成粉を得た。
・アニール工程
得られた粉末を、超音速ジェット粉砕器(日本ニューマチック工業社製、PJM-80SP)により粉砕し、次いで、得られた粉砕物を目開き45μmのナイロン篩に通過させて、解砕焼成粉を得た。
・酸処理工程
解砕焼成粉を、アルゴンガスの雰囲気ガス中、1500℃、10h、大気圧の条件でアニールした。これにより、アニールされた焼成物を得た。
アニール工程後、室温まで放冷された焼成物を、50%フッ化水素酸:25vol%、70%硝酸:25vol%、水:50vol%の酸水溶液に入れ、75℃で30分、攪拌した。
攪拌終了後、しばらく静置して沈殿した焼成物を、水洗、ろ過、そして乾燥させた。このようにしてβ型サイアロン蛍光体粉末Aを得た。
比較例1では、得られたβ型サイアロン蛍光体粒子Aを蛍光体粉末として使用した。
【0073】
(比較例3)
・原料混合工程
グローブボックス内で、原料粉末の配合組成として、α型窒化ケイ素粉末(Si3N4、SN-E10グレード、宇部興産社製)を33.9質量%、窒化カルシウム粉末(Ca3N2、太平洋セメント社製)を35.6質量%、窒化アルミニウム粉末(AlN、Eグレード、トクヤマ社製)を29.7質量%、酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3、日本イットリウム社製)を0.8質量%、小型ミルミキサーを用いて混合し、混合終了後、目開き150μmの篩を全通させて凝集物を取り除き、これを原料混合粉末とした。そして、原料混合粉末を、タングステン製の蓋付き容器に充填した。
・焼成工程
原料混合粉末を充填した容器を、グローブボックスから取出し、カーボンヒーターを備えた電気炉内に速やかにセットして、炉内を0.1Pa以下まで十分に真空排気した。
真空排気を継続したまま加熱を開始し、850℃到達後からは炉内に窒素ガスを導入し、炉内雰囲気圧力を0.8MPaGで一定とした。
窒素ガスの導入開始後も1850℃まで昇温を続けた。この焼成の保持温度(1850℃)で8時間焼成し、その後加熱を終了して冷却した。室温まで冷却後、容器から回収された赤色の塊状物を乳鉢で解砕した。その後、最終的に目開き250μmの篩を通過させた粉末(焼成物)を得た。
・粉砕工程
低温焼成工程で得た低温焼成粉末を、水とエタノールの混合液中に投入して分散液とした。この分散液について、ボールミル(ジルコニアボール)を用いて、ボールミル粉砕を実施した。ボールミル粉砕の時間および回転速度は表1に記載のとおりである。これにより粉砕粉末を得た。
・酸処理工程
焼成時に生成したと考えられる不純物を除去するために、酸処理を実施した。
具体的には、上記で篩を通過した粉末を、粉末濃度が26.7質量%となるよう0.5Mの塩酸中に浸し、さらに加熱しながら1時間攪拌する酸処理を実施した。その後、約25℃の室温で濾過により粉末と塩酸液とを分離し、粉末を純水で洗浄した。さらにその後、純水で洗浄した粉末を、100℃以上120℃以下の乾燥機中で12時間乾燥した。そして、乾燥した粉末を、目開き75μmの篩で分級した。
以上により、CASN蛍光体粉末Aを得た。
比較例3では、得られたCASN蛍光体粒子Aを蛍光体粉末として使用した。
(比較例5)
比較例5のCASN蛍光体粒子Aを10質量%、α型窒化ケイ素粉末(Si3N4、SN-E10グレード、宇部興産社製)を30.5質量%、窒化カルシウム粉末(Ca3N2、太平洋セメント社製)を32.0質量%、窒化アルミニウム粉末(AlN、Eグレード、トクヤマ社製)を26.7質量%、酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3、日本イットリウム社製)を0.8質量%に変更した以外は比較例5と同様に処理し、CASN蛍光体粉末Bを得た。
比較例5では、得られたCASN蛍光体粒子Bを蛍光体粉末として使用した。
【0074】
(実施例1~11、比較例2、4)
ポリエチレン製のチャック付き袋(商品名「ユニパック(登録商標)」、株式会社生産日本社製)に、蛍光体粒子と無機微粒子とを入れた。そして、袋を1分間激しく振った。袋から取り出した混合物について、目開き250μmの篩を全通させた、蛍光体粉末を得た。
蛍光体粒子の種類、無機微粒子の種類および添加量(溶媒を使用して混合する場合は、溶媒は含まない固形分の値を意味する)は後掲の表1に記載のとおりとした。
表1中、無機微粒子の情報は以下の通り。
・Al2O3(γ、δ):乾式酸化アルミニウムの微粒子(日本アエロジル社製、AEROXIDE(登録商標) Alu C、Al2O3含有量:99.8質量%、表面未処理品、BET比表面積:100m2/g、一次粒子径:約13nm、平均粒子径1μm以下)
・Al(OH)3:水酸化アルミニウム粒子(EMJAPAN社製、NP-ALO-14-100、純度:99.9%、平均一次粒径:50nm、比表面積:350m2/g、平均粒子径1μm以下)
・Al2O3(α):αアルミナ粉末(アドバンスト住友化学社製、AA-03、平均粒径:400nm、比表面積:4.5~5.5m2/g)
・ZrO2:ジルコニア微粒子(関東電化工業社製、一次粒子径:10nm、比表面積:150m2/g、平均粒子径1μm以下)
・SiO2:フュームドシリカ(日本アエロジル社製、AEROSIL(登録商標) 380PE、平均一次粒径:7nm、比表面積:350~410m2/g、分散液濃度:1wt%、平均粒子径1μm以下)
・TiO2:(日本アエロジル社製、AEROXIDE(登録商標)、TiO2 P90、表面未処理品、BET比表面積:990m2/g、分散液濃度:1wt%、平均粒子径1μm以下)
【0075】
上記で製造されたβ型サイアロン蛍光体粒子Aに対して、CuKα線を用いた粉末X線回折測定(X-ray Diffraction)により、結晶相を調べたところ、存在する結晶相はEu元素を含有するβ型サイアロン結晶相であることが確認された。
同様にして、CASN蛍光体粒子Aでは、CaAlSiN3結晶と同一の回折パターンが認められた。
【0076】
また、実施例1~11で製造された蛍光体粉末を電子顕微鏡で撮影した。撮影した画像から、蛍光体粒子の表面に、無機微粒子が付着していることが確認された。代表例として、
図4には、実施例1の蛍光体粉末におけるSEM画像を示す(
図4(a)は5000倍、
図4(b)は50000倍)。
【0077】
【0078】
上記で得られた蛍光体粉末について、下記項目について測定・評価を行った。
【0079】
<固め嵩密度の測定>
乾いた一定容量の円筒形の測定用容器に補助円筒を装着し、補助円筒を通して測定用容器の内部内に測定試料として、上記で製造された蛍光体粉末を導入した。補助円筒付きの測定用容器を、50~60回/分で、ストローク2cmの条件で上下方向に50回タッピングした。タッピング後、補助円筒を取外し、測定用容器の上面から過剰の測定試料をすり落とし、全体の質量を測定した。全体の質量から、予め測定しておいた空の円筒形容器の質量を差し引き、測定用容器内に充填された測定試料の質量を測定した。充填された測定試料の質量(g)を、測定用容器の内部体積(cm3)で除して、測定値を求めた。3回の測定値の平均値を、上記の固め嵩密度(g/cm3)とした。
なお、実施例1~8のそれぞれでは、蛍光体粉末(蛍光体粒子A)の固め嵩密度/蛍光体粉末(蛍光体粒子A+無機微粒子)の固め嵩密度で表される固め嵩密度比が、1.32、1.41、0.97、1.40、1.06、1.47、1.26、1.33であった。
実施例9~11のそれぞれでは、上記固め嵩密度比が、1.04、1.01、0.60であった。
【0080】
<底面限定注入法による安息角の測定>
図2は、底面限定注入法による安息角の測定を説明するための図である。
図2に示すように、直径φ33mmの底面を有する円柱台1と、内径4φmmの先端口を有するチューブ2とを準備し、底面から40mmの高さに先端口が位置するようにチューブ2を固定した。
円柱台1には、ケイ素酸ガラス製筒瓶(AS ONE製、LABORAN スクリュー管瓶、9-852-09 No.7、50cc)をテーブルの上に逆さにおき、筒瓶の底面を測定試料3が載る台として使用した。
チューブ2には、ポリプロピレン製チップ(ギルソン社製、ダイヤモンドチップ D10mL EASY・PACK 1~10mL 品番F161210)の先端を切り、先端の穴がΦ4mmになるように調整したものを使用した。
続いて、測定試料3として蛍光体粉末をチューブ2内に供給し、チューブ2の先端口から円柱台1の底面の中心に向かって自由落下させ続け、測定試料3が底面から定常的にこぼれ落ちる状態(測定試料3が底面に載らなくなる状態)になるまで続けた。
その後、測定試料3の堆積物5の側面から写真を撮影し、撮影した写真から、円柱台1の底面上に形成された円錐状の測定試料3の堆積物5の側面と円柱台1の底面とがなす仰角(θ)を求め、この仰角を、上記の底面限定注入法による安息角(°)とした。
【0081】
<底面非限定の注入法による安息角の測定>
測定試料20gをノズル内径10mmの市販のガラス製ロートの上縁2~4cmの高さから、毎分20~60gの速さで該ロートを介して基板上に落下させ、生成した円錐状の堆積物の直径及び高さから、低角を算出した。この測定を3回行い、低角の平均値を安息角とした。
測定試料には、比較例1、3の蛍光体粉末を使用した。
【0082】
<粒子径の測定>
粒度分布は、Microtrac MT3300EX II(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用い、JIS R1629:1997に準拠したレーザー回折散乱法により測定した。イオン交換水100ccに蛍光体粉末0.5gを投入し、そこにUltrasonic Homogenizer US-150E(株式会社日本精機製作所、チップサイズφ20mm、Amplitude100%、発振周波数19.5KHz、振幅約31μm)で3分間、分散処理を行い、その後、MT3300EX IIで粒度分布測定を行った。得られた体積頻度粒度分布において、小粒子径側から累積値が5%となる粒子径(D5)を、累積値が50%となる粒子径(D50)を、累積値が97%となる粒子径(D97)を、それぞれ求め、(D97-D5)/D50を算出した。
【0083】
<フィード試験による計量安定性の評価>
図3は、フィード試験を説明するための図である。
図3(a)に示すように、水平台にインラインフィーダ6(SANKI社製、ゴム脚方式、PEF-L30AG)を設置し、インラインフィーダ6にコントローラ7(SANKI社製、ピエゾ式コントローラ、型式P111)を接続し、インラインフィーダ6の上にシュート8(最大長300mm、最大幅20mm)を水平となるように取り付けた。シュート8には、
図3(b)の断面図に示すように、最大高さ5mmの三角形状の溝9が形成されている。
室温25℃、相対湿度50RH%下、上記で製造された蛍光体粉末を測定試料3として、
図3(c)の断面図に示すように、シュート8の溝9に充填し、溝9の上面から余剰分をすりきりした。
続いて、コントローラ7で周波数を変更して、測定試料3のフィード量が0.02g~0.30g程度/5秒となるように振動を調整し、振動条件を決定した。
かかる振動条件を固定してのフィード試験を5回行い、5秒間でのフィード量(g)を測定した。
5回の測定値の平均値を求め、フィード量の変動係数を「(標準偏差)/平均値」から算出した。変動係数が小さいほど、フィード試験毎のフィード量のバラツキが小さいことから、計量安定性が高いこと示す。
【0084】
実施例1~11の蛍光体粉末を用いることにより、比較例1~5と比べて、容器詰めの充填精度が高められること、また、実プロセスにおけるフィード量のバラツキを抑制できることが分かった。
実施例1~11の蛍光体粉末は、比較例1~5と比べて底面限定注入法による安息角が小さく、計量安定性に優れる結果を示した。