(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067756
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】水性表面処理組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 7/63 20180101AFI20240510BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240510BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240510BHJP
C09D 133/02 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C09D7/63
C09D183/04
C09D7/61
C09D133/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178074
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】315006377
【氏名又は名称】日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】島倉 俊明
(72)【発明者】
【氏名】長野 葵
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG031
4J038CG032
4J038CJ131
4J038CJ132
4J038GA06
4J038GA07
4J038GA15
4J038HA416
4J038HA426
4J038JA17
4J038JA18
4J038JA19
4J038JA20
4J038JA21
4J038JA64
4J038JB02
4J038JB06
4J038JC34
4J038KA02
4J038KA03
4J038LA06
4J038MA08
4J038NA03
4J038NA12
4J038NA27
4J038PA07
4J038PA19
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】金属基材に対して高強度の加工性に耐え得る皮膜を形成できる、水性金属表面処理剤を提供すること。
【解決手段】ポリフェノール化合物と、エポキシシラン化合物と、カルボキシ基含有アクリル樹脂と、窒素含有カチオン及びリン酸アニオンからなる窒素含有リン酸塩化合物と、を含む、水性表面処理組成物。ポリフェノール化合物の含有量が1.0~6.0g/L、エポキシシラン化合物の含有量が5.0~15g/L、カルボキシ基含有アクリル樹脂の含有量が5.0~20g/L、窒素含有リン酸化合物の含有量が0.5~3g/L、であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノール化合物と、エポキシシラン化合物と、カルボキシ基含有アクリル樹脂と、窒素含有カチオン及びリン酸アニオンからなる窒素含有リン酸塩化合物と、を含む、水性表面処理組成物。
【請求項2】
前記ポリフェノール化合物の前記水性表面処理組成物中における含有量が1.0~6.0g/L、
前記エポキシシラン化合物の前記水性表面処理組成物中における含有量が5.0~15g/L、
前記カルボキシ基含有アクリル樹脂の前記水性表面処理組成物中における含有量が5.0~20g/L、
前記窒素含有リン酸塩化合物の前記水性表面処理組成物中における含有量が0.5~3g/L、である、請求項1に記載の水性表面処理組成物。
【請求項3】
さらに炭素数が3以下であるアルコール化合物を含み、前記アルコール化合物の前記水性表面処理組成物中における含有量が5.0~30g/Lである、請求項1に記載の水性表面処理組成物。
【請求項4】
さらに分子内に1以上のアミノ基を有するアミノ化合物を含み、前記アミノ化合物の前記水性表面処理組成物中における含有量が0.1~10g/Lである、請求項1に記載の水性表面処理組成物。
【請求項5】
前記ポリフェノール化合物の分子量が1000以上である、請求項1に記載の水性表面処理組成物。
【請求項6】
前記エポキシシラン化合物がシクロアルキル基を有する、請求項1に記載の水性表面処理組成物。
【請求項7】
前記カルボキシ基含有アクリル樹脂の重量平均分子量が80,000~1,500,000であり、固形分酸価が150~780mgKOH/gである、請求項1に記載の水性表面処理組成物。
【請求項8】
前記リン酸アニオンがオルトリン酸イオンである、請求項1に記載の水性表面処理組成物。
【請求項9】
前記アミノ化合物が、分子内に2以上のアミノ基を有する化合物である、請求項4に記載の水性表面処理組成物。
【請求項10】
pHが2.0~8.0の範囲内である、請求項1に記載の水性表面処理組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の水性表面処理組成物を硬化した表面処理皮膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性表面処理組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属基材に耐食性を付与するための表面処理剤としては、クロメート処理剤、リン酸クロメート処理剤等のクロム系金属表面処理剤が知られており、現在でも広く使用されている。しかし、近年の環境規制の動向からすると、クロムの有する毒性、特に発ガン性のために将来的にクロム系金属表面処理剤の使用が制限される可能性がある。
【0003】
そこで、クロム系金属表面処理剤と同等の耐食性を示すクロムフリー金属表面処理剤が種々開発されている。例えば、特許文献1には、チタン化合物及び/又はジルコニウム化合物、アミノシラン及び多シリル官能シランの縮合反応物を含有する金属表面処理用組成物が開示されている。また、特許文献2には、シランカップリング剤と、水溶性チタン化合物または水溶性ジルコニウム化合物を含有する水溶性遷移金属化合物と、縮合リン酸塩と、水を含有する溶媒と、を含み、当該縮合リン酸塩が、4個以上のリン酸の高縮合物の塩である高縮合リン酸塩を含む、金属部材の表面に皮膜を形成するために用いる水性防錆表面処理組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-068930号公報
【特許文献2】特開2020-73729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クロムフリー金属表面処理剤を用いて金属基材に皮膜を形成する場合において、例えば金属基材をプレコート金属用途に用いる場合、形成される皮膜には、耐食性に加えて、高強度の加工性に耐え得る塗装密着性が要求される。しかし、従来のクロムフリー金属表面処理剤は、表面処理後の金属基材に対して高強度の加工が行われた際の塗装密着性が十分とは言えず、改善の余地があった。例えば、特許文献1に記載されているようなシランカップリング剤を主成分とする処理剤は、被塗物である金属基材が平滑な表面を有する場合、塗装時に塗料ハジキが発生するため、金属表面上に均一な被膜を形成できず、塗装密着性も十分なものでは無かった。また、特許文献2に記載されているような、縮合リン酸塩を含む水性防錆表面処理組成物は、形成された皮膜上に塗装がされることを想定しておらず、塗装後の高強度の加工に耐え得る塗装密着性が十分なものでは無かった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、金属基材に対して、皮膜上に塗膜を有している場合であっても、高強度の加工性に耐え得る皮膜を形成できる、水性表面処理組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) ポリフェノール化合物と、エポキシシラン化合物と、カルボキシ基含有アクリル樹脂と、窒素含有カチオン及びリン酸アニオンからなる窒素含有リン酸塩化合物と、を含む、水性表面処理組成物。
【0008】
(2) 前記ポリフェノール化合物の前記水性表面処理組成物中における含有量が1.0~6.0g/L、前記エポキシシラン化合物の前記水性表面処理組成物中における含有量が5.0~15g/L、前記カルボキシ基含有アクリル樹脂の前記水性表面処理組成物中における含有量が5.0~20g/L、前記窒素含有リン酸塩化合物の前記水性表面処理組成物中における含有量が0.5~3g/L、である、(1)に記載の水性表面処理組成物。
【0009】
(3) さらに炭素数が3以下であるアルコール化合物を含み、前記アルコール化合物の前記水性表面処理組成物中における含有量が5.0~30g/Lである、(1)又は(2)に記載の水性表面処理組成物。
【0010】
(4) さらに分子内に1以上のアミノ基を有するアミノ化合物を含み、前記アミノ化合物の前記水性表面処理組成物中における含有量が0.1~10g/Lである、(1)~(3)のいずれかに記載の水性表面処理組成物。
【0011】
(5) 前記ポリフェノール化合物の分子量が1000以上である、(1)~(4)のいずれかに記載の水性表面処理組成物。
【0012】
(6) 前記エポキシシラン化合物がシクロアルキル基を有する、(1)~(5)のいずれかに記載の水性表面処理組成物。
【0013】
(7) 前記カルボキシ基含有アクリル樹脂の重量平均分子量が80,000~1,500,000であり、固形分酸価が150~780mgKOH/gである、(1)~(6)のいずれかに記載の水性表面処理組成物。
【0014】
(8) 前記リン酸アニオンがオルトリン酸イオンである、(1)~(7)のいずれかに記載の水性表面処理組成物。
【0015】
(9) 前記アミノ化合物が、分子内に2以上のアミノ基を有する化合物である、(4)に記載の水性表面処理組成物。
【0016】
(10) pHが2.0~8.0の範囲内である(1)~(9)のいずれかに記載の水性表面処理組成物。
【0017】
(11) (1)~(10)のいずれかに記載の水性表面処理組成物を硬化した表面処理皮膜。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属基材に対して高強度の加工性に耐え得る皮膜を形成できる、水性表面処理組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る水性表面処理組成物について説明する。本発明は以下の実施形態の記載に限定されない。
【0020】
<水性表面処理組成物>
本実施形態に係る水性表面処理組成物は、ポリフェノール化合物と、エポキシシラン化合物と、カルボキシ基含有アクリル樹脂と、窒素含有カチオン及びリン酸アニオンからなる窒素含有リン酸塩化合物と、を含む。また、以下に説明するアルコール化合物と、アミノ化合物と、を含んでいてもよい。
【0021】
本実施形態に係る水性表面処理組成物は、3価及び6価のクロムを含有しない、クロムフリーの水性表面処理組成物であることが好ましい。3価及び6価のクロムの態様としては、金属クロム、クロムイオン、クロム化合物等、特に限定されない。
【0022】
(ポリフェノール化合物)
ポリフェノール化合物は、水性表面処理組成物により形成される皮膜と、皮膜が形成される基材との密着性を向上させることで、基材の腐食を抑制する。ポリフェノール化合物は、ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物又はその縮合物である。上記ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物としては、例えば、カテコール、ピロガロール、フラボノイド類(カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン等)、没食子酸、エラグ酸、クルクミン、タンニン酸等が挙げられる。なお、タンニン酸とは、広く植物界に分布する多数のフェノール性水酸基を有する複雑な構造の芳香族化合物の総称である。ポリフェノール化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物の縮合物としては、特に限定されず、ポリフェノール樹脂等が挙げられる。上記ポリフェノール樹脂としては、市販品を用いることができる。例えば、群栄化学工業社製のポリフェノール樹脂「レヂトップPL-4012」、住友ベークライト社製のポリフェノール樹脂「スミライトレジンNPK-238」等が挙げられる。
【0024】
ポリフェノール化合物の分子量は、1000以上であることが好ましい。なお、本明細書及び特許請求の範囲におけるポリフェノール化合物の分子量とは、ポリフェノール化合物が上記ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物(単一成分)である場合、モル分子量(g/mol)を意味するものであり、ポリフェノール化合物が上記ポリフェノール樹脂等のポリフェノール化合物の縮合物である場合、重量平均分子量(Mw)を意味する。上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトクロマトグラフィ(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0025】
ポリフェノール化合物の水性表面処理組成物中における含有量は、1.0~6.0g/Lであることが好ましく、1.5~4.5g/Lであることがより好ましい。上記含有量が1.0g/L未満である場合、塗装密着性が低下する。上記含有量が6.0g/Lを超える場合、塗装密着性の低下を引き起こす。
【0026】
(エポキシシラン化合物)
エポキシシラン化合物は、カルボキシ基含有アクリル樹脂やアミノ化合物と架橋することで、水性表面処理組成物により形成される皮膜の、水分や塩化物イオンに対するバリア性を向上させる。エポキシシラン化合物は、1分子中にエポキシ基と1個以上のアルコキシシラン基とを含有する化合物であり、例えば、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の脂肪族エポキシシラン;エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン等のシクロアルキル基を有するエポキシシラン、等が挙げられる。
【0027】
エポキシシラン化合物は、水性表面処理組成物により形成される皮膜の疎水性を向上させ、水分が透過し難い皮膜を形成することで耐食性を向上させる観点から、鎖状シランよりもより疎水性が強い環状のシクロアルキル基を有することが好ましい。シクロアルキル基を有するエポキシシランの具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート、等が挙げられる。エポキシシラン化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
エポキシシラン化合物の水性表面処理組成物中における含有量は、5.0~15g/Lであることが好ましく、7.0~13g/Lであることがより好ましい。上記含有量が5.0g/L未満である場合、塗装密着性の低下を引き起こす。上記含有量が15g/Lを超える場合、塗装密着性の低下を引き起こす。
【0029】
(カルボキシ基含有アクリル樹脂)
カルボキシ基含有アクリル樹脂は、水性表面処理組成物により形成される皮膜の、水分や腐食を誘発する塩化物イオンに対するバリア性を向上させる。カルボキシ基含有アクリル樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシ基含有アクリルモノマーを(共)重合することによって合成することができる。上記カルボキシ基含有モノマーとしては1種又は複数の種類のモノマーを用いることができる。また、上記カルボキシ基含有アクリルモノマーに加え、必要に応じて水酸基含有アクリルモノマー、アクリル酸エステルモノマー、非アクリル系モノマーを共重合させてもよい。カルボキシ基含有アクリル樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
カルボキシ基含有アクリル樹脂としては、市販品を用いることができる。例えば、東亞合成社製のポリアクリル酸「ジュリマーSH-8」「ジュリマーAC-10H」「ジュリマーAC-10L」「アロンA-7185」等が挙げられる。
【0031】
水酸基含有アクリルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
アクリル酸エステルモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、1-メチルエチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
非アクリル系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0034】
カルボキシ基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は80,000~1,500,000であることが好ましく、100,000~1,000,000であることがより好ましい。上記重量平均分子量が80,000未満である場合、塗装密着性の低下を引き起こす。上記重量平均分子量が1,500,000を超える場合、貯蔵安定性の低下を引き起こしやすくなる。
【0035】
カルボキシ基含有アクリル樹脂の固形分酸価は、150~780mgKOH/gであることが好ましく、180~720mgKOH/gであることがより好ましい。上記固形分酸価が150mgKOH/g未満である場合、塗装後の耐食性が低下する。上記固形分酸価が780mgKOH/gを超える場合、塗装後の耐食性が低下する。
【0036】
カルボキシ基含有アクリル樹脂の固形分水酸基価は、0~350mgKOH/gであることが好ましく、0~300mgKOH/gであることがより好ましい。
【0037】
カルボキシ基含有アクリル樹脂の水性表面処理組成物中における含有量は、5.0~20g/Lであることが好ましく、7.0~17g/Lであることがより好ましい。上記含有量が5.0g/L未満である場合、塗装密着性が低下する。上記含有量が20g/Lを超える場合、塗装密着性が低下する。
【0038】
本明細書及び特許請求の範囲における上記アクリル樹脂の固形分酸価および固形分水酸基価は、JIS K 0070に準じて測定することができる。
【0039】
(窒素含有リン酸塩化合物)
窒素含有リン酸塩化合物は、窒素含有カチオン及びリン酸アニオンからなる化合物である。窒素含有リン酸塩化合物は、水性表面処理組成物により形成される皮膜の腐食抑制効果を向上させる。窒素含有リン酸塩化合物は、カチオンが窒素元素を含有することで、水性表面処理組成物のpHを好適な範囲に調整しやすくすることができ、かつ、カチオンが皮膜の硬化時に揮発することで、カチオンに起因する腐食等の悪影響を回避できる。あるいは、カチオンが揮発せずに皮膜中に残存するグアニジウムイオン等である場合であっても、グアニジウムイオン等はインヒビターとして機能する。従って、同様にカチオンに起因する腐食等の悪影響を回避できる。一方で、カチオンがナトリウムイオンやカリウムイオンを含有するカチオンである場合、これらのカチオンが皮膜中に残存し、塗装後の耐食性試験でアルカリブリスターを誘発しやすい。
【0040】
上記窒素含有カチオンとしては、水性表面処理組成物の皮膜の硬化時に揮発して皮膜中に残らないアンモニウムイオン(NH4+)、あるいは皮膜中に残存しても金属基材表面に吸着してインヒビターとして機能し得るグアニジウムイオン等が挙げられる。
【0041】
上記リン酸アニオンとしては、オルトリン酸イオン(PO4
3-)、ピロリン酸イオン(P2O7
4-)等が挙げられるが、オルトリン酸イオンであることが好ましい。
【0042】
窒素含有リン酸塩化合物としては、例えば、リン酸アンモニウム(第1リン酸アンモニウム:NH4H2PO4、第2リン酸アンモニウム:(NH4)2HPO4、第3リン酸アンモニウム:(NH4)3PO4)、ピロリン酸アンモニウム、リン酸グアニジウム等が挙げられる。窒素含有リン酸塩化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
窒素含有リン酸塩化合物の水性表面処理組成物中における含有量は、5.0~20g/Lであることが好ましく、7.0~17g/Lであることがより好ましい。上記含有量が5.0g/L未満である場合、塗装後耐食性が低下する。上記含有量が20g/Lを超える場合、塗装後耐食性が低下する。
【0044】
(アルコール化合物)
アルコール化合物は、水性表面処理組成物の貯蔵安定性を向上させる。アルコール化合物の炭素数は3以下であることが好ましい。上記アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、メタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等が挙げられるが、コストや利便性の点からメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のモノアルコール化合物が好ましい。アルコール化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
アルコール化合物の水性表面処理組成物中における含有量は、5.0~30g/Lであることが好ましく、7.0~25g/Lであることがより好ましい。上記含有量が5.0g/L未満である場合、貯蔵安定性の低下を引き起こす。上記含有量が30g/Lを超える場合、塗装後耐食性が低下する。
【0046】
(アミノ化合物)
アミノ化合物は、ポリフェノール化合物の有する水酸基と結合することやエポキシシラン化合物と反応することで、水性表面処理組成物により形成される皮膜の、水分や腐食を誘発する塩化物イオンに対するバリア性を向上させる。上記の観点から、アミノ化合物としては、分子内にアミノ基を有する化合物であれば特に限定されないが、架橋密度を上げてバリア性をより向上できる点から分子内に2以上のアミノ基を有することが好ましい。アミノ基としては、第1級アミノ基又は第2級アミノ基であることが好ましい。アミノ化合物は、モノマーを重合させた重合体であってもよい。アミノ化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
アミノ化合物としては、例えば、アルキルアミン、アルコールアミン、アミノ樹脂等が挙げられる。
【0048】
アルキルアミンは、アミノ基と結合した炭化水素の種類により脂肪族、脂環族または芳香族の化合物を含み得る。2以上のアミノ基を有するアルキルアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4(または2,4,4)-トリメチルヘキサメチレンジアミン、3,3-ジアミノジプロピルアミン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン及びビス-(4,4’-アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン;キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0049】
アルコールアミンとしては、例えば、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルプロパノールアミン等が挙げられる。
【0050】
アミノ樹脂としては、分子内に2以上のアミノ基を有するものであれば特に限定されず、市販品を用いることができる。例えば、ニットーボーメディカル社製のポリアリルアミン「PAA-15C」等が挙げられる。
【0051】
アミノ化合物の水性表面処理組成物中における含有量は、0.1~10g/Lであることが好ましく、0.3~8.5g/Lであることがより好ましい。上記含有量が0.1g/L未満である場合、塗装後耐食性向上の効果が低下する。上記含有量が10g/Lを超える場合、貯蔵安定性の低下や塗装後耐食性の低下を招く。
【0052】
(pH)
本実施形態に係る水性金属表面処理剤のpHは、2.0~8.0の範囲内であることが好ましく、2.5~7.0の範囲内であることがより好ましい。水性金属表面処理剤のpHが2.0未満である場合、塗装後耐食性が低下する。水性金属表面処理剤のpHが8.0を超える場合、貯蔵安定性の低下や塗装後耐食性の低下を招く。
【0053】
(その他の化合物)
本実施形態に係る水性金属表面処理剤は、上述した各成分以外に、他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、上記以外の架橋剤、レベリング剤、消泡剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0054】
本実施形態に係る水性金属表面処理剤は、実質的にジルコニウム化合物を含まないことが好ましい。実質的にジルコニウム化合物を含まないことで、貯蔵安定性の向上に役立つ。なお、実質的にジルコニウム化合物を含まない、とは、水性金属表面処理剤中におけるジルコニウム化合物の濃度が、ジルコニウム原子換算で1mg/L未満であることを意味する。
【0055】
<表面処理皮膜>
本実施形態に係る表面処理皮膜は、上記水性金属表面処理剤により表面処理される金属基材上に形成される。金属基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、板状等が挙げられる。
【0056】
金属基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、板状等が挙げられる。金属基材としては、例えば、亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板、および冷延鋼板等が挙げられる。上記以外に、アルミニウム合金板やステンレス鋼板であってもよい。
【0057】
亜鉛合金めっき鋼板としては、例えば、亜鉛-ニッケルめっき鋼板、亜鉛-鉄めっき鋼板、亜鉛-クロムめっき鋼板、亜鉛-アルミニウムめっき鋼板、亜鉛-チタンめっき鋼板、亜鉛-マグネシウムめっき鋼板、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム鋼板、亜鉛-マンガンめっき鋼板等が挙げられる。上記めっきとしては、例えば、電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき等が挙げられる。
【0058】
アルミニウム板としては、例えば、3000番系アルミニウム合金、4000番系アルミニウム合金、5000番系アルミニウム合金、6000番系アルミニウム合金、アルミニウム系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき等のアルミニウムめっき鋼板等が挙げられる。
【0059】
本実施形態に係る表面処理皮膜の上に、塗膜をさらに形成することもできる。
【0060】
塗膜を形成する際に用いることができる塗料としては、特に限定されず、例えば、エポキシ系塗料、アクリル系塗料、ポリエステル系塗料、ウレタン系塗料、フッ素系塗料等が挙げられる。塗膜は、単層膜であってもよいし、積層膜であってもよい。
【0061】
単層膜を形成する際に、1コート用塗料を用いることができる。1コート用塗料としては、例えば、アクリル・メラミン系塗料等が挙げられる。
【0062】
積層膜を形成する際に、プライマーおよびトップコートを用いることができる。プライマーとしては、例えば、エポキシ・ポリエステル系プライマー、フェノール系プライマー等が挙げられる。トップコートとしては、例えば、ポリエステル系トップコート等が挙げられる。
【0063】
[表面処理方法]
上記水性金属表面処理剤により金属基材を表面処理する表面処理方法は、上記水性金属表面処理剤で金属基材を表面処理することにより皮膜を形成する皮膜形成工程を含む。
【0064】
皮膜形成工程は、例えば、上記水性金属表面処理剤を金属基材の表面に塗布する塗布工程と、塗布された皮膜を乾燥させる乾燥工程と、を含む。塗布工程で上記水性金属表面処理剤を塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、ロールコーター塗装、刷毛塗り塗装、ローラー塗装、バーコーター塗装、流し塗り塗装等が挙げられる。
【0065】
上記乾燥工程における乾燥方法としては、公知の方法を用いることができる。乾燥工程における乾燥温度は、例えば、金属基材表面の到達温度であるピークメタル温度で、60~90℃であることが好ましい。
【0066】
皮膜形成工程は、上記水性金属表面処理剤を金属基材の表面に塗布しながら、乾燥させてもよい。例えば、上記水性金属表面処理剤を、予熱しておいた金属の表面に塗布し、乾燥させてもよい。
【0067】
皮膜形成工程における乾燥後の皮膜の形成量は、0.1mg/m2以上500mg/m2以下であることが好ましく、1mg/m2以上250mg/m2以下であることがより好ましい。
【0068】
本実施形態の表面処理方法は、皮膜の上に、塗膜を形成する塗膜形成工程をさらに含んでいてもよい。塗膜形成工程は、例えば、塗料を塗布する工程と、塗布された塗料を焼き付け乾燥させる工程と、を含む。塗料としては、1コート用塗料を用いてもよいし、プライマーおよびトップコートを用いてもよい。
【0069】
なお、プライマーおよびトップコートを用いる場合は、プライマーおよびトップコートを塗布する毎に、焼き付け乾燥させてもよいし、プライマーおよびトップコートを塗布した後に、焼き付け乾燥させてもよい。
【実施例0070】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0071】
<水性表面処理組成物の調製>
[実施例1~34、比較例1~10]
表1に記載の含有量となるように、ポリフェノール化合物、エポキシシラン化合物、樹脂、リン酸塩、アルコール、アミノ化合物、及びイオン交換水を混合撹拌し、水性表面処理組成物を得た。表1に記載の含有量は、固形分量又は有効成分量を示す。表1に記載した原料の詳細を以下に示す。
【0072】
(ポリフェノール化合物)
(A):没食子酸 分子量:458.4 東京化成工業社製
(B):エピガロカテキン 分子量:290 富士フイルム和光純薬社製
(C):ピロガロール 分子量:126 富士フイルム和光純薬社製
(D):クルクミン 分子量:368 富士フイルム和光純薬社製
(E):タンニン酸 分子量:1701 富士フイルム和光純薬社製
(F):ポリフェノール樹脂 重量平均分子量:50,000 レヂトップPL-4012 群栄化学工業社製
(G):ポリフェノール樹脂 重量平均分子量:70,000 スミライトレジン NPK-238 住友ベークライト社製
【0073】
(エポキシシラン化合物)
(A):KBE-403 3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン 信越化学工業社製
(B):KBM-403 3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン 信越化学工業社製
(C):KBE-402 3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン 信越化学工業社製
(D):KBE-303 2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン 信越化学工業社製
(E):3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシラート
【0074】
(アクリル樹脂)
(A):ジュリマーSH-8 ポリアクリル酸 重量平均分子量:900,000 酸価:640mgKOH/g 東亜合成社製
(B):ジュリマーAC-10H ポリアクリル酸 重量平均分子量:800,000 酸価:550mgKOH/g 東亜合成社製
(C):アロンA-7185 ポリアクリル酸 重量平均分子量:500,000 酸価:600mgKOH/g 東亜合成社製
(D):カルボキシ基含有アクリル樹脂 重量平均分子量:500,000 酸価:626mgKOH/g
(E):ジュリマーAC-10L ポリアクリル酸 重量平均分子量:50,000 酸価:620mgKOH/g東亜合成社製
【0075】
・アクリル樹脂(D)の合成例
アクリル樹脂(D)を以下の方法により調製した。イオン交換水を93.14質量部、コルベンに仕込み、撹拌及び窒素還流しながら、80℃に加熱した。次いで、加熱、撹拌、及び窒素還流を行いながら、アクリル酸を3.86質量部、及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチルを0.94質量部の混合モノマー液、重合開始剤としてのACVA(4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸))を0.04質量部、25%アンモニア水溶液を0.02質量部、及びイオン交換水を2.00質量部の混合液を、それぞれ3時間かけて滴下した。滴下終了後、加熱、撹拌、及び窒素還流を2時間継続した。その後、加熱及び窒素還流を停止して溶液を撹拌しながら30℃まで冷却し、25%アンモニア水溶液でpH9に中和し、200メッシュでろ過を行い、無色透明のアクリル樹脂(D)を得た。得られたアクリル樹脂(D)は、重量平均分子量500,000、固形分酸価626mgKOH/g、固形分水酸基価84mgKOH/gであった。
【0076】
(リン酸塩)
(A):第1リン酸アンモニウム
(B):第2リン酸アンモニウム
(C):ピロリン酸アンモニウム
(D):第1リン酸ナトリウム
(E):オルトリン酸
【0077】
(アルコール)
(A):エタノール
(B):イソプロピルアルコール
(C):メタノール
(D):n-ブタノール
【0078】
(アミノ化合物)
(A):トリエタノールアミン
(B):ジアミノブタン
(C):ジアミノプロピルアミン
(D):ヘキサメチレンジアミン
(E):ポリアリルアミン PAA-15C ニットーボーメディカル社製
【0079】
【0080】
[貯蔵安定性試験]
40℃のインキュベータで2週間、表1に示す水性表面処理組成物を静置した後、以下の判定基準で、貯蔵安定性を目視評価し、2以上を合格とした。結果を表2に示す。
3:6価クロムフリー水性表面処理組成物が白濁していない場合
2:6価クロムフリー水性表面処理組成物がやや白濁している場合
1:6価クロムフリー水性表面処理組成物が白濁している場合
【0081】
<試験板の作製>
表1に示す水性表面処理組成物を用い、表1に示す金属基材に対してそれぞれ表面処理を行った。表面処理は、以下の手順で行った。アルカリ脱脂剤であるサーフクリーナー155(日本ペイント・サーフケミカルズ社製)に金属基材を60℃で10secスプレー脱脂した後、スプレー水洗し、乾燥させた後、バーコーター#3で水性表面処理組成物を金属基材に塗布後、PMT(ピークメタル温度)80℃で乾燥させた。上記の方法で表面処理した金属基材にプライマーとしてフレキコート3900NC RI045(日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製)をPMT250℃で焼き付け乾燥し、更にトップコートとしてSRF05 3704E(日本ペイント・インダストリアルコーティングス社製)をPMT265℃で焼き付け乾燥し、試験板を得た。上記試験板を用いて以下の評価を行った。
【0082】
表1に記載した金属基材の詳細を以下に示す。
EG:電気亜鉛めっき鋼板
GI:溶融亜鉛めっき鋼板
GL:55%アルミ亜鉛合金めっき鋼板
【0083】
<評価>
[折り曲げ1次密着性]
20℃の環境下で、試験板を、スペーサを間に挟まずに180°折り曲げ加工(0TT)し、又は0.35mmのアルミ板2枚をスペーサとして間に挟み180°折り曲げ加工(2TT)し、折り曲げ加工部を3回テープ剥離して、剥離度合いを20倍ルーペで観察し、以下の基準で評価した。4以上を合格とし、結果を表2に示した。
【0084】
5:剥離なし、4.5:1~10%剥離、4:11~20%剥離、3.5:21~30%剥離、3:31~40%剥離、2.5:41~50%剥離、2:51~60%剥離、1.5:61~70%剥離、1:71~80%剥離、0.5:81~90%剥離、0:91~100%剥離
【0085】
[折り曲げ2次密着性]
試験板を沸騰水に2時間浸漬後、24時間室内に放置したものについて、折り曲げ1次密着性と同様に、0TTと2TTの条件で、それぞれ同一基準で評価した。4以上を合格とし、結果を表2に示した。
【0086】
[SST(塩水噴霧試験)]
JIS Z2317に示される塩水噴霧腐食試験機にクロスカットを入れた試験板を1000hr投入し、カット部からの片側腐食平均フクレ幅と端面(上バリ、下バリ)からの平均腐食フクレ幅を測定した。カット部は1.0mm以下を合格とし、端面は5.0mm以下を合格とし、結果を表2に示した。
【0087】
[CCT(複合サイクル腐食試験)]
JIS K5621に示される複合サイクル腐食試験機にクロスカットを入れた試験板を投入し、複合サイクルを60サイクル行った後、カット部からの片側腐食平均フクレ幅、端面(上バリ、下バリ)からの平均腐食フクレ幅、折り曲げ1次密着性と同様に、折り曲げ加工(2TT)した加工部からの平均腐食フクレ幅を測定した。カット部は0.7mm以下を合格とし、端面は3.0mm以下を合格とした。加工部は以下の評価基準に従って評価を行い、3.5以上を合格とした。結果を表2に示した。
【0088】
5:剥離面積が0%
4.5:剥離面積が10%未満
4:剥離面積が10%以上20%未満
3.5:剥離面積が20%以上30%未満
3:剥離面積が30%以上40%未満
2.5:剥離面積が40%以上50%未満
2:剥離面積が50%以上60%未満
1.5:剥離面積が60%以上70%未満
1:剥離面積が70%以上80%未満
0.5:剥離面積が80%以上90%未満
0:剥離面積が90%以上100%以下
【0089】
[深絞り]
深絞り(角絞り)加工機(エリクセン社製)を用い、試験板を以下の条件で加工した。その後、以下の評価基準により評価した。
(条件)角筒絞り、ブランク形状:100mm角、押え圧:1.5t、絞り速度:400mm/min
(評価基準)加工後の4角の塗膜の剥離度合いを以下の評価基準に沿って5点満点で評価し、その平均点を算出し、3.5以上を合格とした。結果を表2に示した。
【0090】
5:剥離面積が0%以上5%未満
4:剥離面積が5%以上25%未満
3:剥離面積が25%以上50%未満
2:剥離面積が50%以上75%未満
1:剥離面積が75%以上100%以下
【0091】
【0092】
表2から、以下の結果が明らかである。実施例に係る試験板はそれぞれ特定の成分を含まない比較例1~4に係る試験板よりも加工後の耐食性及び塗装密着性に優れている。比較例5~8に係る水性表面処理組成物は各成分の含有量が過剰であり、かつアルコールを含まないため貯蔵安定性が不良であり皮膜を形成できなかった。実施例に係る試験板は、リン酸塩として窒素含有リン酸塩化合物以外のリン酸塩を含有する比較例9、10に係る試験板よりも加工後の耐食性及び塗装密着性に優れている。