(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006776
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】パワーユニット
(51)【国際特許分類】
F02B 63/04 20060101AFI20240110BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F02B63/04 A
H02K7/18 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107973
(22)【出願日】2022-07-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】320011199
【氏名又は名称】株式会社石川エナジーリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】石川 満
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 雅和
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607BB02
5H607BB13
5H607CC01
5H607CC05
5H607DD01
5H607DD02
5H607DD03
5H607DD19
5H607FF22
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、パワーユニットを構成するアキシャルフラックス発電機のステータとロータとを接近させることができるパワーユニットを提供する。
【解決手段】パワーユニット10のエンジン11は、回転軸14を中心に回転することで駆動力を出力するエンジン側シャフト15を有する。アキシャルフラックス発電機12は、ステータ16と、ステータ16の一方側に回転可能に配設された第1ロータ17と、ステータ16の他方側に回転可能に配設された第2ロータ18と、第1ロータ17および第2ロータ18の回転中心に接続されてエンジン側シャフト15と連続する発電機側シャフト19と、を有する。回転軸14に沿って、エンジン側シャフト15がスラスト固定部131に当接する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンにより駆動されるアキシャルフラックス発電機と、スラスト固定部と、を具備し、
前記エンジンは、回転軸を中心に回転することで駆動力を出力するエンジン側シャフトを有し、
前記アキシャルフラックス発電機は、ステータと、前記ステータの一方側に回転可能に配設された第1ロータと、前記ステータの他方側に回転可能に配設された第2ロータと、前記第1ロータおよび前記第2ロータの回転中心に接続されて前記エンジン側シャフトと連続する発電機側シャフトと、を有し、
前記回転軸に沿って、前記エンジン側シャフトが前記スラスト固定部に当接することを特徴とするパワーユニット。
【請求項2】
前記エンジン側シャフトは付勢部により付勢されることにより、前記スラスト固定部に当接されることを特徴とする請求項1に記載のパワーユニット。
【請求項3】
前記付勢部は、前記エンジンの油圧回路を用いたピストン部であることを特徴とする請求項2に記載のパワーユニット。
【請求項4】
前記ピストン部は、略アーチ状の形状を呈することを特徴とする請求項3に記載のパワーユニット。
【請求項5】
前記付勢部は、バネであることを特徴とする請求項2に記載のパワーユニット。
【請求項6】
前記エンジン側シャフトは、前記アキシャルフラックス発電機に接近する位置に配設された第1スラスト当接部と、前記第1スラスト当接部よりも前記アキシャルフラックス発電機から離れる位置に配設された第2スラスト当接部と、を有し、
前記付勢部が前記第1スラスト当接部を付勢することにより、前記第2スラスト当接部が前記スラスト固定部に当接することを特徴とする請求項2に記載のパワーユニット。
【請求項7】
前記第1スラスト当接部および前記第2スラスト当接部は、前記エンジン側シャフトを部分的に拡径した部位であることを特徴とする請求項6に記載のパワーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンと発電機が一体化したパワーユニットが存在する。パワーユニットに採用される発電機としては、ラジアル型のものと、アキシャル型のものがある。アキシャル型の発電機はアキシャルフラックス発電機と称される。アキシャルフラックス発電機は、ラジアル型の発電機と比較すると、小型化が容易であることから、小型の機器に搭載されることが多い。
【0003】
特許文献1に、アキシャルフラックス発電機の一例が記載されている。特許文献1に記載された発電機では、略円盤形状を呈するロータとステータが、軸方向に沿って対面するように配置される。そして、ロータが回転することにより、電磁誘導により誘導電流が生じ、これにより発電がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1等に記載された発明を用いて、パワーユニットを構成しようとする場合、エンジンに組み付けられた発電機の出力効率を高めることは簡単ではなかった。
【0006】
具体的には、パワーユニットにおいては、エンジン側の駆動力を発電機側に伝達させるために、エンジンのクランクシャフトと、アキシャルフラックス発電機の回転軸とは結合される。ここで、アキシャルフラックス発電機の発電効率を高めるためには、回転軸に沿う方向において、ステータとロータとを極力接近させることが重要である。一方、エンジンのクランクシャフトは、部品同士の組付のために、軸方向において一定の公差を持ってエンジン本体に組み付けられている。よって、エンジンのクランクシャフトと、アキシャルフラックス発電機のシャフトとを連結した場合、軸方向において、アキシャルフラックス発電機のロータの位置が一定に定まらない。このことから、アキシャルフラックス発電機のステータとロータとを接近させることが簡単ではない課題が生じる。
【0007】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡易な構成で、パワーユニットを構成するアキシャルフラックス発電機のステータとロータとを接近させることができるパワーユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパワーユニットは、エンジンと、前記エンジンにより駆動されるアキシャルフラックス発電機と、スラスト固定部と、を具備し、前記エンジンは、回転軸を中心に回転することで駆動力を出力するエンジン側シャフトを有し、前記アキシャルフラックス発電機は、ステータと、前記ステータの一方側に回転可能に配設された第1ロータと、前記ステータの他方側に回転可能に配設された第2ロータと、前記第1ロータおよび前記第2ロータの回転中心に接続されて前記エンジン側シャフトと連続する発電機側シャフトと、を有し、前記回転軸に沿って、前記エンジン側シャフトが前記スラスト固定部に当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のパワーユニットによれば、エンジン側シャフトがスラスト固定部に当接する。よって、エンジン側シャフトと連続する発電機側シャフトを介して、第1ロータおよび第2ロータの軸方向に沿う位置も、所定のものとなる。このことから、第1ロータおよび第2ロータと、ステータとのクリアランスを所定の長さにでき、アキシャルフラックス発電機の発電効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の実施形態に係るパワーユニットを示す断面図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係るパワーユニットを示す後面図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係るパワーユニットを示す断面図である。
【
図2B】本発明の実施形態に係るパワーユニットを示す断面図である。
【
図3A】本発明の他形態に係るパワーユニットを示す断面図である。
【
図3B】本発明の実施形態に係るピストン部等を示す斜視図である。
【
図4】本発明の更なる他形態に係るパワーユニットを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態にかかるパワーユニット10を図面に基づき詳細に説明する。以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0012】
図1Aは、パワーユニット10を示す断面図である。
図1Bは、パワーユニット10を示す後面図である。
【0013】
パワーユニット10は、エンジン11と、エンジン11により駆動されるアキシャルフラックス発電機12と、スラスト固定部132と、を具備する。パワーユニット10を運転すると、エンジン11がアキシャルフラックス発電機12を回転駆動し、アキシャルフラックス発電機12が交流電力を出力する。パワーユニット10は、飛行装置、車両等の電力源として用いられる。アキシャルフラックス発電機12は、ラジアル型の発電機と比較して、小型化と高出力化を高いレベルで両立できる。よって、アキシャルフラックス発電機12を、ドローン等の飛行装置に適用することにより、飛行装置を軽量化でき、更に、飛行装置の連続飛行距離を延長できる。
【0014】
エンジン11は、ここでは単気筒型エンジンを例示している。エンジン11は、ケーシング25と、ピストン26と、エンジン側シャフト15と、コネクティングロッド27と、を主要に有する。エンジン11が運転される際には、圧縮行程、爆発行程、排気行程および吸入行程を高速で繰り返すことにより、ピストン26が往復運動する。コネクティングロッド27によりピストン26と連結されたエンジン側シャフト15は、往復運動を回転運動に変換する。エンジン側シャフト15は、回転軸14を中心に回転することで駆動力を出力する。更に、エンジン側シャフト15は、第1スラスト当接部23と第2スラスト当接部24とを有する。エンジン側シャフト15の具体構成は、
図2Aを参照して、後述する。
【0015】
スラスト固定部131およびスラスト固定部132は、ケーシング25の内部に配設され、エンジン側シャフト15を軸方向に沿って固定する部位である。スラスト固定部131は、エンジン側シャフト15の後方に向かって伸びる部分が挿入される。スラスト固定部131とエンジン側シャフト15との間には、図示しない軸受が介装される。スラスト固定部132は、エンジン側シャフト15の前方に向かって伸びる部分が挿入される。スラスト固定部132とエンジン側シャフト15との間には、図示しない軸受が介装される。
【0016】
付勢部20は、スラスト固定部131に配設される。付勢部20は、スラスト固定部131の前面側に配設され、エンジン側シャフト15の第1スラスト当接部23を、前方に向かって付勢する部位である。付勢部20としては、例えば、後述するピストン部21またはバネ22等を採用できる。
【0017】
ピストン部21は、ここでは図示しないエンジン11の補機であるオイルポンプの圧力を用いて第1スラスト当接部23を付勢する部位である。オイルポンプは、エンジン側シャフト15のメインジャーナルへの給油が行われる給油経路を形成する。ピストン部21は、給油経路から分岐した分岐経路からの圧力を受け、第1スラスト当接部23を付勢する。付勢部20としてピストン部21を採用することで、付勢力を発生させる専用機器を不要にして大きな付勢力を得ることができる。付勢部20は、
図3Bを参照して、後述する。
【0018】
バネ22は、例えば、前後方向に軸を有するコイルバネである。コイルバネの復元力により、第1スラスト当接部23を前方側に付勢する。バネ22としては、コイルバネ以外の弾性体、例えばゴム等の弾性を有する合成樹脂等を採用できる。付勢部20としてバネ22を採用することで、簡素な構成で付勢力を得ることができる。
【0019】
アキシャルフラックス発電機12は、ステータ16と、第1ロータ17と、第2ロータ18と、発電機側シャフト19と、を有する。ここでは、アキシャルフラックス発電機12は、エンジン11の後方側直近に配設され、エンジン11のケーシング25に固定される。
【0020】
ステータ16は、ステータ固定部28を介して、エンジン11のケーシング25に接続されることで、その位置が固定されている。ステータ16は、円周方向に沿って多数のコイルが配置される。
【0021】
第1ロータ17は、ステータ16の一方側である前方側に、回転可能に配設される。第1ロータ17は、円周方向に沿って多数の永久磁石が配置される。
【0022】
第2ロータ18は、ステータ16の他方側である後方側に、回転可能に配設される。第2ロータ18は、円周方向に沿って多数の永久磁石が配置される。
【0023】
ここで、第1ロータ17とステータ16との間隙は、アキシャルフラックス発電機12の発電効率を向上するために、極めて短くされる。同様に、第2ロータ18とステータ16との間隙も極めて短くされる。本実施形態では、これらの間隙の長さを安定的に短くするために、エンジン側シャフト15を軸方向に位置決めしている。係る事項は
図2Aおよび
図2Bを参照して説明する。
【0024】
発電機側シャフト19は、第1ロータ17および第2ロータ18の回転中心に、相対回転不能に接続される略棒状の部材である。また、発電機側シャフト19は、エンジン側シャフト15と連続し、一体した直線状の棒状回転部材を形成する。
【0025】
図2Aは、付勢部20による付勢が行われる前の状態を示す断面図である。また、
図2Aを参照して、エンジン側シャフト15の構成を詳述する。
【0026】
エンジン側シャフト15は、ピン部151と、アーム部152と、前方延伸部153と、後方延伸部154と、を有する。ピン部151は、コネクティングロッド27の下方部分と回転可能に接続する。アーム部152は、ピン部151の両側に配置され、ピン部151と前方延伸部153および後方延伸部154とを接続する。前方延伸部153は、スラスト固定部132を貫通して前方に向かって伸びる。後方延伸部154は、スラスト固定部131を貫通して発電機側シャフト19と連結される。
【0027】
第1スラスト当接部23は、エンジン側シャフト15の後方延伸部154を、軸方向に沿って部分的に拡径した部位である。第1スラスト当接部23は、略円柱状である後方延伸部154を全周に渡って拡径することにより形成される。付勢部20が、後述するピストン部21の場合、パワーユニット10の非運転時では、付勢部20は、第1スラスト当接部23を付勢しない。
【0028】
第2スラスト当接部24は、ケーシング25の前方延伸部153を、軸方向に沿って部分的に拡径した部位である。第2スラスト当接部24は、略円柱状である前方延伸部153を全周に渡って拡径することにより形成される。パワーユニット10が運転されていない際は、前述したように付勢部20は第1スラスト当接部23を前方に向かって付勢しないので、第2スラスト当接部24の前面は、スラスト固定部132の後面には当接されない。
【0029】
図2Bは、付勢部20による付勢が行われている状態を示す断面図である。
【0030】
エンジン11が運転されることで、油圧回路からの圧力が付勢部20に作用し、エンジン側シャフト15の第1スラスト当接部23の後面を、付勢部20が前方に向かって付勢する。そうすると、エンジン側シャフト15および発電機側シャフト19が、前方に変位し、第2スラスト当接部24の前面が、スラスト固定部132の後面に当接する。このようにすることで、エンジン側シャフト15と連続する発電機側シャフト19、ひいては、第1ロータ17および第2ロータ18が所定の位置とされる。よって、第1ロータ17とステータ16との間隙、および、第2ロータ18とステータ16との間隙も、所定の長さとされる。
【0031】
即ち、アキシャルフラックス発電機12の第1ロータ17、ステータ16および第2ロータ18は、
図2Bに示す状態となった場合に、互いの間隙が設計値となるように配設される。
【0032】
よって、この状態で第1ロータ17および第2ロータ18が回転すると、第2ロータ18および第2ロータ18とステータ16との電磁的作用により、効率的に交流電力を発電することができる。
【0033】
図3Aは、他形態に係るパワーユニット10を示す断面図である。この図に示すパワーユニット10のエンジン11は、2つのピストンを有する2気筒エンジンである。即ち、1つのエンジン側シャフト15に対して、ピストン26、コネクティングロッド27が2つ取り付けられている。他の構成は、
図2A等に示したパワーユニット10と同様である。係る構成であっても、パワーユニット10の運転時において、付勢部20が第1スラスト当接部23を前方に向かって付勢することで、第2スラスト当接部24がスラスト固定部132に当接する。このようにすることで、アキシャルフラックス発電機12において、第1ロータ17とステータ16との間隙、および、第2ロータ18とステータ16との間隙が、所定距離となる。よって、アキシャルフラックス発電機12により効果的に発電することができる。
【0034】
図3Bは、他形態に係るパワーユニット10のピストン部21を示す斜視図である。ここでは、スラスト固定部131の上方部分のみを示している。
【0035】
スラスト固定部131には、挿通孔31およびピストン収納部29が形成されている。挿通孔31は、前述したエンジン側シャフト15の一部である後方延伸部154が挿通される貫通孔である。ピストン収納部29は、挿通孔31の外側部分のスラスト固定部131を、略アーチ状に、くり抜いた空洞である。ピストン部21は、ピストン収納部29と同様に略アーチ状を呈する部材であり、ピストン収納部29に収納される。紙面上にてピストン部21の手前を向く面が、前述した第1スラスト当接部23に当接して付勢する。
【0036】
ピストン部21には、油圧回路30から圧力が付与される。油圧回路30は、前述したオイルポンプからエンジン側シャフト15にオイルが供給される回路である。ピストン部21がアーチ形状を呈することにより、前述したエンジン側シャフト15をより安定して付勢できる。
【0037】
図4は、更なる他形態に係るパワーユニット10を示す拡大断面図である。
図4に示すパワーユニット10の基本構成は
図1に示したものと同様であり、エンジン39の構成が異なる。
【0038】
エンジン39は、第1エンジン部40と、第2エンジン部41と、を有する。第1エンジン部40と第2エンジン部41とは対向配置される。また、第1エンジン部40および第2エンジン部41の夫々に対応して、アキシャルフラックス発電機12が配設される。係る構成により、パワーユニット10全体としての発電量を増大できる。
【0039】
第1エンジン部40は、往復運動する第1ピストン43と、第1ピストン43の往復運動を回転運動に変換する第1クランクシャフト42と、第1ピストン43と第1クランクシャフト42とを回転可能に連結する第1コネクティングロッド44と、を有する。
【0040】
第2エンジン部41は、往復運動する第2ピストン46と、第2ピストン46の往復運動を回転運動に変換する第2クランクシャフト45と、第2ピストン46と第2クランクシャフト45とを回転可能に連結する第2コネクティングロッド47と、を有する。
【0041】
第1エンジン部40の第1ピストン43と、第2エンジン部41の第2ピストン46で、燃焼室48を共有する。換言すると、第1ピストン43と第2ピストン46とは、連通する一つのシリンダ49の内部を往復運動する。よって、第1エンジン部40および第1ピストン43が中心部に向かって同時にストロークすることで、ストローク量を少なくしつつ、燃焼室48における混合ガスの高膨張比をとることができる。
【0042】
ここでは図示していないが、エンジン39には、燃焼室48から連通する容積空間が形成されており、この容積空間に点火プラグが配置されている。また、燃焼室48には、ここでは図示しない吸気口および排気口が形成されており、ガソリンなどの燃料を含む混合気が吸気口から燃焼室48に導入され、燃焼後の排気ガスが排気口を経由して燃焼室48から外部に排気される。
【0043】
ここで、第1エンジン部40の第1クランクシャフト42は、アキシャルフラックス発電機12の発電機側シャフト19と一体的に接続する。一方、第2エンジン部41の第2クランクシャフト45は、別のアキシャルフラックス発電機12の発電機側シャフト19と一体的に接続する。
【0044】
上記した構成のエンジン39は、次のように動作する。先ず、吸込行程では、第1ピストン43および第2ピストン46がシリンダ49の内部で中央部から外側に向かって移動することで、燃料と空気との混合物である混合気をシリンダ49の内部に導入する。次に、圧縮行程では、回転する第1クランクシャフト42および第2クランクシャフト45の慣性により、第1ピストン43および第2ピストン46が中央部に向かって押し出され、シリンダ49の内部で混合気が圧縮される。次に、燃焼行程では、図示しない点火プラグが燃焼室48で点火することで、シリンダ49の内部で混合気が燃焼し、これにより第1ピストン43および第2ピストン46が下死点である外側の端部まで押し出される。その後、排気行程では、回転する第1クランクシャフト42および第2クランクシャフト45の慣性により第1ピストン43および第2ピストン46が内側に押し出され、シリンダ49の内部に存在する燃焼後のガスは、外部に排出される。
【0045】
エンジン39では、一つのシリンダ49の内部で往復運動する2つの第1ピストン43および第2ピストン46で、ストロークを分割することができる。よって、通常のガソリンエンジンと比較して、混合ガスの圧縮比を大きくすることができる。また、シリンダ49の内部で第1ピストン43および第2ピストン46が対向するので、一般的なエンジンで必要とされるシリンダヘッドが不要と成り、エンジン39の構成が簡素であり且つ軽量とされている。また、エンジン39を構成している各部材、即ち、第1ピストン43および第2ピストン46、第1クランクシャフト42および第2クランクシャフト45等が対向して配置され、かつ対向するように動作している。このことから、エンジン39の各部材から発生する振動が相殺され、エンジン39全体から外部に発生する振動を少なくすることができる。よって、このような構造のエンジン39を飛行装置に搭載することで、飛行装置の小型化、軽量化および低振動化を達成することができる。特に、低振動化により、姿勢制御、モータ出力制御などの演算制御装置やGPSセンサ等の精密機器への悪影響を防止することが出来る。また、飛行装置が輸送する配送荷物が振動で損傷してしまうことを防止することができる。
【0046】
以下に、前述した本実施形態から把握できる発明を、その効果と共に説明する。
【0047】
本発明のパワーユニットは、エンジンと、前記エンジンにより駆動されるアキシャルフラックス発電機と、スラスト固定部と、を具備し、前記エンジンは、回転軸を中心に回転することで駆動力を出力するエンジン側シャフトを有し、前記アキシャルフラックス発電機は、ステータと、前記ステータの一方側に回転可能に配設された第1ロータと、前記ステータの他方側に回転可能に配設された第2ロータと、前記第1ロータおよび前記第2ロータの回転中心に接続されて前記エンジン側シャフトと連続する発電機側シャフトと、を有し、前記回転軸に沿って、前記エンジン側シャフトが前記スラスト固定部に当接することを特徴とする。本発明のパワーユニットによれば、エンジン側シャフトがスラスト固定部に当接する。よって、エンジン側シャフトと連続する発電機側シャフトを介して、第1ロータおよび第2ロータの軸方向に沿う位置も、所定のものとなる。このことから、第1ロータおよび第2ロータと、ステータとのクリアランスを所定の長さにでき、アキシャルフラックス発電機の発電効率を向上できる。
【0048】
また、本発明のパワーユニットでは、前記エンジン側シャフトは付勢部により付勢されることにより、前記スラスト固定部に当接されることを特徴とする。本発明のパワーユニットによれば、付勢部の付勢力を用いてエンジン側シャフトを所定の位置にすることにより、パワーユニットの運転状況下において、第1ロータおよび第2ロータを、軸方向において所定の位置にすることができる。
【0049】
また、本発明のパワーユニットでは、前記付勢部は、前記エンジンの油圧回路を用いたピストン部であることを特徴とする。本発明のパワーユニットによれば、付勢部が、エンジンの油圧回路を用いたピストン部であることにより、エンジンの駆動力を用いて、第1ロータおよび第2ロータを所定位置に配設できる。
【0050】
また、本発明のパワーユニットでは、前記ピストン部は、略アーチ状の形状を呈することを特徴とする。本発明のパワーユニットによれば、ピストン部がアーチ状の形状を呈することにより、回転するエンジン側シャフトをより安定して付勢できる。
【0051】
また、本発明のパワーユニットでは、前記付勢部は、バネであることを特徴とする。本発明のパワーユニットによれば、付勢部が、バネであることにより、簡易に、第1ロータおよび第2ロータを所定位置に配設できる。
【0052】
また、本発明のパワーユニットでは、前記エンジン側シャフトは、前記アキシャルフラックス発電機に接近する位置に配設された第1スラスト当接部と、前記第1スラスト当接部よりも前記アキシャルフラックス発電機から離れる位置に配設された第2スラスト当接部と、を有し、前記付勢部が前記第1スラスト当接部を付勢することにより、前記第2スラスト当接部が前記スラスト固定部に当接することを特徴とする。本発明のパワーユニットによれば、エンジン側シャフトの第2スラスト当接部が、スラスト固定部に当接することにより、エンジンの運転時においてエンジン側シャフトを所定位置に固定できる。よって、エンジン側シャフトと連結されている第1ロータおよび第2ロータを、軸方向において所定の位置にすることができる。
【0053】
また、本発明のパワーユニットでは、前記第1スラスト当接部および前記第2スラスト当接部は、前記エンジン側シャフトを部分的に拡径した部位であることを特徴とする。本発明のパワーユニットによれば、前記第1スラスト当接部および第2スラスト当接部が拡径部位であることで、パワーユニットの運転時において回転するエンジン側シャフトを、効果的に軸方向に沿って押圧できる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、前述した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【0055】
パワーユニット10は、飛行装置に適用できる。具体的には、パワーユニット10から発生する電力によりモータを駆動し、モータの回転力によりロータを回転させることで得られる推力により機体を浮遊させる。係る構成の飛行装置は、シリーズハイブリッド型ドローンとも称される。
【符号の説明】
【0056】
10 パワーユニット
11 エンジン
12 アキシャルフラックス発電機
131 スラスト固定部
132 スラスト固定部
14 回転軸
15 エンジン側シャフト
151 ピン部
152 アーム部
153 前方延伸部
154 後方延伸部
16 ステータ
17 第1ロータ
18 第2ロータ
19 発電機側シャフト
20 付勢部
21 ピストン部
22 バネ
23 第1スラスト当接部
24 第2スラスト当接部
25 ケーシング
26 ピストン
27 コネクティングロッド
28 ステータ固定部
29 ピストン収納部
30 油圧回路
31 挿通孔
39 エンジン
40 第1エンジン部
41 第2エンジン部
42 第1クランクシャフト
43 第1ピストン
44 第1コネクティングロッド
45 第2クランクシャフト
46 第2ピストン
47 第2コネクティングロッド
48 燃焼室
49 シリンダ
【手続補正書】
【提出日】2022-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンにより駆動されるアキシャルフラックス発電機と、スラスト固定部と、を具備し、
前記エンジンは、回転軸を中心に回転することで駆動力を出力するエンジン側シャフトを有し、
前記アキシャルフラックス発電機は、ステータと、前記ステータの近傍に配設されたロータと、前記ロータの回転中心に接続されて前記エンジン側シャフトと連続する発電機側シャフトと、を有し、
前記回転軸に沿って、前記エンジン側シャフトが前記スラスト固定部に当接し、
前記エンジン側シャフトは、付勢部により付勢されることにより、前記スラスト固定部に当接し、
前記エンジン側シャフトは、前記アキシャルフラックス発電機に接近する位置に配設された第1スラスト当接部と、前記第1スラスト当接部よりも前記アキシャルフラックス発電機から離れる位置に配設された第2スラスト当接部と、を有し、
前記付勢部が前記第1スラスト当接部に当接して付勢することにより、前記第2スラスト当接部が前記スラスト固定部に当接することを特徴とするパワーユニット。
【請求項2】
前記付勢部は、前記エンジンの油圧回路を用いたピストン部であることを特徴とする請求項1に記載のパワーユニット。
【請求項3】
前記ピストン部は、略アーチ状の形状を呈することを特徴とする請求項2に記載のパワーユニット。
【請求項4】
前記付勢部は、バネであることを特徴とする請求項1に記載のパワーユニット。
【請求項5】
前記第1スラスト当接部および前記第2スラスト当接部は、前記エンジン側シャフトを部分的に拡径した部位であることを特徴とする請求項1に記載のパワーユニット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明のパワーユニットは、エンジンと、前記エンジンにより駆動されるアキシャルフラックス発電機と、スラスト固定部と、を具備し、前記エンジンは、回転軸を中心に回転することで駆動力を出力するエンジン側シャフトを有し、前記アキシャルフラックス発電機は、ステータと、前記ステータの近傍に配設されたロータと、前記ロータの回転中心に接続されて前記エンジン側シャフトと連続する発電機側シャフトと、を有し、前記回転軸に沿って、前記エンジン側シャフトが前記スラスト固定部に当接し、前記エンジン側シャフトは、付勢部により付勢されることにより、前記スラスト固定部に当接し、前記エンジン側シャフトは、前記アキシャルフラックス発電機に接近する位置に配設された第1スラスト当接部と、前記第1スラスト当接部よりも前記アキシャルフラックス発電機から離れる位置に配設された第2スラスト当接部と、を有し、前記付勢部が前記第1スラスト当接部に当接して付勢することにより、前記第2スラスト当接部が前記スラスト固定部に当接することを特徴とする。