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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067772
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】筒状体
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/18 20060101AFI20240510BHJP
   F23R 3/06 20060101ALI20240510BHJP
   F23R 3/42 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F02C7/18 C
F23R3/06
F23R3/42 C
F23R3/42 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178095
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】三好 市朗
(72)【発明者】
【氏名】池田 有空
(57)【要約】
【課題】冷却効率を向上させつつ重量の増加をなくすことができる筒状体を提供する。
【解決手段】ケース内流路C1に圧縮空気F1が流れ、燃焼室C2に燃焼ガスF2が流れる、軸線Xに沿って延びている燃焼器1であって、複数の環状部材100を備え、各環状部材100は、外周壁部110と、外周壁部110よりも内側に配置されることで外周壁部110との間で冷却流路C3を画定している内周壁部120と、冷却流路C3に配置され、外周壁部110と内周壁部120とを接続している複数の冷却ピン130と、を有し、外周壁部110は、ケース内流路C1から冷却流路C3に圧縮空気F1を流入させる複数の流入穴111を有し、内周壁部120は、冷却流路C3から燃焼室C2に圧縮空気F1を流出させる複数の流出穴121を有し、複数の環状部材100が軸線Xに沿って互いに接続されることで構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側領域に第1流体が流れ、内周側領域に前記第1流体よりも高温の第2流体が流れる、軸線に沿って延びている筒状体であって、
複数の環状部材を備え、
各前記環状部材は、
前記外周側領域に接する環状の外周壁部と、
前記内周側領域に接し、前記外周壁部よりも内側に配置されることで前記外周壁部との間で流路を画定している環状の内周壁部と、
前記流路に配置され、前記外周壁部と前記内周壁部とを接続している複数の冷却部と、
を有し、
前記外周壁部は、前記外周側領域から前記流路に前記第1流体を流入させる複数の流入穴を有し、
前記内周壁部は、前記流路から前記内周側領域に前記第1流体を流出させる複数の流出穴を有し、
複数の前記環状部材が前記軸線に沿って互いに接続されることで構成されている
筒状体。
【請求項2】
第1の前記環状部材の前記流路の後端は、第2の前記環状部材の前記内周壁部に向かって開口している
請求項1に記載の筒状体。
【請求項3】
第1の前記環状部材の前記外周壁部と第2の前記環状部材の前記外周壁部とは、しまりばめ、溶接又はロウ付けによって接続されている
請求項1に記載の筒状体。
【請求項4】
第1の前記環状部材の前記外周壁部及び第2の前記環状部材の前記外周壁部には、前記軸線の方向の抜けを防止する係合部が設けられている
請求項3に記載の筒状体。
【請求項5】
前記外周壁部、前記内周壁部及び前記冷却部は、一部材で一体的に形成されている
請求項1に記載の筒状体。
【請求項6】
前記外周壁部と前記内周壁部とは、異なる材料から形成されている
請求項1に記載の筒状体。
【請求項7】
前記内周壁部の内周面には、遮熱層が形成されている
請求項1に記載の筒状体。
【請求項8】
燃焼器とされている
請求項1に記載の筒状体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼器等の筒状体に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機エンジンやタービンの燃焼器では、圧縮空気の一部を用いて冷却を行うことがある。
熱効率の向上やNOx等の有害物質の排出低減に寄与したり部品寿命の向上に寄与したりするために、燃焼器には高い冷却性能が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0025379号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却方式の1つとして、外側部材に形成された微小な冷却穴から内側部材(冷却対象)に向かって空気を噴出して衝突させ内側部材を通した後に高温流路に噴出するインピンジメント・エフュージョン方式がある。しかしながら、冷却穴が極めて小さいので、空気中に含まれる砂塵によって冷却穴が目詰まりして冷却機能を喪失するおそれがある。
【0005】
他の冷却方式の1つとて、多数のピンフィンが設けられた複数の内側部材(冷却対象)を1つの円筒形状の外側部材に対して取り付けピンフィンが配置された流路に空気を流すピンフィン方式がある。しかしながら、内側部材及び外側部材の精度誤差によりピンフィンと外側部材との間に隙間が生じて、その隙間から空気が漏れて、冷却効率が低下するおそれがある。
【0006】
また、特許文献1には、1つの共通の円筒形状のライナに冷却構造を有した複数のタイルアセンブリを締結具で取り付けることで1つの燃焼器(筒状体)を構成する技術が開示されている。しかしながら、特許文献1のように、円筒形状のライナに複数タイルアセンブリを取り付ける方法では、締結具の分だけ重量が増加してしまう。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、冷却効率を向上させつつ重量の増加をなくすことができる筒状体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の筒状体は、以下の手段を採用する。
すなわち、本開示の一態様に係る筒状体は、外周側領域に第1流体が流れ、内周側領域に前記第1流体よりも高温の第2流体が流れる、軸線に沿って延びている筒状体であって、複数の環状部材を備え、各前記環状部材は、前記外周側領域に接する環状の外周壁部と、前記内周側領域に接し、前記外周壁部よりも内側に配置されることで前記外周壁部との間で流路を画定している環状の内周壁部と、前記流路に配置され、前記外周壁部と前記内周壁部とを接続している複数の冷却部と、を有し、前記外周壁部は、前記外周側領域から前記流路に前記第1流体を流入させる複数の流入穴を有し、前記内周壁部は、前記流路から前記内周側領域に前記第1流体を流出させる複数の流出穴を有し、複数の前記環状部材が前記軸線に沿って互いに接続されることで構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、冷却効率を向上させつつ重量の増加をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る燃焼器の断面図である。
図2】環状部材の断面図である(前方接続部なし)。
図3】環状部材の断面図である(前方接続部あり)。
図4図1に示すA部の部分拡大図である。
図5図4に示す矢印Bの方向から見た平面図である。
図6図4に示す切断線VI-VIにおける断面図である。
図7】係合部を有する2つの環状部材の接続部分の近傍を拡大した断面図である。
図8図7に示す矢印Cの方向から見た平面図である。
図9】係合作業の様子を示す平面図である。
図10】変形例に係る環状部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る筒状体の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
本実施形態に係る筒状体は、外周側の領域に第1流体が流れ、内周側の領域に第1流体よりも高温の第2流体が流れるものである。
以下、航空機エンジンの燃焼器を例にして説明するが、本実施形態に係る筒状体は、航空機エンジンの燃焼器に限定されない。
【0013】
[燃焼器の構造について]
図1に示すように、燃焼器1は、例えば、圧縮空気F1(第1流体)が流れるケース2内のケース内流路C1に配置され、燃料ノズル3から吹き込まれる燃料と圧縮空気F1とを混合して燃焼させることでタービンを回転させる高温の燃焼ガスF2(第2流体)を生成する燃焼室C2を画定している機器である。
この燃焼器1は、例えば、航空機に搭載されるターボファンエンジンに適用されるものである。
圧縮空気F1の温度は、例えば、200℃~800℃程度とされる。燃焼ガスF2の温度は、例えば、1000℃~1700℃とされる。なお、これらの温度は例示であり、エンジンの運用条件や仕様によって異なる場合がある。
【0014】
燃焼器1は、全体として軸線Xに沿った筒状をなしており、外側にある領域(外周側領域)に圧縮空気F1が流れており、内側にある領域(内周側領域)に燃焼ガスF2が流れている。すなわち、外周側領域はケース内流路C1に対応して、内側領域は燃焼室C2に対応していることになる。
圧縮空気F1の流れの上流に位置する燃焼器1部分には、燃料を燃焼室C2に吹き込むための燃料ノズル3が接続されている。
【0015】
燃焼器1は、複数の環状部材100を有しており、これらの環状部材100が軸線Xに沿って接続されることで1つの筒状体を構成している。
図1の場合、5つの環状部材100が軸線Xに沿って接続されることで1つの燃焼器1を構成しているが、環状部材100の数はこれに限定されない。
【0016】
環状部材100は、環状部材100A(図2参照)及び環状部材100B(図3参照)を含んでいる。
環状部材100Aは、燃焼器1の前方(圧縮空気F1の流れ方向の上流)に位置する環状部材100で、環状部材100Bは、環状部材100Aの後方(圧縮空気F1の流れ方向の下流)に続く環状部材100である。
【0017】
図2及び図3に示すように、環状部材100A及び環状部材100Bの構造の特徴は、外周壁部110の形状(具体的には前方接続部112fの有無)を除いて、略同一である。そのため、まず環状部材100Aについて説明して、その後、環状部材100Bについて環状部材100Aとの相違部分を主として説明する。
【0018】
なお、以下の説明において、環状部材100Aと環状部材100Bとを区別しない場合は、単に「環状部材100」と記載することもある。
【0019】
図2及び図4に示すように、環状部材100Aは、後方に向かって徐々に縮径した二重の環状の部材であり、外周壁部110、内周壁部120及び複数の冷却ピン130(冷却部)を有している。
【0020】
外周壁部110は、軸線Xを略中心とする一重の環状の部分である。外周壁部110は、例えば、円周方向に分割されていない。
外周壁部110は、内周面110i及び外周面110oを有している。内周面110iは、内周壁部120に対向している。外周面110oは、ケース内流路C1に面しており圧縮空気F1に晒される。
図4に示すように、外周壁部110の後方の端部を含む一部には、後方接続部112bが形成されている。後方接続部112bは、外周面110oの径が拡大した部分であり、後述する環状部材100Bとの接続に用いられる。
【0021】
図2及び図4に示すように、内周壁部120は、軸線Xを略中心とする一重の環状であり、外周壁部110よりも小径とされた部分である。内周壁部120は、例えば、円周方向に分割されていない。
内周壁部120は、外周壁部110の内側において、外周壁部110と略同軸上に配置されている。すなわち、内周壁部120は、外周壁部110と共に二重の円管を構成していることになる。
内周壁部120は、内周面120i及び外周面120oを有している。内周面120iは、燃焼室C2に面しており燃焼ガスF2に晒される。外周面120oは、外周壁部110に対向している。
【0022】
上述の通り、外周壁部110及び内周壁部120によって二重の円管が構成されており、外周壁部110と内周壁部120との間に画定された隙間は冷却流路C3とされている。
【0023】
図4及び図5に示すように、外周壁部110は、内周面110iと外周面110oと貫通する複数の流入穴111を有している。流入穴111は、冷却流路C3の前方において1列で設けられている。1列の流入穴111は、円周方向において軸線Xの周りに所定角度間隔で設けられている。
流入穴111は、空気中に含まれる砂塵によって目詰まりしない程度のサイズ(例えば、インピンジメント・エフュージョン方式の微小穴と比べて大きなサイズ)とされ、例えば、直径が約1mm~3mmとされている。
流入穴111は、ケース内流路C1と冷却流路C3とを連通しており、圧縮空気F1を冷却用空気として冷却流路C3に導く。
なお、流入穴111の列数は、1列に限定されず、2列以上であってもよい。
【0024】
図4及び図6に示すように、内周壁部120は、内周面120iと外周面120oと貫通する複数の流出穴121を有している。流出穴121は、流入穴111よりも後方に複数列で設けられている。1列あたりの流出穴121は、円周方向において軸線Xの周りに所定角度間隔で設けられている。
流出穴121は、流入穴111よりも小さいサイズ(例えば、インピンジメント・エフュージョン方式の微小穴と同程度のサイズ)とされている。
流出穴121は、冷却流路C3と燃焼室C2を連通しており、冷却流路C3に導かれた冷却用空気を燃焼室C2に流出させる。
【0025】
冷却流路C3には、複数の冷却ピン130が配置されている。
冷却ピン130は、外周壁部110の内周面110iと内周壁部120の外周面120oとを接続している部分であり、例えば円柱状の部分とされている(図6参照)。
図6に示すように、複数の冷却ピン130は、冷却流路C3において、内周壁部120に沿った曲面上に拡がるように配置されている。
なお、図4においては、冷却ピン130が冷却流路C3を隔てているように見えるが、実際には、図4の奥及び手前に冷却ピン130が設けられていない空間があり、その空間が冷却流路C3となっている(図6参照)。すなわち、図6に示すように、円柱状の冷却ピン130同士は互いに離間して配置されていることになる。
【0026】
図3及び図4に示すように、環状部材100Bは、環状部材100Aと同様に、外周壁部110、内周壁部120及び複数の冷却ピン130(冷却部)を有している。
【0027】
図4に示すように、外周壁部110の前方の端部を含む一部には、前方接続部112fが形成されている。
前方接続部112fは、外周壁部110が軸線Xの方向において内周壁部120よりも前方に突出した部分であり、前方に位置する環状部材100Aや環状部材100Bとの接続に用いられる。
【0028】
環状部材100A及び環状部材100Bは、それぞれ、外周壁部110、内周壁部120及び複数の冷却ピン130が、締結具を用いることなく一体的に形成されている。例えば、環状部材100は、外周壁部110、内周壁部120及び複数の冷却ピン130が1つの部材で形成されている。
各部が一体化した環状部材100は、例えば、3Dプリント等のAM(Additive Manufacturing)によって製造される。
各部が一体化した環状部材100の材料としては、ニッケルを含んだ超合金が例示される。
【0029】
以上の通り説明した環状部材100A及び環状部材100Bは、図4に示すように、軸線Xに沿って互いに接続されている。
具体的には、前方にある環状部材100(環状部材100A)の後方接続部112bの外周面110oに対して、後方にある環状部材100(環状部材100B)の前方接続部112fの内周面110iが挿入されて接続される。
接続の方法は、ボルト-ナット等の締結具を用いないものが好ましく、焼きばめ等のしまりばめが例示される。また、溶接やロウ付け等によって接合してもよい。この場合、後方接続部112bと前方接続部112fとの境界には接合部151が形成されることになる。
【0030】
なお、後方接続部112bの外周面110oの外径や前方接続部112fの内周面110iの内径が接続の手段に応じて適切に設定されていることは言うまでもない。
【0031】
複数の環状部材100が軸線Xに沿って互いに接続された状態において、前方にある環状部材100(環状部材100A)が有する冷却流路C3の後端は、後方にある環状部材100(環状部材100B)の内周壁部120の内周面120iに向かって開口している。すなわち、冷却流路C3は、内周壁部120の内周面120iに向かう開口141を有していることになる。
この構成によって、環状部材100Aが有する冷却流路C3の開口141から流出した冷却用空気は、環状部材100Bの内周壁部120の内周面120iに沿って流れることになる。
【0032】
[冷却用空気の流れについて]
ケース内流路C1を流れる圧縮空気F1は、環状部材100の外周壁部110が有する流入穴111から冷却用空気として冷却流路C3に導かれる。
【0033】
冷却流路C3に導かれた冷却用空気は、冷却ピン130に衝突しながら冷却流路C3を流れる。
このとき、冷却ピン130が冷却用空気の流れに晒されることで、冷却ピン130と接続された内周壁部120の熱が冷却用空気によって奪われる。これによって、燃焼器1(特に、高温に晒されている内周壁部120)が冷却されることになる。
また、冷却ピン130が外周壁部110及び内周壁部120と1つの部材で一体的に形成されているので、例えば、冷却ピン130と外周壁部110との間の隙間から冷却用空気が漏ることがない。そのため、圧縮空気F1が冷却ピン130に広い面積で接触するので、冷却ピン130による内周壁部120に対する冷却効率を向上させることができる。
【0034】
冷却流路C3に導かれた冷却用空気は、環状部材100の内周壁部120が有する流出穴121及び開口141から燃焼室C2に流出する。
このとき、流出穴121及び開口141から流出した冷却用空気は、内周壁部120の内周面120iに沿って流れて薄い空気の層を形成する。この空気の層によって、内周壁部120のフィルム冷却が行われることになる。
【0035】
各流出穴121の流路面積及び/又は開口141の流路面積を調節することで、各流入穴111から冷却流路C3に流入する圧縮空気F1の流量をコントロールすることができる。
また、各流出穴121の流路面積及び/又は開口141の流路面積を調節することで、各流出穴121から流出する冷却用空気の総量と開口141から流出する冷却用空気の総量との比率をコントロールすることもできる。
【0036】
[係合部について]
以上の通り説明した燃焼器1においては、前方にある環状部材100と後方にある環状部材100とが、しまりばめ、溶接やロウ付け等で接続されていた。
本実施形態の燃焼器1は、これらの接続方法に加えて、前方にある環状部材100と後方にある環状部材100と機械的に係合する要素(係合部)を設けてもよい。
例えば、図7から図9に示すように、後方接続部112bの外周面110oに突起153を設け、前方接続部112fに突起153が引っ掛かる切欠き経路154を設けてもよい。これによって、前方にある環状部材100と後方にある環状部材100とが機械的に引っ掛かり、軸線Xの方向に外れることを回避できる。
【0037】
[遮熱層について]
図10に示すように、最も高温に晒される内周壁部120の内周面120iに遮熱層155を形成してもよい。
遮熱層155は、内周面120iの遮熱性能を向上させるものであれば特に限定されず、YSZ(Yittria-Stabilized Zirconia)を適用した熱遮蔽コーティング等が例示される。
【0038】
[環状部材の変形例について]
環状部材100は、外周壁部110、内周壁部120及び複数の冷却ピン130が、締結具を用いることなく一体的に形成されていればよく、必ずしも1つの部材から形成される必要はない。
例えば、図10に示すように、外周壁部110と冷却ピン130を含んだ内周壁部120とをそれぞれ別の部材で形成した後に、それらを溶接やロウ付けで一体化してもよい。これによって、外周壁部110の材料と内周壁部120(冷却ピン130を含む)の材料とを異ならせることができる。このとき、外周壁部110と冷却ピン130を含んだ内周壁部120との境界には接合部152が形成されることになる。外周壁部110の材料としては、ニッケル基超合金が例示される。また、内周壁部120の材料としては、外周壁部110よりも耐熱性が高いもの(例えば、コバルト等のレアアースを多く含む高温対応ニッケル基超合金)が例示される。
各部は、例えば、3Dプリント等のAM(Additive Manufacturing)によって製造される。
【0039】
[冷却ピンの変形例について]
冷却ピン130は冷却用空気によって効率的に熱が奪われる形状であれば円柱状に限られず、例えば角柱状であってもよいし、板状であってもよい。
【0040】
本実施形態では、以下の効果を奏する。
複数の環状部材100を備え、各環状部材100は、ケース内流路C1に接する環状の外周壁部110と、燃焼室C2に接し、外周壁部110よりも内側に配置されることで外周壁部110との間で冷却流路C3を画定している環状の内周壁部120と、冷却流路C3に配置され、外周壁部110と内周壁部120とを接続している複数の冷却ピン130と、を有し、外周壁部110は、ケース内流路C1から冷却流路C3に圧縮空気F1を流入させる複数の流入穴111を有し、内周壁部120は、冷却流路C3から燃焼室C2域に圧縮空気F1を流出させる複数の流出穴121を有しているので、燃焼ガスF2よりも低温の圧縮空気F1を流入穴111から冷却流路C3に取り込んで流出穴121から吐き出すことで、冷却流路C3には圧縮空気F1の流れが生じるとともに冷却ピン130が圧縮空気F1の流れに晒され、環状部材100(特に、高温の燃焼室C2と接する内周壁部120)を冷却することができる。このとき、冷却ピン130は、外周壁部110と内周壁部120とを接続している(すなわち、外周壁部110及び内周壁部120に対して隙間がない)ので、冷却用流体としての圧縮空気F1が外周壁部110と冷却ピン130との間の隙間から漏れることがない。そのため、圧縮空気F1が冷却ピン130に広い面積で接触するので、冷却ピン130による内周壁部120に対する冷却効率を向上させることができる。
【0041】
また、外周壁部110、内周壁部120及び冷却ピン130は1つの環状部材100として構成されているので、締結具を用いることなく各部を一体化することができる。そのため、締結部による重量の増加をなくすことができる。また、例えば締結具の一部が外れることによる機器の損傷を回避することができる。
【0042】
また、複数の環状部材100が軸線Xに沿って互いに接続されることで燃焼器1が構成されているので、燃焼器1を構成するために各環状部材100を共通の円筒部材(ライナ)で保持する必要がなく、円筒部材や環状部材100を円筒部材に保持するための締結具による重量の増加をなくすことができる。また、例えば締結具の一部が外れることによる機器の損傷を回避することができる。
【0043】
また、前方にある環状部材100の冷却流路C3の後端は、後方にある環状部材100の内周壁部120に向かって開口しているので、開口141から流出した圧縮空気F1を、環状部材100の内周壁部120に沿って流すことができる。そのため、環状部材100の内周壁部120をフィルム冷却することができる。
【0044】
また、軸線Xに沿って互いに接続された複数の環状部材100のうち一の環状部材100が損傷したとしても、その環状部材100だけを交換することができる。
【0045】
また、前方にある環状部材100の外周壁部110と後方にある環状部材100の外周壁部110とは、しまりばめ、溶接又はロウ付けによって接続されているので、締結具を用いることなく環状部材100同士を接続することができる。そのため、締結部による重量の増加をなくすことができる。また、例えば締結具の一部が外れることによる機器の損傷を回避することができる。
【0046】
また、係合部(突起153及び切欠き経路154)が設けられている場合、環状部材100同士が軸線Xの方向に外れる可能性を低減することができる。
【0047】
また、外周壁部110、内周壁部120及び冷却ピン130は、1つの部材で一体的に形成されている場合、環状部材100の製造やハンドリングが容易になる。
【0048】
また、外周壁部110と内周壁部120とが異なる材料から形成されている場合、例えば内周壁部120を外周壁部110よりも耐熱性の高い材料でする等、温度帯に応じた材料の使い分けができる。
【0049】
また、内周壁部120の内周面120iに遮熱層155が形成されている場合、内周壁部120の耐熱性を更に向上させることができる。
【0050】
以上の通り説明した本実施形態に係る筒状体は、例えば、以下のように把握される。
すなわち、本開示の第1態様に係る筒状体(1)は、外周側領域(C1)に第1流体(F1)が流れ、内周側領域(C2)に前記第1流体よりも高温の第2流体(F2)が流れる、軸線(X)に沿って延びている筒状体であって、複数の環状部材(100)を備え、各前記環状部材は、前記外周側領域に接する環状の外周壁部(110)と、前記内周側領域に接し、前記外周壁部よりも内側に配置されることで前記外周壁部との間で流路(C3)を画定している環状の内周壁部(120)と、前記流路に配置され、前記外周壁部と前記内周壁部とを接続している複数の冷却部(130)と、を有し、前記外周壁部は、前記外周側領域から前記流路に前記第1流体を流入させる複数の流入穴(111)を有し、前記内周壁部は、前記流路から前記内周側領域に前記第1流体を流出させる複数の流出穴(121)を有し、複数の前記環状部材が前記軸線に沿って互いに接続されることで構成されている。
【0051】
本態様に係る筒状体によれば、複数の環状部材を備え、各環状部材は、外周側領域に接する環状の外周壁部と、内周側領域に接し、外周壁部よりも内側に配置されることで外周壁部との間で流路を画定している環状の内周壁部と、流路に配置され、外周壁部と内周壁部とを接続している複数の冷却部と、を有し、外周壁部は、外周側領域から流路に第1流体を流入させる複数の流入穴を有し、内周壁部は、流路から内周側領域に第1流体を流出させる複数の流出穴を有しているので、第2流体よりも低温の第1流体を流入穴から流路に取り込み流出穴から吐き出すことで、流路には第1流体の流れが生じるとともに冷却部が第1流体の流れに晒され、環状部材(特に、高温の第2流体と接する内周壁部)を冷却することができる。このとき、冷却部は、外周壁部と内周壁部とを接続している(すなわち、外周壁部及び内周壁部に対して隙間がない)ので、冷却用流体としての第1流体が外周壁部と冷却部との間の隙間から漏れることがない。そのため、第1流体が冷却部に広い面積で接触するので、冷却部による内周壁部に対する冷却効率を向上させることができる。
また、外周壁部、内周壁部及び冷却部は1つの環状部材として構成されているので、締結具を用いることなく各部を一体化することができる。そのため、締結部による重量の増加をなくすことができる。また、例えば締結具の一部が外れることによる機器の損傷を回避することができる。
また、複数の環状部材が軸線に沿って互いに接続されることで筒状体が構成されているので、筒状体を構成するために各環状部材を共通の円筒部材(ライナ)で保持する必要がなく、円筒部材や環状部材を円筒部材に保持するための締結具による重量の増加をなくすことができる。また、例えば締結具の一部が外れることによる機器の損傷を回避することができる。
また、軸線Xに沿って互いに接続された複数の環状部材うち一の環状部材が損傷したとしても、その環状部材だけを交換することができる。
【0052】
また、本開示の第2態様に係る筒状体は、第1態様において、第1の前記環状部材の前記流路の後端は、第2の前記環状部材の前記内周壁部に向かって開口している。
【0053】
本態様に係る筒状体によれば、第2の環状部材の内周壁部に向かって開口しているので、第1の環状部材の流路の後端にある開口(141)から流出した第1流体を、第2の環状部材の内周壁部に沿って流すことができる。そのため、第2の環状部材の内周壁部をフィルム冷却することができる。
【0054】
また、本開示の第3態様に係る筒状体は、第1態様又は第2態様において、第1の前記環状部材の前記外周壁部と第2の前記環状部材の前記外周壁部とは、しまりばめ、溶接又はロウ付けによって接続されている。
【0055】
本態様に係る筒状体によれば、第1の環状部材の外周壁部と第2の環状部材の外周壁部とは、しまりばめ、溶接又はロウ付けによって接続されているので、締結具を用いることなく環状部材同士を接続することができる。そのため、締結部による重量の増加をなくすことができる。また、例えば締結具の一部が外れることによる機器の損傷を回避することができる。
【0056】
また、本開示の第4態様に係る筒状体は、第3態様において、第1の前記環状部材の前記外周壁部及び第2の前記環状部材の前記外周壁部には、前記軸線の方向の抜けを防止する係合部(153,154)が設けられている。
【0057】
本態様に係る筒状体によれば、第1の環状部材の外周壁部及び第2の環状部材の外周壁部には、軸線の方向の抜けを防止する係合部が設けられているので、環状部材同士が軸線の方向に外れる可能性を低減することができる。
【0058】
また、本開示の第5態様に係る筒状体は、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、前記外周壁部、前記内周壁部及び前記冷却部は、一部材で一体的に形成されている。
【0059】
本態様に係る筒状体によれば、外周壁部、内周壁部及び冷却部は、一部材で一体的に形成されているので、環状部材の製造やハンドリングが容易になる。
【0060】
また、本開示の第6態様に係る筒状体は、第1態様から第4態様のいずれかにおいて、前記外周壁部と前記内周壁部とは、異なる材料から形成されている。
【0061】
本態様に係る筒状体によれば、外周壁部と内周壁部とは、異なる材料から形成されているので、例えば内周壁部を外周壁部よりも耐熱性の高い材料でする等、温度帯に応じた材料の使い分けができる。
【0062】
また、本開示の第7態様に係る筒状体は、第1態様から第6態様のいずれかにおいて、前記内周壁部の内周面には、遮熱層155が形成されている。
【0063】
本態様に係る筒状体によれば、内周壁部の内周面には、遮熱層が形成されているので、内周壁部の耐熱性を更に向上させることができる。
【0064】
また、本開示の第8態様に係る筒状体は、第1態様から第7態様のいずれかにおいて、燃焼器とされている。
【0065】
本態様に係る筒状体によれば、航空機エンジンの燃焼器とされているので、外周側領域に空気が流れ、内周側領域に高温の燃焼ガスが流れる燃焼器の冷却を行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
1 燃焼器(筒状体)
2 ケース
3 燃料ノズル
100(100A,100B) 環状部材
110 外周壁部
110i 内周面
110o 外周面
111 流入穴
112b 後方接続部
112f 前方接続部
120 内周壁部
120i 内周面
120o 外周面
121 流出穴
130 冷却ピン(冷却部)
141 開口
151 接合部
152 接合部
153 突起
154 切欠き経路
155 遮熱層
C1 ケース内流路(外周側領域)
C2 燃焼室(内周側領域)
C3 冷却流路(流路)
X 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10