(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067776
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】動釣合い試験機用の被試験体支持装置および動釣合い試験機
(51)【国際特許分類】
G01M 1/16 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
G01M1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178100
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000150729
【氏名又は名称】株式会社長浜製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久松 正典
(72)【発明者】
【氏名】霜倉 宜夫
(72)【発明者】
【氏名】菊池 亮介
【テーマコード(参考)】
2G021
【Fターム(参考)】
2G021AC03
2G021AC11
2G021AD05
2G021AF03
2G021AG06
(57)【要約】
【課題】被試験体の内周を支持しながら、被試験体を回転軸線のまわりに高精度に回転させることができる、動釣合い試験機用の被試験体支持装置を提供する。被試験体の内周を支持しながら、被試験体の動不釣合いを高精度に測定できる動釣合い試験機を提供する。
【解決手段】第1被試験体支持装置5A(被試験体支持装置)および第2被試験体支持装置5B(被試験体支持装置)は、動釣合い試験機1において、被試験体2の一端側および他端側の内周を、水平な回転軸方向Xに延びる回転軸線Aまわりに回転可能に支持する。第1および第2被試験体支持装置5A,5Bは、被試験体2の内周面に対向する、回転軸線Aを中心とする円筒状の外周面32を備えている。外周面32は、周方向Sに沿って並んだ複数の噴射口33を有している。複数の噴射口33から噴射される流体によって、被試験体2の内周面が支持される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動釣合い試験機において、被試験体を、水平な回転軸方向に延びる回転軸線まわりに回転可能に支持する、動釣合い試験機用の被試験体支持装置であって、
前記被試験体の内周面に対向する、前記回転軸線を中心とする円筒状の外周面であって、周方向に沿って並んだ複数の噴射口を有する外周面と、
前記複数の噴射口に流体を供給する流体供給機構と、を含み、
前記複数の噴射口から噴射される流体によって前記被試験体の前記内周面が支持される、被試験体支持装置。
【請求項2】
前記被試験体に内嵌される円柱状の支持本体であって、前記被試験体に内嵌めされる側と反対側の反対側端面、および前記外周面を有する支持本体をさらに含み、
前記反対側端面には流体流入口が形成されており、
前記流体供給機構は、
前記支持本体の内部において前記流体流入口および前記複数の噴射口に連通する流体流通路と、
前記流体流入口に流体を供給する流体供給ユニットと、を含む、請求項1に記載の被試験体支持装置。
【請求項3】
前記流体流通路は、
前記流体流入口に連通し、前記回転軸方向に延びる軸方向流通路と、
複数の連通路であって、前記複数の噴射口のそれぞれおよび前記軸方向流通路に連通する連通路と、を含む、請求項2に記載の被試験体支持装置。
【請求項4】
前記支持本体は、前記反対側端面と前記支持本体における前記被試験体に内嵌めされる側の内嵌め側端面とを貫通し、前記支持本体と前記外周面とによって囲まれた内部空間に供給された流体を、前記被試験体の外側に逃すための逃がし穴を有する、請求項3に記載の被試験体支持装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の被試験体支持装置と、
前記被試験体支持装置によって前記回転軸線まわりに回転可能に支持されている前記被試験体を回転させる回転駆動部と、を含む、動釣合い試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動釣合い試験機において被試験体を支持するための動釣合い試験機用の被試験体支持装置、および動釣合い試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被試験体の動不釣合いを測定する動釣合い試験機が知られている。被試験体がシャフトを有しない構成である場合には、シャフトに代わる仮の回転軸を使用する必要があり、この場合には、被試験体の内周を支持することが考えられる。被試験体の内周を支持して、被試験体の動不釣合いを測定する動釣合い試験機として、特許文献1に記載の動釣合い試験装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の動釣合い試験装置では、被試験体の内周面にそれぞれ内接する一対の支持ローラによって、被試験体の一端および他端のそれぞれが、予め定める水平な回転中心軸まわりに回転可能に支持される。そして、被試験体を回転中心軸まわりに回転させたときの被試験体の振動に基づいて、その被試験体の動不釣合いが算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動釣合い試験機(動釣合い試験装置)において被試験体の動不釣合いを正確に測定するためには、被試験体を回転軸線(回転中心軸)のまわりに高精度に回転させる必要がある。
【0006】
しかし、支持ローラで被試験体を内接支持する上記の方式では、被試験体の内周面の寸法誤差および真円度、支持ローラの寸法誤差および取り付け誤差に起因して、被試験体を回転軸線まわりに高精度に回転させることができないおそれがある。とくに、2つの支持ローラによって被試験体の内周面の2箇所を内接支持する特許文献1に記載の動釣合い試験装置では、これらの誤差等がより一層顕在化し、被試験体の回転軸線のまわりの回転を、高精度に行えないおそれがある。また、被試験体の内周面における支持ローラの2箇所の接触位置の寸法差に起因して、測定回転時に回転軸線方向の力が発生する。この回転軸線方向の力は流れ止め等によって受け止められるが、それにより動不釣合いの測定に影響を及ぼすことがある。それらの結果、特許文献1に記載の動釣合い試験装置では、被試験体の動不釣合いを高精度に測定できないおそれがある。
【0007】
また、特許文献1に記載の支持手法では、測定により、被試験体の内周面に走行痕が付くという問題がある。
【0008】
この発明は、このような背景のもとになされたものであり、被試験体の内周を支持しながら、被試験体を回転軸線のまわりに高精度に回転させることができる、動釣合い試験機用の被試験体支持装置を提供することを目的とする。また、この発明は、被試験体の内周を支持しながら、被試験体の動不釣合いを高精度に測定できる動釣合い試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一実施形態は、動釣合い試験機(1)において、被試験体(2)を、水平方向に延びる回転軸線(A)まわりに回転可能に支持する、動釣合い試験機用の被試験体支持装置(5A,5B)を提供する。前記被試験体支持装置が、前記被試験体の内周面(73)に対向する、前記回転軸線を中心とする円筒状の外周面(32)であって、周方向(S)に沿って並んだ複数の噴射口(33)を有する外周面と、前記複数の噴射口に流体を供給する流体供給機構(35,44)と、を含む。そして、前記複数の噴射口から噴射される流体によって前記被試験体の前記内周面が支持される。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0010】
この構成によれば、複数の噴射口から噴射される流体によって、被試験体の内周面と支持本体の外周面との間に流体膜が形成され、この流体膜によって被試験体の内周面が非接触で支持される。外周面が被試験体の内周面に接触しないので、被試験体の内周位置が、外周面の寸法誤差および取り付け誤差の影響、ならびに被試験体の内周面の寸法誤差および真円度等の影響を受けない。そのため、被試験体の内周面を支持部材で接触支持する方式と比較して、被試験体を高精度に支持できる。すなわち、被試験体の内周を支持しながら、被試験体を回転軸線のまわりに高精度に回転させることができる。
【0011】
この発明の一実施形態では、前記被試験体支持装置が、前記被試験体に内嵌される円柱状の支持本体(10)であって、前記被試験体に内嵌めされる側と反対側の反対側端面(31)、および前記外周面を有する支持本体をさらに含む。そして、前記反対側端面には流体流入口(34)が形成されている。そして、前記流体供給機構は、前記支持本体の内部において前記流体流入口および前記複数の噴射口に連通する流体流通路(35)と、前記流体流入口に流体を供給する流体供給ユニット(44)と、を含む。
【0012】
この構成によれば、支持本体の内部に形成された流体流通路を通って、流体供給ユニットからの流体を複数の噴射口に供給できる。これにより、支持本体の内部を通った複数の噴射口への流体の供給を良好に実現できる。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記流体流通路が、前記流体流入口に連通し、前記回転軸方向に延びる軸方向流通路(36)と、複数の連通路(37)であって、前記複数の噴射口のそれぞれおよび前記軸方向流通路に連通する連通路と、を含む。
【0014】
この構成によれば、流体流入口から流入した流体は、軸方向流通路および複数の軸方向流通路を通って複数の噴射口に供給され、複数の噴射口から噴射される。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記支持本体が、前記反対側端面と前記支持本体における前記被試験体に内嵌めされる側の内嵌め側端面(30)とを貫通し、前記支持本体と前記外周面とによって囲まれた内部空間(40)に供給された流体を、前記被試験体の外側に逃すための逃がし穴(39)を有する。
【0016】
この構成によれば、内部空間に供給された流体を、支持本体に形成された逃がし穴によって被試験体の外側に逃すことができる。これにより、内部空間の内圧が高くなることを未然に防止できる。
【0017】
この発明の一実施形態は、前記被試験体支持装置と、前記被試験体支持装置によって前記回転軸線まわりに回転可能に支持されている前記被試験体を回転させる回転駆動部(6)と、を含む、動釣合い試験機(1)を提供する。
【0018】
この構成によれば、被試験体支持装置によって、被試験体を、回転軸線のまわりに高精度に支持可能である。そのため、被試験体の内周を支持しながら、被試験体の動不釣合いを高精度に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機の斜視図である。
【
図2】
図2は、前記動釣合い試験機の斜視図であり、
図1とは異なる方向から見ている。
【
図3】
図3は、前記動釣合い試験機に含まれる第1被試験体支持装置および第2被試験体支持装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、動不釣合いの測定前における、前記第1被試験体支持装置および前記第2被試験体支持装置の状態を示す平面図である。
【
図5】
図5は、動不釣合いの測定時における、前記第1被試験体支持装置および前記第2被試験体支持装置の状態を示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図4の切断面線VII-VIIから見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、この発明の実施形態について詳細に説明する。動釣合い試験機1は、被試験体2の一端部および他端部の内周を支持して、被試験体2の動不釣合いを測定する試験機である。
【0021】
図1および
図2に示すように、動釣合い試験機1は、左右に延びる中心線を有する被試験体2の動不釣合いを測定する横型のバランシングマシンである。動釣合い試験機1は、床面に固定された、たとえば板状のベース3と、ベース3の真上に配置され、ベース3に振動可能に支持された略水平の振動枠4と、振動枠4上に固定され、被試験体2を回転軸線A(
図6~
図8参照)まわりに回転可能に支持する第1被試験体支持装置(被試験体支持装置)5A(
図1参照)および第2被試験体支持装置(被試験体支持装置)5B(
図2参照)と、第1および第2被試験体支持装置5A,5Bに支持されている被試験体2を回転させる回転駆動部6と、回転中における振動枠4の振動を感知する振動ピックアップ7,8と、振動を計測する計測部70と、動釣合い試験機1の全体の動作を制御する制御部80と、を備えている。
【0022】
第1および第2被試験体支持装置5A,5Bによって支持された状態で回転する、被試験体2の回転軸線Aは、水平方向に沿っている。回転軸線Aの延びる左右方向を、回転軸方向Xという。以降の説明において、左側(
図1における左奥側および
図2における左手前側)が、回転軸方向Xにおける一方側X1であり、右側(
図1における右手前側および
図2における右奥側)が、回転軸方向Xにおける他方側X2とする。
【0023】
図1および
図2に示すように、ベース3上には、上下に延びる複数(たとえば4つ)の棒状または板状のばね9(
図1および
図2の例では、棒状)が立設されている。ばね9の一端および他端が、それぞれベース3および振動枠4に架け渡されている。振動枠4の四隅にばね9が接続されることにより、複数(たとえば4つ)のばね9によって下方から支持されている。これにより、振動枠4は、複数(たとえば4つ)のばね9を介して、ベース3によって振動可能に支持されている。
【0024】
振動枠4には、振動ピックアップ7,8が配置されており、振動ピックアップ7,8の検出出力が計測部70に与えられる。振動ピックアップ7,8として、公知の振動検出器を採用できる。計測部70および制御部80は、マイクロコンピュータやメモリを含む構成である。計測部70は、振動ピックアップ7,8の検出値に基づいて、振動枠4の振動を演算により求める。
【0025】
図1および
図2に示すように、第1被試験体支持装置5Aは、被試験体2を一方側X1から支持し、第2被試験体支持装置5Bは、被試験体2を他方側X2から支持する。第1および第2被試験体支持装置5A,5Bは、互いに同等の構成を有している。第1および第2被試験体支持装置5A,5Bの構成について、穴径やストローク等の細部構成が互いに異なっていてもよいのは言うまでもない。第1および第2被試験体支持装置5A,5Bは、回転軸方向Xに関して、互いに逆向きに配置されている。第2被試験体支持装置5Bの各構成のうち第1被試験体支持装置5Aの各構成と共通する部分には、
図1~
図8において、第1被試験体支持装置5Aの場合と同一の参照符号を付す。
【0026】
図1および
図2に示すように、第1被試験体支持装置5Aは、振動枠4の上面に固定される第1固定板12Aを介して、振動枠4に結合されている。第1被試験体支持装置5Aは、第1固定板12Aに、回転軸方向Xにスライド可能に取り付けられている。すなわち、第1被試験体支持装置5Aは、振動枠4に対し、回転軸方向Xにスライド可能である。第2被試験体支持装置5Bは、振動枠4の上面に固定される第2固定板12Bを介して、振動枠4に結合されている。第2被試験体支持装置5Bは、第2固定板12Bに、回転軸方向Xにスライド可能に取り付けられている。すなわち、第2被試験体支持装置5Bは、振動枠4に対し、回転軸方向Xにスライド可能である。
【0027】
図3に示すように、第1および第2被試験体支持装置5A,5Bは、被試験体支持部11を備えている。第1被試験体支持装置5Aの被試験体支持部11および第2被試験体支持装置5Bの被試験体支持部11は、それぞれ、被試験体2の一方側X1の内周および被試験体2の他方側X2の内周を回転可能に支持する。第1被試験体支持装置5Aの被試験体支持部11と、第2被試験体支持装置5Bの被試験体支持部11とが、互いに回転軸方向Xに対向している。
【0028】
図3に示すように、被試験体支持部11は、回転軸方向Xに沿う中心線を有する円柱状の支持本体10を備えている。第1被試験体支持装置5Aの支持本体10、および第2被試験体支持装置5Bの支持本体10の中心線は、互いに一致しており、いずれも回転軸線Aである。そして、第1被試験体支持装置5Aの支持本体10と第2被試験体支持装置5Bの支持本体10とは、互いに回転軸方向Xに対向して配置されている。
【0029】
図1および
図2に示すように、回転駆動部6は、本体部13と、本体部13に取り付けられた複数のプーリ14(
図2参照)と、複数のプーリ14に架け渡された無端ベルト15と、複数のプーリ14のうちの駆動プーリ(図示しない)を回転させるための駆動モータ16(
図1参照)と、を備えている。駆動モータ16は、制御部80に電気的に接続されている。本体部13は、ベース3に固定された鉛直姿勢の固定板17と、固定板17から上方に延び、かつ固定板17に対して姿勢変更可能な一対の可動アーム18と、を備えている。固定板17には、駆動モータ16が固定されている。複数のプーリ14(
図2参照)は、固定板17および一対の可動アーム18の双方に分かれて配置されている。一対の可動アーム18は、振動枠4の内部開口19を介して、振動枠4を上下に跨っている。一対の可動アーム18の上端部は、第1および第2被試験体支持装置5A,5Bに支持される被試験体2の両側方(回転軸方向Xに直交する水平方向)に位置している。
【0030】
図2に示すように、複数のプーリ14は、いずれも、回転軸方向Xと平行な回転軸まわりに回転可能である。一対の可動アーム18には、複数のプーリ14のうちの幾つかが取り付けられている。そのため、可動アーム18の姿勢変更により、複数のプーリ14に架け渡されている無端ベルト15の姿勢も変わる。一対の可動アーム18は、接触姿勢(
図1および
図2参照)と退避姿勢(図示しない)との間で姿勢変形可能である。一対の可動アーム18が接触姿勢(
図1および
図2に示す姿勢)にあるときは、第1および第2被試験体支持装置5A,5Bによって回転可能に支持されている被試験体2の外周面に、無端ベルト15が密着する。この状態で、制御部80が駆動モータ16を回転させて、複数のプーリ14のうちの駆動プーリ(図示しない)を回転駆動することにより、外周面に密着している無端ベルト15が回転することにより、被試験体2が回転軸線Aまわりに回転する。
【0031】
図1~
図3に示すように、第1被試験体支持装置5Aは、第1固定板12A上に、回転軸方向Xにスライド可能に取り付けられたスライド板25と、スライド板25上に固定された支持ベース26と、支持ベース26に対し他方側X2に配置された被試験体支持部11と、支持ベース26と被試験体支持部11とを回転軸方向Xに接続する接続部27と、を備えている。第2被試験体支持装置5Bも同様の構成を備えているが、第2被試験体支持装置5Bでは、スライド板25が第2固定板12B上に固定されており、被試験体支持部11が支持ベース26に対し一方側X1に配置されている。
【0032】
図1~
図5に示すように、動釣合い試験機1は、第1被試験体支持装置5Aを、振動枠4に対して回転軸方向Xに移動させる第1スライド駆動部20Aと、第2被試験体支持装置5Bを回転軸方向Xに移動させる第2スライド駆動部20Bと、をさらに備えている。
【0033】
図1~
図5に示すように、第1スライド駆動部20Aは、第1シリンダ21Aと、第1シリンダ21Aに対して他方側X2に進出可能な第1ロッド22Aと、を備えている。
【0034】
図1~
図5に示すように、第2スライド駆動部20Bは、第2シリンダ21Bと、第2シリンダ21Bに対して他方側X2に進出可能な第2ロッド22Bと、を備えている。第1シリンダ21Aおよび第2シリンダ21Bは、制御部80に電気的に接続され、空気圧制御により、ロッド22A,22Bの位置を、前進位置と後退位置との間で切り替えている。
【0035】
動釣合い試験機1において、第1および第2被試験体支持装置5A,5Bの振動枠4に対する回転軸方向Xの位置は、動不釣合いの測定前と動不釣合いの測定時とで異なる。動不釣合いの測定前には、第1被試験体支持装置5Aの被試験体支持部11と、第2被試験体支持装置5Bの被試験体支持部11とは、
図4に示すように、回転軸方向Xに十分な間隔を隔てて配置されている。この状態で、被試験体支持部11と、第2被試験体支持装置5Bの被試験体支持部11との間に、試験対象の被試験体2を進入させることが可能である。第1および第2被試験体支持装置5A,5Bが
図4に示す位置にあるときには、第1ロッド22Aおよび第2ロッド22Bはいずれも後退位置にある。
【0036】
一方、動不釣合いの測定時には、第1被試験体支持装置5Aの被試験体支持部11と、第2被試験体支持装置5Bの被試験体支持部11とが、
図5に示すように、互いに接近している。第1および第2被試験体支持装置5A,5Bが
図5に示す位置にあるときには、第1ロッド22Aおよび第2ロッド22Bは、いずれも前進位置にある。
【0037】
図3および
図6に示すように、支持本体10は、円柱状をなしている。支持本体10は、円形の対向側端面(内嵌め側端面)30(
図6参照)と、対向側端面30と反対側の反対側端面(
図6参照)31と、対向側端面30および反対側端面31に連なる外周面32と、を有している。外周面32の外径は、測定対象の被試験体2の内径(すなわち、後述する装着円筒部72の内径)よりも僅かに小さく設定されている。第1被試験体支持装置5Aの外周面32の中心線と、第2被試験体支持装置5Bの外周面32の中心線とは互いに一致しており、これらの中心線が回転軸線Aとして機能する。また、第1被試験体支持装置5Aの対向側端面30と、第2被試験体支持装置5Bの対向側端面30とは、互いに対向している。第1被試験体支持装置5Aの対向側端面30および第2被試験体支持装置5Bの対向側端面30は、回転軸方向Xに直交している。
【0038】
図3、
図6および
図7に示すように、外周面32には、流体(水等の液体や、エア等の気体)を噴射する噴射口33が、複数(たとえば12つ)開口している。噴射口33は、外周面32の径方向の外方に向けて流体を吐出する。複数の噴射口33は、外周面32の周方向Sに沿って配列されている。
図3および
図7等の例では、複数の噴射口33は一列に配列されているが、複数列に配列されていてもよい。
図6および
図8に示すように、第1および第2被試験体支持装置5A,5Bにおいて、対向側端面30と反対側の反対側端面31には、1つの流体流入口34が開口している。1つの流体流入口34は、回転軸方向X上に位置していてもよい。
【0039】
第1および第2被試験体支持装置5A,5Bにおいて、支持本体10の内部には、流体流入口34と複数の噴射口33とを連通する流体流通路(流体供給機構)35が形成されている。
図6および
図7に示すように、流体流通路35は、回転軸方向Xに沿って延びる軸方向流通路36と、支持本体10の径方向に沿って放射状に延びる複数の連通路37と、軸方向流通路36と複数の連通路37とを接続する筒状の接続空間45とを備えている。軸方向流通路36は、接続空間45を介して流体流入口34に連通している。複数の連通路37は、噴射口33の個数と同数(たとえば12つ)設けられている。複数の連通路37は、軸方向流通路36と複数の噴射口33とに連通する。接続空間45は、回転軸線Aを中心とする円筒状の空間である。
【0040】
被試験体支持部11は、流体流入口34に流体を供給する流体供給ユニット(流体供給機構)44をさらに備えている。流体供給ユニット44は、流体流入口34に接続されたコネクタ38と、外部の流体供給装置42(たとえばコンプレッサ等)と、コネクタ38と流体供給装置42とを接続するホース43と、を備えている。流体供給装置42は、制御部80に電気的に接続されている。
【0041】
また、
図7および
図8に示すように、支持本体10には、対向側端面30と反対側端面31とを貫通する逃がし穴39が形成されている。逃がし穴39は、被試験体2の内周面と、2つの支持本体10(第1および第2被試験体支持装置5A,5Bの支持本体10)の対向側端面30とによって囲まれた内部空間40の内圧を逃す。別の言葉でいえば、逃がし穴39は、内部空間40に供給された流体を逃がす。逃がし穴39は、回転軸方向Xに沿って延びていてもよい。支持本体10に形成される逃がし穴39の個数は、
図7および
図8の例では2つであるが、3つ以上の複数であってもよいし、1つであってもよい。
【0042】
図6に示すように、被試験体2は、中心軸まわりに回転対称に形成された構造部材である。被試験体2は、円筒状である。被試験体2の典型例は、シャフトを有していない回転体である。このような被試験体2の一例として、モータの回転子、フライホイール、羽根車、回転翼等の回転体を例示できる。被試験体2は、たとえばアルミニウム合金等の金属材料を用いて形成されている。
【0043】
具体的には、被試験体2は、被試験本体71と、被試験本体71の内方に配置され、被試験本体71に一体的に設けられた装着円筒部72とを備えている。装着円筒部72の内周は、一方側X1の第1内周面73Aと、他方側X2の第2内周面73Bと、第1内周面73Aと第2内周面73Bとの間に形成された中間内周面75とを含む。第1内周面73A、第2内周面73Bおよび中間内周面75はいずれも、互いに共通する中心軸まわり円筒面である。中間内周面75の内径は、第1内周面73Aおよび第2内周面73Bの内径よりも小さい。以降の説明において、第1内周面73Aおよび第2内周面73Bのそれぞれのことを、単に「内周面73」という場合がある。
【0044】
第1および第2被試験体支持装置5A,5Bによる、被試験体2の内周の支持について説明する。第1および第2被試験体支持装置5A,5Bによる被試験体2の内周の支持状態では、第1被試験体支持装置5Aの支持本体10および第2被試験体支持装置5Bの支持本体10が、装着円筒部72に、それぞれ、一方側X1および他方側X2から内嵌されている。これにより、第1被試験体支持装置5Aの支持本体10および第2被試験体支持装置5Bの支持本体10によって、被試験体2の第1内周面73Aおよび第2内周面73Bが支持される。この内嵌状態において、第1被試験体支持装置5Aの外周面32が第1内周面73Aに対向し、かつ第2被試験体支持装置5Bの外周面32が第2内周面73Bに対向している。
【0045】
この状態において、制御部80は、外部の流体供給装置42からコネクタ38を介して流体流入口34に流体を供給する。以下、流体流入口34に供給される流体が、エア等の気体である場合について説明する。流体供給装置42から流体流入口34に供給された圧縮気体は、軸方向流通路36に進入し、軸方向流通路36から筒状の接続空間45に進む。接続空間45に供給された圧縮気体は、複数の連通路37に進む。複数の連通路37を流れる圧縮気体は、複数の噴射口33に供給され、複数の噴射口33から噴射される。複数の噴射口33から噴射された圧縮気体は、支持本体10の外周面32と被試験体2の内周面73との間に供給され、支持本体10の外周面32と被試験体2の内周面73との間に、その全域に亘って、気体膜(流体膜)が形成される。この気体膜によって被試験体2の内周面73が非接触で支持される。支持本体10の外周面32が被試験体2の内周面73に接触しないので、被試験体2の内周位置が、被試験体2の内周面73の寸法誤差および真円度、支持本体10の外周面32の寸法誤差および取り付け誤差等の影響を受けない。そのため、被試験体2の内周面73を接触支持する方式(たとえば、特許文献1に記載の方式)と比較して、被試験体2を高精度に回転させることができる。
【0046】
また、支持本体の内部に形成された流体流通路35を通って、流体供給ユニット44からの流体を複数の噴射口33に供給できる。そして、流体流通路35が複数の連通路37を含むので、複数の噴射口33への圧縮気体の供給を、少ない個数(たとえば1つ)の流体流入口34や、少ない個数(たとえば1つ)の流体供給ユニット44によって実現できる。これにより、流体供給機構の簡素化を図ることができる。
【0047】
また、第1および第2被試験体支持装置5A,5Bによって被試験体2が支持されている状態においては、被試験体2の装着円筒部72の内周面73と、2つの支持本体10(第1および第2被試験体支持装置5A,5Bの支持本体10)の対向側端面30とによって区画される内部空間40が、閉鎖空間になる。被試験体2の内周面73に供給された圧縮気体は、逃がし穴39を通って、内部空間40から外部に逃がされる。これにより、内部空間40の内圧が高くなることを未然に防止できる。
【0048】
次に、動釣合い試験機1による被試験体2の動不釣合いの測定について説明する。動不釣合いを測定する際には、作業者は、まず、一対の可動アーム18が退避姿勢にあり、かつ第1および第2被試験体支持装置5A,5Bが
図4に示す測定前の位置にある状態で、第1被試験体支持装置5Aと第2被試験体支持装置5Bとの間に、被試験体2を左右方向に向けた姿勢でリフタ(図示しない)に配置する。その後、制御部80が第1シリンダ21Aおよび第2シリンダ21Bを制御して、第1および第2被試験体支持装置5A,5Bを互いに接近させる。その後、リフタが下降する。これにより、第1被試験体支持装置5Aの支持本体10が被試験体2に一方側X1から内嵌され、かつ第2被試験体支持装置5Bの支持本体10が被試験体2に他方側X2から内嵌された状態が実現される(
図3および
図5参照)。また、制御部80は、外部の流体供給装置42を制御して、流体流入口34に圧縮気体を供給する。これにより、複数の噴射口33から圧縮気体が噴射され、これにより、支持本体10の外周面32と被試験体2の内周面73との間に気体膜が形成され、この気体膜によって被試験体2の内周面73が非接触で支持される。これにより、第1および第2被試験体支持装置5A,5Bによって、被試験体2が回転軸線Aまわりに回転可能に支持される。複数の噴射口33からの圧縮気体の噴射開始タイミングは、支持本体10に被試験体2が装着される前であってもよいし、装着された後であってもよい。
【0049】
そして、可動アーム18接触姿勢(
図1および
図2参照)を姿勢変更した後、制御部80は、駆動モータ16を制御して無端ベルト15を回転開始させる。無端ベルト15の回転に伴って、被試験体2が回転軸線Aまわりに回転駆動される。被試験体2の回転方向は、他方側X2(
図1等参照)から一方側X1を見て、時計回りである。そして、被試験体2の回転中における振動枠4の振動(の振幅や位相)に基づいて、計測部70が被試験体2の動不釣合いを演算により求める。
【0050】
被試験体2を回転軸線Aのまわりに高精度に回転させながら、被試験体2の動不釣合いを測定できるので、これにより、被試験体2の動不釣合いを高精度に測定できる。
【0051】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 :動釣合い試験機
2 :被試験体
5A :第1被試験体支持装置(被試験体支持装置)
5B :第2被試験体支持装置(被試験体支持装置)
6 :回転駆動部
10 :支持本体
30 :対向側端面(内嵌め側端面)
31 :反対側端面
32 :外周面
33 :噴射口
34 :流体流入口
35 :流体流通路(流体供給機構)
36 :軸方向流通路
37 :連通路
39 :逃がし穴
40 :内部空間
44 :流体供給ユニット(流体供給機構)
73 :内周面
A :回転軸線
S :周方向