(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067785
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】養殖槽と波動ポンプの組合せ構造
(51)【国際特許分類】
A01K 63/04 20060101AFI20240510BHJP
F03B 13/14 20060101ALI20240510BHJP
A01K 61/60 20170101ALI20240510BHJP
【FI】
A01K63/04 E
F03B13/14
A01K61/60
A01K63/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178114
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮部 善和
(72)【発明者】
【氏名】小野林 稔
(72)【発明者】
【氏名】堤 英紀
【テーマコード(参考)】
2B104
3H074
【Fターム(参考)】
2B104CA01
2B104CB41
2B104CC02
2B104CG26
2B104EB07
3H074AA02
3H074AA12
3H074AA15
3H074BB30
3H074CC16
(57)【要約】
【課題】養殖槽の気相に積極的に圧縮空気を供給することにより、養殖槽における水棲生物の適切な生息環境を維持する。
【解決手段】養殖槽と波動ポンプの組合せ構造10は、水棲生物に生息環境を提供する養殖槽12と、波力により圧縮空気を発生する波動ポンプ14と、養殖槽12と波動ポンプ14との間に配設され、波動ポンプ14により発生させられる圧縮空気を養殖槽12の気相22に供給する圧縮空気供給装置16とを備えている。これにより、波動ポンプ14から供給される空気により養殖槽12の気相22の改善が図られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水棲生物に生息環境を提供する養殖槽と、波力により圧縮空気を発生する波動ポンプと、前記養殖槽と前記波動ポンプとの間に配設され、前記波動ポンプにより発生させられた圧縮空気を前記養殖槽の気相に供給する圧縮空気供給装置とを備えて、前記波動ポンプから供給される空気により前記養殖槽の気相の改善を図る、養殖槽と波動ポンプの組合せ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の養殖槽と波動ポンプの組合せ構造であって、
前記波動ポンプは、波力発電装置の構成要素として構成されている、養殖槽と波動ポンプの組合せ構造。
【請求項3】
請求項1に記載の養殖槽と波動ポンプの組合せ構造であって、
前記養殖槽には、湿泥の基底と、前記圧縮空気供給装置からの圧縮空気により前記基底を攪拌するエアリフトポンプを備える、養殖槽と波動ポンプの組合せ構造。
【請求項4】
請求項1に記載の養殖槽と波動ポンプの組合せ構造であって、
前記養殖槽には当該養殖槽が備える電子機器に基づく発熱部を備え、前記圧縮空気供給装置からの圧縮空気が当該発熱部にも供給される構成となっている、養殖槽と波動ポンプの組合せ構造。
【請求項5】
請求項1に記載の養殖槽と波動ポンプの組合せ構造であって、
当該組合せ構造は海岸に配置されるものであり、前記養殖槽と前記波動ポンプはともには浮体式構造物であり、前記波動ポンプは前記養殖槽より沖側に設置される、養殖槽と波動ポンプの組合せ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、養殖槽と波動ポンプの組合せ構造に関する。詳細には、養殖槽の気相に圧縮空気を供給することにより水棲生物の生育環境を良好に維持することのできる養殖槽と波動ポンプの組合せ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水棲生物の生息環境を維持するための人工干潟が提案されている。人工干潟としては、下記特許文献1に示される養殖槽がある。通常、これらの養殖槽には、生息環境を形成する外周に、護岸や消波壁の擁壁が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した人工干潟を形成する養殖槽にあっては、養殖槽の外周に形成される擁壁のため、養殖槽における水面の上部の気相が悪化する問題がある。すなわち、養殖槽における生息環境の温度が過昇したり、生息環境から排出されるメタンガス等のガスが気相に滞留したりして、生息環境が悪化し、水棲生物の生育に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0005】
このため、人工干潟を形成する養殖槽にあっても、水棲生物の適切な生息環境を維持することのできる養殖槽の提案が望まれている。
【0006】
而して、本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、上述した点に鑑みて創案されたものであって、養殖槽の気相に積極的に圧縮空気を供給することにより、養殖槽における水棲生物の適切な生息環境を維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本明細書に開示の養殖槽と波動ポンプの組合せ構造は、次の手段をとる。
【0008】
第1の手段は、水棲生物に生息環境を提供する養殖槽と、波力により圧縮空気を発生する波動ポンプと、前記養殖槽と前記波動ポンプとの間に配設され、前記波動ポンプにより発生させられた圧縮空気を前記養殖槽の気相に供給する圧縮空気供給装置とを備えて、前記波動ポンプから供給される空気により前記養殖槽の気相の改善を図る、養殖槽と波動ポンプの組合せ構造である。
【0009】
上記第1の手段によれば、波動ポンプにより養殖槽に圧縮空気供給装置を通じて圧縮空気が供給される。これにより、波力エネルギーの自然エネルギーを用いた圧縮空気で経済的に養殖槽の気相の通気性が改善でき、水棲生物の生育環境を良好に維持することができる。
【0010】
第2の手段は、前述した第1の手段における養殖槽と波動ポンプの組合せ構造であって、前記波動ポンプは、波力発電装置の構成要素として構成されている、養殖槽と波動ポンプの組合せ構造である。
【0011】
上記第2の手段によれば、波動ポンプは波力発電装置の構成要素として構成されているので、波力発電装置により発生される電力を、例えば、養殖槽が備える電子機器の電力として利用することができる。
【0012】
第3の手段は、前述した第1の手段における養殖槽と波動ポンプの組合せ構造であって、前記養殖槽には、湿泥の基底と、前記圧縮空気供給装置からの圧縮空気により前記基底を攪拌するエアリフトポンプとを備える、養殖槽と波動ポンプの組合せ構造である。
【0013】
上記第3の手段によれば、養殖槽にはエアリフトポンプを備え、圧縮空気供給装置から供給される圧縮空気を利用して、エアリフトポンプにより養殖槽の基底の攪拌が行われる。これにより、養殖槽の基底を良好な状態とすることができて、水棲生物の生育環境を良好に維持することができる。
【0014】
第4の手段は、前述した第1の手段における養殖槽と波動ポンプの組合せ構造であって、前記養殖槽には当該養殖槽が備える電子機器に基づく発熱部を備え、前記圧縮空気供給装置からの圧縮空気が当該発熱部にも供給される構成となっている、養殖槽と波動ポンプの組合せ構造である。
【0015】
上記第4の手段によれば、養殖槽には電子機器に基づく発熱部を備えるが、当該発熱部にも、圧縮空気供給装置からの圧縮空気が供給される。これにより、養殖槽が備える電子機器に基づく発熱部の冷却が、適切に行われる。
【0016】
第5の手段は、前述した第1の手段における養殖槽と波動ポンプの組合せ構造であって、当該組合せ構造は海岸に配置されるものであり、前記養殖槽と前記波動ポンプはともには浮体式構造物であり、前記波動ポンプは前記養殖槽より沖側に設置される、養殖槽と波動ポンプの組合せ構造である。
【0017】
上記第5の手段によれば、波動ポンプは養殖槽より沖側に設置される。これにより、沖側の波動ポンプにより養殖槽に到達する波浪が減衰されるため、波浪による養殖槽の揺れの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書に開示の養殖槽と波動ポンプの組合せ構造によれば、養殖槽の気相に積極的に圧縮空気を供給することができて、養殖槽における水棲生物の適切な生息環境を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本件技術に係る養殖槽と波動ポンプの組合せ構造の第1実施形態を示す模式的配置構成図である。
【
図2】養殖槽である水上人工干潟槽の一例を示す断面図である。
【
図3】本実施形態の水上人工干潟槽が備えるエアリフトポンプの構成を示す模式図である。
【
図4】従来の水上人工干潟槽が備えるエアリフトポンプの構成を示す模式図である。
【
図5】第2実施形態を示す模式的配置構成図である。
【
図6】第3実施形態を示す模式的配置構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本明細書に開示の技術である養殖槽と波動ポンプの組合せ構造の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の養殖槽と波動ポンプの組合せ構造は、海岸に浮遊構成のタイプである。なお、図の説明における左右、上下、前後等の方向表示は、当該図における方向を示すものであり、特に指定しない限り、海岸での方向を示すものではない。
【0021】
〔第1実施形態の全体構成〕
図1に第1実施形態が示される。
図1は養殖槽と波動ポンプの組合せ構造10の模式的配置構成を示す。本実施形態の養殖槽と波動ポンプの組合せ構造10は海岸に配置されており、養殖槽12と、波動ポンプ14と、圧縮空気供給装置16とからなる。養殖槽12は水棲生物に生息環境を提供する装置であり、本実施形態では水上人工干潟槽18で構成されている。波動ポンプ14は海の波力により圧縮空気を発生する装置であり、本実施形態では振動水柱型の波力発電装置20で構成されている。圧縮空気供給装置16は波動ポンプ14により発生させられた圧縮空気を養殖槽12の気相22に供給する装置であり、養殖槽12と波動ポンプ14との間に配設されている。
【0022】
図1に良く示されるように、養殖槽12の水上干潟槽18と、波動ポンプ14の振動水柱型の波力発電装置20は、浮体式構造物として構成されて、海岸に浮遊状態で配設されている。そして、本実施形態では、波力発電装置20の波動ポンプ14は水上人工干潟槽18の養殖槽12より沖側に設置されている。水上人工干潟槽18と波力発電装置20は浮体式構造物であるため、
図1に示されるように、水上人工干潟槽18の筐体28及び波力発電装置20の筐体20Aが海の底面24との間に係留26されて位置決めされて固定されている。
【0023】
図1に示す本実施形態のように、波動ポンプ14が養殖槽12より沖側に設置されることにより、沖側の荒い波H1は波動ポンプ14により減衰されて、緩まった波H2となる。すなわち、養殖槽12に到達する波浪が減衰されるため、波浪による養殖槽12の揺れの低減を図ることができる。
【0024】
〔養殖槽12の水上人工干潟槽18〕
図1に示される養殖槽12の水上人工干潟槽18は、模式図として示されており、筐体28の内部に湿泥38を有し、その上面が気相22となっている。
図2に水上人工干潟槽18の詳細構造が示されているので、以後
図2に基づいて説明する。
図2に示されるように、水上人工干潟槽18の筐体28は外側筐体28Aと内側筐体28Bとから形成されており、両筐体28A、28B間には空間30が形成されている。
【0025】
水上人工干潟槽18の筐体28は、垂直断面形状が凹形状として形成されており、凹形状の凹み部が干潟32となっている。干潟32には
図2で見て下方から順に、礫岩34、砂36、湿泥38、水40、気相22が形成されている。
【0026】
干潟32は、筐体28の空間30に配置された給水ポンプ42及び排水ポンプ44により給排水される。給水ポンプ42は、
図2で見て、空間30の右側下方位置に設置されており、外側の筐体28Aに形成された通路46を通じてフィルタ48により濾過された海水が取り入れられる。給水ポンプ42からは給水パイプ50を通じて干潟32の礫岩34に供給される。なお、給水パイプ50には通路開閉バルブ52が設置されており、コントローラ54により制御されて、給水パイプ50の開閉を行う。また、給水ポンプ42もコントローラ54により制御される。
【0027】
排水ポンプ44は、
図2で見て、空間30の左側下方位置に設置されており、干潟32における水40が内方排水パイプ56を通じて取り入れられて、外側の筐体28Aを貫通して配設された外方排水パイプ58を通じて筐体28の外の海Sに排水される。なお、内方排水パイプ56には排水用の通路開閉バルブ60が設置されており、コントローラ54により制御されて、内方排水パイプ56の開閉を行う。また、排水ポンプ44もコントローラ54により制御される。
【0028】
また、
図2に示す水上人工干潟槽18の空間30の左右上部位置には、通気口62,64が設けられており、空間30内の通気を行うようになっている。
図2で見て、左側上部位置の通気口62には、空間通気ファン66が設置されており、右側上部位置の通気口64には、バルブ68が設置されており、空間30を通気するようになっている。空間通気ファン66及びバルブ68は、コントローラ54により制御される。なお、本実施形態における給水ポンプ42,排水ポンプ44,空間通気ファン66等が、本技術の手段における養殖槽が備える電子機器に基づく発熱部に相当する。
【0029】
〔エアリフトポンプ70〕
次に、
図3に基づいて本実施形態に備えられるエアリフトポンプ70の構成について説明する。エアリフトポンプ70は、干潟32内の湿泥38を攪拌し、良好な湿泥38の状態を維持するためのものである。
図3に示すように、本実施形態のエアリフトポンプ70は逆U字形態の配置とされており、この逆U字形態における、
図3で見て、左側通路部70Aの下端開口部70aは湿泥38の位置に開口している。そして、右側通路部70Bの下端開口部70bは気相22の位置に開口した位置関係として配置されている。
【0030】
エアリフトポンプ70の左側通路部70Aには、後述で詳述する波力発電装置20よりの排出風(圧縮空気)を受けて当該左側通路部70Aに供給する排出風供給通路72と、圧力検査用バイパス74が結合して、1本となって接続されている。排出風供給通路72には圧力センサ76が設置されており、排出風供給通路72を通じて供給される排出風(圧縮空気)の圧力を計測する。
【0031】
圧力検査用バイパス74には第1開閉バルブ78が設置されており、前述の1本となった通路には第2開閉バルブ80が設置されている。更に、湿泥38の位置には硬度センサ82が設置されている。これら圧力センサ76、第1開閉バルブ78、第2開閉バルブ80、硬度センサ82は、コントロールユニット84と接続されている。これにより、コントロールユニット84は圧力センサ76や硬度センサ82等の情報を受けて、第1開閉バルブ78や第2開閉バルブ80の開閉を制御する。
【0032】
図3に示されるエアリフトポンプ70によれば、排出風供給通路72を通じて後述で詳述する波力発電装置20よりの排出風が左側通路部70Aに供給される。これにより、エアリフトポンプ70により湿泥38が汲み上げられて、干潟32の表面部に載置して攪拌する。これにより、良好な湿泥状態を維持することができる。
【0033】
図4は従来のエアリフトポンプ70による干潟32の湿泥38を攪拌する構成を示す。従来の構成は、本実施形態における
図3に示す排出風供給通路72への排出風の取入れが、後述で詳述する波力発電装置20よりの排出風であったのが、
図4に示すように、エア供給ポンプ86とする構成とするものである。その他の構成は、
図3に示す構成と同じであるため、本実施形態と同じ符号を付することにより、説明を省略する。
【0034】
図4に示す従来のエアリフトポンプ70の場合には、エア供給ポンプ86を用いる構成であるため、湿泥38を攪拌する際にはエア供給ポンプ86を駆動する電力が必要である。これに対して、
図3に示す本実施形態においては、波力発電装置20(
図1参照)の排出風(圧縮空気)を用いてエアリフトポンプ70による湿泥38の攪拌を行うものであるので、従来のエア供給ポンプ86と、その駆動電力の提供を廃止することができて、経済的である。
【0035】
〔波動ポンプ14の波力発電装置20〕
図1の左側個所に、波動ポンプ14の波力発電装置20の実施形態の模式構成が示されている。本実施形態の波力発電装置20は振動水柱型である。波力発電装置20は、浮遊タイプであるため、浮遊形成体88と組み合わされて形成されている。波力発電装置20は、
図1で見て、上下方向に長方形状の波侵入空間部90を内部に形成した筐体本体92を備える。
【0036】
筐体本体92の下部位置には、波侵入口94が、筐体本体92の下部を、
図1で見て、左方向に折り曲げ形成した案内傾斜板96により形成されている。これにより、荒い波H1の一部が、案内傾斜板96により案内されて波侵入口94から波侵入空間部90に侵入してくる。波侵入空間部90に侵入してくる波の出入りにより、波侵入空間部90内の海水の高さは、
図1において実線と破線で示す状態が繰り返されて、空間容積は増減する。そして、この空間容積の増減により空気は圧縮されて、圧縮空気の排出風として、後述するように圧縮空気供給装置16を介して、養殖槽12に供給される。なお、
図1において、案内傾斜板96個所における波形H3は波力発電装置20に入らなかった波形を示している。
【0037】
上述により波侵入空間部90で生じる圧縮空気の排出風の養殖槽12への送給は、筐体本体92の上部位置に形成された送給口98から行われる。送給口98には送給筒100が設定されており、この送給筒100内には小型タービン102の発電装置が設置されている。これにより圧縮空気の排出風により小型タービン102が回転させられて発電を行う。そして、小型タービン102の発電装置の電力は、本実施形態では水上人工干潟槽18の養殖槽12に送電される。
【0038】
〔圧縮空気供給装置16〕
本実施形態の圧縮空気供給装置16は、波動ポンプ14により発生させられた圧縮空気の排出風を養殖槽12の気相22に供給する装置であり、波動ポンプ14と養殖槽12との間に配設される。圧縮空気供給装置16は風道を形成する案内筒104を備える。案内筒104は蛇腹で軟質な材料で形成されており、波による波動ポンプ14と養殖槽12との間の変化する動きにも追従可能とされている。
【0039】
案内筒104は3本の支持部材106により波動ポンプ14と養殖槽12に支持されている。
図1で見て、一番左側の第1支持部材106Aは波動ポンプ14の浮遊形成体88に支持されている。右側の第2支持部材106Bと第3支持部材106Cは養殖槽12の筐体28に支持されている。
【0040】
案内筒104の、
図1で見て、左側開口は前述の小型タービン102が配置された送給筒100と嵌合して接続されている。右側開口は養殖槽12の気相22に向けて開口している。なお、本実施形態では、小型タービン102の発電装置で発電した電力は、養殖槽12の内部に設置される電子部品の電力として用いられる。案内筒104内に配線された電線108は、そのための配線である。電線108は第2支持部材106Bを通じて養殖槽12内まで配線されている。
【0041】
本実施形態では、
図1で見て、案内筒104の左側の上部位置には、発電装置のメイン時のタービン圧損低減通路を形成する開閉弁装置110が備えられている。開閉弁装置110の弁112は閉弁位置と開弁位置とがモータ等(不図示)で切り替えられる。実線で示される位置が閉弁位置であり、破線で示される位置が開弁位置である。
開弁位置では案内筒104内の風道は大気と連通状態となり、風道を通じての圧縮空気の養殖槽12への送給はなされない状態となる。したがって、養殖槽12への圧縮空気の送給は開閉弁装置110の閉弁位置で行われる。
【0042】
〔第1実施形態の作用効果〕
次に、上記第1実施形態の作用効果を説明する。先ず、開閉弁装置110の弁112が閉弁位置における場合の、風道により圧縮空気が養殖槽12に供給される状態の、基本的な作用について説明する。
【0043】
基本的作用は、
図1に示すように、先ず、波動ポンプ14の波力発電装置20内への海の荒い波H1の出入りにより、波侵入空間部90に圧縮空気の排出風が発生する。そして、この圧縮空気の排出風は圧縮空気供給装置16を通じて、養殖槽12の水上人工干潟槽18の気相22に供給される。この気相22に供給された圧縮空気により、気相22の通気性が改善されて、気相22における水棲生物の生育環境が良好に維持される。第1実施形態によれば、水上人工干潟槽18における気相22の改善を、波力エネルギーの自然エネルギを用いた圧縮空気で行うため、経済的である。
【0044】
また、第1実施形態によれば、波動ポンプ14は波力発電装置20であるため、海の波力で発電も行われる。この電力を用いて水上人工干潟槽18が備える電子部品へ電力供給することができ、効率的である。
【0045】
次に、
図1における、波動ポンプ14により生じた圧縮空気の供給時の温度T2と、水上人工干潟槽18の気相22の温度T1との温度差による制御の違いを説明する。両者の温度がT2<T1の時には、圧縮空気の気相22への送風により、気相22の気化熱の冷却が期待できるので、開閉弁装置110の弁112は閉弁位置とされて、上述した基本的作用を行う。通常は、日照りの場合は気相22の表面温度T1は上昇している。そして、波動ポンプ14により生じる圧縮空気の温度T2は海水と空間の影により日照りの水上人工干潟槽18の表面より低温の状態にある。このため、T2とT1で温度差が生じ、T2<T1となる。
【0046】
しかし、何らかの事情によりT2≧T1となった時は、開閉弁装置110の弁112を開弁位置として、開閉弁装置110の通路を大気へ開放した解放状態とする。この状態では、小型タービン102の圧力損失を下げて、発電効率を上げる制御を行うことができる。なお、この状態では、圧縮空気供給装置16を通じての水上人工干潟槽18への圧縮空気の供給は行われない。すなわち、この状態では、供給する圧縮空気の温度T2が水上人工干潟槽18の気相22の温度T1以上であることから、気化熱の冷却作用効果が薄いことから、発電効率を上げる制御を行うようにした。
【0047】
以上第1実施形態の作用効果を総合すると、浮遊の波力発電装置20を水上人工干潟槽18に組み合わせたことにより、水上人工干潟槽20の泥沼槽の揺れ抑制+干潟システムの電力確保+養殖槽12の冷却による泥環境の維持を図ることができる。
【0048】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は
図5に示される。この第2実施形態は、水上人工干潟槽18にマングローブ林114が設けられている場合である。そして、第2実施形態では、第1実施形態のように水上人工干潟槽18の気相22における温度T1の管理はなされなく、定期的に圧縮空気を送るのみの構成となっている。その他の構成は、前述した第1実施形態と同じであるので、同じ符号を付すことにより、重複説明は省略する。以下の各実施形態についての説明も同様である。
【0049】
〔第2実施形態の作用効果〕
第2実施形態のように、水上人工干潟槽18にマングローブ林114が設けられる場合には、供給される圧縮空気により気相22を気化熱で冷却すると共に、気相22における淀んだ空気を追い出す作用がなされる。これにより、淀んだ空気の換気が自然干潟並みに実現できる効果も期待できる。
【0050】
なお、第2実施形態の作用効果を総合すると、前述した第1実施形態の作用効果に加えて、水上人工干潟槽20の植物育成環境の良化を図ることができる。
【0051】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は
図6に示される。この第3実施形態は、水上人工干潟槽18に圧縮空気供給装置16を通じて送られる圧縮空気を、
図2に示す水上人工干潟槽18の空間30にも送るようにしたものである。これにより空間30に設置されるポンプ等の部品の冷却を行うものである。すなわち、海水から部品を守るために、槽内に設置する必要がある。このため、部品作動時(ポンプ、電磁弁等)から発せられる熱が設置した室内を上昇させてしまう。これにより部品の耐久性を低下させてしまう可能性があるため、冷却する必要がある。
【0052】
このため、第3実施形態では、
図6に示すように、水上人工干潟槽18に形成される空間30に圧縮空気供給装置16の端部を結合させて、圧縮空気を供給するようにしている。
図6では空間30は破線枠で示されている。なお、
図6では、圧縮空気供給装置16の案内筒104の風道は水上人工干潟槽18の空間30にしか連接されていない図示とされているが、
図1に示される気相22にも供給される構成も併存された構成のものである。すなわち、図示は省略されているが、風道を形成する案内筒104は、空間30に供給するための風道と、気相22に供給するための風道の2本の風道が分岐して形成されている。
【0053】
第3実施形態では、案内筒104の風道から空間30への入口には、第2開閉弁装置116が備えられている。開閉弁装置116の弁118は閉弁位置と開弁位置とがモータ等(不図示)で切り替えられる。実線で示される位置が閉弁位置であり、破線で示される位置が開弁位置である。開弁位置では案内筒104内の風道と空間30は連通状態とされ、空間30に案内筒104内の圧縮空気が供給される。閉弁位置では圧縮空気の空間30への供給は遮断される。
【0054】
〔第3実施形態の作用効果〕
次に、上述した第3実施形態の作用効果について説明する。この第3実施形態では、空間30の入口個所の温度T3により制御される。すなわち、温度T3が規定温度以上かどうかによって制御される。空間30の温度T3≧規定温度の場合には、第2開閉弁装置116の弁118を開弁位置とし、上流の開閉弁装置110の弁112を閉弁位置として、空間30内の冷却を優先して行う。しかし、この場合には、案内筒104内の風道の通路抵抗の圧力損失で、波力発電装置20の発電効率は低下する。
【0055】
空間30の温度T3<規定温度の場合には、第2開閉弁装置116の弁118を閉弁位置とし、上流の開閉弁装置110の弁112を開弁位置として、波力発電装置20による発電効率を優先する制御を行うようにしている。
【0056】
<他の実施形態>
本明細書に開示の技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0057】
例えば、上述した実施形態の波動ポンプ14は波力発電装置20を用いて構成したが、波力発電装置20以外の汎用の波動ポンプであっても良い。また、本実施形態の波力発電装置20は振動水柱型であったが、その他のタイプの発電装置であっても良い。
【符号の説明】
【0058】
10 養殖槽と波動ポンプの組合せ構造
12 養殖槽
14 波動ポンプ
16 圧縮空気供給装置
18 水上人工干潟槽
20 波力発電装置
22 気相
24 海の底面
26 係留
28 水上人工干潟槽の筐体
28A 外側筐体
28B 内側筐体
30 空間
32 干潟
34 礫岩
36 砂
38 湿泥
40 水
42 給水ポンプ
44 排水ポンプ
46 通路
48 フィルタ
50 給水パイプ
52 通路開閉バルブ
54 コントローラ
56 内方排水パイプ
58 外方排水パイプ
60 通路開閉バルブ
62 通気口
64 通気口
66 空間通気ファン
68 バルブ
70 エアリフトポンプ
70A 左側通路部
70a 下端開口部
70B 右側通路部
70b 下端開口部
72 排出風供給装置
74 圧力検出用バイパス
76 圧力センサ
78 第1開閉バルブ
80 第2開閉バルブ
82 硬度センサ
84 コントロールユニット
86 エア供給ポンプ
88 浮遊形成体
90 波侵入空間部
92 筐体本体
94 波侵入口
96 案内傾斜板
98 送給口
100 送給筒
102 小型タービン(発電装置)
104 案内筒
106 支持部材
106A 第1支持部材
106B 第2支持部材
106C 第3支持部材
108 電線
110 開閉弁装置
112 弁
114 マングローブ林
116 第2開閉弁装置
118 弁
H1 荒い波
H2 緩まった波
S 海