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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067786
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/05 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
E03C1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178116
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 峻平
(72)【発明者】
【氏名】片岡 健介
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA03
2D060CA04
(57)【要約】
【課題】集音マイクの集音性能を向上させることが可能な水栓装置を提供すること。
【解決手段】水栓装置1は、吐水管3の湾曲面3A(水栓表面)に設けられて使用者の音声を集音する集音マイク5を有する。集音マイク5は、水栓内部に設けられる本体ユニット11と、本体ユニット11を覆うように水栓表面に露出して設けられるマイクカバー12と、を有する。本体ユニット11は、水栓表面を向く基板部11Aと、基板部11A上に設置される集音用のマイク部11Bと、を有する。マイクカバー12は、外部と連通する貫通形状の集音孔Hを有する。水栓装置1は、更に、マイク部11Bを取り囲むように集音孔Hに筒口を向けて配設される筒状の遮音部材14を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓設置面から外部に露出する水栓表面に設けられて使用者の音声を集音する集音マイクを有する水栓装置であって、
前記集音マイクが、
水栓内部に設けられ、前記水栓表面を向く基板部及び該基板部上に設置される集音用のマイク部を有する本体ユニットと、
前記本体ユニットを覆うように前記水栓表面に露出して設けられ、外部と連通する貫通形状の集音孔を有するマイクカバーと、
前記マイク部を取り囲むように前記集音孔に筒口を向けて配設される筒状の遮音部材と、を有する水栓装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水栓装置であって、
前記遮音部材が、前記基板部と前記マイクカバーとの間に押し挟まれて配設される水栓装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水栓装置であって、
前記マイクカバーのカバー裏面に前記集音孔をカバー裏側から覆うように被せられる、空気は通すが水は通さない多孔質膜から成る通気膜を更に有し、
前記通気膜が、前記遮音部材により前記マイクカバーに押し付けられる水栓装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の水栓装置であって、
前記マイクカバーが、前記遮音部材の筒外周部が弾性変形を伴って嵌合される嵌合部を有する水栓装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の水栓装置であって、
前記基板部の基板裏面に積層状に設けられる樹脂材料から成るポッティング層を更に有する水栓装置。
【請求項6】
請求項5に記載の水栓装置であって、
前記マイクカバーが、前記基板部を基板裏側に張り出して取り囲む筒状の取囲み部を有し、
前記ポッティング層が、前記取囲み部の筒内に充填される水栓装置。
【請求項7】
請求項5に記載の水栓装置であって、
前記集音マイクが、前記基板部の直下を通水管が通るように該通水管を内蔵する吐水管の内部に埋め込まれる水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置に関する。詳しくは、水栓設置面から外部に露出する水栓表面に設けられて使用者の音声を集音する集音マイクを有する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吐水管の表面に使用者の音声を集音可能な集音マイクが配置された水栓装置が開示されている。この水栓装置は、使用者から出される音声指示を集音マイクにおいて集音し、集音した音声信号に基づいて吐水口からの吐水状態を変更するよう吐水制御を行う構成とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-136555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、集音マイクが吐水管の流水音を拾って集音性能を低下させるおそれがある。そこで、本発明は、集音マイクの集音性能を向上させることが可能な水栓装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の水栓装置は、次の手段をとる。すなわち、本発明の第1の発明は、水栓設置面から外部に露出する水栓表面に設けられて使用者の音声を集音する集音マイクを有する水栓装置であって、前記集音マイクが、水栓内部に設けられ、前記水栓表面を向く基板部及び該基板部上に設置される集音用のマイク部を有する本体ユニットと、前記本体ユニットを覆うように前記水栓表面に露出して設けられ、外部と連通する貫通形状の集音孔を有するマイクカバーと、前記マイク部を取り囲むように前記集音孔に筒口を向けて配設される筒状の遮音部材と、を有する水栓装置である。
【0006】
第1の発明によれば、マイクカバーと基板部との間にマイク部を取り囲む筒状の遮音部材を設けることで、マイク部に周囲から吐水音等の騒音が入ることを抑制することができる。詳しくは、遮音部材は、集音孔に筒口を向けて配設されることから、集音マイクの集音性能を阻害することなく、防音機能を果たすことができる。その結果、集音マイクの集音性能を適切に向上させることができる。
【0007】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記遮音部材が、前記基板部と前記マイクカバーとの間に押し挟まれて配設される水栓装置である。
【0008】
第2の発明によれば、遮音部材を、マイク部の設置される基板部とマイクカバーとに密着させて配設することができる。それにより、遮音部材による防音機能をより一層高めることができる。
【0009】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明において、前記マイクカバーのカバー裏面に前記集音孔をカバー裏側から覆うように被せられる、空気は通すが水は通さない多孔質膜から成る通気膜を更に有し、前記通気膜が、前記遮音部材により前記マイクカバーに押し付けられる水栓装置である。
【0010】
第3の発明によれば、マイクカバーのカバー裏面に被せられる通気膜により、集音孔からマイク部に外部の水が入り込むことが防止される。通気膜は、遮音部材によりマイクカバーのカバー裏面に押し付けられることから、集音孔から外部の水が入り込むことを適切に防止することができる。
【0011】
本発明の第4の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記マイクカバーが、前記遮音部材の筒外周部が弾性変形を伴って嵌合される嵌合部を有する水栓装置である。
【0012】
第4の発明によれば、遮音部材をマイクカバーに対して適切に位置決めした状態に設けることができる。また、遮音部材をマイクカバーに組み付けることで、マイクカバーを本体ユニットに組み付けることでもって遮音部材をマイク部を取り囲むように設置することができる。したがって、集音マイクの組み付け性を向上させることができる。
【0013】
本発明の第5の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記基板部の基板裏面に積層状に設けられる樹脂材料から成るポッティング層を更に有する水栓装置である。
【0014】
第5の発明によれば、ポッティング層により、基板部の基板裏側からマイク部に吐水音等の騒音が入ることを抑制することができる。それにより、集音マイクの集音性能をより一層向上させることができる。
【0015】
本発明の第6の発明は、上記第5の発明において、前記マイクカバーが、前記基板部を基板裏側に張り出して取り囲む筒状の取囲み部を有し、前記ポッティング層が、前記取囲み部の筒内に充填される水栓装置である。
【0016】
第6の発明によれば、ポッティング層を、基板部の基板裏面の全域に、取囲み部の張り出し幅による厚みを持たせて適切に積層させた状態に設けることができる。それにより、集音マイクの集音性能をより一層向上させることができる。
【0017】
本発明の第7の発明は、上記第5の発明において、前記集音マイクが、前記基板部の直下を通水管が通るように該通水管を内蔵する吐水管の内部に埋め込まれる水栓装置である。
【0018】
第7の発明によれば、集音マイクを、内部に通水管が通る吐水管に対して合理的に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る水栓装置の概略構成を表す斜視図である。
図2】集音マイクの内部構造を表す吐水管の部分断面斜視図である。
図3】集音マイクをベース部材から外した分解斜視図である。
図4】集音マイクをマイク裏側から見た斜視図である。
図5図2のV矢視図である。
図6】集音マイクの分解斜視図である。
図7図6のマイクカバーをカバー裏側から見た斜視図である。
図8図6の遮音部材を基板部上に仮置きした状態を表す分解斜視図である。
図9図5のIX-IX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
《第1の実施形態》
(水栓装置1の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る水栓装置1の構成について、図1図9を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。各図中に示す方向は、それぞれ、水栓装置1の正面に立つ使用者から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図9のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る水栓装置1は、手洗いカウンターの洗面ボウルの奥側の天板T上に設置される、いわゆる台付きタイプの自動水栓として構成される。水栓装置1は、天板Tの上部に設置される縦向き円筒形状の水栓本体2と、水栓本体2の上部から手前側に向かってグースネック状(逆U字状)に延び出る吐水管3と、を有する。
【0023】
水栓装置1は、天板Tの下側から供給される水を水栓本体2へと取り込んで、吐水管3の先端の吐水口3Cより吐水することが可能な構成とされる。具体的には、水栓装置1は、吐水口3Cからの水の吐水/止水を切り替えることが可能な吐止水の切替機能を備える。
【0024】
吐止水の切替機能は、吐水管3の手前上側の面を成す湾曲面3A上に設けられた手かざしセンサ4に対する使用者の手の差し出しか、集音マイク5に対する使用者の音声指示か、のいずれかによって実行することが可能とされる。ここで、天板Tが、本発明の「水栓設置面」に相当する。また、湾曲面3Aが、本発明の「水栓表面」に相当する。
【0025】
手かざしセンサ4は、使用者の手がその正面に差し出されることで、手の差し出しを非接触で検出することが可能な反射型の光電センサ(赤外線センサ)から成る。集音マイク5は、使用者が発する音声をどの方向からも同じ感度で集音することが可能な無指向性のマイクから成る。
【0026】
手かざしセンサ4と集音マイク5は、それぞれ、水栓装置1に設けられた不図示の制御部に電気的に接続され、それぞれの検出信号が制御部へと送信される構成とされる。制御部は、手かざしセンサ4から送信される受光量の検出信号に基づき、手かざしセンサ4に対する使用者の手の差し出しの有無を判定する。制御部において使用者の手が差し出されたものと判定された場合には、制御部から水栓装置1の吐水経路に介設された不図示の電磁弁に制御信号が送信され、電磁弁の開弁/閉弁が切り替えられる。
【0027】
また、不図示の制御部は、集音マイク5から送信される音声の検出信号に基づき、使用者から特定の音声指示が出されたか否かを判定する。制御部は、上記音声の検出信号に基づく音声情報を不図示のメモリに記憶された指示パターンと照合し、一致する指示パターンがあるか否かを判定する。制御部において一致する指示パターンがあると判定された場合には、制御部から不図示の電磁弁に指示パターンに対応する制御信号が送信され、電磁弁の開弁/閉弁が切り替えられる。
【0028】
具体的には、不図示の制御部のメモリには、吐止水の切り替えに纏わる指示パターンが記憶されている。例えば、吐水に纏わる指示パターンには、「吐水」「出す」「出して」等の吐水に纏わる音声指示に対応した指示パターンが登録されている。また、止水に纏わる指示パターンには、「止水」「止める」「止めて」等の止水に纏わる音声指示に対応した指示パターンが登録されている。
【0029】
制御部は、吐水に纏わる音声指示が出されたと判定した場合には、不図示の電磁弁を開弁するように電磁弁に制御信号を送信する。また、制御部は、止水に纏わる音声指示が出されたと判定した場合には、電磁弁を閉弁するように電磁弁に制御信号を送信する。
【0030】
このように、水栓装置1は、吐止水の切り替えを、手かざしセンサ4に対する手の差し出しと、集音マイク5に対する音声指示と、の両方によって行うことが可能とされる。したがって、使用者が鍋を両手で抱えていて手が塞がっている場合には、吐止水の切り替えを音声指示により行い、近くで子供が寝ていて音声指示を出せない場合には、吐止水の切り替えを手の差し出しによって行う、といった使用状況に応じた選択的な操作が可能となる。
【0031】
上記集音マイク5は、その外表面が吐水管3の湾曲面3Aと面一状に露出するように吐水管3の管内に埋め込まれて配設されている。集音マイク5は、使用者の音声を集音するための複数の集音孔Hが外部に露出して形成された構成とされる。それにより、集音マイク5は、外部からの水の浸入に晒されやすい水まわり環境に配設された構成とされている。
【0032】
また、集音マイク5は、吐水管3の管内を通る通水管3Bの直上位置(管径方向の外側の位置)に配設されて、通水管3Bから流水音の伝播を受けやすい環境に配設された構成とされる。そこで、集音マイク5は、これらの環境に適応するべく、防水機能と防音機能とを兼ね備えた構成とされている。
【0033】
(各部の構成について)
以下、集音マイク5の各部の具体的な構成について、詳しく説明する。図2図3に示すように、集音マイク5は、吐水管3の管内を通る通水管3Bの直上域に沿って形成された管内空間に設置されている。具体的には、集音マイク5は、上記吐水管3の管内空間に管軸方向に通されるベース板M上に組み付けられている。
【0034】
集音マイク5は、内部に2つの集音用のマイク部11Bを有する本体ユニット11と、本体ユニット11を図示上方から覆う樹脂製のマイクカバー12と、を有する。集音マイク5は、本体ユニット11とマイクカバー12とが1つに組み付けられて構成されている。集音マイク5は、本体ユニット11が吐水管3の管内空間に埋め込まれ、マイクカバー12が吐水管3の湾曲面3A上に面一状に露出するように配設される(図1参照)。
【0035】
マイクカバー12には、その天板部(天板中央部12A)上の複数の箇所に、上述した集音孔Hが貫通して形成されている。各集音孔Hは、それぞれ、丸孔状を成し、マイクカバー12の直下に配置される前後2つのマイク部11Bの直上域に、それぞれ6つずつ密集するように形成されている。
【0036】
図4に示すように、集音マイク5の裏面部には、ウレタンやシリコン等の樹脂を積層状にコーティングしたポッティング層15が形成されている。このポッティング層15により、集音マイク5は、図2で前述したように、その直下に通水管3Bが通るように配設されても、通水管3Bの流水音が内部のマイク部11Bに伝播されにくいよう遮音される構成とされている。
【0037】
図2図3に示すように、集音マイク5は、次のように本体ユニット11とマイクカバー12とが1つに組み付けられた状態で、ベース板Mに図示上方から組み付けられている。すなわち、集音マイク5は、マイクカバー12の左右の各側面から突出する前後各2本の嵌合ピンDが、ベース板Mの左右の各側縁から立ち上がる側縁リブM1に形成された対応する各ピン嵌合溝M2に図示上方から嵌め込まれることで、ベース板M上に一体的に組み付けられている(図5参照)。
【0038】
なお、上記ベース板M及びベース板Mに集音マイク5を組み付ける組付構造に纏わる具体的な構成は、特開2020-111973号公報等の文献に開示された公知の構成と同一となっている。したがって、これらの具体的な構成についての説明は省略することとする。
【0039】
図6に示すように、本体ユニット11は、前後方向に長尺状に延びる平板状の基板部11Aと、基板部11A上の前後2箇所の位置に設置される集音用のマイク部11Bと、を有する。また、本体ユニット11は、基板部11A上の各マイク部11Bの間の中央箇所に設置されるON/OFF表示部11Cを更に有する。各マイク部11BとON/OFF表示部11Cとは、それぞれ、基板部11A上に固定された状態に設置されている。
【0040】
各マイク部11Bは、外部から集音された音を電気信号に変換するためのマイク素子等の機器を備える。ON/OFF表示部11Cは、その表面に設けられた不図示のLEDライトの点灯により使用者に吐水状態を知らせる吐水表示部となっている。
【0041】
ON/OFF表示部11Cは、吐水状態が止水から吐水へと切り替えられることで、不図示の制御部によりその表面のLEDライトが点灯され、マイクカバー12を透過させて外部に点灯表示を行う。また、ON/OFF表示部11Cは、吐水状態が吐水から止水へと切り替えられることで、不図示の制御部によりその表面のLEDライトが消灯され、外部に対する点灯表示を消すようになっている。
【0042】
図6に示すように、マイクカバー12は、本体ユニット11の基板部11Aを図示上方から囲い込むように覆うことが可能な張り出し縁(取囲み部12D)の付いた板形状に形成されている。マイクカバー12は、アクリル樹脂(PMMA)やポリカーボネート樹脂(PC)等の透明樹脂をインジェクション成形した成形品から成る。
【0043】
具体的には、マイクカバー12は、その天板の中央部を成す天板中央部12Aが、天板の周囲部を成す天板周囲部12Bに対して、段差状の立ち上がり壁を成す天板周壁部12Cを介して浮島状に膨出する形に形成されている。上述した複数の集音孔Hは、天板中央部12Aに形成されている。マイクカバー12は、その集音孔Hの形成された天板中央部12Aが、吐水管3の湾曲面3Aと面一状に露出するように設けられ、天板周囲部12Bが、吐水管3の管内部に潜り込むように設けられる。
【0044】
図6図7に示すように、マイクカバー12は、その天板周囲部12Bの全周縁から図示下方に張り出し状に延びる角筒状の取囲み部12Dを有する。図4及び図9に示すように、取囲み部12Dは、マイクカバー12を本体ユニット11の基板部11Aに図示上方から被せることにより、その内部に基板部11Aを収める形にセットされる。
【0045】
図9に示すように、マイクカバー12は、その天板周壁部12Cの下縁全域から小さく突出する長枠状の小突起が基板部11Aに図示上方から当接する位置で、基板部11Aに対する被せ位置が規制される。この被せ付けにより、マイクカバー12は、取囲み部12Dが基板部11Aから図示下方に張り出して基板部11Aを周りから取り囲む形にセットされる。上記被せ付けの後、マイクカバー12は、基板部11Aの裏側から前後2箇所の位置にビスBが差し込まれて締め付けられることで、基板部11Aと一体的に組み付けられる。
【0046】
具体的には、図6図7に示すように、各ビスBは、マイクカバー12の天板周壁部12Cの手前側及び奥側の各縁の中央箇所から膨出する円筒状の締結筒部12Eにカバー裏側から差し込まれて締結されている。上記締結により、図9に示すように、本体ユニット11は、その基板部11A上に設置された各マイク部11BとON/OFF表示部11Cとが、基板部11Aとマイクカバー12とによって周りが取り囲まれた状態にセットされる。
【0047】
図6図8に示すように、集音マイク5は、更に、各集音孔Hにカバー裏側から被せられる2枚の面状の通気膜13と、各マイク部11Bを取り囲むように設置される2本の筒状の遮音部材14と、を有する。各通気膜13は、空気は通すが水は通さないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂の多孔質フィルムによって構成されている。
【0048】
各通気膜13は、マイクカバー12の天板中央部12Aにおける各集音孔Hが密集する前後2箇所の位置にカバー裏側から接着剤で接着されている。詳しくは、各通気膜13は、天板中央部12Aの前後2箇所の位置に密集する各6つの集音孔Hを、それぞれカバー裏側からひとまとめに覆うように被せられている。
【0049】
より詳しくは、各通気膜13は、それぞれの箇所に密集する各集音孔Hの密集域の周縁と、各集音孔Hの孔と孔との間の各面と、にそれぞれ接着剤で接着されている。それにより、各通気膜13は、個々の集音孔Hをそれぞれカバー裏側から漏れのないよう適切に覆った状態とされる。各通気膜13の貼り付けにより、マイクカバー12は、各集音孔Hの集音性能を阻害することなく、各集音孔Hを通した外部からの水や埃の浸入が適切に防止されるようになっている。
【0050】
各遮音部材14は、それぞれ、円筒状のシリコンチューブから成る。図9に示すように、各遮音部材14は、それぞれ、基板部11A上に設置された各マイク部11Bを個別に取り囲むように、基板部11Aとマイクカバー12の天板中央部12Aとの間に上下方向に押し挟まれた状態に配設されている。
【0051】
具体的には、各遮音部材14は、次のように基板部11Aとマイクカバー12の天板周壁部12Cとの間に筒軸方向に押し挟まれた状態にセットされている。先ず、図7に示すように、各遮音部材14を、マイクカバー12の長枠状を成す天板周壁部12Cの手前側の枠端部と奥側の枠端部とにそれぞれカバー裏側から押し込んで嵌合させた状態にセットする。
【0052】
それにより、各遮音部材14は、それらの筒外周部が、マイクカバー12の天板周壁部12Cの枠形状に沿って僅かに外形が崩れない程度に押し潰されて係合された状態にセットされる。その結果、図6に示すように、各遮音部材14は、それらの図示上側の筒口が、天板中央部12Aの前後2箇所の位置に密集する各6つの集音孔Hとそれぞれ連通する状態にセットされる。ここで、天板周壁部12Cが、本発明の「嵌合部」に相当する。
【0053】
次いで、マイクカバー12を基板部11Aに図示上方から被せる。それにより、図9に示すように、各遮音部材14が、それらの筒内に、対応する各マイク部11Bを入り込ませると共に、筒の下端が基板部11A上に僅かに押し付けられた状態にセットされる。その結果、各遮音部材14が、基板部11Aとマイクカバー12の天板中央部12Aとの間に上下方向に押し挟まれた状態に配設される。
【0054】
上記組み付けにより、各遮音部材14は、それらの図示上側の筒口が、天板中央部12Aの前後2箇所の位置に密集する各6つの集音孔Hとそれぞれ連通した状態として、対応する各マイク部11Bを個別に取り囲んだ状態にセットされる。また、上記組み付けにより、各遮音部材14は、マイクカバー12の天板中央部12Aのカバー裏面に貼り付けられた対応する各通気膜13を天板中央部12Aのカバー裏面に押し付けた状態にセットされる。その結果、各通気膜13が天板中央部12Aのカバー裏面に適切に密着した状態に保持される。
【0055】
図4及び図9に示すように、ポッティング層15は、マイクカバー12の基板部11Aから図示下方に張り出す取囲み部12Dの筒内に隙間なく充填されている。それにより、集音マイク5は、その取囲み部12Dによって取り囲まれた基板部11Aの裏面と天板周囲部12Bの裏面とに跨ってポッティング層15が積層状にコーティングされた構成とされる。その結果、集音マイク5は、基板部11Aとマイクカバー12とを締結する各ビスBがポッティング層15によって被覆された構成とされる。
【0056】
上記構成により、集音マイク5は、図9に示すように、その直下に通水管3Bが通るように配置されていても、通水管3Bの流水音が内部のマイク部11Bに伝播されにくいように適切に遮音されるようになっている。また、集音マイク5は、各マイク部11Bを取り囲む筒状の各遮音部材14によっても、通水管3Bの流水音が内部のマイク部11Bに伝播されにくいように適切に遮音されるようになっている。
【0057】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る水栓装置1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0058】
すなわち、水栓装置(1)は、水栓設置面(T)から外部に露出する水栓表面(3A)に設けられて使用者の音声を集音する集音マイク(5)を有する。集音マイク(5)は、水栓内部に設けられる本体ユニット(11)と、本体ユニット(11)を覆うように水栓表面(3A)に露出して設けられるマイクカバー(12)と、を有する。本体ユニット(11)は、水栓表面(3A)を向く基板部(11A)と、基板部(11A)上に設置される集音用のマイク部(11B)と、を有する。マイクカバー(12)は、外部と連通する貫通形状の集音孔(H)を有する。水栓装置(1)は、更に、マイク部(11B)を取り囲むように集音孔(H)に筒口を向けて配設される筒状の遮音部材(14)を有する。
【0059】
このように、マイクカバー(12)と基板部(11A)との間にマイク部(11B)を取り囲む筒状の遮音部材(14)を設けることで、マイク部(11B)に周囲から吐水音等の騒音が入ることを抑制することができる。詳しくは、遮音部材(14)は、集音孔(H)に筒口を向けて配設されることから、集音マイク(5)の集音性能を阻害することなく、防音機能を果たすことができる。その結果、集音マイク(5)の集音性能を適切に向上させることができる。
【0060】
また、遮音部材(14)が、基板部(11A)とマイクカバー(12)との間に押し挟まれて配設される。上記構成によれば、遮音部材(14)を、マイク部(11B)の設置される基板部(11A)とマイクカバー(12)とに密着させて配設することができる。それにより、遮音部材(14)による防音機能をより一層高めることができる。
【0061】
また、水栓装置(1)が、マイクカバー(12)のカバー裏面に集音孔(H)をカバー裏側から覆うように被せられる、空気は通すが水は通さない多孔質膜から成る通気膜(13)を更に有する。通気膜(13)が、遮音部材(14)によりマイクカバー(12)に押し付けられる。
【0062】
上記構成によれば、マイクカバー(12)のカバー裏面に被せられる通気膜(13)により、集音孔(H)からマイク部(11B)に外部の水が入り込むことが防止される。通気膜(13)は、遮音部材(14)によりマイクカバー(12)のカバー裏面に押し付けられることから、集音孔(H)から外部の水が入り込むことを適切に防止することができる。
【0063】
また、マイクカバー(12)が、遮音部材(14)の筒外周部が弾性変形を伴って嵌合される嵌合部(12C)を有する。上記構成によれば、遮音部材(14)をマイクカバー(12)に対して適切に位置決めした状態に設けることができる。また、遮音部材(14)をマイクカバー(12)に組み付けることで、マイクカバー(12)を本体ユニット(11)に組み付けることでもって遮音部材(14)をマイク部(11B)を取り囲むように設置することができる。したがって、集音マイク(5)の組み付け性を向上させることができる。
【0064】
また、水栓装置(1)が、基板部(11A)の基板裏面に積層状に設けられる樹脂材料から成るポッティング層(15)を更に有する。上記構成によれば、ポッティング層(15)により、基板部(11A)の基板裏側からマイク部(11B)に吐水音等の騒音が入ることを抑制することができる。それにより、集音マイク(5)の集音性能をより一層向上させることができる。
【0065】
また、マイクカバー(12)が、基板部(11A)を基板裏側に張り出して取り囲む筒状の取囲み部(12D)を有する。ポッティング層(15)が、取囲み部(12D)の筒内に充填される。上記構成によれば、ポッティング層(15)を、基板部(11A)の基板裏面の全域に、取囲み部(12D)の張り出し幅による厚みを持たせて適切に積層させた状態に設けることができる。それにより、集音マイク(5)の集音性能をより一層向上させることができる。
【0066】
また、集音マイク(5)が、基板部(11A)の直下を通水管(3B)が通るように通水管(3B)を内蔵する吐水管(3)の内部に埋め込まれる。上記構成によれば、集音マイク(5)を、内部に通水管(3B)が通る吐水管(3)に対して合理的に設置することができる。
【0067】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0068】
1.本発明の水栓装置は、湯水を吐水する混合水栓として構成されるものであっても良い。また、水栓装置は、洗面台やキッチンカウンタの奥側の立壁(水栓設置面)に水栓本体が埋め込まれ、吐水管が立壁(水栓設置面)から張り出して設けられる、いわゆる「壁出し」或いは「壁付け」と称されるタイプの水栓として構成されるものであってもよい。
【0069】
2.集音マイクは、吐水管の他、水栓本体に設けられる構成であっても良い。集音マイクは、吐水管の側面や下面、又は水栓本体の側面や背面等、水栓正面に立つ使用者の方を向かない位置に設けられる構成であっても構わない。吐水管は、グースネック以外の管形状から成るものであっても良い。集音マイクは、手かざしセンサよりも吐水口に近い位置に配置される構成とされていても良い。
【0070】
3.集音マイクは、マイクカバーの露出形状が矩形状となるものの他、円形状や長円形状となるものであっても良い。マイクカバーに形成される集音孔の数や形状、大きさは、特に限定されるものではない。すなわち、マイクカバーに形成される集音孔は、単数又は複数であっても良く、丸孔の他、角孔や長孔、或いは異形孔であっても良い。
【0071】
4.遮音部材は、シリコン以外の樹脂材やゴム材から成るものであってもよい。遮音部材は、円筒状の他、角筒状、或いは異形の筒状から成るものであってもよい。遮音部材は、マイク部が複数設置される場合に、これらを個別に取り囲むものであっても良いが、これらひとまとめに取り囲むものであっても良い。
【0072】
遮音部材は、基板部及び/又はマイクカバーとの間に隙間をあけて配設されるものであっても良い。遮音部材は、マイクカバーに弾性変形を伴って嵌合されるものの他、基板部に弾性変形を伴って嵌合されるものであっても良い。又は、遮音部材は、マイクカバーと基板部との双方に弾性変形を伴って嵌合されるものであっても良い。また、遮音部材の基板部及び/又はマイクカバーに対する嵌合は、筒外周部の他、筒内周部を嵌合されるものであっても良い。
【0073】
5.マイクカバーが基板部から基板裏側に張り出して取り囲む取囲み部を備えず、ポッティング層がマイクカバーに掛かることなく基板部の裏側にのみ積層状にコーティングされるように設けられる構成であっても構わない。
【0074】
6.集音マイクが埋め込まれる吐水管を通る通水管は、その先端に吐水管から引き出し可能な吐水ヘッドが接続されるフレキシブルホースであっても良い。
【0075】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
1…水栓装置、2…水栓本体、3…吐水管、3A…湾曲面(水栓表面)、3B…通水管、3C…吐水口、4…手かざしセンサ、5…集音マイク、11…本体ユニット、11A…基板部、11B…マイク部、11C…ON/OFF表示部、12…マイクカバー、12A…天板中央部、12B…天板周囲部、12C…天板周壁部(嵌合部)、H…集音孔、12D…取囲み部、D…嵌合ピン、12E…締結筒部、13…通気膜、14…遮音部材、15…ポッティング層、B…ビス、M…ベース板、M1…側縁リブ、M2…ピン嵌合溝、T…天板(水栓設置面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9