(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067787
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】粘着剤除去装置及び記録装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/00 20060101AFI20240510BHJP
B65G 45/12 20060101ALI20240510BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B65H5/00 B
B65G45/12 A
B65H5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178117
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130535
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 明
(74)【代理人】
【識別番号】100183025
【弁理士】
【氏名又は名称】大角 孝一
(72)【発明者】
【氏名】清水 翔
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 祐輔
【テーマコード(参考)】
3F049
3F101
【Fターム(参考)】
3F049BA00
3F049BB00
3F049LA01
3F101AB01
3F101AB09
3F101AB19
3F101LA01
(57)【要約】
【課題】粘着剤の種類や粘着剤層3の劣化状態に対応して効果的な掻き取り性能で粘着剤層3を掻き取ることを可能にすること。
【解決手段】被搬送体である媒体5を搬送するベルト7の表面に付着している粘着剤層3を掻き取る掻き取り部材13と、掻き取り部材13を支持する支持部15であって、掻き取り部材13の支持状態を変更可能に支持する支持部15とを備える。例えば、支持部15は、種類の異なる掻き取り部材13を付け替え可能に支持する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送体を搬送するベルトの表面に付着している粘着剤層を掻き取る掻き取り部材と、
前記掻き取り部材を支持する支持部であって、前記掻き取り部材の支持状態を変更可能に支持する支持部と、を備える粘着剤除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着剤除去装置において、
前記支持部は、種類の異なる前記掻き取り部材を付け替え可能に支持する、
ことを特徴とする粘着剤除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載の粘着剤除去装置において、
前記掻き取り部材は、板状のスクレーパーであり、
前記スクレーパーが前記支持部によって支持される際に湾曲させる湾曲形成部を備える、
ことを特徴とする粘着剤除去装置。
【請求項4】
請求項3に記載の粘着剤除去装置において、
前記湾曲形成部は、複数の部材で構成されている、
ことを特徴とする粘着剤除去装置。
【請求項5】
請求項2に記載の粘着剤除去装置において、
前記掻き取り部材によって掻き取られた前記粘着剤を受ける粘着剤受け部を備える、
ことを特徴とする粘着剤除去装置。
【請求項6】
請求項2に記載の粘着剤除去装置において、
前記掻き取り部材は、板状のスクレーパーであり、
前記スクレーパーは、前記ベルトに接触して掻き取る部分が突曲線形状に形成されている、
ことを特徴とする粘着剤除去装置。
【請求項7】
請求項3に記載の粘着剤除去装置において、
前記スクレーパーの前記ベルトに接触して掻き取る部分の位置を上下方向に調整する位置調整部を備える、
ことを特徴とする粘着剤除去装置。
【請求項8】
請求項2に記載の粘着剤除去装置において、
前記ベルトの幅方向に延伸するレールを備え、
前記支持部は前記レールに沿って移動可能である、
ことを特徴とする粘着剤除去装置。
【請求項9】
粘着剤層が表面に付着され、媒体を搬送するベルトと、
前記ベルトで搬送される前記媒体に記録を実行する記録部と、
前記粘着剤層を前記ベルトの表面から除去する粘着剤除去装置と、
を備える記録装置であって、
前記粘着剤除去装置は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のものである、
ことを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤除去装置及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置の一例として、特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1には、周回移動する無端状のベルトの表面に付着している粘着層の粘着力が低下した場合に、粘着層を形成し直す粘着層除去装置が開示されている。この粘着層除去装置は、粘着力が低下した粘着層を効率よく取り除くために、前記粘着層を融解させる溶剤を塗布する溶剤塗布部と、前記溶剤の浸透による前記粘着層の膨潤を促進させる膨潤促進部とを備え、溶解した前記粘着層を掻き取るスクレーパーとを有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、粘着剤を掻き取るスクレーパーは、粘着剤の種類や劣化状態によって適切な剛性等の求められる掻き取り性能が異なるが、特許文献1の粘着層除去装置では、構造的にそれらに対応することができない。そのため、効率よく粘着剤の除去を行うことが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る粘着剤除去装置は、被搬送体を搬送するベルトの表面に付着している粘着剤層を掻き取る掻き取り部材と、前記掻き取り部材を支持する支持部であって、前記掻き取り部材の支持状態を変更可能に支持する支持部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る記録装置は、粘着剤層が表面に付着され、媒体を搬送するベルトと、前記ベルトで搬送される前記媒体に記録を実行する記録部と、前記粘着剤層を前記ベルトの表面から除去する粘着剤除去装置と、を備える記録装置であって、前記粘着剤除去装置は、後述する第1の態様のから第8の態様のいずれか一つの態様に記載のものであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る粘着剤除去装置を備える記録装置の要部概略平面図。
【
図4】実施形態1に係る粘着剤除去装置の要部概略斜視図。
【
図5】
図4と異なる方向から見た同要部概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について先ず概略的に説明する。
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る粘着剤除去装置は、被搬送体を搬送するベルトの表面に付着している粘着剤層を掻き取る掻き取り部材と、前記掻き取り部材を支持する支持部であって、前記掻き取り部材の支持状態を変更可能に支持する支持部とを備えることを特徴とする。
ここで、「粘着剤層を掻き取る」とは、前記掻き取り部材が、前記ベルトの表面に付着している前記粘着剤層に接触した状態で前記ベルトが前記掻き取り部材に対して相対的に搬送方向に移動することで前記粘着剤層を前記ベルトの表面から削り取るように除去することを意味する。
【0009】
本態様によれば、前記掻き取り部材を支持する支持部は、前記掻き取り部材の支持状態を変更可能に支持する。これにより、前記掻き取り部材の支持状態を変更することができるので、前記粘着剤の種類や粘着剤層の劣化状態に応じて前記変更を行いことができ、以って、効果的な掻き取り性能で前記粘着剤層を掻き取ることが可能になる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る粘着剤除去装置は、第1の態様において、前記支持部は、種類の異なる前記掻き取り部材を付け替え可能に支持することを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記支持部は、種類の異なる前記掻き取り部材を付け替え可能に支持する。これにより、前記掻き取り部材を別の種類のものに付け替えることで、前記掻き取り部材の支持状態を簡単に変更することができる。
【0012】
本発明の第3の態様に係る粘着剤除去装置は、第2の態様において、前記掻き取り部材は、板状のスクレーパーであり、前記スクレーパーが前記支持部によって支持される際に湾曲させる湾曲形成部を備えることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、前記湾曲形成部は、剛性の低い前記板状のスクレーパーを湾曲させることで、容易に剛性を高めることができる。これにより、湾曲させない状態では剛性の低い前記スクレーパーを湾曲させて剛性を高めた状態にして前記ベルトに押し付けてしっかりと接触させることが可能になる。以って、前記粘着剤層を、前記ベルトを損傷する虞が少ない状態で掻き取ることが可能になる。
【0014】
本発明の第4の態様に係る粘着剤除去装置は、第3の態様において、前記湾曲形成部は、複数の部材で構成されていることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、前記湾曲形成部は、複数の部材で構成されているので、例えば円柱体等の前記複数の部材を湾曲の度合いに合わせて配置することで、前記スクレーパーを求める湾曲状態に簡単にすることができる。
【0016】
本発明の第5の態様に係る粘着剤除去装置は、第2の態様において、前記掻き取り部材によって掻き取られた前記粘着剤層を受ける粘着剤層受け部を備えることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、前記掻き取り部材によって掻き取られた前記粘着剤層を受ける粘着剤層受け部を備えるので、掻き取った前記粘着剤層を簡単に集めることができる。
【0018】
本発明の第6の態様に係る粘着剤除去装置は、第2の態様において、前記掻き取り部材は、板状のスクレーパーであり、前記スクレーパーは、前記ベルトに接触して掻き取る部分が突曲線形状に形成されていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、前記スクレーパーは、前記ベルトに接触して掻き取る部分が突曲線形状に形成されている。即ち、前記スクレーパーの前記掻き取る部分は、前記ベルトに対する接触位置が前記突曲線形状に沿って変わることになる。これにより、前記突曲線形状のトップ位置で前記粘着剤層の掻き取りが開始し、前記突曲線形状に沿って掻き取り位置が拡がっていくことになるので、前記粘着剤層を無理なく掻き取ることができる。
【0020】
本発明の第7の態様に係る粘着剤除去装置は、第3の態様において、前記スクレーパーの前記ベルトに接触して掻き取る部分の位置を上下方向に調整する位置調整部を備えることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、前記位置調整部によって前記スクレーパーの前記ベルトに接触して掻き取る部分の位置を上下方向に調整することができる。これにより、前記スクレーパーの剛性を簡単に調整することができ、以って、前記掻き取り部材の支持状態を簡単に変更することができる。
【0022】
本発明の第8の態様に係る粘着剤除去装置は、第2の態様において、前記ベルトの幅方向に延伸するレールを備え、前記支持部は前記レールに沿って移動可能であることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、前記ベルトの幅方向に延伸するレールを備え、前記支持部は前記レールに沿って移動可能である。これにより、前記支持部を前記レールに沿って移動させることで、前記ベルトの全幅に対して前記掻き取りを簡単に行うことができる。
【0024】
本発明の第9の態様に係る記録装置は、粘着剤層が表面に付着され、媒体を搬送するベルトと、前記ベルトで搬送される前記媒体に記録を実行する記録部と、前記粘着剤層を前記ベルトの表面から除去する粘着剤除去装置と、を備え、前記粘着剤除去装置は、第1の態様から第8の態様のいずれか一つの態様に記載のものであることを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、記録装置として、第1の態様から第8の態様のいずれか一つの態様と同様の効果が得られる。
【0026】
[実施形態]
以下、本発明の各実施形態に係る粘着剤除去装置と、この粘着剤除去装置を備えるインクジェットプリンター等の記録装置について、図面に基づいて具体的に説明する。
以下の説明においては、互いに直交する3つの軸を、各図に示すように、それぞれX軸、Y軸、Z軸とする。3つの軸(X,Y,Z)の矢印の示す方向が各方向の+方向であり、その逆が-方向である。Z軸方向は鉛直方向即ち重力が作用する方向に相当し、+Z方向が鉛直上方を示し、-Z方向が鉛直下方を示す。X軸方向及びY軸方向は、水平方向に相当する。+Y方向が装置の前方向を示し、-Y方向が装置の後方向を示す。+X方向が装置の右方向を示し、-X方向が装置の左方向を示す。
【0027】
[実施形態1]
<記録装置>
本実施形態の記録装置1はインクジェットプリンターである。
図1から
図3に示したように、この記録装置1は、粘着剤層3が表面に付着され、媒体5(
図2)を搬送するベルト7と、ベルト7の表面の粘着剤層3に貼り付いて搬送される媒体5に記録を実行する記録部9とを備えている。ベルト7は、無端ベルトであり、搬送方向Fにおける一端に位置する第1ローラー2(
図2)と他端に位置する第2ローラー(
図1の-Y方向における図示を省かれた位置に在る)とに周回するように掛け渡されている。媒体5は、ベルト7の搬送方向Fにおける上流(-Y方向)において、図示を省く押し付け部材の下を通過することによってベルト7の表面に接触し、粘着剤層3に貼り付けられた状態になって搬送される。媒体5は、粘着剤層3に貼り付けられた状態で記録部9の記録実行領域4(
図1)を通過し、記録が実行される。
図2に示したように、記録部9を通過した媒体5は、第1ローラー2の部分で粘着剤層3から剥がされて、巻取り部(図示せず)で巻き取られる。即ち、媒体5は、前記巻取り部から巻取り力を受けて第1ローラー2の部分で粘着剤層3から剥がされて巻き取られる。
図2と
図3において、符号6、8は第1ローラー2の軸受、符号10は第1ローラー2の回転軸を示す。
【0028】
<粘着剤除去装置>
図1に示したように、記録装置1は、粘着剤層3をベルト7の表面から除去する粘着剤除去装置11を備えている。
図2と
図3に示したように、粘着剤除去装置11は、ベルト7が第2ローラー2に裏面が接している部位に設けられている。
本実施形態では、粘着剤除去装置11は、被搬送体である媒体5を搬送するベルト7の表面に付着している粘着剤層3を掻き取る掻き取り部材13と、掻き取り部材13を支持する支持部15を備えている。支持部15は、掻き取り部材13の支持状態を変更可能に支持するように構成されている。
ここで、「粘着剤層3を掻き取る」とは、掻き取り部材13が、ベルト7の表面に付着している粘着剤層3に接触した状態でベルト7が掻き取り部材13に対して相対的に搬送方向Fに移動することで粘着剤層3をベルト7の表面から削り取るように除去することを意味する。
また、支持部15が掻き取り部材13の支持状態を変更可能に支持する具体的な構造については、後述する。
【0029】
図1に示したように、粘着剤除去装置11は、ベルト7の幅方向(X軸方向)に延伸するレール17を備えている。支持部15は、レール17に沿ってベルト7の幅方向(X軸方向)に移動可能に設けられている。
粘着剤除去装置11は、更に掻き取り部材13によって掻き取られた粘着剤層3を受ける箱形状の粘着剤層受け部19を備えている。
図2と
図3に示したように、本実施形態では、支持部15は、粘着剤層受け部19の内面12にネジ20で固定されている。
図4と
図5に示したように、支持部15は、粘着剤層受け部19の外面14にネジ20で固定されている構造でもよい。ここでは、
図2と
図3の支持部15と
図4と
図5の支持部は、同じ構造である。支持部15の具体的な構造については、
図4から
図7に基いて詳しくは後述する。
尚、支持部15が粘着剤層受け部19の外面14に固定されている構造の場合は、
図3のように内面12に固定されている場合に比して、掻き取り部材13によって掻き取られた粘着剤層3が粘着剤層受け部19内に入りにくい。そのため、掻き取り部材13によって掻き取られた粘着剤層3が粘着剤層受け部19内に入り易くする誘導部材を設けることが好ましい。
【0030】
本実施形態では、粘着剤層受け部19は、レール17に沿ってベルト7の幅方向(X軸方向)に移動可能に構成されている。粘着剤層受け部19のレール17に沿う移動は、ここでは手動による移動構造であるが、図示を省く駆動機構によってモーター等の駆動源の動力を動力伝達機構を使って伝達させて移動可能に構成してもよい。
本実施形態では、掻き取り部材13を支持する支持部15は、粘着剤層受け部19の内面12(
図2と
図3)又は外面14(
図4と
図5)に固定されているので、粘着剤層受け部19がレール17に沿って移動することで、掻き取り部材13及び支持部15も粘着剤層受け部19と一体にレール17に沿って移動する構造である。
尚、支持部15を粘着剤層受け部19を介さずに直接レール17に沿って移動する構造にしてもよい。
【0031】
本実施形態では、レール17の両端は、図示を省く連結部材を介して軸受6、8を保持する構造部材(図示を省く)に連結され、ベルト7に対して所定の位置に装着できるように構成されている。これにより、粘着剤除去装置11がベルト7の粘着剤層3を掻き取って除去することが可能な状態になる。粘着剤除去装置11は、それを使わないときは前記連結部材を前記構造部材から外すことで記録装置1から取り外せる。これにより、粘着剤除去装置11を他の場所に置いておくことができる。
尚、粘着剤除去装置11が記録装置1に連結された状態で記録装置1の使用の妨げにならない場合は、連結したままでも良いことは勿論である。
また、レール17のベルト7に対する前記「所定に位置」は、固定された位置でなく、可変とする構造にすることが好ましい。また、掻き取り部材13は、ベルト7に対する接触角度を可変にして支持部15に支持される構造とすることが好ましい。
また、粘着剤除去装置11を、ベルト7の粘着剤層3を掻き取って除去することが可能な状態にする構造としては、前記連結部材を介して前記構造部材に沿うように装着する構造に限定されないことは勿論である。例えば、レール17の両端部に脚部をそれぞれ設け、その脚部を床等に固定してベルト7の粘着剤層3を掻き取って除去することが可能な状態にしてもよい。
【0032】
本実施形態では、掻き取り部材13の支持状態を変更可能にする具体的な構造として、支持部15は、種類の異なる掻き取り部材13を付け替え可能に支持するように構成されている。
種類の異なる掻き取り部材13とは、粘着剤の種類や粘着剤層3の劣化状態に応じて、掻き取り部材13の形状、厚さ、材料等を異なるものに付け替えて、効果的な掻き取り性能で粘着剤層3を掻き取ることができるようにすることを意味する。
尚、掻き取り部材13の支持状態を変更可能にする構造としては、前記した種類の異なる掻き取り部材13を付け替え可能にする構造に限定されない。たとえば、支持部15に支持された状態の掻き取り部材13のベルト7に対する接触角度を可変とする構造、或いは掻き取り部材13の支持部15からの突出長さを可変とする構造等でもよい。
【0033】
本実施形態では、掻き取り部材13は、板状のスクレーパー13(同じ符号13を付す)で構成されている。更に、
図2と
図3に示したように、粘着剤除去装置11は、板状のスクレーパー13が支持部15によって支持される際にスクレーパー13をベルト7側が凸となるように湾曲させる湾曲形成部21を備えている。
更に、スクレーパー13は、ベルト7に接触して掻き取る部分23が突曲線形状25に形成されている。この突曲線形状25は、ベルト7に接触して掻き取る部分23の幅方向(X軸方向)における中央部が最も突出している、言い換えるとトップ位置16となるように形成されている。スクレーパー13は、トップ位置16の所から、ベルト7の粘着剤層3の掻き取りが始まり、突曲線形状25に沿って掻き取り位置が拡がっていく。
支持部15が湾曲形成部21を介してスクレーパー13を支持する具体的な構造は、
図3では小さく描かれているので、大きく描かれている
図4から
図7に基いて、後述する位置調整部27を含めて、改めて詳しく説明する。
【0034】
図8(A)(B)(C)に基づいて、形状が異なるスクレーパー13の一例を説明する。
図8(A)は、掻き取る部分23の中央部16が直線形状より僅かに高い突曲線形状のもの、
図8(B)は、掻き取る部分23の中央部16が
図8(A)よりも高い突曲線形状のもの、
図8(C)は、掻き取る部分23の全体が直線形状であるものを示している。
図8(B)のスクレーパー13は、そのトップ位置16が
図8(A)のスクレーパー13のトップ位置16よりもベルト7への接触力が小さい面積に集中する。その結果、
図8(A)のものより大きい掻き取り力が作用する。粘着剤層3の劣化の程度が低いものは
図8(B)のスクレーパー13を使うのが良い傾向であることを確認した。一方、粘着剤層3の劣化の程度が高く、粘着剤層3が一部剥がれているものは
図8(C)のスクレーパー13を使うのが良い傾向であることを確認した。
尚、
図8において、スクレーパー13の掻き取る部分23の反対側の一部の領域18が、湾曲形成部21と面接触して支持部15により支持される部分である。
【0035】
本実施形態では、
図3に示したように、粘着剤除去装置11は位置調整部27を備えている。位置調整部27は、スクレーパー13のベルト7に接触して掻き取る部分23の位置を上下方向に調整することができる。
次に、
図4から
図7に基づいて、位置調整部27の構造を含めて、支持部15が湾曲形成部21を介してスクレーパー13を支持する具体的な構造について説明する。
支持部15は、
図4に表れているように、長尺な板を略U字状に折り曲げて一対の脚部32、34とベース部38とを有する形状に形成されている。支持部15は、脚部32、34の各足部36,36がネジ20によって粘着剤層受け部19の外面14に締結固定される。
【0036】
板状のスクレーパー13は、
図4及び
図5に表れているように、粘着剤層受け部19の外面14との間に湾曲形成部21を位置させて、湾曲形成部21の湾曲形成面46と接触することで-Y方向に凸となる湾曲形状に変形された状態で支持部15に支持されている。
支持部15のベース部38の両端には、押し込み用ネジ40、42が螺合されている。この押し込み用ネジ40、42を回して押し込むと、スクレーパー13は湾曲形成部21の湾曲形成面46に接触するように曲がり変形する。これにより、スクレーパー13は、-Y方向に凸となる湾曲形状に変形された状態になり、その湾曲形状で支持部15に支持された状態になる。
【0037】
図4及び
図5に表れているように、位置調整部27は、板材をL字に曲げた形状であり、スライド部44と載置部28を有する。スライド部44は、保持部30によって、その位置で上下にスライドできるように保持されている。
図6に表れているように、スライド部44は、上下方向(Z軸方向)に長い2本の平行なガイドスリット22、24を有する。粘着剤層受け部19の外面14には、ネジ26が保持部30側からガイドスリット22、24を貫通する状態で取り付けられている。即ち、スライド部44は、ネジ26とガイドスリット22、24によって、上下方向にスライド移動できるように構成されている。
載置部28は、
図6及び
図7に表れているように、スクレーパー13の下辺が接触することでスクレーパー13を載置する。位置調整部27のスライド部44を上下に移動することで、載置部28も一体に上下に移動する。これにより、スクレーパー13のベルト7に接触して掻き取る部分23の位置を上下方向に移動して調整することができる。
スクレーパー13の掻き取る部分23の位置を上下方向に移動して調整した場合に、スクレーパー13のベルト7に対する接触角度が可変に構成されていると、その角度を適切な角度に調整をすることができる。
【0038】
<実施形態1の効果の説明>
(1)本実施形態では、掻き取り部材13を支持する支持部15は、掻き取り部材13の支持状態を変更可能に支持する。これにより、掻き取り部材13の支持状態を変更することができるので、粘着剤の種類や粘着剤層3の劣化状態に応じて前記変更を行いことができ、以って、効果的な掻き取り性能で粘着剤層3を掻き取ることが可能になる。
(2)また、本実施形態では、支持部15は、種類の異なる掻き取り部材13を付け替え可能に支持する。これにより、掻き取り部材13を別の種類のものに付け替えることで、掻き取り部材13の支持状態を簡単に変更することができる。
【0039】
(3)また、本実施形態では、湾曲形成部21は、剛性の低い板状のスクレーパー13を湾曲させることで、容易に剛性を高めることができる。これにより、湾曲させない状態では剛性の低いスクレーパー13を湾曲させて剛性を高めた状態にしてベルト7に押し付けてしっかりと接触させることが可能になる。以って、粘着剤層3を、ベルト7を損傷する虞が少ない状態で掻き取ることが可能になる。
(4)また、本実施形態では、掻き取り部材13によって掻き取られた粘着剤層3を受ける粘着剤層受け部19を備えるので、掻き取った粘着剤層3を簡単に集めることができる。
(5)また、本実施形態では、スクレーパー13は、ベルト7に接触して掻き取る部分23が突曲線形状25に形成されている。即ち、スクレーパー13の掻き取る部分23は、ベルト7に対する接触位置が突曲線形状25に沿って変わることになる。これにより、突曲線形状25のトップ位置16で粘着剤層3の掻き取りが開始し、突曲線形状25に沿って掻き取り位置が拡がっていくことになるので、粘着剤層3を無理なく掻き取ることができる。
【0040】
(6)また、本実施形態では、位置調整部27によってスクレーパー13のベルト7に接触して掻き取る部分23の位置を上下方向に調整することができる。これにより、スクレーパー13の剛性を簡単に調整することができ、以って、掻き取り部材13の支持状態を簡単に変更することができる。
(7)また、本実施形態では、ベルト7の幅方向に延伸するレール17を備え、支持部15はレール17に沿って移動可能である。これにより、支持部15をレール17に沿って移動させることで、ベルト7の全幅に対して前記掻き取りを簡単に行うことができる。
【0041】
[実施形態2]
以下、実施形態2に係る粘着剤除去装置11について、
図9に基づいて説明する。実施形態1と同一部分については同一符号を付してその構成及び対応する効果の説明は省略する。
実施形態2の粘着剤除去装置11では、湾曲形成部21は、実施形態1のように、単一体ではなく、複数の部材で構成されている。具体的には、円柱形状の5つの湾曲形成部21が互いに離間して配置され、5つの湾曲形成部21の全体でスクレーパー13を湾曲させるように構成されている。尚、複数の部材としては、円柱形状のものに限定されないことは勿論であり、複数の部材が全体でスクレーパー13を湾曲させることができる構造であればよい。
【0042】
実施形態2によれば、湾曲形成部21は、複数の部材で構成されている。即ち、円柱体形状等の前記複数の部材をスクレーパー13を湾曲させるその度合いに合わせて配置することができるので、スクレーパー13を求める湾曲状態に簡単にすることができる。
【0043】
〔他の実施形態〕
本発明に係る粘着剤除去装置11及び粘着剤除去装置11を備える記録装置1は、以上述べた実施形態の構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内での部分的構成の変更や省略等を行うことは勿論可能である。
粘着剤除去装置を備えるものとして、上記実施例では記録装置1について説明したが、記録装置以外のものでもよい。即ち、媒体5をベルト7の粘着剤層3に貼り付けて搬送する構造を有する他の装置にも適用可能である。
また、上記実施形態では、支持部15はスクレーパー13を一つ支持する場合を説明したが、2つ以上を重ねて支持することで、スクレーパー13の支持状態を変更可能にしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…記録装置、2…第1ローラー、3…粘着剤層、4…記録実行領域、5…媒体、
6…軸受、7…ベルト、8…軸受、9…記録部、10…回転軸、
11…粘着剤除去装置、12…内面、13…掻き取り部材、スクレーパー、
14…外面、15…支持部、16…トップ位置、17…レール、
18…一部の領域、19…粘着剤層受け部、20…ネジ、22…ガイドスリット、
23…掻き取る部分、24…ガイドスリット、25…突曲線形状、28…載置部、
32…脚部、34…脚部、36…足部、38…ベース部、40…押し込み用ネジ、
42…押し込み用ネジ、44…スライド部、46…湾曲形成面、F…搬送方向