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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006779
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】永久磁石界磁、リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107985
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】秋山 輝和
(72)【発明者】
【氏名】今盛 聡
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB06
5H641BB18
5H641GG03
5H641GG08
5H641HH02
(57)【要約】
【課題】突極性を有する永久磁石界磁の減磁を抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る界磁20は、可動子(電機子10)の移動経路に沿って並べられる複数の永久磁石21と、隣り合う永久磁石21同士の間に永久磁石21と隣接して配置される軟磁性部材23と、永久磁石21に対する電機子10からの磁界の印加を抑制する抑制部と、を備える。例えば、抑制部は、永久磁石21の電機子10側の表面における移動経路に沿う方向の両端のうちの少なくとも一方に設けられる面取り部21Aである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動子の移動経路に沿って並べられる複数の永久磁石と、
隣り合う前記永久磁石同士の間に前記永久磁石と隣接して配置され、軟磁性材料で形成される第1の部材と、
前記永久磁石に対する電機子からの磁界の印加を抑制する抑制部と、を備える、
リニアモータ用の永久磁石界磁。
【請求項2】
前記抑制部は、前記永久磁石の前記電機子側の表面における前記移動経路に沿う方向の両端のうちの少なくとも一方に設けられる面取り部である、
請求項1に記載の永久磁石界磁。
【請求項3】
前記第1の部材は、前記永久磁石の前記面取り部と当接するように形成されている、
請求項2に記載の永久磁石界磁。
【請求項4】
前記第1の部材の前記電機子側の表面には、両隣の前記永久磁石の前記面取り部同士の間に介在するように溝部が設けられる、
請求項3に記載の永久磁石界磁。
【請求項5】
前記抑制部は、前記永久磁石及び前記第1の部材の前記電機子側の表面を覆うように設けられ、軟磁性材料で形成される第2の部材である、
請求項1に記載の永久磁石界磁。
【請求項6】
前記第2の部材の厚みは、前記永久磁石の厚みより小さい、
請求項5に記載の永久磁石界磁。
【請求項7】
前記第2の部材は、前記永久磁石ごとに設けられ、対象の前記永久磁石の前記電機子側の表面の全体、及び対象の前記永久磁石に隣接する前記第1の部材の前記電機子側の表面の一部を覆い、対象の前記永久磁石に隣り合う他の前記永久磁石に対応する他の前記第2の部材と前記移動経路に沿う方向で離隔するように配置される、
請求項5に記載の永久磁石界磁。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の永久磁石界磁と、
前記電機子と、を備える、
リニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リニアモータ用の永久磁石界磁等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リニアモータ用の永久磁石界磁において、永久磁石の表面を軟磁性材料で覆うことにより永久磁石の減磁を抑制する技術が知られている(特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-120471号公報
【特許文献2】特開2019-154141号公報
【特許文献3】特開2009-148153号公報
【特許文献4】国際公開第2019/167397号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~4の永久磁石界磁は、突極性がなく、リラクタンス力を利用することができない。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、突極性を有する永久磁石界磁の減磁を抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
可動子の移動経路に沿って並べられる複数の永久磁石と、
隣り合う前記永久磁石同士の間に前記永久磁石と隣接して配置され、軟磁性材料で形成される第1の部材と、
前記永久磁石に対する電機子からの磁界の印加を抑制する抑制部と、を備える、
リニアモータ用の永久磁石界磁が提供される。
【0007】
また、本開示の他の実施形態では、
上述の永久磁石界磁と、
前記電機子と、を備える、
リニアモータが提供される。
【発明の効果】
【0008】
上述の実施形態によれば、突極性を有する永久磁石界磁の減磁を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】リニアモータの一例を示す側面断面図である。
図2】電機子の一例を示す平面断面図である。
図3】界磁の第1例を示す側面図である。
図4】比較例に係る界磁の減磁解析結果の一例を示す図である。
図5】界磁の第2例を示す側面図である。
図6】界磁の第3例を示す側面図である。
図7】界磁の第4例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0011】
[リニアモータの概要]
図1図2を参照して、本実施形態に係るリニアモータ100の概要について説明する。
【0012】
図1は、リニアモータ100の一例を示す側面断面図である。具体的には、図1は、リニアモータ100のX軸及びZ軸に平行な平面による断面図である。図2は、電機子10の一例を示す平面断面図である。具体的には、図2は、図1のA-A線の断面図である。
【0013】
以下、図中のX軸、Y軸、及びZ軸で規定される直交座標系を利用して説明を行う場合がある。また、X軸正方向及びX軸負方向を包括的にX軸方向と称し、Y軸正方向及びY軸負方向を包括的にY軸方向と称し、Z軸正方向及びZ軸負方向を包括的にZ軸方向と称する場合がある。
【0014】
尚、図1において、界磁20は、その概要が描画され、詳細な構造は省略されている(図4図5図7参照)。
【0015】
本実施形態に係るリニアモータ100は、例えば、鉄道車両のドア、駅のプラットフォームのドア等のスライド式の各種ドアの開閉機構に組み込まれてよい。また、本実施形態に係るリニアモータ100は、例えば、半導体製造装置やマシニングセンタ等の工作機械に搭載されてもよい。
【0016】
図1図2に示すように、リニアモータ100は、電機子10と、界磁20とを含む。図1において、界磁20に描画される"N"及び"S"の文字は、永久磁石21の磁極(N極及びS極)を表す。また、図2において、電機子10に描画される破線は、コア11のZ軸方向の両端部の断面形状を表す。
【0017】
電機子10は、所定の空隙(「エアギャップ」とも称する)AGを介して、界磁部20A,20BとZ軸方向に対向して配置される。本例では、電機子10は、可動子である。電機子10は、例えば、スライドレールやリニアガイド等の支持機構によって、X軸方向に移動可能に支持される。これにより、電機子10は、界磁20との間での磁気的に作用する力によって、X軸方向に移動することができる。電機子10は、コア(「鉄心」とも称する)11と、コイル(「巻線」とも称する)12と、保持部13とを含む。
【0018】
コア11は、コイル12の電機子電流により発生する磁界や界磁20の永久磁石21からの磁界の磁路として機能する。コア11は、軟磁性材料で形成される。コア11に使用される軟磁性材料は、例えば、鋳鉄や構造用鋼等の鉄系材料である。また、コア11に使用される軟磁性材料は、電磁鋼板や圧粉磁心等の機能材料であってもよい。本例では、コイル12と同数の複数(12個)のコア11が設けられる。
【0019】
例えば、図1図2に示すように、コア11は、Z軸方向に延びる角柱形状を有し、Z軸方向の両端部の断面形状がZ軸方向の中央部の断面形状よりも大きくなるように形成される。これにより、例えば、コア11がZ軸正方向に移動しようとしても、コア11のZ軸負方向の端部が保持部13と当接し、その結果、コア11がZ軸正方向に移動できないことから、コア11のZ軸正方向への移動に伴う電機子10からの脱落を抑制できる。また、コア11のZ軸負方向への移動に伴う電機子10からの脱落についても同様の作用で抑制できる。
【0020】
コイル12は、電機子電流が流されることにより、界磁部20A,20Bから生じる磁界との相互作用で可動子(電機子10)の推進力を発生させる。コイル12は、コア11の周りに導線が巻回されることにより構成される。
【0021】
本例では、複数(12個)のコイル12が設けられる。複数のコイル12は、X軸方向に並べられる。例えば、複数のコイル12には、U相、V相、及びW相の三相交流電力が供給される。具体的には、図中のX軸負方向の端部のコイル12からX軸正方向に向かって順に、U相、V相、W相、U相、V相、W相、・・・の三相交流電力が供給されてよい。但し、複数のコイル12にU相、V相、及びW相の電力を供給する順番は一例であり、この順番は、リニアモータ100の仕様(例えば、X軸方向における永久磁石21の極数及びコイル12のスロット数の配置の関係)により適宜変更されてもよい。
【0022】
コア11とコイル12(導線)との間には相互間の絶縁性を確保するための図示しない絶縁部が設けられる。絶縁部は、例えば、絶縁紙、インシュレータ、ボビン、コア11の表面の絶縁コーティング等のコア11とコイル12全体との間の絶縁性を確保する絶縁部材である。コア11の絶縁コーティングは、例えば、絶縁粉体塗装である。また、絶縁部は、コイル12の導線にコーディングされる絶縁皮膜であってもよい。
【0023】
尚、コイル12の数は、11個以下であってもよいし、13個以上であってもよい。
【0024】
保持部13は、複数のコア11及び複数のコイル12を一体的に保持する。保持部13は、例えば、モールド樹脂により構成され、複数のコア11の軸方向(Z軸方向)の両端部は、保持部13から露出するように保持される。
【0025】
界磁20は、電機子10に作用する磁界を発生させる。本例では、界磁20は、固定子である。図1に示すように、界磁20は、X軸方向に延びるように設けられ、そのX軸方向の寸法は、可動子としての電機子10のX軸方向の移動量に合わせて規定される。
【0026】
界磁20は、界磁部20A,20Bを含む。
【0027】
界磁部20A,20Bは、互いに略平行にX軸方向に延びるように設けられる。「略」は、例えば、製造上の誤差等を許容する意図であり、以下同様の意図で用いる。界磁部20A,20Bとの間には、Z軸方向で所定の間隔が設けられ、この間隔は、電機子10のZ軸方向の寸法よりもある程度大きくなるように設定される。例えば、界磁部20A,20Bの間の間隔は、電機子10のZ軸方向の寸法に、電機子10の支持機構(例えば、スライドレールやリニアガイド)のZ軸方向の可動量と所定の余裕分を加えた量に相当する。これにより、可動子としての電機子10は、界磁部20A,20Bに接触することなく、X軸方向に移動することができる。
【0028】
界磁部20A,20Bは、それぞれ、電機子10から見てZ軸正方向及びZ軸負方向に対向するように配置される。界磁部20A,20Bは、それぞれ、電機子10の複数のコイル12に鎖交する磁束を発生させる。
【0029】
界磁部20A,20Bは、それぞれ、複数の永久磁石21と、バックヨーク22と、軟磁性部材23とを含む。
【0030】
複数の永久磁石21は、Z軸方向で電機子10と対向するように、X軸方向に並べて配置される。例えば、図1に示すように、複数の永久磁石21は、それぞれ、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に各辺を有する略直方体形状を有し、略等間隔で、X軸方向に並べて配置される。複数の永久磁石21は、それぞれ、界磁20が電機子10と対向するZ軸方向に磁化され、電機子10と対向するZ軸方向の端面の磁極がX軸方向に隣り合う他の永久磁石21と異なるように配置される。複数の永久磁石21は、例えば、ネオジム焼結磁石やフェライト磁石等である。
【0031】
界磁部20A及び界磁部20Bは、互いの永久磁石21の磁気的な仕様(例えば、形状、寸法、残留磁束密度等)、及び配置の仕様(例えば、永久磁石21のX軸方向の配置位置やハルバッハ配列の有無を含む配列の仕方等)が略同じになるように構成される。これにより、界磁部20A及び界磁部20Bは、Z軸方向で互いに対向する空間において、略対称な磁界を発生させることができる。
【0032】
バックヨーク22は、Z軸方向において、電機子10が存在する側とは反対側の永久磁石21の端面に隣接して配置される。バックヨーク22は、隣り合う永久磁石21の間の磁路として機能する。バックヨーク22は、軟磁性材料で形成される。バックヨーク22に使用される軟磁性材料は、例えば、鋳鉄や構造用鋼等の鉄系材料である。また、バックヨーク22に使用される軟磁性材料は、電磁鋼板や圧粉磁心等の機能材料であってもよい。
【0033】
軟磁性部材23は、軟磁性材料で形成され、X軸方向において、隣り合う永久磁石21同士の間にその永久磁石21と隣接して配置される。例えば、軟磁性材料は、鋳鉄や構造用鋼等の鉄系材料である。また、軟磁性材料は、電磁鋼板や圧粉磁心等の機能材料であってもよい。例えば、図1に示すように、軟磁性部材23は、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に各辺を有する略直方体形状を有し、X軸方向の両端部で永久磁石21と当接する。これにより、界磁部20A,20Bは、可動子(電機子10)の移動方向であるX軸方向において、電機子10の磁界に関する磁気抵抗(リラクタンス)が不均一な突極性を有することができる。そのため、リニアモータ1は、推進力として、電機子10及び界磁20との間のマグネット力だけでなく、リラクタンス力を利用することができる。よって、リニアモータ1の推力を向上させることができる。また、界磁20(界磁部20A,20B)の突極性を利用することにより、可動子(電機子10)のX軸方向の位置を推定することが可能となり、電機子10の位置検出用のエンコーダ等のセンサを省略することができる。
【0034】
[界磁の第1例]
次に、図3図4を参照して、本実施形態に係る界磁20の第1例について説明する。
【0035】
図3は、界磁20の第1例を示す側面図である。図4は、比較例に係る界磁20cの減磁解析結果の一例を示す図である。具体的には、図4は、X軸正方向に可動子(電機子10)が移動する場合の界磁20cの減磁解析結果の具体例を示す図である。
【0036】
尚、図3では、界磁部20Bのみが描画され、界磁部20Aの描画が省略されている。また、図3の黒塗矢印は、永久磁石21の磁化(着磁)方向を表している。
【0037】
図3に示すように、本例では、永久磁石21におけるZ軸方向で電機子10側の端面のX軸方向の両端には、X軸方向の端面との間の角部が平面状に面取りされた面取り部21Aが設けられる。
【0038】
例えば、図4に示すように、Z軸方向で電機子10側の端面のX軸方向の両端の角部21cAが面取りされていない永久磁石21cが採用される界磁20cでは、その角部21cAの減磁度合いが非常に高くなる。X軸方向で永久磁石21cと重複する位置のコイル12から作用する磁束AMFは、磁気抵抗が相対的に低い軟磁性部材23に流れようとするために向きを変えるものの、磁束の一部が永久磁石21cの角部21cAを通過することになってしまうからである。そのため、角部21cAに印加される電機子10の磁束の影響で角部21cAの減磁が進行すると共に、磁束が印加される角部21cAの周囲の部分にも減磁が伝搬し、永久磁石21cの減磁が進行する場合がある。
【0039】
これに対して、本例では、角部21cAに相当する箇所が面取りされた面取り部21Aが設けられることにより、永久磁石21の減磁を抑制することができる。また、永久磁石21における角部21cAに相当する箇所は、界磁20(界磁部20A,20B)のX軸方向の磁束密度波形の高調波成分に相当する。そのため、永久磁石21における角部21cAに相当する箇所が面取りされた面取り部21Aが設けられても、リニアモータ1の推力への影響を抑制することができる。即ち、本例では、リニアモータ1の推力への影響を抑制しつつ、永久磁石21の減磁を抑制することができる。
【0040】
また、永久磁石21における角部21cAに相当する箇所が面取りされた面取り部21Aが設けられることで、界磁20(界磁部20A,20B)のX軸方向の磁束密度波形の高調波成分を抑制し、その結果、リニアモータ1のコギングを抑制することができる。
【0041】
[界磁の第2例]
次に、図5を参照して、本実施形態に係る界磁20の第2例について説明する。
【0042】
以下、上述の第1例と異なる部分を中心に説明し、上述の第1例と同じ或いは対応する内容の説明を簡略化或いは省略する場合がある。
【0043】
図5は、界磁20の第2例を示す側面図である。
【0044】
尚、図5では、界磁部20Bのみが描画され、界磁部20Aの描画が省略されている。また、図5の黒塗矢印は、永久磁石21の磁化(着磁)方向を表している。
【0045】
図5に示すように、本例では、上述の第1例と同様、永久磁石21におけるZ軸方向で電機子10側の端面のX軸方向の両端には、角部が平面状に面取りされた面取り部21Aが設けられる。
【0046】
軟磁性部材23は、上述の第2例と異なり、隣接する永久磁石21の面取り部21Aと当接するように形成される。具体的には、軟磁性部材23は、永久磁石21の面取り部21Aによって面取りされ除去された角部の領域に、X軸方向の端面が張り出すように形成され、面取り部21Aと当接する。これにより、拡張された軟磁性部材23の部分の作用で、電機子10の磁束が軟磁性部材23により集中し易くなり、リラクタンス力を向上させることができる。そのため、リニアモータ1の推力を向上させることができる。
【0047】
[界磁の第3例]
次に、図6を参照して、本実施形態に係る界磁20の第3例について説明する。
【0048】
以下、上述の第1例、第2例と異なる部分を中心に説明し、上述の第1例、第2例と同じ或いは対応する内容の説明を簡略化或いは省略する場合がある。
【0049】
図6は、界磁20の第3例を示す側面図である。
【0050】
尚、図6では、界磁部20Bのみが描画され、界磁部20Aの描画が省略されている。また、図6の黒塗矢印は、永久磁石21の磁化(着磁)方向を表している。
【0051】
本例では、上述の第1例、第2例と同様、永久磁石21におけるZ軸方向で電機子10側の端面のX軸方向の両端には、角部が平面状に面取りされた面取り部21Aが設けられる。
【0052】
軟磁性部材23は、上述の第2例と同様、隣接する永久磁石21の面取り部21Aと当接するように形成される。
【0053】
また、本例では、軟磁性部材23は、上述の第1例、第2例と異なり、溝部23Aを有する。
【0054】
溝部23Aは、軟磁性部材23におけるZ軸方向で電機子10側の端面において、X軸方向と交差する方向(例えば、Y軸方向)に延びる形で縦断するように設けられる。これにより、隣り合う永久磁石21の面取り部21A同士の極性の異なる磁極の間に溝部23Aを介在させることができる。そのため、隣り合う永久磁石21の面取り部21A同士の極性の異なる磁極の間での磁束の短絡に伴うリニアモータ1の推力の低下を抑制することができる。
【0055】
溝部23Aの形状や各種寸法等の仕様は、例えば、コンピュータシミュレーションに基づき決定される。具体的には、溝部23AのX軸方向の寸法(幅)やZ軸方向の寸法(深さ)は、電磁界解析等のコンピュータシミュレーションによって決定されてよい。この際、例えば、永久磁石21のZ軸方向の端面の磁束密度波形における基本波の振幅が最大となるように溝部23AのX軸方向の寸法やZ軸方向の寸法が決定される。
【0056】
[界磁の第4例]
次に、図7を参照して、本実施形態に係る界磁20の第4例について説明する。
【0057】
以下、上述の第1例~第3例と異なる部分を中心に説明し、上述の第1例~第3例と同じ或いは対応する内容の説明を簡略化或いは省略する場合がある。
【0058】
図7は、界磁20の第4例を示す側面図である。
【0059】
尚、図7では、界磁部20Bのみが描画され、界磁部20Aの描画が省略されている。また、図7の黒塗矢印は、永久磁石21の磁化(着磁)方向を表している。
【0060】
本例では、上述の第1例~第3例と異なり、軟磁性部材24が設けられる。
【0061】
軟磁性部材24は、軟磁性材料で形成され、永久磁石21及び軟磁性部材23におけるZ軸方向で電機子10側の表面を覆うように設けられる。例えば、軟磁性材料は、鋳鉄や構造用鋼等の鉄系材料である。また、軟磁性材料は、電磁鋼板や圧粉磁心等の機能材料であってもよい。これにより、電機子10の磁束が永久磁石21に直接印加されることがなくなり、ほとんどが軟磁性部材24及び軟磁性部材23を通過するようになる。そのため、永久磁石21の減磁を抑制することができる。
【0062】
また、軟磁性部材24は、Z軸方向の寸法が比較的小さく、X軸方向及びY軸方向に延びる形態の平板形状を有してもよい。例えば、軟磁性部材24のZ軸方向の寸法(厚み)は、永久磁石21やバックヨーク22のZ軸方向の寸法よりも小さい。また、軟磁性部材24のZ軸方向の厚みは、永久磁石21やバックヨーク22のZ軸方向の寸法より小さく、且つ、電機子10と界磁部20A,20Bとの間の空隙AGのZ軸方向の寸法より大きくてもよい。また、軟磁性部材24のZ軸方向の厚みは、空隙AGのZ軸方向の寸法と同等或いはそれより小さくてもよい。これにより、隣り合う永久磁石21同士の互いに異なる磁極の磁束が軟磁性部材24を通じて短絡するような事態を抑制することができる。
【0063】
[他の実施形態]
上述の実施形態には、適宜変形や変更が加えられてもよい。
【0064】
例えば、上述の実施形態(界磁20の第1例~第3例)では、面取り部21Aは、永久磁石21のX軸方向の両端部のうちの何れか一方だけに設けられてもよい。例えば、図4に示すように、永久磁石21のX軸正方向の端部のみに減磁が生じやすい場合、面取り部21Aは、永久磁石21のX軸方向の両端部のうちのX軸正方向の端部のみに設けられてもよい。また、永久磁石21のX軸負方向の端部のみに減磁が生じやすい場合についても同様であってよい。これにより、例えば、永久磁石21に面取り部21Aを形成するための加工の工数を低減することができる。永久磁石21のX軸正方向及び負方向のうちの一方の端部のみに減磁が生じやすい場合には、例えば、可動子(電機子10)がその一方のみに移動する場合が含まれる。また、永久磁石21のX軸正方向及び負方向のうちの一方の端部のみに減磁が生じやすい場合には、例えば、可動子がX軸正方向及び負方向の双方に移動するものの、そのうちの一方のみに相対的に大きな推力を発生させる場合が含まれる。
【0065】
また、上述の実施形態(界磁20の第1例~第3例)やその変形例では、面取り部21Aは、曲面状に面取りされていてもよい。
【0066】
また、上述の実施形態(界磁20の第4例)では、軟磁性部材24は、永久磁石21ごとに設けられてもよい。この場合、軟磁性部材24は、対象の永久磁石21の表面全体及び対象の永久磁石21に隣接する軟磁性部材23の表面の一部を覆い、対象の永久磁石21と隣り合う他の永久磁石21に対応する他の軟磁性部材24と離隔されるように配置される。これにより、隣り合う永久磁石21同士の互いに異なる磁極の磁束が軟磁性部材24を通じて短絡するような事態を更に抑制することができる。
【0067】
また、上述の実施形態(界磁20の第3例)やその変形例では、溝部23Aは、軟磁性部材23におけるZ軸方向で電機子10側の端面をY軸方向に縦断せず、Y軸方向の両端部の少なくとも一方が軟磁性部材23のY軸方向の端部よりも内側にあってもよい。
【0068】
また、上述の実施形態やその変形例では、界磁部20A,20Bのうちの何れか一方が省略されてもよい。
【0069】
また、上述の実施形態やその変形例では、バックヨーク22が省略されてもよい。
【0070】
また、例えば、上述の実施形態やその変形例では、コア11が省略され、電機子10は、コアレス構造を有していてもよい。
【0071】
また、上述の実施形態やその変形例の構成は、界磁が可動子で電機子が固定子であるリニアモータに採用されてもよい。この場合、図1の可動子としての電機子10の位置に可動子としての界磁が配置され、固定子としての界磁部20A,20Bの位置に固定子としての電機子が配置されてよい。つまり、可動子としての界磁及び固定子としての電機子は、Z軸方向で2つの電機子が1つの界磁を挟み込む形で配置されてよい。
【0072】
また、上述の実施形態やその変形例では、リニアモータの可動子の移動経路は、少なくとも一部に曲線に沿う経路を含んでもよい。
【0073】
[作用]
次に、本実施形態に係る永久磁石界磁の作用について説明する。
【0074】
本実施形態では、永久磁石界磁は、リニアモータ用であり、複数の永久磁石と、第1の部材と、抑制部と、を備える。永久磁石は、例えば、上述の永久磁石21である。第1の部材は、例えば、上述の軟磁性部材23である。抑制部は、例えば、上述の面取り部21Aや軟磁性部材24である。具体的には、複数の永久磁石は、可動子の移動経路に沿って並べられる。可動子は、例えば、上述の電機子10である。移動経路は、例えば、上述のX軸方向に沿う経路である。また、第1の部材は、隣り合う永久磁石同士の間に永久磁石と隣接して配置され、軟磁性材料で形成される。そして、抑制部は、永久磁石に対する電機子からの磁界の印加を抑制する。電機子は、例えば、上述の電機子10である。
【0075】
これにより、突極性を有する永久磁石界磁の減磁を抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、抑制部は、永久磁石の電機子側の表面における移動経路に沿う方向の両端のうちの少なくとも一方に設けられる面取り部であってもよい。面取り部は、例えば、上述の面取り部21Aである。
【0077】
これにより、永久磁石において、電機子の磁束が印加し減磁し易い箇所(永久磁石の電機子側の表面における移動経路に沿う方向の両端の角部)が除去され、その結果、永久磁石の減磁を抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態では、第1の部材は、永久磁石の面取り部と当接するように形成されていてもよい。
【0079】
これにより、第1の部材が永久磁石における面取りされた角部の領域に拡張される。そのため、電機子10の磁束が軟磁性部材23により集中し易くなり、リラクタンス力を向上させることができる。そのため、リニアモータ1の推力を向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態では、第1の部材の電機子側の表面には、両隣の永久磁石の面取り部同士の間に介在するように溝部が設けられてもよい。溝部は、例えば、上述の溝部23Aである。
【0081】
これにより、隣り合う永久磁石の面取り部同士の極性の異なる磁極の間での磁束の短絡に伴うリニアモータ1の推力の低下を抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態では、抑制部は、永久磁石及び第1の部材の電機子側の表面を覆うように設けられ、軟磁性材料で形成される第2の部材であってもよい。
【0083】
これにより、電機子の磁束が永久磁石に直接印加されることがなくなり、ほとんどが第2の部材及び第1の部材を通過するようにすることができる。そのため、永久磁石の減磁を抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態では、第2の部材の厚みは、永久磁石の厚みより小さくてもよい。
【0085】
これにより、隣り合う永久磁石同士の互いに異なる磁極の磁束が第2の部材を通じて短絡するような事態を抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態では、第2の部材は、永久磁石ごとに設けられ、対象の永久磁石の電機子側の表面の全体、及び対象の永久磁石に隣接する第1の部材の電機子側の表面の一部を覆っていてもよい。そして、第2の部材は、対象の永久磁石に隣り合う他の永久磁石に対応する他の第2の部材と移動経路に沿う方向で離隔するように配置されてもよい。
【0087】
これにより、隣り合う永久磁石同士の互いに異なる磁極の磁束が第2の部材を通じて短絡するような事態を抑制することができる。
【0088】
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 リニアモータ
10 電機子
11 コア
12 コイル
13 保持部
20 界磁
20A,20B 界磁部
21 永久磁石
21A 面取り部
22 バックヨーク
23 軟磁性部材
23A 溝部
24 軟磁性部材
100 リニアモータ
AG 空隙
AMF 磁束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7