(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067791
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】乳腺疾患画像教育システム、及び乳腺疾患画像教育方法
(51)【国際特許分類】
G09B 5/02 20060101AFI20240510BHJP
G06Q 50/20 20120101ALI20240510BHJP
H04L 67/12 20220101ALI20240510BHJP
【FI】
G09B5/02
G06Q50/20
H04L67/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178121
(22)【出願日】2022-11-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (公開1) 発行日 令和3年11月8日 刊行物 電子情報通信学会技術研究報告 EA2021-37,EMM2021-64(2021-11) 第57~62頁 一般社団法人 電子情報通信学会 (公開2) 開催日 令和4年3月2日 集会名 令和4年 乳がんWEB版症例検討会 開催場所 パシフィコ横浜ノース(横浜市西区みなとみらい1-1-2) (公開3) ウェブサイトの掲載日 令和4年6月9日 ウェブサイトのアドレス https://site.convention.co.jp/30jbcs/wp/wp-content/uploads/2022/06/abstract.pdf 一般セッション抄録,第31頁
(71)【出願人】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(71)【出願人】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】川平 洋
(72)【発明者】
【氏名】中村 喜英
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 まどか
(72)【発明者】
【氏名】小宅 涼
【テーマコード(参考)】
2C028
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2C028AA12
2C028BB04
2C028BC05
2C028BD01
5L049CC34
5L050CC34
(57)【要約】
【課題】精密な医療機器によって得られた高精細な乳腺疾患画像を、学習者に身近な端末において高画質に表示し、学習者がその医療機器の設置されている現場に直接行かなくても乳腺疾患画像の読影手法を学習することを可能とする乳腺疾患画像教育システム、及び乳腺疾患画像教育方法を提供する。
【解決手段】乳腺疾患画像教育システムは、所定の医用画像規格による画像として乳腺疾患画像を取得する画像取得部と、乳腺疾患画像を、より低容量の、夫々画像パラメータの異なる複数の圧縮画像に変換する変換部と、変換部で変換された複数の圧縮画像から、読影診断可能な画像を選別して読影用画像とする選別部と、読影用画像を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された読影用画像を、WEBサイトを介して学習用端末に送信する送信部と、を備える。乳腺疾患画像教育方法は、乳腺疾患画像教育システムにおける各機能構成が実行可能な工程を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習者に、乳腺疾患画像の読影手法について遠隔的に教育するための乳腺疾患画像教育システムであって、
所定の医用画像規格による画像として乳腺疾患画像を取得する画像取得部と、
前記乳腺疾患画像を、より低容量の、夫々画像パラメータの異なる複数の圧縮画像に変換する変換部と、
前記変換部で変換された複数の圧縮画像から、読影診断可能な画像を選別して読影用画像とする選別部と、
前記読影用画像を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記読影用画像を、WEBサイトを介して学習用端末に送信する送信部と、
を備えることを特徴とする、乳腺疾患画像教育システム。
【請求項2】
前記乳腺疾患画像は、DICOM形式のマンモグラフィ画像であり、
前記圧縮画像は、JPEG形式の画像であり、
前記読影用画像は、所定の付随情報とともにマークアップ言語ファイルとして前記記憶部に記憶されることを特徴とする、請求項1に記載の乳腺疾患画像教育システム。
【請求項3】
前記画像取得部は、前記乳腺疾患画像として、前記DICOM形式の前記マンモグラフィ画像に加えて、超音波動画像を取得することを特徴とする、請求項2に記載の乳腺疾患画像教育システム。
【請求項4】
前記選別部は、前記複数の圧縮画像のうち、前記画像パラメータが閾値以上である圧縮画像を選別して前記読影用画像とすることを特徴とする、請求項1に記載の乳腺疾患画像教育システム。
【請求項5】
前記乳腺疾患画像、前記圧縮画像、前記読影用画像のいずれかを機械学習により病状別に分類する分類部をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の乳腺疾患画像教育システム。
【請求項6】
前記選別部は、前記変換部で変換された前記複数の圧縮画像から、読影診断可能な画像を選別するとともに、該選別された画像を基に所定の学習要綱に基づいた標準化を行った上で、前記読影用画像とすることを特徴とする、請求項1に記載の乳腺疾患画像教育システム。
【請求項7】
前記学習用端末からの情報を受信する受信部をさらに備え、
前記選別部は、前記受信部が受信した前記情報に基づき、選別の内容を調整可能とすることを特徴とする、請求項6に記載の乳腺疾患画像教育システム。
【請求項8】
前記選別部においては、診断の難易度に係る診断レベルに応じた複数の画像が前記読影用画像とされ、
前記送信部は、前記学習者のレベルに応じた前記読影用画像を、前記学習用端末に送信することを特徴とする、請求項1に記載の乳腺疾患画像教育システム。
【請求項9】
前記記憶部に記憶された前記マークアップ言語ファイルは可搬性を有し、所定の媒体を用いて前記学習者に直接に提供可能であることを特徴とする、請求項2に記載の乳腺疾患画像教育システム。
【請求項10】
前記学習用端末において、前記読影用画像は、ダウンロードまたはコピー不可能な形態
で表示されることを特徴とする、請求項1に記載の乳腺疾患画像教育システム。
【請求項11】
学習者に、乳腺疾患画像の読影手法について遠隔的に教育するための乳腺疾患画像教育方法であって、
撮像装置により、所定の医用画像規格による画像として乳腺疾患画像を取得する画像取得工程と、
前記乳腺疾患画像を、変換ソフトによって、より低容量の、夫々画像パラメータの異なる複数の圧縮画像に変換する変換工程と、
前記変換工程において変換された複数の圧縮画像から、読影診断可能な画像を選別して読影用画像とする選別工程と、
前記読影用画像をサーバにデータベースとして記憶する記憶工程と、
前記記憶工程において記憶された前記読影用画像を、WEBサイトを介して学習用端末に送信する送信工程と、
前記データベースとして記憶された前記読影用画像のうち、学習者から表示要求のあった読影用画像を、前記WEBサイトを介して学習用端末に表示する表示工程と、
を有することを特徴とする、乳腺疾患画像教育方法。
【請求項12】
前記乳腺疾患画像は、DICOM形式のマンモグラフィ画像であり、
前記圧縮画像は、JPEG形式の画像であり、
前記記憶工程において、前記読影用画像は、所定の付随情報とともにマークアップ言語ファイルとして記憶されることを特徴とする、請求項11に記載の乳腺疾患画像教育方法。
【請求項13】
前記画像取得工程においては、前記乳腺疾患画像として、前記DICOM形式の前記マンモグラフィ画像に加えて、超音波動画像を取得することを特徴とする、請求項12に記載の乳腺疾患画像教育方法。
【請求項14】
前記選別工程において、前記複数の圧縮画像のうち、前記画像パラメータが閾値以上である圧縮画像を選別して前記読影用画像とすることを特徴とする、請求項11に記載の乳腺疾患画像教育方法。
【請求項15】
前記乳腺疾患画像、前記圧縮画像、前記読影用画像のいずれかを機械学習により病状別に分類する分類工程をさらに有することを特徴とする、請求項11に記載の乳腺疾患画像教育方法。
【請求項16】
前記選別工程において、前記変換工程において変換された前記複数の圧縮画像から、読影診断可能な画像を選別するとともに、該選別された画像を基に所定の学習要綱に基づいた標準化を行った上で、前記読影用画像とすることを特徴とする、請求項11に記載の乳腺疾患画像教育方法。
【請求項17】
前記学習用端末からの情報を受信する受信工程をさらに有し、
前記受信工程において受信した前記情報に基づき、前記選別工程における選別の内容を調整可能とすることを特徴とする、請求項16に記載の乳腺疾患画像教育方法。
【請求項18】
前記選別工程においては、診断の難易度に係る診断レベルに応じた複数の画像が前記読影用画像とされ、
前記送信工程においては、前記学習者のレベルに応じた前記読影用画像を、前記学習用端末に送信することを特徴とする、請求項11に記載の乳腺疾患画像教育方法。
【請求項19】
前記記憶工程において記憶された前記マークアップ言語ファイルは可搬性を有し、所定
の媒体を用いて前記学習者に直接に提供可能であることを特徴とする、請求項12に記載の乳腺疾患画像教育方法。
【請求項20】
前記表示工程において、前記読影用画像は、ダウンロードまたはコピー不可能な形態で前記学習用端末に表示されることを特徴とする、請求項11に記載の乳腺疾患画像教育方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳腺疾患画像の読影手法を学習者がWEBサイトを介して習得するための乳腺疾患画像教育システム、及び乳腺疾患画像教育方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会的に、対面形式の学習よりもオンライン形式の学習の方が選択される傾向にある状況の下、医学生や研修医といった医療技術の学習者は、基礎的な医療技術や最新の医療技術を習得するために、WEB上に表示される医用画像等を利用した、eラーニングによる学習を受ける機会が与えられることがある。
【0003】
このような学習に用いられるシステムの一例として、インターネット及び携帯端末を利用し、授業形式で医療技術の講習を受けることを可能とする医療教育ネットワークシステムが公知である。当該医療教育ネットワークシステムは、訓練サーバ、画像計測診断装置、カメラ、マイク、及びスピーカを備え、訓練センター内に設置されている訓練機器と、訓練サーバと通信手段を介して接続された携帯端末とから成り、訓練サーバに備わる講習実施制御手段は、設問・正解情報データベースから選択した所定の講習内容に沿って、医用画像を利用した説明又は設問を携帯端末に送信することを特徴とする(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、医療業界において、関心領域の画像から関心領域の名称等を判定するための判別モデルを生成する場合において、関心領域の画像と関心領域の名称とからなる教師データを大量に且つ容易に取得することができる学習支援装置が公知である。当該学習支援装置は、記憶部と、取得部と、登録部と、学習部とを備え、取得部が、読影レポートを解析することにより、1箇所の関心領域に対して複数の関心領域の名称を取得した場合には、学習部が、教師データに加えて、関心領域の位置情報に関する領域位置情報を用いて、複数の関心領域の名称についてそれぞれ学習を行うことを特徴とする(例えば、特許文献2参照)。他に、ディスプレイに表示する画像の種類に応じて、適切な階調特性で画像をディスプレイに表示できるようにすることを可能とする表示制御装置も公知である(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
医用画像を、一般的なPCの他、スマートフォンやノートパソコンといった、学習者が日常的に利用しやすい端末のディスプレイ上に表示することができれば、eラーニングによる学習は容易に実現できる。しかしながら、医用画像の中には、SEM画像のようなデータ容量の大きい高精細画像も多い。特許文献1乃至3に示す技術を適用しても、このような医用画像を学習者の端末に転送することが不可能である、あるいは転送が可能であったとしても、端末のディスプレイ上に画質を落とさず表示し、表示された医用画像を読影することが不可能である虞がある。
【0006】
なお、上記の医用画像を取得するための医療機器の例として、X線装置の一種であるマンモグラフィ撮影機が挙げられる。以下では、そのような医療機器として主にマンモグラフィ撮影機を例示するが、当然に医療機器はこれに限定されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-217293号公報
【特許文献2】特許第7080304号公報
【特許文献3】特開2016-042954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本件開示の技術は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、精密な医療機器によって得られた高精細な乳腺疾患画像を、学習者に身近な端末において高画質に表示し、学習者がその医療機器の設置されている現場に直接行かなくても乳腺疾患画像の読影手法を学習することを可能とする乳腺疾患画像教育システム、及び乳腺疾患画像教育方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本開示は、学習者に、乳腺疾患画像の読影手法について遠隔的に教育するための乳腺疾患画像教育システムであって、
所定の医用画像規格による画像として乳腺疾患画像を取得する画像取得部と、
前記乳腺疾患画像を、より低容量の、夫々画像パラメータの異なる複数の圧縮画像に変換する変換部と、
前記変換部で変換された複数の圧縮画像から、読影診断可能な画像を選別して読影用画像とする選別部と、
前記読影用画像を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記読影用画像を、WEBサイトを介して学習用端末に送信する送信部と、
を備えることを特徴とする、乳腺疾患画像教育システムを含む。
【0010】
本開示による乳腺疾患画像教育システムにおいて、画像取得部によって、例えばマンモグラフィ撮影機によって得られたマンモグラフィ画像としての乳腺疾患画像を取得することができる。マンモグラフィ画像は、X線撮影画像の一例である。次に変換部によって、乳腺疾患画像を、データ容量を軽減して複数の圧縮画像に変換することができ、さらに選別部によって、学習者が読影可能な程度に画質が良好な圧縮画像のみを読影用画像として選別することができる。次に記憶部が読影用画像を記憶し、例えばこの読影用画像を記憶部から出力することによって、教材画像として学習者に提供することや、乳腺の病状をより詳細に解析してもらう目的で研究員に提供することができる。
【0011】
そして、送信部によって、WEBサイトを介して学習者に読影画像を提供可能とすることにより、学習者はWEBサイトにアクセスすることで、スマートフォンやノートパソコンといった日常的に利用しやすい学習用端末において、読影用画像を表示することができる。乳腺疾患画像のような高精細画像は、必要画素数もデータ容量も大きいため、一般的な学習用端末において乳腺疾患画像を表示することは不可能であり、仮に表示することが可能であったとしても画質が大幅に低下するため学習者が正確に読影画像を用いて乳腺疾患を認識することは困難である。本開示による乳腺疾患画像教育システムによって、係る問題を解消することが可能であり、また、インターネット環境が整った場所であればどこでもWEBサイトにアクセスすることができるため、学習者は、自宅においても読影手法をeラーニングによって手軽に学習することができる。
【0012】
また、本開示においては、前記乳腺疾患画像は、DICOM形式のマンモグラフィ画像であり、前記圧縮画像は、JPEG形式の画像であり、前記読影用画像は、所定の付随情報とともにマークアップ言語ファイルとして前記記憶部に記憶されることとしてもよい。DICOM(Digital Imaging and Communications
in Medicine)は、上記の所定の医用画像規格の一例であり、これによって、乳腺疾患画像の送信や保存が容易となる。また、JPEG(Joint Photographic Experts Group)形式の画像は、より低容量であるため、データベースに保存することが容易である。
【0013】
また、マークアップ言語ファイルの一例としては、XML(Extensible Markup Language)形式ファイルが挙げられ、これによって、複数の医用画像(乳腺疾患画像、圧縮画像または読影用画像のいずれであってもよい)を集約して記憶および送受信を行うことができる。また、所定の付随情報を読影用画像に追加することによって、学習者は、その所定の付随情報に基づき、読影用画像に対する理解を深めることができる。さらに、読影用画像と所定の付随情報とが、一のマークアップ言語ファイル(XML形式ファイル及び/またはHTML形式ファイル)にまとめて格納されているため、情報のハンドリングが容易になる。マークアップ言語ファイルとして、XML形式ファイル以外の形式が用いられてもよいことは当然である。また、CSV、JSON(JAVASCRIPT(登録商標) Object Notation)等、データを簡便に分類・通知可能な形式であれば本開示に係る発明に利用可能である。また、データの送受信時には、さらにデータ負荷低減または、安全対策を施す処理を行ってもよい。
【0014】
また、本開示においては、前記画像取得部は、前記乳腺疾患画像として、前記DICOM形式の前記マンモグラフィ画像に加えて、超音波動画像を取得することとしてもよい。乳腺疾患画像を取得するための医療機器としては、X線検査を実施するマンモグラフィ撮影機の他に、エコー検査を実施する超音波診断装置を用いてもよく、本開示による乳腺疾患画像教育システムは、マンモグラフィ画像としての乳腺疾患画像と超音波動画像としての乳腺疾患画像の双方を扱うことができる。すなわち、乳腺疾患画像教育システムにおいては、乳腺疾患画像の読影に必要とされる情報、画像データ、動画データ等のメディアデータを総合的に取り扱うことが可能である。
【0015】
また、本開示においては、前記選別部は、前記複数の圧縮画像のうち、前記画像パラメータが閾値以上である圧縮画像を選別して前記読影用画像とすることとしてもよい。これによれば、選別部が読影用画像を選別する基準を明確に定めることができる。例えば複数の圧縮画像を人為的に選別する場合、閾値を基準とすることで、個人の判断基準の差異によって選別された読影用画像の画像パラメータに広範囲なばらつきが生じることを防止することもできる。また、システムにおいて自動的に読影用画像を選別することが可能となる。ここで、画像パラメータは、圧縮画像の画質と相関のあるパラメータであり、クオリティパラメータやターゲットビットレート(ともに後述)を例示することができる。
【0016】
また、本開示においては、前記乳腺疾患画像、前記圧縮画像、前記読影用画像のいずれかを機械学習により病状別に分類する分類部をさらに備えることとしてもよい。これによれば、最終的に学習者に提供する読影用画像に対して、自動的に病状等の分類に関する情報を付加することが可能である。その結果、学習者は、画像から病状を判断する方法を効率的に習得することができる。
【0017】
また、本開示においては、前記選別部は、前記変換部で変換された前記複数の圧縮画像から、読影診断可能な画像を選別するとともに、該選別された画像を基に所定の学習要綱に基づいた標準化を行った上で、前記読影用画像とすることとしてもよい。所定の学習要綱に基づいた標準化を行うことによって、学習者は、汎用性のある読影用画像及び付加情報を基に診断に係る学習を行うことができ、より利用価値の高い知識及び経験を習得することが可能である。
【0018】
また、本開示においては、前記学習用端末からの情報を受信する受信部をさらに備え、前記選別部は、前記受信部が受信した前記情報に基づき、選別の内容を調整可能とすることとしてもよい。これによれば、読影用画像の選別の手法、基準、選別後の読影用画像への付随情報等を、学習者からの指令や情報を基に調整することが可能であり、教育者と学習者の連携作業によって、読影用画像及び付随情報を最適化することが可能となる。ここ
で、調整対象としては、注釈の内容、撮影場所の選定、疾患の範囲の選定、診断内容、標準化項目の選定等を例示することができる。そして、選別の内容の調整とは、例えば学習者からの要望に応じて読影用画像の選別または送信の内容を変更することを含む。また、学習用端末からの情報の受信と、学習用端末への送信によって、例えば双方間のリアルタイムでの音声、動画、画面操作が実現される。これにより、対面での教育と同様に、指導者と学習者の双方のコミュニケーション及び、その記録を行うことが可能となる。
【0019】
また、本開示においては、前記選別部においては、診断の難易度に係る診断レベルに応じた複数の画像が前記読影用画像とされ、前記送信部は、前記学習者のレベルに応じた前記読影用画像を、前記学習用端末に送信することとしてもよい。これによれば、学習者にとって最も適切な診断レベルに応じた読影用画像を提供することができる。その結果、学習者は、より効率的な学習が可能となる。また、診断の困難性のレベルの異なる読影用画像を自動的に複数選別、記憶可能とすることで、より多彩な教育用の画像を蓄積し、学習者に送信することが可能となる。その結果、学習者が自ら読影用画像を選択可能とする、ランダムな読影用画像が自動送信される、過去の学習者の回答内容(回答率/誤解答画像)に応じた読影用画像が自動送信される、等の機能を実現することが可能となる。
【0020】
また、本開示においては、前記記憶部に記憶された前記マークアップ言語ファイルは可搬性を有し、所定の媒体を用いて前記学習者に直接に提供可能であることとしてもよい。これによれば、所定の媒体を読み取り可能なものであればいかなる端末においてもマークアップ言語ファイルに格納されたデータを確認することが可能であり、データの確認が容易になる。また、例えばWi-Fi等の通信環境が無く、サーバにアクセスできない状況下においても、学習者にHTML形式ファイル自体を容易に提供することができ、学習者は学習に取り組むことができる。
【0021】
また、本開示においては、前記学習用端末において、前記読影用画像は、ダウンロードまたはコピー不可能な形態で表示されることとしてもよい。これによれば、読影用画像が不用意に流出することを防止することができる。
【0022】
また、上記の課題を解決するための本開示は、学習者に、乳腺疾患画像の読影手法について遠隔的に教育するための乳腺疾患画像教育方法であって、
撮像装置により、所定の医用画像規格による画像として乳腺疾患画像を取得する画像取得工程と、
前記乳腺疾患画像を、変換ソフトによって、より低容量の、夫々画像パラメータの異なる複数の圧縮画像に変換する変換工程と、
前記変換工程において変換された複数の圧縮画像から、読影診断可能な画像を選別して読影用画像とする選別工程と、
前記読影用画像をサーバにデータベースとして記憶する記憶工程と、
前記記憶工程において記憶された前記読影用画像を、WEBサイトを介して学習用端末に送信する送信工程と、
前記データベースとして記憶された前記読影用画像のうち、学習者から表示要求のあった読影用画像を、前記WEBサイトを介して学習用端末に表示する表示工程と、
を有することを特徴とする、乳腺疾患画像教育方法を含んでいてもよい。
【0023】
本開示による乳腺疾患画像教育方法を、本開示による乳腺疾患画像教育システム以外の他の乳腺疾患画像教育システムに適用することによっても、学習用端末において乳腺疾患画像を表示することは不可能であり、仮に表示することが可能であったとしても画質が大幅に落ちるため乳腺を認識することは不可能であるという問題を解消することが可能であり、また、学習者は、自宅においても読影手法をeラーニングによって手軽に学習することができる。
【0024】
また、本開示においては、前記乳腺疾患画像は、DICOM形式のマンモグラフィ画像であり、前記圧縮画像は、JPEG形式の画像であり、前記記憶工程において、前記読影用画像は、所定の付随情報とともにマークアップ言語ファイルとして記憶されることとしてもよい。これによれば、乳腺疾患画像の送信や保存が容易となり、最終的に学習者に提供される読影用画像をフルカラーに表示することができ、さらに所定の付随情報に基づいて、学習者は、読影用画像に対する理解を深めることができる。
【0025】
また、本開示においては、前記画像取得工程においては、前記乳腺疾患画像として、前記DICOM形式の前記マンモグラフィ画像に加えて、超音波動画像を取得することとしてもよい。これによれば、マンモグラフィ画像としての乳腺疾患画像と、マンモグラフィ画像と比較してデータ容量が小さい超音波動画像としての乳腺疾患画像の双方を扱うことができ、乳腺疾患画像教育システムの汎用性を高めることができる。
【0026】
また、本開示においては、前記選別工程において、前記複数の圧縮画像のうち、前記画像パラメータが閾値以上である圧縮画像を選別して前記読影用画像とすることとしてもよい。これによれば、選別工程において読影用画像を選別する基準を明確に定めることができる。
【0027】
また、本開示においては、前記乳腺疾患画像、前記圧縮画像、前記読影用画像のいずれかを機械学習により病状別に分類する分類工程をさらに有することとしてもよい。これによれば、学習者は、画像から病状を判断する方法を習得することができる。
【0028】
また、本開示においては、前記選別工程において、前記変換工程において変換された前記複数の圧縮画像から、読影診断可能な画像を選別するとともに、該選別された画像を基に所定の学習要綱に基づいた標準化を行った上で、前記読影用画像とすることとしてもよい。所定の学習要綱に基づいた標準化を行うことによって、選別工程を繰り返し実行することが容易となる。
【0029】
また、本開示においては、前記学習用端末からの情報を受信する受信工程をさらに有し、前記受信工程において受信した前記情報に基づき、前記選別工程における選別の内容を調整可能とすることとしてもよい。これによれば、読影用画像の選別の手法、基準、選別後の読影用画像への付随情報等を、学習者からの指令や情報を基に調整することが可能であり、教育者と学習者の連携作業によって、読影用画像及び、付随情報を最適化することが可能となる。
【0030】
また、本開示においては、前記選別工程においては、診断の難易度に係る診断レベルに応じた複数の画像が前記読影用画像とされ、前記送信工程においては、前記学習者のレベルに応じた前記読影用画像を、前記学習用端末に送信することとしてもよい。これによれば、学習者にとって最も適切な診断レベルに応じた読影用画像を提供することができる。
【0031】
また、本開示においては、前記記憶工程において記憶された前記マークアップ言語ファイルは可搬性を有し、所定の媒体を用いて前記学習者に直接に提供可能であることとしてもよい。これによれば、所定の媒体を読み取り可能なものであればいかなる端末においてもマークアップ言語ファイルに格納されたデータを確認することが可能であり、データの確認が容易になる。
【0032】
また、本開示においては、前記表示工程において、前記読影用画像は、ダウンロードまたはコピー不可能な形態で前記学習用端末に表示されることとしてもよい。これによれば、読影用画像が不用意に流出することを防止することができる。
【0033】
なお、上記の課題を解決するための手段は、可能な限り互いに組み合わせて用いることができる。
【発明の効果】
【0034】
本件開示の技術によれば、精密な医療機器によって得られた高精細な乳腺疾患画像を、学習者に身近な端末において高画質に表示し、学習者がその医療機器の設置されている現場に直接行かなくても乳腺疾患画像の読影手法を学習することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、一般的な学習システムにおける情報のフローの態様を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係る乳腺疾患画像教育システムを適用した、学習システムにおける情報のフローの態様を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る乳腺疾患画像教育システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4A及びBは、実施例1に係る乳腺疾患画像教育システムの変換部によって得られた圧縮画像の画質に係る平均スコアを示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施例1に係るWEBページが学習者に提供されるまでのフローの態様を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施例1に係る読影用画像の一例である。
【
図7】
図7は、実施例1に係る乳腺疾患画像教育システムを用いた乳腺疾患画像教育方法の手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施例2に係る乳腺疾患画像教育システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施例2に係る乳腺疾患画像教育システムを用いた乳腺疾患画像教育方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔実施例1〕
以下、本開示の実施例1について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、本開示の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0037】
<構成>
図1は、一般的な学習システムにおける情報のフローの態様を示す模式図である。
図1に示すフローの態様においては、まず、病院2等の医療機関(他に、医院であってもよい)において、マンモグラフィ撮影機21を用いたX線検査によって患者や受検者の乳腺のマンモグラフィ画像を取得する。マンモグラフィ画像は、X線撮影画像の一例である。このマンモグラフィ画像は、マンモグラフィ撮影機21の内部のメモリー(図示略)に保存される際、医用画像を共有したり保存したりする方法を規定した、国際標準規格としての医用画像規格であるDICOMに従ったDICOM形式ファイルとして保存される。詳細は以下の
図2において説明する。また、このDICOM形式の乳腺の画像(マンモグラフィ画像に限らない)を以下では乳腺疾患画像ともいう。
【0038】
DICOM形式ファイルは、管理サーバ31におけるデータベース311に送信され、蓄積される。なお、管理サーバ31は、クラウド上に設けられていてもよい。学習者4がデータベース311にアクセスすることによって、高精細な医用画像を表示することに特化した高精細ディスプレイ41に乳腺疾患画像が表示される。これによって、学習者4は、乳腺疾患画像の読影方法を学習することが可能となる。
【0039】
しかしながら、一般的に高精細ディスプレイ41は限られた場所にのみ設置されており、その場所に行かないと乳腺疾患画像の読影方法を学習することができない虞がある。
図1の例では、学習者4は、病院2の内部のみにおいて乳腺疾患画像にアクセスすることができる。すなわち、学習者4は、例えば自宅で乳腺疾患画像の読影方法を学習することができず、高精細ディスプレイ41を使用するための手間が生じる虞がある。マンモグラフィ画像としての乳腺疾患画像は、CT画像やMRI画像と比較して、必要画素数は大きければ縦横夫々8倍であり、データ容量にして10倍から60倍程度である。平均的なものでもデータ容量が20MBを超えるため、例えば学習者4が所有するノートパソコン42(
図2に図示)等の一般的な端末においてマンモグラフィ撮影機21から直接的に得られた乳腺疾患画像を表示することは不可能である。また、管理サーバ31に多数のアクセスが集中した場合、高精細ディスプレイ41に乳腺疾患画像が表示され難くなる。
【0040】
図2は、実施例1に係る乳腺疾患画像教育システム1を適用した、学習システムにおける情報のフローの態様を示す模式図である。
図2においては、主に
図1に示す一般的な学習システムにおける情報のフローとの相違点について説明し、当該相違点によって得られる効果について説明する。
図2においては、マンモグラフィ撮影機21から取得した乳腺疾患画像を含むDICOM形式ファイルのデータ容量が圧縮され、より低容量の圧縮画像を含むファイルに変換される。本実施例において、この圧縮画像は、JPEG形式の画像であるものとする。また、一の乳腺疾患画像は、夫々画像パラメータの異なる複数の圧縮画像に変換される。なお、複数の圧縮画像の選別について、詳細は以下の
図3及び
図4Aにおいて説明する。
【0041】
JPEG形式ファイルは、拡張可能なマークアップ言語ファイルであるXML形式ファイルに集約された後、医科大学等の研究機関3が運用して管理する管理サーバ31におけるデータベース311に送信され、蓄積される。なお、管理サーバ31は、
図1に示すように、マンモグラフィ撮影機21が設置された病院2に設けられていてもよい。また、
図2においては、単数のJPEG形式ファイルがXML形式ファイルに集約されているが、JPEG形式ファイルは複数あってもよい。また、JPEG形式ファイルがXML形式ファイルに集約される際には、マンモグラフィ撮影機21を用いたX線検査を受けた患者や受検者の個人情報(例えば氏名や生年月日等)は削除され、所定の付随情報が追加されてもよい。個人情報が削除されることによって、個人情報が誤って外部に流出する危険性を防止できることに加えて、XML形式ファイルの容量を低下することができる。また、所定の付随情報とは、例えば乳腺疾患画像における乳腺の病変位置を示す印等をいう。所定の付随情報の具体例については、以下の
図6に示す。
【0042】
通信手段312は、例えば学習者4が所有するノートパソコン42等の携帯端末(他にスマートフォンであってもよい)にWEBページを提供する。これによって、学習者4は、
図1に示す高精細ディスプレイ41が設置された場所に限らず、インターネット環境が整った場所であればどこでもWEBサイトにアクセスすることができるため、自宅においても乳腺疾患画像の読影手法をeラーニングによって手軽に学習することができる。また、管理サーバ31に多数のアクセスが集中することを防止することもできる。
【0043】
図3は、実施例1に係る乳腺疾患画像教育システム1の機能構成を示すブロック図である。乳腺疾患画像教育システム1は一例として、マンモグラフィ撮影機21を含む画像取得部11、変換部12、選別部13、記憶部14、及び送信部15を備えて構成される。また、変換部12及び選別部13は、
図2に示す管理サーバ31を含んで構成され、記憶部14は、
図2に示すデータベース311を含んで構成される。また、送信部15は、
図2に示す通信手段312を含んで構成される。
【0044】
画像取得部11においては、病院2内に設置されたマンモグラフィ撮影機21によって
、乳腺疾患画像が取得される。変換部12は、一の乳腺疾患画像に対して、JPEG変換の画像パラメータを変化させつつ複数の圧縮画像に変換する。しかしながら、圧縮画像はノートパソコン42において表示可能である程にデータ容量が小さいものの、画質が低いことによって、ノートパソコン42において乳腺を認識可能である程に明確に表示できない虞がある。この問題を解消すべく、選別部13は、変換部12が変換した複数の圧縮画像から、学習者4が読影することが可能な画像を選別して読影用画像とする。選別する際の基準として、例えばJPEG変換の画像パラメータがある一定の閾値以上であればその圧縮画像を読影用画像として選別する。これによって、学習者4の読影手法に係る学習効率がより向上する。なお、この閾値について、詳細は以下の
図4Aにおいて説明する。また、選別部13による選別に加えて、読影に熟練した医師が読影用画像を選別してもよい。
【0045】
記憶部14は、選別部13が選別した読影用画像をXML形式ファイルとして記憶する。なお、読影用画像に上記の所定の付随情報が追加されている場合は、それと共にXML形式ファイルとして読影用画像を記憶することができる。また、記憶部14が記憶するファイルは、マークアップ言語ファイルであれば、HTML形式ファイル等、他の形式であってもよい。また、記憶部14が記憶したXML形式ファイルは可搬性を有するものであってもよく、例えばDVDやROM等の所定の媒体にXML形式ファイルを記録し、その所定の媒体を病院2や学習者4に直接に提供してもよい。これによって、所定の媒体を読み取り可能なものであればいかなる端末においてもXML形式ファイルに格納されたデータを確認することが可能であり、データの確認が容易になる。なお、読影用画像のデータ容量は、乳腺疾患画像のデータ容量に対して5―10%程圧縮される。
【0046】
送信部15は、記憶部14が記憶した読影用画像を、WEBサイトを介して学習者4のノートパソコン42に送信する。これによって、学習者4は、ノートパソコン42から、指定されたWEBサイトにアクセスし、読影用画像を読影することができる。また、学習者4は、ノートパソコン42において読影用画像を高画質に表示し、読影することができる。ここで、ノートパソコン42は、本開示における学習用端末に相当する。他に、選別部13によって選別された読影用画像は、診断の難易度に係る診断レベルに応じて分類され、送信部15は、学習者4のレベルに応じた読影用画像を、WEBサイトを介してノートパソコン42に送信することとしてもよい。これによって、送信部15は、学習者4の診断レベルに応じた最適な読影用画像をノートパソコン42に送信することができる。
【0047】
ここで、本実施例において、乳腺疾患画像教育システム1は、マンモグラフィ撮影機21から取得したマンモグラフィ画像と共に、超音波診断装置(不図示)を用いたエコー検査によって取得した超音波動画像を扱うことが可能であってもよい。すなわち、変換部12は、マンモグラフィ画像と超音波動画像の双方を圧縮画像に変換することが可能である。なお、超音波動画像については、超音波診断装置から取得されたAVI(Audio Video Interleave)形式ファイルが、変換部12によって、ノートパソコン42において表示可能なMP4形式ファイルに変換される。また、以下では、
図4A及びBを用いて、圧縮前の乳腺疾患画像がそれぞれマンモグラフィ画像である場合と超音波動画像である場合における、変換部12によって得られた圧縮画像の画質に係る評価値である平均スコア(
図4A及びBに示すグラフの縦軸に記載のSCORE)について説明する。
【0048】
図4Aは、マンモグラフィ画像を圧縮した圧縮画像の画質に係る平均スコアを示すグラフである。横軸は、圧縮画像の画像パラメータの一例であるクオリティパラメータ(単位無し)である。また、縦軸について、平均スコアが2.0であるときを、やや画質が劣るが問題なく診断用の画像として用いることができるレベルとする。
【0049】
図4Aのグラフより、クオリティパラメータの値を低下させていくと、すなわち圧縮画像のファイルサイズを小さくする方向にクオリティパラメータを調整すると、平均スコアが低下していく、すなわち圧縮画像の画質が劣化していくことが明らかである。より詳細には、クオリティパラメータが85を下回ると平均スコアの低下が顕著になり始め、クオリティパラメータが75であるときは平均スコアが2.0以上に保持されるものの、クオリティパラメータが65を下回ると圧縮画像によっては平均スコアが2.0を下回る。すなわち、クオリティパラメータが65を下回ると診断に支障をきたす可能性がある。本実施例においては、クオリティパラメータが75以上であれば、ひとまず、読影手法の学習に支障がないといえること、及び遠隔学習時には端末のスペックが低い環境での閲覧も想定され、ファイルサイズが大きいと画像が表示されない可能性も否定できないこと等から、例えばクオリティパラメータが75を閾値とし、選別部13は、閾値以上のクオリティパラメータで変換された圧縮画像を読影用画像として選別してもよい。
【0050】
一方、
図4Bは、超音波動画像を圧縮した圧縮画像の画質に係る平均スコアを示すグラフである。横軸は、圧縮画像の画像パラメータの一例であるターゲットビットレート(単位はMbps)である。また、縦軸について、平均スコアが1.0であるときを、やや画質が劣るが問題なく診断用の画像として用いることができるレベルとする。
【0051】
図4Bのグラフより、ターゲットビットレートが1.8Mbps以上の領域では、平均スコアの値は安定している。ターゲットビットレートが1.8Mbpsより低くなると、平均スコアの低下が見られ、ターゲットビットレートが1.2Mbpsより低くなると、平均スコアの低下が著しくなる。また、
図4Aのグラフとの相違点として、ターゲットビットレートが低下するにつれて、超音波診断装置の差異による平均スコアのばらつきが大きくなる。本実施例においては、例えばターゲットビットレート1.8Mbpsを閾値とし、閾値以上のターゲットビットレートであれば読影手法の学習に支障がないものとしてもよい。
【0052】
図5は、実施例1に係るWEBページが学習者4に提供されるまでのフローの態様を示す模式図である。学習者4は、研究機関3が運用して管理する管理サーバ31に対してWEBページ(より正確にはWEBページからアクセスするWEBサイトに掲載された読影用画像)の表示を要求することが可能であり、この要求を受けると、プログラミング言語の一種であるPython3における、管理サーバ31とWEBアプリケーション(図示略)の間の標準インターフェースであるWSGI(Web Server Gateway Interface)313を介して、Python3で実装されたWEBアプリケーションフレームワークであるDjango314を起動する。なお、用いるプログラミング言語の種類は、Python3に限られない。
【0053】
RDBMS(Relational DataBase Management System)315は、データベース311に蓄積された読影用画像に追加された所定の付随情報を表形式で管理するためのソフトウェアである。表形式で管理される所定の付随情報の一例としては、乳腺疾患画像を提供した患者や受検者の年代、乳腺疾患画像の送信元である病院2の名称、使用したマンモグラフィ撮影機21の機器情報、圧迫圧等が挙げられる。具体例は、以下の
図6に示す。これらの所定の付随情報を読影用画像に追加することによって、学習者4は、読影用画像に関連する情報をノートパソコン42において確認することができる。
【0054】
Django314は、RDBMS315によって管理された所定の付随情報を読み込み、HTMLファイルに加工する。このHTMLファイルに基づいてWEBページが作成され、ノートパソコン42に提供される。また同時に、Django314は、所定の付随情報を追加するための読影用画像を含む画像ファイルもノートパソコン42に提供する
。画像ファイルの代わりに(または画像ファイルと共に)、CSS(Cascading
Style Sheet)ファイルをノートパソコン42に提供してもよい。
【0055】
<医用画像>
図6は、実施例1に係る読影用画像の一例である。上記の通り、これらの読影用画像は、ノートパソコン42において読影可能に表示される。
図6に示すように、読影用画像と併せて、上記の
図5において説明した所定の付随情報を表形式で表示することができる。また、読影用画像上に、所定の付随情報としての、乳腺の病変位置を示す囲み線(
図6に示す円)を表示することができる。具体的に、この囲み線の内側においては、乳腺が石灰化していることを示している。付随情報として、病変位置を提供する場合に、病変位置を読影用画像に重ねて表示することによって、学習者4は、乳腺の病変位置を容易に理解することができ、より効率的に学習できる。なお、例えば学習者4の読影用画像に対する理解力を確認する目的で、この囲み線及び表形式の情報を表示する態様と表示しない態様を切り替え可能としてもよい。なお、
図6に示す読影用画像は、不用意に流出することを防止する観点から、ダウンロードやコピーが不可能なものであってもよい。また、読影用画像が表示されている画面の撮影までは妨げないように、読影を妨げない範囲で可視透かしを読影用画像上に表示可能であってもよい。
【0056】
<フローチャート>
図7は、実施例1に係る乳腺疾患画像教育システム1を用いた乳腺疾患画像教育方法の手順を示すフローチャートである。本フローチャートでは、先ずステップS1において、画像取得部11は、マンモグラフィ撮影機21を用いて得られたマンモグラフィ画像としての乳腺疾患画像、またはそれと共に超音波診断装置を用いて得られた超音波動画像としての乳腺疾患画像を取得する。上記の通り、マンモグラフィ撮影機21を用いて得られたマンモグラフィ画像はDICOM形式の画像であり、超音波診断装置を用いて得られた超音波動画像はAVI形式の画像である。また、マンモグラフィ撮影機21、及び超音波診断装置は、本開示における撮像装置に相当するが、以下のステップにおいては、マンモグラフィ画像としての乳腺疾患画像を取得した場合のみ考慮することとする。ここで、ステップS1は、本開示における画像取得工程に相当する。
【0057】
次にステップS2において、変換部12は、乳腺疾患画像を圧縮してより低容量のJPEG形式の圧縮画像に変換する。このとき、変換部12は、一の乳腺疾患画像を、夫々画像パラメータとしてのクオリティパラメータの異なる複数の圧縮画像に変換する。ここで、ステップS2は、本開示における変換工程に相当する。次にステップS3において、読影に熟練した医師が、変換部12が変換した複数の圧縮画像から、クオリティパラメータが一定の閾値以上である圧縮画像(本実施例においては、75以上の範囲を閾値とする)を選別して読影用画像とする。なお、ステップS3においては、選別部13によって自動的に選別されてもよい。ここで、ステップS3は、本開示における選別工程に相当する。
【0058】
次にステップS4において、記憶部14は、選別部13が選別した読影用画像を記憶する。例えば
図6に示すような所定の付随情報が読影用画像に追加されている場合は、それと共にXML形式ファイルとして読影用画像を記憶することができる。ここで、ステップS4は、本開示における記憶工程に相当する。次にステップS5において、送信部15は、記憶部14が記憶した読影用画像を、WEBサイトを介してノートパソコン42に送信する。ここで、ステップS5は、本開示における送信工程に相当する。最後にステップS6において、学習者4から表示要求のあった読影用画像を、WEBサイトを介してノートパソコン42に表示する。ここで、ステップS6は、本開示における表示工程に相当する。
【0059】
〔実施例2〕
次に
図8を用いて、実施例2に係る乳腺疾患画像教育システム1aの機能構成について説明する。なお、乳腺疾患画像教育システム1aは、実施例1の
図3に示す乳腺疾患画像教育システム1と多くの構成を共通にしているため、そのような構成については同一の符号を付し、改めての説明は省略する。
【0060】
図3に示す乳腺疾患画像教育システム1の構成要素に加えて、
図8に示す乳腺疾患画像教育システム1aは、分類部16及び受信部17を備えて構成される。分類部16は、
図2に示す管理サーバ31を含んで構成され、受信部17は、
図2に示す通信手段312を含んで構成される。分類部16は、画像取得部11、変換部12、または選別部13の少なくとも一の機能構成要素から、乳腺疾患画像、圧縮画像、または読影用画像の少なくとも一の画像を取得し、例えばAIによるディープラーニングといった機械学習によって病状別に分類する。そして、ノートパソコン42においては、読影用画像とともに分類結果も表示される。これによって、学習者4に提供する分類結果に基づく情報を自動的に取得することができ、より効率的に乳腺疾患画像教育を行うことが可能となる。学習者4は、画像から病状を判断する方法を効率的に習得することができる。分類部16が分類した情報は、記憶部14に記憶される。
【0061】
また、選別部13は、変換部12が変換した複数の圧縮画像から、学習者4が読影することが可能な画像を選別するとともに、選別された画像を基に所定の学習要綱に基づいた標準化を行った上で、読影用画像としてもよい。ここで、
図6は標準化された読影用画像の一例である。この場合には、2方向からの画像に加え、タグ、疾患のカテゴリー番号、患者の年代、撮影施設、撮影機器、圧迫圧、乳房圧、所見の亜分類、病理レポート、コメントが付随情報として表形式で表示されている。
【0062】
また、本実施例では、受信部17がノートパソコン42からの情報を受信し、選別部13は、この情報に基づき、選別の内容を調整可能であることとしてもよい。これによって、読影用画像の選別の手法、基準、選別後の読影用画像への付随情報等を、学習者4からの指令や情報を基に調整することが可能であり、教育者(図示略)と学習者4の連携作業によって、読影用画像及び付随情報を最適化することが可能となる。ここで、調整対象としては、注釈の内容、撮影場所の選定、疾患の範囲の選定、診断内容、標準化項目の選定等を例示することができる。
【0063】
次に
図9を用いて、実施例2に係る乳腺疾患画像教育システム1aを用いた乳腺疾患画像教育方法の手順についてフローチャートを用いて説明する。なお、実施例2に係る乳腺疾患画像教育方法は、実施例1の
図7に示す乳腺疾患画像教育方法と多くの手順を共通にしているため、そのような手順については同一の符号を付し、改めての説明は省略する。
【0064】
図7に示す乳腺疾患画像教育方法の手順に加えて、
図9に示す乳腺疾患画像教育方法の手順は、ステップS7とステップS8を有する。ステップS7においては、分類部16は、ステップS1において取得された乳腺疾患画像、ステップS2において変換された圧縮画像、またはステップS3において選別された読影用画像の少なくとも一の画像を取得し、機械学習によって自動的に病状別に分類する。ステップS7は、学習者4のみならず、例えばマンモグラフィ画像から病状を正確に分類できる技能が要求される医師にとっても有用である。また、マンモグラフィ画像が病状別に正確に分類されていれば、学習者4にとって病状の傾向等を把握することが容易となり、より効率的に読影手法を学習することができる。ここで、ステップS7は、本開示における分類工程に相当する。分類部16が分類した情報は、ステップS4において記憶部14に記憶される。
【0065】
またステップS3においては、変換部12が変換した複数の圧縮画像から、学習者4が読影することが可能な画像を選別するとともに、選別された画像を基に所定の学習要綱に
基づいた標準化を行った上で、読影用画像としてもよい。また、ステップS8において、受信部17は、ノートパソコン42から送信された指令を受信し、この受信した指令に基づき、S3において選別された読影用画像について、注釈の内容、撮影場所、疾患の範囲、診断内容、標準化項目等の内容が調整可能となる。なお、
図8においては、ステップS8で受信した内容を次回の選別に反映させるフローとしているが、ステップS8の後、ステップS3に戻り、ステップS3からステップS7を再実行するフローとしても構わない。ここで、ステップS8は、本開示における受信工程に相当する。
【符号の説明】
【0066】
1、1a・・乳腺疾患画像教育システム
11・・・・画像取得部
12・・・・変換部
13・・・・選別部
14・・・・記憶部
15・・・・送信部
16・・・・分類部
17・・・・受信部
2・・・・・病院
21・・・・マンモグラフィ撮影機
3・・・・・研究機関
31・・・・管理サーバ
311・・・データベース
312・・・通信手段
313・・・WSGI
314・・・Django
315・・・RDBMS
4・・・・・学習者
41・・・・高精細ディスプレイ
42・・・・ノートパソコン