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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067793
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】同軸電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/40 20110101AFI20240510BHJP
   H01R 9/05 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H01R24/40
H01R9/05 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178123
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】西村 弘昭
【テーマコード(参考)】
5E077
5E223
【Fターム(参考)】
5E077BB06
5E077BB12
5E077BB22
5E077DD13
5E077DD14
5E077JJ11
5E077JJ15
5E223AA01
5E223AB25
5E223AB59
5E223AB60
5E223AB65
5E223AB67
5E223AC21
5E223BA12
5E223BA17
5E223BB12
5E223BB14
5E223CA13
5E223CC09
5E223CD01
5E223CD13
5E223DA25
5E223DA32
5E223DB07
5E223GA08
5E223GA19
5E223GA52
5E223GA63
5E223GA66
(57)【要約】
【課題】中心導体の一端部に外力が作用しても、他端部での位置ずれが生じにくい同軸電気コネクタを提供する。
【解決手段】中心導体60,70は、第一誘電体40に保持される第一中心導体60と、第一中心導体60に接触した状態で第二誘電体50に保持される第二中心導体70とを有し、第一中心導体60は、回路基板Pの実装面に接続可能な第一下接続部61を一端部に有するとともに、第二中心導体70と接続可能な第一上接続部62を他端部に有し、第二中心導体70は、第一上接続部62に接続可能な第二下接続部71を一端部に有するとともに、相手コネクタに接続触可能な第二上接続部72を他端部に有し、第一上接続部62と第二下接続部71とは、軸線方向で相対移動可能な状態で接続されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の実装面に対して傾斜する方向を軸線方向として延びる中心導体が前記回路基板の実装面に接続可能となっているとともに、前記軸線方向での前記回路基板側とは反対側で相手コネクタが接続される同軸電気コネクタにおいて、
前記回路基板の実装面に上方から取り付けられ実装面のグランド回路部に接触可能な金属製のベース部材と、
前記軸線方向で前記ベース部材を貫通する収容空間内に配置される筒状の外部導体と、
前記外部導体の内部空間内で前記外部導体に保持される誘電体と、
前記内部空間内で前記誘電体に保持される前記中心導体と、
前記外部導体は、前記回路基板側に設けられた第一外部導体と、前記第一外部導体に接触した状態で前記反対側に設けられた第二外部導体とを有し、
前記誘電体は、前記第一外部導体に保持される第一誘電体と、前記第二外部導体に保持される第二誘電体とを有し、
前記中心導体は、前記第一誘電体に保持される第一中心導体と、前記第一中心導体に接触した状態で前記第二誘電体に保持される第二中心導体とを有し、
前記第一中心導体は、前記回路基板の実装面に接続可能な第一下接続部を一端部に有するとともに、前記第二中心導体と接続可能な第一上接続部を他端部に有し、
前記第二中心導体は、前記第一上接続部に接続可能な第二下接続部を一端部に有するとともに、前記相手コネクタに接続触可能な第二上接続部を他端部に有し、
前記第一上接続部と前記第二下接続部とは、前記軸線方向で相対移動可能な状態で接続されていることを特徴とする同軸電気コネクタ。
【請求項2】
前記第一中心導体の前記第一上接続部と前記第二中心導体の前記第二下接続部との間に配置される中継部材を有し、
前記中継部材は、前記第一上接続部および前記第一上接続部の両方と接触することにより、前記第一上接続部と前記第一上接続部とを電気的に中継していることとする請求項1に記載の同軸電気コネクタ。
【請求項3】
前記ベース部材の前記収容空間の開口部に前記反対側から取り付けられる金属製のシェル部材を有し、
前記シェル部材は、前記外部導体と同心をなす筒状であり、前記第二外部導体および前記第二中心導体の一部を収容しており、前記反対側から前記相手コネクタを接続可能となっていることとする請求項1または請求項2に記載の同軸電気コネクタ。
【請求項4】
前記シェル部材は、前記第二外部導体の端部に前記反対側から対向する段部を内周面に有し、
前記軸線方向で前記段部と前記第二外部導体の端部との間に金属製のシート部材が配置されていることとする請求項3に記載の同軸電気コネクタ。
【請求項5】
前記中心導体は、前記軸線方向で前記誘電体の範囲内で延びる部分の一部に、他部よりも小さい外径をもつ被保持部を有しており、
前記被保持部は、前記誘電体よりも硬度の高い樹脂製の保持部材に覆われて保持されており、
前記保持部材は、前記被保持部と前記誘電体との間に介在し、前記被保持部と前記誘電体の両方に対して前記軸線方向で係止していることとする請求項1に記載の同軸電気コネクタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の実装面に対して傾斜する方向を軸線方向として延びる中心導体が回路基板の実装面に接続可能となっているとともに、上記軸線方向での回路基板側とは反対側で相手コネクタが接続される同軸電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる同軸電気コネクタとして、例えば、特許文献1の同軸電気コネクタが知られている(特許文献1の図4参照)。この同軸電気コネクタでは、回路基板の実装面上に配置される金属製ケースに、中心導体の軸線方向に貫通して形成された収容空間内で中心導体が絶縁材を介して保持されている。また、金属製ケースには、上記軸線方向で回路基板とは反対側に、相手コネクタを取り付けるための筒状の取付部が設けられている。
【0003】
上記軸線方向における中心導体の下端部(ここでは、「斜下端部」という)は、上記内部空間の下端開口から突出しており回路基板の実装面上の回路部に接続(接触)可能となっている。一方、上記軸線方向における中心導体の上端部(ここでは、「斜上端部」という)は、取付部における上記内部空間内に配置されており、相手コネクタに設けられた相手中心導体と接続(接触)可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-305062号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、中心導体は軸線方向に延びる一部材として形成されている。したがって、中心導体の一端部に外力が作用すると、その影響は他端部に及ぶ。具体的には、中心導体の斜下端部が回路基板に上方から接圧をもって接触すると、該斜下端部は回路基板からの反力を受け、この反力の上記軸線方向に沿った分力(斜上方への分力)により、斜上端部において上記軸線方向での位置ずれが生じる。この斜上端部の位置ずれは、信号伝送特性の低下を招くおそれがある。また、中心導体の斜上端部が、相手コネクタの相手中心導体と接触するとき、相手中心導体から上記軸線方向に沿った力(斜下方への力)を受け、この力により、斜下端部において上記軸線方向での位置ずれが生じることがある。この斜下端部の位置ずれは、斜下端部と回路基板との接触不良を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、中心導体の一端部に外力が作用しても、他端部での位置ずれが生じにくい同軸電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る同軸電気コネクタは、回路基板の実装面に対して傾斜する方向を軸線方向して延びる中心導体が前記回路基板の実装面に接続可能となっているとともに、前記軸線方向での前記回路基板側とは反対側で相手コネクタが接続される。
【0008】
かかる同軸電気コネクタにおいて、本発明では、前記回路基板の実装面に上方から取り付けられ実装面のグランド回路部に接触可能な金属製のベース部材と、前記軸線方向で前記ベース部材を貫通する収容空間内に配置される筒状の外部導体と、前記外部導体の内部空間内で前記外部導体に保持される誘電体と、前記内部空間内で前記誘電体に保持される前記中心導体と、前記外部導体は、前記回路基板側に設けられた第一外部導体と、前記第一外部導体に接触した状態で前記反対側に設けられた第二外部導体とを有し、前記誘電体は、前記第一外部導体に保持される第一誘電体と、前記第二外部導体に保持される第二誘電体とを有し、前記中心導体は、前記第一誘電体に保持される第一中心導体と、前記第一中心導体に接触した状態で前記第二誘電体に保持される第二中心導体とを有し、前記第一中心導体は、前記回路基板に接続可能な第一下接続部を一端部に有するとともに、前記第二中心導体と接続可能な第一上接続部を他端部に有し、前記第二中心導体は、前記第一上接続部に接続可能な第二下接続部を一端部に有するとともに、前記相手コネクタに接続触可能な第二上接続部を他端部に有し、前記第一上接続部と前記第二下接続部とは、前記軸線方向で相対移動可能な状態で接続されていることを特徴としている。
【0009】
本発明では、中心導体は、互いに別体をなす2部材である第一中心導体および第二中心導体によって構成されており、第一中心導体の第一上接続部と第二中心導体の第二下接続部とが、上記軸線方向で相対移動可能な状態で接続されている。したがって、中心導体の第一下接続部が回路基板に上方から接圧をもって接触して、回路基板からの反力の上記軸線方向に沿った分力(斜上方への分力)を受けても、第一中心導体が第二中心導体に対して上記軸線方向で相対移動するに留まり、第二中心導体には上記分力が伝達されることがない。したがって、第二中心導体において上記軸線方向での位置ずれは生じない。また、第二中心導体の第二上接続部が、相手コネクタから上記軸線方向に沿った力(斜下方への力)を受けても、第二中心導体が第一中心導体に対して上記軸線方向で相対移動するに留まり、第一中心導体には上記力が伝達されることがない。したがって、第一中心導体において上記軸線方向での位置ずれは生じない。このように本発明では、中心導体の一端部に外力が作用しても、その影響が他端部に及ぶことがない。
【0010】
(2) (1)の発明において、前記第一中心導体の前記第一上接続部と前記第二中心導体の前記第二下接続部との間に配置される中継部材を有し、前記中継部材は、前記第一上接続部および前記第一上接続部の両方と接触することにより、前記第一上接続部と前記第一上接続部とを電気的に中継していてもよい。
【0011】
(3) (1)または(2)の発明において、前記ベース部材の前記収容空間の開口部に前記反対側から取り付けられる金属製のシェル部材を有し、前記シェル部材は、前記外部導体と同心をなす筒状であり、前記第二外部導体および前記第二中心導体の一部を収容しており、前記反対側から前記相手コネクタを接続可能となっていてもよい。
【0012】
(4) (3)の発明において、前記シェル部材は、前記第二外部導体の端部に前記反対側から対向する段部を内周面に有し、前記軸線方向で前記段部と前記第二外部導体の端部との間に金属製のシート部材が配置されていてもよい。シェル部材をベース部材に取り付けた状態において、シェル部材が正規の位置あっても、各部材の製造誤差や組立誤差等に起因して、上記軸線方向でシェル部材と第二中心導体との相対位置が正規の相対位置からずれることがある。このような相対位置のずれが存在すると、そのずれが生じている位置で特性インピーダンスが変化してしまい、信号伝送特性が低下するおそれがある。本発明では、シェル部材の段部と第二外部導体の端部との間に金属製のシート部材を配置することにより、上記ずれが減少するので、信号伝送特性の低下を回避することができる。
【0013】
(5) (1)ないし(4)の発明において、前記中心導体は、前記軸線方向で前記誘電体の範囲内で延びる部分の一部に、他部よりも小さい外径をもつ被保持部を有しており、前記被保持部は、前記誘電体よりも硬度の高い樹脂製の保持部材に覆われて保持されており、前記保持部材は、前記被保持部と前記誘電体との間に介在し、前記被保持部と前記誘電体の両方に対して前記軸線方向で係止していてもよい。
【0014】
一般的に、同軸コネクタにおいては、中心導体とその周囲の部材との距離等に応じて、特性インピーダンスの調整のために中心導体の一部の外径を他部よりも小さく形成することがあり、その場合、該一部で強度が低下してしまうことなる。本発明では、中心導体の被保持部が、誘電体よりも硬度の高い樹脂製の保持部材で保持されて補強されているので、中心導体の破損を良好に回避できる。また、保持部材は被保持部と誘電体の両方に対して上記軸線方向で係止しているので、その係止部分によって、上記軸線方向で中心導体に作用する外力に対抗でき、その結果、中心導体の軸線方向での位置ずれを回避できる。
【0015】
本発明では、中心導体の一端部に外力が作用しても、他端部での位置ずれが生じにくい同軸電気コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の同軸電気コネクタを回路基板とともに示した斜視図であり、回路基板へ取り付ける直前の状態を斜め上方から見て示している。
図2図1の同軸電気コネクタを斜め下方から見て示した斜視図である。
図3図1の同軸電気コネクタの回路基板へ取り付けられた状態を斜め上方から見て示した斜視図である。
図4図3の同軸電気コネクタのコネクタ幅方向に対して直角な面での断面図である。
図5】第一中心導体、第二中心導体および中継部材を分離して示した斜視図である。
図6】中継部材を介した第一中心導体と第二中心導体との接続部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態の同軸電気コネクタ1(以下、「同軸コネクタ1」)を回路基板Pとともに示した斜視図であり、回路基板へ取り付ける直前の状態を斜め上方から見て示している。図2は、図1の同軸コネクタ1を斜め下方から見て示した斜視図である。図3は、図1の同軸コネクタ1の回路基板Pへ取り付けられた状態を斜め上方から見て示した斜視図である。図4は、図3の同軸コネクタ1のコネクタ幅方向に対して直角な面での断面図であり、第一中心導体60と第二中心導体70および中継部材100の軸線を含む面での断面を示している。
【0019】
同軸コネクタ1が実装される回路基板Pは、ICチップ等の電子部品(図示せず)の性能試験に使用される、いわゆるテストボードである。また、同軸コネクタ1は、回路基板Pに実装され、電子部品の電気的特性を測定するための測定機器(図示せず)に相手同軸コネクタ(図示せず)および同軸ケーブル(図示せず)を介して接続される、いわゆるテストコネクタである。回路基板Pの実装面には、図1に示されているように、実装面上で前後方向(Y軸方向)に延びる信号パターンP1と、信号パターンP1を囲むようにして広がるグランド回路部としてのグランドパターンP2とが形成されている。本実施形態では、前後方向においてY1方向を「後方」、Y2方向を「前方」とする。信号パターンP1の前方側(Y2側)の端部近傍には、性能試験の対象である電子部品(図示せず)が実装され、信号パターンP1の後方側(Y1側)の端部近傍(コネクタパターン部)には、同軸コネクタ1が実装される。同軸コネクタ1には、同軸ケーブル(図示せず)に接続された相手同軸コネクタ(図示せず)が斜め上方から嵌合接続される。
【0020】
また、回路基板Pには、コネクタ幅方向(X軸方向)での信号パターンP1の両側、かつ、コネクタパターン部よりも若干後方において、回路基板Pをその板厚方向である上下方向(Z軸方向)に貫通する円形孔状の大径挿通孔部P3が形成されている。大径挿通孔部P3には、後述する取付部材150が上方から挿通される。また、回路基板Pには、X1側の大径挿通孔部P3の前方およびX2側の大径挿通孔部P3の後方には、小径挿通孔部P4が形成されている。小径挿通孔部P4は、大径挿通孔部P3よりも小径をなしており、後述する位置決めピン130が上方から挿通される。
【0021】
同軸コネクタ1は、回路基板Pの実装面に上方から取り付けられるベース部材10と、ベース部材10の内部に配置される外部導体20,30、誘電体40,50、中心導体60,70、保持部材80,90および中継部材100と、ベース部材10に対して斜め上方にから取り付けられるシェル部材110と、シェル部材110と後述の第二外部導体30との間に配置されるシート部材120と、ベース部材10の下面に取り付けられる位置決めピン130とを有している。
【0022】
この同軸コネクタ1は、図1および図3に示されるように、回路基板Pの上面(実装面)に配置されるベース部材10と回路基板Pの下面に配置される押さえ板部材140によって回路基板Pを挟んだ状態で、取付部材150を締め付けることにより、回路基板Pに取り付けられている。
【0023】
押さえ板部材140は、図1に示されるように、回路基板Pの面に対して平行に広がる四角板状の部材であり、回路基板Pの大径挿通孔部P3に対応して位置する大径受入孔部141と、回路基板Pの小径挿通孔部P4に対応して位置する小径受入孔部142とを有している。大径受入孔部141は、大径挿通孔部P3とほぼ同じ内径寸法で形成され、小径受入孔部142は、小径挿通孔部P4とほぼ同じ内径寸法で形成されている。また、大径受入孔部141の内周面には、取付部材150との螺合のためのねじ溝が形成されている。
【0024】
取付部材150は、図1に示されるように、取付孔部13Aよりも大径の頭部151と、頭部151から下方へ延びるねじ軸部152とを有している。ねじ軸部152の外周面には、押さえ板部材140の大径受入孔部141のねじ溝と螺合可能なねじ山が形成されている。また、ねじ軸部152は、頭部151を回転する操作を行うことで大径受入孔部141のねじ溝に螺合する。
【0025】
ベース部材10は、金属製の部材であり、外部導体20,30、誘電体40,50、中心導体60,70、保持部材80,90および中継部材100を収容する本体部11と、コネクタ幅方向での本体部11の両側に張り出すフランジ部13とを有している。
【0026】
本体部11には、図4に示されるように、回路基板Pの実装面に対して傾斜する方向を軸線方向として該本体部11を貫通する収容空間12が形成されている。図4には、収容空間12の軸線Lが一点鎖線で示されている。軸線Lは、コネクタ幅方向に見て、後方(Y1側)へ向かうにつれて上方へ傾斜しており、回路基板Pの実装面との間に約30°の傾斜角度を形成している。以下、軸線Lが延びる方向を「軸線方向L」という。また、軸線方向Lで回路基板へ向かう方向L2を「斜め下方」とし、軸線方向Lで斜め下方と反対側に向かう方向L1を「斜め上方」とする。
【0027】
収容空間12は、図4に示されるように、内径寸法の異なる円筒状の空間である収容部が軸線方向Lで連通して形成されている。具体的には、斜め下方側から順に第一収容部12A、第二収容部12B、第三収容部12C、第四収容部12Dが形成されている。図4に示されるように、軸線方向Lで本体部11の略斜め下半部の範囲に、第一収容部12A、第二収容部12B、第三収容部12Cが形成され、略斜め上半部の範囲に第四収容部12Dが形成されている。
【0028】
第一収容部12Aは、本体部11における軸線方向Lでの斜下端部(斜め下方L2側の端部)で開口している。第二収容部12Bは、第一収容部12Aよりも大径であり、かつ、軸線方向Lでの寸法が第一収容部12Aより小さくなっている。第三収容部12Cは、第二収容部12Bよりも大径であり、かつ、軸線方向Lでの寸法が第一収容部12Aより大きくなっている。第四収容部12Dは、第三収容部12Cよりも大径であり、軸線方向Lでの寸法が第三収容部12Cより大きくなっている。第四収容部12Dの斜上端部の内周面には、シェル部材110を取り付けるためのねじ溝が形成されている。
【0029】
フランジ部13は、図1図2および図3に示されるように、上下方向に対して直角に広がる板状をなしており、本体部11の前端よりも前方まで延びている。図2に示されるように、それぞれのフランジ部13の前部には、該フランジ部13を上下方向に貫通する円形状の取付孔部13Aが1つ形成されている。また、フランジ部13の下面には、X1側の取付孔部13Aの前方およびX2側の取付孔部13Aの後方で、下方へ突出する位置決めピン130が設けられている。位置決めピン130は、上下方向を軸線とする円柱状の金属製の部材であり、フランジ部13の下面に形成された圧入孔部(図示せず)に圧入されて取り付けられている。また、図2に示されるように、ベース部材10の下面には、コネクタ幅方向(X軸方向)での中央位置で、前後方向に延びる下溝部14が形成されている。
【0030】
外部導体20,30は、図4に示されるように、収容空間12と同心をなし軸線方向Lに延びる金属製の円筒状部材であり、斜め下方L2側、すなわち回路基板P側に設けられた第一外部導体20と、第一外部導体20に中継部材100を介して接続された状態で斜め上方L1側、すなわち回路基板Pとは反対側に設けられた第二外部導体30とを有している。第一外部導体20は、図4に示されるように、第三収容部12Cに収容されている。第一外部導体20は、軸線方向Lで第三収容部12Cの内径寸法より若干小さい外径寸法で形成されており、斜め下端および斜め上端のそれぞれは、第三収容部12Cの斜め下端および斜め上端とほぼ同位置にある。また、第一誘電体40の斜め下端は、第二収容部12Bと第三収容部12Cとの境界位置に形成された段部15に当接している。また、第一外部導体20には、その内部空間へエポキシ樹脂を注入するための注入孔部(図示せず)が内部空間と外部とを連通して形成されている。
【0031】
第二外部導体30は、図4に示されるように、その大部分が第四収容部12Dに収容されているが、軸線方向Lで第四収容部12Dよりも大きい寸法で形成されているため、軸線方向Lでの斜下端部が第四収容部12Dから斜め下方(L2側)へ突出し、軸線方向Lでの斜上端部が第四収容部12Dから斜め上方(L1側)へ突出している。第二外部導体30の斜下端部は、第三収容部12Cに収容されるとともに、第一外部導体20の斜上端部に外挿され、該斜上端部の斜上端面および外周面に接触している。また、第二外部導体30には、その内部空間へエポキシ樹脂を注入するための注入孔部(図示せず)が内部空間と外部とを連通して形成されている。
【0032】
誘電体40,50は、図4に示されるように、外部導体20,30と同心をなし軸線方向Lに延びる樹脂製の円筒状部材であり、第一外部導体20に保持される第一誘電体40と、第二外部導体30に保持される第二誘電体50とを有している。第一誘電体40は、図4に示されるように、軸線方向Lにおける第一外部導体20の内部空間の斜下部に収容されている。第一誘電体40の斜め下端は、段部15に当接している。第一誘電体40の内周面には、軸線方向Lでの中央域で若干没入した第一凹部41が形成されている。また、第一誘電体40には、その内部空間へエポキシ樹脂を注入するための注入孔部(図示せず)が内部空間と外部とを連通して形成されている。
【0033】
第二誘電体50は、図4に示されるように、軸線方向Lにおける第二外部導体30の内部空間の斜上部に収容されている。第二誘電体50の斜上端は、第二外部導体30の斜上端とほぼ同位置にある。第二誘電体50の内周面には、軸線方向Lでの中央域で若干没入した第二凹部51が形成されている。また、第二誘電体50には、その内部空間へエポキシ樹脂を注入するための注入孔部(図示せず)が内部空間と外部とを連通して形成されている。
【0034】
中心導体60,70は、外部導体20,30と同心をなし軸線方向Lに延びる金属製の部材であり、第一誘電体40に保持される第一中心導体60と、第二誘電体50に保持される第二中心導体70とを有している。第一中心導体60は、図4に示されるように、軸線方向Lで第一収容部12Aの前端位置から第四収容部12Dの中間位置までにわたる範囲で延びており、第三収容部12Cに収容される第一誘電体40に挿通されている。
【0035】
図5は、第一中心導体60、第二中心導体70および中継部材100を分離して示した斜視図である。また、図6は、中継部材100を介した第一中心導体60と第二中心導体70との接続部分を示す断面図である。第一中心導体60は、図5に示されるように、斜め下方L2側に位置する一端部に設けられた第一下接続部61と、斜め上方L1側に位置する他端部に設けられた第一上接続部62と、軸線方向Lでの中間部をなし第一下接続部61と第一上接続部62とを連結する第一中間部63とを有している。第一下接続部61は、第一中間部63よりも細いピン状をなしており、図4に示されるように、大部分が第一収容部12Aに収容されるとともに、軸線方向Lでの斜下端部(先端部)が第一収容部12Aから若干突出している。この第一下接続部61の斜下端部は、同軸コネクタ1が回路基板Pの実装面上に配置された状態で、信号パターンP1のコネクタパターン部に上方から接触可能となっている。
【0036】
第一上接続部62は、第一中間部63よりも細いピン状をなしており、図4に示されるように、全体が第四収容部12Dに収容されている。第一上接続部62は、図6に示されるように、中継部材100が外挿され、該中継部材100を介して第二中心導体70に接続される。
【0037】
第一中間部63は、図4に示されるように、軸線方向Lで第二収容部12Bの斜め下端位置から第四収容部12Dの中間位置までにわたる範囲で延びている。図5に示されるように、第一中間部63は、軸線方向Lで第一中間部63の斜め下端側寄りの範囲、換言すると、第一誘電体40に対応する範囲で若干外径が小さくなっている。また、この範囲内において、第一誘電体40の第一凹部41に対応する中間域には、第一中間部63の外周面が部分的に切り欠かれて板状の第一被保持部63Aが形成されている。本実施形態では、このように第一被保持部63Aが薄い板状に形成されていることにより、特性インピーダンスが調整されている。
【0038】
第二中心導体70は、図4に示されるように、軸線方向Lで第四収容部12Dの中間位置から第四収容部12Dの外部までにわたる範囲で延びており、第四収容部12Dに収容される第二誘電体50に挿通されている。第二中心導体70は、図5に示されるように、斜め下方L2側に位置する一端部に設けられた第二下接続部71と、斜め上方L1側に位置する他端部に設けられた第二上接続部72と、軸線方向Lでの中間部をなし第二下接続部71と第二上接続部72とを連結する第二中間部73とを有している。
【0039】
第二下接続部71は、図6に示されるように、軸線方向Lで斜め下方へ開口する有底筒状をなしており、第一中心導体60の第一上接続部62および中継部材100の中継片101を受け入れるようになっている。第二上接続部72は、図4に示されるように、大部分が第四収容部12Dから延出しており、シェル部材110の第二内部空間111Bに収容されている。第二上接続部72の軸線方向Lでの斜上端部は、後方へ開口する略有底筒状をなしている。また、該斜上端部は、周方向での複数位置にスリットが形成されており、これによって、第二中心導体70の径方向に弾性変形可能な複数の弾性片72Aが形成されている。第二上接続部72の後端部は、相手コネクタに設けられたピン状の相手端子(図示せず)を受け入れるとともに、複数の弾性片72Aで該相手端子に接触可能となっている。
【0040】
第二中間部73は、図4に示されるように、第一誘電体40に対応する範囲に設けられており、図5に示されるように、第二下接続部71および第二上接続部72よりも若干外径が小さくなっている。また、この範囲内において、第二誘電体50の第二凹部51に対応する中間域には、第二中間部73の外周面が部分的に切り欠かれて板状の第二被保持部73Aが形成されている。本実施形態では、このように第二被保持部73Aが薄い板状に形成されていることにより、特性インピーダンスが調整されている。
【0041】
保持部材80,90は、誘電体40,50よりも硬度の高い樹脂製の部材であり、第一被保持部63Aと第一誘電体40との間に介在する第一保持部材80と、第二被保持部73Aと第二誘電体50との間に介在する第二保持部材90とを有している。本実施形態では、保持部材80,90はエポキシ樹脂で形成されている。第一保持部材80は、第一被保持部63Aを覆った状態で保持しており、該第一被保持部63Aおよび第一誘電体40の両方に対して軸線方向Lで係止している。また、第一保持部材80は、エポキシ樹脂が第一外部導体20の注入孔部から注入されて形成されるため、該注入孔部内で第一外部導体20に対しても軸線方向Lで係止している。第二保持部材90は、第二被保持部73Aを覆った状態で保持しており、該第二被保持部73Aおよび第二誘電体50の両方に対して軸線方向Lで係止している。また、第二保持部材90は、エポキシ樹脂が第二外部導体30の注入孔部から注入されて形成されるため、該注入孔部内で第二外部導体30に対しても軸線方向Lで係止している。
【0042】
本実施形態では、被保持部63A,73Aは、特性インピーダンスの調整のために薄く形成されており、薄くしない場合と比べて強度が低下しているが、誘電体40,50よりも硬度の高い樹脂製の保持部材80,90で覆われた状態で保持されて補強されているので、被保持部63A,73Aひいては中心導体60,70の破損を良好に回避できる。
【0043】
中継部材100は、中心導体60,70と同心をなし軸線方向Lに延びる金属製の略円筒状部材である。図6に示されるように、中継部材100は、第一中心導体60の第一上接続部62に斜め上方L1側から外挿されており、第一上接続部62と第一中間部63との境界位置に形成された段部64に当接している。中継部材100は、軸線方向Lでの斜下端部を除き、周方向での複数位置にスリットが形成されており、これによって、中継部材100の径方向に弾性変形可能な複数の中継片101が形成されている。各中継片101の斜上端部は、図6に示されるように、斜め上方L1へ向かうにつれて薄くなっており、第二中心導体70の第二下接続部71内に挿入され、第二下接続部71に接触するようになっている。
【0044】
シェル部材110は、図4に示されるように、外部導体20,30と同心をなし軸線方向Lに延びる金属製の略円筒状部材であり、ベース部材10の収容空間12の開口部、すなわち軸線方向Lで斜め上端側に位置する開口部に取り付けられている。シェル部材110は、軸線方向Lでの斜下端部の外周面にねじ山が形成されており、ベース部材10の第四収容部12Dの内周面に形成されたねじ溝に上記下部が螺合されることで、ベース部材10に取り付けられる。
【0045】
シェル部材110の内部には、軸線方向Lにシェル部材110を貫通する内部空間111が形成されている。内部空間111は、図4に示されるように、内径寸法の異なる円筒状の空間が軸線方向Lで連通して形成されている。具体的には、軸線方向Lで斜め下方から順に第一内部空間111A、第二内部空間111B、第三内部空間111Cが形成されている。軸線方向Lでシェル部材110の略斜下半部の範囲には、第一内部空間111Aが形成され、略斜上半部の範囲には第二内部空間111Bおよび第三内部空間111Cが形成されている。
【0046】
第一内部空間111Aは、図4に示されるように、その内径が第二外部導体30の外径よりも若干大きくなっており、軸線方向Lでの第二外部導体30の斜上部、第二誘電体50、第二中心導体70の第二下接続部71、第二中間部73および第二保持部材90を収容している。第二内部空間111Bは、第一内部空間111Aよりも小径であり、軸線方向Lでの第二中心導体70の第二上接続部72を収容している。シェル部材110の内周面には、第二内部空間111Bと第一内部空間111Aとの境界位置に段部112が形成されている。該段部112は、軸線方向Lで第二外部導体30の斜上端部に対して斜め上方から対向している。第三内部空間111Cは、第二内部空間111Bよりも大径であり、斜め上方L1側からから相手コネクタ(図示せず)を受け入れるようになっている。シェル部材110の内周面には、第三内部空間111Cと第二内部空間111Bとの境界位置に段部113が形成されている。
【0047】
シート部材120は、円環状の金属板部材であり、軸線方向Lでの第一内部空間111Aの斜め上端側で該第一内部空間111A内に収容された状態で、第二外部導体30の斜上端部とシェル部材110の段部112との間に配置される。このシート部材120は、ベース部材10にシェル部材110を取り付けた状態において、製造誤差や組立誤差に起因して生じる軸線方向Lでの距離D(図4参照)、すなわち、シェル部材110の内部において、軸線方向Lにおける第二中心導体70の斜め上端と段部113の端面との距離D(図4参照)を縮めるための部材である。このようにシート部材120が第二外部導体30の斜上端部とシェル部材110の段部112との間に配置されることにより、インピーダンス整合が図られ、信号伝送特性の低下を回避することができる。本実施形態では、厚みが異なる複数種類のシート部材120が予め用意されており、上記距離Dに合った厚みをもつシート部材120が適宜選択されて設けられる。例えば、作業者は、上記距離Dと、その距離Dに合った寸法のシート部材120の種類との対応関係が示されたシート表を参照して、適切なシート部材120を選択する。
【0048】
このような構成の同軸コネクタ1は、次の要領で製造される。まず、第一誘電体40の内部空間に第一中心導体60を挿通させる。このとき、第一中心導体60の第一被保持部63Aを第一誘電体40の第一凹部41に合わせて位置させる。そして、第一誘電体40を、第一誘電体40および第一外部導体20の両者の注入孔部の位置を合わせた状態で該第一外部導体20に収容した後、注入孔部にエポキシ樹脂を注入し、該エポキシ樹脂を第一被保持部63Aと第一凹部41との間の空間に充填する。次に、第一誘電体40および第一外部導体20および第一中心導体60の下端部をプレート状の治具に押し付け、この状態をエポキシ樹脂が硬化するまで維持する。エポキシ樹脂が硬化することにより、第一保持部材80が形成される。その結果、第一外部導体20、第一誘電体40、第一中心導体60および第一保持部材80が組み合わされた第一ブロックが完成する。
【0049】
また、第二誘電体50の内部空間に第二中心導体70を挿通させる。このとき、第二中心導体70の第二被保持部73Aを第二誘電体50の第二凹部51に合わせて位置させる。そして、第二誘電体50を、第二誘電体50および第二外部導体30の両者の注入孔部の位置を合わせた状態で該第二外部導体30に収容した後、第二外部導体30の注入孔部にエポキシ樹脂を注入し、該エポキシ樹脂を第二被保持部73Aと第二凹部51との間の空間に充填する。次に、第二誘電体50および第二外部導体30および第二中心導体70の上端部をプレート状の治具に押し付け、この状態をエポキシ樹脂が硬化するまで維持する。エポキシ樹脂が硬化することにより、第二保持部材90が形成される。その結果、第二外部導体30、第二誘電体50、第二中心導体70および第二保持部材90が組み合わされた第二ブロックが完成する。
【0050】
次に、第一ブロックの第一中心導体60の第一上接続部62に中継部材100を外挿して取り付ける。次に、第一ブロックを第二ブロックへ組み込んでブロック組立体を組み立てる。具体的には、第一ブロックの第一外部導体20の斜上端部を第二ブロックの第二外部導体30の内部空間へ斜め下方から挿入して収容させる。このとき、第一外部導体20の斜上端部は、第二外部導体30の内周面の段部に当接するまで挿入される。また、第一中心導体60の第一上接続部62および中継部材100は、第二中心導体70の第二下接続部71内に進入する(図6参照)。このとき、中継部材100の中継片101が第二下接続部71の内壁面に接圧をもって接触し、この結果、第一中心導体60と第二中心導体70とが中継部材100を介して電気的に導通可能な状態となる。また、第一上接続部62と第二下接続部71とは、軸線方向Lで相対移動可能な状態で中継部材100を介して接続されている。
【0051】
次に、ベース部材10の圧入孔部(図示せず)に位置決めピン130を下方から圧入して取り付ける。次に、ブロック組立体をベース部材10の収容空間12へ斜上方L1側から収容する。このとき、第一外部導体20は第三収容部12Cに収容され、第二外部導体30の大部分は第四収容部12Dに収容される。また、第一中心導体60の第一下接続部61は、第一収容部12Aに収容されるとともに、その斜下端部が第一収容部12Aから下方へ若干突出する。
【0052】
次に、シェル部材110の斜下端部をベース部材10の第四収容部12Dの内周面に螺合させることにより、シェル部材110をベース部材10に取り付ける。このとき、シェル部材110は、所定の大きさのトルクで締め込まれる。そして、軸線方向Lにおける第二中心導体70の斜め上端と段部113の端面との距離D(図4参照)の寸法を測定する。上記距離Dの寸法の測定後、一旦、シェル部材110を緩めてベース部材10から取り外し、さらに、ブロック組立体も収容空間12から取り出す。
【0053】
次に、測定された上記距離Dの寸法に対応する適切な厚さのシート部材120を、シート表を参照して選択し、選択したシート部材120を第二中心導体70の第二上接続部72に外挿するとともに、ブロック組立体をベース部材10の収容空間12へ再度収容する。さらに、シェル部材110をベース部材10に再度取り付ける。このようにして、シェル部材110の段部112と第二外部導体の斜上端部との間にシート部材120が配置された状態で、上記距離Dの寸法を再度測定する。この寸法が所定の許容値以下である場合には、同軸コネクタ1の組立ては完了する。一方、この寸法が所定の許容値を超えている場合には、もう少し厚いシート部材120を選択し、シェル部材110の段部112と第二外部導体の斜上端部との間に再度配置する。このようにしてシート部材120の選択を繰り返し、上記距離Dの寸法の測定値が所定の許容値以下になった時点で同軸コネクタ1の組立てが完了する。
【0054】
組み立てられた同軸コネクタ1は、次の要領で回路基板Pに取り付けられる。まず、図1に示されるように、同軸コネクタ1の取付孔部13Aに取付部材150のねじ軸部152を上方から挿通させた状態で、同軸コネクタ1を回路基板Pの上方に配置する。このとき、ねじ軸部152を回路基板Pの大径挿通孔部P3に対応して位置させるとともに、位置決めピン130を回路基板Pの小径挿通孔部P4に対応して位置させる。また、押さえ板部材140を回路基板Pの下方に配置しておく。このとき、押さえ板部材140の大径受入孔部141および小径受入孔部142をそれぞれ回路基板Pの大径挿通孔部P3および小径挿通孔部P4に対応して位置させる。
【0055】
次に、同軸コネクタ1を下方へ移動させて、ベース部材10を回路基板Pの実装面上に配置する。これと同時に、取付部材150のねじ軸部152を回路基板Pの大径挿通孔部P3に挿通させるとともに、位置決めピン130を回路基板Pの小径挿通孔部P4に挿通させる。さらに、取付部材150の頭部151を回転操作することにより、回路基板Pの下方に突出したねじ軸部152を押さえ板部材140の大径受入孔部141に上方から螺合させる。これと同時に、回路基板Pの下方に突出した位置決めピン130を押さえ板部材140の小径受入孔部142に上方から挿入する。取付部材150と大径受入孔部141とが螺合されることで、回路基板Pへの同軸コネクタ1の取付けが完了する。
【0056】
回路基板Pに同軸コネクタ1の取り付けられた状態において、ベース部材10の下面は回路基板Pのグランドパターンに接面し電気的に導通可能な状態となる。また、第一中心導体60の第一下接続部61の斜下端部が回路基板Pの信号パターンP1のコネクタパターン部に十分な接圧をもって上方から接触して、電気的に導通可能な状態となる。
【0057】
本実施形態では、中心導体60,70は、互いに別体をなす2部材である第一中心導体60および第二中心導体70によって構成されており、第一中心導体60の第一上接続部62と第二中心導体70の第二下接続部71とが、軸線方向Lで相対移動可能な状態で中継部材100を介して接続されている。したがって、第一中心導体60の第一下接続部61が回路基板Pに上方から接圧をもって接触して、回路基板Pからの反力の軸線方向Lに沿った分力(斜め上方L1へ向けた分力)を受けても、第一中心導体60が第二中心導体70に対して軸線方向Lで相対移動するに留まり、第二中心導体70には上記分力が伝達されることがない。したがって、第二中心導体70において軸線方向Lでの位置ずれは生じないので、信号伝送特性の低下が生じにくくなる。
【0058】
また、第二中心導体70の第二上接続部72が、相手コネクタから軸線方向Lに沿った力(斜め下方L2へ向けた力)を受けても、第二中心導体70が第一中心導体60に対して軸線方向Lで相対移動するに留まり、第一中心導体60には上記力が伝達されることがない。したがって、第一中心導体60において軸線方向Lでの位置ずれは生じないので、第一下接続部61と回路基板Pとの接触不良が生じにくくなる。このように本実施形態では、中心導体60,70の一端部に外力が作用しても、その影響が他端部に及ぶことがない。この結果、常に安定した電気的導通状態を維持することが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、保持部材80,90が被保持部63A,73A、誘電体40,50、および外部導体20,30に対して軸線方向Lで係止しているので、その係止部分によって、軸線方向Lで中心導体60,70に作用する外力に対抗でき、その結果、中心導体60,70の軸線方向Lでの位置ずれを回避できる。
【0060】
本実施形態では、第一中心導体60と第二中心導体70とは中継部材100を介して接続されたが、これに替えて、中継部材を設けることなく、第一中心導体と第二中心導体とが、軸線方向で相対移動可能な状態で直接接触するようにしてもよい。
【0061】
本実施形態では、被保持部63A,73Aは、軸線方向Lでの中心導体60,70の一部において、中心導体60,70を切り欠いて板状に形成されている、すなわち、中心導体60,70の周方向で部分的に外径を小さくすることとしたが、これに替えて、中心導体60,70の一部にて周方向全域で外径を小さくして、すなわち、中心導体60,70の一部を細くすることにより被保持部を形成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 同軸コネクタ
10 ベース部材
12 収容空間
20 第一外部導体
30 第二外部導体
40 第一誘電体
50 第二誘電体
60 第一中心導体
61 第一下接続部
62 第一上接続部
63A 第一被保持部
70 第二中心導体
71 第二下接続部
72 第二上接続部
73A 第二被保持部
80 第一保持部材
90 第二保持部材
100 中継部材
110 シェル部材
112 段部
120 シート部材
P 回路基板
P2 グランドパターン(グランド回路部)

図1
図2
図3
図4
図5
図6