(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067797
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20240510BHJP
G08B 13/183 20060101ALI20240510BHJP
G01S 7/497 20060101ALI20240510BHJP
G01S 17/88 20060101ALI20240510BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G08B25/04 Z
G08B13/183
G01S7/497
G01S17/88
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178128
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】平松 立光
【テーマコード(参考)】
2E139
5C084
5C087
5J084
【Fターム(参考)】
2E139AB21
5C084AA02
5C084AA07
5C084AA13
5C084BB31
5C084CC16
5C084DD36
5C084HH08
5C087AA11
5C087AA21
5C087AA44
5C087DD05
5C087DD31
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5J084AA02
5J084AA05
5J084AB07
5J084AC10
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA11
5J084BA36
5J084BA49
5J084BB02
5J084BB04
5J084BB27
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA31
5J084DA01
5J084DA02
5J084DA04
5J084EA34
(57)【要約】
【課題】ユーザが所望とする任意の領域のセキュリティを簡易に向上させることができる監視システムを提供すること。
【解決手段】避難所10の避難スペースは複数の区画に分けられており、それら区画が避難者に割り当てられている。避難者には、複数の監視端末30を有してなる監視システム20が貸与されており、それら監視端末30は割り当てられた区画の中央部分である所定の領域PEを囲むようにして当該区画の四隅に設置されている。監視システム20を使用する際には、ユーザにより設置された監視端末30の位置関係が監視端末30間の無線通信によって自動的に特定される。そして、監視システム20においては特定した位置関係に基づいて各監視端末30の検知領域を設定している。それら監視端末30の検知領域の組み合わせによって所定の領域PEを囲む監視領域が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を検知可能な検知ユニットを複数備え、それら検知ユニットが所定の領域を囲むようにして設置される監視システムであって、
設置された各前記検知ユニットの位置関係を特定する特定部と、
前記特定部により特定された前記位置関係に基づいて、前記検知ユニット毎に検知領域を設定する設定部と
を備え、
前記検知ユニットの前記検知領域の組み合わせにより前記所定の領域を囲む監視領域が構成される監視システム。
【請求項2】
各前記検知ユニットの前記検知領域は、1の前記検知ユニットと他の前記検知ユニットの間の区間を通過する物体を当該1の前記検知ユニットによって検知可能となるように各々設定される請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
各前記検知領域は、2つの前記検知ユニットに跨るようにして延びており、
前記監視領域は、上方から見て、前記検知ユニット又は前記検知ユニットの近傍を頂点とし、前記検知領域を辺部とする多角形をなす請求項1に記載の監視システム。
【請求項4】
前記設定部は、1の前記検知ユニットの前記検知領域の端部と他の前記検知ユニットの前記検知領域の端部とが交差する又は接するようにしてそれら検知領域を設定する請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の監視システム。
【請求項5】
前記検知ユニットは、レーザ光を照射する照射部と、物体により反射された前記レーザ光を受光する受光部とが設けられたレーザレーダ装置を有し、前記受光部におけるレーザ光の受光結果に基づいて物体を検知する構成となっており、
前記特定部により特定された前記検知ユニットの位置関係に基づいて、前記レーザレーダ装置の向きを調整する調整部を備えている請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
災害が発生する危険がある場合や災害が発生して自宅に戻れない場合には安全が確認されるまで最寄りの避難所に避難することがある。避難所は、体育館や公民館等のある程度の人数を収容可能な施設に開設されることが多く、避難者には避難スペースの一部(区画)が割り当てられる。ここで、割り当てられた区画は各人の専有スペースとなるものの、それら区画を物理的に仕切る壁等が配置されるとは限らず、自身の区画へ他人が侵入することを抑止するには自身や周囲の目に頼ることになるのが実情である。また、トイレ等で離席する度に荷物を携帯することは現実的でなく、荷物をそのままにして離席する場合には盗難のリスクは高くなる。避難所では不特定多数の人が滞在するため、このような不安は大きくなりがちである。
【0003】
近年では、レーザレーダ装置を用いて所定の領域への侵入者を検知可能とする監視システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。この種の監視システムによって各区間のセキュリティを高めることができれば、避難生活における不安を軽減し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、災害等の緊急時に上述した監視システム等を使用してセキュリティを高めようとした場合には以下の様々な課題が生じる。例えば、避難者に割り当てられる区画の大きさや形については様々となり得るため、割り当てられた区画(現場)にて監視端末(検知ユニット)等の設置作業や監視する領域(監視領域)のセッティング作業を行う必要がある。仮に、監視システムが避難者(ユーザ)に提供されたとしても、設置作業やセッティング作業が複雑になれば当該監視システムに精通していないユーザにとって使用のハードルが高くなる。特に、セッティング作業が複雑になれば、使用開始までの作業時間が長くなったり、作業ミス等が生じやすくなったりすると懸念される。
【0006】
また、割り当てられる区画については大きさに限りがあり、監視システムを常時設置したまま(据え置き)にすることは生活の邪魔になる可能性がある。このような事情に鑑みれば、日々の生活の中で監視システムの設置と片づけとが繰り返される可能性もある。使用開始までの作業時間が長くなることは、監視システムの利便性を低下させる要因になり得る。また、作業ミスによってユーザがイメージしている監視領域と実際の監視領域とが乖離した場合には、監視機能が適正に発揮されなくなり、監視システムへの信頼が揺らぐことになる。このように、任意の領域についてセキュリティを簡易に向上させる上で監視システムに係る構成には、未だ改善の余地がある。
【0007】
なお、上述した課題と同様の課題については、例えばキャンプ場やフリーマーケット等において監視システムを使用する場合にも発生し得る。
【0008】
本発明は、上記例示した課題等に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、ユーザが所望とする任意の領域のセキュリティを簡易に向上させることができる監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0010】
第1の手段.物体を検知可能な検知ユニット(監視端末30)を複数(例えば4つ)備え、それら検知ユニットが所定の領域(所定の領域PE)を囲むようにして設置される監視システム(監視システム20)であって、
設置された各前記検知ユニットの位置関係を特定する特定部(制御部33における位置特定機能)と、
前記特定部により特定された前記位置関係に基づいて、前記検知ユニット毎に検知領域(検知領域DE)を設定する設定部(制御部33にて検知領域DEを設定する機能)と
を備え、
前記検知ユニットの前記検知領域の組み合わせにより前記所定の領域を囲む監視領域(監視領域BE)が構成される監視システム。
【0011】
本手段1に示す監視システムにおいては、当該監視システムを構成している複数の検知ユニットの位置関係を特定し、特定した位置関係に基づいて各検知ユニットの検知領域を設定する。それら検知領域の組み合わせにより所定の領域を囲む監視領域が構成(形成)されることにより、所定の領域へ向けて移動する物体(例えば侵入者)や所定の領域から出ようとする物体を検知できる。検知ユニットの位置関係の特定や検知領域の設定が監視システム側で実行されるため、監視システムの使用に際してユーザに要求される作業を極力少なくすることができる。つまり、検知ユニットの位置関係を監視システムに教示したり、プログラミング等によって各検知領域を細かく設定・調整したりしなくても、ユーザのイメージに近い監視領域が簡易に構成(形成)される。これは、監視システムの利便性を向上させる上で好ましい。
【0012】
例えば災害等が発生して体育館等の避難所に避難すべき状況となった場合には、避難所にて様々な人が生活を送ることになる。このような急場であっても、割り当てられた区画に監視システム(検知ユニット)を設置すれば、割り当てられた区画のセキュリティを簡易に向上させることができる。例えば当該区画から一時的に離れる場合等に監視システムによって荷物等の盗難を抑制できるため、避難生活におけるユーザのストレスを好適に軽減できる。また、避難所においてはできるだけ多くの人を受け入れるため、割り当てられる区画については大きさが限られることとなる。このような事情に配慮した場合には、監視システムを常時設置することで生活の邪魔になる。この点、上述したように監視システムを簡易に使用可能であれば、必要に応じて監視システムを都度設置することへのハードルが下がり、監視システムが生活の邪魔になるといった不都合を生じにくくすることができる。因みに、使用時のユーザの手間を減らすことは、使用開始までの準備時間の短縮だけでなく、作業ミスによる機能不全を抑制する上でも好ましい。
【0013】
なお、本手段1においては「所定の領域を囲む」ようにして「監視領域」が構成(形成)される点を明示しているが、「監視領域」については必ずしも閉じている必要はなく、部分的に開いている構成(すなわち検知領域間に隙間が生じる構成)についても含む。詳しくは、当該隙間を通じた人や動物等の移動が困難又は不可となる程度の大きさである場合を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】(a)監視端末の正面図、(b)監視端末の側面図、(c)光学機構を示す概略図。
【
図4】監視システムの電気的構成を示すブロック図。
【
図5】監視システムの使用開始手順を示すフローチャート。
【
図6】リーダ端末の制御部にて実行されるグループ化処理を示すフローチャート。
【
図9】リーダ端末の制御部にて実行される領域形成準備処理を示すフローチャート。
【
図10】監視端末の向きの特定に係る構成を示す概略図。
【
図11】3つの監視端末により形成される仮想三角形を示す概略図。
【
図13】監視領域形成のアルゴリズムの一部を示す概略図。
【
図14】監視領域形成のアルゴリズムの一部を示す概略図。
【
図16】監視領域形成のアルゴリズムの一部を示す概略図。
【
図17】監視端末と担当区間との関係を示す概略図。
【
図18】リーダ端末の制御部にて実行される侵入監視用処理を示すフローチャート。
【
図19】リーダ端末の制御部にて実行される移動監視用処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、公民館や体育館等の避難所で使用可能な監視システムに具現化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1に示す避難所10においては、避難スペースが複数の区画に分けられており、それら区画が避難者に割り当てられている。各区画には敷物11が配設されており、敷物11には配給された布団や家から持ち出した貴重品等の荷物12が置かれている。避難所10では、不特定多数の人が滞在することとなり、割り当てられた区画は各人の専有スペースとなってはいるもののそれら区画を物理的に仕切る壁等が配設されているわけではない。本実施形態においては、割り当てられた区間への他者の侵入等を監視する監視システム20を用いることで、当該区画におけるセキュリティの向上が図られている。ここで、
図2及び
図3を参照して、監視システム20について説明する。
【0017】
図2に示すように、監視システム20は、持ち運び可能な複数(本実施形態では4つ)の監視端末30を有してなり、それら監視端末30が敷物11の四隅に1つずつ配置されている。詳細については後述するが、これら監視端末30により、上記区画における所定の領域PEを囲むようにして侵入監視用の境界である監視領域BEが形成されている。
【0018】
図3(a),(b)に示すように、各監視端末30は、監視領域BE(
図2参照)に位置する物体を検知可能なレーザレーダ装置31と、当該レーザレーダ装置31を支持する支柱32と、支柱32に内蔵され監視端末30を制御する制御部33とを備えている。支柱32は、円筒状の台座であるベース51と、ベース51の上端部に設けられたターンテーブル52とを有してなり、このターンテーブル52にレーザレーダ装置31が固定されている。ターンテーブル52は、ベース51の中心軸線CL1を中心に回動可能となっており、ベース51にはターンテーブル52用の駆動部であるモータが収容されている。このモータは制御部33に接続されており、制御部33は当該モータを駆動制御することで中心軸線CL1を中心にターンテーブル52を回動させる。これにより、レーザレーダ装置31の向きを変更可能(調整可能)となっている。
【0019】
なお、支柱32については床等への固定具が不要となっており、監視端末30を任意の位置へ設置しやすい構成が実現されている。例えば
図2に示す監視端末30については、敷物11の上に設置されている。また、監視端末30はバッテリが搭載されたコードレスタイプとなっており、設置場所に係る制約が緩和されている。
【0020】
レーザレーダ装置31には、所定角度(本実施形態では0.25°)ごとに設定されている照射角度にてパルスレーザ光(以下、レーザ光という)を照射し且つそのレーザ光の反射光を受光する光学機構45と、光学機構45を収容するハウジング41とが設けられている。
【0021】
図3(c)に示すように、光学機構45は、発光部46、受光部47及び光路形成部48により構成されている。発光部46は、レーザ光を間欠的に出力するレーザダイオードと、当該レーザダイオードから出力されるレーザ光の光路上に配設されたコリメートレンズとを有してなり、レーザダイオードから出力されたレーザ光は、コリメートレンズを透過することで平行光に変換された後、ハウジング41の中央に配設された上記光路形成部48へと向かう。
【0022】
光路形成部48は、ハウジング41に固定された第1ミラー48aと、当該第1ミラー48aと対をなす第2ミラー48bが搭載された回転ブロックとを有している。第1ミラー48aには、発光部46の光軸に対して斜めに傾く反射面が形成されており、発光部46から出力されたレーザ光は、当該反射面により第2ミラー48bの反射面へ導かれる。
【0023】
第2ミラー48bの反射面は、両ミラー48a,48bの並設方向に対して斜めに傾いており、第1ミラー48aにより反射されたレーザ光は、第2ミラー48bにて再度反射されることでハウジング41の照射口42へ導かれる。照射口42には透明な窓パネル43が嵌っており、照射口42へ導かれたレーザ光は窓パネル43を透過してレーザレーダ装置31の正面(詳しくは検知領域DE)へ照射される。窓パネル43が向いている方向がレーザレーダ装置31の正面方向である。
【0024】
回転ブロックには、第2ミラー48bを保持するホルダが設けられており、ホルダの端部には、モータ49の出力軸が固定されている。モータ49は制御部33に接続されており、当該制御部33によってモータ49が駆動制御される。モータ49が動作することで回転ブロックが出力軸とともに回転(周回)する。回転ブロックの回転中心となる中心軸線CL2については、上記中心軸線CL1と直交する方向に延びており、例えば、中心軸線CL1が鉛直となるようにして監視端末30が設置された状態では、中心軸線CL2は水平となる。
【0025】
第1ミラー48aから第2ミラー48bへのレーザ光の入射位置は、中心軸線CL2上の位置となるように規定されている。回転ブロックが中心軸線CL2を中心に回転して第2ミラー48bの向きが変わることによりレーザ光の照射方向を変更可能な構成が実現されている。すなわち、本実施形態においては、レーザレーダ装置31によるレーザ光の走査方向が中心軸線CL2を中心とした回転方向(中心軸線CL2を中心とした円の円周方向)となっている。
【0026】
レーザレーダ装置31から照射されたレーザ光が物体に当たった場合には、当該物体により反射されたレーザ光(反射光)の一部がレーザレーダ装置31へ到達し得る。上記受光部47は、光路形成部48に併設されており、反射光は第2ミラー48bによって当該受光部47に導かれる構成となっている。受光部47は、フォトダイオードと、当該フォトダイオード及び上記第2ミラー48bの間に配設された集光レンズと、当該集光レンズ及びフォトダイオードの間に配設されたフィルタとを有してなり、第2ミラー48bからの反射光が集光レンズ→フィルタを通じてフォトダイオードに導かれる構成となっている。フィルタは、反射光に対応した特定波長の光のみを透過させ、それ以外の光を遮断する波長選択フィルタであり、光路形成部48からフォトダイオードに至る光路にて反射光を透過させ且つ反射光以外の光を除去する。監視端末30間でレーザ光の混同を避ける上では、例えば監視端末30毎にレーザ光の波長を相違させたり、レーザ光の照射期間が監視端末30間で重複しないようにレーザ光の照射タイミングをずらしたりすると効果的である。なお、本実施形態に示すレーザ光については不可視(視認不可)となっている。これは、避難生活中の他者に不快感を与えにくくするための工夫である。
【0027】
監視端末30が床に設置された状態では、レーザ光の照射領域LE(
図3(b)参照)は床に直交する平面状をなし、照射領域LEの一部が当該監視端末30によって物体を検知する検知領域DEとなる。
図2に示すように、各監視端末30の検知領域DEは、自身の検知領域DE上に他の監視端末30(後述する隣の監視端末30)が位置するように設定され、自身と他の監視端末30との間を通過する物体を検知可能となっている。つまり、本実施形態に示す監視端末30については、自身と他の監視端末30との間の領域を監視可能とすべく検知領域DEが設定されるとも言える。各検知領域DEは隣り合う検知領域DEと接しており(詳しくは端部同士が交差しており)、これら検知領域DEの組合せによって所定の領域PEを四方から囲むようにして監視領域BEが形成されている。監視領域BEがある程度の高さを有する構成とすることで、侵入者が当該監視領域BEを乗り越えて所定の領域PE(例えば荷物12)にアクセスすることを困難としている。詳細については後述するが、監視領域BEはレーザ光を試射した上で決定される。これにより、例えば避難スペースの天井を侵入者と誤認することを回避している。
【0028】
次に、
図4のブロック図を参照して、監視システム20の電気的構成について補足説明する。
【0029】
監視端末30の制御部33には、上記光学機構45を構成している発光部46、受光部47、モータ49の他に、レーザレーダ装置31(ターンテーブル52)の向きを調整するための調整機構55が接続されている。調整機構55はターンテーブル52用の駆動部であるモータ56と、ターンテーブル52の回動を規制するためのロック装置57とを有してなり、制御部33はモータ56の駆動制御及びロック装置57のロック状態/アンロック状態の切替制御とを実行する。なお、ロック装置57はレーザレーダ装置31の向きを調整する場合にアンロック状態となり、それ以外は基本的にロック状態に維持される。
【0030】
制御部33には、監視領域BEの設定等の際にユーザにより操作される設定ボタン61と、監視端末30とユーザが所有するスマートフォン等の携帯端末80とを連携させる際にユーザにより操作される連携ボタン62と、監視端末30の状態や監視状況等の各種情報を報知する報知手段であるランプ63及びスピーカ64とが接続されている。設定ボタン61、連携ボタン62、ランプ63及びスピーカ64は何れも支柱32に配設されている。これは、監視端末30の重心を低く抑えて、当該監視端末30の倒れ等を抑制する工夫である。なお、ランプ63については、中心軸線CL1を中心とした環状をなしている。これは、設置された監視端末30の向きによって当該ランプ63の視認性が低下することを抑制する工夫である。
【0031】
また、各監視端末30には、監視端末30間の無線通信や上記携帯端末80との無線通信を行うための通信部34が設けられている。詳細については後述するが、通信部34は、1の発信部(アンテナ)を具備する発信器と複数の受信部(アンテナ)を具備する受信器とを有してなり、監視端末30間の通信(電波の送受信)によって監視端末30間の距離や監視端末30の向き、すなわち監視端末30同士の位置関係を把握可能となっている。
【0032】
次に
図5を参照して、上記監視システム20の使用手順について説明する。
【0033】
監視システム20を使用する場合には先ず、複数(本実施形態では4つ)の監視端末30をグループ化する。すなわち、共同で上記監視領域BEを形成する監視端末30群を決める。具体的には、各監視端末30の電源をONにした状態で、それら監視端末30を一箇所、例えば割り当てられた区画の中央付近に集める(手順ST1)。そして、集めた監視端末30群にてリーダとなる端末とメンバとなる端末とを決定する(手順ST2)。詳しくは、何れか1つの監視端末30について設定ボタン61の長押し操作を行う。ユーザによるこの操作が、グループ化の開始操作であり、当該操作が行われた端末が当該グループにおけるリーダとして登録されることとなる。
【0034】
ここで、開始操作が行われた監視端末30(制御部33)において実行されるグループ化処理について説明する。グループ化処理は、監視を行っていない状況下にて開始操作が行われた場合に実行される処理であり、監視中に当該開始操作が行われたとしても当該グループ化処理は実行されない。
【0035】
図6のフローチャートに示すように、グループ化処理においては先ず、ステップS101にて監視端末30同士を無線接続すべく接続開始処理を実行する。接続開始処理では、短距離無線通信により通信開始用コマンドを他の監視端末30に送信し、他の監視端末30からの応答を待つ。他のグループに属していない監視端末30(後述する識別用IDを有していない監視端末30)であって当該通信開始用コマンドを受信した他の監視端末30(詳しくは開始操作が行われた監視端末30を中心とした基準範囲内に位置している監視端末30:
図7参照)は、通信開始用コマンドの送信元となった監視端末30とのペアリングを開始する。これにより、当該送信元となった監視端末30と他の複数の監視端末30とが各々無線接続された状態となる。これら他の監視端末30がグループにおけるメンバの候補となる。なお、上記基準範囲については無線通信が可能な最大範囲よりも小さくなるように制限された範囲である。これは、グループ間の監視端末30の混同を抑制する工夫であり、他の避難者が同じ監視システム20を使用し得ることへの配慮である。
【0036】
ステップS101にて接続開始処理を実行した後は、ステップS102に示すように、予め設定されている待ち時間が経過するまで待機し、待ち時間が経過した時点でステップS103に進む。ステップS103では、無線接続されている監視端末30群をユーザに報知する。具体的には、メンバの候補となった監視端末30にメンバ設定用の確認コマンドを送信する。候補となった監視端末30においては、メンバ設定用の確認コマンドを受信したことに基づいてランプ63を黄色で点滅させる。また、設定ボタン61が操作された監視端末30においてもランプ63を黄色で点滅させる。グループを構成し得る監視端末30の各ランプ63が同期するようにして点滅することにより、ユーザはグループ化される監視端末30を目視で確認できる。その後は、ユーザによってグループ化を承認する承認操作(設定ボタン61の長押し操作)及びキャンセル操作(設定ボタン61の短押し操作)の何れかが行われるまで待機する。
【0037】
承認操作が行われた場合には、ステップS104にて肯定判定をしてステップS105に進み、リーダ及びメンバの登録処理を実行する。この登録処理では、各監視端末30に識別用IDを設定し、それら識別用IDを監視端末30間で共有する。具体的には、設定ボタン61が操作された監視端末30にリーダ用の識別用ID=Lを設定し、メンバとなる監視端末30に識別用ID=A~Cを各々設定する(
図7参照)。以下の説明では、識別用ID=Lとなった監視端末30を「リーダ端末30L」、識別用ID=Aとなった監視端末30を「メンバ端末30A」、識別用ID=Bとなった監視端末30を「メンバ端末30B」、識別用ID=Cとなった監視端末30を「メンバ端末30C」とも称し、適宜区別する。
【0038】
その後は、ステップS106にて、メンバ端末30A~30Cに相互接続コマンドを送信する。メンバ端末30A~30Cは、相互接続コマンドを受信したことに基づいて、相互に無線接続された状態となるようにして通信網を構築する。そして、ステップS107にてグループ化が完了した旨をユーザに報知し、本グループ化処理を終了する。この報知処理により、リーダ端末30L及びメンバ端末30A~30Cの各ランプ63の発光パターンが黄色の点滅表示から緑色の点滅表示に切り替わる。
【0039】
一方、ステップS104にて否定判定をした場合には、ステップS108に進み、キャンセル操作が行われたか否かを判定する。キャンセル操作が行われていない場合には、ステップS108にて否定判定をしてステップS104に戻る。キャンセル操作が行われた場合には、ステップS108にて肯定判定をしてステップS109に進み、報知終了・接続解除処理を実行する。報知終了・接続解除処理では、本キャンセル操作が行われた監視端末30のランプ63を消灯させるとともに通信終了用コマンドを他の監視端末30に送信し、それら他の監視端末30との無線接続を解除する。他の監視端末30では通信終了用コマンドを受信したことに基づいて、各ランプ63を消灯させる。その後は、本グループ化処理を終了する。
【0040】
図5の手順の説明に戻り、グループの設定及びリーダ/メンバの登録が完了した後は、監視システム20のセッティングに移る。本実施形態に示す監視システム20については、ユーザが所有する携帯端末80に専用のアプリケーションをインターネット通じてダウンロード→インストールすることで監視端末30と携帯端末80とを連携させることができる。当該連携を希望するユーザは、アプリケーションを携帯端末80にインストールした後(手順ST3)、携帯端末80と監視端末30とを無線通信可能となるように接続し、携帯端末80と監視端末30とを連携させる(手順ST4)。これにより、監視端末30の状態や監視状況等が携帯端末80にて確認可能となり、携帯端末80から監視に係る設定操作や開始/停止/終了等の各種操作が可能となる。また、詳細については後述するが、携帯端末80を携帯することでユーザが監視に引っ掛かることを回避できる。なお、手順ST3及び手順ST4については必須ではなく、これらの手順についてはスキップすることも可能である。
【0041】
連携後は、ユーザが所望とする領域(所定の領域PE)を囲むようにして各監視端末30を設置する(手順ST5)。監視端末30を設置した後は、監視領域BEの自動決定用操作を行う(手順ST6)。本実施形態では、リーダ端末30L及び携帯端末80の何れにおいても当該操作が可能である。監視システム20においては、監視端末30の設定ボタン61の操作(短押し操作)、携帯端末80のアプリケーションに表示された監視領域決定用の操作アイコンの操作の何れかを契機として監視領域BEの自動決定用シーケンスが実行されることとなる。このシーケンスによって、どのような監視領域BEを形成するかが決定される。監視領域BEを決定するためのアルゴリズムについては後述する。
【0042】
監視システム20にて監視領域BEが決定されることで監視を開始するための準備が完了する。監視端末30のランプ63の発光パターンが青色の点滅表示に切り替わり、携帯端末80を連携させている場合には当該携帯端末80のディスプレイに準備完了の旨が表示される。ユーザは、それらランプ63の表示等に基づいて準備完了となったことを確認し(手順ST7)、その後は、任意のタイミングで監視開始操作を行う(手順ST8)。これにより、割り当てられた区画における所定の領域PEを囲むようにして不可視の監視領域BEが形成されることとなる。すなわち、監視機能=アクティベートとなる。
【0043】
本実施形態では、監視端末30(詳しくはリーダ端末30L)及び携帯端末80の何れにおいても開始操作が可能である。具体的には、監視端末30の設定ボタン61の操作(長押し操作)、携帯端末80のアプリケーションに表示された監視開始用の操作アイコンの操作の何れかを契機として、監視システム20による監視が開始されることとなる。
【0044】
なお、監視システム20について既にグループ化や携帯端末80との連携を完了している場合には、それらの情報が監視端末30の電源がOFFとなるまで保持され、次回使用時は手順ST1~ST4を省略可能となる。因みに、初回使用時等、手順ST1から作業を行う場合には、手順ST7及び手順ST8を省略し、監視領域BEの自動決定シーケンス後は、ユーザが開始操作を行わなくても監視領域BEが自動的に形成される構成、すなわち監視機能が自動的にアクティベートされる構成とすることも可能である。
【0045】
以上詳述した監視システム20によって避難所10における任意の場所でセキュリティの向上を実現することは、避難生活におけるストレス軽減等を図る上で好ましい。しかしながら、監視システム20の使用時に監視端末30の位置や向きを手動で細かく調整するといった調整作業をユーザに強いることは、作業ミスによって監視機能が適正に発揮されなくなったり、作業が煩わしい等の理由から監視システム20が使用されなくなったりする要因になると懸念される。本実施形態に示す監視システム20ではこのような事情に配慮して、監視システム20を使用する際のユーザの手間を少なくする工夫がなされている。具体的には、上記手順ST6に示した監視領域自動決定用操作が行われた場合には、監視システム20において、各監視端末30の位置関係を把握し、所定の領域PEを囲む監視領域BEをどのように形成するかを当該位置関係に基づいて自動的に決定する。
【0046】
4つの監視端末30によって監視システム20を構成している場合には、それら監視端末30の位置関係が以下の3つのパターン(通常パターン、特殊パターン1、特殊パターン2)に大別される。
【0047】
図8(a)には通常パターンを例示している。通常パターンでは、2つの監視端末30を結ぶ仮想直線のうち2つ(仮想対角線FL1)が4つの監視端末30によって囲まれた領域の中央で交差している。このような配置となっている場合には、4つの監視端末30の検知領域DEを組み合わせることにより、所定の領域PEを四方から囲むようにして監視領域BEを形成し得る。つまり、当該通常パターンにおいては、所定の領域PEを上方から見て(平面視にて)、4つの監視端末30を頂点とした四角形となるようにして監視領域BEを形成し得る。
【0048】
図8(b)には特殊パターン1を例示している。この特殊パターン1では、3つの監視端末30が一直線上に並んでいる。言い換えれば、2つの監視端末30を結ぶ仮想直線FL2の中間位置に1の監視端末30が位置している。このような配置となっている場合には、当該1の監視端末30については頂点を構成できないため、通常パターンに示したように所定の領域PEを四方から囲むようにして監視領域BEを形成することは困難である。但し、所定の領域PEを三方から囲むようにして監視領域BEを形成し得る。つまり、当該特殊パターン1においては、所定の領域PEを上方から見て(平面視にて)、上記中間位置に存在する監視端末30を除く3つの監視端末30を頂点とした三角形となるようにして監視領域BEを形成し得る。
【0049】
図8(a)に示す通常パターン及び
図8(b)に示す特殊パターン1では、平面視にて多角形をなす監視領域BEを形成しようとした場合に、4つの監視端末30の位置関係に基づいて形成し得る監視領域BEの候補が何れも1つとなる。これに対して、
図8(c)に例示している特殊パターン2では、平面視にて多角形をなす監視領域BEを形成しようとした場合に、4つの監視端末30の位置関係に基づいて形成し得る監視領域BEの候補が複数存在することとなる。
【0050】
具体的には、3つの監視端末30を頂点とする仮想三角形FTの内部に1の監視端末30が位置している場合には、全ての監視端末30が四角形の頂点を各々構成し得るものの、監視端末30の位置関係から想定し得る監視領域BEの候補が3つとなる。監視システム20にて監視領域BEを自動的に決める場合に、システム側でユーザの意図に合わせてそれら3つの候補の1つに絞り込むことは困難である。何故ならば、ユーザの意図から外れた監視領域BEを形成してしまうと、監視機能を適正に発揮させることが難しくなるからである。
【0051】
本実施形態に示す自動決定シーケンスにおいては、これら通常パターン、特殊パターン1、特殊パターン2の3つのパターンを自動的に判別して、パターン毎に対応を変える構成となっていることを特徴の1つとしている。以下、
図9のフローチャートを参照して、当該特徴的な構成、すなわちリーダ端末30Lの制御部33にて実行される領域形成準備処理について説明する。領域形成準備処理は、上記手順ST6にてユーザにより監視領域BEの自動決定用操作が行われた場合に上記自動決定シーケンスの一環として実行される処理である。
【0052】
領域形成準備処理においては先ず、ステップS201にて各監視端末30(詳しくはレーザレーダ装置31)の向きの関係を特定する。詳しくは、監視端末30間の無線通信、具体的にはBluetooth(登録商標)によるAoA(Angle of Arrival)方式の方向検知機能によって各レーザレーダ装置31の向きを特定する。ここで、
図10を参照して、監視端末30間の通信に係る構成及び向き等の特定方法について補足説明する。なお、
図10においては、説明の便宜上、2つの監視端末30に係る各種構成を符号の末尾の「X」「Y」によって区別した上で、レーザレーダ装置31Xの向きを特定する場合について例示している。
【0053】
監視端末30Xの通信部34Xは、1つの発信部70Xを有する発信器と、複数の受信部71X~73X(詳しくは第1受信部71X、第2受信部72X、第3受信部73X)を有する受信器とで構成されている。発信部70Xは中心軸線CL1上に配置されており、第1受信部71X、第2受信部72X、第3受信部73Xは中心軸線CL1を囲むようにして配置されている。具体的には、中心軸線CL1を中心とする仮想円上に第1受信部71X、第2受信部72X、第3受信部73Xが並んでおり、第1受信部71Xと第2受信部72Xとを結ぶ仮想直線から外れた位置に第3受信部73Xが配置されている。なお、
図10においては便宜上、第1受信部71X、第2受信部72X、第3受信部73Xの位置関係を相互の距離が大きくなるように誇張させている。
【0054】
監視端末30Yの通信部34Yについても、1つの発信部70Yを有する発信機と、複数の受信部71Y~73Y(詳しくは第1受信部71Y、第2受信部72Y、第3受信部73Y)を有する受信機とで構成されている。これら各種構成については、通信部34Xと同様であるため説明を省略する。
【0055】
レーザレーダ装置31Xの向き、すなわち監視端末30Xと監視端末30Yとの並び方向D1を基準とした場合のレーザレーダ装置31Xの向きを特定する場合には、監視端末30Yの発信部70Yから信号Wが出力される。この信号Wは、監視端末30Xの第1受信部71X、第2受信部72X、第3受信部73Xにより各々受信される。第1受信部71X、第2受信部72X、第3受信部73Xについては互いに離れているため、各受信部71X,72X,73Xにて受信した信号Wについては位相が異なることとなる。それら位相差から、並び方向D1を基準とした場合のレーザレーダ装置31Xの向き、すなわち並び方向D1と監視端末30Xの正面方向FXとの角度ANG1を特定できる。なお、本実施形態においては、監視端末30Xを上方から見て、当該監視端末30Xのレーザレーダ装置31Xを中心軸線CL1を中心として時計回り方向に回動させた場合に当該レーザレーダ装置31X(詳しくは窓パネル43)が監視端末30Yを向くこととなる回動角度を角度ANG1としている。因みに、監視端末30Xは、監視端末30Yについて上記角度ANG1を算出した後に、他の監視端末30とも同様に角度を算出する構成となっており、複数の監視端末の送信部から同時に信号が照射されて信号の混同が生じることを回避している。このような信号の混同を防ぐには、向き特定の対象となっている監視端末から信号出力の対象となる監視端末に信号出力を順に指示する構成とするとよい。指示の順番については任意であるが、例えば上述した識別用IDに基づいて順番を決定するとよい。
【0056】
各監視端末30について特定した角度の情報については、リーダ端末30Lに送信され、リーダ端末30Lではそれらの情報を記憶する。因みに、各監視端末30のレーザレーダ装置31の向き等を特定するための具体的方法については任意であり、上述したAoA方式に代えてAoD(Angle of Departure)方式を用いてもよい。また、Bluetooth(登録商標)に代えて超広帯域無線(所謂ウルトラワイドバンド)を用いてもよい。
【0057】
図9の説明に戻り、各監視端末30についてレーザレーダ装置31の向きを特定した後は、ステップS202に進む。ステップS202では、3つの監視端末30により形成され得る仮想三角形について内角を算出する。具体的には、4つの監視端末30から3つをピックアップし、それらピックアップした監視端末30を頂点とする仮想三角形を形成する。監視端末30が4つである場合に形成し得る仮想三角形の数については最大で4つとなる。詳しくは、
図11に示すように、(1)リーダ端末30L、メンバ端末30A、メンバ端末30Cの3つを頂点とする仮想三角形S1、(2)リーダ端末30L、メンバ端末30B、メンバ端末30Cの3つを頂点とする仮想三角形S2、(3)リーダ端末30L、メンバ端末30A、メンバ端末30Bの3つを頂点とする仮想三角形S3、(4)メンバ端末30A、メンバ端末30B、メンバ端末30Cの3つを頂点とする仮想三角形S4の4つとなる。
【0058】
仮想三角形S1においては、リーダ端末30Lが頂点となっている部分の内角ANG11、メンバ端末30Aが頂点となっている部分の内角ANG12、メンバ端末30Cが頂点となっている部分の内角ANG14を各々算出する。仮想三角形S2においては、リーダ端末30Lが頂点となっている部分の内角ANG21、メンバ端末30Bが頂点となっている部分の内角ANG23、メンバ端末30Cが頂点となっている部分の内角ANG24を各々算出する。仮想三角形S3においては、リーダ端末30Lが頂点となっている部分の内角ANG31、メンバ端末30Aが頂点となっている部分の内角ANG32、メンバ端末30Bが頂点となっている部分の内角ANG33を各々算出する。仮想三角形S4においては、メンバ端末30Aが頂点となっている部分の内角ANG42、メンバ端末30Bが頂点となっている部分の内角ANG43、メンバ端末30Cが頂点となっている部分の内角ANG44を各々算出する。
【0059】
以下、
図10及び
図12を参照して、仮想三角形の内角の算出方法について補足説明する。なお、
図12においては、説明の便宜上、仮想三角形の頂点となる3つの監視端末30に係る各種構成を符号の末尾の「X」「Y」「Z」によって区別した上で、監視端末30Xが頂点となっている部分の内角を算出する場合について例示している。
【0060】
監視端末30Xと監視端末30Zとの並び方向D2を基準とした場合の監視端末30X(詳しくはレーザレーダ装置31X)の向きを特定する方法については
図10に示した方法と同様である。具体的には、監視端末30Zの発信部から信号が出力され、この信号が監視端末30Xの第1受信部71X、第2受信部72X、第3受信部73Xにより各々受信される(
図10参照)。第1受信部71X、第2受信部72X、第3受信部73Xについては互いに離れているため、各受信部71X,72X,73Xにて受信する信号Wについては位相が異なることとなる。それら位相差から、並び方向D1を基準とした場合のレーザレーダ装置31Xの向き、すなわち並び方向D2とレーザレーダ装置31Xの正面方向FXとの角度ANG2を特定できる。なお、本実施形態においては、監視端末30Xを上方から見て、当該監視端末30Xのレーザレーダ装置31Xを中心軸線CL1を中心として時計回り方向に回動させた場合に当該レーザレーダ装置31X(詳しくは窓パネル43)が監視端末30Zを向くこととなる回動角度を角度ANG2としている。
【0061】
監視端末30X,30Y,30Zを頂点とする仮想三角形において監視端末30Xが頂点となっている部分の内角ANGXは、並び方向D2と監視端末30Xの正面方向FXとの角度ANG2と、並び方向D1と監視端末30Xの正面方向FXとの角度ANG1とから算出できる。具体的には、角度ANG2と角度ANG1との差(詳しくは絶対値)が180°よりも小さい場合には、当該差を内角ANGXとする。一方、この差が180°よりも大きい場合には、360°から当該差を引いた値を内角ANGXとする。
【0062】
なお、監視端末30Yが頂点となっている部分の内角を算出する方法、監視端末30Zが頂点となっている部分の内角を算出する方法についても同様である。また、仮想三角形の内角を算出するための具体的方法については任意である。例えば、監視端末30Xの向きが様々になる点に鑑みれば、角度算出の基準となる監視端末30Xの方向を、複数の方向(例えば、正面方向及び時計回り方向に、90°、180°、270°ずらした3つの方向)から監視端末30Xの向きに応じて選択する構成とすることも可能である。
【0063】
再び
図9(領域形成準備処理)の説明に戻り、ステップS202にて各仮想三角形の内角を算出した後は、ステップS203に進む。ステップS203では、4つの監視端末30に、監視領域BEにて頂点を構成しないものが含まれているかを確認する。3つの監視端末30が一直線に並んでいる場合には、それら3つの監視端末30を頂点とする仮想三角形は形成できず、ステップS202にて算出した内角は0°又は180°となる。言い換えれば、何れかの内角に0°又は180°となるものが含まれている場合、すなわち0°よりも大きく180°よりも小さい範囲に収まっていないものがある場合には、監視端末30の位置関係が上述した特殊パターン1に該当しているものと判定する。
【0064】
図13に示す例ではリーダ端末30Lがメンバ端末30Aとメンバ端末30Cとの間に位置し、それらリーダ端末30L、メンバ端末30A、メンバ端末30Cが一直線上に並んでいる。このため、リーダ端末30L、メンバ端末30A、メンバ端末30Cを頂点とする仮想三角形を形成できるものと仮定して、リーダ端末30L、メンバ端末30A、メンバ端末30Cを頂点とする内角を算出した場合、リーダ端末30Lを頂点とする内角ANG11については180°、メンバ端末30A,30Cを頂点とする内角ANG12,ANG14については何れも0°となり、実際にはリーダ端末30L、メンバ端末30A、メンバ端末30Cを頂点とする仮想三角形については形成できないことが明らかとなる。これらの角度から、制御部33においては、
図13に示す監視端末30L,30A~30Cの位置関係が特殊パターン1に該当しているものと判定する。
【0065】
ステップS202にて算出した内角に0°又は180°のものが含まれていない場合、すなわち特殊パターン1に該当しない場合には、ステップS204にて否定判定をしてステップS205に進む。
【0066】
ステップS205では、4つの監視端末30を頂点とする四角形に凹状四角形となるものがあるか、すなわち3つの監視端末30により形成される仮想三角形の内部に1の監視端末30が位置しているかを判定する。3つの監視端末30により形成される仮想三角形の内部に1の監視端末30が位置している場合には、ステップS202にて算出した各内角のうち当該1の監視端末30を頂点とするもの(3つの内角)を合算すると360°となる。言い換えれば、何れか監視端末30について内角を合算した値が360°となる場合には、3つの監視端末30により形成される仮想三角形の内部に1の監視端末30が位置している、すなわち監視端末30の位置関係が上述した特殊パターン2に該当しているものと判定する。
【0067】
図14に示す例ではリーダ端末30Lが3つのメンバ端末30A~30Cを頂点とする仮想三角形の内部に位置している。このため、仮想三角形S1にてリーダ端末30Lを頂点とする内角ANG11と、仮想三角形S2にてリーダ端末30Lを頂点とする内角ANG21と、仮想三角形S3にてリーダ端末30Lを頂点とする内角ANG31とを合算すると360°となっている。算出した合算値から、制御部33に説いては、
図14に示す監視端末30L,30A~30Cの位置関係が特殊パターン2に該当しているものと判定する。
【0068】
ステップS202にて算出した内角を監視端末30毎に合算した合算値が何れも360°とならない場合、すなわち特殊パターン2に該当しない場合には、ステップS206にて否定判定をしてステップS207に進む。そして、ステップS207にて通常決定処理を実行した後、本領域形成準備処理を終了する。ここで、
図15のフローチャートを参照して、ステップS207の通常決定処理について説明する。
【0069】
通常決定処理においては先ず、ステップS301にて区間選定処理を実行する。既に説明したように、本実施形態に示す監視システム20は、各監視端末30が他の監視端末30との間の領域(以下、区間ともいう)を1つ監視する構成となっており、ステップS301の区間選定処理ではそれら各区間から監視対象とする区間を選定する。より具体的には、4つの監視端末30を用いる場合には、
図16に示すように、リーダ端末30Lとメンバ端末30Aとの間の領域(区間SC1)、メンバ端末30Aとメンバ端末30Bとの間の領域(区間SC2)、メンバ端末30Bとメンバ端末30Cとの間の領域(区間SC3)、メンバ端末30Cとリーダ端末30Lとの間の領域(区間SC4)、リーダ端末30Lとメンバ端末30Bとの間の領域(区間SC5)、メンバ端末30Aとメンバ端末30Cとの間の領域(区間SC6)の6つの中から4つを選定する。具体的には、選定した区間を四辺とし、リーダ端末30L、メンバ端末30A~30Cを頂点とする四角形が形成されるようにして、4つの区間を選定する。
【0070】
4つの区間を選定する方法については以下の通りである。すなわち、上記ステップS202にて算出した内角を監視端末30毎に比較することにより、それら算出した内角のうち最も大きい内角を監視端末30毎に特定する。そして、特定した各内角を形成している区間を監視対象とする一方、特定した各内角を形成しない区間を非監視対象とする。
【0071】
例えば、
図16に示す例では、リーダ端末30Lにおいては内角ANG11>内角ANG21>内角ANG31となっており、メンバ端末30Aにおいては内角ANG32>内角ANG42>内角ANG12となっており、メンバ端末30Bにおいては内角ANG43>内角ANG33>内角ANG23となっており、メンバ端末30Cにおいては内角ANG24>内角ANG14>内角ANG44となっている。そこで、リーダ端末30Lを頂点とする内角ANG11、メンバ端末30Aを頂点とする内角ANG32、メンバ端末30Bを頂点とする内角ANG43、メンバ端末30Cを頂点として内角ANG24を形成している線分(辺)に対応している区間SC1~SC4を監視対象とし、それ以外の区間SC5~SC6を非監視対象としている。
【0072】
図15の説明に戻り、ステップS301にて区間選定処理を実行した後は、ステップS302にて各監視端末30が監視を担当する区間(担当区間)の振り分けを行う。具体的には、先ずリーダ端末30Lの担当区間を決定し、メンバ端末30A~30Cの担当区間を順に決定する。具体的には、選定された4つの区間、詳しくはリーダ端末30Lが一端となっている2つの区間の一方を当該リーダ端末30Lの担当区間とする。次に、リーダ端末30Lの担当区間の一端となっている1つめのメンバ端末の担当区間を決める。当該1つめのメンバ端末が一端となっている区間は残り1つであるため、当該残りの区間を当該1つめのメンバ端末の担当区間とする。次に、1つめのメンバ端末の担当区間の一端となっている2つめのメンバ端末の担当区間を決める。当該2つめのメンバ端末が一端となっている区間は残り1つであるため、当該残りの区間を当該2つめのメンバ端末の担当区間とする。次に、2つめのメンバ端末の担当区間の一端となっている3つめのメンバ端末の担当区間を決める。当該3つめのメンバ端末が一端となっている区間は残り1つであるため、当該残りの区間を当該3つめのメンバ端末の担当区間とする。
【0073】
例えば、
図17に示す例では、区間SC1~SC4が選定されている。これら区間SC1~SC4については、リーダ端末30L→メンバ端末30A→メンバ端末30B→メンバ端末30Cの順に担当区間が振り分けられており、区間SC1がリーダ端末30Lの担当区間、区間SC2がメンバ端末30Aの担当区間、区間SC3がメンバ端末30Bの担当区間、区間SC4がメンバ端末30Cの担当区間となっている。
【0074】
図15の説明に戻り、ステップS302にて担当区間を決定した後は、ステップS303に進む。ステップS303では、ターンテーブル52を駆動させることにより監視端末30のレーザ光が各々の担当区間に向けて照射されるように各監視端末30の向きを調整する。この際、ターンテーブル52の回動角度については、ステップS202等で算出した角度等に基づいて決定される。なお、
図14に示す例では、リーダ端末30Lがメンバ端末30A側を向き、メンバ端末30Aがメンバ端末30B側を向き、メンバ端末30Bがメンバ端末30C側を向き、メンバ端末30Cがリーダ端末30L側を向くように各端末30L,30A~30Cの向きが調整されている(矢印参照)。
【0075】
ステップS303にて各監視端末30の向きを調整した後は、ステップS304に進み、監視端末30間の無線通信によりそれら監視端末30同士の距離を特定する。例えば信号の到達時間に基づいて距離を特定するとよい。距離を特定した後は、ステップS305に進み、レーザ光の試射及び確認処理を実行する。
【0076】
各監視端末30からレーザ光を順に試射して、レーザ光の照射領域LEに隣の監視端末30が位置しているかを確認する。具体的には、ステップS304にて測定した距離となる位置に物体(隣の監視端末30と想定される物体)を検知できたかを確認する。なお、詳細については省略するが、隣の監視端末30と想定される物体を検知できなかった場合には、監視領域BEを適正に形成できない可能性があるため、ユーザに設定のやり直しを指示する。また、ステップS305では、隣の監視端末30を検知できたことを前提とした上で、担当区間に荷物等の物体が存在している場合には、当該物体を検知して同物体の位置を記憶する。なお、監視中に物体が当初の位置にとどまっているのであれば、当該物体はアラートの対象から除外され、監視中に当該物体が当初の位置から移動した場合にはアラート(後述する第2アラート)が実行されることとなる。
【0077】
続くステップS306では、ステップS304にて特定した距離に基づいて監視領域BEをどのように形成するか(大きさや除外部分)を決定する。具体的には、担当区間を僅かに越えて各監視端末30の検知領域DEが隣の監視端末30を越える位置にまで拡がるように決定される。これにより、監視中は検知領域DEが隣同士で繋がり、監視領域BEに穴が生じることを抑制している(
図2参照)。また、検知領域DEの高さが予め設定されている高さとなるように決定する。監視端末30が設置された場所の天井部分が予め設定されている高さよりも低い場合には、先のステップS305にて検知した天井部分の高さに合わせて検知領域DEを調整する。
【0078】
ステップS306にて決定処理を実行した後は、ステップS307にて監視の準備が完了した旨をユーザに報知する報知処理を実行した後、領域設定用第1処理を終了する。ステップS307の報知処理においては、各監視端末30のランプ63を青色の点滅表示に切り替え且つ携帯端末80に準備完了コマンドを送信する。携帯端末80は、当該準備完了コマンドを受信したことに基づいて、当該携帯端末80のディスプレイに準備完了の旨を表示させる。
【0079】
図9の領域形成準備処理の説明に戻り、ステップS204にて肯定判定をした場合、すなわち監視端末30の位置関係が特殊パターン1である場合には、ステップS208に進み、特殊決定処理を実行した後、本領域形成準備処理を終了する。特殊決定処理については、形成される監視領域BEが平面視にて(上方から見て)3つの監視端末30を頂点とする三角形をなすように区間の選定及び担当区間の割り振りを行う。特殊決定処理については、基本的な流れが通常決定処理と同様であるが、三角形をなす監視領域BEが形成されることを想定している点で相違しているとも言える。
【0080】
図13に示す例ではリーダ端末30Lがメンバ端末30Aとメンバ端末30Cとの間に位置し、それらリーダ端末30L、メンバ端末30A、メンバ端末30Cが一直線上に並んでいる。このような位置関係では、区間SC1~SC4が選定されている。これら区間SC1~SC4については、リーダ端末30L→メンバ端末30A→メンバ端末30B→メンバ端末30Cの順に担当区間が振り分けられており、区間SC1がリーダ端末30Lの担当区間、区間SC2がメンバ端末30Aの担当区間、区間SC3がメンバ端末30Bの担当区間、区間SC4がメンバ端末30Cの担当区間となっている。
【0081】
なお、メンバ端末30Aとメンバ端末30Cとの間の区間をメンバ端末30Cの担当区間として、リーダ端末30Lについては担当区間を設けない構成とすることも可能である。但し、このような構成では、メンバ端末30Cからのレーザ光の一部がリーダ端末30Lによって遮られることとなり、メンバ端末30Cの担当区間に穴が生じやすくなる。以上の理由から、直線上に位置する3つの監視端末30のうち中間に位置する監視端末30についても監視に参加させる構成とすることが好ましい。
【0082】
図9の説明に戻り、ステップS206にて肯定判定をした場合、すなわち監視端末30の位置関係が上記特殊パターン2となっている場合には、ステップS209にてエラー報知処理を実行し、ステップS210にて領域形成用の準備データ(算出した角度等)の消去処理を実行した後、本領域形成準備処理を終了する。エラー報知処理では、各監視端末30のランプ63を黄色の点灯表示とし且つ監視領域BEを適正に設定できない旨のメッセージ(例えば「監視領域を形成できません 監視端末の位置を変更して下さい」)をスピーカ64から出力するとともに、携帯端末80へ準備エラーコマンドを送信する。携帯端末80は、当該準備エラーコマンドを受信したことに基づいて、当該携帯端末80のディスプレイに監視領域BEを適正に設定できない旨のメッセージを表示する。
【0083】
監視領域BEを形成する準備が完了した後は、上記手順ST8に示したように、監視の開始操作を行うことで監視領域BEが形成される。すなわち、各監視端末30から各担当区間へレーザ光が周期的に照射されることで、上記所定の領域PEがレーザ光の疑似的なカーテンによって四方から覆われた状態(監視状態)となる。そして、各監視端末30では、反射光の受光状況から物体の有無等を確認し、メンバ端末30A~30Cについては、その結果(検知結果)をリーダ端末30Lへ送信する。この検知結果には、検知領域DEにて既存の荷物12や隣の監視端末30以外の物体を検知したかを特定するための情報や、既存の荷物12や隣の監視端末30の位置が変化したかを特定するための情報が含まれる。なお、監視が開始された旨については、各監視端末30のランプ63を青色に点灯表示させ且つ携帯端末80のディスプレイに監視中である旨を表示させることでユーザに報知されることとなる。
【0084】
次に、監視状態となっている場合にリーダ端末30Lの制御部33にて実行される監視処理について説明する。監視処理は定期処理の一環として実行される処理であり、この監視処理には、所定の領域PEへの侵入を監視するための侵入監視用処理と、監視端末30等の移動を監視する移動監視用処理と、監視端末30間の通信により電源ONの状態を相互に監視する電源監視用処理とが含まれている。以下、
図18のフローチャートを参照して、侵入監視用処理について説明する。
【0085】
侵入監視用処理においては先ず、ステップS401にてアラート(警報)を実行中であるかを判定する。本実施形態では、侵入を検知した場合等にアラートが実行される構成となっており、当該アラートの実行中でない場合には、ステップS401にて否定判定をしてステップS402に進む。
【0086】
ステップS402では、リーダ端末30Lにおける検知結果及びメンバ端末30A~30Cの検知結果を確認する。侵入を検知していない場合には、ステップS403にて否定判定をして本侵入監視用処理を終了する。侵入を検知している場合には、ステップS403にて肯定判定をしてステップS404に進む。
【0087】
ステップS404では、携帯端末80との通信によって当該携帯端末80を所持しているユーザの位置(詳しくは携帯端末80の位置)を特定する。ユーザ(携帯端末80)が監視領域BE又はその近傍に位置している場合には、今回の検知結果を無効とする除外条件が成立する。除外条件が成立となる場合には、ステップS405にて肯定判定をして本侵入監視用処理を終了する。
【0088】
除外条件が不成立となった場合には、ステップS405にて否定判定をしてステップS406~S408の侵入検知時処理を実行する。具体的には、先ずステップS406にて監視中断処理を実行する。これにより、各監視端末30における監視用動作(レーザ光の照射や物体の確認等)が中断され、リーダ端末30Lの制御部33では上記移動監視用処理等の監視用処理が制限される。なお、監視用動作は中断されるものの、監視端末30間の無線接続については維持される。
【0089】
続くステップS407では、第1アラート開始処理を実行する。第1アラート開始処理では、リーダ端末30Lのランプ63を赤色の点滅表示(高速点滅表示)に切り替えるとともにリーダ端末30Lのスピーカ64からアラート用の音声(例えば「侵入を検知しました」)を出力する。また、メンバ端末30A~30Cに第1アラート開始コマンドを送信する。メンバ端末30A~30Cではこの第1アラート開始コマンドに基づいて、リーダ端末30Lと同様のアラートを実行する。そして、ステップS408では携帯端末80に侵入検知の情報を通知する第1通知処理を実行する。これにより、携帯端末80を所持しているユーザは監視端末30が見えない位置にいる場合であっても、侵入を検知した旨を把握可能となる。
【0090】
ステップS401の説明に戻り、当該ステップS401にて肯定判定をした場合、すなわちアラート実行中である場合には、ステップS409に進む。ステップS409では、ユーザにより第1解除操作が行われたか否かを判定する。第1解除操作が行われていない場合には、そのまま本侵入監視用処理を終了する。第1解除操作が行われた場合には、ステップS410にて第1アラート停止処理を実行する。第1アラート停止処理では、リーダ端末30Lのランプ63を青色の点灯表示に切り替え且つスピーカ64からのアラート音の出力を停止する。また、メンバ端末30A~30Cに第1アラート停止コマンドを送信する。メンバ端末30A~30Cではこの第1アラート停止コマンドに基づいて、リーダ端末30Lと同様に第1アラートを停止させる。
【0091】
なお、本実施形態においては、携帯端末80及び監視端末30(詳しくはリーダ端末30L)の何れからも第1解除操作が可能となっている。携帯端末80においては第1アラートの解除操作アイコンの操作=第1解除操作となっており、監視端末30においてはユーザが予め登録した順序での設定ボタン61及び連携ボタン62の操作=第1解除操作となっている。因みに、監視端末30の電源をOFFにすることで第1アラートを強制的に終了させることも可能であるが、この場合、電源をOFFにした監視端末30においては第1アラートが停止するものの、電源をOFFにしていない監視端末30においては当該監視端末30の電源がOFFになるまで第1アラートが継続される。
【0092】
その後は、ステップS411にて監視再開処理を実行した後、本侵入監視用処理を終了する。監視再開処理では、各監視端末30における監視用動作(レーザ光の照射や物体の確認等)を再開させる。また、リーダ端末30Lの制御部33では上記移動監視用処理等の監視用処理の制限が解除される。
【0093】
なお、本実施形態では、侵入監視用処理→移動監視用処理→電源監視用処理の順に実行されるが、それらの処理が終了した際に、リーダ端末30Lの制御部33(メモリ)に記憶されている検知結果が消去される。
【0094】
次に、
図19のフローチャートを参照して、移動監視用処理について説明する。
【0095】
移動監視用処理においては先ず、ステップS501にてアラート(警報)を実行中であるかを判定する。アラートを実行中でない場合には、ステップS501にて否定判定をして、ステップS502に進む。
【0096】
ステップS502では、リーダ端末30Lにおける検知結果及びメンバ端末30A~30Cの検知結果を確認する。監視領域BE上の荷物や隣の監視端末30等の既存の物体が当初の位置に留まっている場合には、ステップS503にて肯定判定をして、本侵入監視用処理を終了する。一方、隣の監視端末等の物体が当初の位置から外れた場合にはステップS503にて否定判定をしてステップS504~S506の移動検知時処理を実行する。具体的には、先ずステップS504にて監視中断処理を実行する。これにより、各監視端末30における監視用動作(レーザ光の照射や物体の確認等)が中断される。続くステップS505では、第2アラート開始処理を実行する。第2アラート開始処理では、リーダ端末30Lのランプ63を赤色の点滅表示(低速点滅表示)に切り替えるとともにリーダ端末30Lのスピーカ64からアラート用の音声(例えば「移動を検知しました」)を出力する。また、メンバ端末30A~30Cに第2アラート開始コマンドを送信する。メンバ端末30A~30Cではこの第2アラート開始コマンドに基づいて、リーダ端末30Lと同様のアラートを実行する。そして、ステップS506では携帯端末80に移動検知の情報を通知する第2通知処理を実行する。これにより、携帯端末80を所持しているユーザは監視端末30が見えない位置にいる場合であっても、監視端末30等の移動を検知した旨を把握可能となる。
【0097】
ステップS501の説明に戻り、当該ステップS501にて肯定判定をした場合、すなわちアラート実行中である場合には、ステップS507に進む。ステップS507では、ユーザにより第2解除操作が行われたか否かを判定する。第2解除操作が行われていない場合には、そのまま本移動監視用処理を終了する。第2解除操作が行われた場合には、ステップS508にて第2アラート停止処理を実行する。第2アラート停止処理では、リーダ端末30Lのランプ63を黄色の点灯表示に切り替え且つスピーカ64からのアラート音の出力を停止する。また、メンバ端末30A~30Cに第2アラート停止コマンドを送信する。メンバ端末30A~30Cではこの第2アラート停止コマンドに基づいて、リーダ端末30Lと同様に第2アラートを停止させる。
【0098】
なお、本実施形態においては、携帯端末80及び監視端末30の何れからも第2解除操作が可能となっている。携帯端末80においては第2アラートの解除操作アイコンの操作=第2解除操作となっており、監視端末30においてはユーザが予め登録した順序での設定ボタン61及び連携ボタン62の操作=第2解除操作となっている。因みに、監視端末30の電源をOFFにすることで第2アラートを強制的に終了させることも可能であるが、この場合、電源をOFFにした監視端末30においては第2アラートが停止するものの、電源をOFFにしていない監視端末30においては当該監視端末30の電源がOFFになるまで第2アラートが継続される。
【0099】
続くステップS509では、ユーザに監視領域BEの再設定を促す旨のメッセージを通知すべく通知処理を実行し、本移動監視用処理を終了する。既存の物体が移動等した場合には、設定中の監視領域BEが不適正になり得る。よって、敢えて監視用動作を再開させず、ユーザに監視領域BEの再設定を促すことで、監視機能が適正に発揮されることが可能となる。
【0100】
次に、電源監視用処理について説明する。電源監視用処理では、監視端末30間の通信結果に基づいて、通信が途絶えた監視端末30が無いかを確認する。そして、通信が途絶えた監視端末30がある場合には、監視動作を中断してアラートを実行する。この電源監視用処理について、リーダ端末30Lだけでなくメンバ端末30A~30Cにおいても実行される。つまり、仮にリーダ端末30Lの電源がOFFとなった場合には、メンバ端末30A~30Cにてアラートが実行され、リーダ端末30Lの電源がOFFになった旨はユーザが所持している携帯端末80にも通知される。
【0101】
以上詳述した実施形態によれば、以下の優れた効果が期待できる。
【0102】
本実施形態に示した監視システム20においては、当該監視システム20を構成している複数の監視端末30の位置関係を特定し、特定した位置関係に基づいて各監視端末30の検知領域DEを設定する。それら検知領域DEの組み合わせにより所定の領域PEを囲む監視領域BEが構成されることにより、所定の領域PEへ向けて移動する物体(例えば侵入者)を検知できる。監視端末30の位置関係の特定や検知領域DEの設定が監視システム20側で実行されるため、監視システム20の使用に際してユーザに要求される作業を極力少なくすることができる。つまり、監視端末30の位置関係を監視システム20に教示したり、プログラミング等によって各検知領域DEを細かく設定・調整したりしなくても、ユーザのイメージに近い監視領域BEが簡易に形成される。これは、監視システム20の利便性を向上させる上で好ましい。
【0103】
例えば災害等が発生して避難所10へ避難すべき状況となった場合には、避難所10にて様々な人が生活を送ることになる。このような急場であっても、割り当てられた区画に監視システム20(監視端末30)を設置すれば、割り当てられた区画のセキュリティを簡易に向上させることができる。例えば当該区画から一時的に離れる場合等に監視システム20によって荷物等の盗難を抑制できるため、避難生活におけるユーザのストレスを好適に軽減できる。また、避難所10においてはできるだけ多くの人を受け入れるため、割り当てられる区画については大きさが限られることとなる。このような事情に配慮した場合には、監視システム20を常時設置することで生活の邪魔になる。この点、上述したように監視システム20を簡易に使用可能であれば、必要に応じて監視システム20を都度設置することへのハードルが下がり、監視システム20が生活の邪魔になるといった不都合を生じにくくすることができる。因みに、使用時のユーザの手間を減らすことは、使用開始までの準備時間の短縮だけでなく、作業ミスによる機能不全を抑制する上でも好ましい。
【0104】
本実施形態に示したように、監視端末30の間の区間を通過する物体を当該区間を構成している1の監視端末30によって検知可能となるように検知領域DEを設定することにより、検知領域DEの過度の拡がりを抑えつつ当該区間を通過する物体の検知漏れを抑制できる。また、各監視端末30が監視を担当する区間を別々にすることにより、所定の領域PEを囲むようにして監視領域BEを構成(形成)する上で必要になる監視端末30の数を極力少なくすることができる。
【0105】
本実施形態に示したように、検知領域DEが2つの監視端末30に跨るようにして延びる構成として、監視領域BEが、監視端末30を頂点、当該監視端末30の検知領域DEを辺部とする多角形となるように構成すれば、監視端末30の位置関係から監視領域BEがどの位置にどのよう形状で構成(形成)されるかをユーザはイメージしやすくなる。これは、ユーザのイメージと実際に構成(形成)される監視領域BEとの乖離を抑制し、所定の領域PEを適正に保護し得る構成を実現する上で好ましい。
【0106】
例えば、検知領域DE上に荷物12が位置した状態で監視領域BEが構成(形成)される場合には、当該荷物12によって監視領域BEに死角(ブランク)が生じる要因になる。この点、本実施形態に示したように監視領域BEをユーザがイメージしやすい構成とすれば、検知領域DE上に位置し得る荷物12の見逃しを抑制できる。これは、検知領域DE上に荷物12が位置した状態で監視領域BEが構成(形成)される機会を減らし、監視領域BEに死角が生じることを抑制する上で好ましい。
【0107】
なお、複数の監視端末30を用いて多角形をなす監視領域BEを構成(形成)することは、所定の領域PE全体をカバーする上で実質的に不要な領域が監視領域BEに多く含まれること、すなわち監視領域BEが無駄に大きくなることを抑制する上で有利である。
【0108】
監視端末30を床等に対して完全に固定することが困難な場合(簡易的な設置しかできない場合)には、人が傍を歩いた際の振動が床を介して伝わる等することにより、監視端末30の位置や向きが微妙にずれる可能性がある。仮にこのようなずれによって検知領域DE間に大きな隙間が生じると、監視に漏れが生じる可能性が高くなる。これは、監視システム20に対する信頼性が低下する要因になるため好ましくない。この点、本実施形態に示したように、隣り合う検知領域DEの端部同士が交差するようにして各検知領域DEを設定することにより、監視中に監視端末30の位置や向きが微妙にずれる等した場合であっても、検知領域DE間に大きな隙間が生じることを抑制して、当該ずれを許容し得る。つまり、監視端末30を簡易に設置可能としつつも監視システム20に対する信頼性の低下を好適に抑制できる。
【0109】
本実施形態に示したように、検知領域DEを面状として監視端末30(レーザレーダ装置31)と同じ高さ位置だけでなくそれよりも上側となる位置についても監視可能とすれば、監視端末30の高さをある程度低くしても、検知領域DEを跨いで所定の領域PEへ侵入しようとする行為を難しくすることができる。また、監視端末30の高さを低くすることができれば、当該監視端末30の倒れ防止を目的として監視端末30の支柱32(底面)を過度に大きくする必要がなくなる。これは、監視端末30の設置に係る制約を抑える上で好ましい。特に避難所等では、割り当てられる区間の大きさに限りがあるため、監視端末30の設置に係る制約を抑えることには明確な技術的意義がある。
【0110】
また、本実施形態では1の監視端末30の検知領域DE上に隣の監視端末30が位置するようにして検知領域DEが設定される。そして、当該1の監視端末30によって隣の監視端末30との位置関係の変化が生じたり、当該1の監視端末30の向きがずれたりした場合には、それを監視システム20にて把握し、ユーザに報知する。これにより、仮に監視機能が上手く発揮されない状態となった場合であっても、その状態のまま放置されることを抑制できる。
【0111】
本実施形態に示した監視システム20によれば、レーザレーダ装置31の向きを自動で特定し、その特定した向きに基づいて当該レーザレーダ装置31の向きが自動的に調整されることとなる。ユーザは、監視端末30を設置する際に所定の領域PEを囲むことに注力すればよく、設定される検知領域DEをイメージしながら監視端末30(レーザレーダ装置31)の向きを手で調整するといった作業が不要となっている。これにより、監視システム20を使用する際の手間を減らすことができる。
【0112】
本実施形態ではレーザレーダ装置31の向きを調整するための各種構成(ターンテーブル52や調整機構55)を支柱32に設けることで、監視端末30の重心を極力低くすることができる。これは、設置された監視端末30の位置ずれや倒れを抑制する上で好ましい。位置ずれや倒れを抑制可能となることは、監視端末30の設置に際して例えば支柱32を床面等に固定するといった手間を省く上で好ましい。つまり、本特徴に示す構成によれば、監視端末30の設置作業の簡略化に寄与できる。
【0113】
例えば監視システム20が監視端末30群を撮影するカメラを含む構成を想定した場合、当該構成によって監視端末30の位置関係を特定することは可能である。しかしながら、カメラを用いての位置関係を特定しようとした場合には監視システム20を使用する際にカメラの設置等の予備的な作業が必要になる。つまり、向きの自動調整機能によって監視システム20の使用時の手間を減らすという効果が十分に発揮されなくなると懸念される。この点、本実施形態に示したように、監視端末30の相互の無線通信によってレーザレーダ装置31の向きを特定する構成とすれば、上記カメラの設置等の予備的な作業が不要となり、向きの自動調整機能による手間の削減効果を好適に発揮させることができる。
【0114】
本実施形態に示した監視端末30については内蔵バッテリによって動作する構成とすることで設置位置等に係る制約を緩和している。このような構成では、1の監視端末30のバッテリ残量が0になれば、監視機能を適切に発揮できなくなる。そこで、本実施形態においては、各監視端末30にて物体の判定等を行い、その判定結果をリーダ端末30Lに集約する構成とし、制御負荷がリーダ端末30Lにて極端に大きくなることを抑制している。これは、監視システム20の動作可能時間を極力長くする上で好ましい。
【0115】
<その他の実施形態>
なお、上述した実施形態の記載内容に限定されず例えば次のように実施してもよい。ちなみに、以下の各構成を個別に上記実施形態に対して適用してもよく、一部又は全部を組み合わせて上記実施形態に対して適用してもよい。
【0116】
・上記実施形態では、複数の監視端末30及びスマートフォン等の携帯端末80によって監視システム20を構築した場合について例示したが、携帯端末80を省略し監視端末30によって監視システム20を構築してもよい。すなわち、監視システム20に係る各種操作を監視端末30側にて完結させる構成としてもよい。
【0117】
・上記実施形態に示した監視システム20では、人等を検知した旨(監視結果)を連携中の携帯端末80へ通知する構成としたが、これに限定されるものではない。監視システム20をインターネット等を通じて管理センタ(管理用PC)と通信可能とし、監視結果を当該管理センタへ通知する構成とすることも可能である。
【0118】
・上記実施形態では、監視システム20側で各監視端末30の向きを把握し、それら監視端末30の向き(レーザ光を照射する位置)を自動で調整する構成とした。当該自動調整に係る構成を省略し、各監視端末30の向きの調整についてはユーザが担う構成とすることも可能である。例えば、各監視端末30にレーザ光の照射方向を示す矢印等のマーカを設け、矢印の先に別の監視端末30が位置するようにして各監視端末30を配置すべき旨を説明書等に明示してもよい。すなわち、ユーザが手動で他の監視端末30に照準を合わせる構成を否定するものではない。このような構成については、監視端末30の小型化や低コスト化を実現する上では好ましい。但し、本監視システム20が避難時等の特殊な場面で貸し出し等されることを想定すると、ユーザが本監視システム20に慣れているとは限らない。故に、設置された監視端末30の向きが自動で調整される構成、すなわち監視システム20の使用に熟練や特別な技術が必要でない構成とすることには、監視システム20の使用の心理的・技術的ハードルを低くする上で技術的意義がある。
【0119】
・上記実施形態では、監視端末30の間の位置に監視領域BEを設定したが、これに限定されるものではない。監視端末30の間から所定の領域PEへ侵入する物体を検知することができるのであれば足り、監視端末30によって挟まれた領域に監視領域BEを設定する必要は必ずしもない。例えば、監視端末30によって挟まれた領域から内外にずれて(外れた)位置に監視領域BEを設定することも可能である。
【0120】
また、面状をなす検知領域DE同士が交差する構成に代えて、検知領域DE同士が接する構成としてもよい。なお、検知領域DE同士が交差したり接したりしない構成、すなわち隣の検知領域DEとの間に僅かな隙間(人が侵入不可となる程度の隙間)が生じる構成とすることも可能である。
【0121】
・上記実施形態では、各監視端末30が頂点となるようにして多角形をなす監視領域BEを形成したが、これに限定されるものではない。頂点については監視端末30から外れた位置、すなわち監視端末30の近傍に設定してもよい。但し、監視端末30から外れた位置に頂点が位置する場合には、1の監視端末30によって他の監視端末30を守る機能が低下し得る。故に、セキュリティ機能を高める上では監視端末30が頂点となるようにして監視領域BEを形成することが好ましい。
【0122】
・上記実施形態に示した監視システム20では、1の監視端末30の検知領域DEに他の監視端末30が位置するように各検知領域DEを設定し、検知領域DEにおけるどの位置に他の監視端末30が位置しているかを記憶し、当該他の監視端末30が記憶されている位置から移動した場合には、ユーザにその旨を報知する構成とした。これは、監視端末30の持ち去り等を抑制する上で好ましい。監視端末30の移動を特定するための具体的構成については任意であり、例えば以下のように変更してもよい。すなわち、監視端末30の底部等に床等の設置対象と当接するようにして圧力センサを配設し、この圧力センサからの検知信号の変化に基づいて当該監視端末30の移動を特定する構成としてもよい。
【0123】
・上記実施形態では、監視領域BEによって所定の領域PEを四方から覆う構成とし、当該所定の領域PEを上方から見て監視領域BEを閉じた形状(環状)とする場合について例示したが、これに限定されるものではない。所定の領域PEを囲むようにして監視領域BEが形成されるであれば足り、当該監視領域BEについては当該所定の領域PEを上方から見て必ずしも閉じている必要はない。すなわち、監視領域BEについては一画(四方の何れか)が開放されていてもよい。
【0124】
・上記実施形態では、所定の領域PEを上方から見て4つの監視端末30により四角形をなす監視領域BEを形成する構成について例示したが、所定の領域PEを上方から見て3つの監視端末30により三角形をなす監視領域BEを形成する構成としたり、5つの監視端末30により五角形をなす監視領域BEを形成する構成としたりすることも可能である。また、n個(n=6,7,8・・・)の監視端末30を用いて、所定の領域PEを上方から見てn角形の境界を形成する構成としてもよい。
【0125】
・監視端末30の増設を可能としてもよい。設置された監視端末30による監視領域BEが決定済みとなっている状況下にて監視端末30を追加する際には、監視端末30の追加によって監視領域BEを再決定する必要が生じる。例えば、監視領域BE及び各監視端末30の担当区間について上記シーケンスをやり直す構成としてもよいし、決定済みの監視領域BE及び担当区間を監視端末30の追加位置に応じて一部変更する構成としてもよい。
【0126】
・上記実施形態では、所定の領域PEを上方から見て三角形をなす監視領域BEであれば形成し得る場合に、当該三角形をなす監視領域BEを形成する構成としたが、これに限定されるものではない。n個の監視端末30でn角形をなす監視領域BEを形成できない場合には、監視領域BEの形成を不可としてもよい。このような構成とする場合には、携帯端末80のディスプレイやスピーカ64から監視領域BEを形成するための条件が成立していない旨をユーザに通知して、監視端末30の再配置を促す構成とするとよい。
【0127】
・上記実施形態では、3つの監視端末30によって囲まれた領域(仮想三角形)内に1の監視端末30が位置する場合、すなわち形成可能な監視領域BEの候補が複数存在する場合には、監視端末30の再設置(移動)をユーザに促す構成としたが、これを以下のように変更してもよい。すなわち、形成可能な監視領域BEの候補が複数存在する場合には、現在の監視端末30の位置関係から想定される監視領域BEの候補をユーザに報知し(例えば携帯端末80のディスプレイに表示し)、何れの候補で監視領域BEを形成するかの選択をユーザに促し、ユーザの選択に応じて形成する監視領域BEを決める構成としてもよい。
【0128】
なお、上記実施形態では、各監視端末30の並びを順不同としたが、予め設定された並びとなるようにして配置された場合に監視領域BEが設定可能となる構成としてもよい。
【0129】
・上記実施形態に示した監視システム20では、各メンバ端末30A~Cにて担当区間における物体の有無を判定し、その判定結果をリーダ端末30Lに送信する構成としたが、これを以下のように変更してもよい。すなわち、物体の有無を判定する前の受光情報等を各メンバ端末30A~30Cからリーダ端末30Lに送信し、当該リーダ端末30Lにて各担当区間における物体の有無を判定する構成としてもよい。また、物体の有無を判定する前の受光情報等を各メンバ端末30A~30Cから携帯端末80に送信し、携帯端末80にて各担当区間における物体の有無を判定する構成としてもよい。
【0130】
・上記実施形態に示した監視システム20においては、レーザ光の照射領域LEが面状をなす走査型のレーザレーダ装置31を複数有し、それら面状をなす照射領域LEの組合せによって監視領域BEを形成する構成としたが、これに限定されるものではない。レーザ光の照射領域が線状となる非走査型のレーザレーダ装置を複数有し、それら線状をなす照射領域の組合せによって監視領域を形成してもよい。因みに、レーザレーダ装置31については、一部にレーザ光が透過する窓パネル43を設け、この窓パネル43が向く方向をレーザレーダ装置31の「正面」としが、これに限定されるものではない。例えば、窓パネル43を中心軸線CL1を中心とする環状に形成した上でレーザレーダ装置31の「正面」を任意に設定可能(具体的には、他のレーザレーダ装置31との位置関係によって正面が自動的に決定される構成)としてもよい。このような構成によれば、監視領域BEを設定する上で、ユーザがレーザレーダ装置31の向きを気にする必要がなくなり、設置作業を一層簡易なものとすることができる。これは、レーザレーダ装置31の向きが適正でない等の理由でレーザレーダ装置31の設置のやり直しが発生することを抑制する上で好ましい。
【0131】
・上記実施形態では、極近距離に複数の監視端末30を集めた状態で何れかの監視端末30の設定ボタン61が操作されることでそれら監視端末30がグループ化される構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、監視端末30の製造時にグループ識別用の情報(例えば識別用ID)を付与することでグループを構成する監視端末30を事前に決定しておく構成としてもよい。避難所等にて本監視システム20が複数使用される場面を想定すれば、グループ分けによってシステム間での監視端末30の混同を抑制することにより、形成される監視領域BEがユーザの意図から外れたものになることを抑制できる。但し、監視端末30の管理を容易にしたり、グループ分けの自由度を向上させたり、故障した監視端末30の入れ替えをしたりする上では、ユーザが監視システム20を使用する際にグループを設定可能な構成とすることが好ましい。
【0132】
なお、グループ内でリーダとなる監視端末30を決めるための具体的構成については、上記設定ボタン61に限定されるものではない。例えば、監視端末30毎に製造番号等の識別番号が付与されている場合には、監視システム20側で識別番号を比較し、比較結果に基づいてリーダ端末を自動的に決める構成としてもよい。例えば、識別番号が最も若いものをリーダ端末としたり、ランダムでリーダ端末を決めたりしてもよい。
【0133】
・上記実施形態では、携帯端末80(ユーザ)が監視領域BE又はその近傍(所定距離内)に位置している場合には、ユーザが監視に引っ掛かったとしてもアラートが実行されない構成とした。これを変更し、携帯端末80を所持しているユーザが監視領域BE又はその近傍(所定距離内)にいる場合には、監視自体を行わない構成としてもよい。例えば、レーザ光の照射を行わない構成や、物体の有無の判定を行わない構成、物体の有無の判定結果(検知結果)を無効とする構成とするとよい。なお、携帯端末80(ユーザ)が監視領域BE又はその近傍(所定距離内)に位置している場合に代えて又は加えて携帯端末80が監視領域BEによって囲まれた領域(所定の領域PE)に位置している場合に、監視を行わない構成としてもよい。
【0134】
また、
図20に例示しているように、携帯端末80と各監視端末30との位置関係を特定し、監視領域BEの各担当区間うち携帯端末80が最寄りとなっている区間についてのみ監視を行わない構成とし、それ以外の区間では監視を続ける構成とすることも可能である。
【0135】
・上記実施形態に示した監視システム20では、何れかの監視端末30にて人等を検知した場合に当該監視端末30にて警報を実施する構成としたが、これを変更し、何れかの監視端末30にて人等を検知した場合には当該監視端末30を含む複数の監視端末30(例えば、当該監視端末30との間に上記区間を形成している2つの監視端末30を少なくとも含む複数の監視端末30、又は、監視システム20を構成している全ての監視端末30)にて警報を実施する構成としてもよい。
【0136】
・上記実施形態に示した監視システム20では、監視端末30と携帯端末80とが直接通信可能となるように無線接続される構成について例示したが、監視端末30と携帯端末80との通信を実現するための具体的構成については任意である。例えば、監視端末30及び携帯端末80がインターネットを通じて監視用のサーバに各々接続され、これらインターネット及びサーバを介して監視端末30及び携帯端末80を通信させる構成としてもよい。
【0137】
・レーザレーダ装置31の高さ位置をユーザが任意に変更可能(調整可能)な構成としてもよい。例えば、監視端末30の支柱32を伸縮式とするとよい。
【0138】
・監視端末30の設置に係る構成については任意である。例えば、屋外で監視システム20を使用する場合には、杭を用いて地面に固定する構成としてもよい。また、支柱32の下端をペグ状としたり、支柱32の下端部に取り付け可能なペグ状のアタッチメントを設けたりして、監視端末30を地面に差し込んで固定するようにしてもよい。
【0139】
・監視端末30を屋外に設置する場合には、地面付近では風等に揺れる草等を誤検知する可能性が生じる。そこで、監視システム20では、屋外用の監視モードを設け、ユーザにより当該監視モードが指定されている場合には、各監視端末30の検知領域DEを設定する際に、地面から所定の高さ位置までは検知領域DEに含めないように除外する構成としてもよい。また、ユーザにより当該監視モードが指定されている場合には、地面から所定の高さまでの領域で物体を検知してもそれを無効とする構成としてもよい。
【0140】
・上記実施形態では、監視システム20にて各監視端末30の位置関係を自動で特定する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、ユーザが各監視端末30の位置情報を入力する構成(例えば、ユーザがアプリケーション上で監視端末30の座標を手動で入力する構成)や位置関係の特定をユーザと共同で行う構成(例えば、監視端末30の位置関係を特定可能な写真等の画像のユーザがシステム側に提供し、システム側では当該画像に基づいて位置関係を特定する構成)を否定するものでない。
【0141】
・レーザレーダ装置31から照射されるレーザ光については視認不可(不可視)とする必要は必ずしもなく、レーザ光を視認可(可視)とすることも可能である。
【0142】
・上記実施形態に示した監視端末30はレーザレーダ装置31を具備する構成としたが、当該レーザレーダ装置31に代えて担当区間を撮影するカメラを具備する構成とすることも可能である。
【0143】
・上記実施形態に示した監視システム20については、避難所だけでなく、例えばキャンプ場やフリーマーケットの区画、工事現場等に設置することも可能である。また、監視システム20によって外部から所定の領域PEへの人等の移動(侵入)を監視する構成に代えて、監視システム20によって所定の領域PEから外部への人等の移動(離脱)を監視する構成としてもよい。例えば、住宅の庭等の敷地に監視システム20を設置し、当該敷地に対象(例えば高齢者や子供)が留まっているかを監視する(見守る)構成としてもよい。
【0144】
<上記実施形態から抽出される発明群について>
以下、上記実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0145】
特徴1.物体を検知可能な検知ユニット(監視端末30)を複数(例えば4つ)備え、それら検知ユニットが所定の領域(所定の領域PE)を囲むようにして設置される監視システム(監視システム20)であって、
設置された各前記検知ユニットの位置関係を特定する特定部(制御部33における位置特定機能)と、
前記特定部により特定された前記位置関係に基づいて、前記検知ユニット毎に検知領域(検知領域DE)を設定する設定部(制御部33にて検知領域DEを設定する機能)と
を備え、
前記検知ユニットの前記検知領域の組み合わせにより前記所定の領域を囲む監視領域(監視領域BE)が構成される監視システム。
【0146】
本特徴に示す監視システムにおいては、当該監視システムを構成している複数の検知ユニットの位置関係を特定し、特定した位置関係に基づいて各検知ユニットの検知領域を設定する。それら検知領域の組み合わせにより所定の領域を囲む監視領域が構成(形成)されることにより、所定の領域へ向けて移動する物体(例えば侵入者)や所定の領域から出ようとする物体を検知できる。検知ユニットの位置関係の特定や検知領域の設定が監視システム側で実行されるため、監視システムの使用に際してユーザに要求される作業を極力少なくすることができる。つまり、検知ユニットの位置関係を監視システムに教示したり、プログラミング等によって各検知領域を細かく設定・調整したりしなくても、ユーザのイメージに近い監視領域が簡易に構成(形成)される。これは、監視システムの利便性を向上させる上で好ましい。
【0147】
例えば災害等が発生して体育館等の避難所に避難すべき状況となった場合には、避難所にて様々な人が生活を送ることになる。このような急場であっても、割り当てられた区画に監視システム(検知ユニット)を設置すれば、割り当てられた区画のセキュリティを簡易に向上させることができる。例えば当該区画から一時的に離れる場合等に監視システムによって荷物等の盗難を抑制できるため、避難生活におけるユーザのストレスを好適に軽減できる。また、避難所においてはできるだけ多くの人を受け入れるため、割り当てられる区画については大きさが限られることとなる。このような事情に配慮した場合には、監視システムを常時設置することで生活の邪魔になる。この点、上述したように監視システムを簡易に使用可能であれば、必要に応じて監視システムを都度設置することへのハードルが下がり、監視システムが生活の邪魔になるといった不都合を生じにくくすることができる。因みに、使用時のユーザの手間を減らすことは、使用開始までの準備時間の短縮だけでなく、作業ミスによる機能不全を抑制する上でも好ましい。
【0148】
なお、本特徴においては「所定の領域を囲む」ようにして「監視領域」が構成(形成)される点を明示しているが、「監視領域」については必ずしも閉じている必要はなく、部分的に開いている構成(すなわち検知領域間に隙間が生じる構成)についても含む。詳しくは、当該隙間を通じた人や動物等の移動が困難又は不可となる程度の大きさである場合を含む。
【0149】
特徴2.各前記検知ユニットの前記検知領域は、1の前記検知ユニットと他の前記検知ユニットの間の区間を通過する物体を当該1の前記検知ユニットによって検知可能となるように各々設定される特徴1に記載の監視システム。
【0150】
本特徴に示すように、検知ユニットの間の区間を通過する物体を当該区間を構成している1の検知ユニットによって検知可能となるように検知領域を設定することにより、検知領域の過度の拡がりを抑えつつ当該区間を通過する物体の検知漏れを抑制できる。
【0151】
特徴3.前記設定部は、各前記検知ユニットが監視を担当する前記区間が重複しないようにしてそれら検知ユニットの検知領域を各々設定する特徴2に記載の監視システム。
【0152】
各検知ユニットが監視を担当する区間を別々にすることにより、所定の領域を囲むようにして監視領域を構成(形成)する上で必要になる検知ユニットの数を極力少なくすることができる。
【0153】
特徴4.前記検知ユニットの前記検知領域は、当該検知ユニットと他の前記検知ユニットとを結ぶ仮想直線に沿うようにして延びている特徴1乃至特徴3のいずれか1つに記載の監視システム。
【0154】
本特徴に示す構成によれば、ユーザは、構成(形成)される監視領域を検知ユニットの位置関係からイメージしやすくなる。これはユーザのイメージと実際に構成(形成)される監視領域との乖離を抑制し、所定の領域を適正に保護し得る構成を実現する上で好ましい。
【0155】
特に、他者への配慮等を目的として監視領域を不可視となるように構成しようとした場合には、ユーザは構成(形成)された監視領域を目視で直接確認することはできない。故に、上述したように、構成(形成)される監視領域をイメージしやすい構成とすることには技術的意義がある。
【0156】
特徴5.各前記検知領域は、2つの前記検知ユニットに跨るようにして延びており、
前記監視領域は、上方から見て、前記検知ユニット又は前記検知ユニットの近傍を頂点とし、前記検知領域を辺部とする多角形をなす特徴4に記載の監視システム。
【0157】
本特徴に示すように、検知領域が2つの検知ユニットに跨るようにして延びる構成として、監視領域が、検知ユニット又はその近傍を頂点とし検知領域を辺部とする多角形となるように構成すれば、検知ユニットの位置関係から監視領域がどの位置にどのよう形状で構成(形成)されるかをユーザはイメージしやすくなる。これは、特徴4に示した効果を好適に発揮させる上で好ましい。
【0158】
例えば、検知領域上に荷物が位置した状態で監視領域が構成(形成)される場合には、当該荷物によって監視領域に死角(ブランク)が生じる要因になる。この点、本特徴に示すように監視領域をユーザがイメージしやすい構成とすれば、検知領域上に位置し得る荷物の見逃しを抑制できる。これは、監視領域上に荷物が位置した状態で監視領域が構成(形成)される機会を減らし、監視領域に死角が生じることを抑制する上で好ましい。
【0159】
なお、複数の検知ユニットを用いて多角形をなす監視領域を構成(形成)することは、所定の領域全体をカバーする上で実質的に不要な領域が監視領域に多く含まれること、すなわち監視領域が無駄に大きくなることを抑制する上で有利である。
【0160】
因みに、本特徴における「前記監視領域は、上方から見て、前記検知ユニット又は前記検知ユニットの近傍を頂点とし、前記検知領域を辺部とする多角形をなす」とは、監視領域=多角形となる場合だけでなく、多角形の辺部となる検知領域の一部が当該辺部からはみ出している場合を含む。
【0161】
特徴6.前記設定部は、前記検知ユニットの前記検知領域の一部が、他の前記検知ユニットの上方に位置するようにして設定される特徴1乃至特徴5のいずれか1つに記載の監視システム。
【0162】
検知領域に他の検知ユニットの上方領域が含まれ構成とすれば、検知ユニットの上方を跨いで所定の領域へ侵入するといった行為を見逃しにくくなる。
【0163】
特徴7.前記設定部は、1の前記検知ユニットの前記検知領域の端部と他の前記検知ユニットの前記検知領域の端部とが交差する又は接するようにしてそれら検知領域を設定する特徴1乃至特徴6のいずれか1つに記載の監視システム。
【0164】
検知ユニットを床等に対して完全に固定することが困難な場合(簡易的な設置しかできない場合)には、床等を介して伝わる振動等によって検知ユニットの位置や向きが微妙にずれる可能性がある。仮にこのようなずれによって検知領域間に大きな隙間が生じると、物体の検知漏れが発生し得る。これは、監視システムに対する信頼性を低下させる要因になるため好ましくない。この点、本特徴に示すように、検知領域の端部同士が交差する又は接するようにして各検知領域を設定する構成とすれば、監視中に検知ユニットの位置や向きが微妙にずれる等した場合であっても、検知領域間に大きな隙間が生じることを抑制して、当該ずれを許容可能な構成を実現できる。つまり、検知ユニットを簡易に設置可能としつつも監視システムに対する信頼性の低下を抑制できる。
【0165】
特徴8.前記検知ユニットの検知領域は、前記所定の領域側を向く面状をなす特徴1乃至特徴7のいずれか1つに記載の監視システム。
【0166】
所定の領域側を向く面状の検知領域によって所定の領域を囲む構成とすることにより、検知ユニットの間を通過する物体の見逃しを好適に抑制できる。
【0167】
特徴9.前記検知ユニットの検知領域は、当該検知ユニットと同じ高さ位置及び当該高さ位置よりも上側となる位置を含む面状をなしている特徴8に記載の監視システム。
【0168】
本特徴に示すように、検知領域を面状として検知ユニットと同じ高さ位置だけでなくそれよりも上側となる位置についても監視可能とすれば、検知ユニットの高さ位置をある程度低くしても、検知領域を跨いで所定の領域へ侵入しようとする行為を難しくすることができる。また、検知ユニットの高さ位置を低くすることができれば、当該検知ユニットの倒れ防止を目的として検知ユニットの脚部分(底面)を過度に大きくする必要がなくなる。これは、検知ユニットの設置に係る制約を抑える上で好ましい。特に避難所等では、割り当てられる区間の大きさに限りがあるため、監視端末の設置に係る制約を抑えることには技術的意義がある。
【0169】
特徴10.複数の前記検知ユニットとして、第1検知ユニット及び第2検知ユニットを含み、
前記設定部は、前記第1検知ユニットの検知領域上に前記第2検知ユニットが位置するようにして当該第1検知ユニットの検知領域を設定し、
前記第1検知ユニットと前記第2検知ユニットとの位置関係の変化及び前記第1検知ユニットの向きの変化の少なくとも何れかが発生している旨を前記第1検知ユニットによる検知情報に基づいて判定する判定部(制御部33にて移動監視用処理を実行する機能)を備えている特徴1乃至特徴9のいずれか1つに記載の監視システム。
【0170】
複数の検知ユニットの検知領域の組み合わせによって監視領域を構成(形成)する場合には、監視中に検知ユニットの位置関係や検知ユニットの向きが変化することで監視機能が適正に発揮されなくなると懸念される。上述したように検知ユニットの簡易な設置(例えば床に置くだけ)を実現しようとすれば、このような懸念は大きくなる。この点、本特徴に示すように、検知ユニット(第1検知ユニット)による検知情報に基づいて位置関係(第1検知ユニット及び第2検知ユニットの位置関係)の変化や向き(第1検知ユニット)の変化を把握する構成とすれば、仮に位置関係や向きの変化によって監視機能が上手く発揮されない状態となった場合であっても、それを見落としにくくなる。なお、例えば「監視システムにて位置関係の変化や向きの変化を把握した場合に、それをユーザに報知する報知手段」を設けるとよい。
【0171】
特徴11.複数の前記検知ユニットとして、第1検知ユニット及び第2検知ユニットを含み、
前記設定部は、前記第1検知ユニットの検知領域上に前記第2検知ユニットが位置するようにして当該第1検知ユニットの検知領域を設定し、
前記特定部により特定された前記第1検知ユニット及び前記第2検知ユニットの位置関係と、前記第1検知ユニットによる検知情報とに基づいて、前記第1検知ユニットと前記第2検知ユニットとの位置関係が維持されているかを判定する判定部(制御部33にて移動監視用処理を実行する機能)を備えている特徴1乃至特徴10のいずれか1つに記載の監視システム。
【0172】
複数の検知ユニットの検知領域の組み合わせによって監視領域を形成する場合には、監視中に検知ユニットの位置関係が変化することで監視機能が適正に発揮されなくなると懸念される。上述したように検知ユニットの簡易な設置(例えば床に置くだけ)を実現しようとすれば、このような懸念は大きくなる。この点、本特徴に示すように、特定部により特定された位置関係と第1検知ユニットによる検知情報とに基づいて、第1検知ユニットと第2検知ユニットとの位置関係の変化を監視する構成とすれば、仮に位置関係の変化によって監視機能が上手く発揮されない状態となった場合であっても、それを見落としにくくなる。なお、例えば「監視システムにて位置関係の変化を把握した場合に、それをユーザに報知する報知手段」を設けるとよい。
【0173】
特徴12.前記検知ユニットは、レーザ光を照射する照射部(発光部46)と、物体により反射された前記レーザ光を受光する受光部(受光部47)とが設けられたレーザレーダ装置(レーザレーダ装置31)を有し、前記受光部におけるレーザ光の受光結果に基づいて物体を検知する構成となっており、
前記特定部により特定された前記検知ユニットの位置関係に基づいて、前記レーザレーダ装置の向きを調整する調整部(ターンテーブル52及び調整機構55)を備えている特徴1乃至特徴11のいずれか1つに記載の監視システム。
【0174】
本特徴に示す構成によれば、レーザレーダ装置の向きが自動的に調整されることとなる。ユーザは、検知ユニットを設置する際に所定の領域を囲むことに注力すればよく、設定される検知領域をイメージしながら検知ユニット(レーザレーダ装置)の向きを手で調整するといった作業が不要となる。これにより、監視システムを使用する際の手間を減らすことができる。
【0175】
特徴13.前記設定部は、1の前記検知ユニットと他の前記検知ユニットの間の区間を通過する物体を当該1の前記検知ユニットによって検知可能となり且つ各前記検知ユニットが監視を担当する前記区間が重複しないようにして各前記検知ユニットの前記検知領域を各々設定する構成となっており、
前記調整部は、各前記検知ユニットが監視を担当する各前記区間へ前記レーザ光が照射されるように、それら検知ユニットの向きを各々調整する特徴12に記載の監視システム。
【0176】
本特徴に示すように、各検知ユニットの向きを、それら検知ユニットが監視を担当する区間へレーザ光が照射されるようにして調整することにより、特徴12に示した思想を好適に具現化できる。
【0177】
なお、本特徴に示す構成を「前記設定部は、1の前記検知ユニットと他の前記検知ユニットの間の区間を通過する物体を当該1の前記検知ユニットによって検知可能となり且つ各前記検知ユニットが監視を担当する前記区間が重複しないようにして各前記検知ユニットの前記検知領域を各々設定する構成となっており、前記調整部は、前記検知ユニットからの前記レーザ光が当該検知ユニットが監視を担当している前記区間を隔てて当該検知ユニットと対峙している他の前記検知ユニットへ照射されるように、前記検知ユニットの向きを調整する特徴11に記載の監視システム。」としてもよい。
【0178】
特徴14.前記検知ユニットは、前記レーザレーダ装置を支持する支持部(支柱32)を有し、
前記調整部は、
前記支持部に設けられ、前記レーザレーダ装置が固定されたターンテーブル(ターンテーブル52)と、
前記支持部に設けられ、前記ターンテーブルを回動させる駆動部(モータ56)と
を有している特徴12又は特徴13に記載の監視システム。
【0179】
本特徴に示すようにレーザレーダ装置の向きを調整するための構成(ターンテーブルや駆動部)を支持部に設けることで、検知ユニットの重心を極力低くすることができる。これは、設置された検知ユニットの位置ずれや倒れを抑制する上で好ましい。位置ずれや倒れを抑制可能となることは、検知ユニットの設置に際して例えば支持部を床面等に固定するといった手間を省く上で好ましい。つまり、本特徴に示す構成によれば、検知ユニットの設置作業の簡略化に寄与できる。
【0180】
特徴15.前記検知ユニットは、相互に無線通信可能となっており、
前記特定部は、前記検知ユニット間で電波の送受信を行った場合の電波の受信結果に基づいて前記レーザレーダ装置の向きを特定する特徴12乃至特徴14のいずれか1つに記載の監視システム。
【0181】
例えば監視システムが検知ユニット群を撮影するカメラを含む構成を想定した場合、当該構成によって検知ユニットの位置関係を特定することは可能である。しかしながら、カメラを用いての位置関係を特定しようとした場合には監視システムを使用する際にカメラの設置等の予備的な作業が必要になる。つまり、向きの自動調整機能によって監視システムの使用時の手間を減らすという効果が十分に発揮されなくなると懸念される。この点、本特徴に示すように、検知ユニットの相互の無線通信によってレーザレーダ装置の向きを特定する構成とすれば、上記カメラの設置等の予備的な作業が不要となり、向きの自動調整機能による手間の削減効果を好適に発揮させることができる。
【0182】
特徴16.前記検知ユニットを少なくとも4つ備え、
前記特定部は、それら前記検知ユニットから3つの検知ユニットの組合せを選択し且つ前記3つの検知ユニットを頂点とする三角形の内角を頂点毎に算出する処理を、選択し得る全ての前記組合せについて実行し、その処理結果に基づいて各前記検知ユニットの位置関係を特定する構成となっており、
各前記頂点を結ぶ複数の仮想直線のうち各前記頂点にて最大の内角を構成する仮想直線に沿うようにして各前記検知ユニットの前記検知領域が設定される特徴1乃至特徴15のいずれか1つに記載の監視システム。
【0183】
本特徴に示すように4つ以上の検知ユニットを用いて監視領域を構成(形成)する場合には、所定の領域を囲むようにしてそれら検知ユニットが配置されることで以下の状態となる。すなわち、上記所定の領域の外縁に位置する第1の区間と、所定の領域を横切る第2区間とが混在した状態となる。監視領域を構成(形成)する上ではこれら第1の区間と第2の区間とを監視システム側で区別する必要がある。言い換えれば、特徴1に示したように、所定の領域を囲むようにして監視領域を構成(形成)するには、第1の区間を各検知ユニットの担当区間とする必要がある。
【0184】
本特徴に示すように、検知ユニット群から3つの検知ユニットの組合せを選択し且つ当該3つの検知ユニットを頂点とする三角形の内角を頂点毎に算出する処理を、選択し得る全ての組合せについて実行し、その処理結果に基づいて検知ユニットの位置関係を特定した上で、各頂点を結ぶ仮想直線のうち各頂点にて最大の内角を構成する仮想直線に沿うようにして監視領域が構成(形成)されるように各検知領域が設定すれば、上述した各第1の区間を各検知ユニットの担当区間とする構成、すなわち第2の区間を除外する構成を好適に実現できる。
【0185】
特徴17.前記検知ユニットを少なくとも4つ備え、
上方から見て3つの前記検知ユニットが直線上に並んでいる場合には、前記監視領域が、それら3つのうち中央に位置している前記検知ユニットを除いた2つと、他の前記検知ユニットとを頂点とする多角形となるようにして各前記検知ユニットの検知領域が設定される特徴1乃至特徴16のいずれか1つに記載の監視システム。
【0186】
ユーザが検知ユニットを設置する場合には、意図的又は偶発的に3つの検知ユニットが直線上に並ぶ特殊な位置関係となる可能性がある。このような特殊な位置関係においても、3つの検知ユニットのうち中央に位置している検知ユニットを頂点としないようにして、多角形をなす監視領域を構成(形成)することにより、検知ユニットの再配置等のやり直しを促す構成と比べてユーザの手間を減らすことができる。
【0187】
特徴18.前記特定部は、それら前記検知ユニットから3つの検知ユニットの組合せを選択し且つ前記3つの検知ユニットを頂点とする三角形の内角を頂点毎に算出する処理を、選択し得る全ての前記組合せについて実行し、その処理結果に基づいて各前記検知ユニットの位置関係を特定する構成となっており、
前記算出した内角が、0°及び180°の何れかとなっているかを判定する特徴17に記載の監視システム。
【0188】
特徴17に示した特殊な位置関係となっていることを監視システム側で把握するには、本特徴に示す様に、検知ユニット群から3つの検知ユニットの組合せを選択し且つ当該3つの検知ユニットを頂点とする三角形の内角を頂点毎に算出する処理を、選択し得る全ての組合せについて実行し、算出した内角の何れかが0°及び180°の何れかとなっているかを判定するとよい。3つの検知ユニットが直線上に並んでいる場合には、それら3つの検知ユニットを頂点とする三角形は実際には形成不可、すなわち各内角は0°及び180°の何れかとなる。よって、本特徴に示す構成によれば、上述した特殊な位置関係となっていることを監視システム側で把握可能となる。
【0189】
特徴19.3つの前記検知ユニットを頂点とする仮想三角形(仮想三角形FT)の内部に他の前記検知ユニットが位置している場合には前記監視領域の構成を留保又は規制する特徴1乃至特徴18のいずれか1つに記載の監視システム。
【0190】
ユーザが検知ユニットを設置する場合には、意図的又は偶発的に3つの検知ユニットを頂点とする仮想三角形の内部に他の検知ユニットが位置する特殊な位置関係となる可能性がある。このような特殊な位置関係においては、所定の領域を囲むようにして監視領域を構成(形成)する場合の候補が複数存在することとなる。それらの候補の何れかがユーザがイメージしている監視領域に相当する可能性が高いものの、それとは異なる候補について監視領域が構成(形成)された場合には、セキュリティ機能が上手く発揮されなくなると懸念される。これは、監視システムの信頼性を低下させる要因になるため好ましくない。そこで、本特徴に示すように、3つの検知ユニットを頂点とする仮想三角形の内部に他の検知ユニットが位置している場合には監視領域の構成(形成)を留保又は規制する構成とすることで、監視システムの信頼性の低下を抑制できる。このような特殊な位置関係となっている場合には、ユーザに検知ユニットの再配置(やり直し)を促したり、候補の選定を促したりするとよい。
【0191】
特徴20.前記特定部は、それら前記検知ユニットから3つの検知ユニットの組合せを選択し且つ前記3つの検知ユニットを頂点とする三角形の内角を頂点毎に算出する処理を、選択し得る全ての前記組合せについて実行し、その処理結果に基づいて各前記検知ユニットの位置関係を特定する構成となっており、
前記算出した内角を頂点毎に合算し、合算した値が360°となっているかを判定する特徴19に記載の監視システム。
【0192】
特徴19に示した特殊な位置関係となっていることを監視システム側で把握するには、本特徴に示す様に、検知ユニット群から3つの検知ユニットの組合せを選択し且つ当該3つの検知ユニットを頂点とする三角形の内角を頂点毎に算出する処理を、選択し得る全ての組合せについて実行し、算出した内角を頂点毎に合算し、合算した値が360°となっているかを判定するとよい。3つの検知ユニットを頂点とする仮想三角形の内部に1の検知ユニットが位置している場合には、当該検知ユニットを頂点とする内角を合算することで360°となる。よって、本特徴に示すように、算出した内角を頂点毎に合算し、合算した値が360°となっているかを判定することにより、検知ユニットが上述した特殊な位置関係となっていることを監視システム側で把握可能となる。
【符号の説明】
【0193】
10…避難所、12…荷物、20…監視システム、30…監視端末、31…レーザレーダ装置、32…支柱、33…制御部、34…通信部、45…光学機構、46…発光部、47…受光部、55…調整機構、63…ランプ、64…スピーカ、70…発信部、71~73…受信部、80…携帯端末、BE…監視領域、DE…検知領域、PE…所定の領域、SE1~SE6…区間。