(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067817
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】呈示装置、誘導システム、及び杖
(51)【国際特許分類】
G09B 21/00 20060101AFI20240510BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240510BHJP
A45B 3/00 20060101ALI20240510BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20240510BHJP
G08G 1/005 20060101ALI20240510BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20240510BHJP
G09B 29/00 20060101ALN20240510BHJP
A61H 3/06 20060101ALN20240510BHJP
【FI】
G09B21/00 B
G06F3/01 560
A45B3/00 B
G09B29/10 A
G08G1/005
G01C21/26 P
G09B29/00 A
A61H3/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178162
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩三
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
3B104
4C046
5E555
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB22
2C032HC08
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2C032HD16
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5E555AA44
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5H181FF14
(57)【要約】
【課題】呈示のバリエーションを多くすることができる呈示装置、誘導システム、及び杖を提供する。
【解決手段】呈示装置11は、物品2のグリップ部9に可動可能に設けられた可動部12を備える。可動部12は、柱状のグリップ部9に外周面に嵌合されたリング13である。可動部12は、グリップ部9に対する規定の方向である第1方向A1と、第1方向A1に対して異なる向きの第2方向A2と、に可動する。呈示装置11は、第1方向A1及び第2方向A2の少なくとも一方の方向に可動部12を動かすことにより、グリップ部9を握るユーザの手に対し、触覚による呈示を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが手で握って使用する物品のグリップ部を介して、触覚による呈示をユーザに行う呈示装置であって、
前記グリップ部に対する規定の方向である第1方向と、前記第1方向に対して異なる向きの第2方向と、に可動するように前記グリップ部に設けられた可動部と、
前記可動部を前記第1方向及び前記第2方向へ動かす駆動部と、
前記第1方向及び前記第2方向の少なくとも一方の方向に前記可動部を前記駆動部によって動かすことにより、前記呈示の動作を制御する制御部と、を備えた呈示装置。
【請求項2】
前記可動部は、柱状の前記グリップ部に外周面に嵌合されたリングである、請求項1に記載の呈示装置。
【請求項3】
前記第1方向は、前記グリップ部の軸に沿ったスライド方向であり、
前記第2方向は、柱状の前記グリップ部の軸回りに沿った回転方向である、請求項1に記載の呈示装置。
【請求項4】
前記呈示を実行するのに必要なアプリケーションが登録された端末と通信する通信部を備え、
前記制御部は、前記呈示の仕方に係る呈示データを前記端末から前記通信部で受信した場合、前記呈示データに基づき前記駆動部を制御することにより、前記呈示を実行する、請求項1に記載の呈示装置。
【請求項5】
前記呈示は、ユーザにより設定された目的地への移動方向を誘導する誘導呈示を含む、請求項1に記載の呈示装置。
【請求項6】
前記呈示は、ユーザに注意を促す喚起呈示を含む、請求項5に記載の呈示装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1方向への前記可動部の動作と、前記第2方向への前記可動部の動作と、前記可動部を前記第1方向及び前記第2方向に同時に動かす動作とにより、前記呈示を実行する、請求項1に記載の呈示装置。
【請求項8】
ユーザが手で握って使用する物品を介して、ユーザを目的地へ誘導する誘導システムであって、
前記物品のグリップ部に対して触覚による呈示を行う呈示装置と、
前記呈示を実行するのに必要なアプリケーションが登録された端末に設けられ、前記目的地への案内に係る呈示データを前記呈示装置に通知する通知部と、を備え、
前記呈示装置は、
前記呈示データを受信する通信部と、
前記グリップ部に対する規定の方向である第1方向と、前記第1方向に対して異なる向きの第2方向と、に可動するように前記グリップ部に設けられた可動部と、
前記可動部を前記第1方向及び前記第2方向へ動かす駆動部と、
前記通信部で受信した前記呈示データに基づき、前記第1方向及び前記第2方向の少なくとも一方の方向に前記可動部を前記駆動部によって動かすことにより、前記呈示の動作を制御する制御部と、を備えた誘導システム。
【請求項9】
棒状に延びる杖本体と、前記杖本体の基端に設けられたグリップ部と、を有する杖であって、
前記グリップ部に対する規定の方向である第1方向と、前記第1方向に対して異なる向きの第2方向と、に可動するように前記グリップ部に設けられた可動部と、
前記可動部を前記第1方向及び前記第2方向へ動かす駆動部と、
前記第1方向及び前記第2方向の少なくとも一方の方向に前記可動部を前記駆動部によって動かすことにより、触覚による呈示の動作を制御する制御部と、を備えた杖。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呈示装置、誘導システム、及び杖に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、視力が弱い使用者に対して歩行支援を行う杖が周知である。杖の把持部には、モータ等の駆動力によって回転運動が可能となった突起形成部が設けられている。使用者は、目的地に向かうとき、杖を使用しながら歩行する。目的地への移動途中、例えば交差点等に至った場合には、杖の把持部を握るユーザの手の中で突起形成部が回転することにより、進行方向を触覚によって使用者に通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の場合、突起形成部の回転という1つのパターンでしか呈示を実行することができない。よって、呈示のバリエーションが少ないため、何らかの対策が必要とされていた。なお、この課題に対する対策の必要性は、杖に限定されるものではなく、杖以外の他の物品でも同様である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する呈示装置は、ユーザが手で握って使用する物品のグリップ部を介して、触覚による呈示をユーザに行う装置であって、前記グリップ部に対する規定の方向である第1方向と、前記第1方向に対して異なる向きの第2方向と、に可動するように前記グリップ部に設けられた可動部と、前記可動部を前記第1方向及び前記第2方向へ動かす駆動部と、前記第1方向及び前記第2方向の少なくとも一方の方向に前記可動部を前記駆動部によって動かすことにより、前記呈示の動作を制御する制御部と、を備えた。
【0006】
前記課題を解決する誘導システムは、ユーザが手で握って使用する物品を介して、ユーザを目的地へ誘導するシステムであって、前記物品のグリップ部に対して触覚による呈示を行う呈示装置と、前記呈示を実行するのに必要なアプリケーションが登録された端末に設けられ、前記目的地への案内に係る呈示データを前記呈示装置に通知する通知部と、を備え、前記呈示装置は、前記呈示データを受信する通信部と、前記グリップ部に対する規定の方向である第1方向と、前記第1方向に対して異なる向きの第2方向と、に可動するように前記グリップ部に設けられた可動部と、前記可動部を前記第1方向及び前記第2方向へ動かす駆動部と、前記通信部で受信した前記呈示データに基づき、前記第1方向及び前記第2方向の少なくとも一方の方向に前記可動部を前記駆動部によって動かすことにより、前記呈示の動作を制御する制御部と、を備えた。
【0007】
前記課題を解決する杖は、棒状に延びる杖本体と、前記杖本体の基端に設けられたグリップ部と、を有する構成であって、前記グリップ部に対する規定の方向である第1方向と、前記第1方向に対して異なる向きの第2方向と、に可動するように前記グリップ部に設けられた可動部と、前記可動部を前記第1方向及び前記第2方向へ動かす駆動部と、前記第1方向及び前記第2方向の少なくとも一方の方向に前記可動部を前記駆動部によって動かすことにより、触覚による呈示の動作を制御する制御部と、を備えた。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、呈示のバリエーションを多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態を説明する。
(誘導システム1)
図1に示すように、誘導システム1は、例えば、ユーザが手で握って使用する物品2を介して、ユーザを目的地へ誘導する。物品2は、例えば、歩行を補助する杖3である。誘導システム1は、例えば、呈示を実行するのに必要なアプリケーション4が登録された端末5が使用される。端末5は、例えば、高機能携帯電話(スマートフォン)である。目的地は、例えば、端末5のアプリケーション4を使用して設定される。
【0011】
誘導システム1は、物品2を握るユーザの手に対し、触覚による呈示によって、ユーザを目的地へ誘導する。このように、呈示は、ユーザにより設定された目的地への移動方向を誘導する誘導呈示を含む。また、呈示は、例えば、ユーザに注意を促す喚起呈示を含んでもよい。喚起呈示は、例えば目的地への誘導中、身の安全に問題がある状況になったと判断された場合に、ユーザに注意を促す呈示である。
【0012】
(杖3)
図1に示す通り、杖3は、棒状に延びる杖本体8と、杖本体8の基端に設けられたグリップ部9と、を有する。グリップ部9は、例えば、細長い円柱状に形成されるとともに、杖本体8よりも大径の形状に形成されている。杖3は、例えば、視覚障害を有する人に使用される。杖3は、通常、グリップ部9を手全体で握るようにして使用する。杖3は、例えば人混みや狭い場所等では、グリップ部9をペン握りして使用する。
【0013】
(呈示装置11)
図2に示すように、誘導システム1は、ユーザによって把持されるグリップ部9を介して触覚による呈示をユーザに行う呈示装置11を備える。呈示装置11は、グリップ部9に対して動くように設けられた可動部12を備える。可動部12は、グリップ部9に対する規定の方向である第1方向A1と、第1方向A1に対して異なる向きの第2方向A2と、に可動するように、グリップ部9に取付けられている。可動部12は、例えば、柱状のグリップ部9の外周面に嵌合されたリング13である。
【0014】
第1方向A1は、例えば、グリップ部9の軸L1に沿ったスライド方向である。すなわち、可動部12は、グリップ部9の軸L1方向に沿ってスライド移動するように構成されている。本例のスライド移動は、例えば、初期位置を起点とした前方スライド移動と後方スライド移動とを含む。移動スライドの仕方としては、例えば、スライド移動後、元の中立位置に復帰する反復スライド移動が挙げられる。
【0015】
第2方向A2は、例えば、柱状のグリップ部9の軸L1回りに沿った回転方向である。すなわち、可動部12は、グリップ部9に対して周方向に回転するように構成されている。本例の回転移動は、例えば、初期位置を起点とした右回転と左回転とを含む。回転の仕方としては、例えば、回転終了後、その位置に停止し、次の回転時には、その停止位置から回転を始める継続回転が挙げられる。また、別の回転の仕方としては、回転終了後、元の中立位置に復帰する反復回転が挙げられる。
【0016】
可動部12は、例えば、凸形状又は凹形状に形成された引掛部14を外周面に有していてもよい。この場合、引掛部14は、グリップ部9を握るユーザの手に対し、可動部12の動きを分かり易くするために設けられる。本例の場合、引掛部14は、例えば、可動部12の軸方向(
図2に示す軸L1方向)に延びる凸部(細長い突部分)である。
【0017】
(呈示装置11の電気構成)
図3に示すように、呈示装置11は、制御部17、通信部18、駆動部19、及び電源20を備える。通信部18は、端末5と通信する。端末5及び通信部18の通信は、例えば、無線通信である。無線通信は、例えば、ブルートゥース通信(Bluetooth:登録商標)が使用される。ブルートゥースの場合、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy)が使用されることが好ましい。このように、呈示装置11は、通信部18を介して端末5と無線通信を実行する。
【0018】
制御部17は、例えば、MPU(Micro Processor Unit)、CPU(Central Processing Unit)である。制御部17は、可動部12の動きによる触覚によって呈示が付与されるように、可動部12を可動させる。すなわち、制御部17は、第1方向A1及び第2方向A2の少なくとも一方の方向に可動部12を駆動部19によって動かすことにより、呈示の動作を制御する。制御部17は、通信部18から入力する信号に基づき、可動部12を第1方向A1及び第2方向A2へ動かす駆動部19を介して、可動部12を動作させる。具体的には、制御部17は、端末5との通信に基づき、駆動部19を介して、可動部12を動かす。
【0019】
駆動部19は、例えば、電気式、油圧式、空気圧式、化学式、磁性流体を用いた方式、電気粘性流体を用いた方式、のいずれでもよい。駆動部19は、例えば、モータ、ソレノイド、シリンダ、ピエゾなどである。
【0020】
電源20は、例えば、一次電池、又は二次電池のいずれでもよい。なお、呈示装置11は、独自の電源20を有することに限定されない。例えば、呈示装置11は、有線接続された他の部材から電力を得る構成としてもよい。
【0021】
(端末5)
図3に示す通り、誘導システム1は、端末5に設けられた通知部22を備える。通知部22は、呈示の仕方に係る呈示データDを呈示装置11に通知する。具体的には、通知部22は、ユーザに対して呈示が必要な所定タイミングにおいて、呈示データDを呈示装置11に通知する。呈示データDは、例えば、無線通信によって端末5から呈示装置11に送信される。呈示データDは、例えば、目的地への案内に係るデータであって、具体的には、可動部12をどの方向に動かすのかを指定するデータである。
【0022】
制御部17は、端末5から送信された呈示データDを通信部18で受信した場合、この呈示データDに基づき駆動部19を制御することにより、呈示を実行する。このように、呈示の仕方に係る呈示データDが端末5から呈示装置11に無線送信され、そして、この呈示データDによって呈示装置11が動作することにより、杖3のグリップ部9を握るユーザの手に対し、目的地への移動方向が逐次呈示される。
【0023】
(可動部12による呈示方向)
図4に示すように、可動部12は、例えば、前後、左右、及び斜めの8方向の呈示を実行する。具体的には、可動部12は、前方向A11、後方向A12、右方向A21、左方向A22、斜め右前方向A31、斜め右後方向A32、斜め左前方向A33、斜め左後方向A34、の計8方向に動く。このように、制御部17は、可動部12を8方向のいずれかに動かすことにより、グリップ部9を握るユーザの手に対し、目的地への移動方向を呈示する。なお、第1方向A1は、前方向A11及び後方向A12を含む。第2方向A2は、右方向A21及び左方向A22を含む。
【0024】
可動部12の前方向A11及び後方向A12の動きは、スライド移動(直線移動)の動きである。可動部12の右方向A21及び左方向A22の動きは、回転の動きである。可動部12の斜め右前方向A31、斜め右後方向A32、斜め左前方向A33、及び斜め左後方向A34の動きは、スライド移動と回転とを組み合わせた動きである。なお、駆動部19は、例えば、可動部12のスライド移動用と、可動部12の回転用と、でそれぞれ個別に設けられることが好ましい。
【0025】
次に、本実施形態の誘導システム1(杖3、呈示装置11)の作用について説明する。
(目的地への誘導)
図5に示すように、端末5においてアプリケーション4が起動されて移動の目的地が入力されると、端末5のディスプレイ24に案内画面25が表示される。案内画面25には、例えば、地図が表示されるとともに、その地図上に現在位置(図中の黒点)と目的地(図中の「G」)とが表示される。端末5は、例えば、端末5に搭載されたGPS(Global Positioning System)機能を用いることにより、端末5の現在位置(ユーザの現在位置)を判断する。
【0026】
端末5は、端末5の現在位置を認識すると、現在位置と地図データと照らし合わせることにより、目的地までの移動ルートを抽出する。そして、端末5は、目的地までの移動ルートと、端末5の現在位置と、に基づき、目的地の案内に係る呈示データDを、通知部22から呈示装置11に送信する。すなわち、端末5は、移動ルート上の現在位置に対する進行方向を割り出し、その進行方向を通知するための呈示データDを、呈示装置11に送信する。
【0027】
端末5は、例えば、呈示データDの送信を周期的に実行する。また、端末5は、端末5が移動ルートの交差点に位置したとき、呈示データDの送信を実行することが好ましい。さらに、端末5は、端末5が移動ルートから外れたとき、端末5を移動ルート上に戻すために、呈示データDを送信することが好ましい。このように、端末5は、ユーザを目的地に誘導するときの種々の状況に応じて呈示データDを呈示装置11に送信することにより、ユーザを目的地まで案内する。
【0028】
図5に示す通り、地図の移動ルート上において、移動先の方向が図中の上となった交差点P1に端末5が位置したとする。このとき、端末5は、可動部12を前方向A11にスライド移動させるための呈示データDaを、通知部22から呈示装置11に送信する。この呈示データDaは、端末5と通信が確立している呈示装置11で受信される。呈示装置11は、この呈示データDaを通信部18で受信する。
【0029】
制御部17は、通信部18が受信した呈示データDaを取得し、この呈示データDaに基づき、可動部12を前方向A11にスライド移動させる。これにより、ユーザは、前方向A11に動く可動部12の動きを手で感じることにより、前方に進行すべきと認識する。なお、可動部12の前方向A11のスライド移動は、例えば、1度のみの動きでもよいし、又は、複数の繰り返しの動きでもよい。
【0030】
図6に示すように、地図の移動ルート上において、移動先の方向が斜め右上となった交差点P2に端末5が位置したとする。このとき、端末5は、可動部12を斜め右前方向A31に動かすための呈示データDbを、通知部22から呈示装置11に送信する。呈示装置11は、この呈示データDbを通信部18で受信する。この呈示データDbは、端末5と通信が確立している呈示装置11で受信される。呈示装置11は、この呈示データDbを通信部18で受信する。
【0031】
制御部17は、通信部18が受信した呈示データDbを取得し、この呈示データDbに基づき、可動部12を斜め右前方向A31に動かす。具体的には、可動部12を前方向A11にスライド移動させつつ、可動部12を右方向A21に回転させる。これにより、ユーザは、斜め右前方向A31に動く可動部12の動きを手で感じることにより、斜め右前に進行すべきと認識する。なお、可動部12の斜め右前方向A31への動きは、例えば、1度のみの動きでもよいし、又は、複数の繰り返しの動きでもよい。
【0032】
図7に示すように、地図の移動ルート上において、移動先の方向が左となった交差点P3に端末5が位置したとする。このとき、端末5は、可動部12を左方向A22に回転させるための呈示データDcを、通知部22から呈示装置11に送信する。この呈示データDcは、端末5と通信が確立している呈示装置11で受信される。呈示装置11は、この呈示データDcを通信部18で受信する。
【0033】
制御部17は、通信部18が受信した呈示データDcを取得し、この呈示データDcに基づき、可動部12を左方向A22に回転させる。これにより、ユーザは、左方向A22に回転する可動部12の動きを手で感じることにより、左側に曲がるべきと認識する。なお、可動部12の左方向A22の回転は、例えば、1度のみの動きでもよいし、又は、複数の繰り返しの動きでもよい。
【0034】
そして、ユーザは、可動部12の触覚的な呈示に従って交差点P3を左に曲がった後、暫く歩くと、目的地に到着する。なお、ユーザが目的地に到着したとき、目的地に到着した旨を呈示装置11によって呈示してもよい。以上により、グリップ部9に設けられた呈示装置11からグリップ部9を握る手に伝わる触覚的な呈示により、進行方向を直感的に認識しながら、安全に目的地へ辿り着けることになる。
【0035】
(喚起呈示)
図8に示すように、端末5は、ユーザを誘導中、喚起呈示が必要となった場合、呈示装置11に喚起呈示を実行させる旨の呈示データDdを、通知部22から呈示装置11に送信する。具体的には、端末5は、例えば、ネットワーク通信によって取得した工事情報に基づき、端末5が工事現場付近を通過すると判断した場合に、呈示データDdを呈示装置11に送信することが挙げられる。また、これ以外の動作例としては、例えば、端末5のセンサやカメラ等で取得した情報に基づき、注意喚起が必要と判断した場合に、呈示データDdを呈示装置11に送信してもよい。
【0036】
制御部17は、通信部18が受信した呈示データDdを取得し、この呈示データDdに基づき、可動部12に喚起呈示を実行させる。このときの可動部12の動きとしては、例えば、可動部12を前後方向に繰り返し複数回スライド移動させること、可動部12を左右方向に繰り返し回転させること、可動部12を斜め方向に繰り返し動かすこと、或いは、これら動きの組み合わせ、などが挙げられる。よって、目的地への誘導中、ユーザの身の安全も確保される。
【0037】
(実施形態の効果)
上記実施形態の構成によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)呈示装置11は、ユーザが手で握って使用する物品2のグリップ部9を介して、触覚による呈示をユーザに行う。呈示装置11は、可動部12、制御部17、及び駆動部19を備える。可動部12は、グリップ部9に対する規定の方向である第1方向A1と、第1方向A1に対して異なる向きの第2方向A2と、に可動するようにグリップ部9に設けられている。駆動部19は、可動部12を第1方向A1及び第2方向A2へ動かす。制御部17は、第1方向A1及び第2方向A2の少なくとも一方の方向に可動部12を駆動部19によって動かすことにより、呈示の動作を制御する。
【0038】
本構成によれば、グリップ部9を握るユーザの手に対し、可動部12の動きによって、触覚による呈示を付与する。特に、本構成の場合、可動部12は、少なくとも第1方向A1及び第2方向A2の2方向に動くことが可能に構成されている。このため、可動部12が1方向のみに動く場合に比較して、種々の呈示パターンを生成することが可能となる。よって、呈示のバリエーションを多くすることができる。
【0039】
(2)ユーザに呈示を付与するにあたり、グリップ部9の一部を可動させる構成とした。よって、物品2が地面に付く、或いは付かないに関わらず、ユーザに呈示を付与することができる。
【0040】
(3)ユーザが手で握るグリップ部9の一部を可動させる構成としたので、呈示の際に、ユーザの腕が振られることがない。よって、人が密集している状況下であっても使用できる。
【0041】
(4)可動部12は、柱状のグリップ部9に外周面に嵌合されたリング13である。この構成によれば、リング13をグリップ部9の軸L1回りに回転させたり、リング13をグリップ部9の軸L1方向に沿ってスライド移動させたりする動きによって、グリップ部9を握るユーザの手に対し、分かり易い動きで呈示を実行できる。
【0042】
(5)第1方向A1は、グリップ部9の軸L1に沿ったスライド方向である。第2方向A2は、柱状のグリップ部9の軸L1回りに沿った回転方向である。この構成によれば、例えば、呈示装置11によって目的地へユーザを誘導する場合に、可動部12の回転によって、右折や左折を分かり易く呈示できる。また、可動部12のスライド方向の動きによって、前進や後進を分かり易く呈示できる。
【0043】
(6)呈示装置11は、呈示を実行するのに必要なアプリケーション4が登録された端末5と通信する通信部18を備える。制御部17は、呈示の仕方に係る呈示データDを端末5から通信部18で受信した場合、呈示データDに基づき駆動部19を制御することにより、呈示を実行する。この構成によれば、端末5を主体にして、呈示装置11に呈示を実行させることが可能となる。よって、使用するアプリケーション4や、アプリケーション4の設定などを通じて、様々な呈示を実現できる。
【0044】
(7)呈示は、ユーザにより設定された目的地への移動方向を誘導する誘導呈示を含む。この構成によれば、視覚に頼らずに、グリップ部9を握る手を通じて、ユーザを目的地へ誘導できる。
【0045】
(8)呈示は、ユーザに注意を促す喚起呈示を含む。この構成によれば、誘導呈示のみならず喚起呈示も実行可能となるので、ユーザの安全を確保しながら、目的地への誘導を実行できる。
【0046】
(9)制御部17は、第1方向A1への可動部12の動作と、第2方向A2への可動部12の動作と、可動部12を第1方向A1及び第2方向A2に同時に動かす動作とにより、呈示を実行する。この構成によれば、可動部12による呈示方向のバリエーションを多くすることが可能となるので、分かり易い呈示をユーザに付与できる。
【0047】
(他の実施形態)
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0048】
・呈示装置11は、グリップ部9を入力操作(アクセル操作など)とする部材に設けられてもよい。この部材としては、例えば、二輪車等のハンドルなどが挙げられる。この場合、二輪車に乗車するユーザは、二輪車の表示部に視線を向けなくとも、ハンドルを握る手に呈示装置11から触覚的に付与される呈示によって、目的地への進行方向が分かる。よって、安全にユーザを目的地に誘導することができる。
【0049】
・呈示装置11は、杖3、二輪車のハンドルに設けられることに限らず、例えば、車両(乗用車等)のハンドル、自転車のハンドルなどに設けられてもよい。
・呈示装置11は、グリップ部9を入力操作(アクセル操作等)としない部材に設けられてもよい。
【0050】
・可動部12の動きは、1度のみの動きに限定されず、繰り返しの動きとしてもよい。
・可動部12は、リング13に限定されず、グリップ部9に対して動くことが可能な部材であればよい。
【0051】
・可動部12の斜め方向の動きは、スライド移動及び回転を組み合わせた動きに限らず、例えば、可動部12自体を斜め方向にスライド移動させる動きとしてもよい。
・可動部12は、グリップ部9に複数設けられてもよい。
【0052】
・可動部12が動く方向は、実施例の8方向に限定されず、例えば、7方向以下でもよいし、或いは9方向以上としてもよい。
・可動部12及び駆動部19のみを杖3に設け、制御系を杖3とは別の箇所に設けてもよい。
【0053】
・第1方向A1と第2方向A2は、非直交となる向きをとっていてもよい。
・目的地の入力機能を呈示装置11に設けて、呈示装置11から通信部18を省略してもよい。
【0054】
・呈示装置11(杖3)にセンサを設け、そのセンサ信号を用いて、誘導呈示や喚起呈示を実行してもよい。
・端末5及び呈示装置11の間の無線通信は、ブルートゥース通信に限定されず、例えば赤外線通信としてもよい。また、無線通信には、種々の通信方式を使用してもよい。
【0055】
・呈示装置11は、ユーザが移動ルートから外れたとき、元の移動ルートに戻す呈示を実施してもよい。
・呈示装置11は、例えば、ウェアラブル端末に設けられてもよい。ウェアラブル端末は、例えば、腕時計タイプ、眼鏡タイプなどが挙げられる。
【0056】
・端末5を用いた目的地設定は、視覚障害者に対応するために、例えば音声入力としてもよい。
・目的地への誘導時、端末5から音声メッセージが出力されてもよい。
【0057】
・目的地への誘導時、端末5のディスプレイ24は、案内画面25が表示されなくてもよい。
・端末5は、高機能携帯電話(スマートフォン)に限定されず、例えば、ウェアラブル端末、タブレット、パーソナルコンピュータでもよい。
【0058】
・呈示装置11及び通知部22の通信は、無線通信に限定されず、有線通信としてもよい。
・呈示装置11は、進行方向を誘導するための装置に限定されず、他の目的のための呈示を触覚的に付与する装置であればよい。
【0059】
・呈示装置11は、杖3以外の他の物品2に設けられてもよい。
・制御部17、通信部18、及び通知部22は、[1]コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサによって構成されてもよいし、[2]そのようなプロセッサと、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路との組み合わせによって構成されてもよい。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード、又は指令を格納している。メモリ(コンピュータ可読媒体)は、汎用、又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。或いは、上記プロセッサを含むコンピュータに代えて、各種処理の全てを実行する1つ以上の専用のハードウェア回路によって構成された処理回路が用いられてもよい。
【0060】
・制御部17、通信部18、及び通知部22は、独立したプロセッサから構成されてもよいし、機能の一部分が共用のプロセッサから構築されてもよい。このように、制御部17、通信部18、及び通知部22は、独立した機能ブロックに限らず、1つの機能ブロックから構成されてもよいし、一部分が共用された機能ブロックから構成されてもよい。
【0061】
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0062】
1…誘導システム、2…物品、3…杖、4…アプリケーション、5…端末、9…グリップ部、11…呈示装置、12…可動部、13…リング、17…制御部、18…通信部、19…駆動部、22…通知部、A1…第1方向、A2…第2方向、L1…軸、D…呈示データ。