(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067819
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】有機性排水の色度除去方法および色度除去装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/52 20230101AFI20240510BHJP
C02F 3/12 20230101ALI20240510BHJP
B01D 21/00 20060101ALI20240510BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20240510BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C02F1/52 G
C02F3/12 D
C02F3/12 S
B01D21/00 D
B01D21/30 A
B01D21/01 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178164
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】藤井 貴悠
(72)【発明者】
【氏名】蒲池 一将
(72)【発明者】
【氏名】古市 竜哉
【テーマコード(参考)】
4D015
4D028
【Fターム(参考)】
4D015BA03
4D015BA19
4D015BB08
4D015BB12
4D015CA02
4D015CA03
4D015CA04
4D015CA09
4D015DA03
4D015DA04
4D015DA05
4D015DB01
4D015DC06
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4D015DC08
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4D015FA01
4D015FA17
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4D015FA26
4D028AB03
4D028AC01
4D028AC09
4D028BC17
4D028BD17
4D028CA00
4D028CB03
4D028CC00
(57)【要約】
【課題】最適な添加量でアルミニウム系凝集剤を添加することで、有機性排水の色度を除去する方法を提供する。
【解決手段】色度除去方法は、有機性排水を生物処理槽1で生物処理することで、該有機性排水から有機物が除去された生物処理水を生成し、生物処理水を第1ろ過器5でろ過し、第1ろ過器5でろ過された生物処理水の色度を第1色度計6で測定し、第1色度計6で測定された色度に基づいてアルミニウム系凝集剤の添加量を決定し、決定された添加量のアルミニウム系凝集剤を生物処理水に添加して、色度処理水を生成し、色度処理水を第2ろ過器12でろ過し、第2ろ過器12でろ過された色度処理水の色度を第2色度計15で測定し、第2色度計15で測定された色度に基づいてアルミニウム系凝集剤の添加量を調節する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性排水を生物処理槽で生物処理することで、該有機性排水から有機物が除去された生物処理水を生成し、
前記生物処理水を第1ろ過器でろ過し、
前記第1ろ過器でろ過された前記生物処理水の色度を第1色度計で測定し、
前記第1色度計で測定された色度に基づいてアルミニウム系凝集剤の添加量を決定し、
前記決定された添加量のアルミニウム系凝集剤を前記生物処理水に添加して、色度処理水を生成し、
前記色度処理水を第2ろ過器でろ過し、
前記第2ろ過器でろ過された前記色度処理水の色度を第2色度計で測定し、
前記第2色度計で測定された色度に基づいて前記アルミニウム系凝集剤の前記添加量を調節する、有機性排水の色度除去方法。
【請求項2】
前記調節された添加量の前記アルミニウム系凝集剤を、前記生物処理槽で生成された後続の生物処理水に添加することで、前記後続の生物処理水の色度を100度以下にする工程をさらに含む、請求項1に記載の有機性排水の色度除去方法。
【請求項3】
前記第1色度計は、第1波長における吸光度を測定し、前記第2色度計は、前記第1波長よりも短い第2波長における吸光度を測定する、請求項1に記載の有機性排水の色度除去方法。
【請求項4】
有機性排水に対して、膜分離槽により膜分離活性汚泥法を行うことで、該有機性排水から有機物および濁質が除去された生物処理水を生成し、
前記生物処理水の色度を第1色度計で測定し、
前記第1色度計で測定された色度に基づいてアルミニウム系凝集剤の添加量を決定し、
前記決定された添加量のアルミニウム系凝集剤を前記生物処理水に添加して、色度処理水を生成し、
前記色度処理水をろ過器でろ過し、
前記ろ過器でろ過された前記色度処理水の色度を第2色度計で測定し、
前記第2色度計で測定された色度に基づいて前記アルミニウム系凝集剤の前記添加量を調節する、有機性排水の色度除去方法。
【請求項5】
前記調節された添加量の前記アルミニウム系凝集剤を、前記膜分離槽で生成された後続の生物処理水に添加することで、前記後続の生物処理水の色度を100度以下にする工程をさらに含む、請求項4に記載の有機性排水の色度除去方法。
【請求項6】
前記第1色度計は、第1波長における吸光度を測定し、前記第2色度計は、前記第1波長よりも短い第2波長における吸光度を測定する、請求項4に記載の有機性排水の色度除去方法。
【請求項7】
有機性排水を生物処理することで、該有機性排水から有機物が除去された生物処理水を生成する生物処理槽と、
前記生物処理水をろ過する第1ろ過器と、
前記第1ろ過器でろ過された前記生物処理水の色度を測定する第1色度計と、
前記第1色度計で測定された色度に基づいてアルミニウム系凝集剤の添加量を決定する制御装置と、
前記決定された添加量の前記アルミニウム系凝集剤を、前記生物処理水に添加するアルミニウム系凝集剤添加装置と、
前記生物処理水と前記アルミニウム系凝集剤とを撹拌して、色度処理水を生成する色度処理槽と、
前記色度処理水をろ過する第2ろ過器と、
前記第2ろ過器でろ過された前記色度処理水の色度を測定する第2色度計を備え、
前記制御装置は、前記第2色度計で測定された色度に基づいて前記アルミニウム系凝集剤の前記添加量を調節するように構成されている、有機性排水の色度除去装置。
【請求項8】
前記第1色度計は、第1波長における吸光度を測定するように構成され、前記第2色度計は、前記第1波長よりも短い第2波長における吸光度を測定するように構成されている、請求項7に記載の有機性排水の色度除去装置。
【請求項9】
有機性排水に対して膜分離活性汚泥法を行うことで、該有機性排水から有機物および濁質が除去された生物処理水を生成する膜分離槽と、
前記生物処理水の色度を測定する第1色度計と、
前記第1色度計で測定された色度に基づいてアルミニウム系凝集剤の添加量を決定する制御装置と、
前記決定された添加量の前記アルミニウム系凝集剤を、前記生物処理水に添加するアルミニウム系凝集剤添加装置と、
前記生物処理水と前記アルミニウム系凝集剤とを撹拌して、色度処理水を生成する色度処理槽と、
前記色度処理水をろ過するろ過器と、
前記ろ過器でろ過された前記色度処理水の色度を測定する第2色度計を備え、
前記制御装置は、前記第2色度計で測定された色度に基づいて前記アルミニウム系凝集剤の前記添加量を調節するように構成されている、有機性排水の色度除去装置。
【請求項10】
前記第1色度計は、第1波長における吸光度を測定するように構成され、前記第2色度計は、前記第1波長よりも短い第2波長における吸光度を測定するように構成されている、請求項9に記載の有機性排水の色度除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品排水、飲料排水、し尿、浄化槽汚泥等の有機性排水の色度を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、河川等の水環境保全や安全性の観点から、放流水の色度に対する要求が高まっている。例えば、食品排水、飲料排水、し尿、浄化槽汚泥等の有機性排水は色度成分を含有することが多いため、放流の際に色度を除去することが求められる。しかしながら、食品製造工場や飲料製造工場などで発生する排水は、その生産品目および生産工程に応じて水量や水質が短時間のうちに大きく変動することから、安定した色度処理が困難である。
【0003】
色度除去処理では、凝集剤を有機性排水に添加し、有機性排水中の色度成分である有機物質およびコロイド性物質を凝集させ、除去する手法が多く用いられる。凝集剤の添加量は、ジャーテストによる凝集試験結果から決定することが多い。ただし、ジャーテストで結果を求めるには時間を要するため、リアルタイムでの凝集剤添加率の反映はできない。
【0004】
図4は、従来の色度処理装置の一例を示す模式図である。有機性排水は、まず、生物処理槽501にて生物処理される。その後、有機性排水は、色度処理槽502に送られ、ここで凝集剤が凝集剤添加装置503から有機性排水に添加され、色度処理が行われる。色度処理された有機性排水は、凝集沈殿槽504に送られ、凝集汚泥と凝集処理水に分離される。凝集処理水は放流水として放出される。凝集汚泥は汚泥処理装置505に送られ、ここで凝集汚泥から水が更に分離される。分離された水は生物処理槽501に返送され、再度処理される。
【0005】
従来技術では、
図4に示すように、放流水の色度を比色法または分光光度計で測定した後に、凝集剤の添加量を調整するフィードバック制御が採用されている。しかしながら、この制御方法では色度除去処理が間に合わず、放流水の色度が管理基準値を超える場合がある。そのため、放流水の色度が管理基準値を超えないようにするためには、急な高色度排水に対応できるように凝集剤を過剰に添加した状態で運転する必要があり、凝集剤コストおよび汚泥発生量の増大を招き、高い処理コストの要因となっている。
【0006】
図4に示すような色度成分を対象とした凝集沈殿処理では、凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、硫酸バンドなどのアルミニウム系凝集剤が用いられる。飲料工場では色度成分を含む排水が間欠的にでるため、高色度排水の発生時に遅延なく対応するために常時アルミニウム系凝集剤を多量に添加して運転する必要があったが、アルミニウム系凝集剤の過剰添加によって以下の問題が発生していた。
【0007】
図4に示すように、汚泥処理装置505で濃縮汚泥から分離された水を生物処理槽501へ返送し、分離水の再処理を行っている。しかしながら、アルミニウム系凝集剤が過剰であるために、分離水に過剰のアルミニウムが残留し、生物処理槽501内のアルミニウム濃度が数10mg/Lと高くなる。これにより、生物処理槽501において、活性汚泥中にゲル状の水酸化アルミニウムとして蓄積し、生物処理を阻害することがある。
【0008】
また、過剰のアルミニウム残留によって活性汚泥中に糸状性生物が多く発生し、糸状性バルキングが頻発することで後段の凝集沈澱槽において固液分離性能が著しく悪化する。
さらに、生物処理槽501内の排水中のリン酸塩などが過剰アルミニウムによって凝集し、生物処理での栄養塩が不足し、処理水質が悪化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4-193311号公報
【特許文献2】特開2018-161632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1には、排水を色度計で測定し、その色度と排水量から凝集剤添加量を演算添加して脱色処理を行い、更に排水流出口の有機濃度を測定し、凝集剤添加量を補正することが記載されている。しかしながら、処理すべき排水は高濁度であるため色度計の適用が難しい。
【0011】
特許文献2には、凝集処理水をろ過器でろ過し、ろ液の紫外吸光度(測定波長200~400nm)および可視光吸光度(測定波長400~800nm)を測定し、その測定値の差より有機濃度を演算し、凝集剤添加量を制御することが記載されている。しかし、色度除去処理後の処理水の色度を測定し、凝集剤添加量を制御するフィードバック制御方式であるため、高色度排水時には対処が遅れ、過剰注入の制御が困難である。また、色度ではなく有機濃度を測定することから、処理された水の色度が管理基準値を達成しているかどうかを確認することができない。
【0012】
排水処理において生物処理を組み込む場合、残留アルミニウムの影響が大きいことから、色度除去と安定した排水処理を同時に行うためにアルミニウム系凝集剤の添加量の最適化が重要となる。
【0013】
そこで、本発明は、最適な添加量でアルミニウム系凝集剤を添加することで、有機性排水の色度を除去する方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様では、有機性排水を生物処理槽で生物処理することで、該有機性排水から有機物が除去された生物処理水を生成し、前記生物処理水を第1ろ過器でろ過し、前記第1ろ過器でろ過された前記生物処理水の色度を第1色度計で測定し、前記第1色度計で測定された色度に基づいてアルミニウム系凝集剤の添加量を決定し、前記決定された添加量のアルミニウム系凝集剤を前記生物処理水に添加して、色度処理水を生成し、前記色度処理水を第2ろ過器でろ過し、前記第2ろ過器でろ過された前記色度処理水の色度を第2色度計で測定し、前記第2色度計で測定された色度に基づいて前記アルミニウム系凝集剤の前記添加量を調節する、有機性排水の色度除去方法が提供される。
【0015】
一態様では、前記色度除去方法は、前記調節された添加量の前記アルミニウム系凝集剤を、前記生物処理槽で生成された後続の生物処理水に添加することで、前記後続の生物処理水の色度を100度以下にする工程をさらに含む。
一態様では、前記第1色度計は、第1波長における吸光度を測定し、前記第2色度計は、前記第1波長よりも短い第2波長における吸光度を測定する。
一態様では、前記色度除去方法は、前記生物処理水を前記第1ろ過器でろ過する前に、前記生物処理槽で生成された前記生物処理水を固液分離槽に導入して、前記生物処理水から汚泥を分離させ、前記分離した汚泥を前記生物処理槽に返送する工程をさらに含む。
一態様では、前記色度除去方法は、前記色度処理水にポリマー凝集剤を添加して、凝集処理水と凝集沈殿汚泥を生成し、前記凝集沈殿汚泥から水を分離し、前記分離した水を前記生物処理槽に返送する工程をさらに含む。
【0016】
一態様では、有機性排水に対して、膜分離槽により膜分離活性汚泥法を行うことで、該有機性排水から有機物および濁質が除去された生物処理水を生成し、前記生物処理水の色度を第1色度計で測定し、前記第1色度計で測定された色度に基づいてアルミニウム系凝集剤の添加量を決定し、前記決定された添加量のアルミニウム系凝集剤を前記生物処理水に添加して、色度処理水を生成し、前記色度処理水をろ過器でろ過し、前記ろ過器でろ過された前記色度処理水の色度を第2色度計で測定し、前記第2色度計で測定された色度に基づいて前記アルミニウム系凝集剤の前記添加量を調節する、有機性排水の色度除去方法が提供される。
【0017】
一態様では、前記色度除去方法は、前記調節された添加量の前記アルミニウム系凝集剤を、前記膜分離槽で生成された後続の生物処理水に添加することで、前記後続の生物処理水の色度を100度以下にする工程をさらに含む。
一態様では、前記第1色度計は、第1波長における吸光度を測定し、前記第2色度計は、前記第1波長よりも短い第2波長における吸光度を測定する。
一態様では、前記色度除去方法は、前記色度処理水にポリマー凝集剤を添加して、凝集処理水と凝集沈殿汚泥を生成し、前記凝集沈殿汚泥から水を分離し、前記分離した水を前記膜分離槽に返送する工程をさらに含む。
【0018】
一態様では、有機性排水を生物処理することで、該有機性排水から有機物が除去された生物処理水を生成する生物処理槽と、前記生物処理水をろ過する第1ろ過器と、前記第1ろ過器でろ過された前記生物処理水の色度を測定する第1色度計と、前記第1色度計で測定された色度に基づいてアルミニウム系凝集剤の添加量を決定する制御装置と、前記決定された添加量の前記アルミニウム系凝集剤を、前記生物処理水に添加するアルミニウム系凝集剤添加装置と、前記生物処理水と前記アルミニウム系凝集剤とを撹拌して、色度処理水を生成する色度処理槽と、前記色度処理水をろ過する第2ろ過器と、前記第2ろ過器でろ過された前記色度処理水の色度を測定する第2色度計を備え、前記制御装置は、前記第2色度計で測定された色度に基づいて前記アルミニウム系凝集剤の前記添加量を調節するように構成されている、有機性排水の色度除去装置が提供される。
【0019】
一態様では、前記第1色度計は、第1波長における吸光度を測定するように構成され、前記第2色度計は、前記第1波長よりも短い第2波長における吸光度を測定するように構成されている。
一態様では、前記色度除去装置は、前記生物処理槽と前記第1ろ過器との間に配置され、前記第1ろ過器でろ過される前の前記生物処理水から汚泥を分離させる固液分離槽と、前記分離された汚泥を前記生物処理槽に返送する汚泥返送ラインをさらに備えている。
一態様では、前記色度除去装置は、前記色度処理水にポリマー凝集剤を添加するポリマー凝集剤添加装置と、前記色度処理水と前記ポリマー凝集剤を撹拌して、凝集処理水と凝集沈殿汚泥を生成する凝集沈殿槽と、前記凝集沈殿汚泥から水を分離する汚泥処理装置と、前記分離された水を前記生物処理槽に返送する分離水返送ラインをさらに備えている。
【0020】
一態様では、有機性排水に対して膜分離活性汚泥法を行うことで、該有機性排水から有機物および濁質が除去された生物処理水を生成する膜分離槽と、前記生物処理水の色度を測定する第1色度計と、前記第1色度計で測定された色度に基づいてアルミニウム系凝集剤の添加量を決定する制御装置と、前記決定された添加量の前記アルミニウム系凝集剤を、前記生物処理水に添加するアルミニウム系凝集剤添加装置と、前記生物処理水と前記アルミニウム系凝集剤とを撹拌して、色度処理水を生成する色度処理槽と、前記色度処理水をろ過するろ過器と、前記ろ過器でろ過された前記色度処理水の色度を測定する第2色度計を備え、前記制御装置は、前記第2色度計で測定された色度に基づいて前記アルミニウム系凝集剤の前記添加量を調節するように構成されている、有機性排水の色度除去装置が提供される。
【0021】
一態様では、前記第1色度計は、第1波長における吸光度を測定するように構成され、前記第2色度計は、前記第1波長よりも短い第2波長における吸光度を測定するように構成されている。
一態様では、前記色度除去装置は、前記色度処理水にポリマー凝集剤を添加するポリマー凝集剤添加装置と、前記色度処理水と前記ポリマー凝集剤を撹拌して、凝集処理水と凝集沈殿汚泥を生成する凝集沈殿槽と、前記凝集沈殿汚泥から水を分離する汚泥処理装置と、前記分離された水を前記膜分離槽に返送する分離水返送ラインをさらに備えている。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る有機性排水の色度除去方法および色度除去装置によれば、有機性排水を生物処理した生物処理水の色度に基づいて、凝集剤の添加量を決定し、さらに色度処理された色度処理水の色度に基づいて、凝集剤の添加量を調節する。したがって、最適な凝集剤で有機性排水から色度を除去することができる。特に、第1色度計で測定される前に、第1ろ過器または膜分離槽は生物処理水をろ過するので、第1色度計は濁質が除去された生物処理水の色度を正確に測定することができる。同様に、第2色度計で測定される前に、第2ろ過器は色度処理水をろ過するので、第2色度計は濁質が除去された色度処理水の色度を正確に測定することができる。結果として、アルミニウム系凝集剤の最適な添加量を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】有機性排水の色度除去装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図2】有機性排水の色度除去装置の他の実施形態を示す模式図である。
【
図4】従来の色度除去装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、有機性排水の色度除去装置の一実施形態を示す模式図である。色度除去装置は、有機性排水を生物処理することで、該有機性排水から有機物が除去された生物処理水を生成する生物処理槽1と、生物処理水をろ過する第1ろ過器5と、第1ろ過器5でろ過された生物処理水の色度を測定する第1色度計6と、第1色度計6で測定された色度に基づいてアルミニウム系凝集剤の添加量を決定する制御装置7と、決定された添加量のアルミニウム系凝集剤を、生物処理水に添加するアルミニウム系凝集剤添加装置8と、生物処理水とアルミニウム系凝集剤とを撹拌して、色度処理水を生成する色度処理槽10と、色度処理水をろ過する第2ろ過器12と、第2ろ過器12でろ過された色度処理水の色度を測定する第2色度計15を備える。制御装置7は、アルミニウム系凝集剤添加装置8の動作を制御するように構成されており、第1色度計6で測定された色度に基づいてアルミニウム系凝集剤の添加量を決定し、さらに第2色度計15で測定された色度に基づいてアルミニウム系凝集剤の添加量を調節するように構成されている。
【0025】
処理対象とする有機性排水は、有機性の有機物を含有する排水であれば特に限定されない。有機性排水の具体例としては、食品製造工場又は飲料製造工場で得られる排水、染色排水、あるいは、有機性廃棄物、汚泥、し尿、浄化槽汚泥、生ごみ等を含む排水が挙げられる。食品や飲料の製造工程で発生する食品製造排水または飲料製造排水を、本実施形態に係る有機性排水として用いた場合に高い色度除去効果が得られる。対象処理とする有機性排水の色度は、典型的には100~1000度であり、より典型的には200~1000度、更に典型的には200~500度である。
【0026】
生物処理槽1は、活性汚泥法、生物膜法、嫌気性処理法、生物学的硝化脱窒法、多段式活性汚泥法、流動担体法等を行うための反応槽であり、必要に応じて曝気装置等が設けられてもよい。生物処理槽1内では、微生物を用いた生物処理が行われる。一実施形態では、生物処理槽1には、活性汚泥を内部に収容した活性汚泥槽が用いられる。
【0027】
本実施形態では、
図1に示すように、色度除去装置は、第1ろ過器5でろ過される前の生物処理水から汚泥を分離させる固液分離槽2と、分離された汚泥を生物処理槽1に返送する汚泥返送ライン11をさらに備えている。固液分離槽2は、生物処理槽1と第1ろ過器5との間に配置されている。固液分離槽2は、生物処理槽1で得られた生物処理水から、生物処理により発生した汚泥を分離するために使用される。
【0028】
色度処理槽10は、生物処理槽1で生成され、固液分離槽2で固液分離処理された生物処理水と、アルミニウム系凝集剤とを撹拌機で撹拌して、色度が低減または除去された色度処理水を生成するように構成されている。アルミニウム系凝集剤添加装置8は、色度処理槽10に接続されている。色度処理槽10には固液分離槽2で汚泥が分離された生物処理水が導入され、生物処理水とアルミニウム系凝集剤が混合撹拌されることで、色度成分を持つ有機物質やコロイド性物質が除去され、色度が低減または除去される。アルミニウム系凝集剤はPAC(ポリ塩化アルミニウム)、塩化アルミニウム、硫酸バンドなどのいずれでもよく、中でもPACまたは塩化アルミニウムを使用した場合に色度除去効果が高く得られる。
【0029】
第1ろ過器5は、固液分離槽2と色度処理槽10との間の配管、または色度処理槽10の入口に接続される。第1ろ過器5としては、砂ろ過、膜ろ過、繊維や高分子素材からなるろ材を使用したろ過器が利用できる。特に、膜ろ過を使用することが、色度測定に必要なろ過水の清澄性を得ることができる点から望ましい。第1ろ過器5のろ過孔径は0.4~5μm、好ましくは0.4~2μm、より好ましくは0.4~1μmである。
【0030】
第1ろ過器5には、第1ろ過器5でろ過された生物処理水の色度を測定するための第1色度計6が接続されている。第1色度計6は、第1波長における生物処理水の吸光度を測定するように構成されている。より具体的には、第1色度計6は、250~500nmの範囲内の波長、好ましくは400~500nmの範囲内の波長、特に好ましくは波長470nmにおける吸光度を測定する。
【0031】
第2ろ過器12は、色度処理槽10の出口に接続される。第2ろ過器12は、第1ろ過器5と同様に、砂ろ過処理、膜ろ過処理、繊維や高分子素材からなるろ材を使用したろ過器が利用できる。特に、膜ろ過処理を使用することが、色度測定に必要なろ過水の清澄性を得ることができる点から望ましい。第2ろ過器12のろ過孔径は、第1ろ過器5のろ過孔径よりも小さく、0.02~5μm、好ましくは0.02~2μm、より好ましくは0.02~1μmである。
【0032】
第2ろ過器12には、第2ろ過器12でろ過された色度処理水の色度を測定するための第2色度計15が接続されている。第2色度計15は、第1色度計6で使用される第1波長よりも短い第2波長における色度処理水の吸光度を測定するように構成されている。第2色度計15は、250~500nmの範囲内の波長、好ましくは250~400nmの範囲内の波長、特に好ましくは波長390nmにおける吸光度を測定する。第2色度計15は、より短い波長での吸光度を測定するように構成されているので、低い色度であっても高い精度で色度処理水の色度を測定することが可能となる。
【0033】
制御装置7は、第1色度計6、アルミニウム系凝集剤添加装置8、第2色度計15に接続されており、第1色度計6および第2色度計15によって測定された色度に基づいて、アルミニウム系凝集剤の添加率を決定するように構成される。例えば、制御装置7は、第1色度計6によって測定された生物処理水の色度と、放流水の管理基準値との差分で表される必要除去色度を算出し、残留アルミニウム濃度が1mg/Lを超えないアルミニウム系凝集剤の添加量を算定する。加えて、制御装置7は、第2色度計15によって測定された色度処理水の色度が、設定した管理基準値を超えた場合には、アルミニウム系凝集剤の添加量を調節し、これによりアルミニウム系凝集剤添加装置8は、放流水の管理基準値以下となるために必要なアルミニウム系凝集剤を供給することができる。
【0034】
制御装置7は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。制御装置7は、アルミニウム系凝集剤の最適な添加量を決定するためのプログラムが格納された記憶装置7aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する処理装置7bを備えている。記憶装置7aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。処理装置7bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、制御装置7の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0035】
制御装置7は、その記憶装置7a内に、アルミニウム系凝集剤の添加量を決定するための第1算定式を格納している。制御装置7は、第1色度計6によって測定された色度を第1算定式に入力し、第1算定式に従って演算を実行することで、アルミニウム系凝集剤の添加量を決定(算定)する。
【0036】
第1算定式は、以下のように表される。
アルミニウム系凝集剤添加量(mg/L)=A×a+b
ただし、Aは第1色度計6によって測定された色度であり、aおよびbは定数である。
定数aおよびbは、実験または実際の運転などから予め決定される。より具体的には、色度処理槽10で得られた色度処理水の色度が100度以下であって、かつ色度処理水中の残留アルミニウム濃度が1mg/L以下となる数値である。
【0037】
制御装置7は、アルミニウム系凝集剤添加装置8に指令を与えて、上記第1算定式により決定された添加量のアルミニウム系凝集剤を色度処理槽10に添加させる。アルミニウム系凝集剤添加装置8は、必要な量のアルミニウム系凝集剤だけ供給することができるため、色度除去装置は、アルミニウム系凝集剤の使用量を低減しながら安定的な色度除去処理を行うことができる。
【0038】
生物処理槽1に流入した有機性排水の色度が想定外に高い場合、色度処理槽10で得られた色度処理水の色度が100度を超えることがある。そこで、制御装置7は、次の第2算定式を用いて、上記第1算定式で得られた添加量を調節(すなわち補正)する。
補正量(mg/L)=(B-管理基準値)×c+d
ただし、Bは第2色度計15によって測定された色度であり、cおよびdは定数である。管理基準値は、例えば100である。上記第2算定式は、制御装置7の記憶装置7a内に格納されている。制御装置7は、第1算定式で得られた添加量に、第2算定式で得られた補正量を加算することで、アルミニウム系凝集剤の添加量を調節する。
【0039】
定数cおよびdは、実験または実際の運転などから予め決定される。より具体的には、第1算定式で得られた添加量に、第2算定式で得られた補正量を加算して得られた、調節された添加量のアルミニウム系凝集剤を生物処理水に添加したときに、色度処理槽10で得られた色度処理水の色度が100度以下であって、かつ色度処理水中の残留アルミニウム濃度が1mg/L以下となる数値である。
【0040】
図1に示すように、本実施形態の色度除去装置は、色度処理槽10で得られた色度処理水にポリマー凝集剤を添加するポリマー凝集剤添加装置17と、色度処理水とポリマー凝集剤を撹拌して、凝集処理水と凝集沈殿汚泥を生成する凝集沈殿槽19と、凝集沈殿汚泥から水を分離する汚泥処理装置21と、汚泥処理装置21で分離された水を生物処理槽1に返送する分離水返送ライン22をさらに備えている。第2ろ過器12は、色度処理槽10と凝集沈殿槽19との間の配管、または凝集沈殿槽19の入口に接続されてもよい。
【0041】
ポリマー凝集剤添加装置17は、凝集沈殿槽19に接続されており、凝集沈殿槽19内の色度処理水にポリマー凝集剤を添加することで、凝集フロックを形成する。凝集フロックは、凝集沈殿槽19内で沈降し、凝集沈殿汚泥を形成する。したがって、凝集沈殿槽19では、色度処理水は、凝集処理水と凝集沈殿汚泥とに分離される。使用する高分子凝集剤の例としては、カチオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤、およびノニオン系高分子凝集剤等が挙げられる。ポリマー凝集剤に加えて、フロック形成助剤、アルカリ剤(例えば、消石灰、水酸化ナトリウム、ソーダ灰など)、および/または凝集助剤等を色度処理水に添加してもよく、これにより微生物を含む生物処理由来の浮遊物質(SS)をより確実に除去することができる。
【0042】
凝集沈殿槽19で得られた凝集沈殿汚泥は、汚泥処理装置21へ移送され、汚泥処理装置21にて凝集沈殿汚泥を脱水する。汚泥処理装置21には汚泥脱水機や濃縮装置等が使用できる。汚泥処理装置21で得られた分離水は、色度成分の再処理のため、分離水返送ライン22を通じて生物処理槽1へ返送される。汚泥から色度成分が分離水に再溶出することがあり、また分離水中にSS成分が多いことから、分離水は生物処理槽1に返送され、再処理される。
【0043】
以下、上記色度除去装置を用いて有機性排水から色度を除去する方法の一実施形態を説明する。
【0044】
<生物処理>
有機性排水はまず生物処理槽1に導入され、微生物を用いた生物処理が行われる。生物処理槽1では、微生物が捕食可能な物質、基本的にはBOD(生物化学的酸素要求量)が有機性排水から除去され、BODの一部としてCOD(化学的酸素要求量)および色度成分が除去される。有機性排水に生物処理を行うことによって、有機性排水中に含まれる生物的に分解可能なBODを確実に除去することができ、これによりCODおよび色度成分も除去される。この生物処理を色度除去の前処理として行うことにより、後述する色度除去処理におけるアルミニウム系凝集剤の添加量を低減でき、より効率良く色度除去を行うことが可能となる。生物処理としては、例えば、活性汚泥法、生物膜法、嫌気性処理法、生物的硝化脱窒法、多段式活性汚泥法、流動担体法等が利用できる。
【0045】
<固液分離>
固液分離槽2では、生物処理槽1で得られた生物処理水から、生物処理により発生した汚泥が分離される。
<第1色度測定>
生物処理が行われた生物処理水は色度処理槽10へ移送される。本実施形態では、生物処理槽1と色度処理槽10との間に固液分離槽2が配置されているので、固液分離槽2にて汚泥が分離された生物処理水が色度処理槽10に移送される。このとき生物処理水の一部は、第1ろ過器5へ移送され、第1ろ過器5で浮遊物質(SS)などの濁質が生物処理水から除去される。第1ろ過器5でろ過された生物処理水は、第1色度計6へ導入され、第1波長における生物処理水の吸光度が第1色度計6により測定される。第1波長における生物処理水の吸光度は、生物処理水の色度を表す。
【0046】
<色度除去>
色度処理槽10において、アルミニウム系凝集剤を生物処理水に添加し、図示しない撹拌機によりアルミニウム系凝集剤と生物処理水を混合する。これにより、色度成分を持つ有機物質やコロイド性物質が生物処理水から除去され、色度が除去された色度処理水が得られる。一実施形態では、色度処理槽10では、pH調整剤を生物処理水に添加し、色度除去処理を、pH5.0~8.0、好ましくはpH6.5~7.5、特に好ましくはpH7.0で行う。
【0047】
<第2色度測定>
色度除去処理を行って得られた色度処理水の一部は、第2ろ過器12へ移送され、第2ろ過器12で浮遊物質(SS)などの濁質が色度処理水から除去される。第2ろ過器12でろ過された色度処理水は、第2色度計15へ導入され、第1波長よりも短い第2波長における色度処理水の吸光度が第2色度計15により測定される。第2波長における色度処理水の吸光度は、色度処理水の色度を表す。
【0048】
第1色度計6によって測定された色度に基づいた、アルミニウム系凝集剤の添加量の最適化は、アルミニウム系凝集剤の添加のフィードフォワード制御である。第2色度計15によって測定された色度は、アルミニウム系凝集剤が添加された結果得られた色度処理水の色度監視に用いられる。色度除去が不十分である場合は、第2色度計15によって測定された色度に基づいて凝集剤添加量が調節(補正)される。
【0049】
<凝集沈澱処理>
色度処理水は、凝集沈殿槽19に移送され、凝集フロックを大きくするためにポリマー凝集剤が色度処理水に添加される。ポリマー凝集剤に加え、フロック形成助剤、アルカリ剤(例えば、消石灰、水酸化ナトリウム、ソーダ灰など)、および/または凝集助剤等を色度処理水に添加してもよく、これにより、微生物を含む生物処理由来のSSをより確実に除去することができる。凝集沈殿槽19で得られた凝集沈殿汚泥の一部を色度処理槽10に返送してもよい。これにより、凝集沈殿槽19の凝集フロックを安定して大きくすることができ、良好な固液分離が可能となる。
【0050】
<汚泥処理>
凝集沈殿処理で得られた凝集沈殿汚泥は、汚泥処理装置21へ移送され、脱水される。汚泥処理装置21で得られた分離水は、色度成分の再処理のため、生物処理槽1へ返送される。一般に分離水中の色度は、生物処理槽1に導入される有機性排水の色度よりも低く、分離水を生物処理槽1に返送することで、生物処理槽1内の有機性排水を希釈し、有機性排水の色度が低下する。結果として、使用すべきアルミニウム系凝集剤の添加量を少なくすることができる。
【0051】
上述した実施形態によれば、色度処理水内の残留アルミニウムが1mg/L以下に抑えられるので、汚泥処理装置21で得られた分離水を生物処理槽1へ返送しても、生物処理槽1内のアルミニウム濃度を低く維持することができ、生物処理槽1内の活性汚泥中へのアルミニウム蓄積が抑制される。活性汚泥中へのアルミニウム蓄積が抑制されることで、汚泥のろ過性向上、糸状性バルキングの抑制、生物処理槽1内での栄養塩の維持が達成され、安定的な生物処理が行われる。
【0052】
また、アルミニウム系凝集剤の添加量の最適化により、流入水質が頻繁に変化するような状況であってもアルミニウム系凝集剤の過剰添加が抑えられ、アルミニウム系凝集剤のコストや汚泥発生量の削減ができる。さらに、第2色度計15で色度のモニタリングを行うことで、放流水の管理基準値を確実に遵守することができる。
【0053】
次に、色度除去装置の他の実施形態について、
図2を参照して説明する。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、
図1を参照して説明した上記実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0054】
図2に示す色度除去装置は、生物処理を行う装置として、膜分離活性汚泥法を行う膜分離槽(MBR槽)27を備えている。この膜分離槽(MBR槽)27は、有機性排水に対して膜分離活性汚泥法を行うことで、該有機性排水から有機物および濁質が除去された生物処理水を生成するように構成されている。膜分離槽(MBR槽)27は、生物処理を行うのみならず、浮遊物質(SS)などの濁質を除去するろ過機能を有しているので、
図1に示す固液分離槽2および第1ろ過器5が不要である。結果として、色度除去装置のコンパクト化が可能となる。
【0055】
膜分離槽(MBR槽)27を備えた色度除去装置は、沈殿池使用時と比較して活性汚泥浮遊物質(MLSS)濃度を高く設定することが可能である。膜分離槽(MBR槽)27内のMLSS濃度を高く維持することで、生物処理工程での色度除去が更に効果的に行われ、色度処理槽10への流入する生物処理水の色度を低くすることができる。処理対象の色度が低いことでアルミニウム系凝集剤の添加量を削減することができる。
【0056】
次に、有機性排水の色度除去処理の実施結果について説明する。
(実施例1)
図2に示す色度除去装置を用いた有機性排水の色度除去処理を行った。色度300度の飲料排水を有機性排水に使用し、この有機性排水に対して膜分離槽27において膜分離活性汚泥方式による生物処理を行って生物処理水を得た。この膜分離活性汚泥方式による生物処理は、有効ろ過径0.4μmの中空糸膜を用いたので、
図1に示す第1ろ過器5によるろ過処理と同様のろ過処理を含むものである。第1色度計6によって波長470nmでの吸光度を測定し、生物処理水の色度を決定した。さらに、アルミニウム系凝集剤として塩化アルミニウムの添加量を色度測定結果から決定した。
【0057】
得られた生物処理水を色度処理槽10に移送し、pH7.0となるように硫酸および水酸化ナトリウムでpHを調整した。色度処理槽10内に設置した撹拌機にて生物処理水を撹拌しながら塩化アルミニウムを所定量添加した。その後色度処理槽10内の色度処理水を一部採取し、0.4μmの中空糸膜を持つろ過器12にてろ過を行った後、第2色度計15によって波長390nmでの吸光度を測定し、色度処理水の色度を決定した。
【0058】
図3は、色度除去処理の実施結果を示す表である。生物処理水の色度を第1色度計6で測定したところ122~158度であった。この測定値から、必要な塩化アルミニウム添加量が58~82mg/Lと算出された。塩化アルミニウム添加量がこの範囲内の値となるように塩化アルミニウム添加量を制御したところ、色度処理後の色度は49~67度となり、管理基準値100度以下であった。また、色度処理水中のアルミニウム濃度は0.1mg/L程度と、管理基準値1mg/L以下であった。生物処理槽1における活性汚泥の水酸化アルミニウム含有率は5~8%であり、汚泥のろ過性評価の指標となる5分間でのろ紙ろ過量は20~28.4mLであった。5分間でのろ紙ろ過量は10mL以上であれば汚泥のろ過性は良いとされることから、本実施形態の色度除去装置および色度処理方法によって汚泥のろ過性が良好な状態に維持されることが示された。
【0059】
(比較例1)
図4に示すように色度計を使用しない従来の色度除去処理方法で有機性排水の色度除去処理を行った。塩化アルミニウム添加量を105mg/L一定として色度122~158度の生物処理水の色度処理を行ったところ、処理水色度は38~45度となり、管理基準値100度以下であった。しかしながら、色度処理水中のアルミニウム濃度が0.4~1.4mg/Lであった。生物処理水の色度が低い場合に凝集剤が過剰となり、色度処理水中のアルミニウム濃度の管理基準値1mg/L以上となった。このときの生物処理槽1における活性汚泥の水酸化アルミニウム含有率は20~30%であり、処理水質の悪化、バルキングの発生が確認された。また、汚泥のろ過性評価の指標となる5分間でのろ紙ろ過量は4.7~8.2mLであり、汚泥のろ過性は不良であった。
【0060】
実施例1では、比較例1と比べると、凝集剤添加量を有機性排水の色度に応じて変更することにより、凝集剤添加量が22~45%削減されたことから、本発明の色度除去処理よって処理コストの低下が実現できたことが示された。また、膜分離槽(MBR槽)27における活性汚泥中のアルミニウム含有率が低下し、糸状性生物の発生抑制により糸状性バルキング現象が解消された。膜分離槽27内のMLSS濃度を一定に保つことができるようになり、生物処理の安定化にもつながった。
【0061】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 生物処理槽
2 固液分離槽
5 第1ろ過器
6 第1色度計
7 制御装置
8 アルミニウム系凝集剤添加装置
10 色度処理槽
12 第2ろ過器
15 第2色度計
11 汚泥返送ライン
17 ポリマー凝集剤添加装置
19 凝集沈殿槽
21 汚泥処理装置
22 分離水返送ライン
27 膜分離槽(MBR槽)