(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067826
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240510BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G01C21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178177
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】599115217
【氏名又は名称】株式会社 ディー・エヌ・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】二見 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊予永 昭寛
(72)【発明者】
【氏名】左向 貴代
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 千絵
(72)【発明者】
【氏名】平原 賢司
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB23
2F129BB29
2F129DD39
2F129DD46
2F129DD47
2F129DD49
2F129EE94
2F129FF02
2F129FF12
2F129FF71
2F129HH12
2F129HH21
5H181AA01
5H181FF10
5H181FF32
5H181MB03
(57)【要約】
【課題】電気自動車の電費が悪化した要因を把握し易くする。
【解決手段】情報処理装置は、電気自動車の走行中における走行距離と電池の充電量とを対応付けて記録した走行データと、電気自動車の走行中における速度と加速度を対応付けて記録したセンサデータと、を取得する取得部と、走行データに基づいて、電気自動車の電費を算出する電費算出部と、電費算出部が算出した電費が所定の基準電費を下回った場合に、センサデータを解析して、電気自動車の電費が悪化した要因を判別する悪化要因解析部と、悪化要因解析部が判別した要因に応じて、提示情報を生成する提示情報生成部と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車の走行中における走行距離と電池の充電量とを対応付けて記録した走行データと、前記電気自動車の走行中における速度と加速度を対応付けて記録したセンサデータと、を取得する取得部と、
前記走行データに基づいて、前記電気自動車の電費を算出する電費算出部と、
前記電費算出部が算出した電費が所定の基準電費を下回った場合に、前記センサデータを解析して、前記電気自動車の電費が悪化した要因を判別する悪化要因解析部と、
前記悪化要因解析部が判別した要因に応じて、提示情報を生成する提示情報生成部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記悪化要因解析部は、
前記センサデータから、所定の速度のときの上下方向の加速度について、微分値を算出し、
前記微分値に基づいて、前記電気自動車における積載の有無を判別し、
判別した前記積載の有無に基づいて電費の悪化の要因を判別する、ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記悪化要因解析部は、
前記微分値が正の値のときの絶対値が所定の基準値以上であり、かつ、前記微分値が負の値のときの絶対値が前記基準値未満である場合、運転の仕方が電費の悪化の要因であると判別し、
前記微分値が正の値のときの絶対値が前記基準値未満であり、かつ、前記微分値が負の値のときの絶対値が前記基準値以上である場合、積載量が電費の悪化の要因であると判別することを特徴する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記悪化要因解析部が積載量が電費の悪化の要因であると判別した場合に、前記提示情報生成部は、前記提示情報として、運転の仕方の改善を促す情報を生成することを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
コンピュータが実行する、
電気自動車の走行中における走行距離と電池の充電量とを対応付けて記録した走行データと、前記電気自動車の走行中における速度と加速度を対応付けて記録したセンサデータとを取得するステップと、
前記走行データに基づいて、前記電気自動車の電費を算出するステップと、
算出した電費が所定の基準電費を下回った場合に、前記センサデータを解析して、前記電気自動車の電費が悪化した要因を判別するステップと、
判別した要因に応じて、提示情報を生成するステップと、
を有する情報処理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
電気自動車の走行中における走行距離と電池の充電量とを対応付けて記録した走行データと、前記電気自動車の走行中における速度と加速度を対応付けて記録したセンサデータと、を取得する取得部、
前記走行データに基づいて、前記電気自動車の電費を算出する電費算出部、
前記電費算出部が算出した電費が所定の基準電費を下回った場合に、前記センサデータを解析して、前記電気自動車の電費が悪化した要因を判別する悪化要因解析部、及び
前記悪化要因解析部が判別した要因に応じて、提示情報を生成する提示情報生成部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリン車から電気自動車に乗り換えるユーザが増えつつある。特許文献1には、カタログ等に記載されている車両の性能や装備等の情報(以下、「カタログ情報」という。)を管理する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車の性能の中でもエネルギー効率を示す電費は、電気自動車の経済性を評価する上で基本的で重要な指標である。一方で、電気自動車の電費は、運転の仕方、積載量、車両各部の経年劣化等の様々な要因により変動し得る。
図1は、電費に対する積載量及び加速度の影響を測定した結果の一例を示している。ここで、加速度が大きいことは急な加減速を繰り返す荒い運転方法であることを意味する。
図1において、積載量0kg、加速度0.15G(1Gは重力加速度9.8m/s
2に相当)の場合、電費は約9.9km/kWhである。これに対し、積載量を増やして積載量350kg、加速度0.15Gとした場合、電費は約8.1km/kWhまで悪化する。また、加速度を増して(つまり荒い運転をして)積載量0kg、加速度0.25Gとした場合、電費は約7.7km/kWhまで悪化する。さらに、積載量も加速度も増やして積載量350kg、加速度0.25Gとした場合には、電費は約6.2km/kWhまで悪化する。このように、電費は積載量や運転の仕方の影響を大きく受けることが分かる。
【0005】
電気自動車の使用者や管理者は、想定する電費(またはそれより良好な電費)が維持されることが期待し、実際の電費が想定する電費を下回ったときには、電費を改善する対策を講じようとすることがある。このような電費改善の対策を講じる場合、電費が悪化した要因を把握しなければ、適切な対策を講じることができない。しかしながら、電費が悪化したときに、その要因を把握することは容易ではなかった。
【0006】
そこで、本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、電気自動車の電費が悪化した要因を把握し易くすることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の情報処理装置は、電気自動車の走行中における走行距離と電池の充電量とを対応付けて記録した走行データと、電気自動車の走行中における速度と加速度を対応付けて記録したセンサデータと、を取得する取得部と、走行データに基づいて、電気自動車の電費を算出する電費算出部と、電費算出部が算出した電費が所定の基準電費を下回った場合に、センサデータを解析して、電気自動車の電費が悪化した要因を判別する悪化要因解析部と、悪化要因解析部が判別した要因に応じて、提示情報を生成する提示情報生成部と、を有する。
【0008】
本発明では、悪化要因解析部は、センサデータから、所定の速度のときの上下方向の加速度について、微分値を算出し、当該微分値に基づいて、電気自動車における積載の有無を判別し、判別した積載の有無に基づいて電費の悪化の要因を判別するとよい。
【0009】
より具体的には、悪化要因解析部は、微分値が正の値のときの絶対値が所定の基準値以上であり、かつ、微分値が負の値のときの絶対値が基準値未満である場合、運転の仕方が電費の悪化の要因であると判別し、微分値が正の値のときの絶対値が基準値未満であり、かつ、微分値が負の値のときの絶対値が基準値以上である場合、積載量が電費の悪化の要因であると判別するとよい。
【0010】
悪化要因解析部が積載量が電費の悪化の要因であると判別した場合に、提示情報生成部は、提示情報として、運転の仕方の改善を促す情報を生成するとよい。
【0011】
本発明の第2の態様の情報処理方法は、コンピュータが実行する、電気自動車の走行中における走行距離と電池の充電量とを対応付けて記録した走行データと、電気自動車の走行中における速度と加速度を対応付けて記録したセンサデータとを取得するステップと、走行データに基づいて、電気自動車の電費を算出するステップと、算出した電費が所定の基準電費を下回った場合に、センサデータを解析して、電気自動車の電費が悪化した要因を判別するステップと、判別した要因に応じて、提示情報を生成するステップとを有する。
【0012】
本発明の第3の態様のプログラムは、コンピュータを、電気自動車の走行中における走行距離と電池の充電量とを対応付けて記録した走行データと、電気自動車の走行中における速度と加速度を対応付けて記録したセンサデータと、を取得する取得部、走行データに基づいて、電気自動車の電費を算出する電費算出部、電費算出部が算出した電費が所定の基準電費を下回った場合に、センサデータを解析して、電気自動車の電費が悪化した要因を判別する悪化要因解析部、及び、悪化要因解析部が判別した要因に応じて、提示情報を生成する提示情報生成部、として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一例として、電気自動車の電費が悪化した要因を把握し易くなり、要因に応じた対応を講じることが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】電費に対する積載量及び加速度の影響を測定した結果の一例を示す。
【
図2】情報処理システムの概要を説明するための図である。
【
図4】上下方向の加速度の変化と積載の有無の関係を示すグラフである。
【
図5】情報処理装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[情報処理システムSの概要]
図2に示すように、本実施形態における情報処理システムSは、情報処理装置1、電気自動車2、及びセンサ装置3を備える。電気自動車2は、ユーザUが管理する電気自動車である。
図3は、情報処理システムSの構成をより詳細に示す図である。
【0016】
電気自動車2は、
図3に示すように、通信部21、記憶部22、バッテリー管理部23、及び走行データ記録部24を備える。なお、電気自動車2の構成については、情報処理装置1及びセンサ装置3と協働して情報処理システムSを構成するための構成のみが示され、電気自動車が一般的に備えるバッテリ、モータ等の構成については
図3では省略されている。
【0017】
通信部21は、情報処理装置1及びセンサ装置3を含む機器との間でデータを送受信するための通信インターフェースを含む。記憶部22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を含む。記憶部22は、電気自動車2が備える制御装置(不図示)が実行するプログラムや当該プログラムで使用されるデータを記憶する。また、記憶部22は、走行データ記録部24が記録する走行データを格納する。
【0018】
バッテリー管理部23は、電気自動車2が備えるバッテリーの充電状態等を管理する。本実施形態において、バッテリー管理部23は、電気自動車2が有する電池の充電量を管理するとともに、走行中の充電量の情報を走行データ記録部24に随時提供する。また、バッテリー管理部23は、情報処理装置1からの要請に応じて、通信部21を介して電池の充電量の情報を提供する。
【0019】
走行データ記録部24は、電気自動車2の走行データを記録する。走行データは、電気自動車2の走行距離(例えば製造時を基準とする総走行距離)と電池の充電量とが対応付けられたデータとするとよい。走行データ記録部24は、このような走行距離と充電量とが対応付けられたデータを定期的に(例えば1分毎に)記録し、記憶部22に格納する。
【0020】
センサ装置3は、通信部31、記憶部32、センサ33、及びセンサデータ記録部34を備える。通信部31は、情報処理装置1および電気自動車2を含む機器との間でデータを送受信するための通信インターフェースを含む。記憶部32は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を含む。記憶部32は、センサデータ記録部34が取得するセンサデータを格納する。センサ33は、電気自動車2の走行中の加速度を検出する。センサデータ記録部34は、センサデータ記録部34は、センサ33による上下方向の加速度の検出値と、電気自動車2の速度とを対応付けたデータをセンサデータとして記録する。
【0021】
後述するように情報処理装置1において、上下方向の加速度の時間微分値を用いた解析を行う。このため、センサ33による上下方向の加速度の検出値を所定のサンプリングレートで所定のサンプリングポイント数だけ記録した時系列の加速度データと電気自動車2の速度とを対応付けたものをセンサデータとするとよい。電気自動車2の速度は、通信部31を介して電気自動車2から取得するとよい。
【0022】
センサ装置3は、電気自動車2に内蔵されてもよいし、電気自動車2とは別体の機器に設けられてもよい。センサ装置3が、電気自動車2に内蔵される場合、通信部31及び記憶部32は電気自動車2の通信部21及び記憶部22を共用してもよい。センサ装置3が電気自動車2とは別体の機器に設けられる場合、例えば、センサ装置3は、センサ33を内蔵するスマートフォン等の情報端末を用いるとよい。センサ装置3が電気自動車2とは別体の機器として設けられる場合、情報処理装置1は、センサ装置3を備える機器設置するべき電気自動車2の所定の位置(例えば重心位置)をユーザに案内にするとよい。あるいは、センサ装置3を備える機器を設置した電気自動車2内における位置をユーザに選択させてもよい。
【0023】
情報処理装置1は、有線または無線の通信手段を介して電気自動車2が記録した走行データやセンサ装置3が記録したセンサデータを収集し、電気自動車2の走行可能距離(最大走行距離)、電費等を算出し、これらに基づく提示情報を生成する。情報処理装置1は電気自動車2内に配置されてもよいし、電気自動車2の外部に配置されてもよい。
【0024】
情報処理装置1は、通信部11、記憶部12、及び制御部13を有する。通信部11は、ネットワークを介して電気自動車2、センサ装置3、及び必要に応じてその他の機器との間でデータを送受信するための通信インターフェースを含む。通信部11は、電気自動車2からの走行データやセンサ装置3からのセンサデータを受け取り、後述する電費算出部131及び悪化要因解析部132に入力する。すなわち、通信部11は本発明における取得部として機能する。また、通信部11は、後述する提示情報生成部133が生成した提示情報を、電気自動車2やユーザが保有する情報端末へと送信する。情報処理装置1は汎用のコンピュータであってもよく、当該コンピュータが、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、情報処理装置1の各機能を実現してもよい。
【0025】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を含む。記憶部12は、制御部13が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部12は、基準データを記憶する。基準データは、少なくとも、電気自動車2の基準電費を示すデータを含む。この基準電費は、電気自動車2を所定の使用条件(積載量、用途等)で使用したときに期待される電費であり、例えば電気自動車2の導入時に定められる。想定電費は、固定の値である必要はなく、基準日(例えば製造費)からの経過時間、電気自動車2の累積走行距離、使用時の気温等に応じて変化する(つまり、経時的な劣化や気候の影響を反映する)ものであってもよい。
【0026】
制御部13は、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより情報処理装置1の各部を制御するとともに、電費算出部131、悪化要因解析部132、及び提示情報生成部133の機能を実現する。
【0027】
電費算出部131は、通信部11を介して電気自動車2の記憶部22に記憶されている走行データを取得し、取得した走行データに基づいて、電気自動車2の電費を算出する。上述のように走行データ記録部24が走行データとして電気自動車2の走行距離と電池の充電量とが対応付けられたデータを定期的に記録する場合、電費算出部131は、所定の期間における走行距離の増加量と電池の充電量の減少量で除算することによって、電費(すなわち単位エネルギー当たりの走行距離)を算出するとよい。電費を算出する際の所定の期間は任意であるが、例えば、1時間、1日等、固定の時間としてもよいし、直前に充電を行ったとき(つまり充電量が増加したとき)から最新の走行データが記録された時までとしてもよい。
【0028】
悪化要因解析部132は、記憶部12から基準データに含まれる基準電費を示すデータを取得し、この基準電費を電費算出部131が算出した電費と比較する。そして、電費算出部131が算出した電費が基準電費を下回る場合、電費が悪化した要因を解析する。電費が悪化した要因を解析する際、悪化要因解析部132は、まず、通信部11を介してセンサ装置3の記憶部32に記憶されているセンサデータを取得する。この時取得するセンサデータは、電費算出部131が電費を算出した所定の期間に対応するデータである。
【0029】
悪化要因解析部132は、取得したセンサデータを解析して、電費の悪化が重量(積載量)に起因するものか、運転の仕方に起因するものかを判別する。
【0030】
図4は、いくつかの重量及び前後左右方向の加速度の条件での、センサ33が検出した上下方向の加速度の変化を示すグラフである。前後左右方向の加速度は、運転の仕方の特徴(荒さ)を表す指標である。
図4(a)は、積載量0kg、加速度0.15G(車両の加減速が比較的緩やかな運転)での上下方向の加速度の変化を示している。
図4(b)は、積載量0kg、加速度0.25G(車両の加減速が比較的急な運転)での上下方向の加速度の変化を示している。
図4(c)は、積載量350kg、加速度0.15G(車両の加減速が比較的緩やかな運転)での上下方向の加速度の変化を示している。
図4(d)は、積載量350kg、加速度0.25G(車両の加減速が比較的急な運転)での上下方向の加速度の変化を示している。各グラフ中で、矢印による補助線は、電気自動車2が所定の速度となっているタイミングでの上下方向の加速度の変化率を視認しやすく示したものである。
【0031】
図4(a)及び
図4(b)から、積載量が軽い場合には、上下方向の加速度が増加するときの変化(傾き)が、減少するときの変化(傾き)よりも急峻であることが分かる。また、
図4(c)及び
図4(d)から、積載量が重い場合には、上下方向の加速度が増加するときの変化(傾き)が、減少するときの変化(傾き)よりも緩やかになることが分かる。また、このような上下方向の加速度の変化の傾向は、運転の仕方に因らないことも分かる。悪化要因解析部132は、この積載量に依存した上下方向の加速度の変化の傾向を利用して、電費が悪化したときに電気自動車2が、一定以上の重量を積載していたか否かを判別する。
【0032】
すなわち、悪化要因解析部132は、取得したセンサデータに基づいて、車両の速度を微分することで車両の(前後方向の)加速度を求める。そして、求めた前後方向の加速度が所定の値である(または所定の値の範囲に入っている)タイミングでの上下方向の加速度の微分値を求める。なお、悪化要因解析部132は、複数の前後方向の加速度の値(例えば0.15Gと0.25G等)で、それぞれ上下方向の加速度の微分値を求めるとよい。
【0033】
そして、前後方向の加速度が共通である条件下において、上下方向の加速度の微分値(以下、単に微分値という)が正の値のときの絶対値が所定の基準値未満であり、かつ、微分値が負の値のときの絶対値が所定の基準値以上である場合には、悪化要因解析部132は、電気自動車2が一定以上の重量を積載していたと判別する。そして、積載量の影響で電費が悪化したものと判別する。また、当該微分値が正の値のときの微分値の絶対値が所定の基準値以上であり、かつ、微分値が負の値のときの絶対値が所定の基準値未満である場合には、積載量の影響ではなく運転の仕方(荒さ)が電費の悪化の要因であると判別する。
【0034】
電気自動車2は、走行中に加速と減速を繰り返すので、電費算出部131が電費を算出した所定の期間に対応するセンサデータには、電気自動車2が所定の加速度にとなるタイミングが複数含まれることが想定される。悪化要因解析部132は、これらの複数のタイミングにおける加速度の微分値を統計的に処理して(例えば平均値を算出して)、増速時の加速度の微分値および減速時の加速度の微分値を求めるとよい。
【0035】
提示情報生成部133は、電気自動車2の運転者や管理者に向けた通知、警告、案内等の提示情報を生成し、生成した提示情報を、画像、音声、振動その他任意の手法により提示させる。例えば、提示情報生成部133は、悪化要因解析部132が判別した悪化要因に基づく提示情報を、不図示の表示装置や情報端末(例えばセンサ装置3が電気自動車2とは別体の機器として設けられる場合には当該センサ装置を備える機器)に表示させる。悪化要因解析部132が運転の仕方(荒さ)が電費の悪化の要因であると判別した場合、提示情報生成部133は、運転の仕方の改善を促す情報を生成して表示装置や情報端末に表示させる。また、悪化要因解析部132が積載量の影響で電費が悪化したものと判別した場合には、提示情報生成部133は、その旨を示す情報を生成して表示装置や情報端末に表示させてもよい。また、悪化要因解析部132が電費悪化の要因が運転の仕方でも積載量の影響でもないと判別した場合には、提示情報生成部133は、電気自動車2の不具合や経年劣化の可能性を警告する情報を生成して表示装置や情報端末に表示させてもよい。このようにすれば、情報処理装置1は、電費算出部131が算出した電費が基準電費を下回った場合に、その要因に応じた提示情報を表示させて、電気自動車2の運転者や管理者に適切な対応を促すことができる。
【0036】
[情報処理装置1における処理の流れ]
図5は、情報処理装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
図5に示すフローチャートに示される処理は、定期的に、あるいは、ユーザや管理者の求めに応じて、開始される。この処理は、電気自動車2の走行中にリアルタイムで実施してもよいし、走行中以外の時間(不使用時、整備中、充電中等)に実施してもよい。走行中にリアルタイムで処理を実施する場合には、運転の仕方(荒さ)によって電費が悪化したときに、その場で運転者に運転の仕方の改善を促すことができる。
【0037】
処理が開始されると、初めに、電費算出部131が通信部11を介して電気自動車2の記憶部22に記憶されている走行データを取得する(S1)。続いて、電費算出部131は、取得した走行データに基づいて所定の期間における電気自動車2の電費を算出する(S2)。そして、記憶部12に記憶されている基準電費と算出した電費とを対比し(S3)、算出した電費が基準電費を下回っていない場合には(S3;No)、処理を終了する。一方、算出した電費が基準電費を下回っている場合には(S3;Yes)、悪化要因解析部132が、通信部11を介してセンサ装置3の記憶部32に記憶されているセンサデータを取得する(S4)。そして、悪化要因解析部132は、取得したセンサデータを解析して、電費が悪化した走行時の積載の有無を判別するとともに、電費が悪化した要因を判別する(S5)。続いて、悪化要因解析部132が判別した電費の悪化要因に基づいて、提示情報生成部133が提示情報を生成して、表示装置や情報端末に当該提示情報を表示させ(S6)、一連の処理を終了する。
【0038】
[情報処理装置1による効果]
以上で説明した第4実施形態の情報処理装置1によれば、電気自動車2の電費が基準電費を下回った場合に、電費悪化の要因に応じた提示情報を、運転者や管理者に提示することができる。
【0039】
<実施形態の変形>
上記の実施形態では、所定の車両速度での上下方向の加速度の変化(微分値)の傾向に基づいて積載の有無を判別し、電費悪化の要因を判別したが、積載の有無を判別する方法はこれに限定されない。例えば、センサデータとして、走行中の加速度やヨー・レートのデータを記録・取得し、加速度やヨー・レートのデータについて周波数解析を行って固有振動数を求め、当該固有振動数の変化に基づいて積載の有無を判別するようにしてもよい。
【0040】
また、悪化要因解析部が、上下方向の加速度の変化(微分値)以外の情報も踏まえて電費悪化の要因を判別するようにしてもよい。例えば、前後方向の加速度が所定の加速度(例えば比較的荒い運転に相当する0.25G)に達する頻度を踏まえて電費悪化の要因を判別してもよい。
【0041】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施形態も、本発明の実施形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施形態の効果は、もとの実施形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0042】
1 情報処理装置
2 電気自動車
3 センサ装置
S 情報処理システム