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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067827
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】金型用ガス抜き装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20240510BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B22D17/22 G
B22C9/06 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178179
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】村尾 優作
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祥平
(72)【発明者】
【氏名】花岡 祥平
(72)【発明者】
【氏名】松尾 泰久
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093KB05
4E093NA01
4E093NB01
(57)【要約】
【課題】受圧ピンの外周面と該受圧ピンが嵌合する孔部の内周面との間の隙間に入り込んだ異物により、受圧ピンの摺動性が悪化することを出来る限り抑制する。
【解決手段】受圧ピン8は、固定型2に設けられかつ排気通路4の入口側の部分と連通する貫通孔2aに嵌合する嵌合部81と、嵌合部81よりも排気通路4側に嵌合部81と同軸に位置しかつ溶湯を受けて貫通孔2aに対して摺動する円柱状の先端部82と、嵌合部81と先端部82との間に嵌合部81及び先端部82と同軸に位置しかつ先端部82よりも小径な中間部83と、を有し、可動型3の型開き時に、中間部83の外周面と貫通孔2aの内周面との間の隙間及び先端部82と固定型2との間の隙間を通って可動型3側に抜けるようにエアを供給するエア供給装置6を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と、可動型と、該固定型及び該可動型の合わせ面に形成され、金型のキャビティに連通する排気通路と、前記固定型における前記排気通路の入口側に、排気通路側及び反排気通路側に摺動自在に設けられ、該排気通路に流入する溶湯の流動圧により反排気通路側へ摺動するように構成された受圧ピンと、前記固定型における前記排気通路の出口側に設けられ、前記受圧ピンの反排気通路側への摺動により、連動レバーを介して、前記排気通路を閉じるように構成された閉鎖バルブと、を備えた金型用ガス抜き装置であって、
前記受圧ピンは、
前記固定型に設けられかつ前記排気通路の前記入口側の部分と連通する孔部に嵌合する嵌合部と、
前記嵌合部よりも前記排気通路側に該嵌合部と同軸に位置しかつ前記溶湯を受けて前記孔部に対して摺動する円柱状の先端部と、
前記嵌合部と前記先端部との間に該嵌合部及び該先端部と同軸に位置しかつ該先端部よりも小径な中間部と、
を有し、
前記可動型の型開き時に、前記中間部の外周面と前記孔部の内周面との間の隙間及び前記先端部と前記固定型との間の隙間を通って前記可動型側に抜けるようにエアを供給するエア供給装置を更に備えることを特徴とする金型用ガス抜き装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金型用ガス抜き装置において、
前記嵌合部は、
前記孔部の内周面に対して所定のクリアランスで摺動する摺動部と、
前記受圧ピンの軸方向に延びかつ前記孔部の内周面に対して前記所定のクリアランスよりも大きい隙間を形成する溝部と、
を有し、
前記エア供給装置は、前記可動型の型開き時に、前記溝部を通って、前記中間部の外周面と前記孔部の内周面との間の隙間にエアを供給するように構成されていることを特徴とする金型用ガス抜き装置。
【請求項3】
請求項2に記載の金型用ガス抜き装置において、
前記エア供給装置は、前記嵌合部よりも反排気通路側からエアを供給するよう構成されていることを特徴とする金型用ガス抜き装置。
【請求項4】
請求項3に記載の金型用ガス抜き装置において、
前記受圧ピンは、
前記嵌合部よりも反排気通路側に位置し、該嵌合部の最大径よりも大径な鍔部と、
前記嵌合部と前記鍔部との間に設けられ、半径が前記受圧ピンの中心軸から前記嵌合部の前記溝部までの最短距離以下に設定された小径部と、
を更に有し、
前記鍔部は、前記軸方向の反排気通路側から見て、前記小径部の外周面と前記孔部の内周面との間の隙間に連通する窪み部を有することを特徴とする金型用ガス抜き装置。
【請求項5】
請求項4に記載の金型用ガス抜き装置において、
前記溝部は、複数あるとともに、前記嵌合部の周方向に間隔を空けてそれぞれ形成されており、
前記窪み部は、複数あるとともに、前記軸方向の反排気通路側から見て、前記各溝部と重複する位置にそれぞれ配置されていることを特徴とする金型用ガス抜き装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の金型用ガス抜き装置において、
前記溝部は、複数あるとともに、前記嵌合部の周方向に等間隔に形成されていることを特徴とする金型用ガス抜き装置。
【請求項7】
請求項1に記載の金型用ガス抜き装置において、
前記先端部の外径は、前記嵌合部における最大径と同径であることを特徴とする金型用ガス抜き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、金型用ガス抜き装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋳造品を鋳造する金型のキャビティ内からガスを抜くための金型用ガス抜き装置として、特許文献1に開示されたものが知られている。
【0003】
特許文献1の金型用ガス抜き装置は、固定型及び可動型の合わせ面部に形成された排気通路を備えている。この排気通路の入口は、金型のキャビティに連通し、出口は、キャビティ内のガスを吸引する吸引装置に接続されている。前記固定型における前記排気通路の入口側には、断面円形の受圧ピンが設けられている。この受圧ピンは、排気通路側及び反排気通路側に摺動自在に設けられていて、該排気通路に流入した溶湯の流動圧により反排気通路側へ摺動するように構成されている。また、前記固定型における前記排気通路の出口側には、前記受圧ピンの反排気通路側への摺動により、連動レバーを介して、前記排気通路を閉じるように構成された閉鎖バルブが設けられている。この構成により、排気通路に流入した溶湯が、前記排気通路の出口から排出されるのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-5792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような金型用ガス抜き装置では、受圧ピンががたつくことなくかつスムーズに摺動するように、受圧ピンは、該受圧ピンが嵌合する孔部の内周面との間に、所定のクリアランスを空けて配置されている。キャビティで繰り返し多数の鋳造品を形成し続けると、やがて、このクリアランス部分に溶湯やキャビティの潤滑用の潤滑油等の異物が入り込んで固化してしまい、受圧ピンが摺動しにくくなるおそれがある。受圧ピンが摺動しにくくなると、閉鎖バルブにより排気通路を閉じることができなくなって、ガス抜き装置の連続稼働が阻害されてしまう。
【0006】
特許文献1では、受圧ピンの排気通路側の部分に窪みを設けて、溶湯の流れを弱くすることで、溶湯がクリアランス部分に入ることを抑制するようにしている。しかしながら、このような構成であっても、クリアランス部分への溶湯の侵入を完全に抑制することは困難であり、鋳造を繰り返すうちに僅かに侵入した溶湯が蓄積されて、受圧ピンが摺動しにくくなるおそれがある。このため、受圧ピンの摺動性の悪化を抑制するという観点からは改良の余地がある。
【0007】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、受圧ピンの外周面と該受圧ピンが嵌合する孔部の内周面との間の隙間に入り込んだ異物により、受圧ピンの摺動性が悪化することを出来る限り抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様では、固定型と、可動型と、該固定型及び該可動型の合わせ面に形成され、金型のキャビティに連通する排気通路と、前記固定型における前記排気通路の入口側に、排気通路側及び反排気通路側に摺動自在に設けられ、該排気通路に流入する溶湯の流動圧により反排気通路側へ摺動するように構成された受圧ピンと、前記固定型における前記排気通路の出口側に設けられ、前記受圧ピンの反排気通路側への摺動により、連動レバーを介して、前記排気通路を閉じるように構成された閉鎖バルブと、を備えた金型用ガス抜き装置を対象として、前記受圧ピンは、前記固定型に設けられかつ前記排気通路の前記入口側の部分と連通する孔部に嵌合する嵌合部と、前記嵌合部よりも前記排気通路側に該嵌合部と同軸に位置しかつ前記溶湯を受けて前記孔部に対して摺動する円柱状の先端部と、前記嵌合部と前記先端部との間に該嵌合部及び該先端部と同軸に位置しかつ該先端部よりも小径な中間部と、を有し、前記可動型の型開き時に、前記中間部の外周面と前記孔部の内周面との間の隙間及び前記先端部と前記固定型との間の隙間を通って前記可動型側に抜けるようにエアを供給するエア供給装置を更に備える、という構成とした。
【0009】
この構成によると、可動型の型開き時に可動型側に抜けるエアが供給されるため、鋳造時に、受圧ピンの外周面と孔部の内周面との間に異物が入りこんでいたとしても、エアの圧力によって異物を排出することができる。特に、先端部の反排気通路側に、該先端部よりも小径な中間部があることにより、中間部に供給されたエアは、中間部の周方向全体に広がった後、可動型側に抜ける。これにより、特に異物が入り込み易い孔部の可動型側の部分全体にエアを供給することができる。この結果、受圧ピンの摺動性が悪化することを出来る限り抑制することができる。
【0010】
ここに開示された技術の第2の態様では、前記嵌合部は、前記孔部の内周面に対して所定のクリアランスで摺動する摺動部と、前記受圧ピンの軸方向に延びかつ前記孔部の内周面に対して前記所定のクリアランスよりも大きい隙間を形成する溝部と、を有し、前記エア供給装置は、前記可動型の型開き時に、前記溝部を通って、前記中間部の外周面と前記孔部の内周面との間の隙間にエアを供給するように構成されている、という構成でもよい。
【0011】
この構成によると、受圧ピンの軸方向における中間部よりも反排気通路側に位置する溝部からエアが供給されるため、中間部の前記軸方向全体にエアを供給することができる。また、溝部を通って中間部にエアを供給することで、中間部から先端部に向かうエアの流れを強くすることができる。これにより、異物をより効果的に排出することができ、受圧ピンの摺動性が悪化することを出来る限り抑制することができる。
【0012】
ここに開示された技術の第3の態様では、前記第2の態様において、前記エア供給装置は、前記嵌合部よりも反排気通路側からエアを供給するよう構成されている、という構成でもよい。
【0013】
この構成によると、受圧ピンの軸方向全体にエアを通すことができるため、異物を効果的に除去することができる。これにより、受圧ピンの摺動性が悪化することをより効果的に抑制することができる。
【0014】
ここに開示された技術の第4の態様では、前記第3の態様において、前記受圧ピンは、前記嵌合部よりも反排気通路側に位置し、該嵌合部の最大径よりも大径な鍔部と、前記嵌合部と前記鍔部との間に設けられ、半径が前記受圧ピンの中心軸から前記嵌合部の前記溝部までの最短距離以下に設定された小径部と、を更に有し、前記鍔部は、前記軸方向の反排気通路側から見て、前記小径部の外周面と前記孔部の内周面との間の隙間に連通する窪み部を有する、という構成でもよい。
【0015】
この構成によると、窪み部があることで、嵌合部よりも大径な鍔部があったとしても、小径部の外周面と孔部の内周面との間に適切に流入させることができる。そして、窪み部から流入したエアは、小径部の外周面と孔部の内周面との間に広がって、溝部に流入する。このため、受圧ピンの周方向において、窪み部と溝部との間に多少の位置ずれがあったとしても、溝部にエアを適切に流入させることができる。これにより、受圧ピンの摺動性が悪化することをより効果的に抑制することができる。
【0016】
ここに開示された技術の第5の態様では、前記第4の態様において、前記溝部は、複数あるとともに、前記嵌合部の周方向に間隔を空けてそれぞれ形成されており、前記窪み部は、複数あるとともに、前記軸方向の反排気通路側から見て、前記各溝部と重複する位置にそれぞれ配置されている、という構成でもよい。
【0017】
この構成によると、溝部及び窪み部が複数あることで、エアを効果的に流通させることができる。また、溝部と窪み部との位置が軸方向の反排気通路側から見て重複していることにより、エアが流通しやすくなる。これにより、受圧ピンの摺動性が悪化することをより効果的に抑制することができる。
【0018】
ここに開示された技術の第6の態様では、前記第1~5のいずれか1つの態様において、前記溝部は、複数あるとともに、前記嵌合部の周方向に等間隔に形成されている、という構成でもよい。
【0019】
この構成によると、受圧ピンの外周面と孔部の内周面との間に、エアを均一に流通させることができ、エアの流量の偏りにより異物が偏在してしまうのを抑制することができる。これにより、受圧ピンの摺動性が悪化することをより効果的に抑制することができる。
【0020】
ここに開示された技術の第7の態様では、前記第1の態様において、前記先端部の外径は、前記嵌合部における最大径と同径である、という構成でもよい。
【0021】
この構成によると、先端部の外周面と孔部の内周面との間の隙間を出来る限り狭くすることができ、該隙間に異物が入り込むのを抑制することができる。また、仮に異物が入り込んだとしても、エアにより異物を排出することができる。したがって、受圧ピンの摺動性が悪化することをより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、受圧ピンの外周面と該受圧ピンが嵌合する孔部の内周面との間の隙間に入り込んだ異物により、受圧ピンの摺動性が悪化することを出来る限り抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、例示的な実施形態に係る金型用ガス抜き装置が設けられたダイキャスト用金型の基本構成を示す断面図である。
図2図2は、金型用ガス抜き装置の詳細構成を示す断面図であって、排気通路が開いた状態を示す。
図3図3は、金型用ガス抜き装置の詳細構成を示す断面図であって、排気通路が閉じた状態を示す。
図4図4は、図2のIV-IV線相当の平面で切断した断面図である。
図5図5は、受圧ピンを軸方向の鍔側から見た図である。
図6図6は、受圧ピンの周囲を拡大して示す拡大断面図であって、固定型と可動型とが型締めした状態を示す。
図7図7は、受圧ピンの周囲を拡大して示す拡大断面図であって、溶湯により受圧ピンが押し上げられた状態を示す。
図8図8は、受圧ピンの周囲を拡大して示す拡大断面図であって、固定型と可動型とが型開きした状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る金型用ガス抜き装置1が設けられたダイキャスト用の金型31(以下、単に金型31という)の基本構成を示し、図2及び図3は、金型用ガス抜き装置1の詳細を示す。
【0026】
金型31は、固定主型32と、固定主型32に対して接離する方向(図1では左右方向)に移動する可動主型33とを備える。固定主型32には、キャビティ固定型34が設けられている。可動主型33には、キャビティ可動型35が可動主型33と共に移動するように設けられている。キャビティ固定型34及びキャビティ可動型35の合わせ面には、鋳造品(アルミニウム鋳造品やマグネシウム鋳造品等)を形成するキャビティ36が形成されている。
【0027】
固定主型32は、キャビティ36に連通する射出スリーブ38を有し、この射出スリーブ38内には、射出ピストン39が嵌挿されている。この射出ピストン39によって射出スリーブ38内の溶湯(アルミニウム溶湯やマグネシウム溶湯等)を押し出してキャビティ36内に充填させる。
【0028】
可動主型33には、キャビティ36での鋳造品の形成後における金型31の型開き後に該鋳造品を押し出すための押圧板41及び押出ピン42が設けられている。
【0029】
金型用ガス抜き装置1は、キャビティ36を挟んで、溶湯が充填される側(図1では下側)とは反対側(図1では上側)に設けられている。金型用ガス抜き装置1は、固定主型32に設けられた固定型2と、可動主型33に設けられていて可動主型33と共に移動する可動型3とを備えている。可動型3は、固定型2に対して接離する方向(図1では左右方向、図2及び図3では上下方向)に移動可能である。固定型2及び可動型3の合わせ面には、キャビティ36に連通してキャビティ36内のガスを排気するための排気通路4が形成されている。
【0030】
本実施形態では、排気通路4の長さ方向の中間部分が、固定型2及び可動型3の合わせ面に形成されている。排気通路4におけるキャビティ側(入口側)の部分は、キャビティ固定型34及びキャビティ可動型35の合わせ面に形成されていて、キャビティ36に接続されている。一方、排気通路4における出口側の部分は、後述のバルブ用ブッシュ13内及び固定型2内に形成されている。排気通路4の出口は、キャビティ36内のガスを吸引する吸引装置5に接続されている。
【0031】
排気通路4における可動型3に形成された部分は、入口側(図2及び図3では右側)から後述の受圧ピン8の先端面に対向する位置まで延びた後、図2及び図3の紙面の手前側及び奥側を通って(迂回して)、後述の閉鎖バルブ12の弁本体部12aに対向する位置に達する。
【0032】
金型用ガス抜き装置1は、固定型2における排気通路4の入口側(図2及び図3では右側)に設けられた受圧ピン8と、固定型2における排気通路4の出口側(図2及び図3では左側)に設け螺得た閉鎖バルブ12と、を備えている。
【0033】
受圧ピン8は、その中心軸が固定型2及び可動型3の合わせ面に垂直な方向に延び、かつ、該方向の排気通路4側(可動型3側)及び反排気通路4側(反可動型3側)に摺動自在に設けられている。受圧ピン8は、固定型2に設けられた貫通孔2a(図6等参照)内に配置されている。貫通孔2aの一部は、固定型2に固定された円筒状のピン用ブッシュ9の中心部を排気通路4側に向かって貫通する嵌合孔9aにより形成されている。
【0034】
受圧ピン8は、嵌合孔9aに嵌合する嵌合部81と、嵌合部81に対して前記軸方向おける排気通路4側に位置する円柱状の先端部82と、前記軸方向における嵌合部81と先端部82との間に位置しかつ該先端部82よりも小径な円柱状の中間部83と、を有する。また、受圧ピン8は、嵌合部81に対して反排気通路4側に位置しかつ嵌合部81の最大径よりも大径な鍔部84と、嵌合部81と鍔部84との間に設けられかつ半径が受圧ピン8の中心軸から嵌合部81の後述する溝部81bまでの最短距離よりも僅かに小さく設定された小径部85と、を更に有する。嵌合部81、先端部82、中間部83、鍔部84、及び小径部85はそれぞれ同軸に配置されている。受圧ピン8、特に、嵌合部81及び先端部82は、ピン用ブッシュ9の嵌合孔9aに対して摺動する。受圧ピン8は、先端部82の排気通路4側の面に、排気通路4に流入した溶湯が接触して、該溶湯がその流動圧でもって受圧ピン8を反排気通路4側へ押圧することで、前記軸方向に沿って反排気通路4側へ摺動する。
【0035】
嵌合部81の最大径と先端部82の径とは同径であり、嵌合部81及び先端部82は、ピン用ブッシュ9の嵌合孔9aの内周面に対して所定のクリアランスでもって摺動する。所定のクリアランスは、受圧ピン8ががたつくことなくかつスムーズに摺動するような量に設定されている。所定のクリアランスは、例えば、0.01mm~0.025mmの範囲に設定されている。
【0036】
図4に示すように、嵌合部81は、嵌合孔9aに対して摺動する摺動部81aと、受圧ピン8の軸方向に延びかつ嵌合孔9aの内周面に対して前記所定のクリアランスよりも大きい隙間を形成する溝部81bと、を有する。溝部81bは、複数(本実施形態では4つ)あるとともに、嵌合部81の周方向に等間隔にそれぞれ形成されている。各溝部81bは、円柱の外周部の一部を平らに切削してそれぞれ形成されている。
【0037】
先端部82は、図2及び図3に示すように、固定型2と可動型3とが型締めした状態では、可動型3の一部に押圧されて、その先端面が固定型2と可動型3との合わせ面と面一になるように構成されている。一方で、先端部82は、固定型2と可動型3とが型開きしたときには、受圧ピン8が可動型3側に移動して、その全体が、固定型2の可動型3側の面よりも可動型3側に露出するようになっている(図8参照)。言い換えると、先端部82の前記軸方向の長さは、固定型2と可動型3とが型開きしたときに、先端部82の全体が、固定型2の可動型3側の面よりも可動型3側に露出する程度の長さに設定されている。
【0038】
中間部83は、嵌合部81及び先端部82よりも小径であることから、嵌合孔9aの内周面との間に前記所定のクリアランスよりも大きい隙間を形成する。この隙間により受圧ピンの摺動抵抗を出来る限り小さくすることができる。
【0039】
鍔部84は、固定型2と可動型3とが型開きしたときに、受圧ピン8が固定型2から抜け落ちないように、受圧ピン8の軸方向の移動を制限する部分である。具体的には、固定型2の貫通孔2aにおける反排気通路4側の端部には、受圧ピン8が可動型3側に移動した時に鍔部84が当接する当接部2b(図6等参照)を有する段差部が設けられている。鍔部84は、型開き時に受圧ピン8が可動型3側へ摺動したときに、当接部2bに当接するようになっており、受圧ピン8は、鍔部84が当接部2bに当接したときには、その当接した位置から可動型3側へ摺動することができないようになっている。前記段差部の深さは、先端部82の前記軸方向の長さよりも大きい深さになっている。これにより、型開きにより受圧ピン8が可動型3側に移動した際には、先端部82の全体が固定型2の可動型3側の面よりも可動型3側に露出することができる。
【0040】
図5に示すように、鍔部84は、前記軸方向の反排気通路4側から見て、小径部85の外周面と貫通孔2aの内周面との間の隙間に連通する窪み部84aを有する。窪み部84aは、複数(本実施形態では4つ)あるとともに、前記軸方向の反排気通路4側から見て、各溝部81bと重複する位置にそれぞれ配置されている。各窪み部84aは、鍔部84の周方向に等間隔にそれぞれ配置されている。各窪み部84aの深さは、最も深い部分が小径部85の外周面に達する程度の深さにそれぞれ設定されている。つまり、各窪み部84aにおける最も深い部分は、嵌合部81の溝部81bの底部よりも受圧ピン8の中心軸に近い位置に位置する。
【0041】
ピン用ブッシュ9の嵌合孔9aの内周面におけるブッシュ軸方向の中間部には、他の部分の内径よりも大きい内径を有する大径部9bが形成されている。この大径部9bにより、受圧ピン8の摺動抵抗を出来る限り小さくすることができる。
【0042】
閉鎖バルブ12は、受圧ピン8と同様に、固定型2及び可動型3の合わせ面に垂直な方向に延びている。閉鎖バルブ12は、該閉鎖バルブ12の軸方向の可動型3側の端部に、円板状の弁本体部12aを有するとともに、閉鎖バルブ12の軸方向の中間部に、固定型2に固定された円筒状のバルブ用ブッシュ13の中心部を貫通する貫通孔13aに嵌合して摺動する摺動部12bを有する。この摺動部12bの摺動により、閉鎖バルブ12は、閉鎖バルブ12の軸方向の可動型3側及び反可動型3側に摺動することになる。
【0043】
バルブ用ブッシュ13の貫通孔13aの可動型3側の部分は、排気通路4の一部とされていて、バルブ用ブッシュ13の周側面に形成された連通孔13b、及び、排気通路4における、固定型2内に形成された部分を介して、排気通路4の出口(吸引装置5)に接続される。バルブ用ブッシュ13の貫通孔13aにおける可動型3側の開口端は、排気通路4における、弁本体部12aに対向する部分に接続される。
【0044】
弁本体部12aは、閉鎖バルブ12が反可動型3に摺動したときに、バルブ用ブッシュ13の貫通孔13aの可動型3側の開口端を閉じる(つまり、排気通路4を閉じる)ように構成されている。また、弁本体部12aは、閉鎖バルブ12が可動型3側に摺動したときには、上記開口端を開く(つまり、排気通路4を開く)ように構成されている。
【0045】
閉鎖バルブ12における、貫通孔13aで構成された排気通路4内に位置する部分は、貫通孔13aの内径と略同じ外径を有する円筒の周方向の3箇所に切欠部12cが形成された形状をなし、各切欠部12cと貫通孔13aの内周面との間の空間が排気通路4となっている。尚、図2及び図3では、3箇所の切欠部12cのうち2箇所のみが見えており、残り1箇所は、図2及び図3の紙面奥側にあって見えていない。
【0046】
閉鎖バルブ12は、受圧ピン8の反排気通路4側への摺動により、連動レバー15を介して、排気通路4を閉じるように構成されている。具体的には、連動レバー15は、固定型2における受圧ピン8に対して反排気通路4側に形成されたレバー室2cに配置されている。連動レバー15は、受圧ピン8の中心軸及び閉鎖バルブ12の中心軸を含む平面に対して垂直な方向(図2において紙面に垂直な方向)に延びる揺動軸16回りに揺動(回動)可能に構成されている。この揺動軸16は、受圧ピン8よりも排気通路4の入口側に設けられており、連動レバー15は、揺動軸16から、上記平面に沿って閉鎖バルブ12における後述の係合凹部12dの位置にまで延びている。
【0047】
連動レバー15の先端部は、閉鎖バルブ12の軸方向の反可動型3側の端部近傍における周側面に設けられた係合凹部12dに係合している。連動レバー15の長さ方向中間部と受圧ピン8の後端面とは、互いに当接可能な位置関係にある。金型31の型開き状態では、連動レバー15は、圧縮スプリング17によって、上記平面に対して垂直な方向に延びる押圧板18を介して、揺動軸16回りに、図2で反時計回り方向に付勢される。これにより、受圧ピン8の後端面が連動レバー15により押圧されて、受圧ピン8は排気通路4側へ摺動する。また、閉鎖バルブ12は、可動型3側へ摺動して、排気通路4を開く。
【0048】
この状態から金型31を型締め状態(図2の状態)にすると、可動型3によって押圧ピン19を介して押圧板18が、圧縮スプリング17の付勢力に抗して反可動型3側に押圧される。これにより、連動レバー15には、圧縮スプリング17の付勢力は作用しなくなる。また、受圧ピン8及び閉鎖バルブ12にも力が作用しなくなり、図2に示すように、これらは、上記のように連動レバー15により押圧された位置に位置する。つまり、閉鎖バルブ12は、排気通路4を開いた状態にある。尚、前述したように、金型31が型締め状態であるときには、受圧ピン8は、可動型3からも押圧されている状態であるため、連動レバー15に押圧されたとしても、排気通路4側には移動しない。
【0049】
金型31を型締め状態にした後、射出ピストン39によってキャビティ36内に溶湯を充填させる。その際、吸引装置5が作動して、排気通路4を介して、キャビティ36内からガスが抜かれる。
【0050】
そして、キャビティ36内に溶湯が充填された後、溶湯が排気通路4に流入する。この溶湯が受圧ピン8の先端面に対向する位置に達して、溶湯の流動圧により受圧ピン8が反排気通路4側へ摺動する。この受圧ピン8の摺動により、該受圧ピン8の後端面によって連動レバー15の長さ方向中間部が反可動型3側へ押圧される。これにより、図3に示すように、連動レバー15が揺動軸16回りに時計回り方向に回動する。この連動レバー15の回動により、閉鎖バルブ12が反可動型3側へ摺動して、排気通路4を閉じる。この閉鎖バルブ12の閉じ動作と並行して、溶湯は、受圧ピン8の先端面と対向する位置から、閉鎖バルブ12の弁本体部12aに対向する位置に向かうが、排気通路4が迂回しているので、溶湯が弁本体部12aに対向する位置に達する前に、閉鎖バルブ12が排気通路4を閉じる。こうして、排気通路4に流入した溶湯が、排気通路4における、閉鎖バルブ12の弁本体部12aよりも下流側(延いては、吸引装置5)に流れることが防止される。
【0051】
ここで、受圧ピン8の外周面とピン用ブッシュ9の嵌合孔9aの内周面との間、特に先端部82と嵌合孔9aの内周面との間には、所定のクリアランスが形成されているため、そのクリアランス部分にはキャビティ潤滑用のオイルや溶湯などの異物が入り込むことがある。キャビティで繰り返し多数の鋳造品を鋳造し続けると、やがて、そのクリアランス部分に入り込んだ異物により、受圧ピン8が摺動し難くなって、閉鎖バルブ12により排気通路4を閉じることができなくなるおそれがある。特に、受圧ピン8の先端部82や中間部83には、クリアランス部分を通ってきた異物が溜まり易く、受圧ピン8の摺動不良を招き易い。
【0052】
そこで、本実施形態では、固定型2と可動型3とが型開きしたときに、貫通孔2aの内周面と受圧ピン8の外周面との間にエアを供給して、異物を除去するようにした。
【0053】
図2及び図3に示すように、固定型2における閉鎖バルブ12が配置された部分の反排気通路4側には、エア供給路60が形成されている。図1に示すように、エア供給路60の入口(図1では上側、図2及び図3では左側)には、エア供給装置6が設けられている。エア供給装置6から供給されたエアは、閉鎖バルブ12の摺動部12bと固定型2との隙間を通って、レバー室2cに入った後、貫通孔2aの内周面と受圧ピン8の外周面との間に反排気通路4側から入る。そして、エアは、窪み部84a及び溝部81bを通って、受圧ピン8の外周面と嵌合孔9aの内周面の間に進入した後、可動型3側に抜ける。これにより、嵌合孔9aの内周面と先端部82や嵌合孔9aの内周面と中間部83との間の異物が、エアの流動圧により可動型3側に排出される。
【0054】
次に、受圧ピン8の一連の動作について、図6図8を参照しながら説明する。
【0055】
まず、図6に示すように、固定型2と可動型3とが型締めした状態では、受圧ピン8は可動型3の一部に押圧されて反排気通路4側に向かって摺動する。このとき、先端部82の先端面は、固定型2と可動型3との合わせ面と面一になる。
【0056】
図6の状態から溶湯が供給されると、図7に示すように、受圧ピン8は、溶湯の流動圧により反排気通路4側に摺動する。このとき、先端部82の外周部と嵌合孔9aの内周面との間のクリアランス部分から異物がわずかに侵入する。
【0057】
図7の状態から溶湯の冷却が完了して、固定型2と可動型3とを型開きすると、連動レバー15が圧縮スプリング17に押されて回動することで、受圧ピン8が排気通路4側に摺動する。型開きを開始してから所定時間が経過すると、図8に示すように、先端部82の全体が固定型2の可動型3側の面よりも可動型3側に位置するようになる。これにより、貫通孔2aの可動型3側の端部と受圧ピン8との間に比較的大きな隙間が形成される。このタイミングでエア供給装置6が作動されて、固定型2内にエアが供給される。尚、前記所定時間は、例えば5秒間である。また、エアの供給時間は、例えば5秒間である。これらのエアの供給タイミング及び供給時間は、不図示の制御装置により制御されており、作業者が任意に設定することができる。
【0058】
エア供給路60を通って、レバー室2cに入ったエアは、鍔部84の窪み部84aから小径部85の外周面と貫通孔2aの内周面との間に侵入する。窪み部84aと嵌合部81の溝部81bとは、受圧ピン8の軸方向に重複しているため、エアは溝部81bを通り抜けて、中間部83の外周面と嵌合孔9aの内周面との間に侵入する。中間部83の外周面と嵌合孔9aの内周面との間に侵入したエアは、中間部83の周囲に広がった後、先端部82と固定型2との間から可動型3側に通り抜ける。このときのエアの流動圧により、嵌合孔9aの内周面と先端部82や嵌合孔9aの内周面と中間部83との間の異物が、可動型3側に排出される。
【0059】
前述したように、各窪み部84aにおける最も深い部分は、嵌合部81の溝部81bの底部よりも受圧ピン8の中心軸に近い位置に位置するため、鍔部84が係止部2bに当接したとしても、エアは窪み部84aと溝部81bとを通り抜けることができる。このため、型開きを開始してから所定時間が経過した後は、常にエアが可動型3側に通り抜け可能な状態となっている。
【0060】
したがって、本実施形態によると、金型用ガス抜き装置1の受圧ピン8は、固定型2に設けられかつ排気通路4の入口側の部分と連通する貫通孔2aに嵌合する嵌合部81と、嵌合部81よりも排気通路4側に嵌合部81と同軸に位置しかつ溶湯を受けて貫通孔2aに対して摺動する円柱状の先端部82と、嵌合部81と先端部82との間に嵌合部81及び先端部82と同軸に位置しかつ先端部82よりも小径な中間部83と、を有し、可動型3の型開き時に、中間部83の外周面と貫通孔2aの内周面との間の隙間及び先端部82と固定型2との間の隙間を通って可動型3側に抜けるようにエアを供給するエア供給装置6を更に備える。これにより、鋳造時に、受圧ピン8の外周面と貫通孔2aの内周面との間に異物が入りこんでいたとしても、エアの流動圧によって異物を排出することができる。特に、先端部82の反排気通路側に、該先端部82よりも小径な中間部83があることにより、中間部83に供給されたエアは、中間部83の周方向全体に広がった後、可動型3側に抜ける。これにより、特に異物が入り込み易い貫通孔2aの可動型3側の部分全体にエアを供給することができる。この結果、受圧ピン8の摺動性が悪化することを出来る限り抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、嵌合部81は、貫通孔2aの内周面に対して所定のクリアランスで摺動する摺動部81aと、受圧ピン8の軸方向に延びかつ貫通孔2aの内周面に対して所定のクリアランスよりも大きい隙間を形成する溝部81bと、を有し、エア供給装置6は、可動型3の型開き時に、溝部81bを通って、中間部83の外周面と貫通孔2aの内周面との間の隙間にエアを供給するように構成されている。これにより、受圧ピン8の軸方向における中間部83よりも反排気通路4側に位置する溝部81bからエアが供給されるため、中間部83の軸方向全体にエアを供給することができる。また、溝部81bを通って中間部83にエアを供給することで、中間部83から先端部82に向かうエアの流れを出来る限り強くすることができる。この結果、異物をより効果的に排出することができ、受圧ピン8の摺動性が悪化することを出来る限り抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、エア供給装置6は、嵌合部81よりも反排気通路側からエアを供給するよう構成されている。これにより、受圧ピン8の軸方向全体にエアを通すことができるため、異物を効果的に除去することができ、この結果、受圧ピン8の摺動性が悪化することをより効果的に抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、受圧ピン8は、嵌合部81よりも反排気通路4側に位置し、該嵌合部81の最大径よりも大径な鍔部84と、嵌合部81と鍔部84との間に設けられ、半径が受圧ピン8の中心軸から嵌合部81の溝部81bまでの最短距離以下に設定された小径部85と、を有し、鍔部84は、軸方向の反排気通路4側から見て、小径部85の外周面と貫通孔2aの内周面との間の隙間に連通する窪み部84aを有する。これにより、窪み部84aがあることで、嵌合部81よりも大径な鍔部84があったとしても、小径部85の外周面と貫通孔2aの内周面との間に適切に流入させることができる。そして、窪み部84aから流入したエアは、小径部85の外周面と貫通孔2aの内周面との間に広がって、溝部81bに流入する。このため、受圧ピン8の周方向において、窪み部84aと溝部81bとの間に多少の位置ずれがあったとしても、溝部81bにエアを適切に流入させることができる。これにより、受圧ピン8の摺動性が悪化することをより効果的に抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態では、溝部81bは、複数あるとともに、嵌合部81の周方向に間隔を空けてそれぞれ形成されており、窪み部84aは、複数あるとともに、受圧ピン8の軸方向の反排気通路4側から見て、各溝部81bと重複する位置にそれぞれ配置されている。これにより、溝部81b及び窪み部84aが複数あることで、エアを効果的に流通させることができる。また、溝部81bと窪み部84aとの位置が軸方向の反排気通路4側から見て重複していることにより、エアが流通しやすくなる。この結果、受圧ピン8の摺動性が悪化することをより効果的に抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態では、溝部81bは、複数あるとともに、嵌合部81の周方向に等間隔に形成されている。これにより、受圧ピン8の外周面と貫通孔2aの内周面との間に、エアを均一に流通させることができ、エアの流量の偏りにより異物が偏在してしまうのを抑制することができる。この結果、受圧ピン8の摺動性が悪化することをより効果的に抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、先端部82の外径は、嵌合部81における最大径と同径である。これにより、先端部82の外周面と貫通孔2aの内周面との間の隙間を出来る限り狭くすることができ、該隙間に異物が入り込むのを抑制することができる。また、仮に異物が入り込んだとしても、エアにより異物を排出することができる。したがって、受圧ピン8の摺動性が悪化することをより効果的に抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、固定型2と可動型3との型開きにより、受圧ピン8が可動型3側に移動した際に、鍔部84が当接する当接部2bを有する段差部が固定型2に設けられており、該段差部の深さは、先端部82の受圧ピン8の軸方向における長さよりも大きい深さになっている。これにより、型開きにより受圧ピン8が可動型3側に移動した際には、先端部82の全体が固定型2の可動型3側の面よりも可動型3側に露出することができる。この結果、エアを可動型3側に効率良く通り抜けさせて、異物を高い効率で排出させることができる。
【0068】
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0069】
例えば、前述の実施形態では、エア供給装置6は、嵌合部81よりも反排気通路側からエアを供給するよう構成されていた。これに限らず、中間部83の外周面と貫通孔2aの内周面との間の隙間及び先端部82と固定型2との間の隙間を通って可動型3側に抜けるようにエアを供給出来るのであれば、受圧ピン8の軸方向の途中から貫通孔2a内にエアを供給するように構成されていてもよい。特に、固定型2に中間部83の外周面と貫通孔2aの内周面との間の隙間に通じるエア供給路を設けて、エア供給装置6から供給されるエアが、前記隙間に直接エアを供給可能な構成となっている場合には、嵌合部81に溝部81bを設けなくてもよい。
【0070】
また、前述の実施形態では、各窪み部84aは、受圧ピン8の軸方向の反排気通路4側から見て、受圧ピン8の各溝部81bとそれぞれ重複するように配置されていた。これに限らず、各窪み部84aは、受圧ピン8の軸方向の反排気通路4側から見て、受圧ピン8の各溝部81bと重複していなくてもよい。各窪み部84aの位置が、受圧ピン8の周方向において、各溝部81bに対してずれていたとしても、嵌合部81と鍔部84との間に小径部85があるため、各窪み部84aを通って、小径部85の外周面と貫通孔2aの内周面との間の隙間に流入したエアは、該隙間に広がった後、各溝部81bを通って、中間部83の外周面と貫通孔2aの内周面との間の隙間に流入する。このため、受圧ピンの外周面と孔部の内周面との間に侵入した異物については、問題無く除去することができる。
【0071】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
ここに開示された技術は、鋳造品を鋳造する金型のキャビティ内からガスを抜くための金型用ガス抜き装置に有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 金型用ガス抜き装置
2 固定型
3 可動型
4 排気通路
6 エア供給装置
8 受圧ピン
12 閉鎖バルブ
12b 摺動部
15 連動レバー
31 金型
36 キャビティ
81 嵌合部
81a 摺動部
81b 溝部
82 先端部
83 中間部
84 鍔部
84a 窪み部
85 小径部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8