(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067838
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】制御盤運搬支援具および制御盤の運搬方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B66B7/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178202
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】502250178
【氏名又は名称】ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】野口 康洋
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305DA14
(57)【要約】
【課題】エレベーターのリニューアルに際し、制御盤を容易かつ迅速に運搬すること。
【解決手段】制御盤106の転倒防止に用いる吊り金具204を利用して上部取っ手300を制御盤106の天面に取り付け、制御盤106の位置固定に用いる固定用ボルト601を利用して下部取っ手400を制御盤106の底面に取り付け、上部取っ手300を作業者600が把持するとともに、下部取っ手400を別の作業者600が把持した状態で、制御盤106を持ち上げて移動させるようにした。これにより、クレーンなどの重機を用いたり、重量が大きく持ちにくい制御盤106を直接手で持ち上げたりすることなく、制御盤106を運搬することができるので、エレベーター100のリニューアルに際し、制御盤106を容易かつ迅速に運搬することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの制御盤の吊り固定に用いる吊り金具の取付孔に対向配置された状態で、当該吊り金具が、当該吊り金具の取付孔と相ともに貫通可能な吊り金具用貫通孔を備えた被固定部材と、
前記被固定部材に連結されたハンドルと、
を備えたことを特徴とする制御盤運搬支援具。
【請求項2】
架台または床面に対するエレベーターの制御盤の固定に用いる固定用ボルトの取付孔に対向配置された状態で、当該固定用ボルトが、当該固定用ボルトの取付孔と相ともに貫通可能なボルト用貫通孔を備えた被固定部材と、
前記被固定部材と連結されたハンドルと、
を備えたことを特徴とする制御盤運搬支援具。
【請求項3】
エレベーターの制御盤の吊り固定に用いる吊り金具の取付孔に対向配置された状態で、当該吊り金具が、当該吊り金具の取付孔と相ともに貫通可能な吊り金具用貫通孔を備えた被固定部材と、前記被固定部材に連結されたハンドルと、を備えた第1の制御盤運搬支援具を、前記制御盤の天面に取り付け、
前記制御盤の架台への固定に用いるボルトの取付孔に対向配置された状態で、当該ボルトが、当該ボルトの取付孔と相ともに貫通可能なボルト用貫通孔を備えた被固定部材と、前記被固定部材に連結されたハンドルと、を備えた第2の制御盤運搬支援具を前記制御盤の底面に取り付け、
前記第1の制御盤運搬支援具を作業者が把持するとともに、前記第2の制御盤運搬支援具を別の作業者が把持した状態で、前記制御盤を移動させる、
ことを特徴とする制御盤の運搬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターの制御盤の運搬に用いる制御盤運搬支援具および制御盤の運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数階建ての建物などに設置されたエレベーターの設備をリニューアルする際は、エレベーターが設置された昇降路を再利用し、エレベーターを構成する各構成部をすべて交換することが多い。具体的には、エレベーターのカゴや、カゴを昇降させる巻上機を含む駆動機構などを交換する。
【0003】
エレベーターの制御盤の交換にあたり、各構成部の制御にかかる制御プログラムを記述するプログラム言語の種類や記述方式が、旧制御盤と新たな制御盤とで異なっていると、旧制御盤によって制御されていた旧構成部は、新たな制御盤からの制御信号を理解できない。このため、従来、制御盤の交換に際しては、旧制御盤のほかに、旧制御盤によって制御される旧構成部をすべて交換していた。
【0004】
近年の技術の向上により、新技術を用いてエレベーターを制御する制御盤(新たな制御盤)は、既設の制御盤(旧制御盤)よりも格段に優れた機能や性能を備えている。一方で、制御盤の交換に際して、旧制御盤のほかに、旧制御盤によって制御される旧構成部をすべて交換すると、リニューアルにかかる費用が増大する。このため、エレベーターのリニューアルに際しては、旧制御盤を新たな制御盤に交換する制御盤のみのリニューアルの要望も多い。
【0005】
このような背景から、従来、リニューアルにかかる費用を抑えるため、利用者が、たとえば、旧制御盤を新たな制御盤に交換するリニューアルを要望する場合において、交換されていない既設の(残余の)構成部(以下、適宜「旧構成部」と称する)が新たな制御盤からの制御信号を理解できないことを考慮し、旧構成部をすべて交換するリニューアルではなく、制御盤のみ、あるいは、一部の旧構成部のみのリニューアルを実現する技術があった。
【0006】
具体的には、たとえば、旧制御盤を新たな制御盤に交換する際に、旧構成部が出力する信号を、当該信号と同じ意味の信号であって、新たな制御盤が理解できる別の信号へ変換する信号変換装置を新たな制御盤と旧構成部との間に接続し、その後、旧構成部の少なくとも一つを、新たな制御盤が理解できる信号を出力する新たな構成部に交換するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、制御盤は重量が大きいことから運搬に労力や時間がかかり、制御盤のみの交換であってもある程度の時間を要するため、エレベーターのリニューアルの迅速化に支障を生じさせているという問題があった。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、エレベーターのリニューアルに際し、制御盤を容易かつ迅速に運搬することができる制御盤運搬支援具および制御盤の運搬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる制御盤運搬支援具は、エレベーターの制御盤の吊り固定に用いる吊り金具の取付孔に対向配置された状態で、当該吊り金具が、当該吊り金具の取付孔と相ともに貫通可能な吊り金具用貫通孔を備えた被固定部材と、前記被固定部材に連結されたハンドルと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる制御盤運搬支援具は、架台または床面に対するエレベーターの制御盤の固定に用いる固定用ボルトの取付孔に対向配置された状態で、当該固定用ボルトが、当該固定用ボルトの取付孔と相ともに貫通可能なボルト用貫通孔を備えた被固定部材と、前記被固定部材と連結されたハンドルと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる制御盤の運搬方法は、エレベーターの制御盤の吊り固定に用いる吊り金具の取付孔に対向配置された状態で、当該吊り金具が、当該吊り金具の取付孔と相ともに貫通可能な吊り金具用貫通孔を備えた被固定部材と、前記被固定部材に連結されたハンドルと、を備えた第1の制御盤運搬支援具を、前記制御盤の天面に取り付け、前記制御盤の架台への固定に用いるボルトの取付孔に対向配置された状態で、当該ボルトが、当該ボルトの取付孔と相ともに貫通可能なボルト用貫通孔を備えた被固定部材と、前記被固定部材に連結されたハンドルと、を備えた第2の制御盤運搬支援具を前記制御盤の底面に取り付け、前記第1の制御盤運搬支援具を作業者が把持するとともに、前記第2の制御盤運搬支援具を別の作業者が把持した状態で、前記制御盤を移動させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明にかかる制御盤運搬支援具および制御盤の運搬方法によれば、エレベーターのリニューアルに際し、制御盤を容易かつ迅速に運搬することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】この発明にかかる実施の形態の制御盤運搬支援具の構成を示す説明図(その1)である。
【
図4】この発明にかかる実施の形態の制御盤運搬支援具の構成を示す説明図(その2)である。
【
図5】上部取っ手(第1の制御盤運搬支援具)および下部取っ手(第2の制御盤運搬支援具)を用いた、制御盤の運搬手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】上部取っ手(第1の制御盤運搬支援具)および下部取っ手(第2の制御盤運搬支援具)を用いた、制御盤の運搬手順の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる制御盤運搬支援具および制御盤の運搬方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。この発明にかかる制御盤運搬支援具は、エレベーターの制御盤の運搬に供される。
【0016】
(エレベーターの構成)
まず、エレベーターの構成について説明する。
図1は、エレベーターの構成を示す説明図である。
図1において、エレベーター100は、たとえば、ロープ式(トラクション式)のエレベーターによって実現することができる。エレベーター100は、たとえば、複数階建てのビルなどの建物内に設置される。
【0017】
エレベーター100は、人や物品を搭載するカゴ(乗りカゴ)101を備えている。カゴ101は、1台のエレベーター100に1つずつ設けられている。カゴ101は、建物における各階床を、鉛直方向すなわちカゴ101の移動方向に沿って貫通する昇降路(図示を省略する)内に設けられている。
【0018】
昇降路は、側面に、カゴ101の昇降位置をガイドするガイドレール(図示を省略する)を備えている。また、昇降路は、底部に、万一、カゴ101が落下して昇降路の底面に衝突したときの衝撃を和らげる緩衝器102を備えている。緩衝器102は、バネの弾性力を利用して衝撃を和らげるバネ式の緩衝器102であってもよく、油圧抵抗を利用して衝撃を和らげる油入式の緩衝器102であってもよい。緩衝器102は、昇降路の天井面にも設けられていてもよい。
【0019】
カゴ101は、ロープ103の一端に連結されている。ロープ103は、つるべ式に滑車(図示を省略する)および巻上機(トラクションマシン)104に架けられ、他端がカウンタウエイト105に連結されている。ロープ103は、具体的には、たとえば、鋼鉄製のワイヤーによって実現することができる。
【0020】
ロープ式のエレベーター100における巻上機104は、たとえば、エレベーター100の最上部に設けられた機械室に設置される。巻上機104は、機械室の有無にかかわらず、エレベーター100における最上部に設けることができる。あるいは、エレベーター100が、機械室がないタイプである場合、巻上機104は、エレベーター100における下部に設けられるものであってもよい。
【0021】
巻上機104は、たとえば、インバーターを用いて制御されており、カゴ101を停止させる階床において回転を停止するように制御盤106によって駆動制御される。ロープ式のエレベーター100においては、巻上機104を駆動することによって発生する、ロープ103と滑車との間の摩擦力(トラクション)を利用して、カゴ101を昇降させる。
【0022】
巻上機104は、図示を省略するエンコーダを備えており、制御盤106はエンコーダからの出力信号に基づいて、巻上機104の回転速度や回転位置を判断することができる。エンコーダは、たとえば、アブソリュートエンコーダを用いてもよく、インクリメンタルエンコーダを用いてもよい。エンコーダは、エレベーター100の設置時に設けられたものであってもよく、設置後に後付けされたものであってもよい。
【0023】
また、エレベーター100は、電磁ブレーキ107、調速機(ガバナマシン)108、リミットスイッチ109などを備えている。電磁ブレーキ107は、コイルを備え、制御盤106によって駆動制御されて当該コイルに通電することにより発生する電磁力を利用して、巻上機104の回転を停止する。電磁ブレーキ107は、巻上機104の回転を停止した状態を保持することができる。
【0024】
電磁ブレーキ107は、停電などによって電源の供給が停止した場合に、巻上機104の回転を制止する。電磁ブレーキ107は、具体的には、たとえば、停電時などコイルへの通電が切れたときにスプリングの力で動作して巻上機104の回転を制止する無励磁作動型の電磁ブレーキ107を用いることができる。
【0025】
調速機108は、カゴ101の速度超過を検出する。調速機108は、たとえば、ガバナロープ108a、ガバナプーリー108b、回転錘(図示を省略する)などを備えた遠心調速機によって実現することができる。このような調速機108において、ガバナロープ108aは、カゴ101の動作と連動する。ガバナプーリー108bは、ガバナロープ108aの動作に連動して回転する。
【0026】
回転錘は、ガバナプーリー108bの回転速度、すなわち、ガバナプーリー108bの回転に起因する遠心力の大きさに応じて動作する。具体的に、回転錘は、ガバナプーリー108bの回転速度が速い場合にガバナプーリー108bの外周側に開くように動作し、ガバナプーリー108bの回転速度が遅い場合にガバナプーリー108bの内周側に閉じるように動作する。
【0027】
リミットスイッチ109は、巻上機104に対する電源の供給/遮断を切り替えるスイッチレバー(図示を省略する)を備えている。スイッチレバーは、平時は巻上機104に対して電源を供給する位置に位置づけられており、調速機108の回転錘に付勢された場合に、巻上機104に対する電源の供給を遮断する位置に変位する。
【0028】
調速機108の回転錘は、カゴ101の昇降速度が、定格速度に対して一定以上の速度になった場合に、スイッチレバーが巻上機104に対する電源の供給を遮断する位置に変位するように、スイッチレバーを付勢する。これにより、カゴ101に速度超過が発生したときに、巻上機104の動作を停止し、カゴ101を停止させることができる。
【0029】
さらに、エレベーター100は、非常停止装置を備えていてもよい。非常停止装置は、カゴ101の動作とガバナロープ108aの動作とが異なる場合、すなわち、ガバナロープ108aが停止しているにもかかわらずカゴ101が動作している場合に、カゴ101の動作を強制的に停止させる。非常停止装置は、公知の各種の技術を用いて容易に実現することができるため、説明を省略する。
【0030】
カゴ101は、扉101aを備えている。また、カゴ101は、扉101aを開閉させるモーター(図示を省略する)や、扉101aの開閉状態を検出する扉開閉センサー(図示を省略する)、および、操作盤101bなどを備えている。扉101aを開閉させるモーターは、制御盤106によって駆動制御されて、扉101aを開閉させる。
【0031】
扉開閉センサーは、扉101aと扉110aとの間に位置するセーフティーシューの状態に応じて扉101aや扉110aが開状態にあるか閉状態にあるかに応じて出力が変化する。扉開閉センサーは、たとえば、マイクロスイッチや光電センサーなどによって実現することができる。扉開閉センサーは配線を介して制御盤106に接続されており、扉開閉センサーから出力された信号は当該配線を介して制御盤106に入力される。
【0032】
昇降路における各階床に対応した位置(乗り場)110には、それぞれ扉110aが設けられている。乗り場110に設けられた扉110aは、図示を省略するインターロックなどと称される装置で施錠されている。インターロックは、エレベーター100が停止階に到着した状態でカゴ101が備えるモーターを駆動した場合にのみ、カゴ101の扉101aの開閉機構とかみ合って施錠を解放する。これにより、各階床に設けられている扉110aのうち、カゴ101が位置する階床における乗り場110に設けられた扉110aのみを連動して開閉することができる。
【0033】
また、昇降路における各階床に対応した位置(乗り場)110には、それぞれカゴ101の位置の検出に供されるプレート(図示を省略する)が設けられている。プレートは、昇降路の長さ方向、すなわち、鉛直方向において、複数設けられている。カゴ101には、プレートを用いたカゴ101の位置の検出に供されるカゴ位置検出センサー101cが設けられている。
【0034】
カゴ位置検出センサー101cは、たとえば、カゴ101の外側であって、カゴ101の天井や壁面などに設けられる。カゴ位置検出センサー101cは、発光素子と、発光素子に対向する位置に設けられた受光素子とを備えている。カゴ位置検出センサー101cは、受光素子における受光状態に応じた信号を出力する。具体的に、カゴ位置検出センサー101cは、カゴ101の移動にともなって、カゴ位置検出センサー101cにおける発光素子と受光素子との間にプレートが位置づけられた場合と、発光素子が発した光を受光素子が受光している場合と、で異なる信号を、制御盤106に対して出力する。
【0035】
プレートは、たとえば、各階床における着床位置(乗り場110)にカゴ101が位置する場合に、カゴ位置検出センサー101cにおける発光素子と受光素子との間を遮光する位置に設けられている。また、プレートは、たとえば、各階床においてカゴ101が停止する位置から所定距離離れた位置をカゴ101が通過する場合に、カゴ位置検出センサー101cにおける発光素子と受光素子との間を遮光する位置に設けられていてもよい。これにより、カゴ101が目的の階床に到達する前にカゴ101の位置を特定することができる。
【0036】
各乗り場110には、それぞれ、乗り場呼びボタン111a、カゴ101が位置する階床などを表示する表示器111bなどを備えた操作盤111が設置されている。操作盤111は、それぞれ、操作盤111用の制御基板111cを備え、当該制御基板111cを介して制御盤106に接続されている。
【0037】
操作盤101b、カゴ位置検出センサー101cや扉開閉センサーを含む各種センサー、巻上機104、電磁ブレーキ107、調速機108、リミットスイッチ109、および、操作盤111(制御基板111c)などの各部は、ケーブル112を介して制御盤106に接続されている。
【0038】
(制御盤106の外観)
つぎに、制御盤106の外観について説明する。
図2は、制御盤106の外観を示す説明図である。
図2に示すように、制御盤106は、長方体形状をなす筐体201を備えている。筐体201は、前面側に開口(図示を省略する)を備えた本体と、本体の前面側の開口を閉塞する蓋部材202と、を備えている。
【0039】
筐体201は、たとえば、エレベーター100の機械室に設置された架台(図示を省略する)に固定される。蓋部材202は、筐体201に対して脱着可能に設けられている。蓋部材202は、筐体201に対して蓋部材202を脱着する際に把持される把持部203を備えている。
【0040】
制御盤106は、筐体201の天面に吊り金具(アイボルト)204を備えている。吊り金具204は、リング形状をなす頭部204aと、外周にネジ山が設けられたネジ部204bと、を備えている。吊り金具204は、筐体201の天面をなす鋼板に設けられて当該鋼板を板厚方向に貫通する、図示を省略する吊り金具の取付孔(以下、「金具取付穴」と称する)に挿入され、当該鋼板を間にして吊り金具204と反対側(筐体の内側)に設けられるナットと組み合わされ(ナットに螺合され)、吊り金具204とナットとの間に筐体201の天面をなす鋼板を挟み込むことによって、筐体201に固定される。ナットは、たとえば、吊り金具204の装着の有無にかかわらず、溶接などによって、筐体201の天面をなす鋼板を間にして吊り金具204と反対側(筐体201の内側)に固定されていてもよい。
【0041】
また、制御盤106における筐体201の下側(底面)には、図示を省略する固定用ボルト(
図6における符号601)の取付孔(以下、「ボルト取付孔」と称する)が設けられている。ボルト取付孔は、制御盤106の下側(底面)に複数設けられており、当該制御盤106の設置位置を固定するための架台、または、当該制御盤106が設置される床面に対して制御盤106を固定する際に用いられる。固定用ボルトは、ボルト取付孔を介して架台や床面に螺合されることにより、当該架台や床面に制御盤106を固定する。
【0042】
より具体的に、ボルト取付孔は、筐体201の下側(底面)に設けられた、筐体201内にケーブル112を引き込むための引込用の開口の外周縁を構成する部材(鋼板)に設けられている。ケーブル112は、エレベーター100のカゴ101に設けられた各種電気機器や、乗り場110に設置された操作盤111などから引き回され、引込用の開口を介して筐体201内に引き込まれる。
【0043】
制御盤106は、下部が架台に固定された状態で、吊り金具204の頭部204aに掛けられたワイヤーを、エレベーター100が設けられた建物の躯体などに固定することによって、吊り下げられるようにして位置が固定される。これにより、地震などに起因して制御盤106に対して制御盤106を転倒させるような外力が加わった場合にも、制御盤106が転倒することを確実に防止できる。
【0044】
筐体201内には、制御盤106を構成する複数の構成部材が収容されている。具体的に、筐体201内には、回路基板や無接点リレー(半導体リレー)、電磁開閉器などの有接点リレーやインバーター、電源ユニットなどが収容されている。筐体201内に収容される構成部材は、適宜、配線によって接続されている。また、筐体201内に収容される構成部材には、適宜、引込用の開口を介して筐体201内に引き込まれたケーブル112が接続される。
【0045】
(制御盤運搬支援具の構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の制御盤運搬支援具の構成について説明する。
図3および
図4は、この発明にかかる実施の形態の制御盤運搬支援具の構成を示す説明図である。
【0046】
この実施の形態においては、この発明にかかる制御盤運搬支援具の一例として、制御盤の天面に取り付けられる第1の制御盤運搬支援具(以下、「上部取っ手」と称する)と、制御盤の底面に取り付けられる第2の制御盤運搬支援具(以下、「下部取っ手」と称する)と、について説明する。
【0047】
図3においては、上部取っ手を示している。
図3に示すように、この発明にかかる実施の形態の上部取っ手300は、被固定部材310と、ハンドル320と、を備えている。被固定部材310は、一対の脚部311と、当該一対の脚部311を連結する連結部312と、からなる。
【0048】
一対の脚部311は、それぞれ、L字型をなすように板状部材の一端側を屈曲させた形状であって、屈曲させた一端側の先端部分に吊り金具用貫通孔311aを備えている。吊り金具用貫通孔311aは、脚部311の板厚方向に、当該脚部311を貫通している。吊り金具用貫通孔311aは、エレベーター100の制御盤106の吊り固定に用いる金具取付穴に対向配置された状態で、当該吊り金具204が、当該金具取付穴と相ともに貫通可能な開口径で脚部311を貫通している。
【0049】
この実施の形態において、吊り金具用貫通孔311aは、制御盤106の天面に2つ設けられている金具取付孔どうしの間隔と同じ間隔をあけて、2つ(1組)設けられている。2つ(1組)の吊り金具用貫通孔311aは、2箇所の金具取付穴に同時に対向配置させることができるように設けられている。
【0050】
吊り金具用貫通孔311aは、金具取付穴の位置や金具取付穴の数などに応じて、3つ以上設けられていてもよい。吊り金具用貫通孔311aは、3つ以上の場合、複数の吊り金具用貫通孔311aのうちの少なくとも2つが、それぞれ異なる金具取付穴に同時に対向するように配置して設けられる。
【0051】
連結部312は、たとえば、鋼材製の中空断面の丸棒を用いて形成することができる。連結部312に中空断面の丸棒を用いることにより、連結部312の強度を確保しつつ、エレベーター100の制御盤106に上部取っ手300を取り付けることによって、作業員が持ち上げる重量が大きく増加してしまうことを回避することができる。また、連結部312に中空断面の丸棒を用いることにより、上部取っ手300の軽量化を図り、上部取っ手300の良好な取り扱い性を確保することができる。
【0052】
被固定部材310において、脚部311と連結部312とは、たとえば、溶接によって固定することができる。脚部311と連結部312とは、たとえば、焼バメによって固定したり、テーパーナットを利用して固定したりしてもよい。あるいは、脚部311と連結部312とは、たとえば、連結部312の長さ方向における両端にフランジを設け、当該フランジを脚部311にネジ留めすることによって固定してもよい。
【0053】
ハンドル320は、被固定部材310における連結部312に取り付けられている。ハンドル320は、連結部312の長さ方向における中央部分に取り付けることができる。ハンドル320は、たとえば、鋼材製の中空断面の丸棒を用いて形成することができる。ハンドル320に中空断面の丸棒を用いることにより、ハンドル320の強度を確保しつつ、重量の大きな制御盤を運搬する作業員の手にかかる負担を軽減することができる。また、ハンドルに中空断面の丸棒を用いることにより、上部取っ手300の軽量化を図り、上部取っ手300の良好な取り扱い性を確保することができる。
【0054】
図4においては、下部取っ手を示している。
図4に示すように、この発明にかかる実施の形態の下部取っ手400は、被固定部材410と、ハンドル420と、を備えている。被固定部材410は、略L型形状をなす一対の板金のそれぞれを当該L字形状における屈曲部で折り曲げることによって形成された、横折L型形状をなす一対の板金部材411によって実現することができる。
【0055】
横折L型形状をなす一対の板金部材411は、それぞれ、略L型形状をなす一対の板金を屈曲させることによってそれぞれ異なる方向に向けられた2面のうちの一面に設けられた、ボルト用貫通孔411aを備えている。一対の板金部材411は、それぞれ、複数のボルト用貫通孔411aを備えている。
【0056】
ボルト用貫通孔411aは、横折L型形状をなす一対の板金部材411において、ボルト用貫通孔411aが形成される面をなす板金部分の板厚方向に沿って、当該板金部分を貫通している。ボルト用貫通孔411aは、それぞれ、固定用ボルトの軸部が貫通する開口径で、横折L型形状をなす一対の板金部材411において、ボルト用貫通孔411aが形成される面をなす板金部分を貫通している。
【0057】
被固定部材410を実現する一対の板金部材411は、それぞれハンドル420に連結されている。下部取っ手400において、一対の板金部材411は、たとえば、横折L型形状をなす一対の板金部材411におけるボルト用貫通孔411aが形成されていない面を、ハンドル420の長さ方向における両端に、溶接によってそれぞれ固定することによって、ハンド220に連結することができる。
【0058】
一対の板金部材411は、ハンドル420の長さ方向における両端に、たとえば、焼バメによってそれぞれ固定したり、テーパーナットを利用してそれぞれ固定したりしてもよい。あるいは、一対の板金部材411は、たとえば、ハンドル420の長さ方向における両端にフランジを設け、当該フランジを一対の板金部材411にそれぞれネジ(ボルトおよびナット)留めすることによって固定してもよい。
【0059】
下部取っ手400において、ボルト用貫通孔411aは複数設けられている。複数のボルト用貫通孔411aのうちの少なくとも2つは、制御盤106におけるそれぞれ異なるボルト取付孔に、同時に対向するように配置して設けられている。下部取っ手400においては、それぞれ異なるボルト取付孔に同時に対向させることができる2つ以上のボルト取付孔によって、「組」が構成される。
【0060】
下部取っ手400において、それぞれ異なるボルト取付孔に同時に対向させることができる2つのボルト用貫通孔411aがなす組は、複数組設けられていてもよい。具体的に、たとえば、
図4に示す下部取っ手400においては、それぞれ異なるボルト取付孔に同時に対向配置させることができる、2つのボルト用貫通孔411aがなす組が、2組設けられている。
【0061】
(制御盤106の運搬手順の一例)
つぎに、上部取っ手300および下部取っ手400を用いた、制御盤106の運搬手順の一例について説明する。
図5は、上部取っ手300および下部取っ手400を用いた、制御盤106の運搬手順の一例を示すフローチャートである。
図6は、上部取っ手300および下部取っ手400を用いた、制御盤106の運搬作業の一例を示す説明図である。
【0062】
制御盤106の運搬に際しては、まず、制御盤106から吊り金具204を取り外す(ステップS501)。作業者600が制御盤106から吊り金具204を取り外すことによって、制御盤106の天面の吊り金具204が螺合(貫通)されていた金具取付孔が開放される。
【0063】
つぎに、制御盤106の天面に、上部取っ手300を取り付ける(ステップS502)。ステップS502においては、作業者600が制御盤106から吊り金具204を取り外すことによって開放された金具取付孔に、上部取っ手300の吊り金具用貫通孔311aをそれぞれ対向させる。そして、金具取付孔に吊り金具用貫通孔311aを対向させた状態で、吊り金具用貫通孔311aおよび金具取付孔を相ともに貫通するように吊り金具204を挿入し、挿入した吊り金具204を制御盤106に螺合させる。これにより、制御盤106の天面に、上部取っ手300固定することができる。
【0064】
上部取っ手300は、吊り金具204を利用して制御盤106に固定することができるため、上部取っ手300を制御盤106に固定するために、別途のボルトなどを用いることがない。これにより、吊り金具204や別途のボルトなどを別々に管理することが不要となり、作業性の向上を図るとともに、吊り金具204などの紛失を防止することができる。
【0065】
上部取っ手300においては、少なくとも2つの吊り金具用貫通孔311aが、それぞれ異なる金具取付穴に同時に対向するように配置して設けられているため、制御盤106に対して上部取っ手300を安定して固定することができる。上部取っ手300を2箇所で制御盤106に固定することにより、制御盤106に対する上部取っ手300の位置を安定化するとともに、下上部取っ手300の取り付けにかかる作業者600の負担を最小限にすることができる。
【0066】
つぎに、制御盤106の底面に、下部取っ手400を取り付ける(ステップS503)。ステップS503においては、制御盤106におけるボルト取付孔に、下部取っ手400のボルト用貫通孔411aをそれぞれ対向させる。そして、ボルト取付孔にボルト用貫通孔411aを対向させた状態で、ボルト用貫通孔411aおよびボルト取付孔を相ともに貫通するように固定用ボルト601を挿入し、挿入した固定用ボルト601を制御盤106に螺合させる。これにより、制御盤106の底面に、下部取っ手400を固定することができる。
【0067】
下部取っ手400においては、少なくとも2つのボルト用貫通孔411aを、2箇所のボルト取付孔に同時に対向配置させることができるため、制御盤106に対して下部取っ手400を安定して固定することができる。下部取っ手400を2箇所で制御盤106に固定することにより、制御盤106に対する下部取っ手400の位置を安定化するとともに、下部取っ手400の取り付けにかかる作業者600の負担を最小限にすることができる。
【0068】
上部取っ手300を下部取っ手400よりも先に制御盤106に固定することにより、下部取っ手400を取り付ける際に、1人または複数人の作業者600が、先に取り付けた上部取っ手300のハンドルを把持して制御盤106を傾けるなどして、制御盤106の下面を地面から浮き上がらせることができ、かつ、制御盤106を傾けた姿勢を安定して保つことができる。これにより、別の作業者600は、容易かつ安全に、下部取っ手400を制御盤106に固定することができる。なお、下部取っ手400は、上部取っ手300よりも先に、制御盤106に固定してもよい。
【0069】
固定用ボルト601を用いて制御盤106の底面に下部取っ手400を固定することで、下部取っ手400の固定のために、別途のボルトを用意する必要がない。これにより、制御盤106の運搬と同時に固定用ボルト601を運搬することができ、制御盤106の運搬後直ちに設置作業をおこなうことができるので、作業の効率化を図ることができる。
【0070】
また、下部取っ手400の固定に用いた固定用ボルト601を用いて制御盤106を架台や床面に固定することにより、固定用ボルト601や別途のボルトを別々に管理することが不要となり、作業性の向上を図るとともに、固定用ボルトなどの紛失を回避することができる。
【0071】
下部取っ手400の固定に供されないボルト取付孔には、下部取っ手400の固定に供されない固定用ボルト601を螺合させておいてもよい。これにより、制御盤106とともに固定用ボルト601を運搬でき、作業性の向上を図るとともに、固定用ボルト601の紛失や、制御盤106の設置場所において固定用ボルト601が不足するなどの不具合を回避することができる。
【0072】
図4に示した下部取っ手400においては、2つのボルト用貫通孔411aがなす組が2組設けられているため、一方の組をなす2つのボルト用貫通孔411aのそれぞれと2箇所のボルト取付孔とを固定用ボルト601が相ともに貫通するようにして下部取っ手400を制御盤に106固定した場合と、他方の組をなす2つのボルト用貫通孔411aのそれぞれと2箇所のボルト取付孔とを固定用ボルト601が相ともに貫通するようにして下部取っ手400を制御盤106に固定した場合とで、制御盤106に対する下部取っ手400の位置を容易に変更することができる。
【0073】
そして、制御盤106を運搬する(ステップS504)。ステップS504においては、1人の作業者が上部取っ手300のハンドル320を把持し、別の作業者が下部取っ手400のハンドル420を把持した状態で、制御盤106を持ち上げて、制御盤106の設置場所まで運搬する。吊り金具204を用いて制御盤106に確実に固定された上部取っ手300のハンドル320、および、固定用ボルト601を用いて制御盤106に確実に固定された下部取っ手400のハンドル400を把持して、制御盤106を安全かつ確実に運搬することができる。
【0074】
制御盤106は、たとえば、建物の最上階の機械室などのように、比較的狭く、空間に余裕のない場所に設置されることが多い。このような場所では、制御盤106の運搬に運搬用の台車などを用いることが難しい場合がある。また、制御盤106は、精密機械であり慎重な取り扱いが求められる一方で、比較的重量が大きく、筐体201の表面の凹凸が少ないため持ちにくいため、制御盤106を直接抱えて運搬する従来の方法では作業者にかかる負担が大きい。
【0075】
これに対し、上述したように上部取っ手300や下部取っ手400を用いることにより、安定して制御盤106を運搬することができる。また、安定して制御盤106を運搬することができるため、作業者600の安全を確保することができる。さらに、台車などを用いずに、作業者600が手で持ち上げた状態で制御盤106を運搬することにより、小回りが効き、狭い空間であっても効率よく、また、制御盤160や周囲の物品を傷つけることを回避できる。
【0076】
つぎに、設置場所の近傍まで制御盤106を運搬した後、制御盤106から上部取っ手300および下部取っ手400を取り外す(ステップS505)。ステップS505において、上部取っ手300および下部取っ手400を取り外す際には、たとえば、上記と同様の理由により、先に下部取っ手400を取り外し、つぎに上部取っ手300を取り外す。ステップS505において制御盤106から取り外した上部取っ手300および下部取っ手400は、別の制御盤106の運搬時に繰り返し利用することができる。
【0077】
これにより、下部取っ手400の取り外し作業中に、上部取っ手300を把持する作業者600が、制御盤106の筐体201の底面における一辺を架台や床面に載置し、当該一辺と反対側の一辺を持ち上げるようにして、制御盤106を傾けた状態を安定した状態で維持することができる。そして、これにより、制御盤106の筐体201の底面の下方に、下部取っ手400を取り外すための作業空間を確保することができるので、下部取っ手400を取り外す作業者600の作業効率の向上と安全性を確保することができる。
【0078】
また、先に下部取っ手400を取り外すことにより、下部取っ手400を取り外した後の制御盤106を、上部取っ手300を把持した状態でゆっくりと静やかに、架台や床面に設置することができる。これにより、精密機械である制御盤106に衝撃を与えることなく設置することができ、運搬や設置に起因する制御盤106の破損を防止することができる。
【0079】
なお、上部取っ手300は、緩めた吊り金具204を制御盤106から取り外すことによって、取り外すことができる。また、下部取っ手400は、緩めた固定用ボルト601を制御盤106から取り外すことによって、取り外すことができる。
【0080】
その後、上部取っ手300および下部取っ手400を取り外した制御盤106を固定する(ステップS506)。ステップS506においては、制御盤106から下部取っ手400を取り外した後の固定用ボルト601を、制御盤106とともに架台または床面に螺合することにより、制御盤106を固定する。
【0081】
また、ステップS506においては、上部取っ手300の取り外しにともない制御盤106から取り外した吊り金具204を、ふたたび制御盤106の天面に固定する。その後、架台または床面に固定した状態の制御盤106に固定された状態の吊り金具204の頭部に、図示を省略するワイヤーなどを掛け、当該ワイヤーを建物の躯体などに固定して、制御盤106の固定(転倒防止)をおこなう。
【0082】
ステップS506においては、制御盤106の固定にあわせて、エレベーターを構成する複数の構成部のうちの一部の構成部(たとえば、カゴや巻上機など)を交換してもよい。一部の構成部のみを交換することにより、上述したように、リニューアルにかかる費用や、エレベーターが利用できなくなるリニューアルの作業時間などを抑えることができる。
【0083】
ここで、各構成部の制御にかかる制御プログラムを記述するプログラム言語の種類や記述方式が、交換前の制御盤(以下、適宜「旧制御盤」という)と、交換後の新たな制御盤106とで異なっている場合、旧制御盤によって制御されていた、交換されていない既設の(残余の)構成部(以下、適宜「旧構成部」という)は、制御盤106からの制御信号を理解できない。
【0084】
このため、ステップS506においては、さらに、図示を省略する信号変換装置を設置してもよい。信号変換装置は、旧構成部が出力する信号を、当該信号と同じ意味の信号であって、制御盤106が理解できる別の信号へ変換する。また、信号変換装置は、制御盤106が出力する信号を、旧構成部が理解できる別の信号へ変換する。
【0085】
具体的に、ステップS506においては、制御盤106を固定するとともに、制御盤106と旧構成部との間に信号変換装置を接続する。あわせて、旧構成部の少なくとも一つを、制御盤106が出力する信号を理解でき、制御盤106が理解できる信号を出力する新たな構成部に交換する。これにより、リニューアルにかかる費用や、エレベーターが利用できなくなるリニューアルの作業時間などを抑えることができる。
【0086】
信号変換装置は、リニューアルによって交換された新たな構成部、交換されていない既設の(残余の)構成部(以下、適宜「旧構成部」という)、および、新たな制御盤106との間で、たとえば、シリアル伝送方式による通信が可能な状態で接続される。信号変換装置は、新たな構成部、旧構成部および制御盤106との間で、パラレル伝送方式による通信が可能な状態で接続されていてもよい。
【0087】
さらに、信号変換装置は、たとえば、制御盤106や新たな構成部との間においてはシリアル伝送方式、旧構成部との間においてはパラレル伝送方式、などのように、接続先に応じて異なる複数種類の信号に変換するものであってもよい。
【0088】
その後、新たに設置した制御盤106の動作確認をして(ステップS507)、一連の処理を終了する。ステップS507においては、たとえば、交換により設置した制御盤106により、エレベーター100が備える各構成部に対して、所定の動作の実行を指示する信号を出力する。また、交換により設置した制御盤106において、当該信号に応じて該当する各構成部から出力された信号を受信する。そして、これらの信号の出力や受信結果に基づいて、制御盤106および制御盤106に接続される各構成部が正常に動作しているかどうかを確認する。
【0089】
また、ステップS507においては、たとえば、交換により設置した制御盤106から出力される信号に応じた、各構成部の動作を作業者600が目視によって確認することにより、制御盤106の動作確認をしてもよい。
【0090】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の上部取っ手300は、金具取付孔に対向配置された状態で、吊り金具204が、金具取付孔と相ともに貫通可能な吊り金具用貫通孔311aを備えた被固定部材310と、被固定部材310に連結されたハンドル320と、を備えたことを特徴としている。
【0091】
この発明にかかる実施の形態の上部取っ手300によれば、金具取付孔と、金具取付孔に対向させた状態の吊り金具用貫通孔311aと、を相ともに貫通するように吊り金具204を制御盤106に固定することにより、上部取っ手300を制御盤106に取り付けるための専用の部材を用いることなく、制御盤106の吊り固定のために必須の吊り金具204を利用して、上部取っ手300を制御盤106に取り付けることができる。
【0092】
そして、この発明にかかる実施の形態の上部取っ手300によれば、作業者600が、制御盤106に取り付けられた上部取っ手300におけるハンドル320を掴んで、制御盤320を運搬することができる。これにより、クレーンなどの重機を用いたり、重量が大きく持ちにくい制御盤106を直接手で持ち上げたりすることなく、制御盤106を運搬することができるので、エレベーター100のリニューアルに際し、制御盤106を容易かつ迅速に運搬することができる。
【0093】
そして、これによって、エレベーター100のリニューアルにかかる時間短縮を図り、利用者がエレベーター100を利用できない時間を短縮して、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【0094】
また、この発明にかかる実施の形態の上部取っ手300は、被固定部材310が、制御盤106の天面に複数設けられた金具取付孔のそれぞれに対応する複数の吊り金具用貫通孔311aを備えており、複数の吊り金具用貫通孔311aが、それぞれが、対応する金具取付孔に対向配置された状態で、吊り金具204が、対応する金具取付孔と相ともに貫通可能であることを特徴としている。
【0095】
この発明にかかる実施の形態の上部取っ手300によれば、制御盤106の天面に複数設けられた金具取付孔と、金具取付孔にそれぞれ対向させた状態の複数の吊り金具用貫通孔311aと、を相ともに貫通するように吊り金具204を制御盤106に固定することにより、上部取っ手300を制御盤106に取り付けるための専用の部材を用いることなく、吊り金具204を利用して、上部取っ手300を制御盤106に安定して取り付けることができる。
【0096】
そして、この発明にかかる実施の形態の上部取っ手300によれば、制御盤106に対して、複数箇所において上部取っ手300を固定することにより、作業者600が当該上部取っ手300におけるハンドル320を掴んで、制御盤106を安定した状態で運搬することができる。これにより、作業者600の負担軽減を図り、制御盤106を容易かつ迅速に運搬することができる。
【0097】
また、この発明にかかる実施の形態の上部取っ手300によれば、作業者600が、制御盤106に取り付けられた上部取っ手300におけるハンドル320を掴んで、当該制御盤106を運搬する際に、一部の金具取付孔を介して、制御盤106における特定の部位に制御盤106の重量が加わることを回避し、運搬に際して制御盤106にかかる荷重を分散させることができる。これにより、エレベーター100のリニューアルに際し、制御盤106を損傷することなく、容易かつ迅速に運搬することができる。
【0098】
そして、これらによって、エレベーター100のリニューアルにかかる時間短縮を図り、利用者がエレベーターを利用できない時間を短縮して、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【0099】
また、この発明にかかる実施の形態の上部取っ手300は、ハンドル320が、被固定部材310から複数方向に突出していることを特徴としている。
【0100】
この発明にかかる実施の形態の上部取っ手300によれば、ハンドル320が被固定部材310から複数方向に突出しているため、1人の作業者が両手のそれぞれでハンドル320を掴んだり、作業者600の体格に適したハンドル310を掴んだり、複数の作業者600がそれぞれハンドル320における別の部位を掴んだりするなど、作業者600の姿勢・体格や人数・現場のレイアウトや広さなど環境に応じた最適な状態で、制御盤106の運搬をおこなうことができる。これにより、制御盤106を容易かつ迅速に運搬することができる。
【0101】
そして、これによって、エレベーター100のリニューアルにかかる時間短縮を図り、利用者がエレベーターを利用できない時間を短縮して、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【0102】
また、この発明にかかる実施の形態の下部取っ手400は、制御盤106におけるボルト取付孔に対向配置された状態で、固定用ボルト601が、当該ボルト取付孔と相ともに貫通可能なボルト用貫通孔411aを備えた被固定部材410と、被固定部材410と連結されたハンドル420と、を備えたことを特徴としている。
【0103】
この発明にかかる実施の形態の下部取っ手400によれば、ボルト取付孔と、ボルト取付孔に対向させた状態のボルト用貫通孔411aと、を相ともに貫通するように固定用ボルト601を制御盤106の底面に固定することにより、下部取っ手400を制御盤106に取り付けるための専用の部材を用いることなく、制御盤106の固定のために必須の固定用ボルト601を利用して、下部取っ手400を制御盤106に取り付けることができる。
【0104】
そして、この発明にかかる実施の形態の下部取っ手400によれば、作業者600が、制御盤106に取り付けられた下部取っ手400におけるハンドル420を掴んで、制御盤106を運搬することができる。これにより、エレベーター100のリニューアルに際し、制御盤106を容易かつ迅速に運搬することができる。
【0105】
これによって、エレベーター100のリニューアルにかかる時間短縮を図り、利用者がエレベーターを利用できない時間を短縮して、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【0106】
また、この発明にかかる実施の形態の下部取っ手400は、被固定部材410が、制御盤106の底面に複数設けられたボルト取付孔のそれぞれに対応する複数の固定用ボルト用貫通孔411aを備えており、複数の固定用ボルト用貫通孔411aが、それぞれが、対応するボルト取付孔に対向配置された状態で、固定用ボルト601が、対応するボルト取付孔と相ともに貫通可能であることを特徴としている。
【0107】
この発明にかかる実施の形態の下部取っ手400によれば、制御盤106の底面に複数設けられたボルト取付孔と、ボルト取付孔にそれぞれ対向させた状態の複数のボルト用貫通孔411aと、を相ともに貫通するように、固定用ボルト601を制御盤106に固定することにより、下部取っ手400を制御盤106に取り付けるための専用の部材を用いることなく、固定用ボルト601を利用して、下部取っ手400を制御盤106に安定して取り付けることができる。
【0108】
そして、この発明にかかる実施の形態の下部取っ手400によれば、制御盤106に対して、複数箇所において下部取っ手400を固定することにより、作業者600が下部取っ手400におけるハンドル420を掴んで、制御盤106を安定した状態で運搬することができる。これにより、制御盤106の運搬作業にかかる作業者600の負担軽減を図り、制御盤106を容易かつ迅速に運搬することができる。
【0109】
また、この発明にかかる実施の形態の下部取っ手400によれば、作業者600が、制御盤106に取り付けられた下部取っ手400におけるハンドル420を掴んで、制御盤106を運搬する際に、一部のボルト取付孔を介して、制御盤106における特定の部位に制御盤106の重量が加わることを回避し、運搬に際して制御盤106にかかる荷重を分散させることができる。これにより、エレベーター100のリニューアルに際し、制御盤106を損傷することなく、容易かつ迅速に運搬することができる。
【0110】
そして、これらによって、エレベーター100のリニューアルにかかる時間短縮を図り、利用者がエレベーターを利用できない時間を短縮して、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【0111】
また、この発明にかかる実施の形態の下部取っ手400は、被固定部材410が、複数のボルト用貫通孔411aがなす組を、複数組備えており、複数組のボルト用貫通孔411aの組が、それぞれハンドル420に対する位置が異なることを特徴としている。
【0112】
この発明にかかる実施の形態の下部取っ手400によれば、複数組のボルト用貫通孔411aがなす組のうちのいずれかの組をなすボルト用貫通孔411aのそれぞれと、これらのボルト用貫通孔411aが対向するボルト取付孔と、を相ともに貫通するようにして、固定用ボルト601を制御盤106に固定することにより、制御盤106に対するハンドル420の位置を変更することができる。
【0113】
これにより、制御盤106に対するハンドル420の位置を、たとえば、制御盤106の運搬に際して作業者600にかかる負担が軽減されたり、作業者600が持ちやすくなったりする位置になるように調整することができる。そして、これによって、エレベーター100のリニューアルに際し、制御盤106を損傷することなく、容易かつ迅速に運搬することができ、エレベーター100のリニューアルにかかる時間短縮を図り、利用者がエレベーター100を利用できない時間を短縮して、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【0114】
また、この発明にかかる実施の形態の制御盤106の運搬方法は、上部取っ手300を制御盤106の天面に取り付け、下部取っ手400を制御盤106の底面に取り付け、上部取っ手300を作業者600が把持するとともに、下部取っ手400を別の作業者600が把持した状態で、制御盤106を持ち上げて移動させる、ことを特徴としている。
【0115】
この発明にかかる実施の形態の制御盤106の運搬方法によれば、クレーンなどの重機を用いたり、重量が大きく持ちにくい制御盤106を直接手で持ち上げたりすることなく制御盤106を運搬することができるので、エレベーター100のリニューアルに際し、制御盤106を容易かつ迅速に運搬することができる。これにより、エレベーター100のリニューアルにかかる時間短縮を図り、利用者がエレベーター100を利用できない時間を短縮して、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【0116】
(追記1)
エレベーターの制御盤の吊り固定に用いる吊り金具の取付孔に対向配置された状態で、当該吊り金具が、当該吊り金具の取付孔と相ともに貫通可能な吊り金具用貫通孔を備えた被固定部材と、
前記被固定部材に連結されたハンドルと、
を備えたことを特徴とする制御盤運搬支援具。
【0117】
(追記2)
前記被固定部材は、前記制御盤の天面に複数設けられた前記吊り金具の取付孔のそれぞれに対応する複数の前記吊り金具用貫通孔を備えており、
複数の前記吊り金具用貫通孔は、それぞれが、対応する前記吊り金具の取付孔に対向配置された状態で、前記吊り金具が、対応する前記吊り金具の取付孔と相ともに貫通可能であることを特徴とする追記1に記載の制御盤運搬支援具。
【0118】
(追記3)
前記ハンドルは、前記被固定部材から複数方向に突出していることを特徴とする追記1または2に記載の制御盤運搬支援具。
【0119】
(追記4)
架台または床面に対するエレベーターの制御盤の固定に用いる固定用ボルトの取付孔に対向配置された状態で、当該固定用ボルトが、当該固定用ボルトの取付孔と相ともに貫通可能なボルト用貫通孔を備えた被固定部材と、
前記被固定部材と連結されたハンドルと、
を備えたことを特徴とする制御盤運搬支援具。
【0120】
(追記5)
前記被固定部材は、前記制御盤の底面に複数設けられた前記固定用ボルトの取付孔のそれぞれに対応する複数の前記固定用ボルト用貫通孔を備えており、
複数の前記固定用ボルト用貫通孔は、それぞれが、対応する前記固定用ボルトの取付孔に対向配置された状態で、前記固定用ボルトが、対応する前記固定用ボルトの取付孔と相ともに貫通可能であることを特徴とする追記4または5に記載の制御盤運搬支援具。
【0121】
(追記6)
前記被固定部材は、複数の前記固定用ボルト用貫通孔の組を、複数組備えており、
複数組の前記固定用ボルト用貫通孔の組は、それぞれ前記ハンドルに対する位置が異なることを特徴とする追記6に記載の制御盤運搬支援具。
【0122】
(追記7)
エレベーターの制御盤の吊り固定に用いる吊り金具の取付孔に対向配置された状態で、当該吊り金具が、当該吊り金具の取付孔と相ともに貫通可能な吊り金具用貫通孔を備えた被固定部材と、前記被固定部材に連結されたハンドルと、を備えた第1の制御盤運搬支援具を、前記制御盤の天面に取り付け、
前記制御盤の架台への固定に用いるボルトの取付孔に対向配置された状態で、当該ボルトが、当該ボルトの取付孔と相ともに貫通可能なボルト用貫通孔を備えた被固定部材と、前記被固定部材に連結されたハンドルと、を備えた第2の制御盤運搬支援具を前記制御盤の底面に取り付け、
前記第1の制御盤運搬支援具を作業者が把持するとともに、前記第2の制御盤運搬支援具を別の作業者が把持した状態で、前記制御盤を移動させる、
ことを特徴とする制御盤の運搬方法。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上のように、この発明にかかる制御盤運搬支援具および制御盤の運搬方法は、エレベーターの制御盤の運搬に用いる制御盤運搬支援具および制御盤の運搬方法に有用であり、特に、制御盤を作業者の人力によって運搬する際に用いる制御盤運搬支援具および制御盤の運搬方法に適している。
【符号の説明】
【0124】
100 エレベーター
106 制御盤
201 筐体
202 蓋部材
204 吊り金具
300 上部取っ手(第1の制御盤運搬支援具)
310 被固定部材
311 脚部
311a 吊り金具用貫通孔
312 連結部
320 ハンドル
400 下部取っ手(第2の制御盤運搬支援具)
410 被固定部材
411 板金部材
411a ボルト用貫通孔
420 ハンドル