IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネコ化学の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067839
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】合成樹脂のための溶剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/50 20060101AFI20240510BHJP
   C09D 9/00 20060101ALI20240510BHJP
   C09D 7/47 20180101ALI20240510BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20240510BHJP
   C11D 7/60 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C11D7/50
C09D9/00
C09D7/47
C09D7/20
C11D7/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178204
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】597115750
【氏名又は名称】株式会社カネコ化学
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】金子 旻又
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 清
【テーマコード(参考)】
4H003
4J038
【Fターム(参考)】
4H003BA12
4H003DA04
4H003DA07
4H003DA11
4H003DA12
4H003DB03
4H003EA25
4H003EA27
4H003EB04
4H003EB07
4H003EB09
4H003EB12
4H003EB14
4H003EB20
4H003ED05
4H003ED26
4H003ED27
4H003ED29
4H003ED31
4H003ED32
4H003FA04
4H003FA21
4H003FA30
4J038HA446
4J038JB13
4J038MA15
4J038RA01
4J038RA08
(57)【要約】
【課題】合成樹脂に対する剥離性及び/又は軟化性に優れ、浸漬できない合成樹脂に対しても使用できる、合成樹脂のための溶剤組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、(a)N-メチル-2-ピロリドンと、(b)無機増粘剤と、ハイドロブロモカーボン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、ハイドロフルオロカーボン系溶剤、ハイドロフルオロエーテル系溶剤、ハイドロフルオロオレフィン系溶剤、ハイドロクロロフルオロオレフィン系溶剤からなる群より選択される1種以上の(c)有機溶剤とを含み、20℃での粘度が10mPa・s~2,300,000mPa・sの範囲内であり、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量が20質量部以上100質量部以下である、合成樹脂用溶剤組成物等に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)N-メチル-2-ピロリドンと、
(b)無機増粘剤と、
ハイドロブロモカーボン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤及びフッ素系溶剤からなる群より選択される1種以上の(c)有機溶剤と
を含み、23℃での粘度が10mPa・s~2,300,000mPa・sの範囲内であり、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量が20質量部以上100質量部以下である、合成樹脂用溶剤組成物。
【請求項2】
(b)が、フュームドシリカ、ゲルタイプシリカ、沈降性シリカ、セピオライト、ベントナイト及びスメクタイトからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の合成樹脂用溶剤組成物。
【請求項3】
(a)N-メチル-2-ピロリドンと、
(b1)フュームドシリカと、
ハイドロブロモカーボン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤及びフッ素系溶剤からなる群より選択される1種以上の(c)有機溶剤と
を含み、23℃での粘度が10mPa・s以上であり、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、(a)の100質量部に対して、(b1)の含有量が3質量部超25質量部未満である、合成樹脂用溶剤組成物。
【請求項4】
(a)N-メチル-2-ピロリドンと、
(b2)セピオライトと、
ハイドロブロモカーボン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤及びフッ素系溶剤からなる群より選択される1種以上の(c)有機溶剤と
を含み、23℃での粘度が10mPa・s以上であり、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、(a)100質量部に対して、(b2)の含有量が7質量部超40質量部未満である、合成樹脂用溶剤組成物。
【請求項5】
(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量が20質量部以上100質量部未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の合成樹脂用溶剤組成物。
【請求項6】
更に、(d1)有機酸及び(d2)アミン類からなる群より選択されるいずれか1種の(d)有機化合物を、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、0質量部超50質量部以下含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の溶剤組成物。
【請求項7】
合成樹脂が、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂又はABS樹脂である、請求項1~4のいずれか1項に記載の溶剤組成物。
【請求項8】
合成樹脂の溶解剤、合成樹脂の膨潤剤、合成樹脂の剥離剤、合成樹脂の軟化剤、合成樹脂の硬化フォームの崩壊剤、合成樹脂の接着剤、又は、合成樹脂の硬化フォームの減容剤として用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の溶剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂のための溶剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂は、化学工業及び機械工業等、幅広い産業において用いられている。合成樹脂は、場合に応じて、除去しなければならない必要が生じる。
【0003】
特許文献1には、イソプロピルブロマイド及びノルマルプロピルブロマイドの少なくとも一方の溶剤と、ニトロアルカン類、エーテル類、エポキシド類及びアミン類からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の溶剤からなる安定剤とを配合した溶剤第1成分と、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)とを含むプラスチック用溶剤組成物が、ポリエステル、アクリル樹脂、及びフェノキシ樹脂などのプラスチックに対して、高い溶解性能を示すことが開示されている。また、特許文献2には、ノルマルプロピルブロマイド15重量%~55重量%、N-メチル-2-ピロリドン40重量%~80重量%、及び添加剤0.5~5重量%からなることを特徴とする、硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物を洗浄するための溶剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-172290号公報
【特許文献2】特開2012-046689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に開示された剥離剤は、その粘度が低いため、剥離剤に浸漬可能な被剥離物(即ち、合成樹脂が付着した固体基材)に対しては有効である。しかし、合成樹脂は、溶解剤に浸漬することができないような場所にある基材に付着していることや、溶解剤に浸漬することができないような場所に構築物として存在していることがあり、そのような合成樹脂に対して塗布して、合成樹脂を溶解及び/又は膨潤等して、剥離できるタイプの溶剤組成物が求められていた。また、ポリウレタンフォームのような合成樹脂を容易に崩壊させて減容できるタイプの溶剤組成物も求められていた。
【0006】
本発明は、合成樹脂に対する剥離性及び/又は軟化性に優れ、浸漬できない合成樹脂に対しても使用可能である、合成樹脂のための溶剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
[1](a)N-メチル-2-ピロリドンと、
(b)無機増粘剤と、
ハイドロブロモカーボン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、ハイドロフルオロカーボン系溶剤、ハイドロフルオロエーテル系溶剤及びハイドロフルオロオレフィン系溶剤からなる群より選択される1種以上の(c)有機溶剤と
を含み、23℃での粘度が10mPa・s~2,300,000mPa・sの範囲内であり、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量が20質量部以上100質量部以下である、合成樹脂用溶剤組成物。
[2](b)が、フュームドシリカ、ゲルタイプシリカ、沈降性シリカ、セピオライト、ベントナイト及びスメクタイトからなる群より選択される1種以上である、[1]の溶剤組成物。
[3](a)N-メチル-2-ピロリドンと、
(b1)フュームドシリカと、
ハイドロブロモカーボン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤及びフッ素系溶剤からなる群より選択される1種以上の(c)有機溶剤と
を含み、23℃での粘度が10mPa・s以上であり、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、(a)の100質量部に対して、(b1)の含有量が3質量部超25質量部未満である、合成樹脂用溶剤組成物。
[4](a)N-メチル-2-ピロリドンと、
(b2)セピオライトと、
ハイドロブロモカーボン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤及びフッ素系溶剤からなる群より選択される1種以上の(c)有機溶剤と
を含み、23℃での粘度が10mPa・s以上であり、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、(a)100質量部に対して、(b2)の含有量が7質量部超40質量部未満である、合成樹脂用溶剤組成物。
[5](a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量が20質量部以上100質量部未満である、[1]~[4]のいずれかの溶剤組成物。
[6]更に、(d1)有機酸及び(d2)アミン類からなる群より選択されるいずれか1種の(d)有機化合物を、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、0質量部超50質量部以下含む、[1]~[5]のいずれかの溶剤組成物。
[7]合成樹脂が、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂又はABS樹脂である、[1]~[6]のいずれかの溶剤組成物。
[8]合成樹脂の溶解剤、合成樹脂の膨潤剤、合成樹脂の剥離剤、合成樹脂の軟化剤、合成樹脂の硬化フォームの崩壊剤、合成樹脂の接着剤、又は、合成樹脂の硬化フォームの減容剤として用いられる、[1]~[7]のいずれかの溶剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、合成樹脂に対する剥離性及び/又は軟化性に優れ、浸漬できない合成樹脂に対しても使用可能である、合成樹脂のための溶剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「(a)N-メチル-2-ピロリドン」を、「(a)成分」又は「(a)」という場合がある。(b)無機増粘剤等についても同様である。
「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
各成分に該当する物質は、組成物中に、1種のみが存在していてもよく、複数存在していてもよい。
組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0010】
[第一の合成樹脂用溶剤組成物]
第一の合成樹脂用溶剤組成物(以下、「第一の溶剤組成物」ともいう。)は、(a)N-メチル-2-ピロリドンと、(b)無機増粘剤と、ハイドロブロモカーボン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤及びフッ素系溶剤からなる群より選択される1種以上の(c)有機溶剤とを含み、20℃での粘度が10mPa・s~2,300,000mPa・sの範囲内であり、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量が20質量部以上100質量部以下である。
【0011】
第一の溶剤組成物は、(a)及び(c)を所定の含有量比で含み、更に溶剤組成物は(b)を含み、所定の粘度であるため、合成樹脂に対する優れた剥離性及び/又は軟化性を有し、かつ、浸漬できない固体基材に対しても使用可能である。そのため、粘度が低い液体であれば液だれを起こしてしまうような壁等の構築物に付着している合成樹脂や、粘度が低い液体であれば通過してしまうような目地の細かい網等の水はけのよい固体基材に付着している合成樹脂を剥離することが可能である。また、合成樹脂のみからなる構築物(例えば、ポリウレタンフォーム)を、溶解及び/又は膨潤して軟化させることにより、崩壊及び/又は減容することが可能である。また、第一の溶剤組成物は合成樹脂に対して留まりやすいため、浸漬できない場所に存在する合成樹脂物のみならず、浸漬可能な合成樹脂に対しても、剥離及び/又は軟化する効果を効率的に発揮し得る。なお、第一の溶剤組成物は、合成樹脂を軟化させるのみではなく、合成樹脂を溶解できるものであってもよい。
【0012】
<(a)N-メチル-2-ピロリドン>
(a)は、第一の溶剤組成物の主成分となる溶剤である。(a)は、市販品を用いることができる。
【0013】
<(b)無機増粘剤>
(b)は、第一の溶剤組成物の粘度を高める成分である。これにより、合成樹脂に対して、第一の溶剤組成物が留まりやすくなり、第一の溶剤組成物に浸漬できない対象物に対して、剥離、溶解、軟化及び/又は膨潤の効果が効率的に高まる。(b)としては、シリカ、セピオライト、ベントナイト、モンモリロナイト等が挙げられ、シリカ及びセピオライトが好ましい。(b)は、市販品を用いることができる。
【0014】
シリカは、通常、増粘剤として用いられるものであれば特に制限されない。このようなシリカとして、疎水性フュームドシリカ、親水性フュームドシリカ、ゲルタイプシリカ、沈降性シリカ等が挙げられる。シリカは、疎水性フュームドシリカ、親水性フュームドシリカ等の(b1)フュームドシリカが好ましい。シリカが、疎水性フュームドシリカ、親水性フュームドシリカ等である場合、シリカのBET法による比表面積は、特に制限されず、10~500m/gとすることができる。シリカの市販品として、AEROSIL 200、AEROSIL RY 200、AEROSIL RX 200、AEROSIL R 202、AEROSIL R 208(いずれも、日本アエロジル株式会社製)、カープレックスBS-306、カープレックス#80(いずれも、DSL.ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0015】
セピオライトは、含水マグネシウム珪酸塩を主成分とする粘土鉱物である。セピオライトの市販品として、ミルコンSP‐2(昭和KDE株式会社製)等が挙げられる。
ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする粘土鉱物である。ここで、モンモリロナイトは、アルミニウムの含水珪酸塩を主成分とする粘土鉱物である。ベントナイトの市販品として、オスモスN、オルベンM(いずれも、白石工業株式会社製)等が挙げられる。
(b)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0016】
<(c)有機溶剤>
(c)有機溶剤は、ハイドロブロモカーボン系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、フッ素系溶剤(ハイドロフルオロカーボン系溶剤、ハイドロフルオロエーテル系溶剤、ハイドロフルオロオレフィン系溶剤、ハイドロクロロフルオロオレフィン系溶剤等)からなる群より選択される1種以上である。なお、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤は、臭素原子及びフッ素原子の少なくとも一方を有さず、ハイドロブロモカーボン系溶剤及びフッ素系溶剤ではない。また、アミド系溶剤は、(a)ではないものとする。
【0017】
<<ハイドロブロモカーボン系溶剤>>
ハイドロブロモカーボン系溶剤は、炭素原子、臭素原子及び水素原子からなる化合物であり、フッ素原子を有さない化合物である。ハイドロブロモカーボンとしては、例えば、ノルマルプロピルブロマイド(1-ブロモプロパン)、イソプロピルブロマイド(2-ブロモプロパン)、ジブロモメタン等が挙げられ、ノルマルプロピルブロマイドが好ましい。
【0018】
<<エステル系溶剤>>
エステル系溶剤(但し、グリコールエーテル系溶剤を除く)としては、モノエステル系溶剤、カルボニル基を二つ有するエステル系溶剤、炭酸エステル系溶剤及び環状エステル系溶剤が挙げられる。エステル系溶剤としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、γ-ブチロラクトン、しゅう酸ジメチル、しゅう酸ジエチル、コハク酸ジメチル・グルタル酸ジメチル・アジピン酸ジメチル等の二塩基酸エステル(DBE)及びその混合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、2-エチルヘキシルアセテート、シクロヘキシルアセテート、ベンジルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸エチル、大豆脂肪酸メチルエステル等が挙げられる。
【0019】
<<グリコールエーテル系溶剤>>
グリコールエーテル系溶剤は、エチレングリコール類又はプロピレングリコール類のモノアルキルエーテル又はジアルキルエーテル及びその他のグリコールエーテル系溶剤である。
【0020】
エチレングリコール類のモノアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル;エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル;及び、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0021】
プロピレングリコール類のモノアルキルエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル;プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル;プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル;プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0022】
エチレングリコール類のジアルキルエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグリム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル;エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエエーテル;ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。
プロピレングリコール類のジアルキルエーテルとしては、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0023】
その他のグリコールエーテル系溶剤には、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のエステル基を有する溶剤が挙げられる。
【0024】
<<アミド系溶剤>>
アミド系溶剤は、アミド結合(-C(=O)NR-。ここで、Rは、水素原子又は有機基である)を有する溶剤である。アミド系溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルアセトアセトアミド、2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N―ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。
【0025】
<<アルコール系溶剤>>
アルコール系溶剤は、少なくとも1種以上の水酸基を有し、窒素原子を有さない化合物である。アルコール系溶剤としては、モノアルコール系溶剤が挙げられる。メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、ターシャリーブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、3,3,5-トリメチル-1-ヘキサノール、ノナノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、2-プロピン-1-オール、2-エチルヘキサノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等の脂肪族アルコール、又は、ベンジルアルコール、ナフチルアルコール等の芳香族アルコールが挙げられる。
【0026】
<<フッ素系溶剤>>
フッ素系溶剤は、炭素原子、フッ素原子及び水素原子を含み、場合により、塩素原子及び/又は臭素原子を含んでいてもよい化合物であって、エーテル結合を有しているか有しておらず、炭素-炭素二重結合を有しているか有さない化合物である。
フッ素系溶剤として、ハイドロフルオロカーボン系溶剤(HFC)、ハイドロフルオロエーテル系溶剤(HFE)及びハイドロフルオロオレフィン系溶剤(HFO)等が挙げられる。
【0027】
<<<ハイドロフルオロカーボン系溶剤>>>
ハイドロフルオロカーボン系溶剤は、炭素原子、フッ素原子及び水素原子かを含む化合物であり、炭素-炭素二重結合を有さない化合物である。ハイドロフルオロカーボンとしては、例えば、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(HFC-365mfc)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(HFC-43-10mee)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(HFC-c447ef)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン(HFC-76-13sf)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン(HFC-52-13p)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロヘキサン(HFC-569sf)等が挙げられ、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンが好ましい。
【0028】
<<<ハイドロフルオロエーテル系溶剤>>>
ハイドロフルオロエーテル系溶剤(但し、ハイドロフルオロオレフィン系溶剤を除く)は、炭素原子、フッ素原子、水素原子及びエーテル結合(-O-)を含む化合物である。ハイドロフルオロエーテル系溶剤の総炭素原子数は、2~20であることが好ましく、3~10であることが特に好ましい。ハイドロフルオロエーテル系溶剤のエーテル結合の数は、1以上であることが好ましく、1~2であることが特に好ましい。ハイドロフルオロエーテル系溶剤としては、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(別名1,1,2,2-テトラフルオロ-1-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、HFE-347pc-f)、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)-ペンタン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ-4-(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタン、1,1,1,2,3,4,4,4-オクタフルオロ-2-メトキシ-3-(トリフルオロメチル)ブタン、メチルパーフルオロプロピルエーテル等が挙げられる。
【0029】
<<<ハイドロフルオロオレフィン系溶剤>>>
ハイドロフルオロオレフィン系溶剤は、炭素原子、フッ素原子及び水素原子を含み、塩素原子及び臭素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含んでいてもよく、アルコキシ基で置換されていてもよい、オレフィン化合物である。ハイドロフルオロオレフィン系溶剤の炭素原子数は、3~8であることが好ましく、3~7であることが特に好ましい。ハイドロフルオロオレフィン系溶剤の不飽和結合の数は、1以上であることが好ましく、1~2であることが特に好ましい。なお、ハイドロフルオロオレフィン系溶剤が塩素を含む場合、当該溶剤は、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)とも呼ばれる。ハイドロフルオロオレフィンとしては、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン((E)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、HCFO-1233yd(E))、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(E))、(Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン((Z)-1-クロロ-2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、HCFO-1233yd(Z))、(Z)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HCFO-1336mzz(Z))、メトキシパーフルオロヘプテン(メトキシトリデカフルオロヘプテン)、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン、(Z)-1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HCFO-1437dycc(Z))、(E)-1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HCFO-1437dycc(E))、1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロペン等が挙げられる。
【0030】
<更なる成分>
第一の溶剤組成物は、合成樹脂の種類に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、(a)~(c)以外の更なる成分を含むことができる。このような成分として、(d1)有機酸及び(d2)アミン類からなる群より選択されるいずれか1種の(d)有機化合物、エポキシド類、ニトロアルカン類、環状エーテル類、無機酸、無機塩類、並びに、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤が挙げられる。(d)以外の添加剤の具体例は、合成樹脂のための溶剤組成物の添加剤として当業者に知られており、市販品を用いることができる。
【0031】
<(d)有機化合物>
(d)有機化合物は、(d1)有機酸及び(d2)アミン類からなる群より選択されるいずれか1種である。
【0032】
<<(d1)有機酸>>
(d1)は、1以上の酸性基を有する有機酸を意味する。酸性基としては、カルボキシ基及びスルホン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。有機酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等のモノカルボン酸、及び、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸等のジカルボン酸等が挙げられ、モノカルボン酸が特に好ましい。
【0033】
<<(d2)アミン類>>
(d2)としては、1分子中に、1以上のアミノ基(第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基)を有し、アルキル基、アルコキシアルキル基、芳香族基等の置換基を有する第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び複素環式アミンが挙げられる。(d2)は、1分子中に、1以上のアミノ基及び1以上の水酸基を有する化合物が好ましく、1分子中に、1つのアミノ基及び1つの水酸基を有する化合物が特に好ましい。
【0034】
1以上のアミノ基及び1以上の水酸基を有するアミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、2-(メチルアミノ)エタノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミン、2-[(ヒドロキシメチル)アミノ]エタノール、2,2’-[(2-メチルプロピル)イミノ]ビスエタノール等のアルカノールアミン類が挙げられる。
【0035】
水酸基を有さないアミン類としては、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、イソブチルアミン、ジイソブチルアミン、sec-ブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、N-ブチルジメチルアミン、N-メチルブチルアミン、トリイソアミルアミン、ヘキシルアミン、N-メチルヘキシルアミン、2-アミノオクタン、N,N-ジメチル-2-エチルヘキシルアミン、N,N-ジイソプロピル-2-エチルヘキシルアミン、ジ-n-オクチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、N-メチルジ-n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ジオクチルアミン、トリス(2-エチルヘキシル)アミン、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N-ジメチルアリルアミン、N,N-ジエチルアリルアミン、3-アミノペンタン、イソアミルアミン、N-エチルイソアミルアミン、N-エチルメチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、N-イソプロピルメチルアミン、N-エチルブチルアミン、N-tert-ブチルエチルアミン、N-イソプロピル-2-メチル-2-プロパンアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-プロポキシプロピルアミン、3-イソプロポキシプロピルアミン、3-ブトキシプロピルアミン、3-イソブトキシプロピルアミン、3-アミノプロピルオクチルエーテル、3-(ドデシルオキシ)プロピルアミン、テトラデシル3-アミノプロピルエーテル、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、3-メチルアミノプロピルアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、N,N-ジブチルトリメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N-(2-ヒドロキシエチル)-1,3-プロパンジアミン、1,2-ブタンジアミン、1,4-ジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、N-(3-アミノプロピル)-N-メチル-1,3-プロパンジアミン、ピペリジン、2-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、3,5-ジメチルピペリジン、イソニペコチン酸、イソニペコチン酸メチル、2-ホルミルキノリン、1-メチルピペリジン、1-エチルピペリジン、1-ホルミルピペリジン、2-(アミノメチル)ピペリジン、4-(アミノメチル)ピペリジン、4-(ジメチルアミノ)ピペリジン、1-アミノピペリジン、1-メチル-4-ピペリドン、1,3-ジメチル-4-ピペリドン、4-ピペリジノピペリジン、ピロリジン、1-メチルピロリジン、1-エチルピロリジン、1-ブチルピロリジン、1-ホルミルピロリジン、1-ベンジル-3-ピロリドン、ピロール、イミダゾール、ピリミジン、2-メチルピリミジン、1-メチルピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、ベンジルアミン、N-メチルベンジルアミン、2-フェニルエチルアミン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1-メチルホモピペラジン等が挙げられる。
【0036】
(d2)は、第2級アミノ基又は第3級アミノ基を有するアルカノールアミンが好ましく、合成樹脂の剥離性等がより高まる観点から、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミンが特に好ましい。
【0037】
<組成>
第一の溶剤組成物において、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量は、20質量部以上100質量部以下である。(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量が、20質量部未満であると、合成樹脂に対する剥離及び/又は軟化の効果が劣る。(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量は、20質量部以上100質量部未満であることが好ましく、50質量部以上100質量部未満であることが特に好ましい。このような範囲であれば、合成樹脂に対する剥離及び/又は軟化の効果を十分に発揮することができる。
第一の溶剤組成物における、(b)の含有量は、後述する第一の溶剤組成物の粘度を満足する範囲で(b)の種類に応じて適宜設定できる。
【0038】
第一の溶剤組成物が(d)を含む場合、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(d)の含有量は、0質量部超50質量部以下であることが好ましく、2質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上20質量部以下であることが特に好ましい。このような範囲であれば、合成樹脂に対する剥離及び/又は軟化の効果を十分に発揮することができる。
【0039】
第一の溶剤組成物において、(a)、(b)及び(c)の合計の含有量は、後述する第一の溶剤組成物の粘度を満足する範囲であれば任意であるが、80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることが更に好ましく、100重量%であることが特に好ましい。このような範囲であれば、合成樹脂に対する剥離性等がより高くなる。
【0040】
<粘度>
第一の溶剤組成物は、23℃での粘度が、10mPa・s~2,300,000mPa・sであり、100mPa・s~1,000,000mPa・sであることが好ましく、500~20,000mPa・sであることが特に好ましい。本明細書において、粘度は、23℃で、デジタル粘度計VISCO(株式会社アタゴ製)を用いて測定した値である。具体的な条件は以下のとおりである。
粘度が1.0mPa・s以上20mPa・s未満の範囲については、VISCO用低粘度サンプルアダプター(ULA)及びULスピンドルを用い、容量15mlで回転数250rpmで測定した値である。
粘度が20mPa・s以上120mPa・s未満の範囲については、VISCO用低粘度サンプルアダプター(ULA)及びULスピンドルを用い、容量15mlで回転数30rpmで測定した値である。
粘度が120mPa・s以上300mPa・s未満の範囲については、A2スピンドルを用い、容量15mlで回転数250rpmで測定した値である。
粘度が300mPa・s以上3,000mPa・s未満の範囲については、A2スピンドルを用い、容量15mlで回転数100rpmで測定した値である。
粘度が3,000mPa・s以上30,000mPa・s未満の範囲については、A2スピンドルを用い、容量15mlで回転数10rpmで測定した値である。
粘度が30,000mPa・s以上150,000mPa・s未満の範囲については、A2スピンドルを用い、容量15mlで回転数2rpmで測定した値である。
粘度が150,000mPa・s以上600,000mPa・s未満の範囲については、A2スピンドルを用い、容量15mlで回転数0.5rpmで測定した値である。
粘度が600,000mPa・s以上2,300,000mPa・s未満の範囲については、A3スピンドルを用い、容量100mlで回転数0.5rpmで測定した値である。
また、粘度は、測定を開始した180秒経過後の測定値であることが好ましい。
【0041】
[合成樹脂用溶剤組成物の更なる態様(1)]
第二の合成樹脂用溶剤組成物(以下、「第二の溶剤組成物」ともいう。)は、(a)と、(b1)フュームドシリカと、(c)とを含み、23℃での粘度が10mPa・s以上であり、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、(a)の100質量部に対して、(b1)の含有量が3質量部超25質量部未満である、合成樹脂用溶剤組成物である。
【0042】
第二の溶剤組成物は、(a)の100質量部に対して、(b1)の含有量が3質量部超25質量部未満である限り、20℃での粘度が2,300,000mPa・s超であってもよい。即ち、第二の溶剤組成物は、第一の溶剤組成物で前記した粘度の測定において、2,300,000mPa・sを超える程の高粘度を有する溶剤組成物であってもよい。(a)の100質量部に対して、(b1)の含有量が25質量部以上であると、被剥離物に対する溶剤組成物の付着力が弱くなり、更に、溶剤組成物は、N-メチル-2-ピロリドンよりも(b1)の粉体としての性質を大きく有することになるから、剥離性に劣る。
【0043】
第二の溶剤組成物における、前記した以外(例えば、上記した(b1)以外の組成、(b1)以外の成分の種類等)は、第一の溶剤組成物で述べたとおりである。
【0044】
[合成樹脂用溶剤組成物の更なる態様(2)]
第三の合成樹脂用溶剤組成物(以下、「第三の溶剤組成物」ともいう。)は、(a)と、(b2)セピオライトと、(c)とを含み、23℃での粘度が10mPa・s以上であり、(a)及び(c)の合計100質量部に対して、(a)の含有量が20質量部以上100質量部以下であり、(a)の100質量部に対して、(b2)の含有量が7質量部超40質量部未満である、合成樹脂用溶剤組成物である。
【0045】
第三の溶剤組成物は、(a)の100質量部に対して、(b2)の含有量が7質量部超40質量部未満である限り、20℃での粘度が2,300,000mPa・s超であってもよい。即ち、第三の溶剤組成物は、第一の溶剤組成物で前記した粘度の測定において、2,300,000mPa・sを超える程の高粘度を有する溶剤組成物であってもよい。(a)の100質量部に対して、(b2)の含有量が40質量部以上であると、被剥離物に対する溶剤組成物の付着力が弱くなり、更に、溶剤組成物は、N-メチル-2-ピロリドンよりも(b2)の粉体としての性質を大きく有することになるから、剥離性に劣る。
【0046】
第三の溶剤組成物におけるその他の条件(添加剤、上記した(b2)以外の組成、(b2)以外の成分の種類等)は、第一の合成樹脂用溶剤組成物で述べたとおりである。
【0047】
(溶剤組成物の調製方法)
溶剤組成物(第一の溶剤組成物、第二の溶剤組成物及び第三の溶剤組成物)は、必須成分である、(a)、(b)及び(c)と、任意成分である更なる成分とを混合することにより製造することができる。混合する順番は任意であり、(a)、(b)及び(c)を一度に混合してもよく、(a)及び(b)とを混合して得られる混合物に、使用直前に(c)を混合してもよい。即ち、(b)を含む溶剤組成物は、(a)及び(c)を含み、(b)を含まない第一成分と、(b)を含み、(a)及び(c)を含まない第二成分からなる2液型の溶剤組成物としてもよい。
【0048】
(合成樹脂)
合成樹脂には、合成樹脂、及び、合成樹脂に配合される添加剤を含む合成樹脂組成物の硬化物が含まれる。また、合成樹脂には、合成樹脂の硬化反応が促進することにより硬化する硬化物のほかに、反応希釈剤等の合成樹脂に配合された添加剤が揮発し、粘度が上昇するによって固化した固化物も含まれる。
【0049】
<合成樹脂>
合成樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂及びABS樹脂等が挙げられ、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂が好ましい。
【0050】
ウレタン樹脂としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等のジイソシアネートと、ポリプロピレングリコール等のポリオール類との反応生成物が挙げられる。ウレタン樹脂がフォーム状である場合、軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォームのいずれであってもよい。ウレタン樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、乳化剤、発泡剤、安定剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、褶動性改良剤、及び耐衝撃性改良剤が挙げられる。ウレタン樹脂の具体例は、ウレタン塗料、ウレタン接着剤及びウレタンゴム等が挙げられる。
【0051】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、多塩基酸のポリグリシジルエステル、3,4-エポキシシクロヘキシル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びヒダントイン環を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等の添加剤が挙げられる。
【0052】
アクリル樹脂としては、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有する化合物が挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。アクリル樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等の添加剤が挙げられる。
【0053】
ポリカーボネート樹脂は、熱可塑性プラスチックの1種であり、モノマー単位同士の接合部が、カーボネート基(-O-(C=O)-O-)で構成される。ポリカーボネート樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の硬化物は、自動車等の部材等に幅広く用いられており、ルーフ、ヘッドランプレンズ等に使用される。
【0054】
ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)は、ゴム質の重合体であるポリブタジエンが分散された、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体であるアクリロニトリル・スチレン系共重合体であり、アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンの三成分を主体とする。ABS樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等が挙げられる。アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂の硬化物は、自動車等の内装及び外装部材等に幅広く用いられており、ホイールキャップ、ホイールカバー、ダッシュボード等に使用される。
【0055】
(固体基材)
固体基材として、有機の基材、無機の基材及びそれらの組合せが挙げられ、例えば、金属(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム等)、ガラス、セラミック(例えば、タイル、レンガ、石等)、プラスチック(例えば、シリコーン基材等)又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0056】
固体基材の具体例として、壁、金網、格子、合成樹脂を取り扱うために用いられる装置、例えば、容器、混合機、成形機、貯蔵タンク、加工機、混合槽、注型機、合成樹脂の吐出加工装置、注入機、合成樹脂の塗布装置及び封入機;並びに、合成樹脂の加工物、例えばウレタン樹脂の加工物(例えば自動車部品及び電子部品等)、アクリル樹脂の加工物(例えば電子部品、配管部品、自動車部品、光学部品等)、及びエポキシ樹脂の加工物(例えば電子部品、配管部品、自動車部品等)が挙げられる。
【0057】
合成樹脂の加工物、例えばウレタン樹脂の加工物、アクリル樹脂の加工物及びエポキシ樹脂の加工物は、加工物の成型の際に用いられたウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂以外の素材を再利用する目的で用いられる物が含まれる。前記素材として、例えば、合成樹脂を介して2以上の基材が接着されている接着体における基材が挙げられる。具体的には、これらウレタン樹脂の加工物、アクリル樹脂の加工物及びエポキシ樹脂の加工物に不良が発生した場合、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂以外の素材を、ウレタン樹脂の硬化物、アクリル樹脂の硬化物及びエポキシ樹脂の硬化物から分離して再度合成樹脂によって再利用される。合成樹脂は、更なる固体基材に付着していてもよい。この場合として、固体基材が、2以上の基材が合成樹脂を介して貼り合せられている接着体がある。
【0058】
<好ましい使用方法>
溶剤組成物は合成樹脂と接触させる方法によって、合成樹脂に適用される。溶剤組成物を合成樹脂に接触させる方法としては、高粘度用スプレーガン、シリンジ、刷毛、ローラー、口金を使用した絞り出し、コテによる貼り付け等が挙げられる。
ここで、溶剤組成物の23℃での粘度が、100mPa・s以上500,000mPa・s未満の範囲内である場合、溶剤組成物を刷毛又はローラーで合成樹脂に塗布する方法が好ましい。また、溶剤組成物の23℃での粘度が、500,000mPa・s以上2,300,000mPa・s以下の範囲内である場合、溶剤組成物を合成樹脂に貼り付ける方法が好ましい。
このような方法で塗布又は貼り付ける場合、塗布効率がより高まり、より少ない溶剤組成物の量で、合成樹脂を溶解等することができる。
【0059】
[具体的な用途]
溶剤組成物によって、合成樹脂が固体基材から剥離して除去される現象は、以下によるものと考えられる。即ち、合成樹脂が剥離剤と接触すると、合成樹脂の表面及び/又は固体基材と合成樹脂の界面において、合成樹脂の全部又は一部が、溶解及び/又は膨潤することにより軟化して、固体基材と合成樹脂との密着力が低下することにより除去されるものと考えられる。また、溶剤組成物によって、合成樹脂が減容する現象は、合成樹脂が溶剤組成物と接触することにより、合成樹脂の一部又は全部が、溶解及び/又は膨潤により軟化することによるものと考えられる。よって、溶剤組成物は、合成樹脂の溶解剤、合成樹脂の膨潤剤、合成樹脂の剥離剤、合成樹脂の軟化剤、合成樹脂の硬化フォームの崩壊剤、合成樹脂の接着剤、又は、合成樹脂の硬化フォームの減容剤として用いることができる。
【0060】
<溶解剤、膨潤剤>
溶解剤は、合成樹脂の一部又は全部を、溶解するために用いられる。また、膨潤剤は、合成樹脂の一部又は全部を、膨潤するために用いられる。合成樹脂の一部又は全部を、溶解及び/又は膨潤する方法は、溶剤組成物を、前記合成樹脂と接触させる工程を含む。溶剤組成物を合成樹脂に接触させる工程において、合成樹脂の一部又は全部は、溶解及び/又は膨潤する。
【0061】
<剥離剤>
剥離剤は、合成樹脂が付着した固体基材から、合成樹脂を除去するために用いられる。固体基材が、2以上の基材が合成樹脂を介して貼り合せられている接着体である場合、溶剤組成物は、合成樹脂を介して2以上の基材が貼り合された接着体から、該2以上の基材を分離するための剥離剤として用いることができる。ここで、接着体は、剥離剤によって2以上の基材に分離すればよく、分離された少なくとも一方の基材には、合成樹脂が付着していてもよい。分離された少なくとも一方の基材に付着した合成樹脂は、更に剥離剤と接触させることにより、基材から除去できる。
【0062】
合成樹脂が付着した固体基材から、合成樹脂を除去する方法は、剥離剤を、前記固体基材と接触させる工程を含む。本発明において、剥離剤を基材に接触させる工程において、固体基材に付着した合成樹脂は、固体基材から除去される。
【0063】
合成樹脂を介して2以上の基材が貼り合された接着体から、該2以上の基材を分離するための方法は、接着体と剥離剤とを接触させる工程を含む。本発明において、接着体と剥離剤とを接触させる工程において、接着体は2以上の基材に分離する。なお、分離された基材に合成樹脂が付着している場合は、更に、前記合成樹脂が付着した固体基材から、合成樹脂を除去する方法によって、前記合成樹脂を除去してもよい。
【0064】
合成樹脂の固体基材からの除去を促進するために、剥離剤と合成樹脂との接触と同時及び/又は後で、合成樹脂と固体基材との界面にヘラを入れる等、物理的な力を加えてもよく、膨潤した合成樹脂をふき取りにより除去してもよい。
【0065】
剥離剤と、合成樹脂が付着した固体基材、又は、合成樹脂を介して2以上の基材が貼り合された接着体との接触時間は、所望の効果(固体基材に付着した合成樹脂が除去される、又は、前記接着体からの基材が分離される)を達成できる時間であれば特に制限されない。剥離剤と、合成樹脂が付着した固体基材、又は、合成樹脂を介して2以上の基材が貼り合された接着体とを接触させるときの剥離剤の温度は、好ましくは5~120℃であり、より好ましくは20℃~100℃である。
【0066】
<合成樹脂の硬化フォームの崩壊剤>
崩壊剤は、フォーム状である合成樹脂の硬化物、即ち、硬化フォームを崩壊するために用いられる。ここで、崩壊とは、合成樹脂の硬化フォームの一部が溶解及び/又は膨潤することにより、その形状を保持することができなくなり、硬化フォームが小片に崩れることを意味する。合成樹脂の硬化フォームとしては、ウレタン樹脂の硬化フォーム(ポリウレタンフォームとも呼ばれる)が好ましい。ウレタン樹脂の硬化フォームの硬化フォームについては、ウレタン樹脂において前記した添加剤を含んでいてもよい。
【0067】
崩壊剤を用いた合成樹脂の硬化フォームを崩壊させる方法は、崩壊剤を、合成樹脂の硬化フォームと接触させる工程を含む。崩壊剤が合成樹脂の硬化フォームと接触すると、合成樹脂の硬化フォームの全部又は一部が、溶解及び/又は膨潤し、合成樹脂の硬化フォームは崩壊する。なお、崩壊を促進するために、崩壊剤が接触した硬化フォームに物理的な力を加えてもよい。
【0068】
<合成樹脂の硬化フォームの減容剤>
減容剤は、フォーム状である合成樹脂の硬化物、即ち、硬化フォームを減容するために用いられる。ここで、減容とは、合成樹脂の硬化フォームの一部が溶解及び/又は膨潤することにより、その形状を保持することができなくなり、硬化フォームの体積が減少することを意味する。溶解させる硬化フォームの量が、合成樹脂の硬化フォームの減容剤の飽和溶解量を超える場合に、硬化フォームの一部が溶解せずに残ってもよい。合成樹脂の硬化フォームは、崩壊剤において前記したとおりである。
【0069】
減容剤を用いた合成樹脂の硬化フォームを減容する方法は、減容剤を、合成樹脂の硬化フォームと接触させる工程を含む。減容剤が合成樹脂の硬化フォームと接触すると、合成樹脂の硬化フォームの全部又は一部が、溶解及び/又は膨潤し、合成樹脂の硬化フォームは減容する。
【0070】
<合成樹脂の接着剤>
溶剤組成物は、合成樹脂を溶かして接着する溶剤接着剤として用いることができる。これにより、反応硬化型の接着剤のような介在物なしで、接着面を強固に接着させることができる。接着剤を用いた接着体の製造方法は、接着体と溶解剤とを接触させる工程を含む。具体的には、接着体の製造方法は、(A1)一方の基材の被接着面に、前記溶解剤を適用して、一方の基材の被接着面の一部を溶解する工程、及び(B1)もう一方の基材を積層して、前記一部が溶解した一方の基材の被接着面を介して、基材同士を貼り合わせる工程を含む。
【0071】
基材同士を貼り合わせる時間は、基材同士の接着力が十分に発揮される時間であれば特に制限されない。基材同士を貼り合わせて、接着させる工程の後に、場合により50~80℃の温度で加熱する工程を含んでいてもよい。これにより、硬化がより促進されて、接着力がより高まる。
【実施例0072】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0073】
[使用製品]
使用した成分は以下のとおりである。
(a)N-メチル-2-ピロリドン(NMP)(BASFジャパン株式会社製)
(b)無機増粘剤
(b-1)AEROSIL RY200(日本アエロジル株式会社製、疎水性フュームドシリカ、BET比表面積100±20m/g)
(b-2)AEROSIL 200(日本アエロジル株式会社製、親水性フュームドシリカ、BET比表面積200±25m/g)
(b-3)カープレックスBS-306(DSL.ジャパン株式会社製、ゲルタイプシリカ)
(b-4)カープレックス#80(DSL.ジャパン株式会社製、沈降性シリカ)
(b-5)ベントナイト(1):オスモスN(白石工業株式会社製、含有量:ベントナイト94~98重量%、シリカ2~6重量%)
(b-6)ベントナイト(2):オルベンM(白石工業株式会社製、含有量:ベントナイト65~75重量%、第4級アンモニウム塩25~35重量%、シリカ1~4重量%)
(b-7)セピオライト:ミルコンSP-2(昭和KDE株式会社製)
(b’)その他の増粘剤
(b’-1)粘度調整剤(アズワン株式会社製、カルボキシメチルセルロース)
(b’-2)セルデックスB-100(日本食品化工株式会社製、シクロデキストリン)
(b’-3)レオクリスタI―2SP(第一工業製薬株式会社製、セルロースナノファイバー)
(b’-4)固形パラフィン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(c)有機溶剤
(c-1)ノルマルプロピルブロマイド
(c-2)炭酸ジメチル(UBE株式会社製)
(c-3)γ-ブチロラクトン(BASFジャパン株式会社製)
(c-4)DBE(三協化学株式会社製、No.23エステル)
(c-5)プロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業株式会社製)
(c-6)モノグリム(東京化成工業株式会社製)
(c-7)3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(KJケミカルズ株式会社製)
(c-8)ベンジルアルコール(東京化成工業株式会社製)
(c-9)1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(ソルベイジャパン株式会社製、ソルカンmfc365)
(c-10)1,1,2,2-テトラフルオロ-1-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン(AGC株式会社製、アサヒクリンAE-3000)
(c-11)シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロぺン(セントラル株式会社製、1233Z)
(d)有機化合物
(d-1)ギ酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)
(d-2)2-(メチルアミノ)エタノール(東京化成工業株式会社製)
(d-3)N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミン(青木油脂工業株式会社製、ブラウノンCHA―2P)
【0074】
[粘度]
粘度は、23℃で、デジタル粘度計VISCO(株式会社アタゴ製)を用いて測定した。具体的な条件は以下の通りである。
粘度が1.0mPa・s以上20mPa・s未満の範囲については、VISCO用低粘度サンプルアダプター(ULA)及びULスピンドルを用い、容量15mlで回転数250rpmで測定した値である。
粘度が20mPa・s以上120mPa・s未満の範囲については、VISCO用低粘度サンプルアダプター(ULA)及びULスピンドルを用い、容量15mlで回転数30rpmで測定した値である。
粘度が120mPa・s以上300mPa・s未満の範囲については、A2スピンドルを用い、容量15mlで回転数250rpmで測定した値である。
粘度が300mPa・s以上3,000mPa・s未満の範囲については、A2スピンドルを用い、容量15mlで回転数100rpmで測定した値である。
粘度が3,000mPa・s以上30,000mPa・s未満の範囲については、A2スピンドルを用い、容量15mlで回転数10rpmで測定した値である。
粘度が30,000mPa・s以上150,000mPa・s未満の範囲については、A2スピンドルを用い、容量15mlで回転数2rpmで測定した値である。
粘度が150,000mPa・s以上600,000mPa・s未満の範囲については、A2スピンドルを用い、容量15mlで回転数0.5rpmで測定した値である。
粘度が600,000mPa・s以上2,300,000mPa・s未満の範囲については、A3スピンドルを用い、容量100mlで回転数0.5rpmで測定した値である。
なお、溶剤組成物の粘度が2,300,000mPa・s超であるときは、「>2,300,000」とした。また、溶剤と増粘剤が混ざり合わずスピンドルが正常に回転しなかった場合には「測定不能」とした。
【0075】
[試験例1:ウレタン樹脂の除去試験]
(ウレタン樹脂の硬化物が付着した固体基材の作製)
SUS304板(株式会社岩田製作所製)35mm×15mm×厚さ0.1mmにウレタン接着剤(ロックタイトスーパークリア DSC-050、ヘンケルジャパン株式会社製)1.0gを塗布し、常温(20℃。以下同じ。)で7日間放置し、試験片1(ウレタン樹脂が付着した固体基材)を得た。
(剥離試験)
試験片1が床面に対して垂直になるように適当な壁面に貼り付け、各組成物を1.0g塗布し、1時間、常温で放置し、以下の基準で評価した。結果を表1~3に示す。
(判定基準)
◎:ウレタン接着剤が溶解して透明になっており、金属製のヘラを用いて容易にSUS304板から除去できた
〇:ウレタン接着剤が膨潤しており、多少の力が必要であるが金属製のヘラを用いてSUS304板から剥離できた
×:金属製のヘラを用いて力をかけても除去できなかった
【0076】
結果を表1~表3に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
【0084】
【表8】
【0085】
【表9】
【0086】
表1において、以下のことが分かる。実施例1~2と実施例3~8との比較により、剥離剤中の無機増粘剤含有量が大きくなる場合、合成樹脂の剥離性がより優れていた。一方、比較例1は、溶剤組成物が無機増粘剤を含まないため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。比較例2~3は、溶剤組成物の20℃での粘度が10mPa・s未満であるため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。比較例4は、N-メチル-2-ピロリドンの100質量部に対して、ヒュームドシリカの含有量が25質量部以上であるため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。
【0087】
表2において、以下のことが分かる。実施例9と実施例10~14との比較により、剥離剤中の無機増粘剤含有量が大きくなる場合、合成樹脂の剥離性がより優れていた。一方、比較例5は、溶剤組成物が無機増粘剤を含まないため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。比較例6~7は、溶剤組成物の20℃での粘度が10mPa・s未満であるため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。比較例8は、N-メチル-2-ピロリドンの100質量部に対して、セピオライトの含有量が40質量部以上であるため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。
【0088】
表3において、以下のことが分かる。実施例15、16及び21と、実施例17~20との比較により、無機増粘剤としてフュームドシリカもしくはセピオライトを用いた剥離剤は、合成樹脂の剥離性により優れていた。これらの無機増粘剤を使用した場合は他の無機増粘剤を使用した場合に比べて、樹脂に対して溶剤成分がより浸透したため合成樹脂の剥離性に優れていたと考えられる。一方、比較例9~12は、溶剤組成物が無機増粘剤を含まないため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。
【0089】
表4において、以下のことが分かる。実施例22~23と実施例24~26との比較により、NMP及び有機溶剤の合計100質量部に対して、NMPの含有量が50質量部以上である場合、合成樹脂の剥離性がより優れていた。一方、比較例13~15は、溶剤組成物が無機増粘剤を含まないため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。比較例16及び17は、NMP及び有機溶剤の合計100質量部に対して、NMPの含有量が20質量部未満であるため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。
【0090】
表5において、以下のことが分かる。実施例27~31の比較により、剥離剤中の無機増粘剤含有量が大きくなる場合、合成樹脂の剥離性がより優れていた。一方、比較例18は、溶剤組成物が無機増粘剤を含まないため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。比較例19~20は、溶剤組成物の23℃での粘度が10mPa・s未満であるため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。比較例21は、N-メチル-2-ピロリドンの100質量部に対して、ヒュームドシリカの含有量が30質量部であるため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。
【0091】
表6において、以下のことが分かる。実施例32と実施例33~34との比較により、剥離剤中の無機増粘剤含有量が大きくなる場合、合成樹脂の剥離性がより優れていた。一方、比較例22は、溶剤組成物が無機増粘剤を含まないため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。比較例23~24は、溶剤組成物の23℃での粘度が10mPa・s未満であるため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。比較例25は、N-メチル-2-ピロリドンの100質量部に対して、セピオライトの含有量が50質量部以上であるため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。
【0092】
表7において、以下のことが分かる。実施例35、36及び41と、実施例37~40との比較により、無機増粘剤としてフュームドシリカもしくはセピオライトを用いた剥離剤は、合成樹脂の剥離性に優れていた。これらの無機増粘剤を使用した場合は他の無機増粘剤を使用した場合に比べて、樹脂に対して溶剤成分がより浸透したため合成樹脂の剥離性に優れていたと考えられる。一方、比較例26~29は、溶剤組成物が無機増粘剤を含まないため、合成樹脂の剥離性が劣っていた。
【0093】
表8において、以下のことが分かる。溶剤組成物がハイドロブロモカーボン系溶剤以外の(c)有機溶剤を含む場合であっても、合成樹脂の剥離性に優れていた。
【0094】
表9において、以下のことが分かる。溶剤組成物が(d)有機化合物を含む場合であっても、合成樹脂の剥離性に優れていた。実施例62と、実施例61及び63との比較により、(d)が第2級アミノ基を有するアルカノールアミン類である場合、合成樹脂の剥離性により優れていた。
【0095】
[試験例2:発泡ウレタンの崩壊試験]
(発泡ウレタンが付着した固体基材の作製)
SUS304板(株式会社岩田製作所製)35mm×15mm×0.1mmに発泡ウレタン(発泡ウレタン グリーンフォーム、ヘンケルジャパン株式会社製)1.0gを塗布し、常温で7日間放置し、試験片2(発泡ウレタンが付着した固体基材)とした。
【0096】
(崩壊試験)
試験片2が床面に対して垂直になるように適当な壁面に貼り付けた後、実施例24の溶剤組成物1.0gを塗布し、15時間常温で放置したところ、発泡ウレタンが軟化し、金属製棒で突くと容易に崩壊させることができた。一方、比較例15の溶剤組成物1.0gを塗布しようとした際には、液が垂れてしまい、発泡ウレタン表面に留まらせることができなかった。また、金属製棒で突いた場合であっても、崩壊させることができなかった。
【0097】
[試験例3:エポキシ樹脂の除去]
(エポキシ樹脂の硬化物が付着した固体基材の作製)
SUS304板(株式会社岩田製作所製)35mm×15mm×0.1mmに、主剤と硬化剤を重量比2対1で混合したエポキシ接着剤(デブコンET、株式会社ITWパフォーマンスポリマーズ&フルイズジャパン製)0.3gを塗布し、ガラス板35mm×15mm×2mmを接着させ、常温で7日間放置し、試験片3を得た。
【0098】
(剥離試験)
試験片3が床面に対して垂直になるように適当な壁面にSUS304板側を貼り付け、実施例24の溶剤組成物1.0gを接着面の外周に塗布し、15分間常温で放置したところ、エポキシ接着剤の表面が一部溶解し、ガラス板を引っ張ることでSUS304板とガラス板を剥離することができた。一方、比較例15の溶剤組成物1.0gを塗布しようとした際には、液が垂れてしまい、試験片3の接着面外周の表面に留まらせることができなかった。そのため、強くガラス板を引っ張った場合であっても、SUS304板とガラス板を剥離することができなかった。
【0099】
[試験例4:ウレタンアクリレート接着剤の除去]
(ウレタンアクリレート接着剤が付着した固体基材の作製)
SUS304板にウレタンアクリレート接着剤(LOCTITE 3103、ヘンケルジャパン株式会社製)でSUS製金網を接着して、試験片4を得た。
【0100】
(剥離試験)
試験片4に対し、実施例24の溶剤組成物を塗布し、30分間常温で放置し、金網を引っ張ったところ、金網を剥離することができた。一方、比較例15の溶剤組成物を塗布した際には、液が垂れてしまい、ウレタンアクリレート接着剤表面に組成物を留まらせることができず、金網を引っ張った場合であっても、金網を剥離することができなかった。
【0101】
[試験例5:アクリル板の接着]
アクリル板40mm×15mm×2mmの40mm×15mmの面に実施例24の溶剤組成物を0.5g塗布し、同じ大きさのアクリル板と40mm×15mmの面で接着させ1時間常温で放置したところ、力を入れても剥離できない程度にアクリル板を接着させることができた。アクリル板の表面が組成物により溶解し、その後組成物が揮発したために接着できたものと考えられる。
【0102】
[試験例6:ポリカーボネート樹脂の溶解試験]
ポリカーボネート板(株式会社光製)50mm×20mm×2mmに実施例24の溶剤組成物を1.0g塗布し、常温で放置した。5分後、ポリカーボネート板の表面は溶解していた。
【0103】
[試験例7:ABS樹脂の溶解試験]
ABS板(株式会社タカチ電機工業製)50mm×20mm×1mmに実施例24の溶剤組成物を1.0g塗布し、常温で放置した。5分後、ABS板の表面は溶解していた。