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  • 特開-縫製用ハサミ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067845
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】縫製用ハサミ
(51)【国際特許分類】
   B26B 13/20 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B26B13/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178211
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】安保 明
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 克己
(72)【発明者】
【氏名】大塚 淳
(72)【発明者】
【氏名】日爪 ノブキ
【テーマコード(参考)】
3C065
【Fターム(参考)】
3C065AA04
3C065FA05
(57)【要約】
【課題】複雑で繊細な曲線に沿って生地を裁断しやすく、優れた操作性を有する縫製用ハサミを提供する。
【解決手段】縫製用ハサミは、回動支点を中心に連結された、互いに対をなす第1ハサミ部材及び第2ハサミ部材を備える、縫製に用いられる縫製用ハサミである。第1ハサミ部材は、回動支点を挟んで形成された長尺状の第1刃部及び第1把持部を有する。第2ハサミ部材は、回動支点を挟んで形成された長尺状の第2刃部及び第2把持部を有する。第1把持部は、第1指を挿入する第1指孔を有する。第2把持部は、第2指及び第3指を挿入する指孔と、第4指及び第5指を掛けられる指掛部を有する。指掛部は、第4指及び第5指のそれぞれに沿って波状に湾曲するとともに、第5指の周方向における腹の全体及び背の半分以上に対向しつつ第5指の第4指と対向する側が解放されるようフック状に湾曲している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動支点を中心に連結された、互いに対をなす第1ハサミ部材及び第2ハサミ部材を備える、縫製に用いられる縫製用ハサミであって、
前記第1ハサミ部材は、前記回動支点を挟んで形成された長尺状の第1刃部及び第1把持部を有し、
前記第2ハサミ部材は、前記回動支点を挟んで形成された長尺状の第2刃部及び第2把持部を有し、
前記第1把持部は、第1指を挿入する第1指孔を有し、
前記第2把持部は、第2指及び第3指を挿入する指孔と、第4指及び第5指を掛けられる指掛部を有し、
前記指掛部は、前記第4指及び前記第5指のそれぞれに沿って波状に湾曲するとともに、前記第5指の周方向における腹の全体及び背の半分以上に対向しつつ前記第5指の前記第4指と対向する側が解放されるようフック状に湾曲している、
縫製用ハサミ。
【請求項2】
前記第2把持部の前記指孔は、前記第2指を挿入する第2指孔と前記第3指を挿入する第3指孔とを含む、
請求項1に記載の縫製用ハサミ。
【請求項3】
前記指掛部は、ハサミを開くときに前記第5指の背に接し、ハサミを閉じるときに前記第5指の腹に接する、
請求項1に記載の縫製用ハサミ。
【請求項4】
前記指掛部は、前記第5指側の掌側の端面が、前記第4指側の掌側の端面よりも掌側になるよう湾曲している、
請求項1から3のいずれか1項に記載の縫製用ハサミ。
【請求項5】
前記回動支点の軸方向から見た平面視で、前記指掛部の先端は、前記回動支点の中心を通る前記第1刃部及び前記第2刃部の長尺方向に延びる直線よりも前記第1指孔側に位置している、
請求項1に記載の縫製用ハサミ。
【請求項6】
前記第1指孔、前記第2指孔、及び前記第3指孔の少なくとも1つには、弾性体で形成された円環状で着脱可能なリング部材が設けられる、
請求項2に記載の縫製用ハサミ。
【請求項7】
前記指掛部は、使用時に前記第4指の側面と前記第5指の側面とが互いに接するよう形成されている、
請求項1に記載の縫製用ハサミ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、縫製用ハサミに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、厚手の生地や布を裁断するのに適した縫製用のハサミが存在する。このような縫製用のハサミは、ラシャ切鋏とも呼ばれる。このような縫製用のハサミは、第1指(親指)を挿入する指孔と、第2指から第5指(人差指から小指)のうちの2本以上を挿入する指孔との2つの指孔を有する構成が一般的であった。特許文献1及び2には、従来の縫製用のハサミが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-18469号公報
【特許文献2】実開平5-31771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、デザイン性に優れた帽子または服などで、複雑な曲線に沿って生地を裁断する必要がある場合がある。このとき、従来の縫製用のハサミを用いて生地を裁断する場合、指孔に余裕が設けられた形状になっているため、手の大きさにかかわらず使用しやすい側面はあるものの、指孔の中で指が自由に動いてしまい、指からの微妙な力加減を刃先に伝達することが難しく、複雑で繊細な曲線に沿って生地を裁断するのに適しているとはいいづらかった。また、使用中に指孔の中で自由に動く指同士がぶつかったり、指が指孔の縁部にぶつかったりして、ハサミを長時間使用するユーザは指に痛みを感じることもあった。そこで、複雑で繊細な曲線に沿って生地を裁断しやすくするため、優れた操作性及び快適性を有するハサミが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような手段を提供する。
【0006】
本発明の一態様の縫製用ハサミは、回動支点を中心に連結された、互いに対をなす第1ハサミ部材及び第2ハサミ部材を備える、縫製に用いられる縫製用ハサミである。第1ハサミ部材は、回動支点を挟んで形成された長尺状の第1刃部及び第1把持部を有する。第2ハサミ部材は、回動支点を挟んで形成された長尺状の第2刃部及び第2把持部を有する。第1把持部は、第1指を挿入する第1指孔を有する。第2把持部は、第2指及び第3指を挿入する指孔と、第4指及び第5指を掛けられる指掛部を有する。指掛部は、第4指及び第5指のそれぞれに沿って波状に湾曲するとともに、第5指の周方向における腹の全体及び背の半分以上に対向しつつ第5指の第4指と対向する側が解放されるようフック状に湾曲している。
【0007】
上記縫製用ハサミにおいて、指掛部が、ハサミを開くときに第5指の背に接し、ハサミを閉じるときに第5指の腹に接する構成とすることが好ましい。
【0008】
このような構成の縫製用ハサミによれば、ハサミを開くときは第5指の背が指掛部に接触し、ハサミを閉じるときは第5指の腹が指掛部に接触し、どちらの場合でもハサミに力を伝達しやすい構成となっている。そのため、ハサミをユーザの意図どおりに操作しやすくなり、複雑で繊細な曲線に沿って生地などを裁断しやすくすることができる。
【0009】
なお、本発明の縫製用ハサミは、従来の理美容用のハサミに類似している部分がある。しかしながら、本発明の縫製用ハサミは裁断対象物が不安定な形状を有し切りづらい生地などであるのに対し、理美容用のハサミは裁断対象物が簡単に切れてしまうものの切り過ぎを抑制する必要のある髪の毛である点で相違し、そのため両者は異なる構成になっている。すなわち、本発明の縫製用ハサミは、裁断時にすべての指で裁断対象物に対して力を加えやすくする一方で、ハサミを開く際には小指を安定させつつ梃子の原理で開き方向に力を与えやすい構成となっている。さらに、繊細な動きが可能になるように、第4指及び第5指を掛けられる指掛部を設けている。
【0010】
また、理美容用のハサミは、使用時に第1指(親指)が下側になるのに対し、本発明の縫製用ハサミを含む縫製用のハサミは、使用時に第1指が上側になる。このように、理美容用のハサミと縫製用ハサミとでは、ハサミの持ち方が全く異なるため、全く異なる思想に基づいた設計がなされるものである。
【0011】
上記縫製用ハサミにおいて、第2把持部の指孔が、第2指を挿入する第2指孔と第3指を挿入する第3指孔とを含む構成とすることが好ましい。
【0012】
このような構成の縫製用ハサミによれば、第2指及び第3指からハサミに対してダイレクトに力が伝達されやすい構成となるため、ハサミをより繊細に制御しやすくすることができる。
【0013】
上記縫製用ハサミにおいて、指掛部が、第5指側の掌側の端面が、第4指側の掌側の端面よりも掌側になるよう湾曲した構成とすることが好ましい。
【0014】
このような構成の縫製用ハサミによれば、第4指よりも短い第5指を挿入するのに適した構成の指掛部にすることができる。また、縫製用ハサミは、その使用場面から机の上などの台上に載置されることが多くなるが、このような形状により載置された台上から持ち上げやすい構成となる。
【0015】
上記縫製用ハサミにおいて、回動支点の軸方向から見た平面視で、指掛部の先端は、回動支点の中心を通る第1刃部及び第2刃部の長尺方向に延びる直線よりも第1指孔側に位置する構成とすることが好ましい。
【0016】
このような構成の縫製用ハサミによれば、指掛部の先端が、裁断対象物または裁断対象物を載置した台に当接および干渉することなく、裁断対象物を裁断できる。
【0017】
上記縫製用ハサミにおいて、第1指孔、第2指孔、及び第3指孔の少なくとも1つには、弾性体で形成された円環状で着脱可能なリング部材が設けられる構成とすることが好ましい。
【0018】
このような構成の縫製用ハサミによれば、それぞれの指孔に指がフィットしやすい構成にすることができるため、ハサミのより繊細な制御をしやすい構成となる。また、大きさの異なるリング部材を用意することで、ユーザに適した指孔の大きさに調整することが可能となる。
【0019】
上記縫製用ハサミにおいて、指掛部は、使用時に前記第4指の側面と前記第5指の側面とが互いに接するよう形成されている。
【0020】
このような構成の縫製用ハサミによれば、ハサミをより細やかに操作しやすい構成となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の縫製用ハサミによれば、操作性を高めることでユーザの意図どおりに操作しやすくし、複雑で繊細な曲線に沿って生地などを裁断しやすくすることができる。また、本発明の縫製用ハサミは、指にフィットする形状としているため、長時間使用したとしてもユーザが指に痛み及び疲れを感じづらく、快適に使用可能になっている。このような縫製用ハサミは、出願人及び発明者らが取り組むSDGsにおける、目標4、ターゲット4.4の「2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、ディーセント・ワークおよび起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。」ことに貢献することを目的のひとつとするとともに、貢献可能な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、縫製用ハサミを第1ハサミ部材の側から見た平面図である。
図2図2は、縫製用ハサミを第2ハサミ部材の側から見た平面図である。
図3図3は、縫製用ハサミに指を挿入した状態を第1ハサミ部材の側から見た平面図である。
図4図4は、縫製用ハサミの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一態様の縫製用ハサミは、複雑で繊細な曲線に沿って生地を裁断しやすくするため、5本の指に沿った形状の、指孔及び指掛部を備えた構成にしている。特に本発明の縫製用ハサミは、第4指及び第5指を掛けられる指掛部であって、第5指を掛けられるようなフック状に湾曲した指掛部を備える構成としている。
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0025】
図1及び図2は、本実施形態の縫製用ハサミ1の平面図であって、図1は第1ハサミ部材2の側から見た図、図2は第2ハサミ部材3の側から見た図である。図3は、図1の平面図において、縫製用ハサミ1にユーザが指を挿入した状態のイメージを示した図である。
【0026】
図1及び図2に示されるように、縫製用ハサミ1は、第1ハサミ部材2、第2ハサミ部材3、及び回動ネジ4を含んで構成される。第1ハサミ部材2と第2ハサミ部材3とは互いに対をなしており、回動ネジ4の中心を回動支点として互いに連結される。すなわち、第1ハサミ部材2と第2ハサミ部材3とは、この回動ネジ4の中心を回動中心として、一方に対して他方が回動可能に構成される。縫製用ハサミ1は、主に生地などを裁断する縫製用として使われるものであるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、繊細な動作が必要となる作業のために用いられてもよい。
【0027】
本明細書では、縫製用ハサミ1の平面図は、回動ネジ4の軸方向から見た平面図である。回動ネジ4の軸方向に対して垂直な方向を、本明細書では側面という場合がある。
【0028】
[第1ハサミ部材]
第1ハサミ部材2は、回動ネジ4の軸の中心である回動支点を挟んで、長尺状の第1刃部21、及び第1把持部22に分けられる。第1ハサミ部材2の、回動ネジ4が取り付けられた位置には、回動ネジ4を挿通可能な貫通孔が形成されている。
【0029】
第1ハサミ部材2及び第2ハサミ部材3は、例えばステンレス鋼で形成される。
【0030】
第1刃部21は、長尺方向に延び、一方の端面が刃先になるよう研磨等が施されている。
【0031】
第1把持部22は、回動ネジ4の位置から切先とは逆側に数cm、第1刃部21の長尺方向に沿って延び、この位置から第1指孔23の側に向かって折れ曲がり、長尺方向に対して30°以上60°以下の角度を有する方向に延伸するよう形成される。第1把持部22は、この延伸方向の端部に、平面視が延伸方向に伸びた楕円状の円環形状を有する第1指孔23を有する。この第1指孔23は、使用時に挿入される第1指の幅方向に沿って延びた円環状となっている(図3参照)。第1指孔23の内側には、ゴムまたは樹脂などの弾性体で形成された円環状のリング部材23aが着脱可能に取り付けられる。
【0032】
第1指孔23が第3指孔34と対向する位置には、凸部24が形成される。凸部24は、後述の凸部36と対向するよう形成されており、縫製用ハサミ1を閉じた状態のときに凸部36と当接してそれ以上の回動を規制する。
【0033】
[第2ハサミ部材]
第2ハサミ部材3は、回動ネジ4の軸の中心である回動支点を挟んで、長尺状の第2刃部31、及び第2把持部32に分けられる。第2ハサミ部材3の、回動ネジ4が取り付けられた位置には、回動ネジ4を挿通可能な貫通孔が形成されている。
【0034】
第2刃部31は、長尺方向に延び、一方の端面が刃先になるよう研磨等が施されている。この第2刃部31の刃先は、使用時には第1刃部21の刃先と軽く摺動しながらすれ違うことで、裁断対象物となる生地などを裁断する。
【0035】
第2把持部32は、回動ネジ4の位置から切先とは逆側に数cm、第2刃部31の長尺方向に沿って延び、この位置から接続部分を介して、それぞれ平面視が延伸方向に伸びた楕円状の円環形状を有する第2指孔33、及び第3指孔34が形成される。これらの第2指孔33及び第3指孔34は、使用時にそれぞれ挿入される第2指及び第3指の幅方向に沿って延びた円環状となっている(図3参照)。第2指孔33及び第3指孔34の内側には、それぞれゴムまたは樹脂などの弾性体で形成された円環状のリング部材33a及び34aが着脱可能に取り付けられる。
【0036】
第3指孔34が第1指孔23と対向する位置には、凸部36が形成される。凸部36は、凸部24と対向するよう形成されており、縫製用ハサミ1を閉じた状態のときに凸部24と当接してそれ以上の回動を規制する。
【0037】
第2ハサミ部材3の第2把持部32は、平面視で、第2刃部31の刃先が形成された端面の延長線よりも第1指孔23の側に位置している。すなわち、縫製用ハサミ1を閉じた状態では、第2刃部31の刃先が形成された側とは逆側の端面の延長線よりも第1指孔23の側に、第2把持部32が形成されている。
【0038】
[指掛部]
第3指孔34の第2刃部31とは逆側の端部には、使用時に第4指及び第5指が掛けられる指掛部35が形成される。指掛部35は、第4指の腹に沿った湾曲部351、第4指と第5指との間に位置することとなる凸部352、第5指の腹に沿った湾曲部353、第5指の側面に沿った湾曲形状を有する頂部354、第5指の背に沿って湾曲した湾曲部355、及び湾曲部355の先端となる先端部356を含む(図3参照)。換言すると、指掛部35は、湾曲部351、凸部352、及び湾曲部353により波状に湾曲している。使用時に第5指に当接する湾曲部353は、第5指の周方向において、第5指の腹から側面に沿って第5指の背の半分以上に対向しつつ、第5指の第4指と対向する側が解放されるよう、フック状に湾曲している。使用時には、ユーザの第4指と第5指とが当接することとなる。
【0039】
図3に示されるように、指掛部35の先端部356は、回動支点の中心となる回動ネジ4の中心を通る、第1刃部21及び第2刃部31の長尺方向に延びる直線Aよりも第1指孔23側に位置している。
【0040】
図4に示されるように、縫製用ハサミ1を図1の矢印Bの側面から見ると、指掛部35は、第5指が挿入される湾曲部355の、使用時にユーザの掌(手のひら)と対向する側の端面が、第4指が挿入される湾曲部353の掌と対向する側の端面よりも、掌側になるよう湾曲している(図4に示す縫製用ハサミ1の中心線Dに対して矢印Cに沿うよう湾曲している)。すなわち、指掛部35は、第4指側よりも第5指側の方がユーザの掌に近くなるよう湾曲している。この形状は、第4指よりも第5指の方が短いため、第4指及び第5指の双方が第1関節近傍で適切に指掛部35に当接するようにするためのものである。
【0041】
また、縫製用ハサミ1は、その使用場面から机の上などの台上に載置されることが多くなるが、指掛部35をこのように湾曲した形状とすることにより、載置された台上から持ち上げやすい構成としている。
【0042】
[回動ネジ]
回動ネジ4は、第1ハサミ部材2と第2ハサミ部材3とを、互いに回動可能に連結する。
【0043】
[使用時の動作]
ユーザが縫製用ハサミ1を使用する際には、ユーザの第1指から第3指がそれぞれ第1指孔23、第2指孔33、及び第3指孔34に、第1関節あたりまで挿入される。ユーザの第4指及び第5指は、それぞれの第1関節あたりが指掛部35に掛けられる。このとき、第4指の側面と第5指の側面とは、互いに当接する。第4指と第5指とが当接することで、縫製用ハサミ1をよりスムーズに操作しやすくなる。
【0044】
ユーザが縫製用ハサミ1を開くときは、ユーザの第1指、第2指、及び第3指から第1ハサミ部材2及び第2ハサミ部材3に対して開き方向に力が加えられるとともに、第5指の背が湾曲部355に当接する。
【0045】
一方、ユーザが縫製用ハサミ1を閉じるときは、ユーザの第1指、第2指、及び第3指から第1ハサミ部材2及び第2ハサミ部材3に対して閉じ方向に力が加えられるとともに、第4指の腹及び第5指の腹がそれぞれ湾曲部351及び湾曲部353に当接する。
【0046】
本実施形態のような縫製用ハサミ1は、使用時にハサミを開くときは第5指の背が指掛部35に接触し、ハサミを閉じるときは第5指の腹が指掛部35に接触し、どちらの場合でもハサミに力を伝達しやすい構成となっている。そのため、ハサミをユーザの意図どおりに操作しやすくなり、複雑で繊細な曲線に沿って生地などを裁断しやすくすることができる。
【0047】
また、縫製用ハサミ1は、指にフィットする形状としているため、長時間使用したとしてもユーザが指に痛み及び疲れを感じづらくなっている。
【0048】
また、縫製用ハサミ1では、図3に示されるように、回動支点となる回動ネジ4の軸方向から見た平面視で、指掛部35の先端部356は、回動支点の中心を通る第1刃部2及び第2刃部3の長尺方向に延びる直線Aよりも第1指孔側に位置する構成としている。この構成により、指掛部35の先端部356が、裁断対象物または裁断対象物を載置した台に当接および干渉することなく、裁断対象物を裁断できる。
【0049】
[変形例]
本実施形態の縫製用ハサミ1は、例えば以下のような構成としてもよい。
【0050】
縫製用ハサミ1では、第2指及び第3指をそれぞれ独立させて挿入する第2指孔33及び第3指孔34を備える構成としていたが、第2指及び第3指の双方を挿入可能な指孔を設けた構成としてもよい。この場合であっても、第2指及び第3指の遊びが大きくなってしまうと繊細な動きが困難になってしまうため、第2指及び第3指の第1関節まで挿入可能となる程度の大きさの指孔を設ける。
【0051】
縫製用ハサミ1の第1刃部21及び第2刃部31の長さは任意に変更可能である。一方、第1把持部22及び第2把持部32の大きさは、ユーザの手の大きさに依存するため、一定以上小さくすることはできない。
【0052】
指掛部35には、リング部材23a、33a、及び34aと同様に弾性体で形成された弾性部材が取り付けられてもよい。また、リング部材23a、33a及び34aは必須の構成ではなく、それぞれの指が第1関節近傍で縫製用ハサミ1に接して操作できる構成であれば、これらのリング部材を備えない構成としてもよい。また、リング部材23a、33aは必ずしも円環状である必要はなく、挿入する指の周囲に当接するよう形成されていればよい。
【符号の説明】
【0053】
1…縫製用ハサミ
2…第1ハサミ部材
21…第1刃部
22…第1把持部
23…第1指孔
3…第2ハサミ部材
31…第2刃部
32…第2把持部
33…第2指孔
34…第3指孔
35…指掛部
23a、33a、34a…リング部材
4…回動ネジ
図1
図2
図3
図4