IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新東工業株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人豊橋技術科学大学の特許一覧

特開2024-67869ガス測定器、ガス測定システム、及びガス測定方法
<>
  • 特開-ガス測定器、ガス測定システム、及びガス測定方法 図1
  • 特開-ガス測定器、ガス測定システム、及びガス測定方法 図2
  • 特開-ガス測定器、ガス測定システム、及びガス測定方法 図3
  • 特開-ガス測定器、ガス測定システム、及びガス測定方法 図4
  • 特開-ガス測定器、ガス測定システム、及びガス測定方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067869
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ガス測定器、ガス測定システム、及びガス測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20240510BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G01N27/12 B
G01N27/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178251
(22)【出願日】2022-11-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】水谷 学世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誉久
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和明
(72)【発明者】
【氏名】野田 俊彦
【テーマコード(参考)】
2G046
2G060
【Fターム(参考)】
2G046BD01
2G046BD04
2G046BH02
2G060AA01
2G060AE19
2G060AF07
2G060BA01
2G060BB12
2G060BB14
2G060KA01
(57)【要約】
【課題】ガス分子のふるい分け機能が低下することを抑制する技術を提供する。
【解決手段】ガス測定器は、電圧又は電流が印加される複数の端子と、複数の端子に電圧又は電流が印加されたことに応じて振動するフィルタとを有するフィルタユニットと、フィルタを通過したガス分子を検出し、検出されたガス分子に応じた測定値を出力するガスセンサとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧又は電流が印加される複数の端子と、前記複数の端子に電圧又は電流が印加されたことに応じて振動するフィルタとを有するフィルタユニットと、
前記フィルタを通過したガス分子を検出し、検出された前記ガス分子に応じた測定値を出力するガスセンサと、
を備える、ガス測定器。
【請求項2】
前記フィルタユニットを含む複数のフィルタユニットを備え、
前記複数のフィルタユニットは、重ねて配置される、請求項1に記載のガス測定器。
【請求項3】
前記複数の端子にはパルス電圧が印加され、
前記フィルタユニットは、前記複数の端子と電気的に接続された圧電素子を有し、
前記フィルタは前記圧電素子に支持される、
請求項1又は2に記載のガス測定器。
【請求項4】
前記複数の端子には電流が印加され、
前記フィルタユニットは、前記複数の端子と電気的に接続された金属部材を有し、
前記フィルタは前記金属部材に支持される、
請求項1又は2に記載のガス測定器。
【請求項5】
電圧又は電流が印加される複数の端子と、前記複数の端子に電圧又は電流が印加されたことに応じて振動するフィルタとを有するフィルタユニットと、前記フィルタを通過したガス分子を検出し、検出された前記ガス分子に応じた測定値を出力するガスセンサと、を備える、ガス測定器と、
所定の周波数で前記フィルタが振動するように前記複数の端子に電圧又は電流を印加させる制御部と、
を備えるガス測定システム。
【請求項6】
フィルタを振動させるステップと、
振動させた前記フィルタを通過したガス分子を検出し、検出された前記ガス分子に応じた測定値を出力するステップと、
を含む、ガス測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス測定器、ガス測定システム、及びガス測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ガス測定器を開示する。ガス測定器は、ラングミュア-ブロジェット膜(Langmuir-BlodgettMembrane:以下、LB膜)と、LB膜を通過した分子を検出するガスセンサとを備える。LB膜が特定のガス分子を吸着するため、ガスセンサは、ふるい分けされた分子のみを選択的に検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-249644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のガスセンサは、LB膜が吸着飽和した場合、吸着力が大きく低下する。吸着力が低下した場合、ガス分子のふるい分け機能が十分に発揮されない。ガス分子のふるい分け機能が十分に発揮されない場合、LB膜に吸着したガス分子を脱着させたり、LB膜を交換したりする必要がある。しかしながら、ガス分子の性質によってはガス分子を脱着させることが困難な場合がある。そして、LB膜の交換には、新規のLB膜が必要となり、交換作業にも時間がかかる。本開示は、ガス分子のふるい分け機能が低下することを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るガス測定器は、フィルタユニット及びガスセンサを備える。フィルタユニットは、電圧又は電流が印加される複数の端子と、複数の端子に電圧又は電流が印加されたことに応じて振動するフィルタとを有する。ガスセンサは、フィルタを通過したガス分子を検出し、検出されたガス分子に応じた測定値を出力する。
【0006】
このガス測定器では、フィルタユニットの複数の端子に電圧又は電流が印加されたことに応じてフィルタユニットのフィルタが振動する。フィルタは、フィルタの目に応じた大きさのガス分子を通過させる。フィルタを通過したガス分子はガスセンサに検出され、測定値が出力される。フィルタの目よりも大きいガス分子は、フィルタを通過できずに、フィルタの目を塞ぐように滞留しようとする。フィルタは、滞留しようとするガス分子を振動によって弾き、フィルタの目が塞がれることを回避する。よって、このガス測定器は、ガス分子のふるい分け機能が低下することを抑制できる。また、フィルタの目よりも大きなガス分子によってフィルタの目詰まりが発生したとしても、フィルタを振動させつつ吸引するだけで、フィルタの目に詰まった大きなガス分子を取り除くことができる。よって、このガス測定器は、ふるい分け機能の回復を簡易に行える。
【0007】
一実施形態においては、ガス測定器は、フィルタユニットを含む複数のフィルタユニットを備え、複数のフィルタユニットは、重ねて配置されてもよい。ガス測定器は、多段のフィルタを採用することにより、高精度なふるい分けを実現できる。
【0008】
一実施形態においては、複数の端子にはパルス電圧が印加され、フィルタユニットは、複数の端子と電気的に接続された圧電素子を有し、フィルタは圧電素子に支持されてもよい。フィルタは、パルス電圧によって伸縮する圧電素子によって、検出対象の大きさのガス分子が通過できる振動を実現できる。
【0009】
一実施形態においては、複数の端子には電流が印加され、フィルタユニットは、複数の端子と電気的に接続された金属部材を有し、フィルタは金属部材に支持されてもよい。電流が金属部材に印加された場合、自由電子が原子に衝突し、格子振動を生じさせ、フィルタに振動が伝導する。フィルタは、上述した振動原理を利用して、検出対象の大きさのガス分子が通過できる振動を実現できる。
【0010】
本開示の他の側面に係るガス測定システムは、ガス測定器及び制御部を備える。ガス測定器は、フィルタユニット及びガスセンサを備える。フィルタユニットは、電圧又は電流が印加される複数の端子と、複数の端子に電圧又は電流が印加されたことに応じて振動するフィルタとを有する。ガスセンサは、フィルタを通過したガス分子を検出し、検出されたガス分子に応じた測定値を出力する。制御部は、所定の周波数でフィルタが振動するように複数の端子に電圧又は電流を印加させる。
【0011】
このガス測定システムでは、フィルタユニットの複数の端子に電圧又は電流が印加されたことに応じて、所定の周波数でフィルタユニットのフィルタが振動する。フィルタは、フィルタの目に応じた大きさのガス分子を通過させる。フィルタを通過したガス分子はガスセンサに検出され、測定値が出力される。フィルタの目よりも大きいガス分子は、フィルタを通過できずに、フィルタの目を塞ぐように滞留しようとする。フィルタは、滞留しようとするガス分子を振動によって弾き、フィルタの目が塞がれることを回避する。よって、このガス測定器は、ガス分子のふるい分け機能が低下することを抑制できる。また、フィルタの目よりも大きなガス分子によってフィルタの目詰まりが発生したとしても、フィルタを振動させつつ吸引するだけで、フィルタの目に詰まった大きなガス分子を取り除くことができる。よって、このガス測定システムは、ふるい分け機能の回復を簡易に行える。
【0012】
本開示のさらに他の側面に係るガス測定方法は、以下のステップを含む。
(1)フィルタを振動させるステップ。
(2)振動させたフィルタを通過したガス分子を検出し、検出されたガス分子に応じた測定値を出力するステップ。
【0013】
このガス測定方法によれば、上述したガス検出器と同一の効果を奏する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、ガス分子のふるい分け機能が低下することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るガス測定システムの一例を示す断面図である。
図2】フィルタユニットの一例を示す斜視図である。
図3】フィルタユニットの他の例を示す斜視図である。
図4】フィルタの原理の一例を説明する図である。
図5】実施形態に係るガス測定方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0017】
[ガス測定器の構成]
図1は、実施形態に係るガス測定システムの一例を示す断面図である。図1に示されるガス測定システム1は、ガス測定器10を含む。ガス測定器10は、ガスの成分を測定する。ガス測定器10は、電気回路部品として提供され得る。一例として、ガス測定器10は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスである。ガス測定器10は、フィルタユニット11及びガスセンサ12を備える。
【0018】
フィルタユニット11は、ガス分子をふるい分けする機能を有する。フィルタユニット11は、基材13に支持される。基材13は、その内部に空間を画成する。基材13は、ガスを透過しない材料で形成される。基材13は、その上部が開放され、空間に連通する開口を有する。フィルタユニット11は、基材13の上部の開口を塞ぐように配置される。これにより、フィルタユニット11及び基材13は、ガス室14を画成する。
【0019】
ガス室14には、ガスセンサ12が配置される。ガスセンサ12は、フィルタユニット11を透過してガス室14に供給されたガス分子を検出する。ガスセンサ12は、検出されたガス分子に応じた測定値を出力する。ガスセンサ12のガス分子の検出方式は、一例として、半導体方式が用いられる。ガスセンサ12のガス分子の検出方式は、電気化学方式、水晶振動子方式、又は表面弾性波方式であってもよい。ガスセンサ12が出力する測定値は、例えば、半導体方式のセンサである場合、抵抗値の変化に伴う電圧の変化である。ガス測定器10は、検出したガスに含まれるガスの成分を測定値に基づいて測定できる。
【0020】
フィルタユニット11のガス分子のふるい分け機能は、フィルタの振動によって性能が維持される。フィルタユニット11には、電源20が接続され、制御部30の指令に従い、電圧又は電流が印加される。電圧又は電流が印加されたことに応じて、フィルタユニット11のフィルタは、所定の周波数で振動する。振動するとは、周期的に動作することをいう。フィルタユニット11の詳細な構成は後述する。
【0021】
制御部30は、例えばPLC(Programmable LogicController)として構成される。制御部30は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などのメモリと、タッチパネル、マウス、キーボード、ディスプレイなどの入出力装置と、ネットワークカードなどの通信装置とを含むコンピュータシステムとして構成されてもよい。制御部30は、メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、制御部30の機能を実現する。
【0022】
制御部30は、ガス分子の大きさ又は種類と、フィルタの周波数との関連性を予め記憶したメモリを有する。制御部30は、メモリを参照して、検出対象のガス分子に対応する周波数を決定する。制御部30は、決定された周波数でフィルタが振動するように、電源20を制御して、フィルタユニット11に電圧又は電流を印加させる。制御部30は、ガス分子の大きさ又は種類と、電圧又は電流との関連性を予め記憶したメモリを有してもよい。この場合、制御部30は、メモリを参照して電圧又は電流を決定し、決定された電圧又は電流がフィルタユニット11に印加するように、電源20を制御する。制御部30は、周波数だけでなく振幅を制御してもよい。
【0023】
[フィルタの構成の詳細]
図2は、フィルタユニットの一例を示す斜視図である。図2に示されるフィルタユニット11は、電源20が電圧源であって、制御部30が電源20を制御してフィルタユニット11へ電圧を供給させる場合に採用される。図2に示されるように、フィルタユニット11は、複数の端子110、フィルタ111、及び圧電素子112を備える。複数の端子110は、導電性金属で形成される。複数の端子110は、一例として4つである。複数の端子110には、電源20が接続され、パルス電圧が印加される。
【0024】
圧電素子112は、ここでは2つ用意される。圧電素子112は互いに並行となるように配置される。圧電素子112それぞれの両端には、複数の端子110が設けられ、電気的に接続される。圧電素子112それぞれはパルス電圧が印加された場合に、電圧の大きさに応じて伸縮する。
【0025】
フィルタ111は、2つの圧電素子112の間に架け渡されるように設けられる。フィルタ111の形状は、くし形である。2つの圧電素子112が駆動した場合、フィルタ111は、上下方向(又は左右方向)に所定の周波数で振動する。フィルタ111の材料はアルミニウム(Al)又は金(Au)などの金属でもよいし、樹脂又は硬質繊維などの非金属でもよい。
【0026】
[フィルタの構成の他の例]
図3は、フィルタユニットの他の例を示す斜視図である。図3に示されるフィルタユニット11Aは、電源20が電流源であって、制御部30が電源20を制御してフィルタユニット11へ電流を供給させる場合に採用される。図3に示されるように、フィルタユニット11は、複数の端子110、フィルタ111、及び金属部材112Aを備える。複数の端子110は、導電性金属で形成される。複数の端子110は、一例として4つである。複数の端子110には、電源20が接続され、電流が印加される。
【0027】
金属部材112Aは、ここでは2つ用意される。金属部材112Aは互いに並行となるように配置される。金属部材112Aそれぞれの両端には複数の端子110が設けられ、電気的に接続される。金属部材112Aそれぞれは電流が印加された場合に振動する。電流が金属部材112Aに印加された場合、金属部材112Aの内部において自由電子が移動し、原子に衝突して格子振動を生じさせる。
【0028】
フィルタ111は、2つの金属部材112Aの間に架け渡されるように設けられる。フィルタ111の形状及び材質は、図2に示されるフィルタ111と同一である。2つの金属部材112Aの振動は、フィルタ111に伝播する。フィルタ111は、上下方向(又は左右方向)に所定の周波数で振動する。
【0029】
[フィルタの原理]
図4は、フィルタの原理の一例を説明する図である。以下では、第一ガスGA1を検出対象ガスとする。第一ガスGA1は、より分子サイズの大きい第二ガスGA2と混合しているとする。図4の状態(A)は電流又は電圧が印加されていない状態のフィルタ断面を模式的に示す。状態(A)に示されるように、混合ガスが図中の矢印Dで示される方向に移動し、フィルタユニット11へ到達するとする。フィルタ111は、電流又は電圧が印加されていないため、静止状態である。フィルタ111の目より小さい第一ガスGA1はフィルタ111を通過し、フィルタ111の目より大きい第二ガスGA2は、フィルタ111を通過せずに滞留する。
【0030】
図4の状態(B)は電流又は電圧が印加された状態のフィルタ断面を模式的に示す。フィルタ111は、電流又は電圧が印加されているため、振動状態となる。例えば、フィルタ111は、図中の破線の矢印に示されるように、それぞれ上下方向に振動する。これにより、滞留していた第二ガスGA2は、弾き飛ばされる。このように、フィルタ111の目詰まりの発生が抑制される。
【0031】
[ガス測定器の動作]
図5は、実施形態に係るガス測定方法の一例を示すフローチャートである。図5に示されるガス測定方法の実行前に、ガス室14はポンプにより真空状態にされる。あるいは、ガス室14の雰囲気は、窒素又は希ガス類などで置換される。
【0032】
図5に示されるように、最初に、振動処理(ステップS10)として、制御部30は、フィルタ111を所定の周波数で振動させる。例えば、制御部30は、電源20を制御し、電流又は電圧をフィルタユニット11へ印加させる。
【0033】
続いて、検出処理(ステップS12)として、混合ガスがガス測定器10へ供給される。ガスセンサ12は、振動させたフィルタ111を通過したガス分子を検出し、検出されたガス分子に応じた測定値を出力する。ステップS12が終了すると、図5に示されるガス測定方法は終了する。
【0034】
[実施形態のまとめ]
ガス測定システム1及びガス測定器10では、フィルタユニット11の複数の端子110に電圧又は電流が印加されたことに応じてフィルタユニット11のフィルタ111が振動する。フィルタ111は、フィルタ111の目に応じた大きさのガス分子を通過させる。フィルタ111を通過したガス分子はガスセンサ12に検出され、測定値が出力される。フィルタ111の目よりも大きいガス分子は、フィルタ111を通過できずに、フィルタ111の目を塞ぐように滞留しようとする。フィルタ111は、滞留しようとするガス分子を振動によって弾き、フィルタ111の目が塞がれることを回避する。よって、ガス測定システム1及びガス測定器10は、ガス分子のふるい分け機能が低下することを抑制できる。
【0035】
ガス測定システム1及びガス測定器10は、フィルタ111の目よりも大きなガス分子によってフィルタ111の目詰まりが発生したとしても、フィルタ111を振動させつつ吸引するだけで、大きなガス分子を取り除くことができる。よって、ガス測定システム1及びガス測定器10は、ふるい分け機能の回復を簡易に行える。
【0036】
ガス測定システム1及びガス測定器10によれば、フィルタ111は、ガスセンサ12の検出方式、形状、環境などによって使用の可否が制限されることなく、どのような使用環境においても使用することができる。フィルタ111には通電されないため、エレクトロマイグレーションなどによるフィルタ111の破断を回避できる。また、極めて微細な振動であるため、振動によるフィルタ111の破断のおそれが小さい。
【0037】
フィルタユニット11に印加される電圧又は電流も微弱であり、フィルタ111近傍に電気、磁気、熱などのエネルギー変化が極めて小さい。このため、ガスセンサ12の近傍にフィルタ111が設置された場合であっても、ガスセンサ12の検出精度及び寿命などに大きな影響を及ぼすことがない。
【0038】
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上記の例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0039】
ガス測定器10は、基材13及びガス室14を含まないように構成されてもよい。この場合、ガス測定器10は、ガスセンサ12にフィルタユニット11が密着するように構成されてもよい。ガス測定システム1は、電源20を含まなくてもよい。
【0040】
フィルタ111は、必要に応じて付加機能が付与されてもよい。例えば、フィルタ111は、ガス分子の付着を防止するコーティングがされてもよい。あるいは、フィルタ111は、特定のガス分子が優位に付着するようなコーティングがされてもよい。
【0041】
フィルタユニット11は多段に設置されてもよい。この場合、複数のフィルタユニットは重ねて配置される。混合ガスをフィルタリングする場合には、全てのフィルタユニットが振動される。例えば、ガス測定器は、2段のフィルタユニットを備えてもよい。1段目(上段)のフィルタユニットのフィルタの目は粗くなっており、2段目(下段)のフィルタユニットのフィルタの目は検出対象のガス分子が通過可能な大きさとなるように構成してもよい。この場合、1段目のフィルタで大きいガス分子を除去しつつ、振動により目詰まり防止するとともに、2段目のフィルタでも振動により目詰まり防止することで2段目のフィルタの目詰まりをより効果的に防止して、所望のガスを検出できる。フィルタユニットが多段に設置されることで、ガス測定システム1は、極めて小さな分子のガス成分のみを透過させることができる。これにより、ガス測定システム1は、所望のガスのみを高精度でふるい分けできる。
【0042】
ガス測定器10は、フィルタ111に隣接する部位の振動の影響によりフィルタが振動する構造であってもよいし、フィルタ111自身が振動する構造でもよい。フィルタ111の形状は、くし形ではなく格子状であってもよい。フィルタ111の振動方向は上下方向に限定されず、左右方向であってもよい。フィルタ111の断面は、円形、四角形、その他の任意の幾何学形状でもよい。フィルタ111は、プリント基板に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…ガス測定システム、10…ガス測定器、11…フィルタユニット、12…ガスセンサ、30…制御部、110…複数の端子、111…フィルタ。
図1
図2
図3
図4
図5