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特開2024-67873シート状ワーク打抜き型の打抜き刃高さ調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067873
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】シート状ワーク打抜き型の打抜き刃高さ調整方法
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/44 20060101AFI20240510BHJP
   B26F 1/00 20060101ALI20240510BHJP
   B26F 1/40 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B26F1/44 D
B26F1/00 B
B26F1/00 G
B26F1/40 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178260
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】515081350
【氏名又は名称】株式会社ティーエスインダストリー
(74)【代理人】
【識別番号】100081466
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 研一
(72)【発明者】
【氏名】冨田 昌嗣
【テーマコード(参考)】
3C060
【Fターム(参考)】
3C060AA01
3C060AA04
3C060BA03
3C060BB05
3C060BB18
3C060BB19
3C060BC21
3C060BC30
3C060BD01
3C060BE07
3C060BF03
3C060BH10
(57)【要約】
【課題】シート状ワークの厚さや材質に応じて罫線刃に対する打抜き刃の高さを簡易、かつ短時間に調整することができ、打抜き作業を効率化する打抜き刃高さ調整方法を提供する。
【解決手段】型板に、基準刃又はステ刃を打抜き刃の取付け高さに対し、脆弱部の塑性変形量に応じた低い高さで取り付けると共に罫線刃を上記基準刃の取付け高さに対し、製品シートに形成される罫線溝深さ分、低くして取付ける。製品シートの打抜き作業に先立って面盤に対して定盤に取付けられた型板を近づく方向へ移動し、面盤に対して打抜き刃を、基準刃が面盤に当接する位置まで圧接させて上記脆弱部を塑性変形させて打抜き刃を高さ調整すると同時に打抜き刃に対する罫線刃の高さ調整を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状ワーク打抜き装置の定盤に、先端部に刃部が設けられると共に基端部に定盤に対する圧接により塑性変形可能な脆弱部が設けられた帯板鋼板の打抜き刃が設けられた型板を取付けたシート状ワークから製品シートを打ち抜く打抜き型において、
上記型板には、基準刃を上記打抜き刃の取付け高さに対し、脆弱部の塑性変形長さに応じた低い高さで取り付けると共に罫線刃を上記基準刃の取付け高さに対し、製品シートに形成される罫線溝深さ分、低くして取付け、
製品シートの打抜き作業に先立ってシート状ワーク打抜き装置の面盤に対して定盤に取付けられた型板を近づく方向へ移動して試し打ちする際に、面盤に対して打抜き刃を、基準刃が面盤に当接する位置まで圧接させて上記脆弱部を塑性変形させて打抜き刃を高さ調整すると同時に打抜き刃に対する罫線刃の高さ調整を実行する打抜き刃高さ調整方法。
【請求項2】
シート状ワーク打抜き装置の定盤に、先端部に刃部が設けられると共に基端部に定盤に対する圧接により塑性変形可能な脆弱部が設けられた帯板鋼板の打抜き刃が設けられた型板を取付けたシート状ワークから製品シートを打ち抜く打抜き型において、
上記型板には、シート状ワークから製品シートが打抜かれたスクラップシートを少なくとも2個に分断するステ刃を上記打抜き刃の取付け高さに対し、脆弱部の塑性変形量に応じた低い高さで取り付けると共に製品シートに罫線溝を形成する罫線刃を上記基準刃の取付け高さに対し、製品シートに形成される罫線溝深さ分、低くして取付け、
製品シートの打抜き作業に先立ってシート状ワーク打抜き装置の面盤に対して定盤に取付けられた型板を近づく方向へ移動して試し打ちする際に、面盤に対して打抜き刃を、ステ刃が面盤に当接する位置まで圧接させて上記脆弱部を塑性変形させて打抜き刃を高さ調整すると同時に打抜き刃に対する罫線刃の高さ調整を実行する打抜き刃高さ調整方法。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれかにおいて、
上記脆弱部は、焼き戻し処理により低硬度化したシート状ワーク打抜き型の打抜き刃高さ調整方法。
【請求項4】
請求項1及び2のいずれかにおいて、
上記脆弱部は、基端に向かって徐々に厚さが減少する直線状の傾斜面としたシート状ワーク打抜き型の打抜き刃高さ調整方法。
【請求項5】
請求項1及び2のいずれかにおいて、
上記脆弱部は、基端に向かって徐々に厚さが減少する湾曲状の傾斜面としたシート状ワーク打抜き型の打抜き刃高さ調整方法。
【請求項6】
請求項1及び2のいずれかにおいて、
上記テーパ部は、基端に向かって徐々に厚さが減少する段差状としたシート状ワーク打抜き型の打抜き刃高さ調整方法。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれかにおいて、
上記脆弱部には、基端から所定深さの切欠きを打抜き刃の長手方向へ所定の間隔をおいて形成したシート状ワーク打抜き型の打抜き刃高さ調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、ダンボール、プラスチックシート等のシート状ワークから製品シートを打ち抜く打抜き装置に取付けられるシート状ワーク打抜き型の打抜き刃高さ調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状ワーク打抜き装置の定盤(上プラテン)に取付けられる打抜き型に設けられる打抜き刃にあっては、シート状ワークから製品展開形状の製品シートを、切り残しがないように、また刃先が損傷しないように打抜くには、シード状ワークがセットされる面板(下プラテン)に対して打抜き刃の刃先全体が均一に圧接するように、型板からの高さが一定になるように高さ調整する必要がある。
【0003】
本出願人は、特許文献1において平板状木型から突出する打抜き刃全体の高さムラをなくしてシート状ワークから製品シートを切り残しなく、また刃先が損傷しないように切断することができるようにするため、打抜き刃の基端部(刃先の反対側)を変形容易化し、その変形に応じて高さ調整可能な打抜き刃を提案した。
【0004】
しかし、特許文献1の打抜き刃にあっては、打抜き刃全体の高さ調整を簡易に行うことができるが、罫線刃との関係においても高さ調整する必要があった。
【0005】
すなわち、製品シートを折り畳んで製品に組み立てる際の折り目になる罫線溝にあっては、シートの材質や厚さに応じて溝深さ、従って打抜き刃に対する罫線刃の高さを調整する必要がある。例えば浅い罫線溝を形成するには、打抜き刃の刃先と罫線刃の先端との間隔が広くなるように、反対に深い罫線溝を形成するには、打抜き刃の刃先と罫線刃の先端との間隔が狭くなるようにそれぞれ調整する必要がある。
【0006】
また、シート状ワークに対して罫線溝が深過ぎる場合には、背割れが発生して製品品質を悪くする恐れがあり、反対に浅過ぎる場合には、製品シートを有効に折り畳むことが困難になっている。
【0007】
これを解決するため、従来は、打抜き作業を開始するにあたって試し打ちを繰り返して罫線刃に対する打抜き刃の高さがシート状ワークの厚さや材質に応じた最適の間隔になるように調整していたが、この調整作業に手間と時間が掛かり、打抜き作業効率が悪かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第7064729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、罫線刃に対する打抜き刃の高さがシート状ワークの厚さや材質に応じた所定の間隔になるように調整するには、打抜き作業を開始するにあたって試し打ちを繰り返して打抜き刃に対する罫線刃の高さを調整しなければならず、この調整作業に手間と時間が掛かり、打抜き作業効率が悪い点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、型板には、基準刃を上記打抜き刃の取付け高さに対し、脆弱部の塑性変形量に応じた低い高さで取り付けると共に罫線刃を上記基準刃の取付け高さに対し、製品シートに形成される罫線溝深さ分、低くして取付け、製品シートの打抜き作業に先立ってシート状ワーク打抜き装置の面盤に対して定盤に取付けられた型板を近づく方向へ移動して試し打ちする際に、面盤に対して打抜き刃を、基準刃が面盤に当接する位置まで圧接させて上記脆弱部を塑性変形させて打抜き刃を高さ調整すると同時に打抜き刃に対する罫線刃の高さ調整を実行することを最も主要な特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に係る発明は、上記型板には、シート状ワークから製品シートが打抜かれたスクラップシートを少なくとも2個に分割するステ刃を上記打抜き刃の取付け高さに対し、脆弱部の塑性変形量に応じた低い高さで取り付けると共に製品シートに罫線溝を形成する罫線刃を上記基準刃の取付け高さに対し、製品シートに形成される罫線溝深さ分、低くして取付け、製品シートの打抜き作業に先立ってシート状ワーク打抜き装置の面盤に対して定盤に取付けられた型板を近づく方向へ移動して試し打ちする際に、面盤に対して打抜き刃を、ステ刃が面盤に当接する位置まで圧接させて上記脆弱部を塑性変形させて打抜き刃を高さ調整すると同時に打抜き刃に対する罫線刃の高さ調整を実行することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、シート状ワークの厚さや材質に応じて打抜き刃に対する罫線刃の高さを簡易、かつ短時間に調整することができ、打抜き作業を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】シート状ワーク打抜き装置に取り付けられるシート状ワーク打抜き型を下方から見た底面図である。
図2】打抜き刃の略体斜視図である。
図3】打抜き刃、基準刃及び罫線刃の高さの相互関係を示す説明図である。
図4】面盤に対する打抜き刃の片当たり状態を示す説明図である。
図5】脆弱部の塑性変形による打抜き刃の高さ調整状態を示す説明図である。
図6】打抜き刃に対する罫線刃の高さ調整状態を示す説明図である。
図7】シート状ワークの打抜き状態及び罫線溝の形成上を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
型板に、基準刃又はステ刃を打抜き刃の取付け高さに対し、脆弱部の塑性変形量に応じた低い高さで取り付けると共に罫線刃を上記基準刃の取付け高さに対し、製品シートに形成される罫線溝深さ分、低くして取付け、製品シートの打抜き作業に先立ってシート状ワーク打抜き装置の面盤に対して定盤に取付けられた型板を近づく方向へ移動して試し打ちする際に、面盤に対して打抜き刃を、基準刃が面盤に当接する位置まで圧接させて上記脆弱部を塑性変形させて打抜き刃を高さ調整すると同時に打抜き刃に対する罫線刃の高さ調整を実行することを最良の実施形態とする。
【実施例0015】
以下、本発明に係るシート状ワークの打抜き型における切断刃の高さ調整方法を図に従って説明する。
先ず、図1図3に示すようにシート状ワーク打ち抜き装置(図示せず)の定盤1bに取付けられる打抜き型の概略について説明すると、打抜き型1は、ベニヤ合板等の型板としての平板状木型1aに紙、ダンボール、プラスチックシート等のシート状ワーク3から打抜かれる製品シート(図示せず)の展開形状に一致して折り曲げ形成された打抜き刃7、製品シートが打抜かれたシート状ワーク3の残りであるスクラップシート(抜きカスシート、スケルトン、図示せず)を切断して細分化するステ刃9、打抜き刃7の高さ調整用の基準刃11及び製品シート5の折り目に対応する溝を形成する罫線刃13がそれぞれ取付けられる。
【0016】
打抜き刃7(図1において実線で示す)は、例えば先端部に焼入れ処理により高硬度化された刃部7aを有した長さ(高さ)L1(長手直交方向幅)が24mm、厚さが0.7-1.5mmの帯状鋼板から形成され、基端部に脆弱部7bが形成される。該脆弱部7bとしては、打抜き刃7の基端部が基端に向かって所定の角度で徐々に幅狭になるテーパ状で、例えば刃厚が0.7mmの場合には、基端面厚が0-0.6mm、刃厚が0.9mmの場合には、基端面厚が0-0.8mm、刃厚が1.4mmの場合には、基端面厚が0-1.3mmになるように形成される。
【0017】
また、上記脆弱部7bには、多数の切欠き(スリット)7cが長手方向に対して適宜の間隔をおいて形成される。上記切欠き7cとしては、例えば基端面からの深さが0.05-3mm、長手方向幅が0.1-5mm、長手方向に対して4-130/inchの配置数になるように形成される。
脆弱部7bとしては、上記構成の他に打抜き刃7の基端部を焼き戻ししたり、テーパ形状にして低硬度化することにより変形可能な構成としてもよい。
なお、上記打抜き刃7の詳細な説明や変更実施例に付いては、特許文献1(特許第7064729号公報)の記載を援用し、その援用した説明を以下に記載する。
【0018】
図3に示すように、上記打抜き刃5は、例えば高さ23.6mm、厚さ0.7mmの帯状鋼板からなり、その先端部には所定の刃先高さ及び刃先角度(例えば、40°~50°)の刃部5aが、また基端部には所定のテーパ角(例えば10°~20°)、長さで、厚さが徐々に減少して基端面厚さが0~0.6mmになるテーパ部5bが形成されている。該テーパ部5bは打抜き刃5の塑性変形特性に応じてそのテーパ角や基端面厚さが任意に選択される。
なお、上記基端面厚さは打抜き刃5の刃厚が0.7mmの場合についての数値を示したが、刃厚が0.9mmでは基端面厚さが0~0.8mm、刃厚が1.4mmでは基端面厚さが0~1.3mmの範囲で選択すればよい。
また、該テーパ部5bとしては、図示する基端に向かって徐々に厚さが減少する直線形状の他に、図4に示すように基端に向かって徐々に湾曲状に厚さが減少する形状、図5に示すように基端に向かって徐々に段差状に厚さが減少する形状のいずれであってもよい。
なお、上記打抜き刃5の高さや厚みは上記に限定されるものではなく、打抜こうとするシー状ワークの厚さやシート状ワークの積層数(一回の打抜き作業により打抜かれるシー状ワークの枚数)に応じて任意に選択される。
上記打抜き刃5の刃部5aを含む先端部は高周波加熱等による焼入れ処理されて高硬度化されている。一方、テーパ部5bを含む基端部は焼入れ処理されておらず、先端部に比べて低硬度で、塑性変形しやすい金属特性になっている。
そして上記テーパ部5bには多数の切欠き15が長手方向へ所定の間隔をおいて形成される。各切欠き15は、例えば深さ(基端からの深さ)が0.05~3mm、長手方向幅が0.1~5mmで、長手方向に対して4~130/inchの配置数になる間隔をおいて形成される。
上記テーパ部5bのテーパ角や長さ及び基端面厚さや該テーパ部5bに形成される切欠き15の深さ、長手方向幅、単位当たりの個数は、テーパ部5bの塑性変形可能な力がシート状ワークに対する剪断力より高く、刃先の損傷可能力より低くなる範囲で適宜設定される。」
【0019】
上記ステ刃9(図1において短破線で示す)は、例えば先端部に刃部を有し、上記打抜き刃7に対し、すべての打抜き刃7の刃先が面盤1cに圧接する際における脆弱部7bの変形長さに応じた短い長さ(高さ)L2で厚さ0.7-1.5mmの帯状鋼板から形成され、シート状ワーク3における製品シートの抜き穴から外側に位置してスクラップシート5aを複数に分断する箇所に取付けられる。
【0020】
また、基準刃11(図1において長破線で示す)は、例えば必要に応じて先端部に刃部を有し、上記ステ刃9と一致する長さ(高さ)L2で厚さが0.7-1.5mmの帯状鋼板から形成され、例えば1枚のシート状ワーク3から2個の製品シートを打ち抜きする場合にあっては、シート状ワーク3における製品シート間の等分箇所、好ましくは、シート状ワーク3における長手方向中央部の複数箇所にて長手方向及び長手直交方向へそれぞれ延出するように取付けられる。
【0021】
なお、上記基準刃11に付いては、その取付け箇所によっては、上記ステ刃9を基準刃11として使用してもよい。また、上記ステ刃9、基準刃11及び罫線刃13は、焼き入れ処理により高硬度化されており、従ってその基端部は、特に脆弱化されていない。更に、上記打抜き刃7とステ刃9及び基準刃11の高さは、差δ1に設定される。
【0022】
上記罫線刃13(図1において短一点鎖線で示す)は、例えば先端面が平面状、湾曲面状、半球面状で、上記ステ刃9及び基準刃11に対し、製品シートに形成される罫線溝3aの深さDと板厚の差δ2分、短い長さ(高さ)L3で厚さが0.7-1.5mmの帯状鋼板から形成され、上記罫線溝3aに相対する箇所に取付けられる。
【0023】
上記罫線溝3aの深さDは、シート状ワーク3の材質や厚さ、折り曲げ角度の緩急等で背割れが発生しない範囲で任意に設定されるもので、一般的にはシート状ワーク3の厚さの1/2以下の範囲内である。
【0024】
すなわち、打抜き刃7、ステ刃9、基準刃11及び罫線刃13の長さ(高さ)は、平板状木型1aに対し、図3に示す高さの関係で取り付けられる。
【0025】
次に、上記のように構成された打抜き型1による打抜き刃7の高さ調整方法に付いて説明する。
【0026】
打抜き型1を使用してシート状ワークから製品シートを打抜き加工するのに先立って打抜き装置の面盤1c上にシート状ワーク3が載置されていない状態又は載置された状態で打抜き型1が取付けられた定盤1bを面盤1cに向かって移動し、打抜き刃7の刃先を面盤1cの上面に押し当てるムラ取り作業のための試し打ち作業を行う。
【0027】
なお、定盤1aに打抜き型1を取り付けた際には、打抜き刃7の脆弱部7bは基端面が定盤1bに対して非変形状態で当接するように取付けられている。
【0028】
上記試し打ち作業は、製品シートの外形状に対応して折り曲げられた打抜き刃7においては、非折り曲げ箇所に対し、折り曲げ箇所の高さが低くなったり、定盤1bや面盤1cの平行度や平面度、平板状木型1aに打抜き刃7を取り付ける際の高さの微妙なばらつきにより面盤1cに対して打抜き刃7全体を均一に圧接させることができず、面板1bに対する打抜き刃7の押し当て力が不均一になって打抜き不良になったり、刃先が損傷するのを防止するために行われる。(図4参照)
【0029】
この試し打ち作業において一部の刃部7aが面盤1cの上面に対して過度に押し当る高さむらがある場合には、面盤1cに対する刃先の押し当てに伴って過度に押し当った箇所の打抜き刃7は、その脆弱部7bが過度な押し当てに応じた力で塑性変形される。その際に脆弱部7bには多数の切欠き15が形成されて更に脆弱化させられているため、刃部7aが損傷する前に脆弱部7bが容易に塑性変形して打抜き刃7の高さを低くさせる。(図5参照)
【0030】
そして上記面盤1cに対する定盤1bを、打抜き刃7の脆弱部7bを塑性変形させながら基準刃11又はステ刃9の先端が面盤1cに圧接するまで移動することにより打抜き刃7全体の高さを基準刃11又はステ刃9の高さになるように打抜き刃7全体の高さが均一になるように調整される。
【0031】
また、上記打抜き刃7全体の高さが基準刃11又はステ刃9の高さになるように調整された際には、上記基準刃11又はステ刃9の高さと罫線刃13の高さの差が、該罫線刃13により形成しようとする罫線溝3aの深さDに設定されているため、打抜き刃7の高さと罫線刃13の高さの差が常に一定の差δ2になるように設定される。(図6参照)
【0032】
上記のように試し打ちされて高さ調整された打抜き刃7、ステ刃9及び罫線刃13により面盤1c上に載置されたシート状ワーク3から製品シートを打ち抜く際には、面盤1cに対する定盤1bの移動に伴って面盤1cに全体が均一に圧接するように高さ調整された打抜き刃7によりシート状ワーク3から製品シートを切り残しがない状態で打抜くことができる。
【0033】
その際には、打抜き刃7の刃先と罫線刃13の先端との間隔が罫線溝3aの差δ2になるため、打抜き動作と共に形成される罫線溝3aを、常にシート状ワーク3の厚さや材質に応じて予め設定された一定の深さD(シート状ワークの板厚-δ2)で形成することができ、背割れ等を防止して高品質の罫線溝3aを形成することができる。(図7参照)
【0034】
また、上記打抜き動作と共に製品シート5が打抜かれたスクラップシートは、刃先が面盤1cに圧接するステ刃9により複数に分断して細分化されるため、打抜き作業後に面盤1cから取り出す際の作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
1 打抜き型
1a 型板としての平板状木型
1b 定盤
1c 面板
3 シート状ワーク
3a 罫線溝
7 打抜き刃
7a 刃部
7b 脆弱部
7c 切欠き
9 ステ刃
11 基準刃
13 罫線刃
δ 変形長さ
L1、L2、L3 長さ
δ1、δ2 差
D 深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7