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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067881
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20240510BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20240510BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20240510BHJP
   B22C 23/02 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B22D17/22 K
B22D17/20 D
B22D17/32 Z
B22C23/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178272
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 智
【テーマコード(参考)】
4E094
【Fターム(参考)】
4E094CC57
(57)【要約】
【課題】離型力を取得する精度を向上させることが可能なダイカストマシンを提供する。
【解決手段】ダイカストマシン100は、固定ダイプレート2と、移動ダイプレート3と、移動ダイプレート3を移動させる駆動装置4とを含む型締装置7と、成形品Aに接触して押圧する金型Mの押圧部材M11を移動させて成形品Aを離型する押圧力を発生させる流体シリンダ5aを含む押出装置5と、離型剤の塗布装置6と、制御部103と、を備え、流体シリンダ5aは、ピストン50の一方側に設けられ、離型時に流体が供給される一方側流体室52と、ピストン50の他方側に設けられ、離型時に流体が排出される他方側流体室53と、一方側流体室52の流体圧力を検出する一方側圧力計54と、他方側流体室53の流体圧力を検出する他方側圧力計55とを有し、制御部103は、一方側圧力計54および他方側圧力計55の検出結果に基づいて、離型力を取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型を保持する固定ダイプレートと、移動金型を保持する移動ダイプレートと、前記移動ダイプレートを移動させてダイカスト成形用の金型を開閉する駆動装置とを含む型締装置と、
ピストンを有し、成形品に接触して押圧する前記金型の押圧部材を移動させて前記成形品を離型する押圧力を発生させる流体シリンダを含む押出装置と、
前記金型に離型剤を塗布する塗布装置と、
制御部と、を備え、
前記流体シリンダは、
前記ピストンの一方側に設けられ、離型時に流体が供給される一方側流体室と、
前記ピストンの他方側に設けられ、離型時に流体が排出される他方側流体室と、
前記一方側流体室の流体圧力を検出する一方側圧力計と、
前記他方側流体室の流体圧力を検出する他方側圧力計と、を有し、
前記制御部は、前記一方側圧力計および前記他方側圧力計の検出結果に基づいて、前記金型と前記成形品との密着力に抗して前記金型から前記成形品を離型させる力である離型力を取得するように構成されている、ダイカストマシン。
【請求項2】
前記一方側流体室は、前記他方側流体室に向けた押圧力を発生させる一方側ピストン押圧面を有し、
前記他方側流体室は、前記一方側流体室に向けた押圧力を発生させる他方側ピストン押圧面を有し、
前記制御部は、
前記一方側流体室の流体圧力および前記他方側流体室の流体圧力と、前記一方側ピストン押圧面の面積および前記他方側ピストン押圧面の面積とに基づいて、離型時に前記流体シリンダに要求される力である成形品押出力を取得するとともに、
少なくとも前記成形品押出力に基づいて、前記離型力を取得するように構成されている、請求項1に記載のダイカストマシン。
【請求項3】
前記制御部は、
前記成形品の離型後の前記金型が開いた状態において、前記成形品がない状態で離型時と同様に前記ピストンを駆動させる空打ちを行い、
前記空打ち時の前記一方側流体室の流体圧力および前記他方側流体室の流体圧力に基づいて、前記空打ち時に前記流体シリンダに要求される力である空打押出力を取得するとともに、
前記成形品押出力および前記空打押出力に基づいて、前記離型力を取得するように構成されている、請求項2に記載のダイカストマシン。
【請求項4】
前記制御部は、前記成形品押出力から前記空打押出力を差し引くことにより、前記離型力を取得するように構成されている、請求項3に記載のダイカストマシン。
【請求項5】
前記制御部は、成形サイクル毎に前記空打ちを行うことによって、前記成形品押出力、前記空打押出力および前記離型力の取得を行うように構成されている、請求項4に記載のダイカストマシン。
【請求項6】
前記制御部は、
前回の前記成形サイクルの前記離型力と比較して前記離型力が大きい場合に、前記前回の成形サイクルの次の前記成形サイクルにおいて前記塗布装置と前記移動金型との距離を小さくするとともに、
前記前回の成形サイクルの前記離型力と比較して前記離型力が小さい場合に、前記次の成形サイクルにおいて前記塗布装置と前記移動金型との距離を大きくする制御を行うように構成されている、請求項5に記載のダイカストマシン。
【請求項7】
前記制御部は、
前回の前記成形サイクルの前記離型力と比較して前記離型力が大きい場合に、前記前回の成形サイクルの次の前記成形サイクルにおいて前記塗布装置による前記離型剤の塗布量を増加させるとともに、
前記前回の成形サイクルの前記離型力と比較して前記離型力が小さい場合に、前記次の成形サイクルにおいて前記塗布装置による前記離型剤の塗布量を減少させる制御を行うように構成されている、請求項5に記載のダイカストマシン。
【請求項8】
前記制御部は、前記離型力が所定の離型報知しきい値以上になったことを報知する制御を行うように構成されている、請求項4に記載のダイカストマシン。
【請求項9】
前記制御部は、前記空打押出力が所定の空打報知しきい値以上になったことを報知する制御を行うように構成されている、請求項3に記載のダイカストマシン。
【請求項10】
前記制御部は、前記塗布装置による前記離型剤の塗布が行われている間に、前記空打ちを行うように構成されている、請求項3に記載のダイカストマシン。
【請求項11】
前記制御部は、前記押出装置により前記成形品の離型を試みて前記成形品を離型させることができなかった場合に、前記押出装置の出力を最大に設定して前記成形品の離型を再び試みる制御を行うように構成されている、請求項1に記載のダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成形品を離型する押出装置を備えるダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形品を離型する押出装置を備えるダイカストマシンが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、成形品の押出しシリンダを含む離型装置と、圧力センサーと、離型剤の塗布装置とを備えるダイカストマシンが開示されている。上記押出しシリンダは、成形品に接触して押圧する金型の押出ピンを移動させて成形品を離型する押圧力を発生させるように構成されている。押出しシリンダは、ピストンを有しており、ピストンの一方側の油室に作動油が供給されるとともに、ピストンの他方側の油室から作動油が排出されることによって、押出ピンを移動させる油圧式のシリンダである。圧力センサーは、ピストンの一方側の油室の圧力を検出するように構成されている。ダイカストマシンは、圧力センサーの検出値に基づいて、次の成形サイクルにおける塗布装置による離型剤の塗布量を増減させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-164467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のダイカストマシンでは、圧力センサーは、一方側の油室の圧力を検出することはできるが、他方側の油室の圧力を正確に検出することはできない。詳細には、上記ダイカストマシンでは、一方側の油室および他方側の油室の各々には、作動油の漏出などの損失が個別に発生して、損失の影響を個別に受けて圧力が変動するため、離型力を取得する際に、一方側の油室の圧力を検出することはできるが、他方側の油室の圧力を正確に検出することはできない。したがって、上記特許文献1のダイカストマシンを含むダイカストマシンの分野では、離型力を取得する精度を向上させることが求められている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、離型力を取得する精度を向上させることが可能なダイカストマシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるダイカストマシンは、固定金型を保持する固定ダイプレートと、移動金型を保持する移動ダイプレートと、移動ダイプレートを移動させてダイカスト成形用の金型を開閉する駆動装置とを含む型締装置と、ピストンを有し、成形品に接触して押圧する金型の押圧部材を移動させて成形品を離型する押圧力を発生させる流体シリンダを含む押出装置と、金型に離型剤を塗布する塗布装置と、制御部と、を備え、流体シリンダは、ピストンの一方側に設けられ、離型時に流体が供給される一方側流体室と、ピストンの他方側に設けられ、離型時に流体が排出される他方側流体室と、一方側流体室の流体圧力を検出する一方側圧力計と、他方側流体室の流体圧力を検出する他方側圧力計と、を有し、制御部は、一方側圧力計および他方側圧力計の検出結果に基づいて、金型と成形品との密着力に抗して金型から成形品を離型させる力である離型力を取得するように構成されている。
【0008】
この発明の一の局面によるダイカストマシンでは、上記のように、ピストンの一方側の一方側流体室の流体圧力を検出する一方側圧力計と、ピストンの他方側の他方側流体室の流体圧力を検出する他方側圧力計と、一方側圧力計および他方側圧力計の検出結果に基づいて、金型と成形品との密着力に抗して金型から成形品を離型させる力である離型力を取得するように構成された制御部とを設ける。これによって、一方側圧力計および他方側圧力計により、ピストンの片側の流体室だけでなく、ピストンの両側の各流体室の流体圧力を検出することができる。したがって、ピストンの片側の流体室だけでなく、ピストンの両側の各流体室において発生する作動流体の漏出などの損失の離型力への影響を排除することができる。その結果、離型時にピストンを移動させるために必要とされる力を正確に取得することができるので、離型力を取得する精度を向上させることができる。
【0009】
上記一の局面によるダイカストマシンにおいて、好ましくは、一方側流体室は、他方側流体室に向けた押圧力を発生させる一方側ピストン押圧面を有し、他方側流体室は、一方側流体室に向けた押圧力を発生させる他方側ピストン押圧面を有し、制御部は、一方側流体室の流体圧力および他方側流体室の流体圧力と、一方側ピストン押圧面の面積および他方側ピストン押圧面の面積とに基づいて、離型時に流体シリンダに要求される力である成形品押出力を取得するとともに、少なくとも成形品押出力に基づいて、離型力を取得するように構成されている。このように構成すれば、一方側流体室の流体圧力および他方側流体室の流体圧力と、一方側ピストン押圧面の面積および他方側ピストン押圧面の面積とに基づくことにより、ピストンの形状を考慮して離型時にピストンを移動させるために必要とされる力をより正確に取得することができる。その結果、離型力を取得する精度をより向上させることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、制御部は、成形品の離型後の金型が開いた状態において、成形品がない状態で離型時と同様にピストンを駆動させる空打ちを行い、空打ち時の一方側流体室の流体圧力および他方側流体室の流体圧力に基づいて、空打ち時に流体シリンダに要求される力である空打押出力を取得するとともに、成形品押出力および空打押出力に基づいて、離型力を取得するように構成されている。このように構成すれば、ピストンを移動させるために必要とされる力から、離型時における押出装置と金型との摩擦などによる機械的な損失を排除して、金型と成形品との密着力に抗して金型から成形品を離型させる力である純粋な離型力を取得することができる。したがって、ピストンの両側の各流体室における流体の損失だけでなく、機械的な損失も考慮して離型力を取得することができるので、離型力を取得する精度をより一層向上させることができる。
【0011】
上記空打ちを行う構成において、好ましくは、制御部は、成形品押出力から空打押出力を差し引くことにより、離型力を取得するように構成されている。このように構成すれば、成形品押出力から空打押出力を差し引くだけで、離型力を容易にかつ精度よく取得することができる。
【0012】
上記成形品押出力から空打押出力を差し引くことにより離型力を取得する構成において、好ましくは、制御部は、成形サイクル毎に空打ちを行うことによって、成形品押出力、空打押出力および離型力の取得を行うように構成されている。このように構成すれば、成形サイクル毎に、成形品押出力および空打押出力を考慮した離型力を正確に取得することができるとともに、成形サイクル毎に、成形品押出力、空打押出力および離型力の各力について、突発的な変化が発生した成形サイクルを確実に把握することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、制御部は、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が大きい場合に、前回の成形サイクルの次の成形サイクルにおいて塗布装置と移動金型との距離を小さくするとともに、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が小さい場合に、次の成形サイクルにおいて塗布装置と移動金型との距離を大きくする制御を行うように構成されている。このように構成すれば、成形サイクル毎の離型力に応じて、塗布装置と移動金型との距離を増減させることができるので、最適な離型力に近づくように塗布装置による塗布状態を調整することができる。
【0014】
上記成形サイクル毎に空打ちを行う構成において、好ましくは、制御部は、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が大きい場合に、前回の成形サイクルの次の成形サイクルにおいて塗布装置による離型剤の塗布量を増加させるとともに、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が小さい場合に、次の成形サイクルにおいて塗布装置による離型剤の塗布量を減少させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、成形サイクル毎の離型力に応じて、離型剤の塗布量を増減させることができるので、最適な離型力に近づくように調整することができる。
【0015】
上記成形品押出力から空打押出力を差し引くことにより離型力を取得する構成において、好ましくは、制御部は、離型力が所定の離型報知しきい値以上になったことを報知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、報知によって金型と成形品との密着力が大きくなったことをユーザに把握させることができる。
【0016】
上記空打ちを行う構成において、好ましくは、制御部は、空打押出力が所定の空打報知しきい値以上になったことを報知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、報知によって機械的な損失が大きくなったことをユーザに把握させることができる。
【0017】
上記空打ちを行う構成において、好ましくは、制御部は、塗布装置による離型剤の塗布が行われている間に、空打ちを行うように構成されている。このように構成すれば、離型剤の塗布と空打ちとを別々のタイミングで行う場合と比較して、1回の成形サイクルに要する時間を短縮することができる。
【0018】
上記一の局面によるダイカストマシンにおいて、好ましくは、制御部は、押出装置により成形品の離型を試みて成形品を離型させることができなかった場合に、押出装置の出力を最大に設定して成形品の離型を再び試みる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、成形品をより確実に離型させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、離型力を取得する精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態によるダイカストマシンの全体構成を示した図であり、成形品の離型前の状態を示した図である。
図2】実施形態によるダイカストマシンの押出装置および移動ダイプレートを示した図であり、成形品の離型後の状態を示した図である。
図3】押出装置による成形品の押出開始からの時間と、成形品押出力、離型力、一方側圧力計の検出値および他方側圧力計の検出値との関係を示したグラフである。
図4】実施形態によるダイカストマシンの制御部が実行する空打ち後の制御処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
[実施形態]
図1図3を参照して、実施形態によるダイカストマシン100の構成について説明する。
【0023】
各図では、上下方向をZ方向により示す。Z方向のうち、上方をZ1方向により示し、下方をZ2方向により示す。
【0024】
各図では、タイバー1の軸方向(移動金型M1の移動方向)をX方向により示す。X方向のうち、移動金型M1から固定金型M2を向く方向をX1方向により示し、その反対方向をX2方向により示す。
【0025】
(ダイカストマシンの概略構成)
図1および図2に示すダイカストマシン100は、固定金型M2に対して移動金型M1を水平方向に往復移動させて成形を行う横型の成形機である。ダイカストマシン100は、金型M内のキャビティに溶湯を射出して凝固させることにより成形品Aを製造するように構成されている。
【0026】
ダイカストマシン100は、射出装置101と、ダイカストマシン本体102と、制御部103とを備えている。
【0027】
ダイカストマシン本体102には、金型Mが取り付けられている。以下では、金型Mの構成について説明した後、ダイカストマシン100を構成する各構成要素について説明する。
【0028】
(金型の構成)
金型Mは、上記の移動金型M1と固定金型M2とを備えている。移動金型M1および固定金型M2は、成形品Aを形成する凹状の成形面A1を有している。金型Mは、射出後において固定金型M2に対して移動金型M1が移動して離間することによって、移動金型M1に成形品Aが密着した状態で型開きされるように構成されている。
【0029】
移動金型M1は、スペーサ部材M10と、成形品Aを押圧する押圧部材M11と、押圧部材M11を保持する保持プレートM12とを備えている。一例ではあるが、押圧部材M11は、複数のエジェクターピンにより構成されている。押圧部材M11(複数のエジェクターピン)のX1方向の端部は、成形面A1の一部を形成している。
【0030】
移動ダイプレート3のX1方向側には、保持プレートM12がX方向に移動可能な状態で配置されている。スペーサ部材M10は、保持プレートM12をX方向に移動させるためのスペースBを確保している。
【0031】
保持プレートM12は、金型Mが開かれた直後の離型前において、スペースB内の移動ダイプレート3側(X2方向側)に配置されている。この状態から、保持プレートM12は、スペースB内で押圧部材M11とともに成形品Aに向けてX1方向に移動することによって、押圧部材M11により成形品Aを押圧して、移動金型M1から成形品Aを突き出すようにして離型させるように構成されている。
【0032】
保持プレートM12は、X2方向側から押出装置5の棒状の接続部材5cが接続されている。保持プレートM12は、押出装置5によってX方向に移動されるように構成されている。棒状の接続部材5cは、移動ダイプレート3をX方向に貫通している。
【0033】
(射出装置の構成)
射出装置101は、筒状のスリーブ101aと、プランジャ101bと、プランジャ駆動装置(図示せず)とを備えている。
【0034】
スリーブ101aは、上部に注湯口101cを有している。スリーブ101aは、金型Mが閉じた状態で、ラドルなどを含む注湯装置によって注湯口101cを介して溶湯が注がれるように構成されている。
【0035】
プランジャ101bは、スリーブ101a内で進退移動可能に構成されている。プランジャ101bは、プランジャ駆動装置によって移動される。プランジャ101bは、スリーブ101aに溶湯が注がれた状態で前進(X2方向に移動)することにより、溶湯を金型M内のキャビティに射出するように構成されている。
【0036】
(ダイカストマシン本体の構成)
ダイカストマシン本体102は、金型Mを開閉し、型締を行う型締装置7と、成形品Aを押し出して取り出す押出装置5と、離型剤を塗布する塗布装置6とを備えている。型締装置7は、複数のタイバー1と、固定ダイプレート2と、移動ダイプレート3と、駆動装置4とを備えている。型締装置7は、移動ダイプレート3に固定された移動金型M1を移動させることにより、金型Mを開閉する開閉動作と、固定金型M2と移動金型M1とを接触させた状態で射出圧により金型Mが開かないように閉状態を保持する型締動作とを行うように構成されている。
【0037】
(ダイカストマシン本体の固定ダイプレートの構成)
固定ダイプレート2は、タイバー1の軸方向の一方端部(X1方向端部)に配置されている。固定ダイプレート2は、X方向を厚み方向とする板部材であり、固定金型M2を保持するように構成されている。一例ではあるが、固定金型M2は、クランプ部材により固定ダイプレート2に固定される。固定ダイプレート2には、上記の射出装置101が設けられている。
【0038】
(ダイカストマシン本体の移動ダイプレートの構成)
移動ダイプレート3は、固定ダイプレート2のX2方向側に配置されている。移動ダイプレート3は、X方向を厚み方向とする板部材であり、移動金型M1を保持するように構成されている。一例ではあるが、移動金型M1は、クランプ部材により移動ダイプレート3に固定される。
【0039】
移動ダイプレート3には、タイバー1が挿通されている。移動ダイプレート3は、金型Mの開閉のために、駆動装置4によってタイバー1に沿ってX方向に進退移動するように構成されている。移動ダイプレート3には、押出装置5が設けられている。
【0040】
移動ダイプレート3には、押出装置5の流体シリンダ本体51のX方向への移動をガイドする複数のガイド部材30が設けられている。ガイド部材30は、X2方向に突出する柱状の部材である。ガイド部材30は、押出装置5の流体シリンダ本体51に嵌合している。
【0041】
(ダイカストマシン本体の駆動装置の構成)
駆動装置4は、制御部103により駆動制御されるように構成されている。駆動装置4は、タイバー1に沿って移動ダイプレート3を移動させてダイカスト成形用の金型Mを開閉するように構成されている。
【0042】
駆動装置4は、油圧装置40と、油圧装置40により駆動される複数のリンク部材41とを有するトグル機構により構成されている。リンク部材41は、移動ダイプレート3に接続されており、油圧装置40の押圧力を移動ダイプレート3に伝えて、移動ダイプレート3をX方向に進退移動させるように構成されている。
【0043】
(ダイカストマシン本体の押出装置の構成)
押出装置5は、制御部103により駆動制御されるように構成されている。押出装置5は、流体シリンダ5aと、流体シリンダ5aを駆動させる流体供給装置5bと、上記説明した棒状の接続部材5cとを備えている。
【0044】
(押出装置の流体シリンダの構成)
流体シリンダ5aは、成形品Aに接触して押圧する金型Mの押圧部材M11(エジェクターピン)を移動させて成形品Aを離型するための押圧力を発生させるように構成されている。流体シリンダ5aは、移動ダイプレート3に対して、移動金型M1側とは逆側のX2方向側に配置されている。
【0045】
流体シリンダ5aは、ピストン50と、流体シリンダ本体51と、ピストン50の一方側(X1方向側)に設けられた一方側流体室52と、ピストン50の他方側に設けられた他方側流体室53と、一方側圧力計54と、他方側圧力計55とを含んでいる。
【0046】
ピストン50は、ロッド部50aとヘッド部50bとを有している。ロッド部50aのX1方向の一端は、移動ダイプレート3に固定されている。一例ではあるが、ロッド部50aのX1方向の端部は、ボルト(図示せず)により移動ダイプレート3に固定されている。すなわち、ロッド部50aを含むピストン50は、移動ダイプレート3に対して移動することがない。
【0047】
ヘッド部50bは、ロッド部50aのX2方向の端部に設けられている。ヘッド部50bは、流体シリンダ本体51に全体が覆われており、流体シリンダ本体51の内部を、X1方向側の一方側流体室52と、X2方向側の他方側流体室53とに区画している。
【0048】
流体シリンダ本体51は、上記の通り、ヘッド部50bの覆うことにより、内部に一方側流体室52と他方側流体室53とを形成している。流体シリンダ本体51(流体シリンダ5a)は、X方向に延びる棒状の接続部材5cにより金型Mの保持プレートM12に接続されている。
【0049】
一方側流体室52は、離型時に流体が供給されて容積が拡大するように構成されている。他方側流体室53は、離型時に流体が排出されて容積が縮小するように構成されている。一方側流体室52の拡大する容積は、他方側流体室53の縮小する容積に一致する。なお、一方側流体室52の容積が拡大して他方側流体室53の容積が縮小する場合、流体シリンダ本体51、棒状の接続部材5cおよび押圧部材M11は、X1方向に移動する。その結果、成形品Aが離型される。
【0050】
一方側流体室52は、他方側流体室53(X2方向)に向けた押圧力を発生させる一方側ピストン押圧面52aを有している。一方側ピストン押圧面52aは、ヘッド部50bのX1方向側の面により構成されている。すなわち、一方側ピストン押圧面52aの面積S1は、ヘッド部50bのX方向に直交する断面における断面積から、ロッド部50aのX方向に直交する断面における断面積を差し引いた面積に等しい。
【0051】
他方側流体室53は、一方側流体室52(X1方向)に向けた押圧力を発生させる他方側ピストン押圧面53aを有している。他方側ピストン押圧面53aは、ヘッド部50bのX2方向側の面により構成されている。すなわち、他方側ピストン押圧面53aの面積S2は、ヘッド部50bのX方向に直交する断面における断面積に等しい。したがって、他方側ピストン押圧面53aの面積S2は、一方側ピストン押圧面52aの面積S1よりもロッド部50aの断面積分だけ大きい。
【0052】
(押出装置の流体供給装置の構成)
流体供給装置5bは、電磁弁150と、流体ポンプ151と、流体貯留タンク152とを有している。
【0053】
電磁弁150および流体ポンプ151は、制御部103により駆動制御されるように構成されている。電磁弁150は、成形品Aを移動金型M1から離れるように押圧部材M11をX1方向に移動させる際の状態と、押圧部材M11をX2方向に移動させる際の状態とを切り替えるように構成されている。
【0054】
詳細には、電磁弁150は、流体ポンプ151を一方側流体室52に接続するとともに流体貯留タンク152を他方側流体室53に接続して押圧部材M11をX1方向に移動させる際の状態と、流体ポンプ151を他方側流体室53に接続するとともに流体貯留タンク152を一方側流体室52に接続して押圧部材M11をX2方向に移動させる際の状態とを切り替えるように構成されている。押圧部材M11をX1方向に移動させる際には、一方側流体室52の容積が拡大する。押圧部材M11をX2方向に移動させる際には、他方側流体室53の容積が拡大する。
【0055】
流体ポンプ151は、流体貯留タンク152に貯留された作動流体を一方側流体室52または他方側流体室53に向けて圧送するように構成されている。一例ではあるが、作動流体は、非圧縮性流体である油により構成されている。
【0056】
一方側圧力計54は、一方側流体室52の流体圧力を検出するように構成されている。すなわち、一方側圧力計54は、一方側ピストン押圧面52aに作用する流体圧力を検出するように構成されている。一方側圧力計54は、一方側流体室52に接続される流体配管T1に設けられている。一方側圧力計54は、電磁弁150と、一方側流体室52との間に配置されている。
【0057】
他方側圧力計55は、他方側流体室53の流体圧力を検出するように構成されている。すなわち、他方側圧力計55は、他方側ピストン押圧面53aに作用する流体圧力を検出するように構成されている。他方側圧力計55は、他方側流体室53に接続される流体配管T2に設けられている。他方側圧力計55は、電磁弁150と、他方側流体室53との間に配置されている。
【0058】
一例ではあるが、一方側圧力計54および他方側圧力計55は、流体から受ける圧力により変形するダイアフラムを利用して流体圧力を検出する方式の圧力計である。一方側圧力計54および他方側圧力計55の検出結果は、制御部103により取得される。
【0059】
(押出装置の接続部材の構成)
棒状の接続部材5cは、移動ダイプレート3のX方向に延びる貫通孔31に挿通されている。棒状の接続部材5cは、上記の通り、流体シリンダ本体51(流体シリンダ5a)と保持プレートM12とを接続している。したがって、棒状の接続部材5cは、流体シリンダ本体51および保持プレートM12とともにX方向に一体的に移動するように構成されている。棒状の接続部材5cは、流体シリンダ本体51(流体シリンダ5a)の押圧力を金型Mの保持プレートM12に伝達するための部材である。
【0060】
(ダイカストマシン本体の塗布装置の構成)
塗布装置6は、制御部103により駆動制御されるように構成されている。塗布装置6は、開かれた状態の金型Mに離型剤を塗布するように構成されている。塗布装置6は、噴射ノズル60と、噴射ノズル60を移動させるノズル移動装置61とを備えている。
【0061】
噴射ノズル60は、金型Mの成形面A1に向けて離型剤を塗布するように構成されている。噴射ノズル60は、金型Mの成形面A1にムラなく離型剤を噴射するように、複数設けられている。
【0062】
ノズル移動装置61は、噴射ノズル60を、移動金型M1と固定金型M2との間の位置(進入位置)と、移動金型M1と固定金型M2との間から外れた位置(退避位置)とに移動させることが可能に構成されている。進入位置は、金型Mを開いて、離型剤を金型Mに塗布する際の噴射ノズル60の位置である。退避位置は、金型Mを閉じて、溶湯を金型M内に射出する際の噴射ノズル60の位置である。
【0063】
(制御部の構成)
一例ではあるが、制御部103は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリなどを含んでおり、制御盤として構成されている。
【0064】
制御部103は、一方側圧力計54および他方側圧力計55の検出結果に基づいて、金型Mと成形品Aとの密着力に抗して金型Mから成形品Aを離型させる力である離型力を取得するように構成されている。
【0065】
詳細には、制御部103は、一方側流体室52の流体圧力および他方側流体室53の流体圧力と、一方側ピストン押圧面52aの面積S1および他方側ピストン押圧面53aの面積S2とに基づいて、離型時に流体シリンダ5aに要求される力である成形品押出力を取得するように構成されている。
【0066】
具体的には、一方側圧力計54により検出される一方側流体室52の流体圧力をP10、他方側圧力計55により検出される他方側流体室53の流体圧力をP11とした場合、成形品押出力は、「P10×S1-P11×S2」という演算の結果により取得される。
【0067】
成形品押出力は、押圧部材M11により成形品Aを押圧している間において、大きく上昇する(図3参照)。また、離型力も同様のタイミングで大きく上昇する。また、一方側圧力計54の検出値である流体圧力P10も同様のタイミングで大きく上昇する。
【0068】
また、制御部103は、成形品Aの離型後の金型Mが開いた状態において、成形品Aがない状態で離型時と同様にピストン50を駆動させる空打ちを行い、空打ち時の一方側流体室52の流体圧力および他方側流体室53の流体圧力に基づいて、空打ち時に流体シリンダ5aに要求される力である空打押出力を取得するように構成されている。そして、制御部103は、取得した成形品押出力および空打押出力に基づいて、離型力を取得するように構成されている。具体的には、制御部103は、成形品押出力から空打押出力を差し引くことにより、離型力を取得するように構成されている。
【0069】
ここで、成形品押出力とは、成形品Aがある状態で離型のために押圧部材M11をX1方向に移動させる際の、「金型Mの摺動抵抗(摩擦)」と、「流体シリンダ5aの摺動抵抗(摩擦)」と、「流体回路における流体の漏出などの損失」との総和である。また、空打押出力は、成形品Aがない状態で押圧部材M11をX1方向に移動させる際の、「金型Mの摺動抵抗」と、「流体シリンダ5aの摺動抵抗」と、「流体回路における流体の漏出などの損失」との総和である。なお、離型力の取得に用いられる成形品押出力および空打押出力は、それぞれ、成形品押出力の最大値(図3に示す時刻tにおける成形品押出力)、および、空打押出力の最大値(時刻tにおける空打押出力)である。
【0070】
上記空打ちを行う場合において、制御部103は、成形サイクル毎に空打ちを行うことによって、成形品押出力、空打押出力および離型力の取得を行うように構成されている。
【0071】
また、上記空打ちを行う場合において、制御部103は、離型後の塗布装置6による離型剤の塗布が行われている間に、空打ちを行うように構成されている。すなわち、制御部103は、離型剤の塗布する前後のタイミングで空打ちを行うのではなく、離型剤の塗布に要する時間を利用して、空打ちを行うように構成されている。
【0072】
上記空打ちを行い離型力を取得した場合において、制御部103は、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が大きい場合に、前回の成形サイクルの次の成形サイクルにおいて塗布装置6と移動金型M1との距離Dを小さくするように構成されている。
【0073】
一方、上記空打ちを行い離型力を取得した場合において、制御部103は、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が小さい場合に、次の成形サイクルにおいて塗布装置6と移動金型M1との距離Dを大きくする制御を行うように構成されている。
【0074】
塗布装置6と移動金型M1との距離Dの調整は、塗布装置6のノズル移動装置61、および、型締装置7の少なくとも一方により調整される。
【0075】
一例ではあるが、制御部103は、塗布装置6と移動金型M1との距離Dを調整するための離型力の大小の判断を、所定のしきい値を設けて判断するように構成されている。所定のしきい値は、単一のしきい値であってもよいし、複数段階のしきい値であってもよい。この他、制御部は、塗布装置と移動金型との距離の調整を、所定のしきい値に基づいて行うのではなく、離型力の大小に比例させて距離を増減させるなどにより行ってもよい。
【0076】
また、上記空打ちを行い離型力を取得した場合において、制御部103は、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が大きい場合に、前回の成形サイクルの次の成形サイクルにおいて塗布装置6による離型剤の塗布量を増加させるように構成されている。
【0077】
一方、上記空打ちを行い離型力を取得した場合において、制御部103は、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が小さい場合に、次の成形サイクルにおいて塗布装置6による離型剤の塗布量を減少させる制御を行うように構成されている。
【0078】
離型剤の塗布量の調整は、塗布装置6による離型剤の塗布時間を長くすることにより行われる。なお、離型剤の塗布量の調整は、離型剤の塗布時間に変えて、離型剤の塗布圧力を大きくしてもよいし、塗布時間を長くするとともに塗布圧力を大きくしてもよい。また、離型剤の塗布時間を所定時間だけ長くした後、所定時間経過後に塗布圧力を大きくしてもよい。
【0079】
一例ではあるが、制御部103は、離型剤の塗布量を調整するための離型力の大小の判断を、所定のしきい値を設けて判断するように構成されている。所定のしきい値は、単一のしきい値であってもよいし、複数段階のしきい値であってもよい。この他、制御部は、離型剤の塗布量の調整を、所定のしきい値に基づいて行うのではなく、離型力の大小に比例させて離型剤の塗布量を増減させるなどにより行ってもよい。
【0080】
また、制御部103は、上記空打ちを行い離型力を取得した場合において、離型力が所定の離型報知しきい値(T1)以上になったことを報知する制御を行うように構成されている。詳細には、制御部103には、報知部103aが設けられている。一例ではあるが、報知部103aは、報知音を発する報知用ブザーにより構成されている。この他、報知部は、報知用ランプなどにより構成されていてもよい。
【0081】
さらに、制御部103は、空打押出力が所定の空打報知しきい値(T2)以上になったことを報知する制御を行うように構成されている。この際の報知も上記報知部103aにより行われる。なお、報知部103aにより報知を行う場合には、制御部103は、ダイカストマシン100の駆動を停止させる制御を行ってもよいし、駆動を継続する制御を行ってもよい。
【0082】
また、制御部103は、押出装置5により成形品Aの離型を試みて成形品Aを離型させることができなかった場合に、押出装置5の出力を最大に設定して成形品Aの離型を再び試みる制御を行うように構成されている。
【0083】
(空打ち後の制御部による制御処理)
図4を参照して、空打ち後の制御部103による制御処理のフローについて説明する。
【0084】
以下の説明では、理解容易化のために、離型報知しきい値(報知の有無を判断するための離型力のしきい値)、空打報知しきい値(報知の有無を判断するための空打押出力のしきい値)、成形品押出力(成形品Aがある状態で離型のために押圧部材M11であるエジェクターピンを移動させる際に流体シリンダ5aに要求される力の総和)、空打押出力(成形品Aがない状態で押圧部材M11であるエジェクターピンを移動させる際、すなわち空打ちの際に流体シリンダ5aに要求される力)、離型力(成形品押出力から空打押出力を差し引いた差分)について、具体的な値を例示して説明する。
【0085】
まず、ステップS1において、成形品押出力から空打押出力を差し引くことにより、離型力が取得される。そして、ステップS1aに進む。一例ではあるが、ステップS1において、成形品押出力が22[kN]であり、空打押出力が3[kN]であるならば、離型力は19[kN]になる。空打押出力は、上記の通り、空打ちの際に流体シリンダ5aに要求される力であり、「金型Mの摺動抵抗」や、「流体シリンダ5aの摺動抵抗」、「流体回路における流体の漏出などの損失」を含むものである。したがって、ステップS1において、成形品押出力から空打押出力を差し引くことによって、金型Mから成形品Aを離型させる純粋な力である離型力を取得することができる。このため、たとえば、成形品押出力が前回サイクルと変わらないような場合でも、空打押出力が大きくなるとともに離型力が小さくなっていることや、反対に空打押出力が小さくなるとともに離型力が大きくなっていることなどを把握することができる。
【0086】
ステップS1aにおいて、離型力が所定の離型報知しきい値以上である場合にはステップS1cに進み、離型力が所定の離型報知しきい値未満である場合には、ステップS1bに進む。なお、ステップS1cにおいて、報知部による離型力に関する報知を行った場合、ステップS2に進むことなくダイカストマシンを停止させてもよい。一例ではあるが、ステップS1aにおいて、離型報知しきい値が24[kN]であり、離型力が19[kN]であるならば、ステップS1bに進む(ステップS1cでの報知部103aによる離型力に関する報知は行われない)。
【0087】
ステップS1bにおいて、空打押出力が空打報知しきい値以上である場合にはステップS1cに進み、空打押出力が空打報知しきい値未満である場合には、ステップS2に進む。なお、ステップS1cにおいて、報知部による空打ちに関する報知を行った場合、ステップS2に進むことなくダイカストマシンを停止させてもよい。一例ではあるが、ステップS1bにおいて、空打報知しきい値が8[kN]であり、空打押出力が3[kN]であるならば、ステップS2に進む(ステップS1cでの報知部103aによる空打ちに関する報知は行われない)。
【0088】
ステップS2において、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が大きい(上記の離型報知しきい値よりも小さな所定の第1しきい値(T3)以上となった)か否かが判断される。ステップS2において、離型力が第1しきい値以上である場合にはステップS3に進み、離型力が第1しきい値未満である場合にはステップS5に進む。一例ではあるが、第1しきい値が22[kN]であり、離型力が19[kN]であるならば、ステップS5に進む。
【0089】
ステップS3において、次の成形サイクルにおいて離型剤を塗布する際の塗布装置6と移動金型M1との距離Dが小さくなるように、距離Dを調整する。そして、ステップS4に進む。
【0090】
ステップS4において、次の成形サイクルにおいて塗布装置6による離型剤の塗布量が増加するように、離型剤の塗布量を調整する。そして、制御処理を終了する(エンドに進む)。
【0091】
ステップS5において、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が小さい(上記第1しきい値よりも小さな所定の第2しきい値(T4)以下となった)か否かが判断される。ステップS5において、離型力が第2しきい値以下である場合にはステップS6に進み、離型力が第2しきい値よりも大きい場合にはステップS8に進む。ステップS5において、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が小さいと判断されない場合には、制御処理を終了する(エンドに進む)。一例ではあるが、「上記ステップS2の第1しきい値よりも小さな第2しきい値」が16[kN]であり、離型力が19[kN]であるならば、ステップS8を経由して制御処理を終了する(エンドに進む)。すなわち、一例ではあるが、離型力が、16[kN]よりも大きく、かつ、22[kN]よりも小さいならば、距離Dの調整および離型剤の塗布量の調整は行われない。
【0092】
ステップS6において、次の成形サイクルにおいて離型剤を塗布する際の塗布装置6と移動金型M1との距離Dが大きくなるように、距離Dを調整する。そして、ステップS7に進む。
【0093】
ステップS7において、次の成形サイクルにおいて塗布装置6による離型剤の塗布量が減少するように、離型剤の塗布量を調整する。そして、制御処理を終了する(エンドに進む)。
【0094】
ステップS8において、次のサイクルにおける塗布装置6と移動金型M1との距離Dを変化させることなく現在の距離を維持する設定を行う。また、ステップS8において、次のサイクルにおける離型剤の塗布量を変化させることなく現在の距離を維持する設定を行う。そして、制御処理を終了する(エンドに進む)。
【0095】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0096】
本実施形態では、上記のように、ピストン50の一方側(X1方向側)の一方側流体室52の流体圧力を検出する一方側圧力計54と、ピストン50の他方側(X2方向側)の他方側流体室53の流体圧力を検出する他方側圧力計55と、一方側圧力計54および他方側圧力計55の検出結果に基づいて、金型Mと成形品Aとの密着力に抗して金型Mから成形品Aを離型させる力である離型力を取得するように構成された制御部103とを設ける。これによって、一方側圧力計54および他方側圧力計55により、ピストン50の片側の流体室だけでなく、ピストン50の両側の各流体室の流体圧力を検出することができる。したがって、ピストン50の片側の流体室だけでなく、ピストン50の両側の各流体室において発生する作動流体の漏出などの損失の離型力への影響を排除することができる。その結果、離型時にピストン50を移動させるために必要とされる力を正確に取得することができるので、離型力を取得する精度を向上させることができる。
【0097】
本実施形態では、上記のように、一方側流体室52は、他方側流体室53に向けた押圧力を発生させる一方側ピストン押圧面52aを有し、他方側流体室53は、一方側流体室52に向けた押圧力を発生させる他方側ピストン押圧面53aを有し、制御部103は、一方側流体室52の流体圧力および他方側流体室53の流体圧力と、一方側ピストン押圧面52aの面積S1および他方側ピストン押圧面53aの面積S2とに基づいて、離型時に流体シリンダ5aに要求される力である成形品押出力を取得するとともに、少なくとも成形品押出力に基づいて、離型力を取得するように構成されている。これによって、一方側流体室52の流体圧力および他方側流体室53の流体圧力と、一方側ピストン押圧面52aの面積S1および他方側ピストン押圧面53aの面積S2とに基づくことにより、ピストン50の形状を考慮して離型時にピストン50を移動させるために必要とされる力をより正確に取得することができる。その結果、離型力を取得する精度をより向上させることができる。
【0098】
本実施形態では、上記のように、制御部103は、成形品Aの離型後の金型Mが開いた状態において、成形品Aがない状態で離型時と同様にピストン50を駆動させる空打ちを行い、空打ち時の一方側流体室52の流体圧力および他方側流体室53の流体圧力に基づいて、空打ち時に流体シリンダ5aに要求される力である空打押出力を取得するとともに、成形品押出力および空打押出力に基づいて、離型力を取得するように構成されている。これによって、ピストン50を移動させるために必要とされる力から、離型時における押出装置5と金型Mとの摩擦などによる機械的な損失を排除して、金型Mと成形品Aとの密着力に抗して金型Mから成形品Aを離型させる力である純粋な離型力を取得することができる。したがって、ピストン50の両側の各流体室における流体の損失だけでなく、機械的な損失も考慮して離型力を取得することができるので、離型力を取得する精度をより一層向上させることができる。
【0099】
本実施形態では、上記のように、制御部103は、成形品押出力から空打押出力を差し引くことにより、離型力を取得するように構成されている。これによって、成形品押出力から空打押出力を差し引くだけで、離型力を容易にかつ精度よく取得することができる。
【0100】
本実施形態では、上記のように、制御部103は、成形サイクル毎に空打ちを行うことによって、成形品押出力、空打押出力および離型力の取得を行うように構成されている。これによって、成形サイクル毎に、成形品押出力および空打押出力を考慮した離型力を正確に取得することができるとともに、成形サイクル毎に、成形品押出力、空打押出力および離型力の各力について、突発的な変化が発生した成形サイクルを確実に把握することができる。
【0101】
本実施形態では、上記のように、制御部103は、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が大きい場合に、前回の成形サイクルの次の成形サイクルにおいて塗布装置6と移動金型M1との距離Dを小さくするとともに、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が小さい場合に、次の成形サイクルにおいて塗布装置6と移動金型M1との距離Dを大きくする制御を行うように構成されている。これによって、成形サイクル毎の離型力に応じて、塗布装置6と移動金型M1との距離Dを増減させることができるので、最適な離型力に近づくように塗布装置6による塗布状態を調整することができる。
【0102】
本実施形態では、上記のように、制御部103は、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が大きい場合に、前回の成形サイクルの次の成形サイクルにおいて塗布装置6による離型剤の塗布量を増加させるとともに、前回の成形サイクルの離型力と比較して離型力が小さい場合に、次の成形サイクルにおいて塗布装置6による離型剤の塗布量を減少させる制御を行うように構成されている。これによって、成形サイクル毎の離型力に応じて、離型剤の塗布量を増減させることができるので、最適な離型力に近づくように調整することができる。
【0103】
本実施形態では、上記のように、制御部103は、離型力が所定の離型報知しきい値以上になったことを報知する制御を行うように構成されている。これによって、報知によって金型Mと成形品Aとの密着力が大きくなったことをユーザに把握させることができる。
【0104】
本実施形態では、上記のように、制御部103は、空打押出力が所定の空打報知しきい値以上になったことを報知する制御を行うように構成されている。これによって、報知によって機械的な損失が大きくなったことをユーザに把握させることができる。
【0105】
本実施形態では、上記のように、制御部103は、塗布装置6による離型剤の塗布が行われている間に、空打ちを行うように構成されている。これによって、離型剤の塗布と空打ちとを別々のタイミングで行う場合と比較して、1回の成形サイクルに要する時間を短縮することができる。
【0106】
本実施形態では、上記のように、制御部103は、押出装置5により成形品Aの離型を試みて成形品Aを離型させることができなかった場合に、押出装置5の出力を最大に設定して成形品Aの離型を再び試みる制御を行うように構成されている。これによって、成形品Aをより確実に離型させることができる。
【0107】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0108】
たとえば、上記実施形態では、本発明の押圧部材を、エジェクターピンにより構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の押圧部材を、ストリッパープレートなどにより構成してもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、トグル機構により構成される駆動装置により、移動ダイプレートを移動させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、電動のスライド機構などにより構成される駆動装置により、移動ダイプレートを移動させてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、ピストンを移動ダイプレートに固定した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ピストンを移動ダイプレートに対して移動可能に構成してもよい。この場合、エジェクターピンなどの押圧部材はピストンとともに移動する。
【0111】
また、上記実施形態では、ダイカストマシンを横型の成形機として構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ダイカストマシンを縦型の成形機として構成してもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、流体シリンダを油圧式のシリンダとした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、流体シリンダを空圧式などのシリンダとしてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、成形サイクル毎に空打ちを行った例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、所定の複数回の成形サイクルに1度の空打ちを行ってもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、塗布装置による離型剤の塗布が行われている間に、空打ちを行った例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、塗布装置により離型剤が塗布される前または後に、空打ちを行ってもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、取得した離型力に基づいて、報知、離型剤の塗布量の調整、および、塗布装置と移動金型との距離の調整のすべてを行うことが可能なように制御を行った例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、報知、離型剤の塗布量の調整、および、塗布装置と移動金型との距離の調整の少なくとも1つまたは2つのみを行うことが可能なように制御を行ってもよい。なお、取得した離型力に基づいて金型の冷却時間を調整するなどの他の制御を行ってもよい。
【0116】
上記実施形態では、図4に示すような2つの大小のしきい値(第1しきい値、第2しきい値)に基づいて、「塗布装置と移動金型との距離」および「離型剤の塗布量」を変化させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1つのみのしきい値に基づいて、「塗布装置と移動金型との距離」および「離型剤の塗布量」を変化させてもよい。すなわち、図4に示すステップS2およびS5をまとめたステップを設けて制御処理を行ってもよい。この場合、図4に示すステップS8が不要となる。
【0117】
上記実施形態では、離型力が大きい場合(図4に示す第1しきい値以上の場合)に、「塗布装置と移動金型との距離」を小さくした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、離型力が大きい場合(図4に示す第1しきい値以上の場合)に、「塗布装置と移動金型との距離」を大きくしてもよいし、最適な距離となるように所定の値に変化させてもよい。
【0118】
上記実施形態では、離型力が大きい場合(図4に示す第1しきい値以上の場合)に、「離型剤の塗布量」を大きくした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、離型力が大きい場合(図4に示す第1しきい値以上の場合)に、「離型剤の塗布量」を小さくしてもよいし、最適な離型剤の塗布量となるように所定の値に変化させてもよい。
【0119】
上記実施形態では、離型力が小さい場合(図4に示す第2しきい値以下の場合)に、「塗布装置と移動金型との距離」を大きくした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、離型力が小さい場合(図4に示す第2しきい値以下の場合)に、「塗布装置と移動金型との距離」を小さくしてもよいし、最適な距離となるように所定の値に変化させてもよい。
【0120】
上記実施形態では、離型力が小さい場合(図4に示す第2しきい値以下の場合)に、「離型剤の塗布量」を小さくした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、離型力が小さい場合(図4に示す第2しきい値以下の場合)に、「離型剤の塗布量」を大きくしてもよいし、最適な離型剤の塗布量となるように所定の値に変化させてもよい。
【0121】
上記実施形態では、説明の便宜上、制御部の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0122】
2 固定ダイプレート
3 移動ダイプレート
4 駆動装置
5 押出装置
5a 流体シリンダ
6 塗布装置
7 型締装置
50 ピストン
52 一方側流体室
52a 一方側ピストン押圧面
53 他方側流体室
53a 他方側ピストン押圧面
54 一方側圧力計
55 他方側圧力計
100 ダイカストマシン
103 制御部
A 成形品
M 金型
M1 移動金型
M2 固定金型
M11 押圧部材
S1 一方側ピストン押圧面の面積
S2 他方側ピストン押圧面の面積
図1
図2
図3
図4