(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067884
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
F01N3/28 301W
F01N3/28 301H
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178279
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浅井 竜司
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB03
3G091AB13
3G091BA10
3G091EA32
3G091HA15
3G091HA38
3G091HA47
(57)【要約】
【課題】熱応力の影響を緩和するのが望ましい。
【解決手段】浄化装置は、車両の排ガスを浄化するよう構成され、ケース部と、第1及び第2接続部と、吸収部とを備える。ケース部は、排ガスを浄化するよう構成された少なくとも1つの浄化部材を収容する。第1及び第2接続部は、ケース部の両端に設けられ、車両の排ガスの流路を形成する他の部材に接続される。吸収部は、ケース部の内部の排ガスの流路に隣接し、且つ、流路を周回するようにケース部に設けられ、排ガスの流れ方向に沿ったケース部の伸縮を吸収するよう構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の排ガスを浄化するよう構成された浄化装置であって、
内部に排ガスの流路が設けられる筒状の部位であって、排ガスを浄化するよう構成された少なくとも1つの浄化部材を収容する部位であるケース部と、
前記ケース部の両端に設けられ、前記車両の排ガスの流路を形成する他の部材に接続されるよう構成された第1及び第2接続部と、
前記ケース部の内部の排ガスの流路に隣接し、且つ、前記流路を周回するように前記ケース部に設けられた吸収部と、を備え、
前記吸収部は、排ガスの流れ方向に沿った前記ケース部の伸縮を吸収するよう構成されている
浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の浄化装置であって、
前記ケース部は、当該ケース部の内部における排ガスの流路を周回する第1及び第2周回部を有し、
前記第2周回部は、前記第1周回部よりも外側に配置され、
前記吸収部は、前記第1周回部と前記第2周回部との間に設けられる部位であって、前記ケース部の内部における排ガスの流路の中心を通過する軸線を含む断面において、排ガスの流れ方向の上流側又は下流側に突出するように曲がった形状を有する部位である
浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の浄化装置であって、
前記ケース部は、排ガスの流れ方向に並んで配置される筒状の部位である第1及び第2ケース部を有し、
前記第1及び第2ケース部は、それぞれ、前記浄化部材である第1及び第2浄化部材を収容し、
前記第1ケース部は、
端部に位置する第1開口と、
前記第1開口を周回する第1周回部と、を有し、
前記第2ケース部は、
端部に位置する第2開口と、
前記第2開口を周回する第2周回部と、を有し、
前記第1ケース部の前記第1開口は、前記第2ケース部の前記第2開口に接続されており、
前記吸収部は、前記第1周回部と前記第2周回部との間に設けられる
浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の浄化装置であって、
前記第2周回部は、前記第1周回部の外側に配置され、前記第2周回部の少なくとも一部は、前記第1周回部に対面し、
前記吸収部は、前記第1周回部及び前記第2周回部における互いに対面する部分に設けられる
浄化装置。
【請求項5】
請求項4に記載の浄化装置であって、
前記第2周回部における前記第1周回部に対面する部分、及び/又は、前記吸収部には、前記ケース部の外部と、前記第1及び第2浄化部材の間の空間とを連通するセンサ穴部が設けられ、
前記センサ穴部は、排ガスの圧力を計測するセンサが設けられるセンサ用パイプが接続されるよう構成される
浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂タンデム構造を有する排ガスの浄化装置では、触媒やGPF(Gasoline Particulate Filter)等といった排ガスの浄化部材が、排ガスの流れ方向に沿って直列に並ぶように配置される。
【0003】
一例として、特許文献1の排ガス浄化装置は、二重管構造を有するケースの内部に2つの触媒が直列に並んで配置され、該ケースの外管には、外管の長さ方向に伸縮する蛇腹部が形成されている。そして、内管と外管とにおいて熱伸びの量に差が生じた場合には、蛇腹部が伸縮することで、内管と外管とを接続する接続部にかかる応力が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の排ガス浄化装置は、二重管構造を有するケースの内管の両端周辺は、端部に向かうに従い縮径されており、該両端に設けられたフランジにより排気管に固定される。このため、内管に熱伸びが生じた場合には、内管の両端におけるフランジの周辺に応力がかかるが、外管に設けられた蛇腹部では、このような応力を緩和するのは困難である。
【0006】
本開示の一態様では、熱応力の影響を緩和するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、車両に搭載され、車両の排ガスを浄化するよう構成された浄化装置であって、ケース部と、第1及び第2接続部と、吸収部と、を備える。ケース部は、内部に排ガスの流路が設けられる筒状の部位であって、排ガスを浄化するよう構成された少なくとも1つの浄化部材を収容する部位である。第1及び第2接続部は、ケース部の両端に設けられ、車両の排ガスの流路を形成する他の部材に接続されるよう構成される。吸収部は、ケース部の内部の排ガスの流路に隣接し、且つ、流路を周回するようにケース部に設けられる。また、吸収部は、排ガスの流れ方向に沿ったケース部の伸縮を吸収するよう構成されている。
【0008】
上記構成によれば、ケース部の両端の第1及び第2接続部が他の部材に接続されている場合であっても、吸収部により、排ガスによるケース部の熱伸びや、冷却によるケース部の収縮を吸収できる。したがって、熱応力の影響を緩和できる。
【0009】
本開示の一態様では、ケース部は、当該ケース部の内部における排ガスの流路を周回する第1及び第2周回部を有してもよい。第2周回部は、第1周回部よりも外側に配置されてもよい。吸収部は、第1周回部と第2周回部との間に設けられる部位であって、ケース部の内部における排ガスの流路の中心を通過する軸線を含む断面において、排ガスの流れ方向の上流側又は下流側に突出するように曲がった形状を有する部位であってもよい。
【0010】
上記構成によれば、吸収部がたわむことで、ケース部の熱伸び及び収縮を好適に吸収できる。このため、熱応力の影響を緩和できる。
本開示の一態様では、ケース部は、排ガスの流れ方向に並んで配置される筒状の部位である第1及び第2ケース部を有してもよい。第1及び第2ケース部は、それぞれ、浄化部材である第1及び第2浄化部材を収容してもよい。第1ケース部は、第1開口と、第1周回部と、を有してもよい。第1開口は、端部に位置する。第1周回部は、第1開口を周回する。第2ケース部は、第2開口と、第2周回部と、を有してもよい。第2開口は、端部に位置する。第2周回部は、第2開口を周回する。第1ケース部の第1開口は、第2ケース部の第2開口に接続されていてもよい。吸収部は、第1周回部と第2周回部との間に設けられてもよい。
【0011】
上記構成によれば、ケース部における損傷が生じやすい部分(以後、弱部)に、熱応力の影響を緩和するための構成を設けることができるため、弱部の損傷を抑制できる。したがって、熱応力の影響を緩和できる。
【0012】
本開示の一態様では、第2周回部は、第1周回部の外側に配置され、第2周回部の少なくとも一部は、第1周回部に対面してもよい。吸収部は、第1周回部及び第2周回部における互いに対面する部分に設けられてもよい。
【0013】
上記構成によれば、ケース部の弱部に熱応力の影響を緩和するための構成を設けることができるため、弱部の損傷を抑制できる。したがって、熱応力の影響を緩和できる。
本開示の一態様では、第2周回部における第1周回部に対面する部分、及び/又は、吸収部には、ケース部の外部と、第1及び第2浄化部材の間の空間とを連通するセンサ穴部が設けられてもよい。センサ穴部は、排ガスの圧力を計測するセンサが設けられるセンサ用パイプが接続されるよう構成されてもよい。
【0014】
上記構成によれば、センサ穴部への排ガスの衝突を緩和できる。このため、排ガスの流れの影響で、センサによる排ガスの圧力の計測精度が低下するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】上流及び下流ケース部と、上流及び下流浄化部材と、吸収部とにおける、軸線を含む断面図である。
【
図3】変形例の上流及び下流周回部と吸収部とについての、軸線を含む断面図である。
【
図4】変形例の上流及び下流周回部と吸収部とについての、軸線を含む断面図である。
【
図5】変形例の上流及び下流周回部と吸収部とについての、軸線を含む断面図である。
【
図6】変形例の上流及び下流周回部と吸収部とについての、軸線を含む断面図である。
【
図7】変形例の上流及び下流周回部と吸収部とについての、軸線を含む断面図である。
【
図8】変形例の上流及び下流周回部と吸収部とについての、軸線を含む断面図である。
【
図9】変形例の上流及び下流周回部と吸収部とについての、軸線を含む断面図である。
【
図10】変形例の上流及び下流周回部と吸収部とセンサ穴部とについての、軸線を含む断面図である。
【
図11】変形例の上流及び下流周回部と吸収部とセンサ穴部とについての、軸線を含む断面図である。
【
図12】変形例の上流及び下流周回部と吸収部とセンサ穴部とについての、軸線を含む断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0017】
[1.概要]
本実施形態の浄化装置1は、車両に搭載されると共に、車両のエンジンからの排ガスの流路の一部を構成する(
図1参照)。浄化装置1は、エンジンの各気筒からの排ガスの流路を1つに集約する図示しないエキゾーストマニホールド(以後、エキマニ)における排ガスの出口に接続され、エキマニを通過した排ガスが流入すると共に、該排ガスを浄化するよう構成されている。以後、排ガスの流れ方向の上流側及び下流側を、それぞれ、単に上流側及び下流側と記載する。
【0018】
浄化装置1は、ケース部2と、上流及び下流浄化部材30、40と、吸収部5と、を備える。また、浄化装置1の排ガスの流れ方向の略中央からは、センサ用パイプ60が延出しており、センサ用パイプ60の端部には、圧力センサ61が設けられている。
【0019】
[2.ケース部]
[(1)接続部及びコーン部]
上流接続部20は、ケース部2における上流側の端部に設けられるフランジ状の部位である(
図1参照)。上流接続部20は、エキマニにおける排ガスの出口に接続され、ケース部2をエキマニの出口に固定する。なお、上流接続部20は、エキマニに限らず、例えば、車両の内燃機関における排ガスの出口や、排ガスを流下させるパイプに接続及び固定されても良い。
【0020】
上流コーン部22は、上流側に向かうに従い、排ガスの流れ方向に直交する断面(以後、単に断面と記載)が縮小するテーパ状の部位である。上流コーン部22の上流側の端部には、上流接続部20が設けられる。
【0021】
下流接続部21は、ケース部2における排ガスの流れ方向の下流側(以後、単に下流側と記載)の端部に設けられるフランジ状の部位である。下流接続部21は、排ガスの流路を形成する他の部材に接続され、ケース部2を該他の部材に固定する。
【0022】
下流コーン部23は、下流側に向かうに従い断面が縮小するテーパ状の部位である。下流コーン部23の上流側の端部には、下流接続部21が設けられる。
[(2)上流及び下流ケース部]
上流及び下流ケース部3、4は、円筒状の部位であり、内部に排ガスの流路が形成される(
図1、2参照)。上流ケース部3は、下流ケース部4の上流側に位置し、上流ケース部3の下流側の端部に位置する開口(以後、上流開口32)は、下流ケース部4の上流側の端部に位置する開口(以後、下流開口42)に接続される。また、上流ケース部3の上流側の端部に位置する開口は、上流コーン部22に接続されており、下流ケース部4の下流側の端部に位置する開口は、下流コーン部23に接続されている。
【0023】
上流及び下流ケース部3、4の内部には、それぞれ、排ガスを浄化するよう構成された、円柱状の上流及び下流浄化部材30、40が収容されている。上流及び下流浄化部材30、40には、それぞれ、保持部材31、41が外周面を周回するように設けられている。つまり、上流浄化部材30と上流ケース部3との間と、下流浄化部材40と下流ケース部4との間には、それぞれ、保持部材31、41が配置されている。
【0024】
また、一例として、上流浄化部材30は、触媒(例えば、三元触媒等)として構成されていると共に、下流浄化部材40は、排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタ(例えば、GPF(Gasoline Particulate Filter)等)として構成されている。そして、一例として、下流浄化部材40は、上流浄化部材30よりも断面の径が大きくなっており、これに伴い、下流ケース部4の断面の径もまた、上流ケース部3の断面の径よりも大きくなっている。このため、下流ケース部4は、上流ケース部3に比べて剛性が高くなっている。
【0025】
[3.吸収部]
上流ケース部3と下流ケース部4との間には、吸収部5が設けられている(
図2参照)。吸収部5は、上流及び下流ケース部3、4の内部における排ガスの流路に隣接し、且つ、該流路を周回するように、上流及び下流ケース部3、4に設けられる。吸収部5は、上流及び下流ケース部3、4の内部における排ガスの流れ方向(換言すれば、軸線Aの方向)に沿ったケース部2の伸縮に応じて変形することで、該伸縮を吸収するよう構成されている。なお、軸線Aとは、排ガスの流路の中心を通過する線であり、一例として、上流及び下流ケース部3、4の断面の中心を通過しつつ排ガスの流れ方向に延びる直線である。
【0026】
ここで、上流ケース部3における上流開口32を囲む部分を上流周回部33とし、下流ケース部4における下流開口42を囲む部分を下流周回部43とする。下流周回部43は、上流周回部33の外側に位置し、下流周回部43の少なくとも一部は、上流周回部33と径方向に対面する。
【0027】
そして、吸収部5は、上流周回部33と下流周回部43との間に設けられ、軸線Aを含む断面において、上流側に突出するように曲がった形状を有する板状の部位である。なお、該曲がった形状は、吸収部5の全周にわたって設けられる。
【0028】
具体的には、吸収部5は、上流及び下流周回部33、43における互いに径方向に対面する部分(換言すれば、重なる部分)に設けられる。また、吸収部5は、上流周回部33の外周面から下流周回部43の内周面にわたって広がり、上流周回部33と下流周回部43との間を塞ぐ。つまり、吸収部5は、上流周回部33を囲むように設けられる。また、吸収部5は、軸線Aを含む断面において、径方向の中央が上流側に突出するように、1か所でU字状に湾曲した形状を有する。
【0029】
上流ケース部3にて軸線Aに沿った伸縮が生じた場合には、吸収部5は、該伸縮に応じて上流ケース部3との接続部が上流側又は下流側に変位するように変形する。また、下流ケース部4にて軸線Aに沿った伸縮が生じた場合には、吸収部5は、該伸縮に応じて下流ケース部4との接続部が上流側又は下流側に変位するように変形する。したがって、上流及び下流ケース部3、4の双方又は一方において軸線Aに沿った伸縮が生じた場合には、吸収部5は、該伸縮を吸収するように変形する。
【0030】
なお、本実施形態では、一例として、吸収部5は、下流ケース部4を変形させることで形成される。すなわち、まず、下流ケース部4における下流開口42を囲む端部を、下流開口42内に向けて湾曲させる。その後、湾曲させた該端部を上流周回部33における上流開口32を囲む端部に溶接することで、吸収部5が形成される。
【0031】
[4.センサ穴部]
下流周回部43における上流周回部33と径方向に対面する部分と、吸収部5とにわたって広がる領域に、該領域を貫通するセンサ穴部6が設けられている(
図2参照)。センサ穴部6は、排ガスの流路における上流及び下流浄化部材30、40の間の空間である中間領域10と、ケース部2の外部とを連通する。
【0032】
また、センサ穴部6には、センサ用パイプ60の端部が挿入されており、中間領域10とセンサ用パイプ60の内部とが連通している。そして、センサ用パイプ60に設けられた圧力センサ61により、中間領域10における排ガスの圧力が計測され、計測結果に基づき、捕集された粒子状物質等による下流浄化部材40の詰まりの度合いが検出される。
【0033】
なお、圧力センサ61により検出された下流浄化部材40の詰まりの度合いが大きくなると、下流浄化部材40の詰まりを除去する再生処理が行われる。具体的には、再生処理では、例えば、ケース部2内に高温の排ガスを流入させることで、下流浄化部材40に捕集された粒子状物質を燃焼させても良い。
【0034】
[5.吸収部の変形例]
吸収部5の構成は、上述したものに限らず、適宜定められる。以下では、吸収部5に関連する変形例について説明する。
【0035】
[(1)吸収部の形状]
吸収部5は、軸線Aを含む断面において、下流側に突出するように曲がった形状を有していても良い。具体的には、例えば、
図3に示す様に、吸収部5は、軸線Aを含む断面において、径方向の中央が下流側に突出するように、1か所でU字状に湾曲した形状を有していても良い。吸収部5は、例えば、軸線Aを含む断面において180度未満の円弧状に形成されていてもよい。
【0036】
また、吸収部5は、軸線Aを含む断面において、上流側又は下流側に突出するように、2か所又は3か所でU字状に湾曲した形状を有していても良いし(
図4~6参照)、該断面において4か所以上でU字状に湾曲した形状を有していても良い。
【0037】
この他にも、吸収部5は、例えば、軸線Aを含む断面において、上流側又は下流側に突出するように屈曲した形状を有していても良い。
また、吸収部5は、上流及び下流周回部33、43における対面する部分に設けられる。しかし、上流ケース部3の上流開口32と下流ケース部4の下流開口42とが同一平面状に位置し、上流及び下流周回部33、43が径方向に対面しない構成も想定される。このような場合、吸収部5は、上流周回部33の端部と下流周回部43の端部との間に設けられても良い。
【0038】
[(2)吸収部の形成方法]
吸収部5は、上流ケース部3を変形させることで形成されても良い(
図3参照)。この場合、まず、上流ケース部3における上流開口32を囲む端部を、上流開口32の外側に湾曲させる。その後、湾曲させた該端部を下流周回部43における下流開口42を囲む端部に溶接することで、吸収部5が形成される。
【0039】
なお、吸収部5が上流側に突出するように曲がった形状である場合には、下流ケース部4を変形することで吸収部5を形成するのが好適である。一方、吸収部5が下流側に突出するように曲がった形状である場合には、上流ケース部3を変形することで吸収部5を形成するのが好適である。しかし、これに限らず、上流及び下流ケース部3、4のどちらで吸収部5を形成するかは、適宜定められる。
【0040】
また、吸収部5を上流及び下流ケース部3、4とは別の部材により形成し、吸収部5を上流及び下流周回部33、43に溶接するようにしても良い(
図5、6参照)。
[(3)上流及び下流ケース部の径]
本実施形態では、下流ケース部4の断面の径は、上流ケース部3の断面の径よりも大きい。しかし、上流及び下流浄化部材30、40のサイズによっては、上流及び下流ケース部3、4の断面の径が同程度である場合や、上流ケース部3の断面の径が、下流ケース部4の断面の径よりも大きい場合も想定される。
【0041】
上流ケース部3の断面の径が、下流ケース部4の断面の径よりも大きい場合には、上流周回部33を下流周回部43の外側に配置し、上流周回部33の少なくとも一部が、下流周回部43と径方向に対面するようにしても良い。そして、本実施形態と同様にして、上流及び下流周回部33、43の互いに対面する部分に、吸収部5を設けても良い。
【0042】
一方、上流及び下流ケース部3、4の断面の径が同程度である場合、下流周回部43が拡径されていても良い(
図7参照)。すなわち、下流ケース部4に、上流側に向かうに従い断面の径を拡大する拡径部44を設けると共に、拡径部44の上流側に隣接して下流周回部43を設けても良い。そして、本実施形態と同様にして、下流周回部43を上流周回部33の外側に配置し、下流周回部43の少なくとも一部を、上流周回部33と径方向に対面させ、上流及び下流周回部33、43の間に吸収部5を設けても良い。
【0043】
なお、上流ケース部3の断面の径が、下流ケース部4の断面の径よりも大きい場合においても、同様にして下流ケース部4に拡径部44を設けると共に、拡径部44の上流側に隣接して下流周回部43を設けても良い(
図8参照)。そして、同様にして、下流周回部43を上流周回部33の外側に配置し、上流及び下流周回部33、43の間に吸収部5を設けても良い。
【0044】
また、上流及び下流ケース部3、4の断面の径が同程度である場合や、下流ケース部4の断面の径が、上流ケース部3の断面の径よりも大きい場合には、同様にして上流周回部33を拡径しても良い。そして、同様にして、上流周回部33を下流周回部43の外側に配置し、上流及び下流周回部33、43の間に吸収部5を設けても良い。
【0045】
さらに、上流及び下流ケース部3、4の断面の径が同程度である場合、上流周回部33の端部と下流周回部43の端部とを、所定の間隔を開けて、排ガスの流れ方向に対面するように配置しても良い(
図9参照)。そして、円筒状の接続部50により上流周回部33の端部と下流周回部43の端部とを接続すると共に、該接続部50に、排ガスの流路を囲むように設けられ、排ガスの流れ方向に伸縮する蛇腹として構成された吸収部5を形成しても良い。
【0046】
[6.センサ穴部の変形例]
本実施形態では、下流周回部43は上流周回部33の外側に位置し、センサ穴部6は、下流周回部43における上流周回部33に対面する部分と、吸収部5とにわたって広がる領域に形成されている。しかし、センサ穴部6は、下流周回部43における上流周回部33に対面する部分に形成されていても良いし(
図10参照)、吸収部5に形成されていても良い(
図11参照)。
【0047】
無論、このような場合においても、センサ用パイプ60は、センサ穴部6に挿入された状態で設けられる。この他にも、センサ用パイプ60は、センサ穴部6に挿入されておらず、センサ用パイプ60の端部が下流周回部43及び又は吸収部5に接合した状態で設けられても良い(
図12参照)。
【0048】
一方、上流周回部33が下流周回部43の外側に位置する場合には、センサ穴部6は、上流周回部33と吸収部5とにわたって広がる領域に形成されても良いし、上流周回部33又は吸収部5に形成されていても良い。
【0049】
また、この他にも、センサ穴部6の位置は、中間領域10とケース部2の外部とを連通可能となる限りにおいて、適宜定められ得る。
[7.効果]
(1)上記実施形態の浄化装置1は、エキマニの下流側に設けられており、非常に高温の排ガスが流入するため、ケース部2には熱伸びが生じ易い。また、浄化装置1のケース部2の両端におけるフランジ状の上流及び下流接続部20、21は、エキマニ等の部材に固定される。このため、ケース部2の熱伸びが生じても、上流及び下流接続部20、21の位置はほとんど変化せず、熱応力の吸収が困難となっている。そして、ケース部2における上流及び下流接続部20、21の周辺は、細くなっているため、相対的に脆弱となっている。このため、ケース部2に熱伸びが生じると、応力がこれらの部分に集中し、損傷が生じる恐れがある。
【0050】
これに対し、ケース部2には吸収部5が設けられている。このため、高温の排ガスによるケース部2の熱伸びや、冷却によるケース部2の収縮を吸収できる。したがって、熱応力の影響を緩和できる。また、これにより、浄化装置1の耐久性が向上すると共に、ケース部2を強度の低い材料で構成したり、ケース部2の板厚を低下させたりすることができ、浄化装置1のコストを抑制できる。
【0051】
(2)また、吸収部5は、上流及び下流ケース部3、4における上流及び下流周回部33、34の間に設けられており、軸線Aを含む断面において軸線Aに沿って突出するように曲がった形状を有する。このため、吸収部5がたわむことで、上流及び下流ケース部3、4における熱伸び及び収縮を好適に吸収できる。したがって、熱応力の影響を緩和できる。
【0052】
(3)また、吸収部5は、上流及び下流ケース部3、4の間に設けられる。特に、上記実施形態では、下流ケース部4の断面の径は、上流ケース部3の断面の径よりも大きく、下流ケース部4は上流ケース部3よりも剛性が高い。このため、上流及び下流ケース部3、4の間の部分には応力が集中し易く、該部分は、損傷が生じ易い弱部となり得る。これに対し、上記実施形態によれば、上流及び下流ケース部3、4の間に熱応力の影響を緩和する吸収部5が設けられているため、弱部の損傷を抑制できる。したがって、熱応力の影響を緩和できる。
【0053】
(4)また、上流及び下流周回部33、43における互いに対面する部分は、弱部となり得るが、熱応力の影響を緩和する吸収部5は、該部分に設けられる。このため、弱部の損傷を抑制でき、これにより、熱応力の影響を緩和できる。
【0054】
(5)また、センサ穴部6は、下流周回部43における上流周回部33に対面する部分、及び/又は、吸収部5に設けられる。このため、センサ穴部6への排ガスの衝突を緩和でき、その結果、排ガスの流れの影響で、圧力センサ61による排ガスの圧力の計測精度が低下するのを抑制できる。これにより、下流浄化部材40の詰まりの度合いを精度良く検出でき、下流浄化部材40の再生処理が過剰に実施されるのを抑制できる。
【0055】
[8.他の実施形態]
(1)上記実施形態では、上流浄化部材30は触媒として構成され、下流浄化部材40はフィルタとして構成される。しかし、これに限らず、上流及び下流浄化部材30、40は、排ガスを浄化するための様々な部材として構成され得る。また、上記実施形態では、ケース部2には2つの浄化部材が配置されているが、ケース部2には、1つ又は3つ以上の排ガスの浄化部材が配置されても良い。また、上記実施形態では、上流及び下流ケース部3、4が設けられるが、これらと同様に構成された3つ以上のケース部が設けられていても良い。そして、2つのケース部を接続する箇所に、上記実施形態と同様にして、吸収部5が設けられても良い。
【0056】
(2)上記実施形態では、浄化装置1はエキマニの出口に接続される。しかし、これに限らず、例えば、車両の排ガスの流路を形成する他の部材(例えば、パイプや、車両の内燃機関における排ガスの出口)に接続される排ガスの浄化装置に、上記実施形態と同様の構成を有する吸収部を設けても良い。
【0057】
(3)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0058】
[9.文言の対応関係]
上流接続部20及び下流接続部21のうちの一方が、第1接続部の一例に相当し、他方が、第2接続部の一例に相当する。上流及び下流ケース部3、4のうちの一方が、第1ケース部の一例に相当し、他方が、第2ケース部の一例に相当する。上流及び下流浄化部材30、40ののうちの一方が、第1浄化部材の一例に相当し、他方が、第2浄化部材の一例に相当する。上流開口32及び下流開口42ののうちの一方が、第1開口の一例に相当し、他方が、第2開口の一例に相当する。上流及び下流周回部33、43ののうちの一方が、第1周回部の一例に相当し、他方が、第2周回部の一例に相当する。
【符号の説明】
【0059】
A…軸線、1…浄化装置、10…中間領域、2…ケース部、20…上流接続部、21…下流接続部、3…上流ケース部、30…上流浄化部材、32…上流開口、33…上流周回部、4…下流ケース部、40…下流浄化部材、42…下流開口、43…下流周回部、5…吸収部、6…センサ穴部、60…センサ用パイプ、61…圧力センサ。