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特開2024-67886圧力流体給排装置及び流体圧クランプユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067886
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】圧力流体給排装置及び流体圧クランプユニット
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20240510BHJP
   F04B 9/02 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B23Q3/06 301D
B23Q3/06 304A
F04B9/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178281
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】吉村 画
【テーマコード(参考)】
3C016
3H075
【Fターム(参考)】
3C016CA01
3C016CB02
3C016CB04
3C016CB12
3C016CC01
3C016CC02
3C016CC04
3H075AA02
3H075BB03
3H075CC36
3H075DA03
3H075DA04
3H075DB01
3H075DB12
3H075DB37
(57)【要約】
【課題】作動流体を供給および排出するためにピストン部材を移動させるための雄ネジ部材に回転力を伝達するキャップ部材に、回転力を伝達するための工具をスムーズに嵌合させる。
【解決手段】油圧供給装置(4)は、ハウジング(10)内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストン部材(5)と、前記ピストン部材(5)に前記軸方向に形成される収容孔(11)に設けられる雌ネジ部材(6)と、前記雌ネジ部材(6)と螺合する雄ネジ部材(7)と、前記雄ネジ部材(7)の雄ネジ形成端の反対端に前記軸方向に摺動可能に嵌合し、且つ、その軸心回り方向への回転力を前記雄ネジ部材(7)に伝達可能に嵌合するキャップ部材(8)と、前記ピストン部材(5)の前記キャップ部材(8)側、又は、前記キャップ部材(8)とは反対側に形成されると共に、前記ピストン部材(5)の移動により作動油(23)が供給および排出される作動室(9)と、前記キャップ部材(8)を軸方向に押圧する押圧機構と、を備える
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストン部材と、
前記ピストン部材に前記軸方向に形成される収容孔に設けられる雌ネジ部材と、
前記雌ネジ部材と螺合する雄ネジ部材と、
前記雄ネジ部材の雄ネジ形成端の反対端に前記軸方向に摺動可能に嵌合し、且つ、その軸心回り方向への回転力を前記雄ネジ部材に伝達可能に嵌合するキャップ部材と、
前記ピストン部材の前記キャップ部材側、又は、前記キャップ部材とは反対側に形成されると共に、前記ピストン部材の移動により作動流体が供給および排出される作動室と、
前記キャップ部材を軸方向に押圧する押圧機構と、を備える、
ことを特徴とする圧力流体給排装置。
【請求項2】
前記キャップ部材が、前記雄ネジ部材と嵌合する嵌合穴と、
前記嵌合穴の内壁に前記軸方向に延伸するガイド溝とを有し、
前記雄ネジ部材が、前記ガイド溝と係合するピン部材を有する、請求項1に記載の圧力流体給排装置。
【請求項3】
前記キャップ部材が、前記雄ネジ部材と反対側の先端に、前記軸心回り方向への回転力を受け取るための操作部を有する、請求項1に記載の圧力流体給排装置。
【請求項4】
前記操作部が、前記軸方向へ突出した多角形の凸部又は陥没した多角形の凹部を有する、請求項3に記載の圧力流体給排装置。
【請求項5】
前記ハウジングが、前記作動流体の流体圧に押されて前記キャップ部材が脱落することを防ぐための受け部を有し、
前記キャップ部材が、前記受け部と係合可能な止め部を有する、請求項1に記載の圧力流体給排装置。
【請求項6】
前記キャップ部材が、前記雄ネジ部材と嵌合する嵌合穴と、
前記嵌合穴の内壁に前記軸方向に延伸する複数のガイド溝とを有し、
前記雄ネジ部材が、前記ガイド溝に対応して径方向に沿って形成されたガイド孔と、
前記ガイド溝に対向して前記ガイド孔に設けられたボール部材と、
前記ボール部材を前記ガイド溝に向かって付勢するために設けられた弾性部材とを有する、請求項1に記載の圧力流体給排装置。
【請求項7】
前記作動室から排出された前記作動流体をクランプ装置に供給し、前記クランプ装置から排出された前記作動流体を前記作動室に供給するための作動流体通路をさらに備える、請求項1に記載の圧力流体給排装置。
【請求項8】
前記作動室が前記ピストン部材の前記キャップ部材側に形成され、
前記押圧機構は、前記ピストン部材の移動により前記作動室に供給および排出される作動流体を含む、請求項1に記載の圧力流体給排装置。
【請求項9】
前記作動室が前記ピストン部材の前記キャップ部材とは反対側に形成され、
前記押圧機構は、前記キャップ部材を軸方向に押圧する弾性部材を含む、請求項1に記載の圧力流体給排装置。
【請求項10】
前記キャップ部材は、前記作動流体の油圧の減少に応じて前記ピストン部材側に摺動するように構成される、請求項8に記載の圧力流体給排装置。
【請求項11】
軌道に沿って移動可能に構成された搬送部材と、
前記搬送部材上に設けられた請求項1に記載の圧力流体給排装置と、
前記圧力流体給排装置から前記作動流体が供給され、前記圧力流体給排装置に前記作動流体を排出するように前記搬送部材上に設けられたクランプ装置と、を備える、
ことを特徴とする流体圧クランプユニット。
【請求項12】
前記クランプ装置が一対の旋回式クランプを含む、請求項11に記載の流体圧クランプユニット。
【請求項13】
前記圧力流体給排装置は、前記クランプ装置がロック状態からリリース状態にリリース駆動する時に前記作動流体を前記クランプ装置に供給する、請求項11に記載の流体圧クランプユニット。
【請求項14】
前記圧力流体給排装置は、前記クランプ装置がリリース状態からロック状態にロック駆動する時に前記作動流体を前記クランプ装置に供給する、請求項11に記載の流体圧クランプユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置に圧力流体を供給する圧力流体給排装置及び流体圧クランプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを固定するために、作動室に供給および排出される作動油によってロック状態及びリリース状態が切り換えられるクランプ装置が従来技術として知られている(特許文献1)。
【0003】
このようなクランプ装置は、作動油を供給及び排出する油圧供給装置とともに、軌道に沿って移動可能に構成された搬送部材に搭載されてクランプユニットとして使用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/186136号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような油圧供給装置は、ハウジング内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストン部材と、ピストン部材に設けられる雌ネジ部材と、雌ネジ部材と螺合する雄ネジ部材と、その軸心回り方向への回転力を雄ネジ部材に伝達可能に雄ネジ部材に嵌合するキャップ部材とを備える。そして、工具からキャップ部材に作用して雄ネジ部材に伝達された回転力に基づいてピストン部材が移動することにより、ピストン部材に隣接する作動室から作動油が供給および排出される。このようなキャップ部材に回転力を伝達するためには、当該回転力を伝達するための工具をキャップ部材に嵌合させる必要がある。
【0006】
しかしながら、当該回転力を伝達するための工具を、位相を合せてスムーズにキャップ部材に嵌合させることは困難であった。
【0007】
本発明の一態様は、作動流体を供給および排出するためにピストン部材を移動させるための雄ネジ部材に回転力を伝達するキャップ部材に、回転力を伝達するための工具をスムーズに嵌合させることができる圧力流体給排装置及び流体圧クランプユニットを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る圧力流体給排置は、ハウジング内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストン部材と、前記ピストン部材に前記軸方向に形成される収容孔に設けられる雌ネジ部材と、前記雌ネジ部材と螺合する雄ネジ部材と、前記雄ネジ部材の雄ネジ形成端の反対端に前記軸方向に摺動可能に嵌合し、且つ、その軸心回り方向への回転力を前記雄ネジ部材に伝達可能に嵌合するキャップ部材と、前記ピストン部材の前記キャップ部材側、又は、前記キャップ部材とは反対側に形成されると共に、前記ピストン部材の移動により作動流体が供給および排出される作動室と、前記キャップ部材を軸方向に押圧する押圧機構と、を備える、ことを特徴とする。
【0009】
この特徴によれば、軸心回り方向への回転力を雄ネジ部材に伝達可能に雄ネジ部材の雄ネジ形成端の反対端に嵌合するキャップ部材が、軸方向に摺動可能に嵌合する。そして、キャップ部材を軸方向に押圧する押圧機構が設けられる。このため、キャップ部材に回転力を伝達するための回転力伝達工具が、キャップ部材に嵌合する過程において、回転力伝達工具が水平方向にずれて回転力伝達工具の先端がキャップ部材に接触して押圧した場合であっても、キャップ部材は、押圧機構により押圧されて摺動する。従って、キャップ部材及びこれに関連する部材の破損等の不具合を回避することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る圧力流体給排装置は、前記キャップ部材が、前記雄ネジ部材と嵌合する嵌合穴と、前記嵌合穴の内壁に前記軸方向に延伸するガイド溝とを有し、前記雄ネジ部材が、前記ガイド溝と係合するピン部材を有することが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、嵌合穴の内壁に軸方向に延伸するガイド溝と、ガイド溝と係合するピン部材とにより、キャップ部材から雄ネジ部材に軸心回り方向への回転力を伝達することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る圧力流体給排装置は、前記キャップ部材が、前記雄ネジ部材と反対側の先端に、前記軸心回り方向への回転力を受け取るための操作部を有することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、キャップ部材の雄ネジ部材と反対側の先端に設けられた、軸心回り方向への回転力を受け取るための操作部により、キャップ部材が外部から回転力を受け取ることができる。
【0014】
本発明の一態様に係る圧力流体給排装置は、前記操作部が、前記軸方向へ突出した多角形の凸部又は陥没した多角形の凹部を有することが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、軸方向へ陥没した多角形の凹部又は軸方向へ突出した多角形の凸部を有する工具をキャップ部材と嵌合させることにより、キャップ部材に回転力を容易に伝達することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る圧力流体給排装置は、前記ハウジングが、前記作動流体の流体圧に押されて前記キャップ部材が脱落することを防ぐための受け部を有し、前記キャップ部材が、前記受け部と係合可能な止め部を有することが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、押圧機構により軸方向に押圧されるキャップ部材が、ハウジングから脱落することを回避することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る圧力流体給排装置は、前記キャップ部材が、前記雄ネジ部材と嵌合する嵌合穴と、前記嵌合穴の内壁に前記軸方向に延伸するガイド溝とを有し、前記雄ネジ部材が、前記ガイド溝に対応して径方向に沿って形成されたガイド孔と、前記ガイド溝に対向して前記ガイド孔に設けられたボール部材と、前記ボール部材を前記ガイド溝に向かって付勢するために設けられた弾性部材とを有することが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、所定トルクよりも大きい外部トルクがキャップ部材に作用しても、キャップ部材と雄ネジ部材との間の係合部分の摩耗、破損を軽減することができる。
【0020】
本発明の一態様に係る圧力流体給排装置は、前記作動室から排出された前記作動流体をクランプ装置に供給し、前記クランプ装置から排出された前記作動流体を前記作動室に供給するための作動流体通路をさらに備えることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、圧力流体給排装置からクランプ装置に作動流体通路を通って作動流体を供給し、クランプ装置から圧力流体給排装置に作動流体通路を通って作動流体を排出することができる。
【0022】
本発明の一態様に係る圧力流体給排装置は、前記作動室が前記ピストン部材の前記キャップ部材側に形成され、前記押圧機構は、前記ピストン部材の移動により前記作動室に供給および排出される作動流体を含むことが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、ピストン部材のキャップ部材側に形成された作動室に供給及び排出される作動流体により、キャップ部材が軸方向に押圧される。
【0024】
本発明の一態様に係る圧力流体給排装置は、前記作動室が前記ピストン部材の前記キャップ部材とは反対側に形成され、前記押圧機構は、前記キャップ部材を軸方向に押圧する弾性部材を含むことが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、弾性部材によりキャップ部材が軸方向に押圧される。
【0026】
本発明の一態様に係る圧力流体給排装置は、前記キャップ部材は、前記作動流体の流体圧の減少に応じて前記ピストン部材側に摺動するように構成されることが好ましい。
【0027】
上記構成によれば、作動流体の流体圧が減少する不具合が発生したときに、通常は上昇しているはずのキャップ部材が下降しているので、圧力流体給排装置の不具合を発見することが容易になる。
【0028】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る流体圧クランプユニットは、軌道に沿って移動可能に構成された搬送部材と、前記搬送部材上に設けられた本発明の一態様に係る圧力流体給排装置と、前記圧力流体給排装置から前記作動流体が供給され、前記圧力流体給排装置に前記作動流体を排出するように前記搬送部材上に設けられたクランプ装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0029】
この特徴によれば、圧力流体給排装置から作動流体が供給され、圧力流体給排装置に作動流体を排出するクランプ装置が設けられた搬送部材上の圧力流体給排装置のキャップ部材が、軸心回り方向への回転力を雄ネジ部材に伝達可能に雄ネジ部材の雄ネジ形成端の反対端に嵌合して、軸方向に摺動可能に嵌合する。そして、キャップ部材を軸方向に押圧する押圧機構が設けられる。このため、キャップ部材に回転力を伝達するための回転力伝達工具が、キャップ部材に嵌合する過程において、回転力伝達工具が水平方向にずれて回転力伝達工具の先端がキャップ部材に接触して押圧した場合であっても、キャップ部材は、押圧機構により押圧されて摺動する。従って、キャップ部材及びこれに関連する部材の破損等の不具合を回避することができる。
【0030】
本発明の一態様に係る流体圧クランプユニットは、前記クランプ装置が一対の旋回式クランプを含むことが好ましい。
【0031】
上記構成によれば、圧力流体給排装置から供給され又は圧力流体給排装置に排出される作動流体の流体圧により一対の旋回式クランプが動作してワークをロック又はリリースすることができる。
【0032】
本発明の一態様に係る流体圧クランプユニットは、前記圧力流体給排装置は、前記クランプ装置がロック状態からリリース状態にリリース駆動する時に前記作動流体を前記クランプ装置に供給することが好ましい。
【0033】
上記構成によれば、圧力流体給排装置から供給される作動流体によりクランプ装置がロック状態からリリース状態にリリース駆動することができる。
【0034】
本発明の一態様に係る流体圧クランプユニットは、前記圧力流体給排装置は、前記クランプ装置がリリース状態からロック状態にロック駆動する時に前記作動流体を前記クランプ装置に供給することが好ましい。
【0035】
上記構成によれば、圧力流体給排装置から供給される作動流体によりクランプ装置がリリース状態からロック状態にロック駆動することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の一態様によれば、作動流体を供給および排出するためにピストン部材を移動させるための雄ネジ部材に回転力を伝達するキャップ部材に、回転力を伝達するための工具をスムーズに嵌合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】実施形態1に係る油圧クランプユニットの平面図である。
図2】上記油圧クランプユニットの側面図である。
図3】上記油圧クランプユニットに設けられた油圧供給装置及び旋回式クランプの断面図である。
図4】上記油圧供給装置に設けられたキャップ部材の操作部の変形例を示す平面図である。
図5】上記油圧供給装置及び旋回式クランプの動作を示す断面図である。
図6】上記油圧供給装置の動作を示す断面図である。
図7】実施形態2に係る油圧供給装置及び旋回式クランプの断面図である。
図8】上記油圧供給装置及び旋回式クランプの動作を示す断面図である。
図9】実施形態3に係る油圧供給装置及び旋回式クランプの断面図である。
図10】上記油圧供給装置及び旋回式クランプの動作を示す断面図である。
図11】実施形態4に係る油圧供給装置の要部断面図である。
図12】上記油圧供給装置の他の要部断面図である。
図13】上記油圧供給装置のさらに他の要部断面図である。
図14】上記油圧供給装置のさらに他の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は実施形態1に係る油圧クランプユニット1(流体圧クランプユニット)の平面図である。図2は油圧クランプユニット1の側面図である。
【0039】
油圧クランプユニット1は、軌道に沿って移動可能に構成された搬送部材2と、搬送部材2上に設けられた油圧供給装置4(圧力流体給排装置)と、油圧供給装置4から作動油が供給され、油圧供給装置4に作動油を排出するように搬送部材2上に設けられた一対の旋回式クランプ3(クランプ装置)と、を備える。
【0040】
旋回式クランプ3は、ワークWを上から押えて搬送部材2上に固定するために設けられる。一対の旋回式クランプ3の間に、ワークWを下から支持するための支持装置22が設けられる。
【0041】
油圧クランプユニット1は、例えば、加工機の中で作業員が旋回式クランプ3を動作させてワークWを搬送部材2上に固定し、加工機の扉を閉じて作業員が離れた状態でワークWを加工機により加工する。その後、再び扉を開けて作業員が旋回式クランプ3を動作させてワークWを搬送部材2から解放するように使用される。
【0042】
また、油圧クランプユニット1は、例えば、加工機の外で作業員が旋回式クランプ3を動作させてワークWを搬送部材2上に固定した後、異なる場所に設置された加工機の中まで油圧クランプユニット1が搬送されてもよい。そして、ワークWを加工機により加工し、加工機から油圧クランプユニット1が戻ってきたら、作業員がワークWを搬送部材2から解放するように使用されてもよい。
【0043】
図3は油圧クランプユニット1に設けられた油圧供給装置4及び旋回式クランプ3の断面図である。前述した構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付している。これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0044】
油圧供給装置4は、略円筒形状のハウジング10内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストン部材5と、ピストン部材5に軸方向に形成される収容孔11に設けられる雌ネジ部材6と、雌ネジ部材6と螺合する雄ネジ部材7と、雄ネジ部材7の雄ネジ形成端の反対端に軸方向に摺動可能に嵌合し、且つ、その軸心回り方向への回転力を雄ネジ部材7に伝達可能に嵌合するキャップ部材8と、ピストン部材5のキャップ部材8側に形成されると共に、ピストン部材5の移動により作動油23が供給および排出される作動室9と、キャップ部材8を軸方向に押圧する押圧機構とを備える。この押圧機構は、ピストン部材5の移動により作動室9に供給および排出される作動油23を含む。
【0045】
キャップ部材8は、雄ネジ部材7と嵌合する嵌合穴13と、嵌合穴13の内壁に軸方向に延伸するガイド溝14とを有する。雄ネジ部材7は、ガイド溝14と係合するピン部材12を有する。
【0046】
キャップ部材8は、雄ネジ部材7と反対側の先端に、軸心回り方向への回転力を受け取るための操作部15を有する。
【0047】
この操作部15は、軸方向へ突出した多角形の凸部を有する。操作部15は陥没した多角形の凹部を有してもよい。本実施形態では、図1に示すように操作部15が六角形の凸部を有する例を図示している。
図4は油圧供給装置4に設けられたキャップ部材8の操作部15の変形例を示す平面図である。
【0048】
操作部15は、六角形の凸部又は凹部に限定されない。例えば、操作部15は、図4に示すように、六角形の穴を軸心回りに30度ずらして2個の六角形の穴を重ね合わせて形成した24角形の凹部29を有してもよい。
【0049】
ハウジング10は、作動油23(作動流体)の油圧(流体圧)に押されてキャップ部材8が脱落することを防ぐための受け部20を有する。キャップ部材8は、受け部20と係合可能な止め部16を有する。
【0050】
油圧供給装置4は、作動室9から排出された作動油23を旋回式クランプ3に供給し、旋回式クランプ3から排出された作動油23を作動室9に供給するための作動油通路21(作動流体通路)をさらに備える。
【0051】
キャップ部材8は、作動油23の油圧の減少に応じてピストン部材5側に摺動するように構成される。
【0052】
キャップ部材8は、嵌合穴13の内壁に配置された止め輪30を有する。ハウジング10は、作動室9のキャップ部材8側の内壁に配置された止め輪31を有する。ピストン部材5は、その収容孔11の内壁に軸方向に形成されたガイド溝32を有する。雌ネジ部材6は、ガイド溝32と対向して軸方向に形成されたガイド溝33と、ガイド溝32と対向してガイド溝33に設けられるピン34とを有する。ピストン部材5は、その外周壁に軸方向に形成されたガイド溝36と、雄ネジ部材7が挿入可能に形成されたガイド穴38とを有する。ハウジング10は、ガイド溝36に対向して配置されたピン37を有する。ピストン部材5の下側には、リング状のゴム又は樹脂で構成されたリング部材39が設けられる。
作動室9のキャップ部材8側に受け止め部材56が、軸心回りに回転可能となるように雄ネジ部材7に装着される。その受け止め部材56が、作動室9の内周壁に配置された止め輪31によって抜け止めされている。その受け止め部材56の外周壁に摺動溝58が周方向に形成され、受け止め部材56の内周壁に摺動溝57が周方向に形成される。摺動溝58に複数のボール部材59が装着され、摺動溝57に複数のボール部材60が装着される。外周壁側のボール部材59は、受け止め部材56の外周壁の摺動溝58と作動室9の内周壁との間で転動可能となっている。内周壁側のボール部材60は、受け止め部材56の内周壁に形成される摺動溝57と、雄ネジ部材7の外周壁にキャップ部材8側に向けて広がるようにテーパ状に形成される係合部62との間で転動可能となっている。
【0053】
このように構成された油圧供給装置4の動作を説明する。
【0054】
図5は油圧供給装置4及び旋回式クランプ3の動作を示す断面図である。図6は油圧供給装置4の動作を示す断面図である。前述した構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付している。これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0055】
油圧供給装置4は、旋回式クランプ3が図3に示すロック状態から図5に示すリリース状態にリリース駆動する時に作動油23を旋回式クランプ3に供給する。
まず、図3に示すように、旋回式クランプ3がロック状態にあるとき、油圧供給装置4のピストン部材5はキャップ部材8から離れた下方の位置に存在している。キャップ部材8は、作動室9内の作動油23により押圧されて、止め部16がハウジング10の受け部20と係合する位置まで上昇している。
【0056】
そして、図6に示すように、キャップ部材8に回転力を伝達するための回転力伝達工具25の先端に形成された凹部が、キャップ部材8の操作部15に嵌合する過程において、回転力伝達工具25が水平方向にずれて回転力伝達工具25の先端が操作部15に接触して操作部15を押圧した場合、操作部15を押圧されたキャップ部材8は、作動室9内の作動油23の油圧に抗して下方向に摺動する。
【0057】
このため、回転力伝達工具25が水平方向にずれて回転力伝達工具25の先端が操作部15に接触した場合であっても、キャップ部材8及びこれに関連する部材の破損等の不具合を回避することができる。
【0058】
また、作動室9内の作動油23により押圧されて、止め部16がハウジング10の受け部20と係合する位置まで上昇しているキャップ部材8は、雄ネジ部材7と軸方向に摺動可能に嵌合しているので、作動油23の油圧が減少すると下降する。
【0059】
従って、作動油23の油圧が減少する不具合が発生したときには、通常は上昇しているはずのキャップ部材8が下降しているので、油圧供給装置4の不具合を発見することが容易になる。
【0060】
次に、図5に示すように、回転力伝達工具25の先端に形成された凹部がキャップ部材8の操作部15に嵌合すると、キャップ部材8は、作動油23の油圧により、キャップ部材8の止め部16がハウジング10の受け部20に係合するまで軸方向に摺動する。
【0061】
その後、回転力伝達工具25が作業者又はロボットの操作によって軸心回りの第1方向に回転すると、操作部15が回転力伝達工具25の凹部に嵌合したキャップ部材8は、当該回転力を雄ネジ部材7に伝達する。当該回転力によって雄ネジ部材7が回転すると、雄ネジ部材7に螺合する雌ネジ部材6が設けられたピストン部材5が図5に示すようにキャップ部材8に近づくように軸方向へ移動する。
【0062】
このため、作動室9内の作動油23が作動油通路21を通って旋回式クランプ3に供給される。作動油23を供給された旋回式クランプ3は図3に示すロック状態から図5に示すリリース状態にリリース駆動される。
【0063】
例えば、旋回式クランプ3の作動室40に油圧供給装置4の作動室9から作動油通路21を通って作動油23が供給されていくと、作動室40に供給された作動油23に基づく押力がロックバネ41の付勢力に抗してピストン42を出力ロッド44側へ移動させるように作用する。すると、ピストン42が圧縮バネ43を介して出力ロッド44をピストン42と反対側の上方へ真っ直ぐに移動させていく。次いで、出力ロッド44の段差部44aがスラストベアリング45に上方から受け止められると、ピストン42が圧縮バネ43を押し縮めていく。すると、ピストン42の操作溝46が伝動ボール47を介して出力ロッド44の旋回溝48を上方へ押圧していく。すると、ピストン42に対して出力ロッド44が平面視で反時計回りの方向へ90度だけ回転される。
引き続いて、ピストン42の収容孔49の底壁が出力ロッド44の下端部に上方から受け止められる。これにより、旋回式クランプ3が図3のクランプ状態から図5のアンクランプ状態に切り換わる。
【0064】
これに対して、回転力伝達工具25が軸心回りの第1方向とは逆の第2方向に回転すると、ピストン部材5はキャップ部材8から離れるように軸方向へ移動する。
【0065】
このため、旋回式クランプ3内の作動油23が作動油通路21を通って油圧供給装置4の作動室9内に排出される。作動油23を排出した旋回式クランプ3は図5に示すリリース状態から図3に示すロック状態にロック駆動される。
【0066】
ピストン部材5が下限位置に移動した貯蔵状態で、旋回式クランプ3の作動室40(リリース室)から作動油23が油圧供給装置4の作動室9に供給された場合に、リング状のリング部材39が縮んで作動室9の容量が増加される。即ち、作動室9に受け入れる作動油23の量が増加される。このため、ポンプとして作動する油圧供給装置4の破損が防止される。
【0067】
〔実施形態2〕
図7は実施形態2に係る油圧供給装置4及びリンク式クランプ3Aの断面図である。図8は油圧供給装置4及びリンク式クランプ3Aの動作を示す断面図である。前述した構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付している。これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0068】
リンク式クランプ3Aは、実施形態1で前述した旋回式クランプ3と異なり、図7に示すように作動油23が供給されないときはリリース状態となり、図8に示すように作動油23が供給されたときはロック状態となる。
【0069】
油圧供給装置4は、リンク式クランプ3Aが図7に示すリリース状態から図8に示すロック状態にロック駆動する時に作動油23をリンク式クランプ3Aに供給してもよい。
【0070】
油圧供給装置4の作動室9から作動油通路21を通ってリンク式クランプ3Aのクランプ室50に作動油23が供給されると、図8に示すようにロッド51が上昇し、クランプアーム52がピン53回りに反時計回りの方向へ駆動され、そのクランプアーム52の端部に設けた押ボルト54がワークWを下向きに押圧する。
【0071】
上記とは逆に、アンクランプ時には、クランプ室50の作動油23を、作動油通路21を通って油圧供給装置4の作動室9に排出する。すると、ロッド51が下降し、クランプアーム52が時計回りの方向へ退避される。
【0072】
〔実施形態3〕
図9は実施形態3に係る油圧供給装置4B及び旋回式クランプ3の断面図である。図10は油圧供給装置4B及び旋回式クランプ3の動作を示す断面図である。前述した構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付している。これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0073】
油圧供給装置4Bは、実施形態1及び2で前述した油圧供給装置4とは異なり、作動室9Bがピストン部材5のキャップ部材8とは反対側に形成される。
【0074】
そして、押圧機構は、キャップ部材8を軸方向に押圧する弾性部材26を含む。この弾性部材26は、例えば圧縮コイルばね又は皿バネなどにより構成することができ、雄ネジ部材7の雄ネジ形成端の反対端の端面に形成された凹部と、キャップ部材8の嵌合穴13の底面に形成された凹部との間に配置することができる。
【0075】
このように構成された油圧供給装置4Bは以下のように動作する。
【0076】
まず、図9に示すように、旋回式クランプ3がロック状態にあるとき、油圧供給装置4Bのピストン部材5は、ハウジング10の受け部27とキャップ部材8とに近い上方の位置に存在している。キャップ部材8は、弾性部材26により軸方向に押圧されて、止め部16がハウジング10の受け部20と係合する位置まで上昇している。
【0077】
次に、図10に示すように、回転力伝達工具25の先端に形成された凹部がキャップ部材8の操作部15に嵌合する。
【0078】
その後、回転力伝達工具25が作業者又はロボットの操作によって軸心回りの第2方向に回転すると、操作部15が回転力伝達工具25の凹部に嵌合したキャップ部材8は、当該回転力を雄ネジ部材7に伝達する。当該回転力によって雄ネジ部材7が回転すると、雄ネジ部材7に螺合する雌ネジ部材6が設けられたピストン部材5が図10に示すようにキャップ部材8から離れるように軸方向へ移動する。
【0079】
このため、作動室9B内の作動油23が作動油通路21Bを通って旋回式クランプ3に供給される。作動油23を供給された旋回式クランプ3は図9に示すロック状態から図10に示すリリース状態にリリース駆動される。
【0080】
〔実施形態4〕
図11は実施形態4に係る油圧供給装置4Cの要部断面図である。図12は油圧供給装置4Cの他の要部断面図である。前述した構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付している。これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0081】
油圧供給装置4Cはキャップ部材8Cを備える。キャップ部材8Cは、雄ネジ部材7と嵌合する嵌合穴13と、嵌合穴13の内壁に軸方向に延伸する複数のガイド溝28とを有する。雄ネジ部材7は、ガイド溝28に対応して径方向に沿って形成された貫通孔17(ガイド孔)と、ガイド溝28に対向して貫通孔17に設けられた一対のボール部材18と、一対のボール部材18をガイド溝28に向かって付勢するために一対のボール部材18の間に設けられた弾性部材19とを有する。弾性部材19は例えば、圧縮コイルばね又は皿バネなどにより構成することができる。
図11に示すように、弾性部材19により径方向の外方に付勢されるボール部材18がキャップ部材8Cの嵌合穴13に形成されたガイド溝28に嵌合しているときには、キャップ部材8Cと雄ネジ部材7とが軸心回りに一体に回転駆動される。
【0082】
これに対して、キャップ部材8Cを回転させる回転力伝達工具25からの外部トルクが所定トルクよりも大きいときに、図12に示すように、外部トルクが作用するキャップ部材8Cのガイド溝28の周壁がボール部材18を径方向の内方へ押す。このため、ボール部材18は、弾性部材19の付勢力に抗して貫通孔17の内部に押し込まれる。これにより、雄ネジ部材7に対してキャップ部材8Cが回転される。その結果、所定トルクよりも大きい外部トルクがキャップ部材8Cに作用しても、キャップ部材8Cと雄ネジ部材7との間の係合部分の摩耗、破損が軽減される。
図13及び図14は油圧供給装置4Cのさらに他の要部断面図である。前述した構成要素と同様の構成要素には同様の参照符号を付している。これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
貫通孔17は、図13及び図14に示すように、有底穴17a(ガイド孔)により構成してもよい。この場合、雄ネジ部材7は、ガイド溝28に対応して径方向に沿って形成された有底穴17aと、ガイド溝28に対向して有底穴17aに設けられたボール部材18と、ボール部材18をガイド溝28に向かって付勢するために有底穴17aに設けられた弾性部材19aとを有する。
クランプ装置に油圧を供給する油圧供給装置の例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば油圧に代えて圧縮エアをクランプ装置に供給するエア供給装置に対しても本発明を適用することができる。
【0083】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 油圧クランプユニット(流体圧クランプユニット)
2 搬送部材
3 旋回式クランプ(クランプ装置)
3A リンク式クランプ(クランプ装置)
4 油圧供給装置(圧力流体給排装置)
5 ピストン部材
6 雌ネジ部材
7 雄ネジ部材
8 キャップ部材
9 作動室
10 ハウジング
11 収容孔
12 ピン部材
13 嵌合穴
14 ガイド溝
15 操作部
16 止め部
17 貫通孔(ガイド孔)
17a 有底穴(ガイド孔)
18 ボール部材
19 弾性部材
20 受け部
21 作動油通路(作動流体通路)
22 支持装置
23 作動油(作動流体)
24 押圧機構
25 回転力伝達工具
28 ガイド溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14