(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006789
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3205 20060101AFI20240110BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240110BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01L21/88 T
H01L21/02 B
H01L21/88 R
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108003
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 章
【テーマコード(参考)】
4M118
5F033
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
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4M118HA30
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5F033XX13
(57)【要約】
【課題】貼合される基板間の貼合界面における電極(配線)の接続不良を抑制して、歩留まりを向上することができる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る半導体装置は、第1面と第2面とが面して第1電極と第2電極とが接するように、第1接続配線層と第2接続配線層とが貼合されており、第1電極は、第1溝内に設けられ且つTiを含む第1バリアメタル膜と、第1溝内に前記第1バリアメタル膜を介して設けられ且つ多結晶であるCuを含む第1導電膜と、を含み、第2電極は、第2溝内に設けられ且つTiを含む第2バリアメタル膜と、第2溝内に第2バリアメタル膜を介して設けられ且つ多結晶であるCuを含む第2導電膜と、を含み、第1電極と第2電極との間の貼合面には、TiとOとが存在している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面に第1溝が形成された第1絶縁層、及び、前記第1溝内に設けられた第1電極を有する第1接続配線層と、
前記第1面に対向する第2面に第2溝が形成された第2絶縁層、及び、前記第2溝内に設けられた第2電極を有する第2接続配線層と、を備え、
前記第1面と前記第2面とが面して前記第1電極と前記第2電極とが接するように、前記第1接続配線層と前記第2接続配線層とが貼合されており、
前記第1電極は、前記第1溝内に設けられ且つTiを含む第1バリアメタル膜と、前記第1溝内に前記第1バリアメタル膜を介して設けられ且つ多結晶であるCuを含む第1導電膜と、を含み、
前記第2電極は、前記第2溝内に設けられ且つTiを含む第2バリアメタル膜と、前記第2溝内に前記第2バリアメタル膜を介して設けられ且つ多結晶であるCuを含む第2導電膜と、を含み、
前記第1電極と前記第2電極との間の貼合面には、TiとOとが存在している
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1電極と前記第2電極との間の貼合面には、TiO2膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1バリアメタル膜は、単層のTi膜、又は、複数のTi膜を積層した膜であり、
前記第2バリアメタル膜は、単層のTi膜、又は、複数のTi膜を積層した膜である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1導電膜は、前記第1バリアメタル膜に隣接しており、
前記第2導電膜は、前記第2バリアメタル膜に隣接している
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
第1面に第1溝が形成された第1絶縁層と、前記第1溝内に設けられた第1電極と、を有する第1接続配線層を形成することと、
第2表面に第2溝が形成された第2絶縁層と、前記第2溝内に設けられた第2電極と、を有する第2接続配線層を形成することと、
前記第1面と前記第2面とが面して前記第1電極と前記第2電極とが接するように、前記第1接続配線層と前記第2接続配線層とを貼合することと、
前記第1接続配線層と前記第2接続配線層とを貼合した後、熱処理することと、を備え、
前記第1電極は、前記第1溝内に設けられ且つTiを含む第1バリアメタル膜と、前記第1溝内に前記第1バリアメタル膜を介して設けられ且つ多結晶であるCuを含む第1導電膜と、を含み、アニール処理により、前記第1導電膜中に前記第1バリアメタル膜のTiが拡散しており、
前記第2電極は、前記第2溝内に設けられ且つTiを含む第2バリアメタル膜と、前記第2溝内に前記第2バリアメタル膜を介して設けられ且つ多結晶であるCuを含む第2導電膜と、を含み、アニール処理により、前記第2導電膜中に前記第2バリアメタル膜のTiが拡散しており、
前記熱処理により、前記第1電極と前記第2電極との間の貼合面に、TiO2を含む膜が形成される、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子や集積回路が形成された基板を貼合して積層構造とすることによって、半導体装置の占有面積を低減する技術がある。貼合される基板の各貼合面には、対応する位置に基板間を電気的に接続する電極が設けられる。貼合される各基板は、貼合面が平坦になるように研磨されてから貼合される。
【0003】
しかしながら、基板の貼合面を研磨する工程の後、貼合される基板間の貼合界面における配線の貼合部分の抵抗が高くなり、当該半導体装置の歩留まりが低下することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つの実施形態は、貼合される基板間の界面における配線の接続不良を抑制して、歩留まりを向上することができる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施形態に係る半導体装置は、第1面に第1溝が形成された第1絶縁層、及び、前記第1溝内に設けられた第1電極を有する第1接続配線層と、前記第1面に対向する第2面に第2溝が形成された第2絶縁層、及び、前記第2溝内に設けられた第2電極を有する第2接続配線層と、を備え、前記第1面と前記第2面とが面して前記第1電極と前記第2電極とが接するように、前記第1接続配線層と前記第2接続配線層とが貼合されており、前記第1電極は、前記第1溝内に設けられ且つTiを含む第1バリアメタル膜と、前記第1溝内に前記第1バリアメタル膜を介して設けられ且つ多結晶であるCuを含む第1導電膜と、を含み、前記第2電極は、前記第2溝内に設けられ且つTiを含む第2バリアメタル膜と、前記第2溝内に前記第2バリアメタル膜を介して設けられ且つ多結晶であるCuを含む第2導電膜と、を含み、前記第1電極と前記第2電極との間の貼合面には、TiとOとが存在している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る半導体装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る半導体装置の断面構造を示す説明図である。
【
図4】
図4は、Ti膜の膜厚とCu膜の配向強度比との関係を示す説明図である。
【
図5】
図5は、ビアの抵抗値と確率分布との関係を示す説明図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す説明図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す説明図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す説明図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係る半導体装置の断面構造を示す説明図である。
【
図10】
図10は、第3の実施形態に係る半導体装置の断面構造を示す説明図である。
【
図11】
図11は、第4の実施形態に係る半導体装置の断面構造を示す説明図である。
【
図12】
図12は、第5の実施形態に係る半導体装置の断面構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる半導体装置及び半導体装置の製造方法を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置を示す斜視図であり、
図2は、第1の実施形態に係る半導体装置の分解斜視図である。また、
図3は、第1の実施形態に係る半導体装置1の断面構造を示す説明図である。
[半導体装置]
例えば、
図1に示すように、半導体装置1は、互いに貼合される、第1基板3と、第2基板2と、を備える。
【0010】
第1基板3は、例えば、CMOSイメージセンサ20から撮像画像の画像信号を読み出し、読み出した画像信号に対して種々の信号処理を行うロジック回路などを備えるロジック基板である。
【0011】
また、第2基板2は、例えば、被写体を撮像するCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ20などを備えるセンサ基板である。なお、半導体装置1は、第1のロジック基板と第2のロジック基板とが貼合される構成であってもよく、ロジック基板とメモリ基板とが貼合される構成であってもよい。また、半導体装置1は、3以上の基板が貼合される構成であってもよい。
【0012】
そして、
図2に示すように、第1基板3は、ロジック回路などが設けられるデバイス層31と、このデバイス層31の上側表面に設けられ、複数の金属電極(以下、単に「第1電極33」を含む第1接続配線層32とを備える。第1電極33は、一方の端面が第1接続配線層32から露出した状態で、第1接続配線層32に埋設され、例えば、デバイス層31内部の配線を介してロジック回路などに接続される。
【0013】
一方、第2基板2は、CMOSイメージセンサ20などが設けられるデバイス層21と、デバイス層21の下側表面に設けられ、第1基板3の第1電極33と対応する位置に埋設される複数の金属電極(以下、単に「電極」と記載する)を含む第2接続配線層22とを備える。電極(
図3の第2電極23に対応する)は、一方の端面が第2接続配線層22から露出した状態で、第2接続配線層22に埋設され、例えば、デバイス層21内部の配線を介してCMOSイメージセンサ20などに接続される。
【0014】
これら第2基板2及び第1基板3は、各貼合面が研磨されて平坦化され、貼合面に対して活性化処理が施された後、接着剤を使用せずに直接貼合される。これにより、第2基板2と第1基板3とは、第1接続配線層32と第2接続配線層22との間の分子間力による水素結合によって仮接合される。その後、第2基板2及び第1基板3には、所定の条件の加熱処理が施される。これにより、第2基板2と第1基板3とは、第1接続配線層32と第2接続配線層22との間の共有結合によって本接合される。
【0015】
このように、半導体装置1では、第2基板2が備えるCMOSイメージセンサ20の下面に設けられる電極(
図3の第2電極23に対応する)と、第1基板3の上面に設けられる第1電極33とを接続することができる。したがって、例えば、第1基板3が備えるロジック回路によれば、CMOSイメージセンサ20の直下から信号の読み出しを行うことができるので、基板の占有面積を低減することが可能となる。
【0016】
そこで、第1の実施形態では、所定の構造を有する第1基板3及び第2基板2を貼合し、所定の条件の加熱処理を施すことによって、貼り合わされる基板間の界面における電極(配線)の接続不良を抑制して、歩留まりを向上するものである。かかる半導体装置の製造方法の詳細については、
図6ないし
図8を参照して後述する。
【0017】
次に、
図3を参照して、第1の実施形態に係る半導体装置1の断面構造について説明する。なお、
図3には、第2基板2の第2接続配線層22と、第1基板3の第1接続配線層32との接合部分の断面の近傍の領域を選択的に図示している。
【0018】
例えば、
図3に示すように、第2基板2の第2接続配線層22は、デバイス層21(
図2参照)側から順に積層される酸化シリコン層41、SiCN膜42、及び酸化シリコン層43を備える。なお、酸化シリコン層41、SiCN膜42、及び酸化シリコン層43は、第2絶縁層を構成するものとする。そして、酸化シリコン層41の内部には、デバイス層21(
図2参照)の内部に設けられるCMOSイメージセンサ20などのデバイスに接続される配線26が設けられる。
【0019】
さらに、第2基板2の第2接続配線層22は、内部に、SiCN膜42及び酸化シリコン膜44を貫通する第2電極23を備える。
【0020】
すなわち、第2接続配線層22は、第1面32aに対向する第2面22aに第2溝M2が形成された第2絶縁層41、42、43と、第2溝M2内に設けられた第2電極23と、を有する。
【0021】
そして、この第2接続配線層22の第2電極23は、例えば、
図3に示すように、第2溝M2内に設けられ且つTiを含む第2バリアメタル膜24と、第2溝M2内に第2バリアメタル膜24を介して設けられ且つ多結晶であるCuを含む第2導電膜25と、を含む。より具体的には、第2導電膜25は、多結晶のCu膜であり、第2バリアメタル膜24は、Ti膜である。
【0022】
なお、例えば、
図3に示すように、第2導電膜25は、第2バリアメタル膜24に隣接している。また、
図3の例では、第2バリアメタル膜24は、単層のTi膜であるが、第2バリアメタル膜24は、複数のTi膜を積層した膜であってもよい。
【0023】
また、例えば、
図3に示すように、第1基板3の第1接続配線層32は、第2基板2の第2接続配線層22と同様に、デバイス層31(
図2参照)側から順に積層される酸化シリコン層45、SiCN膜46、及び酸化シリコン層47を備える。なお、酸化シリコン層45、SiCN膜46、及び酸化シリコン層47は、第1絶縁層を構成する。そして、酸化シリコン層45の内部には、デバイス層31(
図2参照)の内部に設けられるロジック回路などのデバイスに接続される配線36が設けられる。
【0024】
さらに、第1基板3の第1接続配線層32は、内部に、SiCN膜46及び酸化シリコン層47を貫通する第1電極33を備える。
【0025】
すなわち、第1接続配線層32は、第1面32aに第1溝M1が形成された第1絶縁層45、46、47と、第1溝内M1に設けられた第1電極33と、を有する。
【0026】
この第1接続配線層32の第1電極33は、例えば、
図3に示すように、第1溝内M1に設けられ且つTiを含む第1バリアメタル膜34と、第1溝M1内に第1バリアメタル膜34を介して設けられ且つ多結晶であるCuを含む第1導電膜35と、を含む。より具体的には、第1導電膜35は、多結晶のCu膜であり、第1バリアメタル膜34は、Ti膜である。
【0027】
なお、例えば、
図3に示すように、第1導電膜35は、第1バリアメタル膜34に隣接している。また、
図3の例では、第1バリアメタル膜34は、単層のTi膜であるが、この第1バリアメタル膜34は、複数のTi膜を積層した膜であってもよい。
【0028】
そして、第1接続配線層32の第1面32aと第2面22aとが面して第1電極33と第2電極32とが接するように、第1接続配線層32と第2接続配線層22とが貼合されている。
【0029】
さらに、例えば、
図3に示すように、第1電極33と第2電極23との間の貼合面Xには、TiとOとが存在している。そして、後述のように、貼合時の加熱処理の温度及び時間を含む条件を制御することにより、当該貼合面Xにおいて、CuO、Cu
2O等の酸化銅がTiO
2等の酸化チタンに置換されている。具体的には、第1電極33と第2電極23との間の貼合面Xには、酸化銅(CuO、Cu
2O)よりも抵抗値が非常に低いTiO
2膜Yが形成されている。
【0030】
ここで、第1電極33と第2電極23との間の接続抵抗を低減して、半導体装置1の貼合歩留を向上させるための、第1電極33と第2電極23との間の貼合面Xの近傍における構成や条件等について説明する。
【0031】
例えば、既述のような構成を有する第1基板3の貼合面X(第1面32a)の平坦化のために研磨した後に、第1導電膜35のCuとこの第1導電膜35の研磨された表面に存在するOとが反応して、抵抗値が高いCuOやCu2O等の酸化銅膜が形成される場合がある。この酸化銅膜が第1導電膜35と第2導電膜25との貼合面に存在することで、接続抵抗が大きくなる恐れがある。さらに、第1導電膜35と第2導電膜25との貼合位置が所定の位置からずれることで、接続抵抗が大きくなる恐れがある。このように接続抵抗が大きくなると、結果として、当該半導体装置1の歩留まりが低下することとなる。
【0032】
ここで、
図4は、Ti膜の膜厚とCu膜の配向強度との関係を示す説明図である。なお、この
図4に示す配向強度の関係は、シリコン基板に形成された酸化シリコン膜上にTi膜であるバリアメタル膜を介して、電気化学メッキECP(Electro Chemical Plating)法によりCu膜を800nmの膜厚で形成して、150℃の熱処理を行った試料に対して測定されたデータに基づくものである。
【0033】
この
図4に示すように、Cu膜の結晶方位は、隣接するバリアメタル膜であるTi膜の膜厚に依存しており、当該Ti膜の膜厚が大きくなると、Cu(200)配向に対するCu(111)配向の割合が低くなる。特に、
図7の例では、バリアメタル膜であるTi膜の膜厚が、18nm以上の場合、(200)配向強度に対する(111)配向強度の比が5.0以下になると考えられる。
【0034】
そして、一般的に、多結晶のCu膜は、Cuの結晶方位が(111)配向である部分は熱膨張率が低く、一方、Cuの結晶方位が(200)配向である部分は熱膨張率が高くなる特性を有する。したがって、Cu膜の熱膨張を促すためには、熱膨張しにくい膜中の(111)配向面が減少するTi膜を厚膜化することが有効であると考えられる。
【0035】
そこで、第1、第2電極33、23のCu膜である第1、第2電極膜35、25に隣接するTi膜で構成される第1、第2バリアメタル膜34、24を厚膜化する(例えば18nm以上にする)。これにより、多結晶のCu膜である第1、第2電極膜35、25において、熱膨張率が低いCu(111)配向が抑制されて、熱膨張しやすい膜質とすることができる。
【0036】
したがって、バリアメタル膜を構成するTi膜の膜厚を適切に制御することにより、多結晶のCu膜である第1、第2導電膜35、25の熱膨張率が高くなり、Cuを主成分とする第1電極35と第2電極25との接続性が向上することとなる。すなわち、半導体装置1の貼合歩留まりを向上することができる。
【0037】
次に、
図5は、ビアの抵抗値と確率分布との関係を示す説明図である。なお、この
図5に示す関係は、シリコン基板に形成された酸化シリコン膜上にTi膜であるバリアメタル膜を介して、電気化学メッキ法によりパッド電極であるCu膜を1.25μmの膜厚で形成して、貼合時に異なる温度、ここでは400℃又は300℃で1時間の熱処理(貼合アニール)を行った試料に対して測定されたデータに基づくものである。
【0038】
この
図5に示すように、例えば、ビア抵抗の4Ω以下の確率は、400℃で1時間の貼合アニールを実行した場合、70%以上となり、一方、300℃で1時間の貼合アニールを実行した場合、1%程度となる。
【0039】
このように貼合アニールの温度と時間を適切に制御することにより、バリアメタル膜のTiが多結晶のCu膜に熱拡散する特性を利用して、パッド電極の貼合界面において、高抵抗なCuOやCu2O等の酸化銅を低抵抗なTiO2に置換することができると考えられる。
【0040】
すなわち、貼合アニールにより、バリアメタル膜のTiが多結晶のCu膜に熱拡散する特性を利用して、第1、第2電極33、23の貼合界面において、高抵抗なCuOやCu2Oを、低抵抗なTiO2等の酸化チタンに置換する。これにより、第1接続配線層32の第1電極33(第1導電膜55)と第2接続配線層22の第2電極23(第2導電膜25)とが低抵抗なTiO2膜Yを介して接続されることとなり、第1電極33と第2電極23との間の抵抗値を下げることができる。
【0041】
そこで、本実施形態にかかる半導体装置1では、既述の
図3に示すように、第1電極33と第2電極23との間の貼合面Xには、TiとOとが存在するように設定されている。そして、後述のように、貼合時の加熱処理の温度及び時間を含む条件を制御することにより、当該貼合面Xにおいて、酸化銅がTiO
2等の酸化チタンに置換されている。具体的には、第1電極33と第2電極23との間の貼合面Xには、酸化銅(CuO、Cu
2O)よりも抵抗値が非常に低いTiO
2膜Yが形成されている。
【0042】
これにより、第1接続配線層32の第1電極33と第2接続配線層22の第2電極23との接続抵抗を低くすることができる。
【0043】
すなわち、半導体装置1は、貼り合わされる基板間の貼合界面における電極(配線)の接続不良を抑制して、歩留まりを向上することができる。
【0044】
[半導体装置の製造方法]
次に、既述のように、
図6ないし
図8を参照して、第1の実施形態に係る半導体装置1の製造方法について説明する。
図6ないし
図8は、第1の実施形態に係る半導体装置1の製造工程を示す説明図である。
【0045】
なお、第2基板2のデバイス層21及び第1基板3のデバイス層31の製造工程は、一般的な半導体装置の製造工程と同様である。また、第2基板2側の第2接続配線層22の形成工程と、第1基板3側の第1接続配線層32の形成工程は、同様に説明される。
【0046】
このため、ここでは、第1基板3側の第1接続配線層32の形成工程、及び第2基板2と第1基板3との貼合工程について説明し、デバイス層21、31の製造工程、及び第2基板2の第2接続配線層22の形成工程については、その説明を省略するものとする。
【0047】
例えば、既述の
図1及び
図2に示す第1基板3を製造する場合は、まず、デバイス層31の表面に、
図6の(a)に示すように、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)によって、酸化シリコン層45を形成する。そして、酸化シリコン層45の表面に、ダマシン法によって配線36を形成する。
【0048】
その後、配線36が埋め込まれた酸化シリコン層45上に、例えば、CVDによって、SiCN膜46、酸化シリコン層47を順次積層することで、第1絶縁層を形成する(
図6の(a))。
【0049】
続いて、
図6の(b)に示すように、第1電極33(
図3参照)の形成位置に、第1電極33の形状と同様の形状を有する第1溝M1を形成する。この工程では、まず、酸化シリコン層47上にレジスト(図示略)を形成し、当該レジストにおける第1電極33の形成位置に、例えば、配線36の幅よりも径が小さな開口を形成する。
【0050】
そして、開口が形成されたレジストをマスクとして使用し、RIE(Reactive Ion Etching)を行うことによって、酸化シリコン層47の表面から配線36の表面まで達するビアホールMaを形成する。
【0051】
その後、レジストに形成した開口の径を、例えば、配線36の幅と同程度まで拡張して、再度RIEを行うことによって、酸化シリコン膜47の表面から当該酸化シリコン層47の厚さ方向中央程度まで、当該ビアホールMaの径を拡張するようにして配線用若しくはバッド電極用の溝Mbを形成する。これにより、
図6の(b)に示す形状の第1溝M1が形成される。
【0052】
続いて、
図6の(c)に示すように、第1溝M1の内周面及び酸化シリコン層47の表面をTiの薄膜によって被覆することにより、Tiを含む第1バリアメタル膜35を形成する。さらに、第1バリアメタル膜35の表面にCuを蒸着させてシード膜35aを形成する(
図6の(c))。なお、第1バリアメタル膜35が積層構造の場合には、好ましくは、同一装置内且つ、連続した高真空下で、当該第1バリアメタル膜35が成膜される。
【0053】
その後、
図7の(a)に示すように、
図6の(c)に示すシード膜35aの表面に、例えば、電解メッキ法によってCuを析出させる。これにより、Cuを含む第1導電膜35が形成される(
図7の(a))。
【0054】
その後、
図7の(b)に示すように、Cuを析出させた後、アニール処理をすることにより、Cuを含む第1導電膜34中に第1バリアメタル膜35のTi原子TiGを拡散させる。
【0055】
このように、第1電極33は、第1溝M1内に設けられ且つTiを含む第1バリアメタル膜34と、第1溝M1内に第1バリアメタル膜34を介して設けられ且つ多結晶であるCuを含む第1導電膜35と、を含むように形成される。そして、アニール処理により、第1導電膜35中に第1バリアメタル膜34のTiが拡散している。
【0056】
なお、既述のように、第2基板2に関しても同様の工程にて、第2電極23は、第2溝M2内に設けられ且つTiを含む第2バリアメタル膜24と、第2溝M2内に第2バリアメタル膜24を介して設けられ且つ多結晶であるCuを含む第2導電膜25と、を含むように形成される。そして、アニール処理により、第2導電膜25中に第2バリアメタル膜24のTiが拡散しているものとなる。
【0057】
また、既述のように、Tiを含む第1バリアメタル膜35の膜厚を所定値(例えば18nm以上)まで厚膜化することにより、多結晶のCu膜である第1電極膜35において、熱膨張率が低いCu(111)配向が抑制される。これにより、多結晶のCu膜である第1導電膜35の熱膨張率が高くなり、Cuを主成分とする第1電極35の接続性が向上することとなる。
【0058】
続いて、Cuによって表面が被覆された第1基板3の表面を、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法によって研磨することにより、
図7の(c)に示すように、酸化シリコン膜47上の不要なCu及びTiを含む第1バリアメタル膜35の上部を除去する。
【0059】
このCMP法により平坦化された第1接続配線層32の第1面32aには、酸素Oが存在しており、抵抗値が高いCuOやCu
2O等の酸化銅の膜(図示せず)が形成されている(
図7の(c))。
【0060】
このようにして、第1面32aに第1溝M1が形成された第1絶縁層45、46、47と、第1溝M1内に設けられた第1電極33と、を有する第1接続配線層32が形成される。なお、既述のように、第2基板2に関しても同様の工程にて、第2表面22aに第2溝M2が形成された第2絶縁層41、42、43と、第2溝M2内に設けられた第2電極23と、を有する第2接続配線層22が形成される。
【0061】
続いて、
図8に示すように、第1基板3と同様にして、第2接続配線層22を形成した第2基板2と、当該第1基板3とを貼合する。この状態では、第1電極33と第2電極23との間の貼合面Xには、酸化銅(CuO、Cu
2O等)のOが存在している。
【0062】
その後、第2基板2及び第1基板3を熱処理することによって、当該貼合面Xにおいて、CuO、Cu
2O等の酸化銅をTiO
2等の酸化チタンに置換される。具体的には、当該熱処理により、第1電極33と第2電極23との間の貼合面Xには、よりも抵抗値が非常に低いTiO
2を含む膜Y(
図3)が形成されることとなる。
【0063】
このように、第1面32aと第2面22aとが面して第1電極33と第2電極23とが接するように、第1接続配線層32と第2接続配線層22とを貼合する。さらに、第1接続配線層32と第2接続配線層22とを貼合した後、熱処理することで、
図3に示すように、第1電極33と第2電極23との間の貼合面Xに、TiO
2を含む膜Yが形成され、半導体装置1が完成する。
【0064】
以上のように、第1の実施形態に係る半導体装置1によれば、貼り合わされる基板間の貼合界面における電極(配線)の接続不良を抑制して、歩留まりを向上することができる。
【0065】
ここで、既述の第1の実施形態では、第1、第2接続配線層32、22の第1、第2電極33、23が所謂デュアルダマシン法により形成された構成の一例について説明した。しかしながら、この第1、第2電極33、23の構成は、これに限定されるものではない。そこで、以下の第2ないし第5の実施形態では、第1、第2電極33、23の構成の他の例について説明する。
【0066】
(第2の実施形態)
図9を参照し、第2の実施形態に係る半導体装置について説明する。
図9は、第2の実施形態に係る半導体装置の断面構造を示す説明図である。以下の説明では、
図9に示す構成要素のうち、
図3に示す構成要素と同一の構成要素について、
図3に示す符号と同一の符号を付することにより、その説明を省略する。なお、この第2の実施形態の
図9に示す半導体装置の全体的な構成は、例えば、第1の実施形態の
図1及び
図2に示す半導体装置1と同様である。
【0067】
この
図9に示すように、第1接続配線層32において、第1溝M1の底部の第1バリアメタル膜34を貫通する開口部36aが形成されており、第1導電膜35と配線36とが直接接続されているようにしてもよい。
【0068】
同様に、
図9に示すように、第2接続配線層22において、第2溝M2の底部の第2バリアメタル膜24を貫通する開口部26aが形成されており、第2導電膜25と配線26とが直接接続されているようにしてもよい。
【0069】
なお、この第2の実施形態の半導体装置のその他の構成は、第1の実施形態の半導体装置1の構成と同様である。
【0070】
すなわち、この第2の実施形態に係る半導体装置によれば、貼り合わされる基板間の貼合界面における電極(配線)の接続不良を抑制して、歩留まりを向上することができる。
【0071】
(第3の実施形態)
次に、
図10を参照し、第3の実施形態に係る半導体装置について説明する。
図10は、第3の実施形態に係る半導体装置の断面構造を示す説明図である。以下の説明では、
図10に示す構成要素のうち、
図3に示す構成要素と同一の構成要素について、
図3に示す符号と同一の符号を付することにより、その説明を省略する。なお、この第3の実施形態の
図10に示す半導体装置の全体的な構成は、例えば、第1の実施形態の
図1及び
図2に示す半導体装置1と同様である。
【0072】
この
図10に示すように、第1接続配線層32において、第1バリアメタル膜34は、第1溝M1内に形成されたTaを主成分とする第1のTa膜34aと、第1溝M1内に第1のTa膜34aを介して形成されたTiを主成分とする第1のTi膜34bと、を含むようにしてもよい。
【0073】
同様に、この
図10に示すように、第2バリアメタル膜24は、第2溝M2内に形成されたTaを主成分とする第2のTa膜と、第2溝M2内に第2のTa膜を介して形成されたTiを主成分とする第2のTi膜と、を含むようにしてもよい。
【0074】
なお、この第3の実施形態の半導体装置のその他の構成は、第1の実施形態の半導体装置1の構成と同様である。
【0075】
すなわち、この第3の実施形態に係る半導体装置によれば、貼り合わされる基板間の貼合界面における電極(配線)の接続不良を抑制して、歩留まりを向上することができる。
【0076】
(第4の実施形態)
次に、
図11を参照し、第4の実施形態に係る半導体装置について説明する。
図11は、第4の実施形態に係る半導体装置の断面構造を示す説明図である。以下の説明では、
図11に示す構成要素のうち、
図3に示す構成要素と同一の構成要素について、
図3に示す符号と同一の符号を付することにより、その説明を省略する。なお、この第4の実施形態の
図11に示す半導体装置の全体的な構成は、例えば、第1の実施形態の
図1及び
図2に示す半導体装置1と同様である。
【0077】
この
図11に示すように、第1接続配線層32において、例えば、シングルダマシン法により、Tiを主成分とする第1バリアメタル膜37及びWを主成分とする第1導電膜38を形成した後、再度、シングルダマシン法により、Tiを主成分とする第1バリアメタル膜34及びCuを主成分とする第1導電膜35を形成するようにしてもよい。
【0078】
同様に、この
図11に示すように、第2接続配線層22において、シングルダマシン法により、Tiを主成分とする第2バリアメタル膜27及びWを主成分とする第2導電膜28を形成した後、再度、シングルダマシン法により、Tiを主成分とする第2バリアメタル膜24及びCuを主成分とする第2導電膜25を形成するようにしてもよい。
【0079】
なお、この第4の実施形態の半導体装置のその他の構成は、第1の実施形態の半導体装置1の構成と同様である。
【0080】
すなわち、この第4の実施形態に係る半導体装置によれば、貼り合わされる基板間の貼合界面における電極(配線)の接続不良を抑制して、歩留まりを向上することができる。
【0081】
(第5の実施形態)
次に、
図12を参照し、第5の実施形態に係る半導体装置について説明する。
図12は、第5の実施形態に係る半導体装置の断面構造を示す説明図である。以下の説明では、
図12に示す構成要素のうち、
図3に示す構成要素と同一の構成要素について、
図3に示す符号と同一の符号を付することにより、その説明を省略する。なお、この第5の実施形態の
図12に示す半導体装置の全体的な構成は、例えば、第1の実施形態の
図1及び
図2に示す半導体装置1と同様である。
【0082】
この
図12に示すように、第1接続配線層32において、第1電極33がビア電極を構成しているようにしてもよい。
【0083】
同様に、この
図12に示すように、第2接続配線層22において、第2電極23がビア電極を構成しているようにしてもよい。
【0084】
これにより、ビア電極である第1電極33と第2電極23とがTiO2膜を含む膜Yを介して接続されることとなる。
【0085】
なお、この第5の実施形態の半導体装置のその他の構成は、第1の実施形態の半導体装置1の構成と同様である。
【0086】
すなわち、この第5の実施形態に係る半導体装置によれば、貼り合わされる基板間の貼合界面における電極(配線)の接続不良を抑制して、歩留まりを向上することができる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1 半導体装置
22 第2接続配線層
22a 第2面
23 第2電極
24 第2バリアメタル膜
25 第2導電膜
32 第1接続配線層
32a 第1面
33 第1電極
34 第1バリアメタル膜
35 第1導電膜
M1 第1溝
M2 第2溝
X 貼合面
Y TiO2膜を含む膜