(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067900
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】緩衝材の劣化判定方法および緩衝体
(51)【国際特許分類】
G21F 5/08 20060101AFI20240510BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20240510BHJP
G21C 19/32 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G21F5/08
G21F9/36 501J
G21C19/32 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178308
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 康晴
(72)【発明者】
【氏名】加福 秀考
(72)【発明者】
【氏名】田中 峻介
(72)【発明者】
【氏名】北田 明夫
(72)【発明者】
【氏名】三井 宏暉
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 佳代
(72)【発明者】
【氏名】中河 良太
(57)【要約】
【課題】緩衝材の劣化判定方法および緩衝体において、緩衝材の劣化判定精度の向上を図る。
【解決手段】放射性物質収納容器の緩衝体に設けられる緩衝材の劣化判定方法であって、緩衝材の状態量に応じた判定値を有する劣化判定マップを作成するステップと、緩衝材の状態量の検出値を取得するステップと、検出値と劣化判定マップを用いて緩衝材の劣化度合を判定するステップと、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質収納容器の緩衝体に設けられる緩衝材の劣化判定方法であって、
前記緩衝材の状態量に応じた判定値を有する劣化判定マップを作成するステップと、
前記緩衝材の状態量の検出値を取得するステップと、
前記検出値と前記劣化判定マップを用いて前記緩衝材の劣化度合を判定するステップと、
を有する緩衝材の劣化判定方法。
【請求項2】
前記緩衝材の劣化度合は、前記緩衝材の圧縮強度の低下度合である、
請求項1に記載の緩衝材の劣化判定方法。
【請求項3】
前記劣化判定マップは、前記緩衝材の状態量に対する前記判定値としての前記緩衝材の圧縮強度を表すものであり、前記劣化判定マップを用いて前記検出値に対する前記緩衝材の圧縮強度を求め、求めた圧縮強度に基づいて劣化度合を判定する、
請求項2に記載の緩衝材の劣化判定方法。
【請求項4】
前記劣化判定マップは、前記緩衝材に残留するガス残留量に対する前記緩衝材の圧縮強度であり、前記検出値は、前記緩衝材に残留するガス残留量であり、前記ガス残留量の検出値と前記劣化判定マップとを用いて前記緩衝材の劣化度合を判定する、
請求項3に記載の緩衝材の劣化判定方法。
【請求項5】
前記ガス残留量は、前記緩衝材を熱質量重量分析処理したときに発生する全てのガスの発生量、または、特定のガスの発生量である、
請求項4に記載の緩衝材の劣化判定方法。
【請求項6】
前記劣化判定マップは、前記緩衝材における変色量に対する前記緩衝材の圧縮強度であり、前記検出値は、前記緩衝材における変色量であり、前記変色量の検出値と前記劣化判定マップとを用いて前記緩衝材の劣化度合を判定する、
請求項3に記載の緩衝材の劣化判定方法。
【請求項7】
前記変色量は、前記緩衝材における表面の色差である、
請求項6に記載の緩衝材の劣化判定方法。
【請求項8】
前記劣化判定マップは、前記緩衝材における酸濃度に対する前記緩衝材の圧縮強度であり、前記検出値は、前記緩衝材における酸濃度であり、前記酸濃度の検出値と前記劣化判定マップとを用いて前記緩衝材の劣化度合を判定する、
請求項3に記載の緩衝材の劣化判定方法。
【請求項9】
中空形状をなして放射性物質収納容器の外側に設けられる支持部材と、
前記支持部材の内部に配置されて変形することで衝撃を吸収する緩衝材と、
前記支持部材に設けられて外部から前記緩衝材を観測可能な観測窓と、
を備える緩衝体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射性物質収納容器を保護する緩衝体に設けられる緩衝材の劣化判定方法および緩衝体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力施設にて、原子炉などで発生した使用済燃料などの放射性廃棄物は、放射性物質収納容器に収納され、貯蔵施設や再処理施設などに輸送され、貯蔵または再処理される。放射性物質収納容器は、上部が開口した底付きの円筒形状をなす胴部と、胴部の上部に固定されて開口を閉止する蓋部とから構成される。そして、放射性物質収納容器は、軸方向の端部に緩衝体が設けられる。緩衝体は、放射性物質収納容器が落下、転倒、または、衝突したときに変形することで衝撃を吸収する。
【0003】
緩衝体は、支持部材の内部に緩衝材が配置されて構成される。緩衝材は、使用する材料や使用環境によっては、長期間の使用により劣化することから、緩衝材の劣化状態を監視することが好ましい。緩衝材の劣化状態を監視する技術として、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1では、緩衝材と経年劣化の性質が同等の材料からなる劣化監視部材を放射性物質収納容器の周囲に配置している。ところが、緩衝体は、支持部材の内部に緩衝材が密封状態で配置されて構成され、放射性物質収納が配置される環境が異なることから、緩衝材の劣化判定に影響をおよぼす可能性がある。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、緩衝材の劣化判定精度の向上を図る緩衝材の劣化判定方法および緩衝体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の緩衝材の劣化判定方法は、放射性物質収納容器の緩衝体に設けられる緩衝材の劣化判定方法であって、前記緩衝材の状態量に応じた判定値を有する劣化判定マップを作成するステップと、前記緩衝材の状態量の検出値を取得するステップと、前記検出値と前記劣化判定マップを用いて前記緩衝材の劣化度合を判定するステップと、を有する。
【0008】
また、本開示の緩衝体は、中空形状をなして放射性物質収納容器の外側に設けられる支持部材と、前記支持部材の内部に配置されて変形することで衝撃を吸収する緩衝材と、前記支持部材に設けられて外部から前記緩衝材を観測可能な観測窓と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の緩衝材の劣化判定方法および緩衝体によれば、緩衝材の劣化判定精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、放射性物質収納容器の一部を破断した斜視図である。
【
図2】
図2は、緩衝体が装着された放射性物質収納容器を表す平面図である。
【
図3】
図3は、緩衝体が装着された放射性物質収納容器の縦置き状態を表す正面図である。
【
図4】
図4は、緩衝体が装着された放射性物質収納容器の横置き状態を表す正面図である。
【
図5】
図5は、緩衝体の内部構造を表す断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の緩衝材の劣化判定方法を表すフローチャートである。
【
図7】
図7は、ガス残留量に対する圧縮強度を表す劣化判定マップである。
【
図8】
図8は、第2実施形態の緩衝材の劣化判定方法で使用する緩衝体の正面図である。
【
図10】
図10は、緩衝材の劣化判定方法を説明するための概略図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の緩衝材の劣化判定方法を表すフローチャートである。
【
図12】
図12は、色差に対する圧縮強度を表す劣化判定マップである。
【
図13】
図13は、第3実施形態の緩衝材の劣化判定方法で使用する緩衝体の要部を表す断面図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態の緩衝材の劣化判定方法を表すフローチャートである。
【
図15】
図15は、pHに対する劣化度を表す第1劣化判定マップである。
【
図16】
図16は、劣化度に対する圧縮強度を表す第2劣化判定マップである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
[第1実施形態]
<放射性物質収納容器>
図1は、第1実施形態の放射性物質収納容器の一部を破断した斜視図である。
【0013】
図1に示すように、放射性物質収納容器としてのキャスク11は、胴部12と、蓋部13とを備える。胴部12は、容器本体21を有する。容器本体21は、筒状(本実施形態では、円筒形状)をなし、上端に開口部22が形成され、下端が閉塞される。容器本体21は、内部にキャビティ23を有し、キャビティ23にバスケット24が設けられる。バスケット24は、放射性物質(例えば、使用済燃料集合体)を独立して収納可能な複数のセル25が設けられる。容器本体21は、γ線遮蔽機能を有する炭素鋼製の鍛造品であるが、炭素鋼の代わりにステンレス鋼を用いることもできる。また、容器本体21は、球状黒鉛鋳鉄や炭素鋼鋳鋼などの鋳造品を用いることもできる。
【0014】
胴部12は、容器本体21の外周面に所定の隙間を開けて外筒26が配設される。容器本体21は、外周面と外筒26の内周面との間に熱伝導を行う銅製の伝熱フィン27が周方向に複数設けられる。容器本体21は、外筒26と伝熱フィン27とで囲まれる空間部に、水素を多く含有する高分子材料であって中性子遮蔽機能を有するボロンまたはボロン化合物を含有したレジン(中性子遮蔽体)28が設けられる。
【0015】
胴部12は、容器本体21の閉塞された下端の下側に突出する底部29が設けられる。底部29は、容器本体21の外径よりも小さい寸法に形成される。底部29は、容器本体21の閉塞された下端とで囲まれる空間部を有し、空間部にレジン(中性子遮蔽体)が設けられる。
【0016】
胴部12は、容器本体21にキャスク11を吊上げるためのトラニオン30が設けられる。トラニオン30は、容器本体21から外筒26を貫通して設けられ、キャスク11において最も外周に突出する。
【0017】
蓋部13は、容器本体21の開口部22に設けられ、開口部22を閉塞して容器本体21(胴部12)を密閉する。蓋部13は、一次蓋31と二次蓋32とを含んで構成される。一次蓋31は、γ線を遮蔽する炭素鋼やステンレス鋼を材料として円盤形状に形成される。二次蓋32は、一次蓋31を覆ってキャスク11の外側に表れるもので、一次蓋31と同様に、γ線を遮蔽する炭素鋼やステンレス鋼を材料として円盤形状に形成される。一次蓋31と二次蓋32との間は、レジン(中性子遮蔽体)28が設けられていてもよい。また、蓋部には、三次蓋を設ける場合もある。
【0018】
一次蓋31は、容器本体21の開口部22に形成された第一段部22aに対し、炭素鋼やステンレス鋼を材料とするボルト(図示せず)により固定され、容器本体21に取付けられる。二次蓋32は、容器本体21の開口部22に形成された第二段部22bに対して、炭素鋼やステンレス鋼を材料とするボルト(図示せず)により固定され、容器本体21に取付けられる。図示しないが、一次蓋31と第一段部22aとの間および二次蓋32と第二段部22bとの間に、金属ガスケットが設けられる。金属ガスケットは、一次蓋31と第一段部22aとの間および二次蓋32と第二段部22bとの間の密封性を確保する。
【0019】
胴部12は、容器本体21の開口部22に二次蓋32の周りを囲み、キャスク11の外側に表れる筒状の上端縁22cが形成される。上端縁22cは、上面が二次蓋32の表面よりも高い位置にあって、二次蓋32の周りを囲む。上端縁22cは、上面に後述する緩衝体Aを取付けるためのボルト孔33が周方向に間隔を空けて複数設けられる。
【0020】
<緩衝体>
図2は、第1実施形態の保護装置が装着された放射性物質収納容器を表す平面図、
図3は、保護装置が装着された放射性物質収納容器の縦置き状態を表す正面図である。
【0021】
図2および
図3に示すように、キャスク11は、緩衝体41を備える。緩衝体41は、例えば、貯蔵場所である貯蔵設備に輸送されたキャスク11に取付けられる。
【0022】
キャスク11は、原子力発電設備において、例えば、使用済燃料集合体が容器本体21のバスケット24のセル25収納され、蓋部13によって密閉される。キャスク11は、例えば、原子力発電設備から貯蔵設備に輸送される。キャスク11は、輸送時に輸送用緩衝体(図示せず)が取付けられる。貯蔵場所である貯蔵設備に輸送されたキャスク11は、輸送用緩衝体が外され、蓋部13を上に向けて床Fに立てた保管状態とされ、蓋部13側に緩衝体41が取付けられる。また、キャスク11は、保管時に底部29が床Fに設置された架台37に嵌められ、または、トラニオンを固縛して架台に固定し、中心軸心Oが鉛直方向に沿った縦置き状態で保管される。
【0023】
緩衝体41は、支持部材42と、緩衝材43とを有する。
【0024】
支持部材42は、円板部51と、円筒部52とを有する。円板部51における径方向の外側に円筒部52が一体に設けられる。支持部材42は、鋼板などの金属板により中空形状をなして設けられ、所定の荷重により変形可能である。所定の荷重とは、想定する落下物の落下の荷重や、床Fに立てたキャスク11が転倒した場合の床Fに当たってキャスク11に掛かる荷重である。円板部51は、キャスク11の蓋部13の上方であって、蓋部13の外側に表れる二次蓋32の表面に沿って配置される。円板部51は、二次蓋32の表面および容器本体21の上端縁22cの表面を覆うように配置される。円板部51は、上端縁22cに設けられたボルト孔33に取付けられるボルト(図示せず)により、容器本体21に固定される。なお、蓋部として三次蓋が設けられている場合、円板部51は、蓋部13の外側に表れる三次蓋の表面に沿って配置され、三次蓋の表面および容器本体21の上端縁22cの表面を覆うように配置される。
【0025】
円筒部52は、胴部12の上端縁22cの外側を囲むように配置される。すなわち、円筒部52は、蓋部13よりも径方向の外側に配置され、胴部12よりも径方向外側に突出して設けられる。
【0026】
緩衝材43は、支持部材42の内部に配置されて支持される。緩衝材43は、所定の荷重により変形する。緩衝材43は、木材、発泡材や高分子化合物により構成される。
【0027】
図4は、保護装置が装着された放射性物質収納容器の横置き状態を表す正面図である。
【0028】
また、
図4に示すように、キャスク11は、中心軸心Oが水平方向に沿った横置き状態で保管されることもある。キャスク11は、胴部12が床Fに設置された架台38に嵌められ、中心軸心Oが鉛直方向に沿った縦置き状態で保管される。この場合、キャスク11は、中心軸心Oに沿った一方側(蓋部13側)に緩衝体41が取付けられ、中心軸心Oに沿った他方側(底部29側)に緩衝体46が取付けられる。緩衝体46は、緩衝体41とほぼ同様の構成である。
【0029】
<緩衝体の内部構造>
図5は、保護装置の内部構造を表す断面図である。
【0030】
図5に示すように、緩衝体41は、支持部材42と緩衝材43とを有し、中空形状をなす支持部材42の内部に緩衝材43が配置される。緩衝材43は、第1緩衝材43aと、第2緩衝材43bと、第3緩衝材43cとが組み合わされて構成される。第1緩衝材43aと第2緩衝材43bと第3緩衝材43cは、木材のブロックが複数組み合わされて形成される。
【0031】
第1緩衝材43aは、支持部材42の周面側部材53の外側および端面側部材54の外側に周方向に沿って設けられる。第1緩衝材43aは、緩衝体41の周方向に複数分割されたブロックにより構成される。
【0032】
第2緩衝材43bは、支持部材42の周面側部材53の外側および端面側部材54の上側に周方向に沿い、第1緩衝材43aに隣接して設けられる。第2緩衝材43bは、緩衝体41の周方向に複数分割されたブロックにより構成される。
【0033】
第3緩衝材43cは、第2緩衝材43bの内側周に沿い、第2緩衝材43bに隣接して設けられる。第3緩衝材43cは、緩衝体41の周方向に複数分割されたブロックにより構成される。
【0034】
なお、第1緩衝材43aを構成する第1材料は、緩衝材43をなす全ての材料の中で、最も圧縮強度が高く、例えば、オーク(樫)を用いる。また、第2緩衝材43bを構成する第2材料は、第1材料よりも圧縮強度が低く、例えば、レッドセダー(米杉)を用いる。また、第3緩衝材43cを構成する第3材料は、第2材料よりも圧縮強度が低く、例えば、バルサを用いる。ここで、圧縮強度とは、緩衝材43を圧縮した際のヤング係数や圧縮強さなどである。
【0035】
なお、緩衝材43は、木材のブロックに限定されるものではない。緩衝材43は、例えば、木材以外に、発泡材や高分子化合物などであってもよい。
【0036】
<緩衝材の劣化判定方法>
図6は、第1実施形態の緩衝材の劣化判定方法を表すフローチャート、
図7は、ガス残留量に対する圧縮強度を表す劣化判定マップである。
【0037】
第1実施形態の緩衝材の劣化判定方法は、
図3に示すように、キャスク11の緩衝体41に設けられる緩衝材43の劣化を判定する方法である。緩衝材の劣化判定方法は、緩衝材43の状態量に応じた判定値を有する劣化判定マップを作成するステップと、緩衝材43の状態量の検出値を取得するステップと、検出値と劣化判定マップを用いて緩衝材43の劣化度合を判定するステップとを有する。
【0038】
ここで、緩衝材43の劣化度合は、緩衝材43の圧縮強度の低下度合である。すなわち、緩衝材の劣化判定方法にて、劣化判定マップは、緩衝材43の状態量に対する判定値としての緩衝材43の圧縮強度を表すものであり、劣化判定マップを用いて検出値に対する緩衝材の圧縮強度を求め、求めた圧縮強度に基づいて劣化度合を判定する。
【0039】
図6に示すように、ステップS11にて、緩衝材43の状態量に応じた判定値を有する劣化判定マップを作成する。
図7に示すように、第1実施形態の劣化判定マップは、緩衝材43に残留するガス残留量に対する緩衝材43の圧縮強度である。劣化判定マップは、事前に実験などを実施することで作成する。
【0040】
図3に示すように、緩衝体41は、緩衝材43が支持部材42の内部に支持される。すなわち、緩衝材43は、中空形状をなす支持部材42により覆われる。支持部材42は、ステンレスなどの鋼材からなり、緩衝材43を密閉して覆うことが好ましい。緩衝材43が、木材や発泡材や高分子化合物などで構成される場合、外気に触れて経年劣化を生ずる。本実施形態の緩衝体41は、緩衝材43が支持部材42により覆われるため、経年劣化が抑制される。しかし、緩衝体41は、緩衝材43が支持部材42により密閉するように覆うと、緩衝材43が外気に触れず、主に温度を要因として経年劣化を生ずる。緩衝材43を支持部材42により密閉して覆うことで、経年劣化の主要因を温度に限定することができる。
【0041】
そこで、第1実施形態では、まず、所定の大きさの緩衝材43を単体で、所定温度で所定時間だけ加熱処理することで、緩衝材43が支持部材42内に配置された緩衝体41がキャスク11に固定されたまま、所定期間だけ経過した状態を模擬する。この場合、緩衝材43を実際の温度で実際の期間だけ加熱処理してもよいし、緩衝材43を実際の温度より高い温度で実際の期間より短い期間だけ加熱処理してもよい。所定温度で所定時間だけ加熱処理した緩衝材43を熱質量熱量分析法により、発生したガスの種類およびガスの発生量を求める。ここで、所定の大きさの緩衝材43から発生したガスの発生量は、緩衝材43に残留していたガス残留量である。この場合、ガス残留量は、ガスの種類ごとに求めると共に、全ての種類のガスの合計量を求めることが好ましい。そして、加熱温度と加熱時間を変えて加熱処理した緩衝材43を作製する。
【0042】
なお、緩衝材43が木材である場合、下記に示すガスが発生するものであり、ガスの種類ごとのガス残留量、特定した種類のガスの合計のガス残留量、全ての種類のガスの合計のガス残留量を求める。
ヒドロキシアセトン(Hydroxyacetone)
プロピオン酸(propionic acid)
2-シクロペンテン-1-オン(2-Cyclopenten-1-one)
酢酸(acetic acid)
フルフラール(furfural)
5-メチル-2-フルアルデヒド(5-Methyl-2-furaldehyde)
酪酸(butyric acid)
3-メチルシクロペンタン-1,2-ジオン(3-Methyl-1,2-cyclopentanedione)
グアイアコール(guaiacol)
メチルグアイアコール(4-methylguaiacol)
マルトール(Maltol)
フェノール(phenol)
4-エチル-2-メトキシフェノール2-(Methoxy-4-ethylphenol)
クレゾール(p-Cresol)
イソオイゲノール(cis and trance isioeugenol)
オイゲノール(eugenol)
5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-Hydroxymethylfurfural)
バニリン(vanillin)
水素(H)
水(H2O)
一酸化炭素(CO)
二酸化炭素(CO2)
メタン(CH4)
エチレン(C2H4)
エタン(C2H6)
【0043】
また、緩衝材43が硬質ウレタンフォームである場合、下記に示すガスが発生するものであり、ガスの種類ごとのガス残留量、特定した種類のガスの合計のガス残留量、全ての種類のガスの合計のガス残留量を求める。
水(H2O)
一酸化炭素(CO)
窒素(N2)
二酸化炭素(CO2)
二塩化プロピレン(propylene dichloride)
アニリン(aniline)
メチルアニリン(Methylaniline)
トリメチルシリル(Tris Phosphate)
窒素化合物
メチレンジアニリン(Methylenedianiline)
【0044】
次に、加熱温度と加熱時間を変えて加熱処理した複数の緩衝材43に対して、劣化判定試験を実施する。劣化判定試験は、緩衝材43の単軸圧縮試験により圧縮強度を取得する。単軸圧縮試験は、例えば、緩衝材43を拘束リング内に配置し、緩衝材43のみを圧縮する。この場合、拘束リングは、緩衝材43の境界条件となるため、経年劣化していない木材により製作したものとする。また、単軸圧縮試験は、安定した条件下で実施するため、常温試験とする。また、緩衝体41の温度環境化と同等の高温で試験をしてもよい。
【0045】
複数の緩衝材43に対してガス残留量が求まると共に、複数の緩衝材43に対して圧縮強度が求まると、
図7に示すように、緩衝材43のガス残留量に対する圧縮強度のキャリブレーションカーブを求めることができる。劣化判定マップは、緩衝材43のガス残留量に対する圧縮強度のキャリブレーションカーブである。劣化判定マップのキャリブレーションカーブは、ガス残留量の増加に伴って圧縮強度が増加するものである。ここで、緩衝材43を継続的に使用可能な使用限界応力が設定される。
【0046】
図6に戻り、ステップS12にて、キャスク11に設けられて緩衝体41から劣化判定する緩衝材43の試験片を取り出す。この場合、例えば、緩衝体41における支持部材42の一部を切断することで開口部を形成し、開口部から劣化判定する緩衝材43の一部を切り出す。但し、支持部材42の内部に緩衝体41と共に緩衝体41と同材料の試験片を収納しておき、この試験片を劣化判定する緩衝材43の一部として取り出してもよい。
【0047】
ステップS13にて、緩衝体41から取り出した緩衝材43の試験片を熱質量熱量分析法により、発生したガスの種類およびガスの発生量(検出値)を求める。緩衝材43の試験片から発生したガスは、緩衝材43に残留していたガスである。ステップS14にて、熱質量熱量分析法により発生したガスに対して、種類ごとのガス残留量を特定すると共に、全ての種類のガスの合計のガス残留量を特定する。
【0048】
そして、ステップS15にて、特定したガス残留量を劣化判定マップに当てはめることで、緩衝材43の試験片の圧縮強度を推定して劣化度合を判定する。すなわち、
図7に示すように、例えば、緩衝材43の試験片から発生した全ての種類のガスのガス残留量に対して、劣化判定マップのキャリブレーションカーブを用いて緩衝材43の試験片の圧縮強度を求める。求められた緩衝材43の試験片の圧縮強度と予め設定された判定値とを比較して劣化判定を行う。例えば、キャリブレーションカーブから推定した緩衝材43の試験片の圧縮強度が判定値(使用限界応力)を下回ったとき、緩衝材43が劣化していると判定する。
【0049】
なお、緩衝体41は、支持部材42の内部に異なる種類の第1緩衝材43a、第2緩衝材43b、第3緩衝材43cが組み合わされて配置される。そのため、劣化判定マップは、緩衝材43a,43b,43cごとに作成されることが好ましい。
【0050】
第1実施形態の緩衝材の劣化判定方法は、事前の実験を行うことで緩衝材43のガス残留量に対する圧縮強度の劣化判定マップを作成し、検出した緩衝材43のガス残留量を劣化判定マップに当てはめて圧縮強度を求め、圧縮強度に基づいて緩衝材43の劣化度合を判定する。緩衝材43から採取した少量の試験片を熱重量分析装置とガスクロマトグラフによりガス残留量を求めるだけで、緩衝材43の劣化度合いを高精度に判定できる。緩衝材43の劣化度合の判定は、例えば、劣化判定試験で得られた圧縮試験の結果(劣化度合)を考慮しても、キャスク11の健全性を維持できる衝撃吸収性能を有しているか、落下解析等により実施する。
【0051】
[第2実施形態]
<緩衝材>
図8は、第2実施形態の緩衝材の劣化判定方法で使用する緩衝体の正面図、
図9は、緩衝材の要部を表す断面図、
図10は、緩衝材の劣化判定方法を説明するための概略図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0052】
図8に示すように、第2実施形態の緩衝体41Aは、支持部材42と、緩衝材43と、観測窓61とを備える。
【0053】
観測窓61は、支持部材42に設けられて外部から緩衝材43を観測可能である。緩衝材43は、第1緩衝材43aと、第2緩衝材43bと、第3緩衝材43cとが組み合わされて構成される。そのため、観測窓61は、異なる圧縮強度の各緩衝材43a,43b,43cに対応して複数の観測窓61a,61b,61cが設けられる。すなわち、第1緩衝材43aに対応して観測窓61aが設けられる。第2緩衝材43bに対応して第2観測窓61bが設けられる。第3緩衝材43cに対応して第3観測窓61cが設けられる。また、各緩衝材43a,43b,43cに対して、観測窓61a,61b,61cをそれぞれ複数個設ける。なお、観測窓61a,61b,61cは、緩衝体41における最も高温となる支持部材42の位置に設けることが好ましい。
【0054】
ここで、観測窓61a,61b,61cの構造について説明するが、観測窓61a,61b,61cの構造は、ほぼ同様であることから、観測窓61aの構造について説明し、観測窓61b,61cの構造についての説明は省略する。
【0055】
図9に示すように、支持部材42は、内面と第1緩衝材43aの外面43a1との間に隙間が形成される。支持部材42は、所定の位置に開口部42aが形成される。開口部42aは、矩形状をなすが、円形状をなしていてもよい。開口部42aは、蓋部62により開閉自在である。蓋部62は、矩形状をなすが、円形状をなしていてもよい。すなわち、蓋部62は、開口部42aと同形状であることが望ましい。蓋部62は、開口部42aより大きく、開口部42aを閉止可能である。蓋部62は、ヒンジ部63により支持部材42に回動自在に支持される。この場合、蓋部62と支持部材42との間にロック機構や支持部材42の内部の水蒸気の漏れを防止するメタルシールを配置することが好ましい。
【0056】
図10に示すように、観測窓61aにて、蓋部62を開放すると、第1緩衝材43aの外面43a1が外部に露出する。第2実施形態では、第1緩衝材43a(緩衝材43)における変色量に基づいて緩衝材43の劣化度合を判定する。ここで、第1緩衝材43aにおける変色量は、測色器64を用いて検出する。測色器64は、第1緩衝材43aの外面43a1の色差ΔE*abを測定する。
【0057】
なお、観測窓61aの蓋部62を開放し、測色器64により第1緩衝材43aの色差ΔE*abを測定した後、観測窓61aの蓋部62を閉止して再び密閉状態とする。このとき、支持部材42の内部の空気を真空引きにより除去し、内部に窒素を充填することが好ましい。また、観測窓61aは、蓋部62を開放するものではなく、透明窓として開放できないように構成してもよい。
【0058】
<緩衝材の劣化判定方法>
図11は、第2実施形態の緩衝材の劣化判定方法を表すフローチャート、
図12は、色差に対する圧縮強度を表す劣化判定マップである。
【0059】
図11に示すように、ステップS21にて、緩衝材43の状態量に応じた判定値を有する劣化判定マップを作成する。
図12に示すように、第2実施形態の劣化判定マップは、緩衝材43における変色量に対する緩衝材43の圧縮強度である。劣化判定マップは、事前に実験などを実施することで作成する。
【0060】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、まず、所定の大きさの緩衝材43を単体で、所定温度で所定時間だけ加熱処理することで、緩衝材43が支持部材42内に配置された緩衝体41がキャスク11に固定されたまま、所定期間だけ経過した状態を模擬する。この場合、加熱温度や加熱時間を変えて加熱処理した緩衝材43を作製する。そして、複数の緩衝材43における表面の色差を測色器で測定する。次に、複数の緩衝材43に対して、劣化判定試験を実施する。劣化判定試験は、第1実施形態と同様である。
【0061】
複数の緩衝材43に対して色差が求まると共に、複数の緩衝材43に対して圧縮強度が求まると、
図12に示すように、緩衝材43の色差に対する圧縮強度の相関関係を求めることができる。劣化判定マップは、緩衝材43の色差に対する圧縮強度の相関関係である。劣化判定マップの相関関係は、色差の増加に伴って圧縮強度が低下するものである。ここで、緩衝材43を継続的に使用可能な使用限界応力が設定される。
【0062】
図11に戻り、ステップS22にて、観測窓61aの蓋部62を開放し、第1緩衝材43aの外面43a1を外部に露出させる。ステップS23にて、測色器64を用いて第1緩衝材43aにおける変色量、つまり、第1緩衝材43aの色差ΔE*abを測定する。ステップS24にて、第1緩衝材43aにおける色差ΔE*abを取得する。そして、ステップS25にて、特定した色差を劣化判定マップに当てはめることで、第1緩衝材43aの圧縮強度を推定して劣化度合を判定する。すなわち、
図12に示すように、例えば、第1緩衝材43aの色差に対して、劣化判定マップの相関関係を用いて第1緩衝材43aの推定される圧縮強度を求める。求められた第1緩衝材43aの圧縮強度と使用限界応力(判定値)とを比較して劣化判定を行う。例えば、第1緩衝材43aの推定された圧縮強度が使用限界応力より低いとき、第1緩衝材43aが劣化していると判定する。
【0063】
なお、緩衝体41は、支持部材42の内部に異なる種類の第1緩衝材43a、第2緩衝材43b、第3緩衝材43cが組み合わされて配置される。そのため、劣化判定マップは、緩衝材43a,43b,43cごとに作成されることが好ましい。また、緩衝材43は、支持部材42における位置ごとに温度が相違することから、劣化判定マップは、異なる位置ごとに作成されることが好ましい。
【0064】
第2実施形態の緩衝材の劣化判定方法は、事前の実験を行うことで緩衝材43の色差に対する圧縮強度の劣化判定マップを作成し、検出した緩衝材43の色差を劣化判定マップに当てはめて圧縮強度を求め、圧縮強度に基づいて緩衝材43の劣化度合を判定する。緩衝材43の変色量(色差)を求めるだけで、緩衝材43の劣化度合いを高精度に判定できる。
【0065】
[第3実施形態]
<緩衝体>
図13は、第3実施形態の緩衝材の劣化判定方法で使用する緩衝体の要部を表す断面図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0066】
図13に示すように、第3実施形態の緩衝体41Bは、支持部材42と、緩衝材43と、観測窓71とを備える。
【0067】
観測窓71は、支持部材42に設けられて外部から緩衝材43を観測可能である。観測窓61は、第2実施形態と同様に、異なる圧縮強度の各緩衝材43a,43b,43c(
図8参照)に対応して複数の観測窓71が設けられる。
【0068】
支持部材42は、内面と第1緩衝材43aの外面43a1との間に隙間が形成される。支持部材42は、所定の位置に観測窓71が設けられる。観測窓71は、透明窓72であり、所定の温度以上の耐熱性を有することが好ましい。透明窓72は、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルデンなどにより構成される。なお、観測窓71は、内面を清掃するワイパーを設けることが好ましい。
【0069】
第3実施形態では、第1緩衝材43a(緩衝材43)における第1緩衝材43aからの放出成分の酸濃度に基づいて緩衝材43の劣化度合を判定する。ここで、第1緩衝材43aにおける第1緩衝材43aからの放出成分の酸濃度は、試験紙(例えば、リトマス試験紙)73を用いて検出する。試験紙73は、透明窓72の内側に支持部材74により固定される。試験紙73は、第1緩衝材43aの外面43a1との間に隙間が形成される。試験紙73は、変色することで、第1緩衝材43aにおける第1緩衝材43aからの放出成分の酸濃度、つまり、pHを測定する。なお、第1緩衝材43aからの放出成分の酸濃度は、試験紙73ではなく、例えば、指示薬により検出してもよい。
【0070】
<緩衝体の劣化判定方法>
図14は、第3実施形態の緩衝材の劣化判定方法を表すフローチャート、
図15は、pHに対する劣化度を表す第1劣化判定マップ、
図16は、劣化度に対する圧縮強度を表す第2劣化判定マップである。
【0071】
図14に示すように、ステップS31にて、緩衝材43の状態量に応じた判定値を有する劣化判定マップを作成する。
図15および
図16に示すように、第3実施形態の劣化判定マップは、緩衝材43における緩衝材43からの放出成分の酸濃度に対する緩衝材43の圧縮強度である。劣化判定マップは、事前に実験などを実施することで作成する。
【0072】
第3実施形態では、第1実施形態と同様に、まず、所定の大きさの緩衝材43を単体で、所定温度で所定時間だけ加熱処理することで、緩衝材43が支持部材42内に配置された緩衝体41がキャスク11に固定されたまま、所定期間だけ経過した状態を模擬する。この場合、加熱温度や加熱時間を変えて加熱処理した緩衝材43を作製する。そして、複数の緩衝材43における緩衝材43からの放出成分の酸濃度(pH)を試験紙で測定すると共に、熱履歴(劣化度)を求める。次に、複数の緩衝材43に対して酸濃度(pH)が求まると共に、複数の緩衝材43に対して熱履歴(劣化度)が求まると、
図15に示すように、緩衝材43からの放出成分の酸濃度(pH)と熱履歴(劣化度)との関係を求めることができる。第1劣化判定マップは、緩衝材43からの放出成分の酸濃度(pH)に対する熱履歴(劣化度)の相関関係である。第1劣化判定マップの相関関係は、酸濃度の増加(pHの低下)に伴って熱履歴(劣化度)が増加するものである。ここで、緩衝材43を継続的に使用可能な使用限界が設定される。
【0073】
続いて、複数の緩衝材43に対して、劣化判定試験を実施する。劣化判定試験は、第1実施形態と同様である。そして、複数の緩衝材43に対して熱履歴(劣化度)が求まると共に、複数の緩衝材43に対して圧縮強度が求まると、
図16に示すように、緩衝材43の熱履歴(劣化度)対する圧縮強度の相関関係を求めることができる。第2劣化判定マップは、緩衝材43の熱履歴(劣化度)に対する圧縮強度の相関関係である。第2劣化判定マップの相関関係は、熱履歴(劣化度)の増加に伴って圧縮強度が低下するものである。ここで、緩衝材43を継続的に使用可能な使用限界応力が設定される。
【0074】
図14に戻り、ステップS32にて、試験紙73の色を測定する。ステップS33にて、試験紙73を用いてpHを取得する。ステップS34にて、第1劣化判定マップを用いて緩衝材43の熱履歴(劣化度)を推定する。そして、ステップS35にて、第2劣化判定マップを用いて第1緩衝材43aの圧縮強度を推定して劣化度合を判定する。すなわち、
図16に示すように、例えば、第1緩衝材43aのpHに対して、第1劣化判定マップおよび第2劣化判定マップを用いて第1緩衝材43aの推定される圧縮強度を求める。求められた第1緩衝材43aの圧縮強度と使用限界応力(判定値)とを比較して劣化判定を行う。例えば、第1緩衝材43aの推定された圧縮強度が使用限界応力より低いとき、第1緩衝材43aが劣化していると判定する。
【0075】
なお、緩衝体41は、支持部材42の内部に異なる種類の第1緩衝材43a、第2緩衝材43b、第3緩衝材43cが組み合わされて配置される。そのため、劣化判定マップは、緩衝材43a,43b,43cごとに作成されることが好ましい。また、緩衝材43は、支持部材42における位置ごとに温度が相違することから、劣化判定マップは、異なる位置ごとに作成されることが好ましい。
【0076】
第3実施形態の緩衝材の劣化判定方法は、事前の実験を行うことで緩衝材43からの放出成分の酸濃度に対する圧縮強度の劣化判定マップを作成し、検出した緩衝材43からの放出成分の酸濃度を劣化判定マップに当てはめて圧縮強度を求め、圧縮強度に基づいて緩衝材43の劣化度合を判定する。緩衝材43からの放出成分の酸濃度を求めるだけで、緩衝材43の劣化度合いを高精度に判定できる。
【0077】
なお、第3実施形態では、緩衝材43からの放出成分の酸濃度(pH)に対する熱履歴(劣化度)の第1劣化判定マップと、緩衝材43の熱履歴(劣化度)に対する圧縮強度の第2劣化判定マップを用いたが、緩衝材43からの放出成分の酸濃度(pH)に対する圧縮強度の劣化判定マップを用いてもよい。
【0078】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る緩衝材の劣化判定方法は、緩衝材43の状態量に応じた判定値を有する劣化判定マップを作成するステップと、緩衝材43の状態量の検出値を取得するステップと、検出値と劣化判定マップを用いて緩衝材43の劣化度合を判定するステップとを有する。
【0079】
第1の態様に係る緩衝材の劣化判定方法によれば、事前に緩衝材43の状態量に応じた判定値を有する劣化判定マップを作成しており、所望の時期に、取得した緩衝材43の状態量の検出値と劣化判定マップを用いて緩衝材43の劣化度合を判定する。その結果、保管時における緩衝材43の健全性を確認することができ、緩衝材43の健全性を維持することができる。また、緩衝材43の劣化度合を判定するとき、緩衝材43の状態量を検出するだけでよく、作業性の向上を図ることができると共に、緩衝材43の劣化判定精度の向上を図ることができる。
【0080】
第2の態様に係る緩衝材の劣化判定方法は、第1の態様に係る緩衝材の劣化判定方法であって、さらに、緩衝材43の劣化度合は、緩衝材43の圧縮強度の低下度合である。これにより、緩衝材43の劣化判定を高精度に行うことができる。
【0081】
第3の態様に係る緩衝材の劣化判定方法は、第1の態様または第2の態様に係る緩衝材の劣化判定方法であって、さらに、劣化判定マップは、緩衝材43の状態量に対する判定値としての緩衝材43の圧縮強度を表すものであり、劣化判定マップを用いて検出値に対する緩衝材43の圧縮強度を求め、求めた圧縮強度に基づいて劣化度合を判定する。これにより、緩衝材43の状態量として、緩衝材43の圧縮強度を検出すればよく、劣化判定マップを用いて緩衝材43の劣化度合を容易に判定することができる。
【0082】
第4の態様に係る緩衝材の劣化判定方法は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る緩衝材の劣化判定方法であって、さらに、劣化判定マップは、緩衝材43に残留するガス残留量に対する緩衝材43の圧縮強度であり、検出値は、緩衝材43に残留するガス残留量であり、ガス残留量の検出値と劣化判定マップとを用いて緩衝材43の劣化度合を判定する。これにより、緩衝材43の状態量として緩衝材43におけるガス残留量を検出することで、緩衝材43の劣化度合を高精度に判定することができる。
【0083】
第5の態様に係る緩衝材の劣化判定方法は、第4の態様に係る緩衝材の劣化判定方法であって、さらに、ガス残留量は、緩衝材43を熱質量重量分析処理したときに発生する全てのガスの発生量、または、特定のガスの発生量である。これにより、ガス残留量の検出作業の作業性を向上することができる。
【0084】
第6の態様に係る緩衝材の劣化判定方法は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係る緩衝材の劣化判定方法であって、さらに、劣化判定マップは、緩衝材43における変色量に対する緩衝材43の圧縮強度であり、検出値は、緩衝材43における変色量であり、変色量の検出値と劣化判定マップとを用いて緩衝材43の劣化度合を判定する。これにより、緩衝材43の状態量として緩衝材43における変色量を検出することで、緩衝材43の劣化度合を高精度に判定することができる。
【0085】
第7の態様に係る緩衝材の劣化判定方法は、第6の形態に係る緩衝材の劣化判定方法であって、さらに、変色量は、緩衝材43における表面の色差である。これにより、表面の色差の検出作業の作業性を向上することができる。
【0086】
第8の態様に係る緩衝材の劣化判定方法は、第1の態様から第7の態様のいずれか一つに係る緩衝材の劣化判定方法であって、さらに、劣化判定マップは、緩衝材43における酸濃度に対する緩衝材の圧縮強度であり、検出値は、緩衝材43における酸濃度であり、酸濃度の検出値と劣化判定マップとを用いて緩衝材43の劣化度合を判定する。これにより、緩衝材43の状態量として緩衝材43における酸濃度を検出することで、緩衝材43の劣化度合を高精度に判定することができる。
【0087】
第9の態様に係る緩衝体は、中空形状をなしてキャスク(放射性物質収納容器)11の外側に設けられる支持部材42と、支持部材42の内部に配置されて変形することで衝撃を吸収する緩衝材43と、支持部材42に設けられて外部から緩衝材43を観測可能な観測窓61,71とを備える。これにより、観測窓61,71を用いて緩衝材43の状態量を検出することができ、作業性の向上を図ることができると共に、緩衝材43の劣化判定精度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0088】
11 キャスク(放射性物質収納容器)
12 胴部
13 蓋部
31 一次蓋
32 二次蓋
41,46 緩衝体
42 支持部材
43 緩衝材
43a 第1緩衝材
43b 第2緩衝材
43c 第3緩衝材
51 円板部
52 円筒部
61 観測窓
61a 第1観測窓
61b 第2観測窓
61c 第3観測窓
62 蓋部
63 ヒンジ部
64 測色器
71 観測窓
72 透明窓
73 試験紙
74 支持部材