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特開2024-67907情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067907
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/10 20060101AFI20240510BHJP
   G06N 99/00 20190101ALI20240510BHJP
【FI】
G06F17/10 Z
G06N99/00 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178320
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 一仁
【テーマコード(参考)】
5B056
【Fターム(参考)】
5B056AA06
(57)【要約】
【課題】計算コストを抑えつつ、量子化学計算を行う。
【解決手段】実施形態の情報処理プログラムは、取得する処理と、特定する処理とをコンピュータに実行させる。取得する処理は、対象分子に含まれる第1の原子セットのポテンシャルエネルギーを算出する際に、対象分子に含まれる原子の中の、第1の原子セット以外の原子それぞれについて、原子量と、軌道数と、第1の原子セットの重心に対する距離とを取得する。特定する処理は、原子それぞれについて、取得した原子量と、軌道数と、距離とに基づき、ポテンシャルエネルギーおよびポテンシャルエネルギーの算出にかかる計算量へ与える影響の第1の最適化問題の解を取得し、ポテンシャルエネルギーの算出に用いるか否かを特定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象分子に含まれる第1の原子セットのポテンシャルエネルギーを算出する際に、前記対象分子に含まれる原子の中の、前記第1の原子セット以外の原子それぞれについて、原子量と、軌道数と、前記第1の原子セットの重心に対する距離とを取得し、
前記原子それぞれについて、取得した前記原子量と、前記軌道数と、前記距離とに基づき、前記ポテンシャルエネルギーおよび前記ポテンシャルエネルギーの算出にかかる計算量へ与える影響の第1の最適化問題の解を取得し、前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いるか否かを特定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項2】
前記第1の最適化問題は、前記原子それぞれをx、前記原子量をm、前記軌道数をo、前記距離をd、前記距離が前記ポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をfdeff、前記原子量がポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をf、前記距離が前記計算量に与える影響を示す関数をfdcost、前記軌道数が前記計算量に与える影響を示す関数をf、制約値をcostlimitとしたときに、次の式(1)で表される、
【数1】
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項3】
前記特定する処理は、前記第1の最適化問題を解いて前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いる候補となる1または複数の原子を特定し、前記候補となる1または複数の原子における、前記ポテンシャルエネルギーに与える影響への寄与度が所定の条件を満たす場合に、前記候補となる1または複数の原子を前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いる原子として特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項4】
前記特定する処理は、前記所定の条件を満たさない場合、前記原子それぞれについて、取得した前記原子量と、前記軌道数と、前記距離とに基づき、第2の最適化問題の解を取得し、
前記第2の最適化問題の解が、所定の前記寄与度を示す制約条件を満たす場合に、前記原子を前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いる原子として特定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理プログラム。
【請求項5】
前記第2の最適化問題は、前記原子それぞれをx、前記原子量をm、前記軌道数をo、前記距離をd、前記距離が前記ポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をfdeff、前記原子量がポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をf、前記距離が前記計算量に与える影響を示す関数をfdcost、前記軌道数が前記計算量に与える影響を示す関数をf、制約値をreprlimitとしたときに、次の式(2)で表される、
【数2】
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理プログラム。
【請求項6】
対象分子に含まれる第1の原子セットのポテンシャルエネルギーを算出する際に、前記対象分子に含まれる原子の中の、前記第1の原子セット以外の原子それぞれについて、原子量と、軌道数と、前記第1の原子セットの重心に対する距離とを取得し、
前記原子それぞれについて、取得した前記原子量と、前記軌道数と、前記距離とに基づき、前記ポテンシャルエネルギーおよび前記ポテンシャルエネルギーの算出にかかる計算量へ与える影響の第1の最適化問題の解を取得し、前記第1の原子セットのポテンシャルエネルギーの算出に用いるか否かを特定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
対象分子に含まれる第1の原子セットのポテンシャルエネルギーを算出する際に、前記対象分子に含まれる原子の中の、前記第1の原子セット以外の原子それぞれについて、原子量と、軌道数と、前記第1の原子セットの重心に対する距離とを取得し、
前記原子それぞれについて、取得した前記原子量と、前記軌道数と、前記距離とに基づき、前記ポテンシャルエネルギーおよび前記ポテンシャルエネルギーの算出にかかる計算量へ与える影響の第1の最適化問題の解を取得し、前記第1の原子セットのポテンシャルエネルギーの算出に用いるか否かを特定する、
処理を実行する制御部を含むことを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、創薬や新材料の発見などにおいて、対象分子の化学的な特性を把握する上で、対象分子のポテンシャルエネルギー曲線(PEC)を求める量子化学計算の重要性が高まっている。
【0003】
この量子化学計算については、古典アルゴリズムのCCSD(T)(Coupled-Cluster Singles-and-Doubles(-and-Triple))や量子コンピュータでの実行を想定した量子アルゴリズムのVQE(Variational Quantum Eigensolver)などがある。
【0004】
対象分子が高分子の場合、対象分子に含まれる原子の軌道数に応じて計算量の増加が見込まれ、現実的な時間内に対象分子全体のPECをCCSD(T)やVQEを用いて求めることは困難となる。このように対象分子が高分子の場合、着目するごく少数の原子セットを対象としてPEC等のエネルギー特性を調べることで、分子の反応性や機能を検証できることが知られている。例えば、量子化学計算を用いた分子の特性を把握する手法として、特許文献1に開示の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-55970号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hiroaki Tanaka, Michinori Akaiwa , Kenji Negoro, Eiji Kawaminami, Hisashi Mihara, Hideyoshi Fuji, Risa Okimoto, Katsutoshi Ino, Kenichiro Ishizu, Taisuke Takahashi, Design, Synthesis, and Structure-Activity Relationships Study of N-Pyrimidyl/Pyridyl-2-thiazolamine Analogues as Novel Positive Allosteric Modulators of M3 Muscarinic Acetylcholine Receptor,インターネット<URL:http://https://www.jstage.jst.go.jp/article/cpb/69/4/69_c20-00877/_article>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術においては、着目するごく少数の原子セットに関するPECを求める場合であっても、その原子セット以外の全ての原子群がPECに与える影響を算出することとなる。このような着目する原子セット以外の全ての原子群を考慮した量子化学計算は、以前として計算量が多大となることから困難であるという問題がある。
【0008】
1つの側面では、計算コストを抑えつつ、量子化学計算を行うことができる情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの案では、情報処理プログラムは、取得する処理と、特定する処理とをコンピュータに実行させる。取得する処理は、対象分子に含まれる第1の原子セットのポテンシャルエネルギーを算出する際に、対象分子に含まれる原子の中の、第1の原子セット以外の原子それぞれについて、原子量と、軌道数と、第1の原子セットの重心に対する距離とを取得する。特定する処理は、原子それぞれについて、取得した原子量と、軌道数と、距離とに基づき、ポテンシャルエネルギーおよびポテンシャルエネルギーの算出にかかる計算量へ与える影響の第1の最適化問題の解を取得し、ポテンシャルエネルギーの算出に用いるか否かを特定する。
【発明の効果】
【0010】
計算コストを抑えつつ、量子化学計算を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態にかかる情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態にかかる情報処理装置の動作例を示すフローチャートである。
図3図3は、対象分子の一例を説明する説明図である。
図4図4は、対象分子に関する演算データの一例を説明する説明図である。
図5図5は、コンピュータ構成の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態にかかる情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置を説明する。実施形態において同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態で説明する情報処理プログラム、情報処理方法および情報処理装置は、一例を示すに過ぎず、実施形態を限定するものではない。また、以下の各実施形態は、矛盾しない範囲内で適宜組みあわせてもよい。
【0013】
図1は、実施形態にかかる情報処理装置の機能構成例を示すブロック図である。図1に示すように、情報処理装置1は、通信部10と、入力部20と、表示部30と、記憶部40と、制御部50とを有する。
【0014】
通信部10は、ネットワークを介して外部装置から各種のデータを受信する。通信部10は、通信装置の一例である。たとえば、通信部10は、分子構造41、原子量・軌道数表43および制約条件44など、量子化学演算に用いる各種データを外部装置から受信してもよい。
【0015】
入力部20は、情報処理装置1の制御部50に各種の情報を入力する入力装置である。入力部20は、キーボードやマウス、タッチパネル等に対応する。たとえば、入力部20は、ユーザからの入力操作により、例えば、量子化学演算時に指定する着目原子セット42および制約条件44などを受け付ける。
【0016】
表示部30は、制御部50から出力される情報を表示する表示装置である。たとえば、表示部30は、制御部50の制御のもと、計算結果47などを表示する。
【0017】
記憶部40は、分子構造41、着目原子セット42、原子量・軌道数表43、制約条件44、表現率45、計算対象原子セット46および計算結果47を格納する。記憶部40は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子や、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置に対応する。
【0018】
分子構造41は、量子化学計算の対象とする分子(以下、対象分子)の構造を示す情報である。例えば、分子構造41は、対象分子に含まれる各原子の3次元位置を示すデータである。一例として、分子構造41は、[各原子の識別情報(id),原子の種類,3次元座標情報(X,Y,Z)]([]はリストを表す)として表記される。この分子構造41は、量子化学計算に先立ってユーザにより入力部20や記憶部40を介して事前に設定される。
【0019】
着目原子セット42は、対象分子の量子化学計算を行ってPEC等のエネルギー特性を調べる際に、着目する原子を示す。例えば、着目原子セット42は、分子構造41に含まれる原子の中で、着目する原子の識別情報(id)を列挙したデータである。この着目原子セット42は、量子化学計算に先立ってユーザにより入力部20や記憶部40を介して事前に設定される。
【0020】
原子量・軌道数表43は、H(水素)、He(ヘリウム)…等の原子の種類ごとの原子量、軌道数を示す表である。制約条件44は、最適化問題(詳細は後述する)における求解時の条件であり、探すべき変数(x)の範囲を制約する。この制約条件44は、量子化学計算に先立ってユーザにより入力部20や記憶部40を介して事前に設定される。
【0021】
表現率45は、対象分子に含まれる着目原子セット42以外の全原子群の中から抽出した、1または複数の原子がポテンシャルエネルギーにどの程度関与するかを表す指標値である。言い換えると、表現率45は、1または複数の原子がポテンシャルエネルギーに与える影響の寄与度を示す。この表現率45は、制御部50が対象分子に含まれる着目原子セット42のポテンシャルエネルギーを算出する際に、対象分子に含まれる着目原子セット42以外の全原子群の中から1または複数の原子を特定する際に算出される(詳細は後述する)。
【0022】
計算対象原子セット46は、制御部50が対象分子に含まれる着目原子セット42のポテンシャルエネルギーを算出する際に、そのポテンシャルエネルギーの算出に用いるものと特定した1または複数の原子を示す。例えば、計算対象原子セット46は、分子構造41に含まれる原子の中で、特定した原子の識別情報(id)を列挙したデータである。
【0023】
計算結果47は、制御部50の量子化学計算の結果を示すデータであり、対象分子に含まれる着目原子セット42に関するポテンシャルエネルギー曲線(PEC)などである。
【0024】
制御部50は、重心取得部51と、距離・原子量・軌道数取得部52と、原子セット特定部53と、量子化学計算部54とを有する。制御部50は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードワイヤードロジック等によって実現される。
【0025】
重心取得部51は、着目原子セット42の重心を取得する処理部である。具体的には、重心取得部51は、着目原子セット42に含まれる原子の識別情報(id)をもとに分子構造41を参照し、着目原子セット42に含まれる各原子の3次元座標を取得する。ついで、重心取得部51は、取得した各原子の3次元座標をもとに着目原子セット42の重心を算出する。
【0026】
距離・原子量・軌道数取得部52は、対象分子に含まれる原子の中の、着目原子セット42以外の原子それぞれについて、原子量と、軌道数と、着目原子セット42の重心に対する距離とを取得する処理部である。
【0027】
具体的には、距離・原子量・軌道数取得部52は、着目原子セット42以外の原子の識別情報(id)をもとに分子構造41を参照して着目原子セット42以外の原子の種類を特定する。ついで、距離・原子量・軌道数取得部52は、特定した原子の種類をもとに原子量・軌道数表43を参照することで着目原子セット42以外の原子の原子量および軌道数を取得する。また、距離・原子量・軌道数取得部52は、着目原子セット42以外の原子の識別情報(id)をもとに分子構造41を参照し、着目原子セット42以外の各原子の3次元座標を取得する。ついで、距離・原子量・軌道数取得部52は、着目原子セット42以外の各原子の3次元座標と、着目原子セット42の重心との間の距離(ユークリッド距離)を算出する。
【0028】
原子セット特定部53は、対象分子に含まれる着目原子セット42のポテンシャルエネルギーを算出する際に、対象分子に含まれる着目原子セット42以外の全原子の中からポテンシャルエネルギーの算出に用いる計算対象原子セット46を特定する処理部である。具体的には、原子セット特定部53は、着目原子セット42以外の原子それぞれの原子量、軌道数および着目原子セット42の重心に対する距離をパラメータに含む、ポテンシャルエネルギーおよびポテンシャルエネルギーの算出にかかる計算量(計算コストともよぶ)へ与える影響の最適化問題を解く。
【0029】
これにより、原子セット特定部53は、着目原子セット42以外の原子の中から、計算量が制約条件44を満たす範囲で、例えばポテンシャルエネルギーへの影響が最も大きくなる1または複数の原子を計算対象原子セット46と特定する。すなわち、原子セット特定部53は、「どの原子を量子化学計算に取り込めば高精度にポテンシャルエネルギーを求められるか」、「それが現実的な時間で解ける範囲に収まるか」の最適化問題を解くことで、制約条件44に対応する計算リソースに合わせて量子化学計算に用いる計算対象原子セット46を動的に求める。
【0030】
例えば、ポテンシャルエネルギーにおいては、着目原子セット42の重心からの距離が近い原子ほど影響が大きくなる。また、原子量が大きいほどポテンシャルエネルギーへの影響は大きくなる。計算量においては、着目原子セット42の重心からの距離が近い原子ほど解が安定するので、計算量が少なくなる。また、軌道数が大きいほど計算量は増大する。原子セット特定部53では、このような関係性をもとにした目的関数と、計算コストに関する制約条件44とによる最適化問題を解くことで、原子の特定を行う。
【0031】
具体的は、上記の最適化問題は次の式(1)のとおりである。
【数1】
【0032】
式(1)における変数、関数、制約条件44は次のとおりである。
n:対象分子に含まれる着目原子セット42以外の原子それぞれを示す添字
x:原子
d:距離
o:軌道数
m:原子量
deff:距離がエネルギーに与える影響を示す関数
:原子量がエネルギーに与える影響を示す関数
dcost:距離が計算量に与える影響を示す関数
:軌道数が計算量に与える影響を示す関数
costlimit:計算量に関する制約条件44
【0033】
関数fdeff、fは、自然科学の法則に従って決まる関数である。例えば、関数fdeff、fは、過去の実験結果などをデータベース化する、機械学習を行うなどして決めることができる。
【0034】
関数fdcost、fは、利用するソフトウエア、ハードウエアによって決まる関数である。例えば、関数fdcost、fは、プログラムコードやハードウエア仕様などから厳密に求める他、機械学習などを用いて経験則的に求めることもできる。
【0035】
原子セット特定部53は、着目原子セット42以外の原子それぞれの原子量、軌道数および着目原子セット42の重心に対する距離に基づいて式(1)に示す最適化問題を解くことで、対象分子に含まれる着目原子セット42以外の原子それぞれをポテンシャルエネルギーの算出に用いる(x=1)か否か(x=0)を特定する。原子セット特定部53は、特定した原子の識別情報(id)を計算対象原子セット46として出力する。
【0036】
また、原子セット特定部53は、上記の最適化問題(第1の最適化問題)を求解した後、次の式(2)が示す最適化問題(第2の最適化問題)の制約条件(式(2)中のs.t.以降)を追加し、原子の特定を行ってもよい。
【0037】
【数2】
【0038】
この式(2)におけるreprlimitは、表現率45に関する制約条件44である。すなわち、式(2)が示す最適化問題の制約条件における左辺は、式(1)の最適化問題を解いて得られた1または複数の原子(x=1)がポテンシャルエネルギーに与える影響の寄与度(表現率45)を示す。
【0039】
原子セット特定部53は、式(1)の最適化問題を解いて得られた1または複数の原子(x=1)を一旦候補とし、上記の式(2)を用いて表現率45を算出する。ついで、原子セット特定部53は、算出した表現率45が制約条件44(reprlimit以上)を満たす否かを判定する。制約条件44を満たす場合、原子セット特定部53は、候補とした1または複数の原子を計算対象原子セット46とする。
【0040】
これにより、情報処理装置1は、ポテンシャルエネルギーに与える影響への寄与度(表現率45)が制約条件44を満たさない原子を用いた量子化学計算が行われることを抑止、すなわち、意味を持たないポテンシャルエネルギー計算を回避できる。
【0041】
算出した表現率45が制約条件44(reprlimit以上)を満たさない場合、原子セット特定部53は、着目原子セット42以外の原子それぞれの原子量、軌道数および着目原子セット42の重心に対する距離に基づいて式(2)に示す最適化問題を解くことで、表現率45に対する制約条件44を満たし、計算コストを最小とする原子セットを計算対象原子セット46として特定する。
【0042】
量子化学計算部54は、計算対象原子セット46を用いてCCSD(T)、VQEなどの公知の量子化学計算を行い、対象分子に含まれる着目原子セット42のポテンシャルエネルギー(例えばPEC)を算出する処理部である。具体的には、量子化学計算部54は、着目原子セット42及び計算対象原子セット46に関するパラメータを分子構造41および原子量・軌道数表43より特定した上で、CCSD(T)、VQEを行うことで着目原子セット42に関するポテンシャルエネルギーを算出する。このように計算対象原子セット46を用いた量子化学計算では、対象分子に含まれる着目原子セット42以外の全ての原子群を考慮してポテンシャルエネルギーを算出する場合と比較して、計算コストを抑えることができる。
【0043】
図2は、実施形態にかかる情報処理装置の動作例を示すフローチャートである。図2に示すように、処理が開始されると、重心取得部51は、着目する原子セット(着目原子セット42)の重心を求める(S1)。
【0044】
ついで、距離・原子量・軌道数取得部52は、対象分子に含まれる着目原子セット42以外の原子それぞれについて、重心からの距離を算出する(S2)。ついで、原子セット特定部53は、算出した距離を用いてポテンシャルエネルギーへの影響(fdeff)及び計算コストへの影響(fdcost)を算出する(S3)。
【0045】
ついで、距離・原子量・軌道数取得部52は、対象分子に含まれる着目原子セット42以外の原子それぞれについて、原子量を取得する。ついで、原子セット特定部53は、取得した原子量がポテンシャルエネルギーに与える影響(f)を算出する(S4)。
【0046】
ついで、距離・原子量・軌道数取得部52は、対象分子に含まれる着目原子セット42以外の原子それぞれについて、軌道数を取得する。ついで、原子セット特定部53は、取得した軌道数が計算コストに与える影響(f)を算出する(S5)。
【0047】
ついで、原子セット特定部53は、S3~S4の算出値を用いて式(1)が示す第1の最適化問題を解き、計算対象原子セット46を取得する(S6)。
【0048】
ついで、原子セット特定部53は、式(2)を用いて計算対象原子セット46についての表現率45を取得する。ついで、原子セット特定部53は、表現率に関する制約条件44(reprlimit以上)を取得した表現率45が満たすか否かを判定する(S7)。
【0049】
表現率に関する制約条件44を満たす場合(S7:Yes)、原子セット特定部53は、計算対象原子セット46をそのまま返す(S8)。
【0050】
表現率に関する制約条件44を満たさない場合(S7:No)、原子セット特定部53は、着目原子セット42以外の原子それぞれの原子量、軌道数および着目原子セット42の重心に対する距離に基づいて式(2)に示す最適化問題を解き、計算対象原子セット46を取得する(S9)。
【0051】
ついで、原子セット特定部53は、推奨計算リソース量(fdcost(d)+f(o))と、S9で取得した計算対象原子セット46とを返す(S10)。
【0052】
S8、S10についで、量子化学計算部54は、計算対象原子セット46を用いて量子化学計算を行い(S11)、対象分子に含まれる着目原子セット42のポテンシャルエネルギー(例えばPEC)を算出して処理を終了する。
【0053】
(実施例)
ここで、図3図4を参照して上記の実施形態における具体的な実施例を説明する。図3は、対象分子の一例を説明する説明図である。図4は、対象分子に関する演算データの一例を説明する説明図である。
【0054】
図3に示すように、実施例では、アラニン(CNO)を対象分子100とする。また、実施例では、対象分子100におけるC-Oを着目原子セット101とする。
【0055】
対象分子100の分子構造41は、例えば[(0,H,(x0,y0、z0)),…,(4,N,(x1,y1、z1),…,(8,O,(x6,y6、z6))…]とする。軌道数は、H->2、C->8、N->9、O->10とする。原子量は、H->1.0、C->12.0、N->14.0、O->16.0とする。
【0056】
また、最適化問題に含まれる各関数は、fdeff(d)=1/d^2、f(m)=m、f(o)=o、fdcost(d)=d^2とする。制約条件は、costlimit=25、reprlimit=0.8とする。
【0057】
図4に示すように、距離・原子量・軌道数取得部52は、着目原子セット101の重心102を求める。具体的には、距離・原子量・軌道数取得部52は、分子構造41を参照してC、Oの3次元座標を取得し、C-Oの距離を求める。ついで、距離・原子量・軌道数取得部52は、C-Oの距離に対し、C、Oそれぞれの原子量で重み付けをした中点を重心102とする。
【0058】
ついで、距離・原子量・軌道数取得部52は、分子構造41を参照して得られた3次元座標をもとに、着目原子セット101(C-O)の重心102と、各原子(H、N、O)との距離を求める。原子セット特定部53は、求めた距離、原子量、軌道数をもとに、ポテンシャルエネルギーへの影響(fdeff、f)、計算コストへの影響(fdcost、f)を求める。
【0059】
原子セット特定部53は、演算データ(図4の左表)を用いて式(1)が示す第1の最適化問題を解く。これにより、原子セット特定部53は、[O,H,H](わかりやすさのためidではなく原子名で記述)を特定する。例えば、特定した原子にかかる計算コストは、(4+10)+(2+9)=25である。また、特定した原子にかかる表現率45は、(0.11+1)×2+(0.25+16)/32.5325=0.568である。なお、32.5325は、演算データのfdeff、fを全て足す(0.11+0.0625+0.11+0.25+1+1+14+16)ことで求めたものである。
【0060】
ここで、表現率45の値である0.568は、制約条件(reprlimit=0.8以上)を満たしていない。このため、原子セット特定部53は、演算データ(図4の左表)を用いて式(2)が示す第2の最適化問題を解く。これにより、原子セット特定部53は、[O,N](わかりやすさのためidではなく原子名で記述)を特定する。例えば、特定した原子にかかる計算コストは、(4+10)+(9+9)=32である。また、特定した原子にかかる表現率45は、(0.11+14)+(0.25+16)/32.5325=0.9332である。原子セット特定部53は、特定した[O,N]と、計算コスト(推奨計算リソース量)を返す。
【0061】
これにより、量子化学計算部54では、特定した[O,N]を用いて対象分子100に含まれる着目原子セット101のポテンシャルエネルギー(例えばPEC)を算出する。
【0062】
ここで、原子セット特定部53は、計算コスト(推奨計算リソース量)を表示部30などに表示出力してユーザに提示してもよい。ユーザは、提示された計算コストを確認したうえで、特定した原子([O,N])を用いた量子化学計算の実行を入力部20を介して指示する。量子化学計算部54は、このユーザの指示に基づき、特定した原子([O,N])を用いた量子化学計算を実行してもよい。
【0063】
以上のように、情報処理装置1は、対象分子100に含まれる着目原子セット101のポテンシャルエネルギーを算出する際に、対象分子100に含まれる原子の中の、着目原子セット101以外の原子それぞれについて、原子量と、軌道数と、着目原子セット101の重心102に対する距離とを取得する。情報処理装置1は、着目原子セット101以外の原子それぞれについて、取得した原子量と、軌道数と、重心102とに基づき、ポテンシャルエネルギーおよびポテンシャルエネルギーの算出にかかる計算量へ与える影響の第1の最適化問題の解を取得し、ポテンシャルエネルギーの算出に用いるか否かを特定する。
【0064】
これにより、情報処理装置1は、対象分子100に含まれる着目原子セット101以外の原子の中から、着目原子セット101のポテンシャルエネルギーの算出に用いる原子として、例えば、そのポテンシャルエネルギーへの影響が大きく、かつ、ポテンシャルエネルギーの算出にかかる計算量を少なく抑えることができる原子を特定できる。このため、情報処理装置1は、例えば、着目原子セット101以外の全ての原子群を考慮して着目原子セット101のポテンシャルエネルギーを算出する場合と比較して、計算コストを抑えることができる。また、情報処理装置1は、ポテンシャルエネルギーへの影響が大きい原子をポテンシャルエネルギーの算出に用いることから、このように計算コストを抑えるとともに、ポテンシャルエネルギーの算出精度が劣化することを抑止できる。
【0065】
また、情報処理装置1は、第1の最適化問題を解いてポテンシャルエネルギーの算出に用いる候補となる1または複数の原子を特定する。そして、情報処理装置1は、候補となる1または複数の原子における、ポテンシャルエネルギーに与える影響への寄与度(表現率)が所定の条件を満たす場合に、候補となる1または複数の原子をポテンシャルエネルギーの算出に用いる原子として特定する。これにより、情報処理装置1は、ポテンシャルエネルギーに与える影響への寄与度(表現率)が所定の条件を満たさない原子がポテンシャルエネルギーの算出に用いる原子として特定されることを抑止できる。
【0066】
また、情報処理装置1は、寄与度(表現率)が所定の条件を満たさない場合、着目原子セット101以外の原子それぞれについて、取得した原子量と、軌道数と、距離とに基づき、所定の寄与度を制約条件とする第2の最適化問題を解いてポテンシャルエネルギーの算出に用いるか否かを特定する。これにより、情報処理装置1は、着目原子セット101以外の原子それぞれについて、第1の最適化問題を解いて得られた原子の寄与度(表現率)が所定の条件を満たさない場合、所定の寄与度を制約条件とする第2の最適化問題を解いてポテンシャルエネルギーの算出に用いる原子を特定することができる。
【0067】
なお、図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0068】
また、情報処理装置1の制御部50で行われる重心取得部51、距離・原子量・軌道数取得部52、原子セット特定部53および量子化学計算部54の各種処理機能は、CPU(またはMPU、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部または任意の一部を実行するようにしてもよい。また、各種処理機能は、CPU(またはMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行されるプログラム上、またはワイヤードロジックによるハードウエア上で、その全部または任意の一部を実行するようにしてもよいことは言うまでもない。また、情報処理装置1で行われる各種処理機能は、クラウドコンピューティングにより、複数のコンピュータが協働して実行してもよい。
【0069】
ところで、上記の実施形態で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをコンピュータで実行することで実現できる。そこで、以下では、上記の実施形態と同様の機能を有するプログラムを実行するコンピュータ構成(ハードウエア)の一例を説明する。図5は、コンピュータ構成の一例を説明する説明図である。
【0070】
図5に示すように、コンピュータ200は、各種演算処理を実行するCPU201と、データ入力を受け付ける入力装置202と、モニタ203と、スピーカー204とを有する。また、コンピュータ200は、記憶媒体からプログラム等を読み取る媒体読取装置205と、各種装置と接続するためのインタフェース装置206と、有線または無線により外部機器と通信接続するための通信装置207とを有する。また、情報処理装置1は、各種情報を一時記憶するRAM208と、ハードディスク装置209とを有する。また、コンピュータ200内の各部(201~209)は、バス210に接続される。
【0071】
ハードディスク装置209には、上記の実施形態で説明した機能構成(例えば重心取得部51、距離・原子量・軌道数取得部52、原子セット特定部53および量子化学計算部54)における各種の処理を実行するためのプログラム211が記憶される。また、ハードディスク装置209には、プログラム211が参照する各種データ212が記憶される。入力装置202は、例えば、操作者から操作情報の入力を受け付ける。モニタ203は、例えば、操作者が操作する各種画面を表示する。インタフェース装置206は、例えば印刷装置等が接続される。通信装置207は、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークと接続され、通信ネットワークを介した外部機器との間で各種情報をやりとりする。
【0072】
CPU201は、ハードディスク装置209に記憶されたプログラム211を読み出して、RAM208に展開して実行することで、上記の機能構成(例えば重心取得部51、距離・原子量・軌道数取得部52、原子セット特定部53および量子化学計算部54)に関する各種の処理を行う。なお、プログラム211は、ハードディスク装置209に記憶されていなくてもよい。例えば、コンピュータ200が読み取り可能な記憶媒体に記憶されたプログラム211を読み出して実行するようにしてもよい。コンピュータ200が読み取り可能な記憶媒体は、例えば、CD-ROMやDVDディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の可搬型記録媒体、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、ハードディスクドライブ等が対応する。また、公衆回線、インターネット、LAN等に接続された装置にこのプログラム211を記憶させておき、コンピュータ200がこれらからプログラム211を読み出して実行するようにしてもよい。
【0073】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0074】
(付記1)対象分子に含まれる第1の原子セットのポテンシャルエネルギーを算出する際に、前記対象分子に含まれる原子の中の、前記第1の原子セット以外の原子それぞれについて、原子量と、軌道数と、前記第1の原子セットの重心に対する距離とを取得し、
前記原子それぞれについて、取得した前記原子量と、前記軌道数と、前記距離とに基づき、前記ポテンシャルエネルギーおよび前記ポテンシャルエネルギーの算出にかかる計算量へ与える影響の第1の最適化問題の解を取得し、前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いるか否かを特定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【0075】
(付記2)前記第1の最適化問題は、前記原子それぞれをx、前記原子量をm、前記軌道数をo、前記距離をd、前記距離が前記ポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をfdeff、前記原子量がポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をf、前記距離が前記計算量に与える影響を示す関数をfdcost、前記軌道数が前記計算量に与える影響を示す関数をf、制約値をcostlimitとしたときに、上記の式(1)で表される、
ことを特徴とする付記1に記載の情報処理プログラム。
【0076】
(付記3)前記特定する処理は、前記第1の最適化問題を解いて前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いる候補となる1または複数の原子を特定し、前記候補となる1または複数の原子における、前記ポテンシャルエネルギーに与える影響への寄与度が所定の条件を満たす場合に、前記候補となる1または複数の原子を前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いる原子として特定する、
ことを特徴とする付記1に記載の情報処理プログラム。
【0077】
(付記4)前記特定する処理は、前記所定の条件を満たさない場合、前記原子それぞれについて、取得した前記原子量と、前記軌道数と、前記距離とに基づき、所定の前記寄与度を制約条件とする第2の最適化問題の解を取得し、
前記第2の最適化問題の解が、所定の前記寄与度を示す制約条件を満たす場合に、前記原子を前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いる原子として特定する、
ことを特徴とする付記3に記載の情報処理プログラム。
【0078】
(付記5)前記第2の最適化問題は、前記原子それぞれをx、前記原子量をm、前記軌道数をo、前記距離をd、前記距離が前記ポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をfdeff、前記原子量がポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をf、前記距離が前記計算量に与える影響を示す関数をfdcost、前記軌道数が前記計算量に与える影響を示す関数をf、制約値をreprlimitとしたときに、上記の式(2)で表される、
ことを特徴とする付記4に記載の情報処理プログラム。
【0079】
(付記6)対象分子に含まれる第1の原子セットのポテンシャルエネルギーを算出する際に、前記対象分子に含まれる原子の中の、前記第1の原子セット以外の原子それぞれについて、原子量と、軌道数と、前記第1の原子セットの重心に対する距離とを取得し、
前記原子それぞれについて、取得した前記原子量と、前記軌道数と、前記距離とに基づき、前記ポテンシャルエネルギーおよび前記ポテンシャルエネルギーの算出にかかる計算量へ与える影響の第1の最適化問題の解を取得し、前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いるか否かを特定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【0080】
(付記7)前記第1の最適化問題は、前記原子それぞれをx、前記原子量をm、前記軌道数をo、前記距離をd、前記距離が前記ポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をfdeff、前記原子量がポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をf、前記距離が前記計算量に与える影響を示す関数をfdcost、前記軌道数が前記計算量に与える影響を示す関数をf、制約値をcostlimitとしたときに、上記の式(1)で表される、
ことを特徴とする付記6に記載の情報処理方法。
【0081】
(付記8)前記特定する処理は、前記第1の最適化問題を解いて前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いる候補となる1または複数の原子を特定し、前記候補となる1または複数の原子における、前記ポテンシャルエネルギーに与える影響への寄与度が所定の条件を満たす場合に、前記候補となる1または複数の原子を前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いる原子として特定する、
ことを特徴とする付記6に記載の情報処理方法。
【0082】
(付記9)前記特定する処理は、前記所定の条件を満たさない場合、前記原子それぞれについて、取得した前記原子量と、前記軌道数と、前記距離とに基づき、所定の前記寄与度を制約条件とする第2の最適化問題の解を取得し、
前記第2の最適化問題の解が、所定の前記寄与度を示す制約条件を満たす場合に、前記原子を前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いる原子として特定する、
ことを特徴とする付記8に記載の情報処理方法。
【0083】
(付記10)前記第2の最適化問題は、前記原子それぞれをx、前記原子量をm、前記軌道数をo、前記距離をd、前記距離が前記ポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をfdeff、前記原子量がポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をf、前記距離が前記計算量に与える影響を示す関数をfdcost、前記軌道数が前記計算量に与える影響を示す関数をf、制約値をreprlimitとしたときに、上記の式(2)で表される、
ことを特徴とする付記9に記載の情報処理方法。
【0084】
(付記11)対象分子に含まれる第1の原子セットのポテンシャルエネルギーを算出する際に、前記対象分子に含まれる原子の中の、前記第1の原子セット以外の原子それぞれについて、原子量と、軌道数と、前記第1の原子セットの重心に対する距離とを取得し、
前記原子それぞれについて、取得した前記原子量と、前記軌道数と、前記距離とに基づき、前記ポテンシャルエネルギーおよび前記ポテンシャルエネルギーの算出にかかる計算量へ与える影響の第1の最適化問題の解を取得し、前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いるか否かを特定する、
処理を実行する制御部を含むことを特徴とする情報処理装置。
【0085】
(付記12)前記第1の最適化問題は、前記原子それぞれをx、前記原子量をm、前記軌道数をo、前記距離をd、前記距離が前記ポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をfdeff、前記原子量がポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をf、前記距離が前記計算量に与える影響を示す関数をfdcost、前記軌道数が前記計算量に与える影響を示す関数をf、制約値をcostlimitとしたときに、上記の式(1)で表される、
ことを特徴とする付記11に記載の情報処理装置。
【0086】
(付記13)前記特定する処理は、前記第1の最適化問題を解いて前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いる候補となる1または複数の原子を特定し、前記候補となる1または複数の原子における、前記ポテンシャルエネルギーに与える影響への寄与度が所定の条件を満たす場合に、前記候補となる1または複数の原子を前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いる原子として特定する、
ことを特徴とする付記11に記載の情報処理装置。
【0087】
(付記14)前記特定する処理は、前記所定の条件を満たさない場合、前記原子それぞれについて、取得した前記原子量と、前記軌道数と、前記距離とに基づき、所定の前記寄与度を制約条件とする第2の最適化問題の解を取得し、
前記第2の最適化問題の解が、所定の前記寄与度を示す制約条件を満たす場合に、前記原子を前記ポテンシャルエネルギーの算出に用いる原子として特定する、
ことを特徴とする付記13に記載の情報処理装置。
【0088】
(付記15)前記第2の最適化問題は、前記原子それぞれをx、前記原子量をm、前記軌道数をo、前記距離をd、前記距離が前記ポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をfdeff、前記原子量がポテンシャルエネルギーに与える影響を示す関数をf、前記距離が前記計算量に与える影響を示す関数をfdcost、前記軌道数が前記計算量に与える影響を示す関数をf、制約値をreprlimitとしたときに、上記の式(2)で表される、
ことを特徴とする付記14に記載の情報処理装置。
【符号の説明】
【0089】
1…情報処理装置
10…通信部
20…入力部
30…表示部
40…記憶部
41…分子構造
42…着目原子セット
43…原子量・軌道数表
44…制約条件
45…表現率
46…計算対象原子セット
47…計算結果
50…制御部
51…重心取得部
52…距離・原子量・軌道数取得部
53…原子セット特定部
54…量子化学計算部
100…対象分子
101…着目原子セット
102…重心
200…コンピュータ
201…CPU
202…入力装置
203…モニタ
204…スピーカー
205…媒体読取装置
206…インタフェース装置
207…通信装置
208…RAM
209…ハードディスク装置
210…バス
211…プログラム
212…各種データ
図1
図2
図3
図4
図5