(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067909
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】脱臭システム、脱臭塔の監視ユニット及び活性炭消費量監視方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/014 20060101AFI20240510BHJP
B01D 53/52 20060101ALI20240510BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61L9/014 ZAB
B01D53/52
B01D53/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178324
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】307027131
【氏名又は名称】株式会社一芯
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】濱口 正明
(72)【発明者】
【氏名】濱口 学
(72)【発明者】
【氏名】尾縣 克博
【テーマコード(参考)】
4C180
4D002
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB03
4C180CB04
4C180CC04
4C180EA14X
4C180EA58X
4C180HH05
4C180KK01
4C180LL20
4D002AA03
4D002AC04
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA04
4D002BA16
4D002DA37
4D002DA41
4D002EA02
4D002GA02
4D002GB20
(57)【要約】
【課題】臭気成分の吸着剤である活性炭に関するランニングコストの低減に寄与することが可能な脱臭システムの提供を課題とする。
【解決手段】複数の臭気成分を含有するガスを脱臭する脱臭塔と、ガス検知器と、監視装置とを備えている。脱臭塔は吸着層を有し、吸着層はガスの臭気成分を吸着する活性炭を搭載し、ガス検知器は、脱臭塔に流入する前記ガスにおける第1の臭気成分の濃度測定値を出力する。監視装置は、所定の時間間隔で、濃度測定値を入力し、第1の臭気成分による第1の活性炭消費量を算出するとともに、第1の活性炭消費量、ガスの臭気成分含有比率を用い、ガス検知器の検出外臭気成分による準活性炭消費量を算出し、第1の活性炭消費量、準活性炭消費量から活性炭消費変化量を監視する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の臭気成分を含有するガスを脱臭する脱臭塔と、ガス検知器と、監視装置とを備え、
前記脱臭塔は吸着層を有し、
前記吸着層は前記ガスの臭気成分を吸着する活性炭を搭載し、
前記ガス検知器は、前記脱臭塔に流入する前記ガスにおける第1の臭気成分の濃度測定値を出力し、
前記監視装置は、所定の時間間隔で、
前記濃度測定値を入力し、前記第1の臭気成分による第1の活性炭消費量を算出するとともに、
前記第1の活性炭消費量、前記ガスの臭気成分含有比率を用い、前記ガス検知器の検出外臭気成分による準活性炭消費量を算出し、
前記第1の活性炭消費量、前記準活性炭消費量から、前記吸着層の活性炭消費変化量を監視することを特徴とする脱臭システム。
【請求項2】
前記監視装置は、前記活性炭消費変化量から、前記所定の時間間隔の前記吸着層に搭載された前記活性炭における飽和領域の長さの変化量を算出することを特徴とする請求項1記載の脱臭システム。
【請求項3】
前記監視装置は、前記飽和領域の長さの前記変化量を積算し、前記吸着層内の前記活性炭における前記飽和領域の全長を算出し、前記飽和領域の全長が閾値以上となった時点で、警告を発することを特徴とする請求項1又は2記載の脱臭システム。
【請求項4】
複数の臭気成分を含有するガスを活性炭により脱臭する脱臭塔の監視ユニットであり、
前記監視ユニットはガス検知器と、監視装置とを備え、
前記監視装置は、前記ガスに含有される臭気成分含有比率を保存し、
前記ガス検知器は、前記ガスにおける第1の臭気成分の濃度測定値を出力し、
前記監視装置は、所定の時間間隔で、前記濃度測定値を入力し、前記活性炭の前記第1の臭気成分により消費された第1の活性炭消費量を算出するとともに、
前記第1の活性炭消費量、前記ガスに含まれる前記臭気成分の含有比率を用い、前記活性炭の前記ガス検知器の検出外臭気成分による準活性炭消費量を算出し、
前記第1の活性炭消費量、前記準活性炭消費量から、前記活性炭の活性炭消費変化量を算出することを特徴とする。
【請求項5】
複数の臭気成分を含有するガスを脱臭する脱臭塔の吸着層に搭載された活性炭の消費量を監視する方法であり、
所定の時間間隔で、
ガス検知器により計測された前記ガスが含有する第1の臭気成分の濃度測定値を取得するステップ1と、
前記濃度測定値から、前記活性炭に吸着された前記第1の臭気成分の吸着質量を算出するステップ2と、
前記第1の臭気成分の前記吸着質量と前記第1の臭気成分の平衡吸着量とから、前記第1の臭気成分による第1の活性炭消費量を算出するステップ3と、
前記第1の活性炭消費量と、前記ガスに含まれる前記臭気成分のそれぞれの含有比率及び平衡吸着量とから、前記ガス検知器の検出外である検出外臭気成分のそれぞれの準活性炭消費量を算出するステップ4と、
第1の活性炭消費量と、前記検出外臭気成分のそれぞれの前記準活性炭消費量を総和することにより活性炭消費変化量を算出するステップ5と、
前記活性炭消費変化量と、前記吸着層の断面積と活性炭充填密度から飽和領域の変化量を算出するステップ6と、
算出された前記飽和領域の変化量を積算し、前記飽和領域の長さを算出するステップ7と、
を繰り返すことを特徴とする活性炭消費量監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の臭気成分を含有する臭気性ガスを脱臭処理する脱臭システム、脱臭塔の監視ユニット及び脱臭塔の活性炭消費量監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設、屎尿処理施設、ゴミ処理施設等から排出されるガスには硫化水素等の臭気成分が含まれている。このような排ガスを脱臭処理する方法として、乾式脱臭法や、湿式脱臭法が知られている。
乾式脱臭法は、脱臭塔内に活性炭層を設け、臭気物質を活性炭に吸着させる方法(活性炭吸着法)が広く採用されている。
湿式脱臭法は、脱臭塔内で薬液を循環させ、薬液と臭気成分とを反応させることにより化学的に臭気成分を除去する方法である。湿式脱臭法においても後段に活性炭層を備えた脱臭塔をさらに設け、乾式脱臭法と組み合わせることにより、臭気成分の除去効率をさらに高めることがある。
【0003】
活性炭吸着法は、活性炭表面や細孔に臭気成分を捕獲することで脱臭を行うため、活性炭層が破過(すなわち許容透過濃度を超えてそれ以上臭気成分を捕獲しなくなる)と脱臭効果を得ることができなくなるため、定期的に活性炭の交換を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55-142523号公報 (第5図)
【特許文献2】特開昭52-88584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、脱臭対象の設備から排出される臭気成分の濃度(量)は変動する場合がある。臭気成分の濃度が、活性炭量の設計段階の想定より大きくなると、活性炭層の破過到達までの時間が短くなり、臭気成分が脱臭装置から排出されるリスクが大きくなる。
このような状況を想定し、活性炭の交換周期を、破過到達までの期間に対して十分な余裕を考慮して短く設定すると、臭気成分が排出されるリスクが低減するものの、未吸着の活性炭量が増加する。その結果、使用可能な活性炭を無駄に交換することになり、脱臭装置のランニングコストの増大につながる。
【0006】
本発明は、脱臭装置の、特に臭気成分の吸着剤である活性炭に関するランニングコストの低減に寄与することが可能な脱臭システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る脱臭システムは、
複数の臭気成分を含有するガスを脱臭する脱臭塔と、ガス検知器と、監視装置とを備え、
前記脱臭塔は吸着層を有し、
前記吸着層は前記ガスの臭気成分を吸着する活性炭を搭載し、
前記ガス検知器は、前記脱臭塔に流入する前記ガスにおける第1の臭気成分の濃度測定値を出力し、
前記監視装置は、所定の時間間隔で、
前記濃度測定値を入力し、前記第1の臭気成分による第1の活性炭消費量を算出するとともに、
前記第1の活性炭消費量、前記ガスの臭気成分含有比率を用い、前記ガス検知器の検出外臭気成分による準活性炭消費量を算出し、
前記第1の活性炭消費量、前記準活性炭消費量から、前記吸着層の活性炭消費変化量を監視することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る脱臭システムは、上記構成において、
前記監視装置は、前記活性炭消費変化量から、前記所定の時間間隔の前記吸着層に搭載された前記活性炭における飽和領域の長さの変化量を算出してもよい。
【0009】
このような脱臭システムとすることで、複数の臭気成分を含有するガスを脱臭する脱臭塔の吸着層に搭載された活性炭の消費量を、ガスによる消費量の変化を所定の時間間隔で、監視することができる。その結果、活性炭の消費状況、飽和領域の推移を随時把握でき、吸着層のランニングコストの低減に寄与することができる。
【0010】
また、本発明に係る脱臭システムは、上記構成において、
前記監視装置は、前記飽和領域の長さの前記変化量を積算し、前記吸着層内の前記活性炭における前記飽和領域の全長を算出し、前記飽和領域の全長が閾値以上となった時点で、警告を発することを特徴とする。
【0011】
このような脱臭システムとすることで、オペレータは警告により、活性炭の交換時期を把握することができる。
【0012】
本発明に係る監視ユニットは、
複数の臭気成分を含有するガスを活性炭により脱臭する脱臭塔の監視ユニットであり、
前記監視ユニットはガス検知器と、監視装置とを備え、
前記監視装置は、前記ガスに含有される臭気成分含有比率を保存し、
前記ガス検知器は、前記ガスにおける第1の臭気成分の濃度測定値を出力し、
前記監視装置は、所定の時間間隔で、前記濃度測定値を入力し、前記活性炭の前記第1の臭気成分により消費された第1の活性炭消費量を算出するとともに、
前記第1の活性炭消費量、前記ガスに含まれる前記臭気成分の含有比率を用い、前記活性炭の前記ガス検知器の検出外臭気成分による準活性炭消費量を算出し、
前記第1の活性炭消費量、前記準活性炭消費量から、前記活性炭の活性炭消費変化量を算出することを特徴とする。
【0013】
このような監視ユニットの構成とすることで、監視ユニットを既存の脱臭塔に適用し、臭気成分による活性炭の消費量を把握することができる。
【0014】
本発明に係る活性炭消費量監視方法は、
複数の臭気成分を含有するガスを脱臭する脱臭塔の吸着層に搭載された活性炭の消費量を監視する方法であり、
所定の時間間隔で、
ガス検知器により計測された前記ガスが含有する第1の臭気成分の濃度測定値を取得するステップ1と、
前記濃度測定値から、前記活性炭に吸着された前記第1の臭気成分の吸着質量を算出するステップ2と、
前記第1の臭気成分の前記吸着質量と前記第1の臭気成分の平衡吸着量とから、前記第1の臭気成分による第1の活性炭消費量を算出するステップ3と、
前記第1の活性炭消費量と、前記ガスに含まれる前記臭気成分のそれぞれの含有比率と平衡吸着量とから、前記ガス検知器の検出外である検出外臭気成分のそれぞれの準活性炭消費量を算出するステップ4と、
第1の活性炭消費量と、前記検出外臭気成分のそれぞれの前記準活性炭消費量を総和することにより活性炭消費変化量を算出するステップ5と、
前記活性炭消費変化量と、前記吸着層の断面積と活性炭充填密度から飽和領域の変化量を算出するステップ6と、
算出された前記飽和領域の変化量を積算し、前記飽和領域の長さを算出するステップ7と、
を繰り返すことを特徴とする。
【0015】
このような活性炭消費量監視方法によれば、ガス検知器により検知される臭気成分による活性炭の消費量と、ガス検知器の検出外臭気成分による活性炭の消費量を監視することができ、吸着層のランニングコストの低減に寄与することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、活性炭の交換時期を把握することが可能となり、その結果、脱臭システムのランニングコストの低減に寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(A)は、第1の脱臭塔1と、第2の脱臭塔2とを備える脱臭システム100の主要構成を示す模式図である。
図1(B)は監視装置18の主要構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、ガスGに含まれる臭気成分濃度分布の実測値の例を示す。
【
図3】
図3は、吸着層14内の活性炭の吸着状況を経時的に示す模式図である。
図3(A)、
図3(B)、及び
図3(C)は、それぞれ使用開始した時点、途中段階及び破過に達した時点での活性炭の吸着状況を示す。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態における脱臭装置の構成を示す。以下、
図1を参照し、本実施形態の脱臭装置の構成について説明する。
なお、以下では湿式脱臭塔(第1の脱臭塔1)と乾式脱臭塔(第2の脱臭塔2)とを組み合わせた構成について説明するが、本発明は乾式脱臭塔(第2の脱臭塔2)のみの構成についても適応可能である。
【0019】
<装置構成>
図1(A)は、湿式脱臭法を実行する第1の脱臭塔1(湿式脱臭塔)と、乾式脱臭法を実行する第2の脱臭塔2(乾式脱臭塔)とを備えている脱臭システム100の主要構成を示す模式図である。
図1(B)は監視装置18の主要構成を示すブロック図である。
図1(A)において、白矢印はガスGの流れる方向を示す。
【0020】
脱臭対象である硫化水素を臭気成分として含む臭気性ガスGは、(不図示の)施設R(屎尿処理施設等の臭気性ガス発生源)から排出され、送風機B(ブロワー)等によって所定の風量に制御され、ガス流入口13に接続されたガス流入配管3を経由して第1の脱臭塔1内に導入される。
【0021】
ガス流入配管3の上方には充填層4が設けられ、さらに充填層4の上方には薬液放出部5が設けられている。充填層4には気液接触のための公知の充填剤が充填されている。
薬液放出部5からは、例えば次亜塩素酸を含む薬液Lが充填層4に向かって放出される。ガスGは、ガス流入配管3から上方の充填層4に向かって流れ、充填層4において薬液Lと接触する。ガスGの臭気成分と薬液Lとは化学反応し、ガスGの臭気成分濃度は低下する。
【0022】
薬液Lは、充填層4でガスGと接触した後、充填層4の下方に設けられた循環薬液槽6に貯留される。
貯留された薬液Lは、ポンプ8により、配管7を経由して薬液放出部5に送られ、循環薬液槽6と液噴射部5との間で循環される。
【0023】
第1の脱臭塔1における薬液放出部5の上方には、ガスGを排出するための排出口9が設けられている。排出口9には、ガスGを第2の脱臭塔2に誘導するための連結配管10の一端側が接続されている。連結配管10の他端側は第2の脱臭塔2の流入口12に接続されている。
なお、ガスGと薬液Lとを分離するため、第1の脱臭塔1の薬液放出部5と排出口9との間に気液分離器11(デミスター)を設けてもよい。
【0024】
薬液Lによって処理されたガスGは、第1の脱臭塔1の排出口9から連結配管10を介して第2の脱臭塔2内に導入される。第2の脱臭塔2は、ガスGの残留する臭気成分を除去する。
第2の脱臭塔2の内部には、流入口12の上方に吸着層14が設けられている。吸着層14には活性炭が充填されている。
流入口12を経由して第2の脱臭塔2内に導入されたガスGは、吸着層14へと流れ、活性炭と接触する。ガスGに残留する臭気成分は、活性炭により吸着される。その結果、ガスGの臭気成分濃度はさらに低下し、ガスGは脱臭される。
【0025】
上記のように脱臭されたガスGは、第2の脱臭塔2の排出口15に接続された排気配管16を経由して、第2の脱臭塔2の外(大気)に放出される。
【0026】
なお、薬液Lは施設Rから排気されるガスGの特性に応じて適宜選択することができる。また、薬液Lを水とし、ガスGの水溶性成分や異物を除去する構成とし、第2の脱臭塔2において、残留する臭気成分を吸着層14により吸着除去してもよい。
【0027】
連結配管10の流入口12部(又は流入口12近傍)には、第1のガス検知器17が設けられており、第1のガス検知器17は第2の脱臭塔2に流入するガスGの臭気成分濃度を測定することができる。
排気配管16及びガス流入配管3には、第2のガス検知器19及び第3のガス検知器20が設けられている。第2のガス検知器19は第2の脱臭塔2から排出されるガスGの臭気成分濃度を検知し、第3のガス検知器20は第1の脱臭塔1に流入するガスGの臭気成分濃度を検知することができる。
第1のガス検知器17、第2のガス検知器19及び第3のガス検知器20により、ガスGの臭気成分の濃度を常時監視することができる。
【0028】
図1(B)に示すように、監視装置18は、記憶装置181、演算処理部182(マイコン、PC等)、IO部183(入出力部)が備えられている。
第1のガス検知器17、第2のガス検知器19及び第3のガス検知器20から出力される濃度測定値は、監視装置18に設けられたIO部183を介して演算処理部182に入力され、記憶装置181に保存される。保存されたガスGの濃度は、履歴データとしての活用も可能である。
また、監視装置18は表示部184(表示画面、警告灯等)を備えてもよい。例えば、表示部184に第1のガス検知器17、第2のガス検知器19及び第3のガス検知器20の出力値を表示させ、オペレータがガスGの濃度を監視することも可能である。
【0029】
また、第1の脱臭塔1を備えず(又は使用せず)、第2の脱臭塔2のみによりガスGを脱臭する場合、送風機Bの排気は、直接連結配管10を介して、第2の脱臭塔2内に導入してもよい。ガスGの臭気成分は、吸着層14の活性炭により吸着除去される。
【0030】
連結配管10の流入口12部に(不図示の)風速計を設けてもよい。第2の脱臭塔2に流入するガスGの風速は、風速計により計測が可能である。風速計の出力は、監視装置18に入力され、監視装置18は、連結配管10の流入口12部の断面積と風速計による計測値とから、第2の脱臭塔2に流入するガスGの風量を算出し、ガスGの風量を常時監視することが可能である。
【0031】
なお、第1の脱臭塔1と第2の脱臭塔2とが、連結配管10により気密に接続されているため、第1の脱臭塔1に流入するガスGの風量を、第2の脱臭塔2に流入するガスGの風量に等しいとしてもよい。この場合、ガス流入口13に接続されたガス流入配管3に風速計を設け、計測された風速値とガス流入配管3の断面積との積によりガスGの風量を算出することが可能である。
なお、第1の脱臭塔1に流入するガスGの風量の値は、送風機Bにより、一定の値に保持することができるため、第2の脱臭塔2に流入するガスの風量は、送風機Bの風量に等しいとして、監視装置18の記憶装置181に保存してもよい。
【0032】
なお、監視装置18は、送風機Bのファンの回転数や消費電力を取得し、送風機Bの稼働状態を監視するよう構成してもよい。例えば、予め送風機Bのファンの回転数又は消費電力と風量との相関データを取得し、監視装置18の記憶装置181に保存することで、監視装置18は、風量の変化も検知することができる。送風機Bの風量は、施設Rから発生する臭気成分の量により適宜設定してもよい。
【0033】
<臭気成分量の算出>
上記のように、監視装置18は、第2の脱臭塔2に流入するガスGの風量、及びガスGの臭気成分濃度を常時監視することができる。そのため、監視装置18は、第1のガス検知器17により検知されたガスGの臭気成分濃度及び風量から、単位時間あたりに第2の脱臭塔2に流入するガスGの臭気成分量(質量)を算出することができる。
【0034】
施設Rから排出されるガスGは、複数の臭気成分を含む。しかし、全ての臭気成分の濃度を検出するために、各臭気成分に対応する検知器を用いることは、装置コストの増大やメンテナンスの作業負担を増加させることになる。また、臭気成分の中には、検知が困難な物質もあり、このような物質を検知するためには、高額な検知器が必要となり、さらに、このような物質の濃度を常時監視することは、非常に困難である。
【0035】
そのため、第1のガス検知器17は、代表的な(第1の)臭気成分(以下、代表臭気成分と称することがある。)の濃度を計測し、その濃度を利用して、他の臭気成分の濃度を算出することにより、上記のような装置コストの増大等を回避することができる。
第1のガス検知器17は、代表臭気成分として、例えば硫化水素を検知する検知器を採用することができる。
【0036】
ガスGの各臭気成分は、臭気性ガスを排出する施設Rに依存して特徴的な濃度分布を有する。
図2は、ガスGに含まれる臭気成分濃度の実測値の例を示す。
図2は、硫化水素(H
2S)、メチルメルカプタン(CH
3SH)、硫化メチル((CH
3)
2S)、二硫化メチル(CH
3SSCH
3)が検出された例を示す。ガスGに含まれる各臭気成分は、例えば、ガスクロマトグラフィー法等を利用して、定量的に同定することができる。
なお、吸着層14で処理されるガスGの臭気成分を対象とするため、第2の脱臭塔2の流入口12で採取されたガスGが分析される。
【0037】
実測された複数の臭気成分から代表臭気成分を選択し、各臭気成分の濃度を、代表臭気成分の濃度に対する比(臭気成分含有比率又は単に含有比率と称す)で表すことができる。例えば、代表臭気成分としては、最も濃度が高く、検知器が容易に入手可能な硫化水素を選択することができる。
図2に例示する実測値から、選択された硫化水素の濃度を基準(含有比率RD=1)として規格化すると、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチルの含有比率(RD)は、それぞれ0.1、0.5、0.45となる。各臭気成分の含有比率は、施設Rによって定まる値である。
【0038】
ガスGの代表臭気成分(硫化水素)とその他の臭気成分との含有比率を求めた結果は、施設Rに対応づけて、臭気成分毎に記憶装置181に保存することができる。
監視装置18は、第1のガス検知器17からの代表臭気成分(硫化水素)の濃度計測値を入力し、記憶装置181に保有する各臭気成分の含有比率と、取得した代表臭気成分の濃度から、その他の臭気成分の濃度を算出することができる。
すなわち、全ての臭気成分に対応した検出器を設ける必要がなく、硫化水素を含む臭気性ガスGの場合、容易に入手が可能な市販の硫化水素の検出器を利用することができる。
【0039】
なお、各臭気成分に対応するガス検知器を設けることを排除するものではないが、上記のように、代表臭気成分が検知可能なガス検知器を設けることで、装置コストの低減に寄与することができる。また、例えば、電気的に中性な硫化メチルや二硫化メチルは、検知が困難であり、これらの臭気成分を常時モニター可能な検出器は、現実的には、入手不可能である。しかし、代表臭気成分とその含有比率を用いることによって、検出が困難な臭気成分の濃度も常時モニターが可能となる。
【0040】
なお、複数種類の臭気成分を検知可能なように、ガス検知器を複数設けてもよい。例えば、第1のガス検知器17は、2つのガス検知器から構成され、硫化水素を検知するガス検知器、メチルメルカプタンを検知するガス検知器から構成することを排除しない。上記のように装置コストの観点において、1つの検知器から構成することが、好適であるが、施設Rの特徴に応じて(又は顧客の要望に応じて)、代表臭気成分以外に、特に検知を要する臭気成分(例えば、第2の臭気成分等)が存在する場合、第1のガス検知器17を複数の検知器から構成してもよい。この場合、第1のガス検知器17により各臭気成分濃度を検出するサンプリング周期毎に、例えば第2の臭気成分の含有比率は実測の臭気成分濃度を用いて、RD=[第2の臭気成分濃度の実測値]/[代表臭気成分濃度の実測値]として算出し、他の臭気成分と同様に取り扱い、監視、履歴管理等してもよい。
【0041】
なお、さらに好適には、各臭気成分の分布が季節や時間帯に依存して変化することが想定される場合、変化が想定される季節等毎に各臭気成分の分布を測定し、代表臭気成分に対する各臭気成分の含有比率を監視装置18の記憶装置181に保存してもよい。監視装置18の演算処理部182は、カレンダー機能(計時機能)を用いて、各臭気成分の分布を測定した季節等の間の含有比率を補間により算出することができ、必要に応じて、臭気成分濃度の算出を、時期的変化に柔軟に対応させることも可能である。
【0042】
<吸着層中の活性炭の経時変化>
図3は、吸着層14内の活性炭の吸着状況を経時的に示す模式図である。
図3(A)は、使用開始した時点の活性炭の吸着状況を示し、
図3(B)は途中段階での活性炭の吸着状況を示し、
図3(C)は破過に達した時点での活性炭の吸着状況を示す。
図3中、縦軸(Y軸)は活性炭の吸着量を示し、横軸(X軸)は吸着層14の長手方向の位置を示す。
図3に示す例では、吸着層14の長手方向の長さ(より正確には吸着層14に搭載された全活性炭の長手方向の長さ)はZに等しい。
図3中、点線は活性炭の吸着量の位置依存性を示す。Y軸のq
0は、活性炭が吸着平衡に達した状態での吸着量を示す。ガスGは、吸着層14のX=0側から流入し、反対側のX=Z側から排出される。以下、X=0側を上流側、X=Z側を下流側と称することがある。
【0043】
図3(A)に示すように、使用開始時、すなわちガスGの吸着層14への導入を開始し、(未使用の)活性炭が、ガスGの臭気成分の吸着を開始した時点では、活性炭の吸着量は、X=0のq
0から長手方向に次第に減少し、距離Z1(X=Z1)の位置で0となる。
X=Z1からX=Z1+Z0(=Z)までの領域は、活性炭の臭気成分の吸着量は0である。吸着層14から排出されるガスGの臭気成分の濃度は0となる。
以下、吸着量がq
0から0に減少する領域を吸着領域、吸着量が0である領域を未吸着領域と称す。Z1は吸着領域の長さであり、Z0は未吸着領域の長さである。
吸着領域の活性炭は、臭気成分を吸着しているが、さらなる臭気成分の吸着が可能な状態にあり、吸着が飽和状態に達していない状態にある。未吸着領域の活性炭は、臭気成分を吸着していない状態にある。
【0044】
図3(B)に示すように、さらに活性炭による臭気成分の吸着過程が進行すると、吸着が飽和した状態に達した活性炭が増加し、X=0からX=Z2までの領域の活性炭の吸着量はq
0となる。以下、上記のように吸着量が、吸着量が飽和した(又は平衡状態の吸着量に等しい)領域を飽和領域と称す。飽和領域の活性炭は、臭気成分の吸着量が飽和し、それ以上の臭気成分の吸着ができない状態にある。X=0からX=Z2の領域の活性炭は、ガスGの臭気成分により消費されたことになる。一方、X=Z2からX=Z2+Z1の吸着領域の活性炭は、臭気成分の吸着量が飽和に達していないため、さらなる臭気成分の吸着が可能である。
なお、活性炭が消費されたとは、活性炭が臭気成分を吸着し、臭気成分の吸着が飽和状態に達し、それ以上の吸着ができなくなることを意味し、以下、活性炭消費量とは、臭気成分の吸着が飽和状態に達した活性炭の量を意味する。
【0045】
図3中、Z2は飽和領域の長さであり、Z2は活性炭消費量を反映する。
図3(B)に示すように、飽和領域(X=0~X=Z2)の下流側には吸着領域(X=Z2~X=Z2+Z1)が続き、吸着領域の下流側には未吸着領域(X=Z2+Z1~X=Z2+Z1+Z0)が続く。
図3において、吸着層14から排出されるガスGの臭気成分の濃度は0となる。
【0046】
図3(C)に示すように、さらに活性炭による臭気成分の吸着過程が進行すると、飽和領域が増加し、未吸着領域がなくなり、吸着領域の下流側端部が吸着層14の下流側端部と一致し、吸着層14の活性炭は破過状態となる。この状態において、飽和領域は長さ方向に上流側端部のX=0からX=Z2までの領域となり、吸着領域は長さ方向にX=Z2からX=Z2+Z1(=Z)までの領域となる。この状態においては吸着層14から排出されるガスGの臭気成分の濃度は0となるが、この状態の吸着層14にさらにガスGを流入させると吸着層14から排出されるガスGの臭気成分の濃度は次第に増大することになる。
従って、破過状態に達した吸着層14の活性炭は、未吸着の活性炭と交換する必要がある。
なお、吸着層14は、筐体に活性炭を収容したユニット(カートリッジ)として構成し、吸着層14そのものを交換するよう構成してもよい。
【0047】
なお、
図3は、活性炭の吸着過程を簡単に説明するための模式図であり、理想的な状況を説明するものである。そのため、例えば「排出されるガスGの臭気成分の濃度は0となる」は、濃度が実質的に0、又は0に近い値(規制値以下等)を示すことを意味するものであり、
図3の模式図は限定的に解釈されるものではない。
【0048】
<吸着層中の活性炭消費量>
吸着層14内の活性炭は、ガスGに含まれる臭気成分を吸着し、ガスGを脱臭する。
破過状態となった吸着層14の活性炭は、速やかに交換する必要がある。臭気成分の排出を防止するとともに、未吸着の活性炭の無駄な交換量を軽減し、活性炭を有効に活用するためには、吸着層14内の活性炭消費量を把握することが重要となる。
【0049】
以下に説明するように、監視装置18は、第1のガス検知器17により検出された臭気成分の濃度を利用して、吸着層14中の活性炭消費量を算出し、活性炭消費量を常時監視(又は所定のサンプリング間隔で監視)することができる。得られた活性炭消費量から
図3に示すような、吸着層14における飽和領域、吸着領域、未吸着領域の各長さを把握することができ、破過状態又は破過状態に近い状態であるか否かを判断できる。
以下、ガスGの臭気成分の濃度から活性炭消費量を算出する方法について説明する。
【0050】
臭気成分を吸着するために必要な活性炭の質量(活性炭消費量)は、吸着層14に流入した臭気成分の量(質量)に依存する。
単位時間間隔(又は、所定のサンプリング時間間隔)Δt[min]に第2の脱臭塔2に流入するガスGの体積は、ガスGの風量FV[m3/min]と時間間隔Δtとの積(FV*Δt)により算出される。ガスGの臭気成分の量(質量)M[kg]は、ガスGの臭気成分の濃度(C)と、流入したガスGの体積との積(C*FV*Δt)に比例し、容易に算出することができる。例えば、気温T[℃]において分子量mwの臭気成分質量Mは以下のように算出可能である。
M=C*mw*FV/{0.0224*(273+T)/(270)}*Δt (式1)
【0051】
なお、所定の時間間隔Δtは、非限定的な例として1分、5分、10分等適宜設定できる。また、監視装置18は、第1のガス検知器17からの検知データを、さらに短時間の間隔、例えば5秒間隔で取得(サンプリング)し、上記時間間隔Δt内で取得した検知データを平均化し、得られた濃度の平均値により臭気成分の量(質量)Mを算出してもよい。
なお、サンプリング周波数は5秒に限定するものではなく、任意に設定可能である。
【0052】
活性炭に吸着される臭気成分の量は、予め実験により取得することが可能である。(単位量当たりの)臭気成分の活性炭吸着量Y[kg/kg]は、吸着層14に流入するガスGに含まれる臭気成分の濃度Cの関数fn(C)(以下吸着関数と称す。)となる。
Y=fn(C) (式2)
関数fn(C)としては、例えば、以下に示すようにFreundlichの吸着等温式を採用し、第1のパラメータa、第2のパラメータbは予備実験により決定し、臭気成分の活性炭吸着量を決定する吸着関数を決定できる。
Y=fn(C)=a*C1/b (式2’)
吸着関数fn(C)は、監視装置18の記憶装置181に保存することができる。例えば、記憶装置181には、fn(C)の関数型を決定するパラメータ(第1のパラメータa、第2のパラメータb)を保存することができ、演算処理部182は式2’の演算式を実行するアルゴリズムにより臭気成分の活性炭吸着量Yを算出できる。
【0053】
監視装置18は取得された活性炭吸着量Yを用いて、活性炭消費量W[kg]は以下により算出することができる。
W=M/Y (式3)
所定の時間間隔Δtの上記活性炭消費量Wと、吸着層14の活性炭の充填密度BD[kg/m3]及び吸着層14の断面積S[m2]から、飽和領域の長さの増大量ΔZ2(=W/(BD*S))を得ることができる。すなわち、第1のガス検知器17により検出された臭気成分の濃度から飽和領域の増大量(変化量)ΔZ2[m]を取得し、ΔZ2を積算することで、飽和領域の長さZ2を算出し、Z2の時間的推移を監視できる。
【0054】
各臭気成分に対応して、各臭気成分の吸着量Yを実験により求めることは、装置の製造コストを大きく増大させることになる。臭気成分濃度は第1のガス検知器17で計測できるが、第1のガス検知器17が代表臭気成分(例えば硫化水素)の濃度のみを検出するよう構成されている場合、ガスGに含まれるそれ以外の臭気成分の濃度は、記憶装置181に保存された含有比率によって算出することができる。
ガスGが複数の臭気成分を含有する場合、代表臭気成分に対する活性炭消費量を算出し、得られた活性炭消費量に、全ての含有比率の総和(
図2に示す例においては1+0.1+0.5+0.45=2.05)を乗ずることで、複数の臭気成分による活性炭消費量を近似的に算出する方法が考えられる。
しかしながら、上記のような簡易的な算出方法では、各臭気成分の活性炭による吸着特性が反映されないため、算出された活性炭消費量は誤差が大きくなる。
【0055】
本発明は、算出された活性炭消費量の精度を向上させるため、それぞれの臭気成分の平衡吸着量を利用して活性炭消費量を算出する方法を提供する。
なお、各臭気成分の平衡吸着量は、臭気成分の種類(分子)及びその濃度により定まる量であり、予備実験等により取得することもできるが、既知の平衡吸着量を活用することもできる。
【0056】
以下、活性炭消費量を算出する方法について詳細に説明する。
施設Rから、脱臭対象となるn種類の複数の臭気成分Di(i=1~n)を含むガスGが発生すると仮定する。
時刻tから時刻t+Δtの間(又は、現実の運用においては離散的に、時刻t=tkから時刻tk+1=tk+Δtの間)に、吸着層14に流入する臭気成分Di(i=1~n)の質量をMDi(t)[kg]、臭気成分Diに対する活性炭の平衡吸着量をQDi[kg/kg]とする。
上記のように臭気成分Diに対する活性炭の平衡吸着量QDiは、臭気成分の種類(分子)に対応して、監視装置18の記憶装置181に予め保存しておくことができる。
【0057】
以下、第1のガス検知器17が検出する代表臭気成分を臭気成分D1(i=1)とし、臭気成分D1の濃度をC1(t)、吸着層14に流入する質量をMD1(t)とする。臭気成分D1の(第1の)活性炭吸着量Y(=Y1)については、上記のように予備実験に基づき、式2(又は式2’)により取得することができる。
【0058】
第1のガス検知器17が代表臭気成分(例えば硫化水素)の濃度のみを検出するよう構成されている場合、監視装置18は、第1のガス検知器17で検知されない他の臭気成分(検出外臭気成分)の濃度を、以下のように算出することができる。
【0059】
図2に示すようなガス分析の結果に基づき、ガスGの各臭気成分Di(i=1~n)の含有比率RDi(i=1~n)を算出する。含有比率RDi(i=1~n)は、監視装置18の記憶装置181に保存される。
なお、計算の便宜のため、代表臭気成分D1(硫化水素)の含有比率RD1をRD1=1となるよう規格化し、その他の各臭気成分の含有比率RDi(i=2~n)は、相対的な含有比率としてもよい。
例えば、
図2に示すように濃度分布を取得し、各臭気成分の濃度を代表臭気成分の濃度で除すればよい。(以下、RD1=1に規格化されている。)
第1のガス検知器17により検出された代表臭気成分D1の濃度(代表成分濃度)をC1(t)とすると、その他の各臭気成分の濃度Ci(t)は以下のようになる。
Ci(t)=RDi*C1(t) (式4)
(但し、i=1~n)
【0060】
監視装置18は、以下のように、吸着層14に流入する各臭気成分の質量を算出することができる。時刻tから時刻t+Δtの間に、吸着層14に流入する代表臭気成分D1の質量をMD1(t)とすると、各臭気成分Diの質量MDi(t)は以下のようになる。
MDi(t)=(mwi/mw1)*RDi*MD1(t) (式5)
(但し、i=1~n)
ここでmwiは、各臭気成分Diの分子量である。
【0061】
各臭気成分Diに対する平衡吸着量をQDiとし、時刻tから時刻t+Δtの間に吸着層14に流入する各臭気成分Diの質量MDi(t)と、上記平衡吸着量QDiとの比Vi(t)[kg]を以下のように定義する。
Vi(t)=MDi(t)/QDi (式7)
(但し、i=1~n)
【0062】
平衡状態においては、質量Mの臭気成分により消費される活性炭量は、平衡吸着量をQとすると、M/Qによって得られる。そのため、各臭気成分DiについてのVi(t)は、各臭気成分Diの活性炭消費量に相当する。
なお、式1~式3を用いて実測の臭気成分濃度を用いて算出した活性炭消費量W(W(t)等)と、Vi(t)とを区別するため、活性炭消費量Wを代表活性炭消費量、又は実活性炭消費量と称し、Vi(t)を準活性炭消費量又は算出活性炭消費量と称することがある。
なお、代表臭気成分D1の準活性炭消費量V1(t)は、代表臭気成分D1の代表活性炭消費量(実活性炭消費量)W1(t)に等しい。
【0063】
Vi(t)を代表臭気成分D1の質量のMD1を用いて変形すると、以下のようになる。
Vi(t)=(mwi/mw1)*RDi*MD1(t)/QDi (式8)
(但し、i=1~n)
【0064】
各臭気成分Diの準活性炭消費量Vi(t)と、代表臭気成分D1の準活性炭消費量V1(t)との比(消費量相対比)RViを以下のように定義する。
RVi=Vi(t)/V1(t) (式9)
(但し、i=1~n)
【0065】
式8と式9とにより、RViは以下の式9のようになる。
RVi=(mwi/mw1)*(RDi/RD1)*(QD1/QDi)
=(mwi/mw1)*RDi*(QD1/QDi) (式10)
(但し、i=1~n)
【0066】
平衡吸着量QDiは、臭気成分Diにより定まり、RViは、ガスGの各臭気成分Diの含有率RDiにより決定される。すなわち、各臭気成分Diについての活性炭消費量相対比(RVi)は、施設Rから排出されるガスGの特性により定まる。
そのため、活性炭消費量相対比(RVi)を、予め算出しておき、監視装置18の記憶装置181に保存することができる。
【0067】
各臭気成分Diについての準活性炭消費量Vi(t)は、式9を用いて、以下により算出できる。
Vi(t)=RVi*V1(t) (式11)
(但し、i=1~n)
【0068】
V1(t)として、代表臭気成分D1に対して、時刻tからt+Δtにおいて、実測の濃度を用いて式1、式2(式2’)及び式3によって取得された実活性炭消費量W1(t)(=W)を採用し、その他の各臭気成分の準活性炭消費量Viを以下により算出する。
Vi(t)=RVi*W1(t) (式12)
(但し、i=1~n)
ここで、i=1においては、V1(t)=W1(t)となる。
式12に式10を適用すると、Vi(t)は以下のようになる。
Vi(t)=(mwi/mw1)*RDi*(QD1/QDi)*W1(t) (式12’)
(但し、i=1~n)
【0069】
代表臭気成分以外の活性炭消費量を、式11を用いて算出した準活性炭消費量Vi(t)を用いた式12(又は式12’)により近似することができる。
【0070】
所定の時間間隔Δtにおける、ガスGに含まれる複数の(n種類の)臭気成分による活性炭消費変化量(合算消費変化量)TS(t)[kg]は、全ての臭気成分に対するVi(t)の和で求まることになる。
TS(t)=ΣVi(t) (式13)
ただし、Σは、i=1からnまでの総和を意味する。
【0071】
式13に式12’を代入すると、活性炭消費変化量Wts(t)は以下のようになる。
TS(t)=Σ{(mwi/mw1)*RDi/QDi}*QD1*W1(t) (式14)
【0072】
従って、監視装置18の演算処理部182は、代表臭気成分についての予備実験に基づく実活性炭消費量(W1(t))の算出と、その他の臭気成分に対する理論式に基づく準活性炭消費量(Vi(t))の算出とのハイブリッドな算出方法を実行し、複数の臭気成分を有するガスGによる活性炭消費変化量TS(t)を求めることができる。
【0073】
なお、第1のガス検知器17が、2以上のガス検知器から構成され、代表臭気成分(臭気成分D1)以外の臭気成分Dkの濃度を検出可能である場合、濃度が実測された臭気成分Dkについては、式1、式2(式2’)及び式3によって実活性炭消費量Wk(t)を算出し、Vk(t)がWk(t)に等しいとして式13により、活性炭消費変化量TS(t)を算出してもよい。
【0074】
時刻tから所定の時間間隔Δtまで(時刻tから時刻t+Δtまで)における飽和領域の長さの変化ΔZ2(t)[m]は、活性炭消費変化量TS(t)、吸着層14の活性炭の充填密度BD[kg/m3]及び吸着層14の断面積S[m2]を用いて、以下のように算出される。
ΔZ2(t)=TS(t)/(BD*S) (式15)
【0075】
なお、活性炭消費変化量TS(t)及びΔZ2(t)は、所定の時間間隔Δtの変化量である。そのため、吸着層14の開始時(時刻t=0)から時刻t+Δtまでに消費された活性炭の総量(累積量)は、活性炭消費変化量TS(t)を積算することにより得られる。
同様に、吸着層14における活性炭の飽和領域の長さZ2はΔZ2(t)を積算することにより得られる。
【0076】
従って、監視装置18は、以下の(1)から(7)を所定の時間間隔Δtで、繰り返し実行する。
(1)監視装置18は、第1のガス検知器17により検出された代表臭気成分(第1の臭気成分)の濃度測定値C1を取得(入力)する。
(2)記憶装置181に保存された、吸着関数のパラメータ(関数を決定するパラメータ)、風量FV、代表臭気成分の分子量mw1、代表臭気成分(第1の臭気成分)の濃度C1を用いて、活性炭に吸着された代表臭気成分の質量(代表臭気成分吸着質量)MD1(t)を算出する。
(3)記憶装置181に保存された代表臭気成分(第1の臭気成分)D1の平衡吸着量と、算出された代表臭気成分吸着量から代表臭気成分による(第1の)活性炭消費量(代表活性炭消費量)(W1(t))を算出する。
(4)記憶装置181に保存された、各臭気成分Diの含有比率RDi、平衡吸着量QDi、分子量mwiと、算出された代表臭気成分D1による活性炭消費量(W1(t))とから、第1のガス検知器17により検出されない各臭気成分(検出外臭気成分)Diによる活性炭消費量(準活性炭消費量)Vi(t)を算出する。
(5)算出された代表臭気成分による活性炭消費量(W1(t))と、第1のガス検知器17により検出されない各臭気成分Diの算出された活性炭消費量Vi(t)と総和することにより、活性炭消費変化量(TS(t))を算出する。
(6)記憶装置181に保存された吸着層14の活性炭充填密度BD[kg/m3]及び吸着層14の断面積S[m2]と、算出された活性炭消費変化量(TS(t))とから飽和領域の長さの変化ΔZ2(t)を算出する。
(7)算出された飽和領域の長さの変化ΔZ2(t)を吸着層14の使用開始時(t=0)から積算し、時刻t+Δtにおける飽和領域の長さZ2[m]を算出する。
なお、活性炭消費変化量(TS(t))を積算した後に、(5)に従い飽和領域の長さZ2を算出してもよい。ΔZ2(t)を積算することと、活性炭消費変化量(TS(t))を積算することとは、実質的に等価である。
その結果、監視装置18は、飽和領域の時間的推移を算出できる。
【0077】
なお、第1のガス検知器17により複数の臭気成分Dkが検出可能である場合、上記(1)、(2)、(3)において、濃度が検出された臭気成分の活性炭消費量Wk(t)を算出し、(5)において、TS(t)にWk(t)を加えてもよい。
或いは、上記(1)、(2)、(3)において、濃度が検出された臭気成分の活性炭消費量Wk(t)を算出し、(4)においてVk(t)=Wk(t)とし、(5)において活性炭消費変化量TSを算出してもよい。
【0078】
飽和領域と未吸着領域の間に存在する吸着領域の長さZ1は、予備実験により取得することができる。Z1は空塔速度[m/min](=風量(FV)/断面積(S))に依存し、飽和領域の長さZ2に依存しない。ガスGの風量は、送風機Bにより、一定の値に保持されると、Z1は一定となる。吸着領域の長さZ1は監視装置18の記憶装置181に保存される。
なお、例えば、吸着層14に搭載する活性炭の特性(粒径、充填率)が同じであり、未吸着領域の低濃度側端部を規制濃度とすれば、Z1は空塔速度のべき乗に比例する関数(Z1=k*[空塔速度]α)により算出できる。
ガスGの風量(空塔速度)が変化する場合、吸着領域の長さZ1は監視装置18により空塔速度を用いて算出され(監視され)、監視装置18の記憶装置181に保存されてもよい。
【0079】
<吸着層の監視>
脱臭システム100が稼働し、ガスGの脱臭処理を開始すると、監視装置18は、第1のガス検知器17から代表臭気成分の濃度を入力し、所定の時間間隔Δtで、飽和領域の長さZ2の算出を開始する。
なお、脱臭システム100がガスGの脱臭処理を開始した時点では、吸着層14の活性炭は未吸着状態であり、飽和領域の長さZ2は0である。
【0080】
監視装置18は、所定の時間間隔Δtで、記憶装置181に保存された吸着領域の長さZ1と飽和領域の長さ(全長)Z2との和(Z1+Z2)を算出し、吸着層14に搭載された活性炭(全搭載活性炭)の長手方向の長さZと、和(Z1+Z2)とを比較する。
【0081】
監視装置18はZ1+Z2がZに等しくなった時点で、吸着層14が破過状態に到達したと判断し、オペレータに警告を発することができる。
また、監視装置18は、Z1+Z2とZとの比率(=(Z1+Z2)/Z)を、使用量比率として表示してもよく、Z-(Z1+Z2)とZとの比率(=1-(Z1+Z2)/Z)を、残量比率として表示してもよい。
また、吸着層14が、例えば、1年分の消費に相当する量(設計寿命)の活性炭を搭載している場合、監視装置18は、設計寿命に使用比率、又は残量比率を乗じて、使用日数又は残日数として表示してもよい。
監視装置18は、警告や使用量比率等を、表示部184に表示することができが、IO部183を介して、外部に出力することもできる。
【0082】
また、監視装置18は吸着層14が破過状態に到達する前に警告を発してもよい。例えば、Z1+Z2が、Zの所定の割合(判定値Rth)、例えば90%に達したか否かを所定の時間間隔Δtで実行し、Z1+Z2がZの所定の割合以上(Z1+Z2≧Rth*Z)となった時点で警告を発してもよい。
【0083】
或いは、監視装置18は、吸着層14に搭載された活性炭(全搭載活性炭)の長手方向の長さZとZ1との差分(Z-Z1)と、飽和領域の長さZ2とを比較し、飽和領域の長さZ2がZとZ1との差分と等しい、又はZとZ1との差分が所定の割合以上となった時点で警告を発してもよい。
【0084】
いずれの場合においても、監視装置18は、飽和領域の長さZ2が、所定の閾値以上となった時点で、警告を発することができる。閾値は、予め設定し、監視装置18の記憶装置181に保存しておくことができる。
【0085】
従来は、過去の経験値等から吸着層14に搭載された活性炭の使用可能期間(又は活性炭の寿命)が設定されるが、実際には使用可能期間の予測は困難な場合もある。監視装置18は、実際の臭気成分の濃度を検出しながら飽和領域Z2を算出するため、この飽和領域算出機能を利用することで、以下に説明するように、活性炭の使用可能期間を再計算(又は修正)することができる。
監視装置18は、所定の期間、例えば直近の一ヶ月のZ2の変化量(増加量)から、1日当たりのZ2の変動率(以下、平均変動量と称す)を算出し、(Z-Z1)を平均変動量で除することで((Z-Z1)/平均変動量)、使用開始時から破過までの総日数を算出することができ、また、未吸着領域の長さを平均変動量で除することで、残りの使用可能日数((Z-Z1-Z2)/平均変動量)を算出することができる。監視装置18は、算出したこれらの日数を表示部184に表示することが可能である。
なお、平均変動量は、随時修正することが可能であり、残りの使用可能日数も随時修正が可能である。
【0086】
なお、警告は、監視装置18に設けられた表示部184に破過に達したことを表示してもよく、またアラーム音を発してもよい。
また、監視装置18のIO部183から外部のモニタやコンピュータに出力信号を送信してもよい。
【0087】
オペレータは、監視装置18から発せられた警告に従い、吸着層14又は吸着層14に搭載された活性炭を交換することが可能となる。
オペレータは、吸着層14(又は吸着層14内の活性炭)を交換後、監視装置18が算出したZ2の値を0にリセットする。監視装置18は、新たな吸着層14の活性炭の積算消費量(吸着量)を算出し、監視することができる。
【0088】
なお、監視装置18は、第2のガス検知器19の出力を監視し、第2の脱臭塔2から排出されるガスGが、所定以上の臭気成分濃度を検知した場合、警告を発するように構成してもよい。
【0089】
監視装置18は第1のガス検知器17が検知した濃度の出力値を用いて、吸着層14の活性炭消費量を監視できる。従って、第1のガス検知器17と監視装置18とは、活性炭消費量監視ユニットを構成する。
第1のガス検知器17は、活性炭が搭載された吸着層14を有する脱臭塔(第2の脱臭塔2)の流入口12に取り付け、代表臭気の濃度を計測できればよい。また、第1のガス検知器17と監視装置18とは、信号線又は無線で通信できればよい。そのため、活性炭消費量監視ユニットは、既存の脱臭塔に容易に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る脱臭システム100は、脱臭層である吸着層の活性炭の消費量を監視し、活性炭の破過を予測することが可能となり、適切な時期での活性炭の交換を促すことができる。
また、活性炭の無駄を低減することが可能であり、脱臭システム100のランニングコストの低減に寄与することができ、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0091】
100 脱臭システム
1 第1の脱臭塔(湿式脱臭塔)
2 第2の脱臭塔(乾式脱臭塔)
3 ガス流入配管
4 充填層
5 薬液放出部
6 循環薬液槽
7 配管
9 排出口
8 ポンプ
10 連結配管
11 気液分離器(デミスター)
12 流入口
13 ガス流入口
14 吸着層
15 排出口
16 排気配管
17 第1のガス検知器
18 監視装置
181 記憶装置
182 演算処理部
183 IO部(入出力部)
184 表示部
19 第2のガス検知器
20 第3のガス検知器
B 送風機(ブロワー)
G 臭気性ガス
L 薬液
R 施設(臭気性ガス発生源)