(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067915
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/30 20180101AFI20240510BHJP
【FI】
G16H20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178332
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】門根 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】丸島 愛樹
(72)【発明者】
【氏名】アナスタシエフ アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 大貴
(72)【発明者】
【氏名】ザボロノク アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】石川 栄一
(72)【発明者】
【氏名】松丸 祐司
(72)【発明者】
【氏名】松村 明
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA22
(57)【要約】
【課題】手が行おうとする動作を推定する。
【解決手段】上肢から測定する筋電位を入力として、被験者が手に行わせたい動作を出力する推定モデルに上肢から測定する筋電位を入力することで、被験者が手に行わせたい動作を推定する、推定装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上肢から測定する筋電位を入力として、被験者が手に行わせたい動作を出力する推定モデルに上肢から測定する筋電位を入力することで、被験者が手に行わせたい動作を推定する、
推定装置。
【請求項2】
上肢から測定する筋電位を入力として、被験者が手で行う動作の評価指標を出力する推定モデルに上肢から測定する筋電位を入力することで、被験者が手で行う動作の評価指標を推定する、
推定装置。
【請求項3】
上肢から測定する筋電位を入力として、被験者が手に行わせたい動作を出力する推定モデルに上肢から測定する筋電位を入力することで、被験者が手に行わせたい動作を推定する、
推定方法。
【請求項4】
コンピュータに、上肢から測定する筋電位を入力として、被験者が手に行わせたい動作を出力する推定モデルに上肢から測定する筋電位を入力させることで、被験者が手に行わせたい動作を推定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中などの病気により、体に麻痺が残存することがある。麻痺が残存した患者はリハビリテーションにより麻痺の治療を行う。リハビリテーションにおいて、動作を解析してフィードバックするといった手法により、よりリハビリテーションの効果を向上させようとする研究がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Tan CK, Kadone H, Watanabe H, Marushima A, Hada Y, Yamazaki M, Sankai Y, Matsumura A, Suzuki K. Differences in Muscle Synergy Symmetry Between Subacute Post-stroke Patients With Bioelectrically-Controlled Exoskeleton Gait Training and Conventional Gait Training. Front Bioeng Biotechnol. 8:770. 2020
【非特許文献2】Tan CK, Kadone H, Watanabe H, Marushima A, Yamazaki M, Sankai Y, Suzuki K. Lateral Symmetry of Synergies in Lower Limb Muscles of Acute Post-stroke Patients After Robotic Intervention. Front Neurosci. 12:276. 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、手の運動麻痺を改善する手法は十分確立しているとはいえない。
本発明の目的は、手が行おうとする動作を推定する推定装置、推定方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、上肢から測定する筋電位を入力として、被験者が手に行わせたい動作を出力する推定モデルに上肢から測定する筋電位を入力することで、被験者が手に行わせたい動作を推定する、推定装置である。
【0006】
本発明の一態様は、上肢から測定する筋電位を入力として、被験者が手で行う動作の評価指標を出力する推定モデルに上肢から測定する筋電位を入力することで、被験者が手で行う動作の評価指標を推定する、推定装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上肢から測定する筋電位を入力として、被験者が手に行わせたい動作を出力する推定モデルに上肢から測定する筋電位を入力することで、被験者が手に行わせたい動作を推定する、推定方法である。
【0008】
本発明の一態様は、コンピュータに、上肢から測定する筋電位を入力として、被験者が手に行わせたい動作を出力する推定モデルに上肢から測定する筋電位を入力させることで、被験者が手に行わせたい動作を推定させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、手が行おうとする動作を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る推定モデル作成装置1の構成を示す図である。
【
図2】指示された手の異なる動きごとにおいて測定された筋電位信号を示す例である。
【
図3】第1の実施形態に係る推定装置4の構成を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る推定モデル作成装置1の動作を示すフローチャートである。
【
図5】第1の実施形態に係る推定モデル作成装置1の動作を示すフローチャートである。
【
図6】第1の実施形態に係る推定装置4の動作を示すフローチャートである。
【
図7】測定対象の上肢が麻痺状態でないときの手の動きを推定する推定モデルによる推定結果の精度を示す図である。
【
図8】測定対象の上肢が麻痺状態であるときの手の動きを推定する推定モデルによる推定結果の精度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〈第1の実施形態〉
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る推定モデル作成装置1の構成を示す図である。第1の実施形態に係る推定モデル作成装置1は、測定信号受信部11、特徴量抽出部12、特徴量記録部13、モデル生成部14、モデル出力部15、記憶部21を備える。
【0012】
測定信号受信部11は、被験者の上肢2から測定装置3により測定された筋電位(Electromyogram: EMG)を受信する。測定装置3は、例えば上肢2の皮膚表面に張り付けられ、筋電位信号を測定する。
【0013】
測定装置3は、上肢2の複数の位置における筋電位信号を測定してもよい。例えば、測定装置3は、例えば橈側手根屈筋(FCR)、尺側手根屈筋(FCU)、短母指外転筋(APB)及び総指伸筋(EDC)における筋電位信号を測定する。
【0014】
測定装置3は、被験者に指示した上肢2の手の異なる動きごとの筋電位信号を測定する。手の異なる動きは、例えばサムズアップ (Thumbs up)、つまむ(Pinch)、握る(Fist)、伸ばす(Extension)、広げる(Spread)、曲げる(Flexion)などの動作を含む。例えば、被験者に対して、手に一定時間順番に異なる動きを行わせることで、測定装置3は、手の特定の動きにおける筋電位信号を測定する。
図2は、指示された手の異なる動きごとにおいて測定された筋電位信号を示す例である。
図2に示す例においては、手に握る、つまむ、曲げる、伸ばす、広げる、サムズアップという順番で動作をさせることで、測定装置3は各動作における筋電位信号を測定する。
【0015】
測定装置3は、同じ人物の2つの上肢の筋電位信号を測定してもよい。2つの上肢は、例えば急性期脳卒中などの病気により2つの上肢のうち一方の上肢が麻痺状態であってもよい。
【0016】
特徴量抽出部12は、筋電位信号から手の動き及び筋電位信号が測定される位置ごとに特徴量を抽出する。特徴量は、抽出される生データの特性を示す数値又はベクトルである。特徴量の抽出方法は特に限定されず、特徴量抽出部12は、例えば筋電位信号の特徴量として、MFL(Maximum Fractal Length)やMMDF(Multi-Model Deep Feature)などを算出すればよい。なお、特徴量抽出部12は、複数の特徴量の抽出方法を組み合わせてもよい。
【0017】
特徴量記録部13は、抽出された特徴量を手の異なる動きごとに記憶部21に記録する。特徴量記録部13は、測定対象の上肢が麻痺状態であるか、麻痺状態でないかにより、特徴量を別々に記録してもよい。また、特徴量記録部13は、測定対象の人物ごとに特徴量を別々に記録してもよい。
【0018】
モデル生成部14は、記録された特徴量に基づいて推定モデルを生成する。生成される推定モデルは、筋電位信号から抽出される特徴量を入力として、上肢の手の動きを出力するモデルである。モデル生成部14は、手の異なる動きごとの特徴量に例えばサポートベクタマシン(SVM)を適用することで、特徴量を分類するモデルを生成する。
モデル生成部14は、測定対象の上肢が麻痺状態であるか、麻痺状態でないかにより、異なる推定モデルを生成してもよく、また、測定対象の人物ごとに推定モデルを生成してもよい。
【0019】
モデル出力部15は、生成された推定モデルを後述する推定装置4に出力する。
【0020】
図3は、第1の実施形態に係る推定装置4の構成を示す図である。推定装置4は、測定信号受信部41、特徴量抽出部42、推定部43、推定結果出力部44、記憶部51を備える。記憶部51には、推定モデル作成装置1により出力される推定モデルが記憶される。
【0021】
測定信号受信部41は、測定信号受信部11と同様、上肢5から測定装置3により測定された筋電位を受信する。特徴量抽出部42は、特徴量抽出部12と同様、筋電位信号から特徴量を抽出する。
【0022】
推定部43は、推定モデルに特徴量を入力することで、推定される上肢の手の動きを出力させる。推定結果出力部44は、推定された結果として上肢の手の動きを出力する。以上により、推定装置4は上肢の手が行おうとする動作を推定することができる。
出力される上肢の手の動きは、例えば測定対象の人物が装着するVRヘッドセット又はARヘッドセットに表示される。これにより、測定対象の人物が麻痺した上肢のリハビリをする際に視覚的な補助をすることができる。
【0023】
図4及び
図5は、第1の実施形態に係る推定モデル作成装置1の動作を示すフローチャートである。
図4は、推定モデル作成装置1の前段の動作を示すフローチャートである。初めに測定信号受信部11は、測定装置3が測定した筋電位信号を受信する(ステップS11)。その後、特徴量抽出部12は、筋電位信号から特徴量を抽出する(ステップS12)。特徴量記録部13は、抽出した特徴量を記憶部21に記録する。このとき、特徴量記録部13は、特徴量とともに対応する手の動作、被験者情報、測定した上肢が麻痺状態であるか否かなどを記録してもよい。推定モデル作成装置1は、ステップS11からS13の動作を繰り返すことで記憶部21に保存される特徴量の数を増やす。
【0024】
図5は、推定モデル作成装置1の後段の動作を示すフローチャートである。モデル生成部14は、記憶部21に記憶された特徴量に基づいて、推定モデルを生成する(ステップS14)。モデル出力部15は、生成された推定モデルを推定装置4に出力する(ステップS15)。
【0025】
図6は、第1の実施形態に係る推定装置4の動作を示すフローチャートである。測定信号受信部41は、測定装置3が測定した筋電位信号を受信する(ステップS21)。その後、特徴量抽出部42は、筋電位信号から特徴量を抽出する(ステップS22)。推定部43は、推定モデルを用いて特徴量から手の動きを推定する(ステップS23)。推定結果出力部44は、推定部43による推定結果を出力する(ステップS24)。
【0026】
図7及び
図8は推定装置4による推定結果を示す図である。
図7は、測定対象の上肢が麻痺状態でないときの手の動きを推定する推定モデルによる推定結果の精度を示す図である。
図8は、測定対象の上肢が麻痺状態であるときの手の動きを推定する推定モデルによる推定結果の精度を示す図である。実際の手の動き(True gesture)と推定結果の手の動き(Predicted gesture)とが同じとなる割合である正解率(accuracy rate)を算出した。推定モデルの作成にはSVMを用いた。
図7に示す結果においては、正解率は86.6%であり、
図8に示す結果においては、正解率は67.0%であった。したがって上肢が麻痺状態であるときは、67%の正解率で手の動きを推定することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態に係る推定モデル作成装置1及び推定装置4について説明するが、第1の実施形態に係る推定モデル作成装置1及び推定装置4と同様の点については説明を省略する。
第2の実施形態に係る特徴量記録部13は、抽出された特徴量と当該特徴量における手の動きの評価指標を記憶部21に記録する。手の動きの評価指標は、例えばFMA(Fugl-Meyer Assessment)、ブルンストローム・ステージ、SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)、MAS(Modified Ashworth Scale)といった麻痺の程度を評価する指標である。第2の実施形態に係るモデル生成部14は、筋電位信号から抽出される特徴量を入力として、手の動きの評価指標を出力するモデルを生成する。
【0028】
第2の実施形態に係る推定部43は、推定モデルに特徴量を入力することで、手の動きの評価指標を出力させる。第2の実施形態に係る推定結果出力部44は、推定された結果として手の動きの評価指標を出力する。出力される手の動きの評価指標は、例えば外部の表示装置に表示される。これにより、測定対象の人物の上肢の麻痺の指標を推定することができる。
【0029】
測定対象の人物の2つの上肢の一方が麻痺状態でありもう一方が非麻痺状態であるとき、第2の実施形態に係る特徴量記録部13が記録する特徴量及び第2の実施形態に係る特徴量抽出部42が抽出する特徴量は、2つの上肢から測定された筋電位信号から抽出される特徴量であってもよい。
【0030】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、推定モデルは、筋電位信号から抽出される特徴量を入力として、重症度を出力してもよい。このとき、モデル生成部14は、筋電位信号から抽出される特徴量を入力として、重症度を出力するモデルを生成する。推定部43は、推定モデルに特徴量を入力することで、重症度を出力させる。
【0031】
上述した実施形態における推定モデル作成装置1及び推定装置4の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記録装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。また、推定モデル作成装置1及び推定装置4の一部または全部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 推定モデル作成装置、11 測定信号受信部、12 特徴量抽出部、13 特徴量記録部、14 モデル生成部、15 モデル出力部、21 記憶部、2 上肢、3 測定装置、4 推定装置、41 測定信号受信部、42 特徴量抽出部、43 推定部、44 推定結果出力部、5 上肢、51 記憶部