(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067917
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/22 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
H02K1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178335
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
(72)【発明者】
【氏名】天笠 俊之
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA29
5H601DD01
5H601DD11
5H601EE15
5H601GA39
(57)【要約】
【課題】性能を向上させつつ、さらなる低コスト化を図ることができる回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機は、回転軸線Ca回りに回転自在に設けられたロータ9と、ロータ9の外周を取り囲むステータと、を備える。ロータ9は、回転軸線Caを軸心とするシャフト31と、シャフト31に嵌合固定されるシャフト固定部71と、シャフト固定部71の外周面から径方向外側に突出する複数の突極部72と、周方向に隣り合う2つの突極部72の間にそれぞれ配置された複数の永久磁石33と、を有する。ステータは、ロータ9の外周面に径方向で対向するように周方向に並んで配置された複数のティース22を有する。突極部72の周方向中央には、径方向に沿うとともに軸方向全体に渡るスリット75が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線回りに回転自在に設けられたロータと、
前記ロータの外周を取り囲むステータと、
を備え、
前記ロータは、
前記回転軸線を軸心とするシャフトと、
前記シャフトに嵌合固定されるシャフト固定部と、
前記シャフト固定部の外周面から径方向外側に突出する複数の突極部と、
周方向に隣り合う2つの前記突極部の間にそれぞれ配置された複数の永久磁石と、
を有し、
前記ステータは、前記ロータの外周面に径方向で対向するように周方向に並んで配置された複数のティースを有し、
前記突極部の周方向中央には、径方向に沿うとともに軸方向全体に渡るスリットが形成されている、
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
各前記突極部において、前記スリットを挟んで両側は、磁極が異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記複数の永久磁石は、周方向に磁極が交互となるように設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機として、例えば電動モータが挙げられる。電動モータは、ステータと、ステータに対して回転軸線回りに回転自在に設けられたロータと、を備える。ステータは、コイルが巻回される複数のティースを備える。周方向で隣り合うティースの間に、それぞれスロットが形成される。これらスロットを介し、各ティースにコイルが巻回される。ロータは、ロータコアと、ロータコアに設けられた界磁用の複数の永久磁石と、を備えたものがある。
【0003】
電動モータは、コイルに通電するとティースに鎖交磁束が形成される。この鎖交磁束とロータの永久磁石との間に磁気的な吸引力や反発力が生じ、ロータが継続的に回転される。
この種のロータの中には、ロータコアの外周部に複数の突極部(突極)を形成し、周方向で隣り合う突極部の間に永久磁石を配置したいわゆるコンシクエントポール型のロータがある。このロータは、永久磁石を一方の磁極とし、突極部を他方の磁極として機能させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術のようなロータでは、一方の磁極が永久磁石で構成され、他方の磁極が突極部(ロータコア)で構成されるので、一方の磁極の磁力が他方の磁極の磁力よりも強くなる傾向にある。このため、磁気的なアンバランスが生じ、モータ性能が低下してしまうという課題があった。
また、上述の従来技術のようなロータは、他方の磁極を永久磁石としない分、コストを低減できるという点では優れているが、近年、さらなる低コスト化が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、性能を向上させつつ、さらなる低コスト化を図ることができる回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の第1態様では、回転電機は、回転軸線回りに回転自在に設けられたロータと、前記ロータの外周を取り囲むステータと、を備え、前記ロータは、前記回転軸線を軸心とするシャフトと、前記シャフトに嵌合固定されるシャフト固定部と、前記シャフト固定部の外周面から径方向外側に突出する複数の突極部と、周方向に隣り合う2つの前記突極部の間にそれぞれ配置された複数の永久磁石と、を有し、前記ステータは、前記ロータの外周面に径方向で対向するように周方向に並んで配置された複数のティースを有し、前記突極部の周方向中央には、径方向に沿うとともに軸方向全体に渡るスリットが形成されている。
【0008】
このように構成することで、突極部のスリットが磁束の通過を阻害するフラックスバリアとして機能する。スリットは、径方向に沿うとともに軸方向全体に渡って形成されているので、突極部において、スリットを挟んだ両側の磁極を異ならせることができる。1つの突極部の両側に配置する永久磁石の磁極を異ならせることにより、突極部に2つの磁極を形成することができる。このため、2つの磁極のうちの一方の磁極のみが永久磁石になるようなことを避けることができ、ロータの磁気的なアンバランスを解消できる。また、突極部の磁極を2つにできる分、永久磁石をさらに減らすことができる。よって、回転電機の性能を向上させつつ、さらなる低コスト化を図ることができる。
【0009】
本発明の第2態様では、第1態様の回転電機において、各前記突極部において、前記スリットを挟んで両側は、磁極が異なってもよい。
【0010】
このように構成することで、確実にロータの磁気的なアンバランスを解消でき、回転電機の性能を向上できる。また、永久磁石を減らすことができ、確実に回転電機を低コスト化できる。
【0011】
本発明の第3態様では、第1態様又は第2態様の回転電機において、前記複数の永久磁石は、周方向に磁極が交互となるように設けられてもよい。
【0012】
このように構成することで、確実にロータの磁気的なアンバランスを解消でき、回転電機の性能を向上できる。また、永久磁石を減らすことができ、確実に回転電機を低コスト化できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転電機の性能を向上させつつ、さらなる低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態における減速機付きモータの斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるステータ及びロータの径方向に沿う断面図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるロータコア及び永久磁石の平面図である。
【
図5】本発明の第1変形例におけるロータコア及び永久磁石の平面図である。
【
図6】本発明の第2変形例におけるロータコア及び永久磁石の平面図である。
【
図7】本発明の第3変形例におけるロータコア及び永久磁石の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
<減速機付きモータ>
図1は、減速機付きモータ1の斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。
減速機付きモータ1は、例えば車両に搭載されるワイパーの駆動源である。減速機付きモータ1は、電動モータ2と、電動モータ2の回転を減速して出力する減速部3と、電動モータ2の駆動制御を行うコントローラ部4と、を備える。
【0017】
以下の説明において、単に「軸方向」という場合は、電動モータ2のシャフト31における中心軸(電動モータ2の回転軸線Ca)と平行な方向を意味するものとする。単に「周方向」という場合は、シャフト31の周方向(回転方向)を意味するものとする。単に「径方向」という場合は、軸方向及び周方向に直交するシャフト31の径方向を意味するものとする。
【0018】
<電動モータ>
電動モータ2は、モータケース5と、モータケース5内に収納されている円筒状のステータ8と、ステータ8の径方向内側に設けられ、ステータ8に対して回転可能に設けられたロータ9と、を備える。電動モータ2は、ステータ8に電力を供給する際にブラシを必要としない、いわゆるブラシレスモータである。
【0019】
<モータケース>
モータケース5は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料から形成されている。モータケース5は、軸方向に分割可能に構成された第1モータケース6と、第2モータケース7と、からなる。第1モータケース6及び第2モータケース7は、それぞれ有底筒状に形成されている。
第1モータケース6は、底部10が減速部3のギアケース40と接合されるように、このギアケース40と一体成形されている。底部10の径方向中央には、ロータ9のシャフト31を挿通可能な貫通孔10aが形成されている。
【0020】
第1モータケース6の開口部6aには、径方向の外側に向かって張り出す外フランジ部16が形成されている。第2モータケース7の開口部7aに、径方向の外方に向かって張り出す外フランジ部17が形成されている。これら外フランジ部16,17同士を突き合わせて内部空間を有するモータケース5を形成している。モータケース5の内部空間には、第1モータケース6及び第2モータケース7の内側に嵌め合わされるようにステータ8が配置される。
【0021】
<ステータ>
図3は、ステータ8及びロータ9の径方向に沿う断面図である。
図2、
図3に示すように、ステータ8は、ステータコア20と、ステータコア20に装着された樹脂製のインシュレータ23と、ステータコア20にインシュレータ23の上から巻回されたコイル24と、を備える。
【0022】
ステータコア20は、回転軸線Caと同軸上に配置された円筒状のコア部21と、コア部21から径方向の内側に向かって突出する複数(例えば、本第実施形態では9つ)のティース22と、が一体成形されている。ステータコア20は、複数の電磁鋼板を軸方向に積層することにより形成されている。しかしながらこれに限られるものではなく、ステータコア20は、例えば、軟磁性粉を加圧成形することにより形成されてもよい。
【0023】
ティース22は、一体成形されたティース本体22a及び鍔部22bを備える。ティース本体22aは、コア部21の内周面から径方向の内側に向かって突出している。鍔部22bは、ティース本体22aの径方向の内側端から周方向外側に向かって延びている。鍔部22bは周方向に沿っており、ステータコア20の内周を構成している。周方向で隣り合うティース22の間には、それぞれ蟻溝状のスロット19が形成される。
インシュレータ23は、ステータコア20を覆うように形成されている。インシュレータ23によって、ステータコア20とコイル24との絶縁が図られる。
【0024】
<ロータ>
ロータ9は、ステータ8の径方向内側に微小隙間を介して回転自在に設けられている。ロータ9は、回転軸線Ca回りに回転するシャフト31と、シャフト31に嵌合固定されたロータコア32と、ロータコア32に取り付けられた界磁用の2つの永久磁石33と、ロータコア32に永久磁石33を保持するホルダ37,38と、これらロータコア32、永久磁石33及びホルダ37,38を覆うカバー39と、を備える。
シャフト31は、減速部3を構成する後述するウォーム軸44(
図2参照)と一体成形されている。
【0025】
図4は、ロータコア32及び永久磁石33の平面図である。
図2から
図4に示すように、ロータコア32は、複数の電磁鋼板を軸方向に積層することにより形成されている。しかしながらこれに限られるものではなく、ロータコア32は、例えば、軟磁性粉を加圧成形することにより形成されてもよい。ロータコア32の軸方向の厚さは、ステータコア20の軸方向の厚さと同一である。
【0026】
ロータコア32は、シャフト31の外周面に嵌合固定される円筒状のシャフト固定部71と、シャフト固定部71の外周面から径方向外側に突出する2つの突極部72と、を備える。シャフト固定部71は、回転軸線Caと同軸上に配置されている。各突極部72は、径方向に沿う任意の直線Sを中心に線対称に形成されている。すなわち、各突極部72は、基部73と、基部73の径方向外側の端部に一体成形された先端部74と、を有する。以下、2つの突極部72の線対称の基準となる任意の直線Sを基準直線SLと称する。
【0027】
基部73は、基準直線SLに直交し、互いに平行な2つの基部側面73aを有する。先端部74は、基部73の径方向外側の端部から径方向外側に向かって末広がりとなるように突出している。先端部74のうち基部側面73aに連なる先端部側面74aは、基部側面73aに対して傾斜している。先端部側面74aは、径方向に沿っている。これら基部側面73a及び先端部側面74aにより、永久磁石33が収納される2つの磁石収納部36が形成される。
【0028】
先端部74の径方向外側の端面74bは、ロータコア32の外周面を構成している。先端部74の端面74bは、軸方向からみて回転軸線Caを中心とする円弧状に形成されている。回転軸線Caを中心とし、先端部74の端面74bを通る円周上において、先端部74の端面74bの周長L1と、2つの先端部74の間の周長L2とは、ほぼ同一長さか、又は若干先端部74の端面74bの周長L1が長い。
【0029】
各突極部72の周方向中央には、それぞれスリット75が形成されている。スリット75は、先端部74の端面74bから基部73に至る間に軸方向全体に渡って形成されている。すなわち、スリット75は径方向外側に向けて開口している。スリット75の径方向内側は、シャフト固定部71を貫通していない。スリット75は、磁束J(
図4参照)の通過を阻害するフラックバリアとして機能する(詳細は後述する)。
【0030】
2つの磁石収納部36にそれぞれ永久磁石33が収納されることにより、2つの永久磁石33は、回転軸線Caを中心に対向配置(周方向に180°対向配置)される。各永久磁石33は、例えば、フェライト磁石、ネオジムボンド磁石又はネオジム焼結磁石などである。
【0031】
永久磁石33は、例えば着磁(磁界)の配向が厚み方向に沿ってパラレル配向となるように着磁されている。つまり、永久磁石33の配向は、磁化容易方向が永久磁石33の中央部における径方向と平行な方向となるパラレル配向である。2つの永久磁石33は、互いの磁化方向が反対方向となるように配置されている。つまり、2つの永久磁石33のうちの一方は外周側がN極である。2つの永久磁石33のうちの他方は外周側がS極である。
【0032】
永久磁石33は、軸方向からみて基部側面73aに沿って長い平板状に形成されている。すなわち、永久磁石33は、基部側面73aに当接される平坦な内側面33aと、内側面33aと径方向で対向する外側面33bと、内側面33aと外側面33bとを連結する横側面33cと、を有する。外側面33bは、径方向外側が凸となるように円弧状に形成されている。外側面33bの円弧中心Coは、回転軸線Caよりも対応する外側面33b側にずれている。このため、永久磁石33の外側面33bとティース22との間隔は、永久磁石33の周方向中央から横側面33cに向かうに従って漸次大きくなる。
【0033】
永久磁石33は、周方向中央が基準直線SL上に位置するように配置されている。換言すれば、永久磁石33は、2つの基部側面73aの間に位置するように、配置されている。永久磁石33の外側面33bのうち、周方向中央は、回転軸線Caを中心とし、突極部72の端面74bを通る円周上に位置している。2つの横側面33cは、基準直線SLと平行である。2つの横側面33cの幅W1は、突極部72のうち、スリット75と先端部側面74aとの周方向の幅W2よりも若干大きい程度である。このため、永久磁石33の横側面33cと突極部72の先端部側面74aとの間には、隙間Gが形成される。
【0034】
永久磁石33の軸方向の長さは、ロータコア32の軸方向の厚さよりも長い。すなわち、永久磁石33は、ロータコア32の軸方向両端から軸方向外側に突出されている。この突出された永久磁石33の軸方向両側が、それぞれホルダ37,38によって保持される。
【0035】
このように永久磁石33が配置されたロータコア32の突極部72には、永久磁石33の磁束Jが流れて磁極として機能する。このとき、永久磁石33の横側面33cと突極部72の先端部側面74aとの間には、隙間Gが形成されているので、永久磁石33の横側面33cの近傍から突極部72の先端部74に磁束Jが漏れ出てしまうことが防止される。
【0036】
また、突極部72には、スリット75(フラックスバリア)が形成されているので、このスリット75の箇所で、ロータコア32での磁束Jの通過が阻害される。この結果、2つの突極部72には、スリット75を挟んで両側が互いに異なる磁極となる。すなわち、ロータ9の磁極数は6極である。ロータ9は、永久磁石33の個数に対し3倍の磁極数を有する。電動モータ2は、磁極数が6極、スロット19(ティース22)の数が9の6極9スロットで構成されている。
【0037】
<減速部>
図1及び
図2に戻り、減速部3は、モータケース5が取り付けられているギアケース40と、ギアケース40内に収納されるウォーム減速機構41と、を備える。
ギアケース40は、例えばアルミダイキャスト等の放熱性の優れた材料により形成されている。ギアケース40は、一面に開口部40aを有する箱状に形成されている。
【0038】
ギアケース40は、内部にウォーム減速機構41を収容するギア収容部42を有する。ギアケース40の側壁40bには、開口部43が形成されている。開口部43は、第1モータケース6が一体成形されている箇所に形成されている。開口部43は、第1モータケース6の貫通孔10aとギア収容部42とを通じさせる。
【0039】
ギアケース40の底壁40cには、円筒状の軸受ボス49が突設されている。軸受ボス49は、ウォーム減速機構41の出力軸48を回転自在に支持するために設けられている。軸受ボス49の内周面には、図示しない滑り軸受が設けられている。軸受ボス49における先端の内周縁には、図示しないOリングが装着されている。これにより、軸受ボス49を介して外部から内部に塵埃や水が侵入してしまうことが防止される。軸受ボス49の外周面には、複数のリブ52が設けられている。これにより、軸受ボス49の所望の剛性が確保されている。
【0040】
ウォーム減速機構41は、ウォーム軸44と、ウォーム軸44に噛合わされるウォームホイール45と、により構成されている。
ウォーム軸44は、電動モータ2のシャフト31と同軸上に配置されている。ウォーム軸44は、両端がギアケース40に設けられた軸受46,47によって回転自在に支持されている。ウォーム軸44の電動モータ2側の端部は、軸受46を介してギアケース40の開口部43に至るまで突出している。
【0041】
突出したウォーム軸44の端部と電動モータ2のシャフト31との端部が接合され、ウォーム軸44とシャフト31とが一体化されている。しかしながらこれに限られるものではなく、ウォーム軸44とシャフト31は、1つの母材からウォーム軸部分と回転軸部分とを成形することにより一体として形成されてもよい。
【0042】
ウォームホイール45の径方向中央には、出力軸48が設けられている。出力軸48は、ウォームホイール45の回転軸方向と同軸上に配置されている。出力軸48は、ギアケース40の軸受ボス49を介してギアケース40の外部に突出している。出力軸48の突出した先端には、図示しない電装品と接続可能なスプライン48aが形成されている。
【0043】
ウォームホイール45の径方向中央には、出力軸48が突出されている側とは反対側に、図示しないセンサ磁石が設けられている。センサ磁石は、ウォームホイール45の回転位置を検出する回転位置検出部60の一方を構成している。回転位置検出部60の他方を構成する磁気検出素子61は、ウォームホイール45のセンサ磁石側(ギアケース40の開口部40a側)でウォームホイール45と対向配置されているコントローラ部4に設けられている。
【0044】
<コントローラ部>
コントローラ部4は、磁気検出素子61が実装されたコントローラ基板62と、ギアケース40の開口部40aを閉塞するように設けられたカバー63と、を有する。コントローラ基板62が、ウォームホイール45のセンサ磁石側(ギアケース40の開口部40a側)に対向配置されている。
【0045】
コントローラ基板62は、いわゆるエポキシ基板に図示しない複数の導電性のパターンが形成されたものである。コントローラ基板62には、電動モータ2のステータコア20から引き出されたコイル24の端末部が接続されている。コントローラ基板62には、カバー63に設けられたコネクタ11の図示しない端子が電気的に接続されている。
【0046】
コントローラ基板62には、磁気検出素子61の他に、コイル24に供給する電流を制御するFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子を有する図示しないパワーモジュールが実装されている。コントローラ基板62には、コンデンサ等が実装されている。コンデンサ等は、コントローラ基板62に印加される電圧の平滑化を行う。
【0047】
コントローラ基板62を覆うカバー63は、樹脂により形成されている。カバー63は、若干外側に膨出するように形成されている。カバー63の内面側は、コントローラ基板62等を収容するコントローラ収容部56である。
カバー63の外周部に、コネクタ11が一体成形されている。コネクタ11は、図示しない外部電源から延びるコネクタと嵌着可能に形成されている。コネクタ11の図示しない端子に、コントローラ基板62が電気的に接続されている。これにより、外部電源の電力がコントローラ基板62に供給される。
【0048】
カバー63の開口縁には、嵌合部81が突出形成されている。嵌合部81は、ギアケース40の側壁40bの端部と嵌め合わされる。嵌合部81は、カバー63の開口縁に沿う2つの壁81a,81bにより構成されている。これら2つの壁81a,81bの間に、ギアケース40の側壁40bの端部が挿入(嵌め合い)される。これにより、ギアケース40とカバー63との間にラビリンス部83が形成される。ラビリンス部83によって、ギアケース40とカバー63との間から塵埃又は水が浸入してしまうことが防止される。ギアケース40とカバー63との固定は、図示しないボルトを締結することにより行われる。
【0049】
<減速機付きモータの動作>
次に、減速機付きモータ1の動作について説明する。
減速機付きモータ1において、コネクタ11を介してコントローラ基板62に供給された電力は、図示しないパワーモジュールを介して電動モータ2の各コイル24に選択的に供給される。すると、各コイル24に流れる電流は、ステータ8(ティース22)に所定の鎖交磁束を形成する。鎖交磁束は、ロータ9の永久磁石33及び磁極として機能する突極部72の有効磁束との間で磁気的な吸引力又は反発力(磁石トルク)を発生させる。これにより、ロータ9が継続的に回転される。
【0050】
ロータ9の回転は、シャフト31と一体化されているウォーム軸44に伝達され、さらにウォーム軸44に噛合わされているウォームホイール45に伝達される。ウォームホイール45の回転は、ウォームホイール45に連結されている出力軸48に伝達され、出力軸48は、所望の電装品を駆動させる。
【0051】
コントローラ基板62に実装されている磁気検出素子61によって検出されたウォームホイール45の回転位置の検出信号は、図示しない外部機器に出力される。外部機器は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。
【0052】
ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECU(Electronic Control Unit)である。
【0053】
外部機器の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。外部機器は、ウォームホイール45の回転位置検出信号に基づいて、図示しないパワーモジュールのスイッチング素子等の切替えタイミングを制御し、電動モータ2の駆動制御を行う。パワーモジュールの駆動信号の出力及び電動モータ2の駆動制御は、外部機器の代わりにコントローラ部4によって実行されてもよい。
【0054】
このように、上述の実施形態では、ロータ9のロータコア32は、シャフト31に嵌合固定されるシャフト固定部71と、シャフト固定部71の外周面から径方向外側に突出する2つの突極部72と、を有する。2つの突極部72の間に、それぞれ永久磁石33が配置されている。突極部72の周方向中央には、径方向に沿うとともに軸方向全体に渡るスリット75が形成されている。スリット75は、ロータコア32において磁束Jの通過を阻害するフラックスバリアとして機能する。
【0055】
このため、突極部72において、スリット75を挟んだ両側の磁極を異ならせることができる。2つの永久磁石33も互いに磁極が異なっている。したがって、2つの磁極(N極、S極)のうちの一方の磁極のみが永久磁石33になるようなことを避けることができ、ロータ9の磁気的なアンバランスを解消できる。1つの突極部72につき、磁極を2つにできる分、永久磁石33を減らすことができる。より具体的には、6極中、2極分だけ永久磁石33にすればよい。よって、電動モータ2のモータ性能を向上させつつ、電動モータ2を低コスト化できる。
【0056】
電動モータ2のモータ性能を向上させつつ、電動モータ2を低コスト化できるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」、目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの促進を図る」、及び目標12「持続可能な方法で生産し、責任をもって消費する」に貢献することが可能となる。
【0057】
[第1変形例]
図5は、第1変形例におけるロータコア32及び永久磁石33の平面図である。
図5は前述の
図4に対応している(以下の変形例の図も同様)。
上述の実施形態では、ロータ9は、永久磁石33を2つ有し、総磁極数が6極である場合について説明した。回転軸線Caを中心に対向配置された2つの永久磁石33は、互いに磁極が異なる場合について説明した。
【0058】
しかしながらこれに限られるものではなく、ロータ9は、永久磁石33の個数に対し3倍の磁極数を有すればよい。ロータ9の磁極数に応じて回転軸線Caを中心に対向配置された2つの永久磁石33の磁極を決定すればよい。永久磁石33の磁極は、周方向に交互に配置されればよい。ロータ9の磁極数に応じてステータ8のティース22の数(スロット19の数)を変更すればよい。
【0059】
例えば、
図5に示すように、永久磁石33を4つとし、ロータコア32に形成された突極部72の個数を4つとし、ロータ9の総磁極数を12極としてもよい。この場合、永久磁石33の個数が4つなので、回転軸線Caを中心に対向配置された2つの永久磁石33は、同じ磁極となる。
【0060】
すなわち、電動モータ2は、nを自然数としたとき、ロータ9の磁極数が6極×3nの場合、回転軸線Caを中心に対向配置された2つの永久磁石33の磁極は互いに異なる磁極となる。また、電動モータ2は、ロータ9の磁極数が12極×2nの場合、回転軸線Caを中心に対向配置された2つの永久磁石33の磁極は互いに同じ磁極となる。なお、突極部72の基準直線SLは、直交する2本となる。
【0061】
[第2変形例]
図6は、第2変形例におけるロータコア32及び永久磁石33の平面図である。
上述の実施形態では、スリット75は、先端部74の端面74bから基部73に至る間に軸方向全体に渡って形成されている場合について説明した。スリット75は径方向外側に向けて開口している場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、1つの突極部72にスリット75を挟んで異なる2つの磁極を形成できればよい。
すなわち、例えば
図6に示すように、スリット75以外に他の副スリット76,77(第1副スリット76、第2副スリット77)を形成してもよい。各副スリット76,77は、ロータコア32の軸方向全体に渡って形成されている。
【0062】
第1副スリット76は、各スリット75の径方向内側からそれぞれシャフト固定部71の外周に沿って周方向両側に延びている。2つの第1副スリット76の周方向両端は、基準直線SLを中心に対向する。第2変形例では、第1副スリット76を形成することに伴い、スリット75の径方向外側を開口させていない。つまり、スリット75の径方向外側の端部は、先端部74の端面74bよりも径方向内側に位置している。これにより、ロータコア32の剛性を確保している。
【0063】
第2副スリット77は、基準直線SL上に形成された2つの直線副スリット77aと、直線副スリット77aとスリット75との間に形成された円弧副スリット77bと、を有する。直線副スリット77aは、基部側面73aよりも径方向内側から第1副スリット76の周方向両端よりも径方向外側に至る間に形成されている。
【0064】
円弧副スリット77bは、直線副スリット77a及びスリット75を中心に線対称に形成されている。1つの直線副スリット77aとスリット75との間には、径方向に並んで2層となるように、円弧副スリット77bが形成されている。円弧副スリット77bは、軸方向からみて径方向内側に凸となるように円弧状に形成されている。
【0065】
各副スリット76,77の機能は、スリット75と同様である。すなわち、各副スリット76,77は、ロータコア32において磁束Jの通過を阻害するフラックスバリアとして機能する。このため、第1副スリット76によって、ロータコア32からシャフト31に磁束J(
図4参照)が漏れ出たしまうことを抑制できる。
【0066】
第2副スリット77によって、磁束Jの流れが制限される。換言すれば、第2副スリット77によって、各永久磁石33からそれぞれの突極部72に流れる磁束Jを整流でき、突極部72に適正に磁極を形成することができる。
したがって、上述の第2変形例によれば、前述の実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、永久磁石33の磁束Jを効率よく利用できるので、電動モータ2のモータ性能をさらに向上できる。
【0067】
上述の第2変形例では、1つの直線副スリット77aとスリット75との間には、径方向に並んで2層となるように、円弧副スリット77bが形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、円弧副スリット77bは、単層でもよりし3層以上形成してもよい。
【0068】
[第3変形例]
図7は、第3変形例におけるロータコア32及び永久磁石33の平面図である。
上述の実施形態では、永久磁石33は平板状に形成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、
図7に示すように、永久磁石33を軸方向からみて円弧状(瓦状)に形成してもよい。
【0069】
より具体的には、第3変形例におけるロータコア32の基部側面73aは、回転軸線Caを中心とする円弧状に形成されている。永久磁石33の内側面33aは、基部側面73aに沿うように、軸方向からみて円弧状に形成されている。永久磁石33の2つの横側面33cは、ロータコア32の先端部側面74aに沿うように径方向外側に向かって末広がりに形成されている。
このような構成のもと、例えば永久磁石33としてフェライト磁石を用いた場合など、永久磁石33の加工費を抑制し、電動モータ2を低コスト化できる。
【0070】
本発明は上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態や変形例に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態や変形例では、減速機付きモータ1は、車両のワイパー装置の駆動源として用いられる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな駆動装置として減速機付きモータ1を適用できる。また、減速機付きモータ1のうち、上述の構成を備えた電動モータ2のみを、さまざまな電気機器に採用してもよい。
【0071】
上述の実施形態や変形例では、回転電機として電動モータ2を例に挙げて説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな回転電機に上述の構成を採用できる。例えば、回転電機として、電動モータ2に代わって発電機でもよい。
【0072】
上述の実施形態や変形例では、ロータコア32における磁束Jの通過を阻害するためにスリット75や副スリット76,77を形成した場合について説明した。これらスリット75や副スリット76,77に非磁性の樹脂等を充填してもよい。このように構成することで、スリット75や副スリット76,77にフラックスバリアの機能を持たせつつ、ロータコア32の剛性を高めることができる。
【符号の説明】
【0073】
1…減速機付きモータ、2…電動モータ(回転電機)、3…減速部、4…コントローラ部、5…モータケース、6…第1モータケース、6a…開口部、7…第2モータケース、7a…開口部、8…ステータ、9…ロータ、10…底部、10a…貫通孔、11…コネクタ、16…外フランジ部、17…外フランジ部、19…スロット、20…ステータコア、21…コア部、22…ティース、22a…ティース本体、22b…鍔部、23…インシュレータ、24…コイル、31…シャフト、32…ロータコア、33…永久磁石、33a…内側面、33b…外側面、33c…横側面、36…磁石収納部、37…ホルダ、38…ホルダ、39…カバー、40…ギアケース、40a…開口部、40b…側壁、40c…底壁、41…ウォーム減速機構、42…ギア収容部、43…開口部、44…ウォーム軸、45…ウォームホイール、46…軸受、47…軸受、48…出力軸、48a…スプライン、49…軸受ボス、52…リブ、56…コントローラ収容部、60…回転位置検出部、61…磁気検出素子、62…コントローラ基板、63…カバー、71…シャフト固定部、72…突極部、73…基部、73a…基部側面、74…先端部、74a…先端部側面、74b…端面、75…スリット、76…第1副スリット、77…第2副スリット、77a…直線副スリット、77b…円弧副スリット、81…嵌合部、81a…壁、81b…壁、83…ラビリンス部、Ca…回転軸線、Co…円弧中心、G…隙間、L1…周長、L2…周長、SL…基準直線