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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067939
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】こんろ用ガスバーナ及び加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/00 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
F24C15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178370
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷野 涼
(72)【発明者】
【氏名】横山 敬仁
(72)【発明者】
【氏名】平田 健
(57)【要約】
【課題】熱効率の向上や熱分布の改善を図ることと、鍋底温度センサで鍋底温度を正確に検出することを、両立する。
【解決手段】こんろ用ガスバーナ1は、バーナキャップ11、鍔部12及び鍋底温度センサ13を備える。バーナキャップ11は、貫通孔110を中心部に有し、かつ複数の炎孔115を外周部に有する。鍔部12は、バーナキャップ11の上方に設けられる。鍋底温度センサ13は、バーナキャップ11の貫通孔110に挿通される。バーナキャップ11の外径寸法をXとし、鍔部12のうちバーナキャップ11から径方向外側に張り出す寸法をYとしたとき、バーナキャップ11及び鍔部12は、Y≧X/10の関係を満たすように設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に貫通した貫通孔を中心部に有し、かつ複数の炎孔を外周部に有する筒状のバーナキャップと、
前記バーナキャップの上方に設けられた環状の鍔部と、
前記バーナキャップの前記貫通孔に挿通された鍋底温度センサと、を備え、
前記バーナキャップの外径寸法をXとし、前記鍔部のうち前記バーナキャップから径方向外側に張り出す寸法をYとしたとき、前記バーナキャップ及び前記鍔部は、Y≧X/10の関係を満たすように設けられている、
こんろ用ガスバーナ。
【請求項2】
上下に貫通した貫通孔を中心部に有し、かつ複数の炎孔を外周部に有する筒状のバーナキャップと、
前記バーナキャップの上方に設けられた環状の鍔部と、
前記バーナキャップの前記貫通孔に挿通された鍋底温度センサと、を備え、
前記鍔部は、前記バーナキャップから径方向外側に4mm以上張り出すように設けられている、
こんろ用ガスバーナ。
【請求項3】
前記鍔部は、前記バーナキャップとは別体のキャップカバーで構成されている、
請求項1又は2のこんろ用ガスバーナ。
【請求項4】
前記複数の炎孔の向きは、各炎孔における前記バーナキャップの径方向外側の向きを基準として、前記バーナキャップの周方向の同一側に傾いている、
請求項1又は2のこんろ用ガスバーナ。
【請求項5】
請求項4のこんろ用ガスバーナと、
前記こんろ用ガスバーナが装着された調理器本体と、
前記調理器本体の上面に設置され、鍋を載せるための複数の爪部を有する五徳と、を備え、
前記複数の爪部は、前記こんろ用ガスバーナを囲むように前記五徳を設置したときに、前記バーナキャップの径方向外側の向きに伸びるように設けられている、
加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、こんろ用ガスバーナと、これを備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスバーナを備えた加熱調理器が知られている。特許文献1には、鍋底温度センサを備えたガスバーナが、開示されている。このガスバーナは、上下に貫通した貫通孔を有するバーナキャップを備え、このバーナキャップの貫通孔に、鍋底温度センサが挿し通されている。
【0003】
バーナキャップの外周部には、バーナキャップの周方向に並ぶように複数の炎孔が設けられている。ガスバーナの炎は、バーナキャップの各炎口を通じて生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-91986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したガスバーナにおいては、加熱調理における熱効率の向上や熱分布の改善を図るためには、一般的に、バーナキャップの外径を小さく設定することが望ましい。
【0006】
しかし、バーナキャップの外径を小さく設定することにより、鍋底温度センサでの温度検出に悪影響が及びやすくなる。つまり、バーナキャップの外径が小さく設定されていると、特に弱火にしたときに鍋底温度センサに対して炎の影響が及びやすくなり、その影響で鍋底温度センサが鍋底温度を正確に検出しにくくなるという問題があった。
【0007】
本開示は、バーナキャップの外径を小さく設定して熱効率の向上や熱分布の改善を図ることと、弱火にしたときでも鍋底温度センサで鍋底温度を正確に検出することを、両立することができるこんろ用ガスバーナ及び加熱調理器を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るこんろ用ガスバーナは、上下に貫通した貫通孔を中心部に有し、かつ複数の炎孔を外周部に有する筒状のバーナキャップと、前記バーナキャップの上方に設けられた環状の鍔部と、前記バーナキャップの前記貫通孔に挿通された鍋底温度センサと、を備える。前記バーナキャップの外径寸法をXとし、前記鍔部のうち前記バーナキャップから径方向外側に張り出す寸法をYとしたとき、前記バーナキャップ及び前記鍔部は、Y≧X/10の関係を満たすように設けられている。
【0009】
本開示の別態様に係るこんろ用ガスバーナは、上下に貫通した貫通孔を中心部に有し、かつ複数の炎孔を外周部に有する筒状のバーナキャップと、前記バーナキャップの上方に設けられた環状の鍔部と、前記バーナキャップの前記貫通孔に挿通された鍋底温度センサとを備える。前記鍔部は、前記バーナキャップから径方向外側に4mm以上張り出すように設けられている。
【0010】
本開示の一態様に係る加熱調理器は、前記一態様に係るこんろ用ガスバーナ又は前記別態様に係るこんろ用ガスバーナと、前記こんろ用ガスバーナが装着された調理器本体と、前記調理器本体の上面に設置され、鍋を載せるための複数の爪部を有する五徳と、を備える。前記複数の炎孔の向きは、各炎孔における前記バーナキャップの径方向外側の向きを基準として、前記バーナキャップの周方向の同一側に傾いている。前記複数の爪部は、前記こんろ用ガスバーナを囲むように前記五徳を設置したときに、前記バーナキャップの径方向外側の向きに伸びるように設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、加熱調理における熱効率の向上や熱分布の改善を図ることと、弱火にしたときでも鍋底温度センサで鍋底温度を正確に検出することを、両立することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態の加熱調理器の平面図である。
図2図2は、同上の加熱調理器に設置されたこんろ用ガスバーナの平面図である。
図3図3は、図2のA-A線断面図である。
図4図4は、同上のこんろ用ガスバーナの正面図である。
図5図5は、図4のB-B線断面図である。
図6図6Aは、同上のこんろ用ガスバーナにおいて鍋を弱火で加熱する様子を示した要部断面図である。図6Bは、比較例1のこんろ用ガスバーナにおいて鍋を弱火で加熱する様子を示した要部断面図である。図6Cは、比較例2において鍋を弱火で加熱する様子を示した要部断面図である。
図7図7は、同上の加熱調理器に設置された別のこんろ用ガスバーナの平面図である。
図8図8は、図7のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)実施形態
図1には、一実施形態の加熱調理器9を示している。一実施形態の加熱調理器9は、ガスこんろであって、詳しくは、図示略のキッチンカウンターに設置されるドロップイン型のガスこんろである。以下の文中で用いる方向は、加熱調理器9が設置された状態を基準とする。
【0014】
(1.1)加熱調理器
一実施形態の加熱調理器9は、こんろ用ガスバーナ1(以下、単に「ガスバーナ1」という。)と、ガスバーナ1が装着された調理器本体7とを備えている。
【0015】
調理器本体7は、ケーシング72と天板74とを有している。調理器本体7の箱型の外殻は、ケーシング72と天板74とで構成されている。ケーシング72は、上方に開放された開口を有する矩形箱型のケーシングである。天板74は、ケーシング72の開口を覆うように、ケーシング72上に設置されている。
【0016】
天板74には複数の孔76が上下に貫通形成されており、各孔76を通じて、対応するガスバーナ1の一部が上方に突出している。一実施形態の加熱調理器9においては、ガスバーナ1が左右に2つ設置され、これら左右のガスバーナ1の後ろに、別のガスバーナ1が1つ設置されている。
【0017】
左右のガスバーナ1は、後ろのガスバーナ1に比較して高火力のガスバーナである。換言すると、左右のガスバーナ1は高火力のガスバーナであり、後ろのガスバーナは小火力のガスバーナである。
【0018】
調理器本体7は、複数の操作部78を更に有している。一実施形態の加熱調理器9においては、複数の操作部78のうち少なくとも1つが操作されることで、対応するガスバーナ1の点火と消火の切換えや、対応するガスバーナ1の火力調整が行われる。
【0019】
更に、一実施形態の加熱調理器9は、調理器本体7の上面に設置される五徳8を、複数備えている。
【0020】
複数の五徳8は、3つガスバーナ1に一対一で対応する3つの五徳8である。各五徳8は、対応するガスバーナ1の一部(後述の鍔部12やバーナキャップ11)を囲んで位置するように、天板74の上面に設置されている。
【0021】
以下においては、加熱調理器9が備える各構成について、更に詳細に説明する。
【0022】
(1.2)こんろ用ガスバーナ
図2から図5には、左右に並んだ高火力のガスバーナ1の1つを示している。
【0023】
以下においては、図2から図5に示す高火力のガスバーナ1に基づいて、本実施形態のガスバーナ1の詳細な構造を説明する。
【0024】
ガスバーナ1は、筒状のバーナキャップ11と、環状の鍔部12と、鍋底温度センサ13と、バーナ本体14と、点火プラグ15とを備えている。
【0025】
(1.2.1)バーナキャップ
バーナキャップ11は、上下に貫通した円筒状の部材である(図3等参照)。バーナキャップ11は、例えばアルミニウム合金で形成されている。筒状であるバーナキャップ11は、上下に貫通した貫通孔110を中心部分に有し、かつ複数の炎孔115を外周部分に有している(図4等参照)。
【0026】
バーナキャップ11は、貫通孔110が設けられた円筒状の内筒部111と、内筒部111よりも径方向外側に位置する円筒状の外筒部113と、内筒部111及び外筒部113の互いの上部をつなぐ連結部117とを備えている。本明細書において単に「径方向」というときは、バーナキャップ11の径方向を意味する。
【0027】
内筒部111と外筒部113は、平面視において(換言すると、貫通孔110の軸線に沿った向きで見たときに)同心円状に位置する。
【0028】
内筒部111の下部は、外筒部113よりも下方に突出して位置している。外筒部113の上部は、内筒部111よりも上方に突出して位置している。外筒部113の上端部が、バーナキャップ11のうち最も上方に突出した上端部分19を構成している。
【0029】
複数の炎孔115は、外筒部113に形成されている。複数の炎孔115は、周方向に互いに距離をあけて並ぶように形成されている。本明細書において単に「周方向」というときは、バーナキャップ11の周方向を意味する。各炎孔115は、径方向外側に向けて開口し、径方向内側に向けて開口し、かつ下側に向けて開口している。バーナキャップ11がバーナ本体14に載置された状態で、各炎孔115の下側の開口は、バーナ本体14で塞がれる。
【0030】
図5に示すように、複数の炎孔115の向き(つまり複数の炎孔115からそれぞれ炎が噴き出す向き)は、径方向外側の向きを基準として、周方向の同一側(具体的には平面視における反時計回りの側)に傾いている。これにより、一実施形態のガスバーナ1では、複数の炎孔115からの炎が、平面視において反時計回りの側に傾いて噴出する。そのため、ガスバーナ1から噴出する炎と鍋との接触範囲が広くなり、加熱調理における熱効率の向上や熱分布の改善が図られる。上記の傾きの角度θは、例えば20°から27°の範囲内で設定されていることが好ましい。
【0031】
バーナキャップ11の連結部117は、上側の部分ほど径方向外側に位置するように、全体が傾斜している。連結部117は、上側の部分ほど(換言すると径方向外側の部分ほど)漸次的に勾配が小さくなるように形成されている。
【0032】
(1.2.2)鍔部
鍔部12は、バーナキャップ11とは別体のキャップカバー2で構成されている。
【0033】
キャップカバー2は、バーナキャップ11の上に位置するように、バーナキャップ11の上端部分に固定されている。
【0034】
キャップカバー2とバーナキャップ11とは、互いの係合によって固定されてもよいし、ビス止め等の他の手段で固定されてもよい。一実施形態のガスバーナ1において、キャップカバー2とバーナキャップ11の間には、円環状の中間部材3が介在している。
【0035】
キャップカバー2は、平面視において円環状の主体部21と、主体部21の径方向内側の端縁部から下方に延びた内側の垂下片23と、主体部21の径方向外側の端縁部から下方に延びた外側の垂下片25と、外側の垂下片25の下端縁部から径方向内側に延びた折り返し片27とを有している。
【0036】
キャップカバー2の主体部21、内側の垂下片23、外側の垂下片25及び折り返し片27は、一体に形成されている。キャップカバー2はステンレス製の部材である。
【0037】
キャップカバー2の外径寸法は、バーナキャップ11の外径寸法よりも大きく設定されている。キャップカバー2は、その全周に亘ってバーナキャップ11よりも径方向外側に張り出している。換言すると、キャップカバー2は、その全周に亘って複数の炎孔115よりも径方向外側に張り出している。
【0038】
バーナキャップ11と鍔部12との寸法関係については後述する。
【0039】
(1.2.3)鍋底用温度センサ
鍋底温度センサ13は、ガスバーナ1によって加熱される調理容器6の底面に当接して温度を検出するように構成されている(図6A参照)。
【0040】
鍋底温度センサ13は、バーナキャップ11よりも上方に突出するように、バーナキャップ11の貫通孔110に挿通されている。鍋底温度センサ13のうち調理容器6に当接するように構成された面130は、バーナキャップ11及びキャップカバー2(すなわち鍔部12)よりも上方に位置している。
【0041】
(1.2.4)バーナ本体
バーナ本体14は、円筒状の外形を有するバーナヘッド142と、バーナヘッド142と一体に成形されたスロート部146と、バーナヘッド142及びスロート部146と一体に成形されたフランジ部148とを有している。
【0042】
バーナヘッド142は、上下に貫通した貫通孔143を中心部分に有する円筒状の部分である。貫通孔143には、鍋底温度センサ13が挿通されている。
【0043】
バーナヘッド142の上部には、バーナキャップ11が着脱可能に載置される。換言すると、バーナヘッド142の上部が、バーナキャップ11を載置するための載置部144を構成している。
【0044】
バーナヘッド142にバーナキャップ11が載置された状態で、鍋底温度センサ13は、バーナヘッド142の貫通孔143とバーナキャップ11の貫通孔110とを通じて、バーナキャップ11よりも上方に突出する。
【0045】
スロート部146は、ガスバーナ1の混合管を構成する部分であり、バーナヘッド142の外周壁から水平方向に突出している。スロート部146は、バーナヘッド142の外周壁と一体に設けられている。スロート部146は、バーナヘッド142の内部空間に連通した図示略の内部流路と、この内部流路が開口した上流端部147とを有している。
【0046】
フランジ部148は、スロート部146の外周壁から水平方向に延出された、平板状の部分である。フランジ部148には、保持台17が固定されている。
【0047】
保持台17は、ガス供給管18の下流端部が嵌め込まれる凹部175を有している。ガス供給管18は、スロート部146の内部流路にガスを供給するための管である。保持台17は、図示略の取付具を介してケーシング72に固定される。
【0048】
一実施形態の加熱調理器9では、ガス供給管18を通じてスロート部146に燃料ガスが供給され、該燃料ガスと共に周囲の空気が一次空気として供給される。スロート部146に供給された燃料ガスと一次空気は、スロート部146の内部流路において混合された後に、バーナヘッド142に供給される。
【0049】
(1.2.5)点火プラグ
点火プラグ15は、バーナヘッド142の外周面に沿って起立するように設置されている(図4等参照)。点火プラグ15の先端部には、放電電極151が設けられている。放電電極151は、バーナキャップ11が有する点火ターゲット部116に対して上下方向に対向する位置にある。点火ターゲット部116は、バーナキャップ11の外周面から径方向外側に突出している。
【0050】
一実施形態のガスバーナ1においては、点火プラグ15の放電電極151が、点火ターゲット部116との間でスパークを生じさせる。これによって、各炎孔115から吹き出した混合気体が点火され、各炎孔115から炎が噴出する燃焼状態となる。
【0051】
(1.2.6)バーナキャップと鍔部との寸法比
図3図4等に示すように、バーナキャップ11の上に位置する鍔部12(キャップカバー2)の外径寸法は、バーナキャップ11の外径寸法よりも大きく設定されている。バーナキャップ11の外径寸法Xを測定するにあたって、点火ターゲット部116は含まれない。
【0052】
具体的には、バーナキャップ11の外径寸法をXとし、鍔部12(キャップカバー2)のうちバーナキャップ11から径方向外側に張り出す寸法をYとしたとき、X=47mmであり、Y=5mmである。一実施形態のガスバーナ1においては、鍔部12の全周に亘ってY=5mmで設定されている。
【0053】
一実施形態のガスバーナ1においては、鍔部12の全周に亘って、XとYの寸法比がY≧X/10の関係を満たすように設けられており、また、鍔部12がバーナキャップ11から(換言すると複数の炎孔115から)径方向外側に5mm張り出すように、つまり4mm以上張り出すように設けられている。
【0054】
ここで、円環状である鍔部12(キャップカバー2)の外径寸法をWとしたとき、Y=(W-X)/2の関係が成り立つ。そのため、一実施形態のガスバーナ1では、WとXの寸法比がW-X≧X/5の関係を満たすように設けられている。
【0055】
一実施形態のガスバーナ1では、バーナキャップ11の外径を、従来は高火力であれば60mmから70mmの範囲内で設定されることが一般的であるのに対して、47mmと大幅に小さく設定することで、熱効率の向上や熱分布の改善を図っている。
【0056】
加えて、一実施形態のガスバーナ1では、鍔部12を、バーナキャップ11から径方向外側に5mm張り出すように設けているので、図6Aに示すようにガスバーナ1が弱火に設定されたときでも、各炎孔115から噴出する炎と鍋底温度センサ13との間には距離が確保される。そのため、弱火のときでも鍋底温度センサ13に炎の影響が及びにくく、鍋底温度を鍋底温度センサ13で正確に検出しやすいという効果が得られる。
【0057】
なお、鍋底温度センサ13に及ぶ炎の影響は、バーナキャップ11の貫通孔110を通じて流れる高温の空気の流れ(図6Aの矢印参照)に拠り、また、炎からの熱放射に拠ると考えられる。
【0058】
図6Bには比較例1として、ガスバーナ1に鍔部12が設けられていない例を示している。この例では、ガスバーナ1が弱火に設定されたときに、鍋底温度センサ13の近くに炎が立ち上がり、炎の影響が鍋底温度センサ13に及びやすくなる。そのため、鍋底温度を鍋底温度センサ13で正確に検出しにくくなる。
【0059】
図6Cには比較例2として、鍔部12がバーナキャップ11から径方向外側に張り出す寸法を、2mmに設定した例を示している。この例では、ガスバーナ1が弱火に設定されたときに、やはり鍋底温度センサ13の近くに炎が位置する。そのため、鍋底温度を鍋底温度センサ13で正確に検出しにくくなる。発明者等は実験によって、上記の寸法を2mmに設定した場合には本開示の効果が得られず、上記寸法を5mmに設定した場合に本開示の効果が得られることを、明らかにしている。
【0060】
比較例1,2との対比からも理解されるように、一実施形態のガスバーナ1によれば、バーナキャップ11の外径を小さく設定して熱効率の向上や熱分布の改善を図ることと、弱火にしたときでも鍋底温度センサ13で鍋底温度を正確に検出することを、両立することができる。
【0061】
(1.3)小火力のガスバーナ
図7図8には、小火力のガスバーナ1を示している。小火力のガスバーナ1は、高火力のガスバーナ1と同様に、筒状のバーナキャップ11と、環状の鍔部12と、鍋底温度センサ13と、バーナ本体14と、点火プラグ15とを備えている。
【0062】
小火力のガスバーナ1の構成のうち、高火力のガスバーナ1と同様の構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0063】
小火力のガスバーナ1においては、バーナキャップ11の外径寸法をXとし、鍔部12(キャップカバー2)のうちバーナキャップ11から径方向外側に張り出す寸法をYとしたとき、X=40mmであり、Y=4.3mmである。
【0064】
小火力のガスバーナ1においても、高火力のガスバーナ1と同様にXとYの寸法比はY≧X/10の関係を満たしている。また、鍔部12がバーナキャップ11から径方向外側に4mm以上張り出すように設けられている。
【0065】
一実施形態の加熱調理器9において、小火力のガスバーナ1の火力は1100kcal/h(1.28kW)である。これに対して、高火力である左右のガスバーナ1の火力は3010kcal/h(5.5kW)である。一実施形態の加熱調理器9は備えていないが、2550kcal/h(2.97kW)の火力を有した中火力のガスバーナ1を備えることも可能である。中火力のガスバーナ1においては、高火力のガスバーナ1と同様にX=47mm、Y=5mmで設定することが好ましい。
【0066】
以上のように、高火力、中火力及び小火力のいずれのガスバーナ1においても、XとYの寸法比がY≧X/10の関係を満たすように設定することが好ましく、また、鍔部12がバーナキャップ11から径方向外側に4mm以上張り出すように設定することが好ましい。
【0067】
バーナキャップ11の外径寸法は、40mmから50mmの範囲内で設定されることが好ましく、鍔部12がバーナキャップ11から径方向外側に張り出す寸法は、4mmから10mmの範囲内で設定されることが好ましい。
【0068】
高火力のガスバーナ1においては、鍔部12がバーナキャップ11から径方向外側に張り出す寸法は、5mmから10mmの範囲内で設定されることも好ましい。小火力のガスバーナ1においては、鍔部12がバーナキャップ11から径方向外側に張り出す寸法が、2mm以上で設定されることも好ましく、また、10mm以下で設定されることも好ましい。
【0069】
(1.4)五徳
図1等に示すように、五徳8は、リング部81と、リング部81の外周縁部に結合された複数の爪部85とを有する。調理器本体7の天板74に五徳8が設置された状態において、リング部81は、ガスバーナ1の鍔部12やバーナキャップ11を同心円状に囲んで位置する。
【0070】
複数の爪部85は、リング部81の周方向に等間隔を隔てて配置されている。天板74に五徳8が設置された状態での平面視において、五徳8の各爪部85は、リング部81の径方向外側の向きに延びるように設けられており、換言すると、鍔部12やバーナキャップ11の径方向外側の向きに伸びるように設けられている(図5の想像線参照)。
【0071】
上記したように、一実施形態の加熱調理器9では、バーナキャップ11から炎が噴き出す向きが周方向に傾いているが、ここでの傾きの角度θが、20°から27°の範囲内で設定されている場合には、各炎孔115から噴き出した炎が爪部85に直接的に当たることは有効に避けられる。
【0072】
(2)変形例
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されない。本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更を行うことが可能である。
【0073】
例えば、一実施形態のガスバーナ1において、鍔部12は、バーナキャップ11とは別体のキャップカバー2で構成されているが、鍔部12とバーナキャップ11とを一体に形成することも可能である。鍔部12とバーナキャップ11の互いの材質は相違しているが、鍔部12とバーナキャップ11を同一の材質とすることも可能である。
【0074】
一実施形態のガスバーナ1では、バーナキャップ11の複数の炎孔115の向きが、平面視において反時計回りの側に傾いているが、時計回りの側に傾いてもよい。複数の炎孔115の傾きの角度θは、均一であってもよいし、互いに相違してもよい。また、複数の炎孔115の向きが傾いていなくてもよい。この場合には、径方向外側の向きと一致する。
【0075】
一実施形態の加熱調理器9では、一般的な五徳8を用い、調理器本体7の上面に五徳8を設置したときに、五徳8の各爪部85が径方向外側の向きに伸びるように設けているが、これとは別タイプの五徳8を設置することも可能である。
【0076】
別タイプの五徳8は、例えば、複数の爪部85が、リング部81の周方向の同一側に傾いたタイプの五徳である。このタイプにおいては、各爪部85が、リング部81の径方向外側の向きを基準として反時計回りの側に傾いている。上記の別タイプの五徳8を調理器本体7の上面に設置したときには、ガスバーナ1から噴出する炎の傾きの角度θが例えば27°を超えて設定されていても、ガスバーナ1から噴出する炎が五徳8の各爪部85に当たることは有効に避けられる。
【0077】
一実施形態のガスバーナ1においては、鍔部12とバーナキャップ11の外形が、円環状に構成されているが、それぞれ別形状、例えば、全周に亘って12角形、24角形等の多角形状に構成されてもよく、また、円環状の一部が直線状に置き換わった形状に構成されてもよい。
【0078】
つまり、本開示においては、バーナキャップ11の全周に亘って鍔部12が径方向外側に張り出していればよく、鍔部12とバーナキャップ11の具体的な外形は限定的に解釈されない。
【0079】
(3)態様
第1の態様のこんろ用ガスバーナ(1)は、筒状のバーナキャップ(11)と、環状の鍔部(12)と、鍋底温度センサ(13)とを備える。バーナキャップ(11)は、上下に貫通した貫通孔(110)を中心部に有し、かつ複数の炎孔(115)を外周部に有する。鍔部(12)は、バーナキャップ(11)の上方に設けられている。鍋底温度センサ(13)は、バーナキャップ(11)の貫通孔(110)に挿通されている。バーナキャップ(11)の外径寸法をXとし、鍔部(12)のうちバーナキャップ(11)から径方向外側に張り出す寸法をYとしたとき、バーナキャップ(11)及び鍔部(12)は、Y≧X/10の関係を満たすように設けられている。
【0080】
この態様によれば、バーナキャップ(11)の外径を小さく設定して加熱調理における熱効率の向上や熱分布の改善を図ることと、弱火にしたときでも鍋底温度センサ(13)で鍋底温度を正確に検出することが、両立される。
【0081】
第2の態様のこんろ用ガスバーナ(1)は、筒状のバーナキャップ(11)と、環状の鍔部(12)と、鍋底温度センサ(13)とを備える。バーナキャップ(11)は、上下に貫通した貫通孔(110)を中心部に有し、かつ複数の炎孔(115)を外周部に有する。鍔部(12)は、バーナキャップ(11)の上方に設けられている。鍋底温度センサ(13)は、バーナキャップ(11)の貫通孔(110)に挿通されている。鍔部(12)は、バーナキャップ(11)から径方向外側に4mm以上張り出すように設けられている。
【0082】
この態様によれば、バーナキャップ(11)の外径を小さく設定して加熱調理における熱効率の向上や熱分布の改善を図ることと、弱火にしたときでも鍋底温度センサ(13)で鍋底温度を正確に検出することが、両立される。
【0083】
第3の態様のこんろ用ガスバーナ(1)では、第1又は第2の態様において、鍔部(12)は、バーナキャップ(11)とは別体のキャップカバー(2)で構成されている。
【0084】
この態様によれば、例えば弱火にしたときに、鍔部(12)すなわちキャップカバー(2)が加熱されても、キャップカバー(2)からバーナキャップ(11)への伝熱は抑えられるので、バーナキャップ(11)の熱疲労が抑制され、バーナキャップ(11)の高寿命化が図られる。
【0085】
第4の態様のこんろ用ガスバーナ(1)では、第1から第3のいずれか1つの態様において、複数の炎孔(115)の向きは、各炎孔(115)におけるバーナキャップ(11)の径方向外側の向きを基準として、バーナキャップ(11)の周方向の同一側に傾いている。
【0086】
この態様によれば、複数の炎孔(115)から噴出する炎と鍋との接触範囲が広くなり、加熱調理における熱効率の向上や熱分布の改善が図られる。
【0087】
第5の態様の加熱調理器(9)は、第4の態様のこんろ用ガスバーナ(1)と、調理器本体(7)と、五徳(8)とを備える。調理器本体(7)には、こんろ用ガスバーナ(1)が装着されている。五徳(8)は、調理器本体(7)の上面に設置され、鍋を載せるための複数の爪部(85)を有する。複数の爪部(85)は、こんろ用ガスバーナ(1)を囲むように五徳(8)を設置したときに、バーナキャップ(11)の径方向外側の向きに伸びるように設けられている。
【0088】
この態様によれば、加熱調理器(9)において、こんろ用ガスバーナ(1)の複数の炎孔(115)から噴出する炎と鍋との接触範囲が広くなり、熱効率の向上や熱分布の改善が図られる。しかも、五徳(8)としては一般的なものを適用することができるため、部品の共通化によって加熱調理器の生産性が高まる。
【符号の説明】
【0089】
1 こんろ用ガスバーナ
11 バーナキャップ
110 貫通孔
115 炎孔
12 鍔部
13 鍋底温度センサ
2 キャップカバー
6 調理容器
7 調理器本体
8 五徳
85 爪部
9 加熱調理器
X 外径寸法
Y 寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8