(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067945
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】弾性膜及びその取付構造
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20240510BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240510BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240510BHJP
【FI】
B24B37/30 C
H01L21/304 622G
B24B41/06 L
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178379
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】深澤 新平
(72)【発明者】
【氏名】増根 昭洋
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034DD10
3C034DD20
3C158AA07
3C158CB03
3C158CB04
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA14
3C158EA22
3C158EB01
5F057AA31
5F057BA11
5F057CA11
5F057DA03
5F057EC21
5F057EC24
5F057FA12
5F057FA30
(57)【要約】
【課題】研磨ヘッドへの接着が容易な弾性膜を提供する。
【解決手段】弾性膜10は、CMP装置の研磨ヘッドに取り付けられてウエハ保持に用いられる。弾性膜10は、ウエハ保持面111aを有するシリコーンゴム層111と、シリコーンゴム層111のウエハ保持面111aの反対側に積層された非シリコーン材料で形成された板状の補強材112とを備える。研磨ヘッド取付側における研磨ヘッドへの接着予定部分14に補強材112が露出している。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMP装置の研磨ヘッドに取り付けられてウエハ保持に用いられる弾性膜であって、
ウエハ保持面を有するシリコーンゴム層と、
前記シリコーンゴム層の前記ウエハ保持面の反対側に積層された非シリコーン材料で形成された板状の補強材と、
を備え、
研磨ヘッド取付側における研磨ヘッドへの接着予定部分に前記補強材が露出している弾性膜。
【請求項2】
請求項1に記載された弾性膜において、
前記シリコーンゴム層との間で前記補強材を挟むように設けられた研磨ヘッド取付側ゴム層を更に備えた弾性膜。
【請求項3】
請求項2に記載された弾性膜において、
前記研磨ヘッド取付側ゴム層が前記シリコーンゴム層と同一のシリコーンゴムの架橋ゴムで形成されている弾性膜。
【請求項4】
請求項2に記載された弾性膜において、
前記研磨ヘッド取付側ゴム層が前記補強材に形成された孔を介して前記シリコーンゴム層に結合している弾性膜。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された弾性膜のCMP装置の研磨ヘッドへの取付構造であって、
前記弾性膜の前記接着予定部分に露出した前記補強材が接着層を介して前記研磨ヘッドに接着されている取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMP装置の研磨ヘッドに取り付けられてウエハ保持に用いられる弾性膜及びその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
CMP装置の研磨ヘッドには、ウエハ保持に用いられる弾性膜が取り付けられる。特許文献1には、かかる弾性膜として、研磨ヘッド取付側の内側ゴム層と、ウエハ保持側の外側ゴム層と、それらの間の中間剛体層とを備えたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、研磨ヘッドへの接着が容易な弾性膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、CMP装置の研磨ヘッドに取り付けられてウエハ保持に用いられる弾性膜であって、ウエハ保持面を有するシリコーンゴム層と、前記シリコーンゴム層の前記ウエハ保持面の反対側に積層された非シリコーン材料で形成された板状の補強材とを備え、研磨ヘッド取付側における研磨ヘッドへの接着予定部分に前記補強材が露出している。
【0006】
本発明は、本発明の弾性膜のCMP装置の研磨ヘッドへの取付構造であって、前記弾性膜の前記接着予定部分に露出した前記補強材が接着層を介して前記研磨ヘッドに接着されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非シリコーン材料で形成されて接着が比較的容易である補強材が、研磨ヘッド取付側における研磨ヘッドへの接着予定部分に露出しているので、研磨ヘッドへの接着を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1B】実施形態1に係る弾性膜の断面斜視図である。
【
図2】実施形態1に係る弾性膜のCMP装置の研磨ヘッドへの取付構造を示す断面図である。
【
図3】実施形態1に係る弾性膜の変形例の断面斜視図である。
【
図4】実施形態2に係る弾性膜の断面斜視図である。
【
図5】実施形態2に係る弾性膜のCMP装置の研磨ヘッドへの取付構造を示す断面図である。
【
図6】実施形態3に係る弾性膜の断面斜視図である。
【
図7】実施形態3に係る弾性膜のCMP装置の研磨ヘッドへの取付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1A及びBは、実施形態1に係る弾性膜10を示す。この弾性膜10は、CMP装置の研磨ヘッドに取り付けられ、研磨パッドに圧接させて研磨する半導体ウエハのウエハ保持に用いられる。なお、以下では、研磨ヘッド取付側を「上」及びウエハ保持側を「下」として説明する。
【0011】
実施形態1に係る弾性膜10は、円盤状の膜本体11と、その周縁に連続して上側に延びるように一体に設けられた円筒状の筒状部12と、その上端に連続して内側に延びるように一体に設けられた環状の環状部13とを有する浅底の円形皿状に形成されている。膜本体11、筒状部12、及び環状部13の厚さは、例えば0.3mm以上6mm以下である。
【0012】
膜本体11は、下側のシリコーンゴム層111と上側の板状の補強材112とを備える。
【0013】
シリコーンゴム層111は、円盤状に形成されており、その平坦な下面によって構成されたウエハ保持面111aを有する。シリコーンゴム層111の上面には、シリコーンゴム層111の直径よりもやや小さい内径の有底円盤孔が形成されている。シリコーンゴム層111の有底円盤孔が形成されている部分の厚さは、例えば0.1mm以上2mm以下である。シリコーンゴム層111は、シリコーンゴムの架橋ゴムで形成されている。
【0014】
補強材112は、シリコーンゴム層111の有底円盤孔と同一形状の上下面が平坦面の円盤状に形成されており、その有底円盤孔に内嵌めされている。これにより、補強材112は、シリコーンゴム層111のウエハ保持面111aの反対側に積層された構成となっている。補強材112は、シリコーンゴム層111に接着されていてもよい。
【0015】
補強材112は、水や溶剤への接触角がシリコーンゴムよりも小さい易接着性の非シリコーン材料で形成されている。補強材112を形成する材料としては、樹脂及び金属が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)などの熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂等が挙げられる。補強材112が樹脂で形成されている場合、そのタイプDデュロメータで測定される硬さは、好ましくは10以上95以下、より好ましくは50以上95以下である。この硬さは、JIS K7215-1986に基づいて測定されるものである。金属としては、例えば、SUS304などのステンレス等が挙げられる。補強材112は、樹脂と金属との複合材で構成されていてもよい。
【0016】
補強材112の厚さは、例えば0.02mm以上2mm以下である。補強材112の厚さは、シリコーンゴム層111の有底円盤孔が形成されている部分の厚さと、同一であっても、異なっていても、どちらでもよい。
【0017】
筒状部12は、シリコーンゴム層111と一体に形成されているとともに、その下面の内周側の部分が膜本体11の補強材112の周縁部に当接して係合し、それにより補強材112を物理的に固定している。環状部13は、筒状部12と一体に形成されている。したがって、筒状部12及び環状部13は、膜本体11のシリコーンゴム層111と同一のシリコーンゴムの架橋ゴムで形成されている。
【0018】
実施形態1に係る弾性膜10では、
図1Bに破線で示す研磨ヘッド取付側における膜本体11の中央部分に研磨ヘッドへの接着予定部分14が構成されている。その接着予定部分14には、補強材112の研磨ヘッド取付側の上面が露出している。
【0019】
図2は、実施形態1に係る弾性膜10のCMP装置の研磨ヘッド20への取付構造100を示す。研磨ヘッド20は、円筒状に形成されている。研磨ヘッド20の先端部の外周には、外向きに開口して周方向に延びる断面コの字状の環状溝21が設けられている。研磨ヘッド20の先端部の内側には、各々、内壁から中央に向かってやや斜め下方に延びる複数の梁状のブラケット22が周方向に間隔をおいて設けられている。それらの複数のブラケット22は、中央において結合しており、その結合部から下向きに延びる円柱状の膜取付部23が設けられている。
【0020】
実施形態1に係る弾性膜10のCMP装置の研磨ヘッド20への取付構造100では、弾性膜10の環状部13が全周に渡って研磨ヘッド20の環状溝21に嵌合するとともに、弾性膜10の研磨ヘッド取付側の接着予定部分14に露出した補強材112が接着層30を介して研磨ヘッド20の膜取付部23の先端に接着されている。接着層30は、例えば両面接着テープや接着剤の硬化物で構成されている。
【0021】
以上の構成の実施形態1に係る弾性膜10によれば、弾性膜10と研磨ヘッド20との間に単一の密閉空間が形成されるものの、ウエハ保持側のシリコーンゴム層111に補強材112が積層されて膜本体11が構成されているので、密閉空間内の圧力分布に従った膜本体11の変形が軽減され、その結果、半導体ウエハの研磨パッドへの圧接力を均一化させることができる。それに加えて、非シリコーン材料で形成された易接着性の補強材112の研磨ヘッド取付側の上面が、研磨ヘッド20への接着予定部分14に露出しているので、研磨ヘッド20への接着を容易に行うことができる。
【0022】
なお、少なくとも研磨ヘッド20への接着予定部分14に補強材112が露出していればよいので、
図3に示すように、筒状部12の下端に連続して補強材112の研磨ヘッド取付側の上面の外周側部分を被覆し、シリコーンゴム層111との間で補強材112を挟むように研磨ヘッド取付側に外周側環状ゴム層15(研磨ヘッド取付側ゴム層)が設けられていてもよい。外周側環状ゴム層15は、シリコーンゴム層111と同一のシリコーンゴムの架橋ゴムで形成されている。この外周側環状ゴム層15により、補強材112の難接着性のシリコーンゴム層111への一体性が高められるので、その結果、補強材112によるシリコーンゴム層111の高い補強効果を得ることができる。
【0023】
(実施形態2)
図4は、実施形態2に係る弾性膜10を示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は、実施形態1と同一符号で示す。
【0024】
実施形態2に係る弾性膜10では、研磨ヘッド取付側における膜本体11の内周側部分を被覆し、シリコーンゴム層111との間で補強材112を挟むように研磨ヘッド取付側に内周側環状ゴム層16(研磨ヘッド取付側ゴム層)が設けられている。内周側環状ゴム層16は、補強材112に形成された上下貫通孔112aを介してシリコーンゴム層111と結合しており、したがって、シリコーンゴム層111と同一のシリコーンゴムの架橋ゴムで形成されている。この内周側環状ゴム層16により、補強材112がシリコーンゴム層111と内周側環状ゴム層16との間に挟まれて保持され、補強材112の難接着性のシリコーンゴム層111への一体性が高められるので、その結果、補強材112によるシリコーンゴム層111の高い補強効果を得ることができる。
【0025】
実施形態2に係る弾性膜10では、研磨ヘッド取付側における膜本体11の中央部分に研磨ヘッドへの第1接着予定部分141が構成されている。これに加え、内周側環状ゴム層16の外側部分に周方向に間隔をおいて研磨ヘッドへの複数の第2接着予定部分142が構成されている。これらの第1接着予定部分141及び複数の第2接着予定部分142のいずれにも、補強材112の研磨ヘッド取付側の上面が露出している。
【0026】
図5は、実施形態2に係る弾性膜10のCMP装置の研磨ヘッド20への取付構造100を示す。研磨ヘッド20は、複数のブラケット22の結合部から下向きに延びる円柱状の第1膜取付部231が設けられているとともに、複数のブラケット22のそれぞれの中間部から下向きに延びる円柱状の第2膜取付部232が設けられている。
【0027】
実施形態2に係る弾性膜10のCMP装置の研磨ヘッド20への取付構造100では、弾性膜10の環状部13が全周に渡って研磨ヘッド20の環状溝21に嵌合するとともに、弾性膜10の第1接着予定部分141に露出した補強材112が第1接着層301を介して研磨ヘッド20の第1膜取付部231の先端に接着され、且つ複数の第2接着予定部分142に露出した補強材112が第2接着層302を介して研磨ヘッド20の対応する第2膜取付部232の先端に接着されている。
【0028】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様である。
【0029】
(実施形態3)
図6は、実施形態3に係る弾性膜10を示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は、実施形態1と同一符号で示す。
【0030】
実施形態3に係る弾性膜10は、実施形態1における膜本体11の部分と同一構成の円盤状に形成されており、したがって、下側のシリコーンゴム層111と上側の板状の補強材112とを備える。そして、弾性膜10の研磨ヘッド取付側における外周部分に研磨ヘッドへの接着予定部分14が構成されている。この接着予定部分14のうちの内周側部分には、補強材112の上面が露出している。
【0031】
図7は、実施形態3に係る弾性膜10のCMP装置の研磨ヘッド20への取付構造100を示す。研磨ヘッド20は、弾性膜10と同一外径の円筒状に形成されている。
【0032】
実施形態3に係る弾性膜10のCMP装置の研磨ヘッド20への取付構造100では、弾性膜10の研磨ヘッド取付側の接着予定部分14に露出した補強材112が接着層30を介して研磨ヘッド20の先端に接着されている。
【0033】
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、CMP装置の研磨ヘッドに取り付けられてウエハ保持に用いられる弾性膜及びその取付構造の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0035】
100 取付構造
10 弾性膜
11 膜本体
111 シリコーンゴム層
111a ウエハ保持面
112 補強材
112a 上下貫通孔
12 筒状部
13 環状部
14 接着予定部分
141 第1接着予定部分
142 第2接着予定部分
15 外周側環状ゴム層(研磨ヘッド取付側ゴム層)
16 内周側環状ゴム層(研磨ヘッド取付側ゴム層)
20 研磨ヘッド
21 環状溝
22 ブラケット
23 膜取付部
231 第1膜取付部
232 第2膜取付部
30 接着層
301 第1接着層
302 第2接着層