(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067951
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
B01J 35/57 20240101AFI20240510BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20240510BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20240510BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240510BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J35/10 301F
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178392
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樺嶋 信介
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏生
(72)【発明者】
【氏名】畑中 美穂
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 哲也
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB02
3G091AB04
3G091BA01
3G091GB06
3G091GB07
3G091GB10
4D148AA06
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4G169AA03
4G169BA01B
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4G169BC40B
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4G169BC43B
4G169BC71B
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4G169CA03
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4G169DA06
4G169EA19
4G169EB01
4G169EB12Y
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EC28
4G169EC29
4G169EE06
4G169EE09
(57)【要約】
【課題】NOx排出量及びTHC排出量を低減させる排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】排ガス浄化装置は、排ガスが流入する上流端及び前記排ガスが排出される下流端を有する基材と、前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第一距離を隔てた第一位置との間の第一領域において前記基材上に形成された、第一触媒粒子を含む第一触媒層と、前記第一領域において前記第一触媒層上に形成された、第二触媒粒子を含む第二触媒層と、を備える。前記第二触媒層は細孔を有し、前記第二触媒層の細孔連結度は、5%~35%である。前記第二触媒層の断面反射電子像において、前記第二触媒層の前記細孔の面積の平均値は0.7~9.0μm
2であってよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス浄化装置であって、
排ガスが流入する上流端及び前記排ガスが排出される下流端を有する基材と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第一距離を隔てた第一位置との間の第一領域において前記基材上に形成された、第一触媒粒子を含む第一触媒層と、
前記第一領域において前記第一触媒層上に形成された、第二触媒粒子を含む第二触媒層と、
を備え、
前記第二触媒層が細孔を有し、
下記式(1):
第二触媒層の細孔連結度(%)=(S2/900)×100 (1)
(式中、S2は、前記第二触媒層の断面反射電子像において、30μm四方の領域の外縁と交差又は接触している前記細孔の、前記30μm四方の領域内の面積の合計(μm2)の平均値を表す)
で表される前記第二触媒層の細孔連結度が5%~35%である、排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記第二触媒層の前記細孔連結度が10%~35%である、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記第二触媒層の前記断面反射電子像において、前記断面反射電子像の外縁に接触していない前記細孔の面積の平均値が0.7~9.0μm2である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記第二触媒層の前記断面反射電子像において、前記断面反射電子像の外縁に接触していない前記細孔の面積の平均値が2.0~9.0μm2である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記第二触媒層が、15~65μmの範囲内の厚さを有する、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記第二触媒層が、35~65μmの範囲内の厚さを有する、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
前記第一触媒層が細孔を有し、
下記式(2):
第一触媒層の細孔連結度(%)=(S1/900)×100 (2)
(式中、S1は、前記第一触媒層の断面反射電子像において、30μm四方の領域の外縁と交差又は接触している前記細孔の、前記30μm四方の領域内の面積の合計(μm2)の平均値を表す)
で表される前記第一触媒層の細孔連結度が5%~35%である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項8】
前記第一触媒層の前記細孔連結度が5%以上10%未満である、請求項7に記載の排ガス浄化装置。
【請求項9】
前記排ガス浄化装置が、前記下流端と前記下流端から前記上流端に向かって第二距離を隔てた第二位置との間の第二領域において、前記基材上に形成された、第三触媒粒子を含む第三触媒層をさらに備える、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項10】
前記第三触媒層が細孔を有し、
下記式(3):
第三触媒層の細孔連結度(%)=(S3/900)×100 (3)
(式中、S3は、前記第三触媒層の断面反射電子像において、30μm四方の領域の外縁と交差又は接触している前記細孔の、前記30μm四方の領域内の面積の合計(μm2)の平均値を表す)
で表される前記第三触媒層の細孔連結度が5%~35%である、請求項9に記載の排ガス浄化装置。
【請求項11】
前記第三触媒層の前記細孔連結度が10%~35%である、請求項10に記載の排ガス浄化装置。
【請求項12】
前記第二触媒層の前記断面反射電子像において、下記式(4):
細孔の複雑度=L2/S (4)
(式中、Sは、前記断面反射電子像の外縁に接触していない前記細孔の面積の平均値を表し、Lは、前記断面反射電子像の前記外縁に接触していない前記細孔の周長の平均値を表す)
で表される前記細孔の複雑度が12.6~19.0である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両で使用される内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分の排出量の規制は年々強化されており、これらの有害成分を除去するために、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が触媒として用いられている。
【0003】
特許文献1において、細孔を有する触媒層を備える排気ガス浄化用触媒が記載されている。特許文献1において、触媒層が貴金属を含む触媒粉末を含むこと、及び該貴金属としてPd及びRhが例示されることが記載されている。
【0004】
特許文献2において、基材と、基材上に形成された触媒層とを有する排ガス浄化装置が記載されている。特許文献2の排ガス浄化装置は、排ガスの流れ方向における上流領域において、基材に接して形成された第一触媒層を有し、第一触媒層は、マクロ孔を画成す内表面を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-279428号公報
【特許文献2】特開2022-061298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NOx排出量及び全炭化水素(THC)排出量のさらなる低減が望まれている。そこで、本発明は、NOx排出量及びTHC排出量を低減させることができる排ガス浄化装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様として、以下の項の態様を挙げることができる。
[項1]
排ガス浄化装置であって、
排ガスが流入する上流端及び前記排ガスが排出される下流端を有する基材と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第一距離を隔てた第一位置との間の第一領域において前記基材上に形成された、第一触媒粒子を含む第一触媒層と、
前記第一領域において前記第一触媒層上に形成された、第二触媒粒子を含む第二触媒層と、
を備え、
前記第二触媒層が細孔を有し、
下記式(1):
第二触媒層の細孔連結度(%)=(S2/900)×100 (1)
(式中、S2は、前記第二触媒層の断面反射電子像において、30μm四方の領域の外縁と交差又は接触している前記細孔の、前記30μm四方の領域内の面積の合計(μm2)の平均値を表す)
で表される前記第二触媒層の細孔連結度が5%~35%である、排ガス浄化装置。
[項2]
前記第二触媒層の前記細孔連結度が10%~35%である、項1に記載の排ガス浄化装置。
[項3]
前記第二触媒層の前記断面反射電子像において、前記断面反射電子像の外縁に接触していない前記細孔の面積の平均値が0.7~9.0μm2である、項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
[項4]
前記第二触媒層の前記断面反射電子像において、前記断面反射電子像の外縁に接触していない前記細孔の面積の平均値が2.0~9.0μm2である、項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
[項5]
前記第二触媒層が、15~65μmの範囲内の厚さを有する、項1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
[項6]
前記第二触媒層が、35~65μmの範囲内の厚さを有する、項1~5のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
[項7]
前記第一触媒層が細孔を有し、
下記式(2):
第一触媒層の細孔連結度(%)=(S1/900)×100 (2)
(式中、S1は、前記第一触媒層の断面反射電子像において、30μm四方の領域の外縁と交差又は接触している前記細孔の、前記30μm四方の領域内の面積の合計(μm2)の平均値を表す)
で表される前記第一触媒層の細孔連結度が5%~35%である、項1~6のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
[項8]
前記第一触媒層の前記細孔連結度が5%以上10%未満である、項7に記載の排ガス浄化装置。
[項9]
前記排ガス浄化装置が、前記下流端と前記下流端から前記上流端に向かって第二距離を隔てた第二位置との間の第二領域において、前記基材上に形成された、第三触媒粒子を含む第三触媒層をさらに備える、項1~8のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
[項10]
前記第三触媒層が細孔を有し、
下記式(3):
第三触媒層の細孔連結度(%)=(S3/900)×100 (3)
(式中、S3は、前記第三触媒層の断面反射電子像において、30μm四方の領域の外縁と交差又は接触している前記細孔の、前記30μm四方の領域内の面積の合計(μm2)の平均値を表す)
で表される前記第三触媒層の細孔連結度が5%~35%である、項9に記載の排ガス浄化装置。
[項11]
前記第三触媒層の前記細孔連結度が10%~35%である、項10に記載の排ガス浄化装置。
[項12]
前記第二触媒層の前記断面反射電子像において、下記式(4):
細孔の複雑度=L2/S (4)
(式中、Sは、前記断面反射電子像の外縁に接触していない前記細孔の面積の平均値を表し、Lは、前記断面反射電子像の前記外縁に接触していない前記細孔の周長の平均値を表す)
で表される前記細孔の複雑度が12.6~19.0である、項1~11のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排ガス浄化装置は、NOx排出量及びTHC排出量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る排ガス浄化装置を、排ガスの流れ方向に平行な面で切断した要部拡大端面図であり、基材の隔壁及びその近傍の構成を模式的に示している。
【
図2】
図2は、基材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る排ガス浄化装置を、排ガスの流れ方向に平行な面で切断した要部拡大端面図であり、基材の隔壁及びその近傍の構成を模式的に示している。
【
図4】
図4は、比較例1の排ガス浄化装置の第二触媒層の、排ガスの流れ方向に垂直な断面反射電子像を、画像解析ソフトにより処理して細孔を抽出した画像である。
【
図5】
図5は、比較例1の排ガス浄化装置の第二触媒層の、排ガスの流れ方向に平行な断面反射電子像を、画像解析ソフトにより処理して細孔を抽出した画像である。
【
図6】
図6は、実施例1の排ガス浄化装置の第二触媒層の、排ガスの流れ方向に垂直な断面反射電子像を、画像解析ソフトにより処理して細孔を抽出した画像である。
【
図7】
図7は、実施例1の排ガス浄化装置の第二触媒層の、排ガスの流れ方向に平行な断面反射電子像を、画像解析ソフトにより処理して細孔を抽出した画像である。
【
図8】
図8は、実施例5の排ガス浄化装置の第二触媒層の、排ガスの流れ方向に垂直な断面反射電子像を、画像解析ソフトにより処理して細孔を抽出した画像である。
【
図9】
図9は、実施例5の排ガス浄化装置の第二触媒層の、排ガスの流れ方向に平行な断面反射電子像を、画像解析ソフトにより処理して細孔を抽出した画像である。
【
図10】
図10は、実施例1~5及び比較例1~3の排ガス浄化装置のTHC浄化量を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施例1~5及び比較例1~3の排ガス浄化装置のNOx浄化量を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施例1~4、6~9の排ガス浄化装置のTHC浄化量を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施例1~4、6~9の排ガス浄化装置のNOx浄化量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下の説明で参照する図面において、同一の部材又は同様の機能を有する部材には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率が説明の都合上実際の比率とは異なったり、部材の一部が図面から省略されたりする場合がある。また、本願において、記号「~」を用いて表される数値範囲は、記号「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む。本願において記載された数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。本願において「~上に」との記載は、文脈上特に明記されていない限り、「直接的に~上に」及び「間接的に~上に」の両方を包含する。本願において、「~を含む」は追加の成分を含み得ることを意味し、「~から本質的になる」及び「~からなる」を包含する。「~から本質的になる」は、実質的に悪影響を及ぼさない追加の成分を含み得ることを意味する。「~からなる」は、記載される材料のみを含むことを意味するが、不可避の不純物を含むことを除外しない。
【0011】
実施形態に係る排ガス浄化装置100を、
図1、2を参照しながら説明する。実施形態に係る排ガス浄化装置100は、基材10、第一触媒層20、第二触媒層30、及び第三触媒層40を備える。なお、第三触媒層40は必須ではない。
【0012】
(1)基材10
基材10の形状は特に限定されないが、例えば、基材10は、
図2に示すように、枠部12と、枠部12の内側の空間を仕切って複数のセル14を画成する隔壁16から構成されてよい。枠部12と隔壁16は一体的に形成されていてよい。枠部12は、円筒状、楕円筒状、多角筒状等の任意の形状であってよい。隔壁16は、基材10の第一端(第一端面)Iと第二端(第二端面)Jの間に延設され、第一端Iと第二端Jの間で延伸する複数のセル14を画成する。各セル14の断面形状は、正方形、平行四辺形、長方形、台形などの四角形、三角形、その他の多角形(例えば、六角形、八角形)、円形等の任意の形状であってよい。
【0013】
基材10は、例えば、コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の高い耐熱性を有するセラミックス材料、又はステンレス鋼箔等の金属箔から形成されてよい。コストの観点から、基材10はコージェライト製であってよい。
【0014】
図1、2において、破線矢印は、排ガス浄化装置100及び基材10中の排ガスの流れ方向を示す。排ガスは、第一端Iを通って排ガス浄化装置100に流入し、第二端Jを通って排ガス浄化装置100から排出される。そのため、以降、適宜、第一端Iを上流端I、第二端Jを下流端Jとも呼ぶ。本明細書において、上流端Iと下流端Jの間の長さ、すなわち基材10の全長を、Lsと表す。
【0015】
(2)第一触媒層20
第一触媒層20は、上流端Iと、上流端Iから下流端Jに向かって(すなわち、排ガスの流れ方向に)第一距離Laを隔てた第一位置Pとの間の第一領域Xにおいて基材10上に形成される。第一触媒層20は、少なくとも第一領域Xに形成されていればよく、第一位置Pを越えて延在するように形成されてもよい。
【0016】
第一触媒層20は、第一触媒粒子を含む。第一触媒粒子は、主に、HCを酸化させるための触媒として機能する。第一触媒粒子は、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、及び金(Au)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の粒子であってよく、特にPt又はPdから選択される少なくとも1種の金属の粒子であってよい。第一触媒層20における第一触媒粒子の含有量は、第一領域Xにおける基材容量を基準として、例えば0.1~10g/Lであってよく、好ましくは1~9g/Lであってよく、より好ましくは3~7g/Lであってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。
【0017】
第一触媒粒子は、担体粒子上に担持されてもよい。第一触媒粒子は、含浸担持法、吸着担持法、吸水担持法等の任意の担持法で担持することができる。
【0018】
担体粒子は、金属酸化物を含んでよい。金属酸化物の例としては、元素周期表の3族、4族、及び13族の金属、並びにランタノイド系の金属からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物が挙げられ、より具体的には、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物が挙げられる。金属酸化物は、好ましくは、Y、La、Ce、Nd、Ti、Zr、及びAlからなる群から選択される少なくとも1種の金属の酸化物であってよい。金属酸化物が2種以上の金属の酸化物である場合、担体粒子は、2種以上の金属酸化物の混合物を含む粒子、2種以上の金属を含む複合酸化物を含む粒子、又は少なくとも1種の金属酸化物と少なくとも1種の複合酸化物との混合物を含む粒子であってよい。
【0019】
担体粒子は、酸素過剰雰囲気下で雰囲気中の酸素を吸蔵し、酸素欠乏雰囲気下で酸素を放出するOSC(Oxygen Storage Capacity)材として機能する粒子を含んでよい。OSC材の例としては、セリア(CeO2)、セリア及び他の酸化物の複合酸化物(例えば、セリア及びジルコニア(ZrO2)の複合酸化物(Ce-Zr系複合酸化物)、アルミナ(Al2O3)、セリア、及びジルコニアの複合酸化物(Al-Ce-Zr系複合酸化物))、並びにこれらに添加物を加えた材料が挙げられる。特に、高い酸素吸蔵能を有し且つ比較的安価であることから、Ce-Zr系複合酸化物をOSC材として用いてよい。添加物は、例えば、ランタナ(La2O3)、イットリア(Y2O3)、ネオジミア(Nd2O3)、又はプラセオジミア(Pr6O11)の少なくともいずれか1種であってよく、これらの材料はOSC材の耐熱性を向上させることができる。添加物は、OSC材の主成分と共に複合酸化物を形成していてよい。
【0020】
第一触媒層20は、さらに、その他の任意成分を含んでいてもよい。その他の任意成分としては、例えば、バインダー及び添加物が挙げられる。
【0021】
第一触媒層20は細孔(不図示)を有してよい。それにより、第一触媒層20中の排ガスの拡散性が向上し、排ガスの効率的な浄化が可能になる。
【0022】
下記式(2):
第一触媒層の細孔連結度(%)=(S1/900)×100 (2)
(式中、S1は、第一触媒層20の断面反射電子像において、30μm四方の領域の外縁と交差又は接触している細孔の、前記30μm四方の領域内の面積の合計(μm2)(以下、連結細孔面積という)の平均値を表す)
で表される第一触媒層20の細孔連結度は、5%~35%であってよい。それにより、排ガス浄化装置100の排ガス浄化性能を向上させることができる。連結細孔面積は、ImageJ等の画像解析ソフトを用いて測定することができる。無作為に選択した10箇所以上において連結細孔面積を測定し、得られた値の算術平均を計算することにより、連結細孔面積の平均値S1を求めることができる。
【0023】
また、連結細孔面積の平均値S1と、上記30μm四方の領域内に含まれる全細孔の面積の合計(μm2)(以下、全細孔面積という)の平均値Sa1の比(S1/Sa1)は、35%~85%であってよい。全細孔面積は、ImageJ等の画像解析ソフトを用いて測定することができる。無作為に選択した10箇所以上において全細孔面積を測定し、得られた値の算術平均を計算することにより、全細孔面積の平均値Sa1を求めることができる。
【0024】
第一触媒層20の断面反射電子像において、細孔の面積の平均値は0.7~9.0μm2であってよく、細孔の面積円相当直径の平均値は0.7~2μmであってよく、細孔の周長の平均値は4.0~12μmであってよい。本願において、細孔の面積の平均値、細孔の面積円相当直径の平均値、及び細孔の周長の平均値は、ImageJ等の画像解析ソフトを用いて、反射電子像及び画像解析ソフトの分解能以上の大きさを有するとともに、画像の外縁と接触していない細孔を10個以上無作為に選択し、これらの細孔のそれぞれの面積、面積円相当直径、及び周長を測定し、得られた値の算術平均を計算することにより求めることができる。
【0025】
また、第一触媒層20の断面反射電子像において、下記式(4):
細孔の複雑度=L2/S (4)
(式中、Sは、断面反射電子像の外縁に接触していない細孔の面積の平均値を表し、Lは、断面反射電子像の前記外縁に接触していない細孔の周長の平均値を表す)
で表される細孔の複雑度が12.6~19.0であってよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、第一触媒層20の細孔連結度は、5%以上10%未満であってよい。また、連結細孔面積の平均値S1と全細孔面積の平均値Sa1の比(S1/Sa1)は、35%以上50%未満であってよい。第一触媒層20の断面反射電子像において、細孔の面積の平均値は0.7μm2以上2.0μm2未満であってよく、細孔の面積円相当直径の平均値は0.7μm以上1.5μm未満であってよく、細孔の周長の平均値は4.0μm以上6μm未満であってよく、細孔の複雑度は15.0超19.0以下であってよい。第一触媒層20がこのような細孔構造を有する場合、第一触媒層20と第二触媒層30の間での剥離の発生が防止又は低減される。このような細孔構造を有する第一触媒層20は、造孔材を用いて形成することができる。
【0027】
第一触媒層20は、例えば以下のようにして形成することができる。
【0028】
まず、第一触媒粒子前駆体及び担体粉末を含むスラリーを調製する。あるいは、予め第一触媒粒子を担持した担体粉末を含むスラリーを調製してもよい。スラリーはさらに、造孔材、バインダー、添加物等を含んでよい。スラリーの性状、例えば、粘性、固形成分の粒子径等は、適宜調整してよい。調製したスラリーを、第一領域Xにおいて基材10に塗布する。例えば、基材10を、上流端I側から第一距離Laに対応する深さまでスラリーに浸漬し、所定の時間が経過した後、該スラリーから基材10を引き上げることにより、第一領域Xにおいてスラリーを基材10に塗布できる。あるいは、基材10の上流端Iからセル14にスラリーを流し込み、上流端Iにブロアーで風を吹きつけてスラリーを下流端Jに向かって塗り広げることにより、スラリーを基材10に塗布してもよい。次に、所定の温度及び時間でスラリーを加熱してスラリー層中の溶媒を蒸発させるとともに、スラリー層が造孔材を含む場合には造孔材を消失させる。造孔材が消失すると、造孔材が存在していた部分に、造孔材の形状に応じた形状を有する細孔が形成される。こうして、第一領域Xにおいて、第一触媒層20が基材10上に形成される。
【0029】
造孔材としては、繊維状造孔材を用いてよい。繊維状造孔材として、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、セルロース繊維が挙げられる。加工の容易性と消失温度のバランスの観点から、造孔材は、PET繊維及びナイロン繊維からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0030】
第一触媒粒子前駆体としては、第一触媒粒子を構成する金属の適切な無機酸塩、例えば、塩化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、フッ化水素酸塩等を用いることができる。
【0031】
(3)第二触媒層30
第二触媒層30は、第一領域Xにおいて第一触媒層20上に形成される。第二触媒層30は、少なくとも第一領域Xに形成されていればよく、第一位置Pを越えて延在するように形成されてもよい。第一領域Xの外において、第二触媒層30は直接的に基材10上に形成されてもよいし、間接的に基材10上に形成されてもよい。
【0032】
第二触媒層30は、第二触媒粒子を含む。第二触媒粒子は、主に、NOxを還元させるための触媒として機能する。第二触媒粒子は、例えば、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、及び金(Au)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の粒子であってよく、特にRh粒子であってよい。第二触媒粒子を構成する金属は、第一触媒粒子を構成する金属とは異なっていてよい。第二触媒層30における第二触媒粒子の含有量は、第二領域Yにおける基材容量を基準として、例えば0.05~5g/L、0.1~2.5g/L、0.2~1.2g/L、又は0.4~0.6g/Lであってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。
【0033】
第二触媒粒子は、担体粒子上に担持されてもよい。第二触媒粒子は、含浸担持法、吸着担持法、吸水担持法等の任意の担持法で担持することができる。第二触媒層30において用いることができる担体粒子は、第一触媒層20において用いることができる担体粒子と同様である。
【0034】
第二触媒層30は、さらに、その他の任意成分を含んでいてもよい。その他の任意成分としては、例えば、バインダー及び添加物が挙げられる。
【0035】
第二触媒層30は細孔32を有する。それにより、第二触媒層30中の排ガスの拡散性が向上し、排ガスの効率的な浄化が可能になる。
【0036】
下記式(1):
第二触媒層の細孔連結度(%)=(S2/900)×100 (1)
(式中、S2は、第二触媒層30の断面反射電子像において、30μm四方の領域の外縁と交差又は接触している細孔32の、前記30μm四方の領域内の面積の合計(μm2)(以下、連結細孔面積という)の平均値を表す)
で表される第二触媒層30の細孔連結度は、5%~35%であってよい。第二触媒層30の細孔連結度が5%以上であることにより、第二触媒層30中の排ガスの拡散性が一層向上するため、排ガス浄化装置100からのNOx排出量及びTHC排出量を低減させることができる。第二触媒層30の細孔連結度が35%以下であることにより、第二触媒層の一部又は全部が剥離することを防止又は軽減することができるとともに、排ガス浄化装置100による圧力損失を低減することができる。連結細孔面積は、ImageJ等の画像解析ソフトを用いて測定することができる。無作為に選択した10箇所以上において連結細孔面積を測定し、得られた値の算術平均を計算することにより、連結細孔面積の平均値S2を求めることができる。
【0037】
また、連結細孔面積の平均値S2と、上記30μm四方の領域内に含まれる全細孔32の面積の合計(μm2)(以下、全細孔面積という)の平均値Sa2の比(S2/Sa2)は、35%~85%であってよい。全細孔面積は、ImageJ等の画像解析ソフトを用いて測定することができる。無作為に選択した10箇所以上において全細孔面積を測定し、得られた値の算術平均を計算することにより、全細孔面積の平均値Sa2を求めることができる。
【0038】
第二触媒層30の断面反射電子像において、細孔32の面積の平均値は0.7~9.0μm2であってよく、細孔32の面積円相当直径の平均値は0.7~2μmであってよく、細孔32の周長の平均値は4.0~12μmであってよく、上記式(4)で定義される細孔32の複雑度は12.6~19.0であってよい。細孔の面積の平均値、細孔の面積円相当直径の平均値、及び細孔の周長の平均値は、第一触媒層20と同様の方法で求めることができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、第二触媒層30の細孔連結度は、10%~35%であってよい。それにより、排ガス浄化装置100からのNOx排出量及びTHC排出量をさらに低減させることができる。このような高い細孔連結度を有する第二触媒層30は、第二触媒層30の形成に用いるスラリー中の固形成分の粒子径を制御することにより形成することができる。造孔材を用いて細孔32を形成する場合は、基材10のクラックの発生を防止するために多量の造孔材を使用することができないため、このような高い細孔連結度を得ることは難しい。また、これらの実施形態において、連結細孔面積の平均値S2と全細孔面積の平均値Sa2の比(S2/Sa2)は、50%~85%であってよい。第二触媒層30の断面反射電子像において、細孔32の面積の平均値は2.0~9.0μm2であってよく、細孔32の面積円相当直径の平均値は1.5~2μmであってよく、細孔32の周長の平均値は6~12μmであってよく、上記式(4)で定義される細孔32の複雑度は12.6~15.0であってよい。
【0040】
第二触媒層30は、15~65μmの厚さを有してよい。この場合、排ガス浄化装置100からのNOx排出量及びTHC排出量が一層低減する。特に、第二触媒層30は、35~65μm、又は40~65μmの範囲内の厚さを有してよい。この場合、排ガス浄化装置100からのNOx排出量及びTHC排出量が顕著に低減する。
【0041】
第二触媒層30は、例えば以下のようにして形成することができる。
【0042】
まず、第二触媒粒子前駆体及び担体粉末を含むスラリーを調製する。あるいは、予め第二触媒粒子を担持した担体粉末を含むスラリーを調製してもよい。また、スラリーはさらに、造孔材、バインダー、添加物等を含んでよい。スラリーの性状、例えば、粘性、固形成分の粒子径等は、適宜調整してよい。例えば、固形成分の粒子径は、撹拌機、粉砕機、ビーズミル、ボールミル等を用いた固形成分の粉砕の条件(例えば、粉砕時間)により調整することができる。調製したスラリーを、第一領域Xにおいて、予め第一触媒層20が形成された基材10に塗布する。例えば、基材10を、上流端I側から第一距離Laに対応する深さまでスラリーに浸漬し、所定の時間が経過した後、該スラリーから基材10を引き上げることにより、スラリーを第一触媒層20上に塗布できる。あるいは、基材10の上流端Iからセル14にスラリーを流し込み、上流端Iにブロアーで風を吹きつけてスラリーを下流端Jに向かって塗り広げることにより、スラリーを第一触媒層20上に塗布してもよい。次に、所定の温度及び時間でスラリーを加熱してスラリー層中の溶媒を蒸発させるとともに、スラリー層が造孔材を含む場合には造孔材を消失させる。造孔材が消失すると、造孔材が存在していた部分に、造孔材の形状に応じた形状を有する細孔32が形成される。こうして、第一領域Xにおいて、第一触媒層20上に第二触媒層30が形成される。
【0043】
(3)第三触媒層40
第三触媒層40は、下流端Jと下流端Jから上流端Iに向かって(すなわち、排ガスの流れ方向と反対の方向に)第二距離Lbを隔てた第二位置Qとの間の第二領域Yにおいて、基材10上に形成される。なお、
図1において、第二位置Qは第一位置Pよりも下流に位置するが、
図1に示す第一位置P及び第二位置Qの相対関係は単なる例示である。例えば、
図3に示すように、第一位置Pと第二位置Qは同じ位置にあってもよい。
【0044】
第三触媒層40は、第三触媒粒子を含む。第三触媒粒子は、主に、NOxを還元させるための触媒として機能する。第三触媒粒子は、例えば、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、及び金(Au)からなる群から選択される少なくとも1種の金属の粒子であってよく、特にRh粒子であってよい。第三触媒粒子を構成する金属は、第一触媒粒子を構成する金属とは異なっていてよく、第二触媒粒子を構成する金属と同じであってよい。第三触媒層40における第三触媒粒子の含有量は、第二領域Yにおける基材容量を基準として、例えば0.05~5g/L、0.1~2.5g/L、0.2~1.2g/L、又は0.4~0.6g/Lであってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。
【0045】
第三触媒粒子は、担体粒子上に担持されてもよい。第三触媒粒子は、含浸担持法、吸着担持法、吸水担持法等の任意の担持法で担持することができる。第三触媒層40において用いることができる担体粒子は、第一触媒層20において用いることができる担体粒子と同様である。
【0046】
第三触媒層40は、さらに、その他の任意成分を含んでいてもよい。その他の任意成分としては、例えば、バインダー及び添加物が挙げられる。
【0047】
第三触媒層40は細孔(不図示)を有してよい。それにより、第三触媒層40中の排ガスの拡散性が向上し、排ガスの効率的な浄化が可能になる。
【0048】
下記式(3):
第三触媒層の細孔連結度(%)=(S3/900)×100 (3)
(式中、S3は、第三触媒層40の断面反射電子像において、30μm四方の領域の外縁と交差又は接触している細孔の、前記30μm四方の領域内の面積の合計(μm2)(以下、連結細孔面積という)の平均値を表す)
で表される第三触媒層40の細孔連結度は、5%~35%であってよい。それにより、排ガス浄化装置100からのNOx排出量を低減させることができる。連結細孔面積は、ImageJ等の画像解析ソフトを用いて測定することができる。無作為に選択した10箇所以上において連結細孔面積を測定し、得られた値の算術平均を計算することにより、連結細孔面積の平均値S3を求めることができる。
【0049】
また、連結細孔面積の平均値S3と、上記30μm四方の領域内に含まれる全細孔の面積の合計(μm2)(以下、全細孔面積という)の平均値Sa3の比(S3/Sa3)は、35%~85%であってよい。全細孔面積は、ImageJ等の画像解析ソフトを用いて測定することができる。無作為に選択した10箇所以上において全細孔面積を測定し、得られた値の算術平均を計算することにより、全細孔面積の平均値Sa3を求めることができる。
【0050】
第三触媒層40の断面反射電子像において、細孔の面積の平均値は0.7~9.0μm2であってよく、細孔の面積円相当直径の平均値は0.7~2μmであってよく、細孔の周長の平均値は4.0~12μmであってよく、上記式(4)で定義される細孔の複雑度は12.6~19.0であってよい。細孔の面積の平均値、細孔の面積円相当直径の平均値、及び細孔の周長の平均値は、第一触媒層20と同様の方法で求めることができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、第三触媒層40の細孔連結度は、10%~35%であってよい。それにより、排ガス浄化装置100からのNOx排出量及びTHC排出量をさらに低減させることができる。このような高い細孔連結度を有する第三触媒層40は、第三触媒層40の形成に用いるスラリー中の固形成分の粒子径を制御することにより形成することができる。造孔材を用いて細孔を形成する場合は、基材10のクラックの発生を防止するために多量の造孔材を使用することができないため、このような高い細孔連結度を得ることは難しい。また、これらの実施形態において、連結細孔面積の平均値S3と全細孔面積の平均値Sa3の比(S3/Sa3)は、50%~85%であってよい。第三触媒層40の断面反射電子像において、細孔の面積の平均値は2.0~9.0μm2であってよく、細孔の面積円相当直径の平均値は1.5~2μmであってよく、細孔の周長の平均値は6~12μmであってよく、上記式(4)で定義される細孔の複雑度は12.6~15.0であってよい。
【0052】
第三触媒層40は、例えば以下のようにして、形成することができる。
【0053】
まず、第三触媒粒子前駆体及び担体粉末を含むスラリーを調製する。あるいは、予め第三触媒粒子を担持した担体粉末を含むスラリーを調製してもよい。また、スラリーはさらに、造孔材、バインダー、添加物等を含んでよい。スラリーの性状、例えば、粘性、固形成分の粒子径等は、適宜調整してよい。調製したスラリーを、第二領域Yにおいて基材10に塗布する。例えば、基材10を、下流端J側から第二距離Lbに対応する深さまでスラリーに浸漬し、所定の時間が経過した後、該スラリーから基材10を引き上げることにより、第二領域Yにおいてスラリーを基材10に塗布できる。あるいは、基材10の下流端Jからセル14にスラリーを流し込み、下流端Jにブロアーで風を吹きつけてスラリーを上流端Iに向かって塗り広げることにより、スラリーを基材10に塗布してもよい。次に、所定の温度及び時間でスラリーを加熱しスラリー層中の溶媒を蒸発させるとともに、スラリー層が造孔材を含む場合には造孔材を消失させる。造孔材が消失すると、造孔材が存在していた部分に、造孔材の形状に応じた形状を有する細孔が形成される。こうして、第二領域Yにおいて、第三触媒層40が基材10上に形成される。なお、第三触媒層40は、第一触媒層20を形成する前に形成してもよいし、第一触媒層20を形成した後、第二触媒層30を形成する前に形成してもよいし、第二触媒層30を形成した後に形成してもよい。
【0054】
第三触媒層40の形成のために使用することができる造孔材は、第一触媒層20の形成において用いることができる造孔材と同様である。
【0055】
第三触媒粒子前駆体としては、第三触媒粒子を構成する金属の適切な無機酸塩、例えば、塩化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、フッ化水素酸塩等を用いることができる。
【0056】
実施形態に係る排ガス浄化装置100は、内燃機関を備える種々の車両に適用され得る。
【0057】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想又は技術的範囲を逸脱することなく、種々の変更、追加、及び削除を行うことができる。
【実施例0058】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
(1)実施例及び比較例で使用した材料
a)基材(ハニカム基材)
材質:コージェライト
容量:875cc
隔壁の厚さ:2mil(50.8μm)
セル密度:1平方インチ当たり600個
セル断面形状:六角形
【0060】
b)材料1
Al2O3にLa2O3を添加したもの(La2O3:1wt%~10wt%)
【0061】
c)材料2
ACZ(Al2O3-CeO2-ZrO2)複合酸化物(CeO2:15wt%~30wt%)に、Nd2O3、La2O3、及びY2O3を微量添加したもの
【0062】
d)材料3
CZ(CeO2-ZrO2)複合酸化物にLa2O3及びY2O3を添加したもの(CeO2:40wt%、ZrO2:50wt%、La2O3:5wt%、Y2O3:5wt%)
【0063】
e)材料4
CZ(CeO2-ZrO2)複合酸化物にLa2O3及びY2O3を添加したもの(CeO2:20wt%、ZrO2:70wt%、La2O3:5wt%、Y2O3:5wt%)
【0064】
f)材料5
硝酸パラジウム
【0065】
g)材料6
硝酸ロジウム
【0066】
h)材料7
硫酸バリウム
【0067】
(2)排ガス浄化装置の作製
比較例1、2
アトライター中で攪拌されている蒸留水に、材料1、材料3、材料5、材料7、及びAl2O3系バインダーを加えて各材料を粉砕し、さらに繊維状造孔材としてポリエチレンテレフタラート繊維を加えて混合して、懸濁したスラリー1を調製した。次に、調製したスラリー1を基材の一端(上流端)からセルに流し込み、ブロアーで過剰なスラリーを吹き払った。それにより、基材の一端と、基材の一端から基材の他端(下流端)に向かって基材全長の50%の長さの距離を隔てた第一位置との間の第一領域において、基材の隔壁がスラリー1でコーティングされた。内部温度を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置いてスラリー1中の水を蒸発させ、次いで電気炉で基材を500℃で2時間焼成した。それにより、第一触媒層を形成した。
【0068】
このとき、第一領域における基材の容量を基準とした第一触媒層に含まれる材料1の量は50g/L、材料3の量は50g/L、材料5に由来する第一触媒粒子としてのPd粒子の量は5g/L、材料7の量は5g/Lであった。
【0069】
次に、アトライター中で攪拌されている蒸留水に、材料1、材料2、材料4、材料6、及びAl2O3系バインダーを加えて各材料を粉砕し、懸濁したスラリー2を調製した。次に、調製したスラリー2を基材の他端(下流端)からセルに流し込み、ブロアーで過剰なスラリーを吹き払った。それにより、基材の他端と、基材の他端から基材の一端(上流端)に向かって基材全長の50%の長さの距離を隔てた第二位置との間の第二領域において、基材の隔壁がスラリー2でコーティングされた。内部温度を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置いてスラリー2中の水を蒸発させ、次いで電気炉で基材を500℃で2時間焼成した。それにより、第三触媒層を形成した。
【0070】
このとき、第二領域における基材の容量を基準とした第三触媒層に含まれる材料1の量は50g/L、材料2の量は50g/L、材料4の量は50g/L、材料6に由来する第三触媒粒子としてのRh粒子の量は0.5g/Lであった。
【0071】
次に、アトライター中で攪拌されている蒸留水に、材料1、材料2、材料4、材料6、及びAl2O3系バインダーを加えて各材料を粉砕し、懸濁したスラリー3を調製した。次に、調製したスラリー3を基材の一端(上流端)からセルに流し込み、ブロアーで過剰なスラリーを吹き払った。それにより、基材の一端と、基材の一端から基材の他端(下流端)に向かって基材全長の50%の長さの距離を隔てた第一位置との間の第一領域において、スラリー3の層が形成された。内部温度を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置いてスラリー3中の水を蒸発させ、次いで電気炉で基材を500℃で2時間焼成した。それにより、第二触媒層を形成した。
【0072】
このとき、第二触媒層の厚さ、並びに第一領域における基材の容量を基準とした第二触媒層の総質量(総塗布量)並びに第二触媒層に含まれる材料1、材料2、材料4、及び材料6に由来する第二触媒粒子としてのRh粒子の量は、表1に記載の通りであった。
【0073】
こうして、比較例1、2の排ガス浄化装置を得た。
【0074】
比較例3
第三触媒層において、第二領域における基材の容量を基準とした材料6に由来するRhの含有量を1.0g/Lとしたこと、及び第二触媒層を形成しなかったこと以外は比較例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0075】
実施例1
第二触媒層を形成するためのスラリー3を粉砕する時間を比較例1よりも短くして、スラリー3に含まれる材料の粒径をより大きくしたこと以外は比較例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0076】
実施例2~4
第二触媒層の厚さ、並びに第一領域における基材の容量を基準とした第二触媒層の総質量(総塗布量)並びに第二触媒層に含まれる材料1、材料2、材料4、及び材料6に由来する第二触媒粒子としてのRh粒子の量を、表1に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0077】
実施例5
スラリー3に繊維状造孔材としてポリエチレンテレフタラート繊維を加えたこと以外は比較例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0078】
実施例6
第三触媒層を形成するためのスラリー2を粉砕する時間を実施例1よりも短くして、スラリー2に含まれる材料の粒径をより大きくしたこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0079】
実施例7~9
第二触媒層の厚さ、並びに第一領域における基材の容量を基準とした第二触媒層の総質量(総塗布量)並びに第二触媒層に含まれる材料1、材料2、材料4、及び材料6に由来する第二触媒粒子としてのRh粒子の量を、表1に記載の通りとしたこと以外は実施例6と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0080】
【0081】
(3)構造評価
比較例1及び実施例1、5の排ガス浄化装置において、第二触媒層を含む部位を約1cm角に切り出し、室温硬化性のエポキシ樹脂に埋めた。湿式研磨により、排ガスの流れ方向に対して垂直又は平行な第二触媒層の断面を出した。研磨面をカーボンにより導電処理した。
【0082】
走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製「SU7000」)により、下記の条件にて第二触媒層の断面を観察した。
加速電圧:5kV
観察倍率:1000倍
画像キャプチャ速度:128秒
画像保存形式:TIFF
データサイズ:2560×1920ピクセル
検出器:半導体型反射電子検出器(Photo Diode BSE Detector)
【0083】
排ガスの流れ方向に垂直又は平行な第二触媒層の断面の反射電子像を、それぞれ少なくとも10個得た。上記条件における反射電子像の分解能は0.05μm/ピクセルである。
【0084】
画像解析ソフト(ImageJ)により、各反射電子像を二値化して細孔とそれ以外(触媒、バインダー等)を区別した。各反射電子像の二値化像(以下、二値化像という)において、反射電子像の分解能である0.02μm2以上の面積を有し、且つ、画像の外縁と接触していない細孔を抽出した。各細孔について面積及び周長を求め、周長の二乗を面積で除して各細孔の複雑度を計算した。細孔の断面が真円の場合、細孔の複雑度は最小値である4πとなる。しかし、計算の結果、0.05μm2未満の面積(約0.25μmの円相当直径に相当)を有する細孔のうちいくつかの細孔の複雑度の値が、4π未満となった。そのため、本実施例の解析法による分解能は面積0.05μm2(円相当直径約0.25μm)であると判断した。
【0085】
各二値化像において、解析分解能である0.05μm
2以上の面積を有し、且つ、画像の外縁と接触していない細孔を抽出した。得られた画像の例を
図4~9に示す。各細孔の面積、面積円相当直径、及び周長を求め、これらの算術平均を計算した。また、細孔の面積の平均値及び周長の平均値を用いて、下記式:
細孔の複雑度=L
2/S
(式中、Sは細孔の面積の平均値を表し、Lは細孔の周長の平均値を表す)
で表される細孔の複雑度を計算した。結果を表2に示す。
【0086】
【0087】
各二値化像において、30μm四方の領域を無作為に選択した。さらに、この領域から上下左右のいずれかの方向に10μm平行移動した30μm四方の領域も選択した。これら5個の領域のそれぞれに含まれる全細孔の面積の合計(すなわち、全細孔面積)を、画像解析ソフト(ImageJ)により測定した。また、各領域の外縁と接触していない細孔の面積の合計も測定した。各領域の外縁と接触していない細孔の面積の合計を全細孔面積から減じた値を求めた。この値は、各領域の外縁と交差又は接触している細孔のうち、その領域内に含まれる部分の面積の合計(すなわち、連結細孔面積)に対応する。各領域において求めた連結細孔面積の算術平均を計算して、連結細孔面積の平均値S2を求めた。連結細孔面積の平均値S2を各領域の面積(すなわち900μm2)で除した値(すなわち、細孔連結度)を求めた。結果を表3に示す。造孔材を用いて形成した実施例5の第二触媒層は、比較例1の第二触媒層よりも高い細孔連結度を有していた。スラリーの粉砕時間を短縮して形成した実施例1の第二触媒層は、比較例1及び実施例5の第二触媒層よりも高い細孔連結度を有していた。
【0088】
また、上記の各領域内における全細孔面積の算術平均を計算して、全細孔面積の平均値Sa2を求めた。連結細孔面積の平均値S2と全細孔面積の平均値Sa2の比(S2/Sa2)を表3に示す。
【0089】
【0090】
(4)排ガス浄化性能評価
実施例1~5及び比較例1~3の排ガス浄化装置を、それぞれ、エンジンの直下に配置した。排ガス浄化装置の触媒床温が950℃になるように、エンジンの運転条件を設定した。50時間にわたり、空燃比フィードバック制御と燃料カットを交互に繰り返した。
【0091】
その後、排ガス浄化装置に流入するガスの温度が550℃になるように、エンジンの運転条件を設定した。エンジンに供給する混合ガスの空燃比(A/F)を14.4とし、排ガス浄化装置にエンジンからの排ガスを流入させた。排ガス浄化装置に流入するガスの温度が550℃に安定した後、エンジンに供給する混合ガスの空燃比(A/F)を3分間隔で14.1(リッチ(燃料過剰))と15.1(リーン(酸素過剰))に交互に切り替えた。3回目にA/Fを15.1から14.1に切り替えた後、3分経過したときのTHC排出量及びNOxの排出量を測定した。結果を
図10~13に示す。
【0092】
図10から理解されるように、実施例の排ガス浄化装置は、同程度の厚さの第二触媒層を有する比較例の排ガス浄化装置よりも低いTHC排出量を示した。これは、第二触媒層の細孔の構造、特に高い細孔連結度に起因して、第二触媒層における排ガスの拡散性が向上し、排ガスが第二触媒層を通過して第一触媒層に到達し易くなり、排ガス中のHCが第一触媒層中のPd粒子に接触して酸化される確率が高まったためと考えられる。
【0093】
特に、スラリー3の粉砕時間を短くした実施例1~4の排ガス浄化装置は、一層低いTHC排出量を示した。これは、第二触媒層の特に高い細孔連結度(表3参照)に起因すると考えられる。
【0094】
また、第二触媒層の厚さが15~65μmであった実施例1~3の排ガス浄化装置は特に低いTHC排出量を示した。この結果は、第二触媒層の厚さが65μm以下の場合、排ガスが第二触媒層を通過して第一触媒層に到達することが十分に容易であったことを示唆している。一方、比較例1~3では、第二触媒層の厚さが大きいほどTHC排出量が多く、特に、第二触媒層の厚さが36μm以上では顕著に高いTHC排出量を示した。比較例1、2では、第二触媒層における排ガスの拡散性が乏しいため、第二触媒層の厚さが大きいほど、第一触媒層に到達する排ガスの量が減少して、排ガス中のHCが第一触媒層中のPd粒子の接触する確率が低下し、その結果、酸化されずに残留するHCの量が増加したと考えられる。特に第二触媒層の厚さが36μm以上の場合、第一触媒層に到達する排ガスが顕著に減少したと考えられる。
図10から、第二触媒層における排ガスの拡散性の向上に起因するTHC排出量の低減は、第二触媒層の厚さが36~65μm、特に42~65μmの範囲内の場合に特に顕著であったことが理解される。
【0095】
図11から理解されるように、実施例の排ガス浄化装置は、同程度の厚さの第二触媒層を有する比較例の排ガス浄化装置よりも低いNOx排出量を示した。特に、スラリー3の粉砕時間が短かった実施例1~4の排ガス浄化装置は一層低いNOx排出量を示した。
【0096】
第二触媒層の厚さの増加に伴うNOx排出量の低減量は、実施例1~4の方が比較例1~3よりも大きかった。この結果は以下の理由によるものと発明者らは考えている。
【0097】
比較例及び実施例の排ガス浄化装置では、第二触媒層の厚さが大きいほど、第二触媒層中のRhの濃度が低かった。第二触媒層中のRhの濃度が低いほど、熱により第二触媒層中のRh粒子が粗大化してRh粒子の触媒活性が低下することが低減される。そのため、より厚さの大きい第二触媒層中のRh粒子は、より高いNOx浄化性能を発揮することができた。しかし、比較例1~3では、第二触媒層の厚さが大きいほど、より多くのHCが第一触媒層で酸化されずに残留した(
図10参照)。残留したHCは、第三触媒層のRh粒子を被覆してその触媒活性を低下させ得る。そのため、比較例1~3では、第二触媒層の厚さが大きいほど、第三触媒層中のRh粒子によるNOx浄化性能が低下した。一方、実施例1~5では、第二触媒層の厚さが65μm以下の場合、第二触媒層の厚さの増加に伴う残留HC量の増加はわずかであったため(
図10参照)、残留HCによる第三触媒層のRh粒子の触媒活性の低下も軽減された。そのため、実施例1~5では、第三触媒層のRh粒子が、比較例1~3よりも高いNOx浄化性能を発揮することができた。これらの結果、
図11に示した実施例と比較例の間のNOx排出量の差が生じたと考えられる。
【0098】
図12に示すように、実施例6~9の排ガス浄化装置は、実施例1~4の排ガス浄化装置と同等のTHC排出量を示した。
【0099】
図13に示すように、実施例6~9の排ガス浄化装置は、実施例1~4の排ガス浄化装置よりも低いNOx排出量を示した。特に、第二触媒層の厚さが15~65μmである実施例6~8の排ガス浄化装置は、実施例1~3の排ガス浄化装置よりも明確に低いNOx排出量を示した。実施例6~9では実施例1~4よりもスラリー2の粉砕時間を短くしたため、実施例6~9の排ガス浄化装置の第三触媒層は、実施例1~4の排ガス浄化装置の第三触媒層よりも高い細孔連結度を有し、それに起因してより高い排ガス拡散性を有していたと考えられる。そのため、実施例6~9の排ガス浄化装置に流入した排ガス中のNOxはより高確率で第三触媒層中のRh粒子に接触して還元され、その結果、NOx排出量が低減したと考えられる。
10:基材、12:枠部、14:セル、16:隔壁、20:第一触媒層、30:第二触媒層、40:第三触媒層、100:排ガス浄化装置、I:上流端(第一端)、J:下流端(第二端)、P:第一位置、Q:第二位置、X:第一領域、Y:第二領域