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特開2024-67957排気ガスセンサの劣化判定システム、及び、サーバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067957
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】排気ガスセンサの劣化判定システム、及び、サーバ
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240510BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240510BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240510BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240510BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178405
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣井 康生
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB12
5H181BB17
5H181BB18
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
(57)【要約】
【課題】精度よく排気ガスの測定ができる排気ガスセンサの劣化判定システム、及び、サーバを提供する。
【解決手段】サーバ3は、運行記録装置2が収集した排気ガスの測定値と、運行情報と、受信する。サーバ3は、運行情報に基づいて排気ガスの推定値を推定する。サーバ3は、排気ガスの推定値と、排気ガスの測定値と、の差に基づいて、排気ガスセンサ105の劣化を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された排気ガスセンサが測定した排気ガスの測定値と、前記車両の運行情報と、を収集する車載器と、
前記排気ガスセンサの劣化を判定するサーバと、を備え、
前記サーバは、
前記車載器が収集した前記排気ガスの前記測定値と、前記運行情報と、を取得する取得部と、
前記運行情報に基づいて前記排気ガスの推定値を推定する推定部と、
前記排気ガスの前記推定値と、前記排気ガスの前記測定値と、の差に基づいて、前記排気ガスセンサの劣化を判定する劣化判定部と、を有する
排気ガスセンサの劣化判定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の排気ガスセンサの劣化判定システムにおいて、
前記取得部は、所定の走行経路上における複数の地点ごとの前記排気ガスの前記測定値を取得し、
前記推定部は、所定の前記走行経路上における複数の前記地点ごとに前記排気ガスの前記推定値を推定し、
前記劣化判定部は、複数の前記地点ごとに前記排気ガスの前記推定値と、前記排気ガスの前記測定値と、の差を求め、求めた複数の前記地点ごとの前記差に基づいて、前記排気ガスセンサの劣化を判定する、
排気ガスセンサの劣化判定システム。
【請求項3】
請求項2に記載の排気ガスセンサの劣化判定システムにおいて、
初回に所定の前記走行経路を走行した際に求めた複数の前記地点ごとの前記差を、複数の前記地点ごとの基準値として記憶する記憶部を備え、
前記劣化判定部は、2回以降に所定の前記走行経路を走行した際に求めた複数の前記地点ごとの前記差と、前記記憶部に記憶された複数の前記地点ごとの前記基準値と、の比較に基づいて前記排気ガスセンサの劣化を判定する、
排気ガスセンサの劣化判定システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の排気ガスセンサの劣化判定システムにおいて、
前記劣化判定部は、複数の前記地点ごとの前記排気ガスの前記測定値が正常範囲以下の異常値となっているか否かを判定し、所定の前記走行経路上において、前記正常範囲以下の前記異常値であると判定された割合が第1閾値以上の場合、前記排気ガスセンサの劣化と判定する、
排気ガスセンサの劣化判定システム。
【請求項5】
請求項4に記載の排気ガスセンサの劣化判定システムにおいて、
前記劣化判定部は、複数の前記地点ごとの前記排気ガスの前記測定値が前記正常範囲以上の異常値となっているか否かを判定し、所定の前記走行経路上において、前記正常範囲以上の前記異常値であると判定された割合が第2閾値以上の場合、車両異常と判定する、
排気ガスセンサの劣化判定システム。
【請求項6】
請求項1に記載の排気ガスセンサの劣化判定システムにおいて、
表示部を有する管理端末を備え、
前記サーバは、前記劣化判定部による判定結果を前記管理端末に提供する提供部を有し、
前記管理端末が、前記提供部により提供された前記判定結果を前記表示部に表示する、
劣化判定システム。
【請求項7】
請求項4に記載の排気ガスセンサの劣化判定システムにおいて、
前記第1閾値を入力する入力部を有する管理端末を備え、
前記サーバの前記劣化判定部は、前記管理端末の前記入力部により入力された前記第1閾値を用いて、劣化判定を行う、
劣化判定システム。
【請求項8】
車両に搭載された排気ガスセンサが測定した排気ガスの測定値と、前記車両の運行情報と、を取得する取得部と、
前記運行情報に基づいて前記排気ガスの推定値を推定する推定部と、
前記排気ガスの前記推定値と、前記排気ガスの前記測定値と、の差に基づいて、前記排気ガスセンサの劣化を判定する劣化判定部と、備えた、
サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスセンサの劣化判定システム、及び、サーバ、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の温室効果ガス排出量削減の取り組みを強化するうえにおいて、運行記録計の運行情報(エンジン回転数)と排気ガス(=温室効果ガス排出量)のリアルタイム測定データを分析し、分析結果を車両及び運転者にフィードバックすることで、環境負荷に考慮した運転技術を促すシステムが提案されている。
【0003】
また、出発地と目的地までの経路を検索する際に温室効果ガス排出量が最小となる経路を検索する経路検索装置も知られている(特許文献1)。特許文献1の経路検索装置は、旅行速度から温室効果ガス排出量を算出する変換式を用いて、経路を走行する際に排出される温室効果ガス排出量を算出することが記載されている。また、変換式を温室効果ガス排出量の測定値に基づいて作成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-30823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、排気ガスを測定する排気ガスセンサの劣化による測定値の低下が考慮されていない。特に、大型車や商用車など定期的に長時間使用される車両に取り付けられた排気ガスセンサは、通常の使用条件よりも早く劣化する可能性が高く、正確な排気ガスの測定の妨げになる、という課題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、精度よく排気ガスの測定ができる排気ガスセンサの劣化判定システム、及び、サーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る排気ガスセンサの劣化判定システムは、下記を特徴としている。
車両に搭載された排気ガスセンサが測定した排気ガスの測定値と、前記車両の運行情報と、を収集する車載器と、
前記排気ガスセンサの劣化を判定するサーバと、を備え、
前記サーバは、
前記車載器が収集した前記排気ガスの前記測定値と、前記運行情報と、を取得する取得部と、
前記運行情報に基づいて前記排気ガスの推定値を推定する推定部と、
前記排気ガスの前記推定値と、前記排気ガスの前記測定値と、の差に基づいて、前記排気ガスセンサの劣化を判定する劣化判定部と、を有する
排気ガスセンサの劣化判定システムであること。
【0008】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係るサーバは、下記を特徴としている。
車両に搭載された排気ガスセンサが測定した排気ガスの測定値と、前記車両の運行情報と、を取得する取得部と、
前記運行情報に基づいて前記排気ガスの推定値を推定する推定部と、
前記排気ガスの前記推定値と、前記排気ガスの前記測定値と、の差に基づいて、前記排気ガスセンサの劣化を判定する劣化判定部と、備えた、
サーバであること。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る排気ガスセンサの劣化判定システム、及び、サーバによれば、精度よく排気ガスの測定ができる、との効果を奏する。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の排気ガスセンサの劣化判別システムの一例を示す構成図である。
図2図2は、図1に示す運行記録装置、サーバ、管理端末の一例を示す構成図である。
図3図3は、図1に示すサーバの劣化判定処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、図3の劣化判定処理手順で作成される各リストを説明するための説明図である。
図5図5は、図1に示すサーバが排気ガスの推定値を求めるために用いるテーブルを説明するためのグラフである。
図6図6は、図1に示す管理端末に表示される運行実績表の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0013】
本実施形態の排気ガスセンサの劣化判定システム1(以下、単に「劣化判定システム1」と略記する。)は、車両10に搭載されている排気ガスセンサ105の劣化判定を行うシステムである。図1に示すように、劣化判定システム1は、車両10に搭載された車載器としての運行記録装置2と、運行記録装置2と広域通信網11を介して通信可能なサーバ3と、サーバ3と広域通信網11を介して通信可能な管理端末4と、を備えている。
【0014】
本実施形態では、運行記録装置2は、事業者が管理する車両10に搭載され、排気ガスの実測値、運行情報を収集してサーバ3に送信する。運行記録装置2は、図2に示すように、広域通信部21と、一時記憶装置22と、メディアR/W23と、CPU(Central Processing Unit)24と、を有している。
【0015】
広域通信部21は、広域通信網11に接続するための回路やアンテナなどで構成されている。一時記憶装置22は、運行記録装置2が収集した排気ガスの実測値、運行情報を一時的に記憶する装置である。メディアR/W23は、SD(Secure Digital)カードなどの記憶メディアの読み取り、書き込みを行う装置である。
【0016】
CPU24は、プログラムに従って動作し、運行記録装置2全体の制御を司る。CPU24は、定期的に(例えば0.5sec間隔)排気ガスの測定値、運行情報(車速、エンジン回転数、アクセル開度、位置情報)を収集し、収集した排気ガスの測定値、運行情報に車両ID、時刻情報を付与してサーバ3に送信する。
【0017】
CPU24には、車速センサ101と、エンジン回転センサ102と、アクセル開度センサ103と、GPSユニット104と、排気ガスセンサ105と、が接続されている。車速センサ101は、車速を測定して、CPU24に出力する。エンジン回転センサ102は、エンジン回転数を測定して、CPU24に出力する。アクセル開度センサ103は、アクセル開度を測定して、CPU24に出力する。
【0018】
GPSユニット104は、周知のように複数のGPS衛星から発振される電波を受信して、現在の位置情報を求め、位置情報及びそのときの時刻情報をCPU24に出力する。排気ガスセンサ105は、排気ガスを測定し、排気ガスの測定値をCPU24に出力する。
【0019】
サーバ3は、車両10から送信された排気ガスの測定値、運行情報を受信して記録し、排気ガスの測定値、運行情報に基づいて排気ガスセンサ105の劣化判定を行う。サーバ3は、図2に示すように、広域通信部31と、記憶部としてのデータベース(DB)32と、CPU33と、を有している。
【0020】
広域通信部31は、広域通信網11に接続するための回路などで構成されている。DB32は、各車両10に搭載された運行記録装置2から送信される運行情報などが記録される。CPU33は、プログラムに従って動作し、サーバ3全体の制御を司る。
【0021】
管理端末4は、例えばPC(Personal Computer)やタブレットなどの端末から構成され、広域通信網11を介してサーバ3と通信する。管理端末4は、図2に示すように、広域通信部41と、入力部としての操作部42と、表示部43と、CPU44と、を有している。広域通信部41は、広域通信網11に接続するための回路などで構成されている。操作部42は、PCの場合、キーボードやマウスから構成され、タブレットの場合、タッチパネルなどで構成され、ユーザの操作により各種情報を入力する。
【0022】
表示部43は、液晶ディスプレイなどから構成され、CPU44の制御により各種情報が表示される。CPU44は、プログラムに従って動作し、管理端末4全体の制御を司る。管理端末4には、管理端末4用のプログラム(アプリケーション)がインストールされ、このプログラムに従って動作することにより、劣化判定システム1を構成する管理端末4として機能する。
【0023】
次に、上述した構成の劣化判定システム1の動作について説明する。運行記録装置2のCPU24(以下、単に「運行記録装置2」と略記)は、例えば車両のイグニッションスイッチがオンすると、起動する。起動後、運行記録装置2は、例えば、0.5secごとに車速センサ101、エンジン回転センサ102、アクセル開度センサ103、GPSユニット104から出力される車速、エンジン回転数、アクセル開度、位置情報を運行情報として取り込み、収集する。運行記録装置2は、同じタイミングで、排気ガスセンサ105から出力される排気ガスの実測値を取り込み、収集する。
【0024】
運行記録装置2は、運行情報、排気ガスの測定値を収集するごとに車両ID、現在時刻を付与してサーバ3に送信する。サーバ3のCPU33(以下、単に「サーバ3」と略記)は、取得部として機能し、運行情報、排気ガスの測定値を受信すると、受信した運行情報、排気ガスの測定値をDB32に記憶させる。以上の動作により、DB32には、複数の車両10の複数運行の運行情報、排気ガスの測定値が記憶される。
【0025】
サーバ3は、DB32に格納された運行情報、排気ガスの測定値を解析して、各車両10に搭載された排気ガスセンサ105に劣化が生じているか否かを判定する劣化判定処理を行う。この劣化判定処理について、図3を参照して説明する。
【0026】
まず、サーバ3は、DB32から一運行中に運行記録装置2が収集した位置情報を抽出する(S1)。次に、サーバ3は、抽出した位置情報の時系列データである走行経路が、新品の排気ガスセンサ105を使用開始してから初めて走行する走行経路か否かを判定する(S2)。初めて走行する走行経路であると判定すると(S2でY)、サーバ3は、図4に示すように、位置情報(即ち、走行経路における各地点A~J)に紐づけられた排気ガスの測定値をDB32から抽出して、排気ガスの測定値リストを作製する(S3)。
【0027】
次に、サーバ3は、推定部として機能し、排気ガスのカタログ値と、運行情報(例えば、エンジン回転数、車速)と、に基づいて各地点A~Jごとの排気ガスの推定値を算出し、推定値リストを作製し、DB32に記憶する(S4)。具体的に説明すると、車両メーカーからは、速度N1(km/h)で走行したときの単位距離当たりの排気ガスM1(g/km)がカタログ値として開示されている。
【0028】
1sec当たりの瞬間排気ガス(g/sec)は、下記の式(1)で求められる。
(M1/3600)×N1(g/sec) …(1)
式(1)から排気ガスは、速度に依存していることが分かる。
【0029】
また、排気ガスは、燃費にほぼ比例する。燃費(使用燃料)は、エンジン回転数に依存し、エンジン回転数が低いと使用燃料が多めとなり、エンジン回転数が適切(中程度)であれば使用燃料が少な目となり、エンジン回転数が高いと使用燃料が多めとなる。よって、図5に示すように、排気ガスのカタログ値から車速ごとにエンジン回転数に対する排気ガスの推定値テーブルを作製して、DB32に予め記憶する。
【0030】
サーバ3は、走行経路における地点A~Jに紐づけられた車速、エンジン回転数をDB32から抽出し、DB32に記憶された推定値テーブルと、抽出した車速、エンジン回転数と、に基づいて、地点A~Jごとの排気ガスの推定値を推定する。具体的には、サーバ3は、地点Aの車速に応じた推定値テーブルを用いて地点Aのエンジン回転数に応じた排気ガスを求め、地点Aの排気ガスの推定値とする。サーバ3は、地点B~Jについても同様に排気ガスの推定値を求める。
【0031】
次に、サーバ3は、S3で作成した排気ガスの測定値リスト、S4で作成した排気ガスの推定値リストを用いて、地点A~Jごとの排気ガスの測定値から排気ガスの推定値を差し引いた差を求め、求めた差を地点A~Jの基準値とした基準値リストを作製し、DB32に保存し(S5)、処理を終了する。
【0032】
一方、S2において、2回目以降の走行経路であると判定すると(S2でN)、サーバ3は、S3と同様に、地点A~Jごとの排気ガスの測定値リストを作製する(S6)。次に、サーバ3は、S6で作成した排ガス量の測定値リスト、S4で作成し、DB32の保存された排気ガスの推定値リストを用いて、地点A~Jごとの排気ガスの測定値から排気ガスの推定値を差し引いた差を地点A~Jの判定値とした判定値リストを作製する(S7)。
【0033】
次のS8においては、サーバ3は、地点A~Jごとに排気ガスセンサ105の劣化に起因して排気ガスの測定値が正常範囲以下の異常値となっているか否か判定して、判定結果リストを作製する。また、サーバ3は、地点A~Jごとに車両異常に起因して排気ガスの測定値が正常範囲以上の異常値となっているか否かを判定して、判定結果リストを作製する。S8において、サーバ3は、地点A~Jごとの基準値と、地点A~Jごとの判定値と、の比較により、上記判定を行っている。
【0034】
具体的には、サーバ3は、下記の式(2)に示すように、基準値から判定値を差し引いた差D1が、基準値×M2%以上であれば、排気ガスセンサ105の劣化と判定する。
基準値-判定値=D1≧基準値×M2% …(2)
【0035】
即ち、排気ガスセンサ105の劣化が進むと、排気ガスの測定値が低下し、判定値が小さくなり、差D1が大きくなる。差D1が基準値のM2%を超えて大きくなると、サーバ3は、排気ガスセンサ105の劣化に起因して排気ガスの測定値が異常値となっていると判定する。即ち、上記式(2)を用いて判定することより、排気ガスの実測値の正常範囲の下限値は、(初回走行時の排気ガスの実測値-基準値×M2%)に設定される。本実施形態では、例えば、M2%=50%とした。図4に示す例では、サーバ3は、地点Hでセンサ劣化と判定する。
【0036】
また、S9において、サーバ3は、下記の式(3)に示すように、基準値から判定値を差し引いた差D1が、基準値×-N2%以下であれば、車両異常と判定する。
基準値-判定値=D1≦基準値×-N2% …(3)
【0037】
即ち、車両に異常が発生すると、排気ガスの測定値が上昇し、判定値が大きくなり、差D1が小さくなる。差D1が基準値×(-N2)%を超えて小さくなると、車両異常に起因して排気ガスの測定値が異常値となっていると判定する。即ち、上記式(3)を用いて判定することにより、排気ガスの実測値の正常範囲の上限値は、(初回の走行時の排気ガスの実測値+基準値×N2%)に設定される。本実施形態では、例えば、N2%=50%とした。図4に示す例では、サーバ3は、地点Dで車両異常と判定する。
【0038】
次に、サーバ3は、地点A~Jのうち劣化判定された割合と、車両異常と判定された割合と、を算出する(S9)。図4に示す例では、地点A~Jのうち劣化判定された地点は、地点Hのみなので、劣化と判定される割合は、10%と算出される。また、地点A~Jのうち車両異常と判定された地点は、地点Dのみなので、車両異常と判定される割合は、10%と算出される。
【0039】
サーバ3は、劣化判定の割合がM3%(=第1閾値)以上であれば(S10でY)、排気ガスセンサ105が劣化していると判定する(S11)。また、サーバ3は、車両異常の判定がN3以上であれば(S12でY)、車両異常が発生していると判定して(S12)、処理を終了する。サーバ3は、S5~S13において、劣化判定部として機能する。
【0040】
本実施形態では、サーバ3は、劣化判定以外にも運行情報から速度オーバー回数や、急加速回数、急減速回数などを求める運行情報解析処理を行い、管理端末4に対してこれら劣化判定結果や運行情報の解析結果などを提供する。
【0041】
次に、このときのサーバ3及び管理端末4の動作について以下説明する。管理者は、管理端末4を用いて車両10の管理を行なう。管理者等のユーザが、管理端末4の操作部42を操作して劣化判定システム1における管理端末4用のアプリケーションを起動する。起動すると、管理端末4のCPU44(以下、単に「管理端末4」と略記)は、運行実績表の検索画面を表示部43に表示する。
【0042】
管理者が、検索画面の表示に従って、操作部42を操作して、対象期間や対象車両のIDを入力する。管理端末4は、入力された対象期間や対象車両をサーバ3に送信する。サーバ3は、対象期間や対象車両を受信すると、図6に示すような、対象期間中に対象車両から収集した運行情報を解析した結果、対象期間中における対象車両の排気ガスセンサの劣化判定、車両異常の判定結果を表示した運行実績表を作製する。サーバ3は、提供部として機能し、作成した運行実績表を管理端末4に送信する。管理端末4では、サーバ3から送信された図6に示す運行実績表を表示する。
【0043】
サーバ3は、S11やS12で劣化判定、異常判定を行うと、図6に示すように、その旨を管理端末4に送信する。
【0044】
なお、上述した排気ガスセンサ105の劣化判定、車両異常の判定に用いるM3%、N3%を管理者などユーザが設定できるようにしてもよい。この場合、ユーザは管理端末4の操作部42を操作して、M3%、N3%の値を入力する。管理端末4は、M3%,N3%の値が入力されると、サーバ3に入力されたM3%、N3%の値を送信する。サーバ3は、管理端末4からM3%、N3%の値が入力されると、入力されたM3%、N3%の値を用いて劣化判定、車両異常の判定をし直す。
【0045】
M3%の値を小さく設定するほど、排気ガスセンサ105の劣化が進んでいない状態で劣化が判定される。N3%の値も小さく設定するほど、車両異常が進んでいない状態で車両異常が判定される。どの程度の劣化、車両異常で管理者に伝えるかは、ユーザの要望によって異なるため、M3%、N3%をユーザが設定できるようにすることにより、ユーザの要望に応じた劣化判定、車両異常の判定を行うことができる。
【0046】
上述した実施形態によれば、サーバ3は、排気ガスの測定値と、排気ガスの測定値と、の差に基づいて排気ガスセンサ105の劣化を判定することができる。これにより、排気ガスセンサ105の交換を促すことができるため、精度よく排気ガスの測定ができる。
【0047】
上述した実施形態によれば、サーバ3は、同一の走行経路上における同一の地点A~Jの排気ガスの測定値と、排気ガスの推定値との差に基づいて、排気ガスセンサ105の劣化を判定している。これにより、より一層精度よく、排気ガスセンサ105の劣化を判定することができる。
【0048】
上述した実施形態によれば、初回に走行経路を走行した際に求めた地点A~Jごとの基準値と、2回目以降に走行経路を走行した際に求めた地点A~Jごとの判定値と、の比較に基づいて、排気ガスセンサ105の劣化を判定している。基準値は、排気ガスセンサ105の個体差や排気ガスセンサ105が搭載された車両10の個体差に応じた値となる。このため、排気ガスセンサ105の個体差や排気ガスセンサ105が搭載された車両10の個体差による測定値のバラツキを考慮して排気ガスセンサ105の劣化を判定することができる。
【0049】
上述した実施形態によれば、サーバ3は、走行経路上において、正常範囲以下の異常値であると判定された割合がM3%以上の場合、排気ガスセンサ105の劣化と判定するので、より一層精度よく、排気ガスセンサ105の劣化を判定することができる。
【0050】
上述した実施形態によれば、サーバ3は、走行経路上において、正常範囲以上の異常値であると判定された割合がN3%以上の場合、車両異常と判定するので、車両異常と排気ガスセンサ105の劣化とを識別して判定することができる。
【0051】
上述した実施形態によれば、サーバ3は、劣化判定・車両異常の判定結果を管理端末4に送信する。これにより、管理端末4を用いて車両10の管理を行なうことができる。
【0052】
上述した実施形態によれば、サーバ3は、管理端末4により送信されたM3%、N4%の値を用いて、劣化判定、車両異常判定を行う。これにより、ユーザによりM3%、N4%の値を設定することができる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0054】
上述した実施形態によれば、サーバ3は、S7で作成した各地点A~Jごとの判定値と、S5で作成した各地点A~Jごとの基準値と、の比較に基づいて、劣化判定、車両異常判定を行っていたが、これに限ったものではない。サーバ3は、S7で作成した各地点A~Jの判定値のみに基づいて、劣化判定、車両異常判定を行ってもよい。
【0055】
上述した実施形態によれば、サーバ3は、排気ガスの測定値が異常値であると判定された割合に基づいて、排気ガスセンサ105の劣化、車両劣化を判定していたが、これに限ったものではない。例えば、所定回数連続して排気ガスの測定値が異常値であると判定された場合、排気ガスセンサ105の劣化、車両劣化を判定するようにしてもよい。
【0056】
上述した実施形態によれば、サーバ3は、排気ガスセンサ105の劣化と車両異常との双方を判定していたが、これに限ったものではない。サーバ3は、排気ガスセンサ105の劣化のみを判定してもよい。
【0057】
上述した実施形態によれば、運行記録装置2が収集した排気ガスの測定値や運行情報は、広域通信網11を通じてサーバ3に送信されていたが、これに限ったものではない。運行記録装置2は、排気ガスの測定値や運行情報をメディアR/W24内に装着されたSDカードなどのメディアに記録し、管理端末4にSDカードを装着して、管理端末4からサーバ3に送信するようにしてもよい。これにより、広域通信部21を有しない運行記録装置2であっても排気ガスセンサ105の劣化判定を行うことができる。
【0058】
ここで、上述した本発明に係る排気ガスセンサの劣化判定システム、及び、サーバの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[8]に簡潔に纏めて列記する。
【0059】
[1]
車両(10)に搭載された排気ガスセンサ(105)が測定した排気ガスの測定値と、前記車両(10)の運行情報と、を収集する車載器(2)と、
前記排気ガスセンサ(105)の劣化を判定するサーバ(3)と、を備え、
前記サーバ(3)は、
前記車載器(2)が収集した前記排気ガスの前記測定値と、前記運行情報と、を取得する取得部(33)と、
前記運行情報に基づいて前記排気ガスの推定値を推定する推定部(33)と、
前記排気ガスの前記推定値と、前記排気ガスの前記測定値と、の差に基づいて、前記排気ガスセンサの劣化を判定する劣化判定部(33)と、を有する
排気ガスセンサの劣化判定システム(1)。
【0060】
上記[1]の構成の排気ガスセンサ(105)の劣化判定システムによれば、排気ガスの測定値と、排気ガスの測定値と、の差に基づいて排気ガスセンサ(105)の劣化を判定することができる。これにより、排気ガスセンサ(105)の交換を促すことができるため、精度よく排気ガスの測定ができる。
【0061】
[2]
[1]に記載の排気ガスセンサの劣化判定システム(1)において、
前記取得部(33)は、所定の走行経路上における複数の地点(A~J)ごとの前記排気ガスの前記測定値を取得し、
前記推定部(33)は、所定の前記走行経路上における複数の前記地点(A~J)ごとに前記排気ガスの前記推定値を推定し、
前記劣化判定部(33)は、複数の前記地点(A~J)ごとに前記排気ガスの前記推定値と、前記排気ガスの前記測定値と、の差を求め、求めた複数の前記地点ごとの前記差に基づいて、前記排気ガスセンサ(105)の劣化を判定する、
排気ガスセンサの劣化判定システム(1)。
【0062】
上記[2]の構成のセンサの劣化判定システム(1)によれば、同一の走行経路上における同一の地点(A~J)の排気ガスの測定値と、排気ガスの推定値との差に基づいて、排気ガスセンサ(105)の劣化を判定している。これにより、より一層精度よく、排気ガスセンサ(105)の劣化を判定することができる。
【0063】
[3]
[2]に記載の排気ガスセンサの劣化判定システム(1)において、
初回に所定の前記走行経路を走行した際に求めた複数の前記地点(A~J)ごとの前記差を、複数の前記地点(A~J)ごとの基準値として記憶する記憶部(32)を備え、
前記劣化判定部(33)は、2回以降に所定の前記走行経路を走行した際に求めた複数の前記地点(A~J)ごとの前記差と、前記記憶部(32)に記憶された複数の前記地点(A~J)ごとの前記基準値と、の比較に基づいて前記排気ガスセンサ(105)の劣化を判定する、
排気ガスセンサの劣化判定システム(1)。
【0064】
上記[3]の構成の排気ガスセンサの劣化判定システム(1)によれば、排気ガスセンサ(105)や、排気ガスセンサ(105)が取り付けられた車両の個体差による測定値のバラツキを考慮して排気ガスセンサ(105)の劣化を判定することができる。これにより、より一層精度よく、排気ガスセンサ(105)の劣化を判定することができる。
【0065】
[4]
[2]又は[3]に記載の排気ガスセンサの劣化判定システム(1)において、
前記劣化判定部(33)は、複数の前記地点(A~J)ごとの前記排気ガスの前記測定値が正常範囲以下の異常値となっているか否かを判定し、所定の前記走行経路上において、前記正常範囲以下の前記異常値であると判定された割合が第1閾値(M3%)以上の場合、前記排気ガスセンサ(105)の劣化と判定する、
排気ガスセンサの劣化判定システム(1)。
【0066】
上記[4]の構成の排気ガスセンサの劣化判定システム(1)によれば、劣化判定部(33)は、所定の走行経路上において、正常範囲以下の異常値であると判定された割合が第1閾値(M3%)以上の場合、排気ガスセンサ(105)の劣化と判定するので、より一層精度よく、排気ガスセンサ(105)の劣化を判定することができる。
【0067】
[5]
[4]に記載の排気ガスセンサの劣化判定システム(1)において、
前記劣化判定部(33)は、複数の前記地点(A~J)ごとの前記排気ガスの前記測定値が前記正常範囲以上の異常値となっているか否かを判定し、所定の前記走行経路上において、前記正常範囲以上の前記異常値であると判定された割合が第2閾値以上の場合、車両異常と判定する、
排気ガスセンサの劣化判定システム(1)。
【0068】
上記[5]の構成の排気ガスセンサの劣化判定システム(1)によれば、劣化判定部(33)は、所定の走行経路上において、正常範囲以上の異常値であると判定された割合が第2閾値(N3%)以上の場合、車両異常と判定するので、車両異常と排気ガスセンサ(105)の劣化とを識別して判定することができる。
【0069】
[6]
[1]に記載の排気ガスセンサの劣化判定システム(1)において、
表示部(43)を有する管理端末(4)を備え、
前記サーバ(3)は、前記劣化判定部(33)による判定結果を前記管理端末(4)に提供する提供部(33)を有し、
前記管理端末(4)が、前記提供部(33)により提供された前記判定結果を前記表示部(43)に表示する、
劣化判定システム(1)。
【0070】
上記[6]の構成の排気ガスセンサの劣化判定システム(1)によれば、サーバ(3)の提供部(33)は、劣化判定部(33)による判定結果を管理端末(4)に提供する。これにより、管理端末(4)を用いて車両(10)の管理を行なうことができる。
【0071】
[7]
[4]に記載の排気ガスセンサの劣化判定システム(1)において、
前記第1閾値を入力する入力部(42)を有する管理端末(4)を備え、
前記サーバ(3)の前記劣化判定部(33)は、前記管理端末(4)の前記入力部(42)により入力された前記第1閾値を用いて、劣化判定を行う、
劣化判定システム(1)。
【0072】
上記[7]の構成によれば、ユーザにより第1閾値を設定することができる。
【0073】
[8]
車両に搭載された排気ガスセンサ(105)が測定した排気ガスの測定値と、前記車両の運行情報と、を取得する取得部(33)と、
前記運行情報に基づいて前記排気ガスの推定値を推定する推定部(33)と、
前記排気ガスの前記推定値と、前記排気ガスの前記測定値と、の差に基づいて、前記排気ガスセンサ(105)の劣化を判定する劣化判定部(33)と、備えた、
サーバ(3)。
【0074】
上記[8]の構成のサーバ(3)によれば、排気ガスの測定値と、排気ガスの測定値と、の差に基づいて、排気ガスセンサ(105)の劣化を判定することができる。これにより、排気ガスセンサ(105)の交換を促すことができるため、精度よく排気ガスの測定ができる。
【符号の説明】
【0075】
1 排気ガスセンサの劣化判定システム
2 運行記録装置(車載器)
3 サーバ
4 管理端末
10 車両
105 排気ガスセンサ
32 DB(記憶部)
33 CPU(取得部、推定部、劣化判定部、提供部)
42 操作部(入力部)
43 表示部
A~J 地点
図1
図2
図3
図4
図5
図6