(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067965
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】気密材及び建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
E06B5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178417
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 朋典
(72)【発明者】
【氏名】大山 雄也
【テーマコード(参考)】
2E239
【Fターム(参考)】
2E239CA02
2E239CA12
2E239CA22
2E239CA26
2E239CA29
2E239CA30
2E239CA32
2E239CA54
2E239CA62
(57)【要約】
【課題】防火性の向上を図る。
【解決手段】枠体と枠体に配設された面材とを備えた建具に適用される気密材30であって、枠体もしくは面材に装着される基部31と、枠体もしくは面材に当接される当接部32とを有し、基部31及び当接部32の双方が熱膨張性部材によって成形されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と前記枠体に配設された面材とを備えた建具に適用される気密材であって、
前記枠体もしくは前記面材に装着される基部と、前記枠体もしくは前記面材に当接される当接部とを有し、前記基部及び前記当接部の双方が熱膨張性部材によって成形されていることを特徴とする気密材。
【請求項2】
膨張倍率が互いに異なる部分を有していることを特徴とする請求項1に記載の気密材。
【請求項3】
前記基部は、第1の膨張倍率に調整した第1膨張部を有し、かつ前記当接部は、第2の膨張倍率に調整した第2膨張部を有し、前記第1の膨張倍率が前記第2の膨張倍率よりも低く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の気密材。
【請求項4】
前記第1膨張部よりも前記第2膨張部の膨張開始温度が低く設定されていることを特徴とする請求項3に記載の気密材。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一つに記載された気密材が前記基部を介して枠体もしくは面材に装着されていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密材及び建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具の防火性を向上するため、枠体と障子等の面材との間に介在される気密材として、基部を熱膨張性部材によって成形したものが提供されている。こうした気密材を装着した建具によれば、火災発生時等において高温に晒された場合に基部の熱膨張性部材が膨張することになり、枠体と面材との間に火炎の貫通口となるような隙間が生じる事態を防止することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建具が高温に晒されると、枠体に対して面材が湾曲するように熱変形する場合がある。このように面材に熱変形が生じると、枠体との間の隙間が拡大するため、気密材の基部が膨張した場合にも火炎が貫通する事態が生じる懸念がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、防火性の向上を図ることのできる気密材及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る気密材は、枠体と前記枠体に配設された面材とを備えた建具に適用される気密材であって、前記枠体もしくは前記面材に装着される基部と、前記枠体もしくは前記面材に当接される当接部とを有し、前記基部及び前記当接部の双方が熱膨張性部材によって成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、火災発生時等において高温に晒されると、気密材の基部及び当接部の双方が膨張することになる。従って、枠体に対して面材が湾曲するように熱変形した場合にも隙間が生じる事態を防止することができ、防火性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1である建具の縦断面図である。
【
図3】
図1に示した建具に適用する気密材の端面図である。
【
図4】
図1に示した建具の要部を概念的に示すもので、(a)は枠体に対して面材が閉じ位置に配置された状態の要部横断面図、(b)は気密材の基部が膨張した状態の要部横断面図、(c)は気密材の当接部が膨張した状態の要部横断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態2である建具の縦断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態3である建具の縦断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態4である建具の縦断面図である。
【
図11】気密材の形状変形例1を示す端面図である。
【
図12】気密材の形状変形例2を示す端面図である。
【
図13】気密材の形状変形例3を示す端面図である。
【
図14】気密材の形状変形例4を示す端面図である。
【
図15】気密材の形状変形例5を示す端面図である。
【
図16】気密材の形状変形例6を示す端面図である。
【
図17】気密材の形状変形例7を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る気密材及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
(実施の形態1)
図1、
図2は、本発明の実施の形態1である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10と、枠体10の室外側となる部分に配設した外障子(面材)20Aと、枠体10の室内側となる部分に配設した内障子(面材)20Bとを備えた引き違い窓と称されるものである。
【0011】
枠体10は、左右の縦枠11,12、上枠13、下枠14を四周組することによって構成してある。上枠13及び下枠14には、外横ガイドレール13a,14a及び内横ガイドレール13b,14bが設けてあり、左右の縦枠11,12には、外縦ガイドレール11a及び内縦ガイドレール12aが設けてある。外横ガイドレール13a,14a及び内横ガイドレール13b,14bは、上枠13及び下枠14の互いに対向する見込み面において室外側となる位置及び室内側となる位置にそれぞれ形成したもので、上枠13及び下枠14の長手に沿ったほぼ全長にわたる部分に互いに平行となるように設けてある。外縦ガイドレール11a及び内縦ガイドレール12aは、左右の縦枠11,12の互いに対向する見込み面に形成したもので、縦枠11,12の長手に沿った全長にわたる部分に形成してある。本実施の形態1では、室内側から見て左側に配置した縦枠11に外縦ガイドレール11aのみが設けてあり、室内側から見て右側に配置した縦枠12に内縦ガイドレール12aのみが設けてある。
【0012】
外障子20Aは、四角形状を成す複層ガラス等の面材21と、面材21の四周に配設した左右の縦框22,23、上框24、下框25とを備えて構成したものであり、内障子20Bは、四角形状を成す面材21と、面材21の四周に配設した左右の縦框22,23、上框24、下框25とを備えて構成したものである。これら外障子20A及び内障子20Bは、外横ガイドレール13a,14a及び内横ガイドレール13b,14bを介して枠体10に移動可能に配設してあり、枠体10の開口を開閉することが可能である。すなわち、図には明示していないが、障子20A,20Bの下框25には戸車が設けてあり、戸車を下枠14の外横ガイドレール14a及び内横ガイドレール14bに載置させるとともに、上框24に設けたヒレ部24aの相互間に上枠13の外横ガイドレール13a及び内横ガイドレール13bを配置することにより、枠体10に対して障子20A,20Bを開閉移動させることが可能である。本実施の形態1では、室内側から見て枠体10の左側に外障子20Aを配置し、かつ右側に内障子20Bを配置した場合に、枠体10の開口を閉じることができるように枠体10及び2つの障子20A,20Bが構成してある。枠体10に対して外障子20A及び内障子20Bを閉じ位置に配置した状態においては、室内側から見て外障子20Aの右側に配置される縦框23と、内障子20Bの左側に配置される縦框22とが召し合わせとなって互いに見込み方向に並設された状態となる。また、枠体10に対して外障子20A及び内障子20Bを閉じ位置に配置した状態においては、外障子20Aの戸先となる縦框22に設けたヒレ部22aの相互間に外縦ガイドレール11aが配置され、かつ内障子20Bの戸先となる縦框23に設けたヒレ部23aの相互間に内縦ガイドレール12aが配置された状態となる。枠体10を構成する縦枠11,12、上枠13、下枠14及び障子20A,20Bを構成する縦框22,23、上框24、下框25は、いずれもアルミニウム等の金属もしくは樹脂によって成形した押し出し形材であり、それぞれ長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。
【0013】
図1、
図2からも明らかなように、枠体10と外障子20A及び内障子20Bとの間及び外障子20Aと内障子20Bとの相互間にはそれぞれ気密材30が設けてある。気密材30は、枠体10に対して外障子20A及び内障子20Bを閉じ位置に配置した際に枠体10と外障子20A及び内障子20Bとの間並びに外障子20Aと内障子20Bとの間の気密性を確保するためのものである。本実施の形態1では、外障子20Aの上框24、下框25、戸先となる縦框22において室外側に設けたヒレ部24a,25a,22aに気密材30が設けてあるとともに、内障子20Bの上框24、下框25、戸先となる縦框23において室外側に設けたヒレ部24a,25a,23aに気密材30が設けてある。気密材30は、基部31及び当接部32を有したもので、それぞれのヒレ部22a,23a,24a,25aに設けたアリ溝状の装着部26に基部31を介して装着してある。上框24及び下框25に設けた気密材30は、当接部32の延在縁部が外横ガイドレール13a,14a及び内横ガイドレール13b,14bに当接することにより、枠体10と障子20A,20Bとの間における室内外の気密性を確保するように機能する。それぞれの気密材30は、上框24、下框25、縦框22,23の長手に沿った全長にわたる部分に連続して設けてある。さらに外障子20Aには、召し合わせとなる縦框23において室内に臨む見付け面にも基部31及び当接部32を有した気密材30が設けてある。この気密材30は、縦框23に設けたアリ溝状の装着部26に基部31を介して装着してあり、外障子20A及び内障子20Bを閉じ位置に配置した際に当接部32が内障子20Bの召し合わせとなる縦框22の室外に臨む見付け面に当接することによって外障子20A及び内障子20Bの間における室内外の気密性を確保するように機能する。この気密材30は、縦框23の長手に沿った全長にわたる部分に連続して設けてある。
【0014】
以下、気密材30の具体的な構成について詳述し、併せて本願発明の特徴部分について説明する。
図3は、上述した建具を適用対象とする気密材30を示すものである。気密材30の基部31は、建具に設けた装着部26に装着される部分であり、ベース体31a、突条体31b、膨出体31cを有している。ベース体31aは、ほぼ平板状を成すもので、装着部26の開口を覆うことのできる幅に形成してある。突条体31bは、ベース体31aの一方の表面において幅方向のほぼ中央となる部分から突出したもので、装着部26の開口に挿入可能となる幅に形成してある。膨出体31cは、突条体31bの突出縁部からそれぞれ幅方向に延在した平板状を成すものである。この気密材30の基部31は、装着部26に対しては、開口を介して膨出体31c及び突条体31bを圧入することにより、ベース体31aが装着部26の開口を覆った状態で装着部26に装着されることになる。気密材30の当接部32は、ベース体31aの一端縁部から傾斜するように延在したヒレ状を成し、延在縁部が気密対象となる相手側の枠体10や内障子20Bに対して弾性変形した状態で当接する部分である。
【0015】
本実施の形態1では、気密材30の基部31及び当接部32が熱膨張性部材によって一体に成形してある。熱膨張性部材は、熱により膨張する不燃性または難燃性の耐火部材である。熱膨張性部材としては、例えば樹脂やゴム、エラストマーから成る基材、あるいは樹脂、ゴム、エラストマーの組み合わせから成る基材に対して、熱膨張性を有した膨張黒鉛を含有させることによって成形したものである。但し、基部31は、当接部32に比べて膨張倍率が低く、かつ膨張開始温度が低くなるように調整してある。
【0016】
上記のように構成した気密材30を備える建具によれば、
図1、
図2、
図4(a)に示すように、枠体10とそれぞれの障子20A,20Bとの間並びに障子20A,20Bの相互間に気密材30が介在するため、室外の空気や水が室内側に進入する事態を防止することが可能となる。しかも、気密材30として熱膨張性部材からなるものを適用しているため、火災発生時等において建具が高温に晒された場合、
図4(b)に示すように、気密材30が膨張することになる。これにより、枠体10と障子20A,20Bとの間並びに障子20A,20Bの相互間に火炎の貫通口が生じる事態を防止することができ、防火性の点で有利となる。特に、上述の気密材30によれば、基部31及び当接部32の双方が熱膨張性部材によって成形されているため、枠体10に対して障子20A,20Bが湾曲するように熱変形した場合にも隙間が生じる事態を防止することができ、建具の防火性を一層向上させることが可能となる。さらに、気密材30においては、当接部32の膨張倍率が基部31よりも大きく、かつ膨張開始温度が基部31よりも低く設定してある。つまり、建具が高温に晒された場合には、枠体10と障子20A,20Bとの間や障子20A,20Bの相互間に介在する当接部32がより早く、かつより大きく膨張することになる。従って、枠体10と障子20A,20Bとの間や障子20A,20Bの相互間に生じる隙間をより早く確実に塞ぐことができ、防火性の点できわめて有利となる。この間、装着部26に収容された基部31については、膨張開始温度が高く、かつ膨張倍率が小さいため、気密材30が装着部26から不用意に脱落するような事態が招来される懸念もない。加えて、膨張倍率を適宜調整することにより、同一の形状の気密材30を異なる箇所に共通して適用した場合にも、膨張量を適宜調整することができ、熱膨張性部材の膨張不足や過剰に膨張する事態を防止することができる等の利点がある。
【0017】
なお、上述した実施の形態1では、建具として引き違い窓を例示しているが、枠体に対して障子が開閉するものであれば窓種に制約はない。例えば、一方の障子のみが移動する片引き窓に適用しても良いし、以下に示す実施の形態2の開き窓や実施の形態3のFIX窓に適用することも可能である。
【0018】
(実施の形態2)
図5、
図6は、本発明の実施の形態2である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体40及び障子(面材)50を備え、枠体40と障子50との間に設けた図示せぬリンク機構により、枠体40に対して障子50を室外に向けて突出するように開くことが可能である。枠体40は、左右の縦枠41,42、上枠43、下枠44を四周組することによって構成したものである。障子50は、四角形状を成す複層ガラス等の面材51と、面材51の四周に配設した左右の縦框52,53、上框54、下框55とを備えて構成したものである。縦枠41,42、上枠43、下枠44には、それぞれの内周側となる部分に外戸当り見付け面41a,42a,43a,44a及び内戸当り見付け面41b,42b,43b,44bが設けてある。外戸当り見付け面41a,42a,43a,44aは、縦枠41,42、上枠43、下枠44の室外側に位置する部分において見付け方向に沿って延在したものである。内戸当り見付け面41b,42b,43b,44bは、縦枠41,42、上枠43、下枠44の室内側に位置する部分において見付け方向に沿って延在したもので、外戸当り見付け面41a,42a,43a,44aよりも内周側となる部分に設けてある。外戸当り見付け面41a,42a,43a,44a及び内戸当り見付け面41b,42b,43b,44bには、室外に臨む部分にそれぞれアリ溝状の装着部45が設けてあり、個々の装着部45に基部31を介して気密材30が装着してある。気密材30としては実施の形態1のものと同様のものを適用している。障子50の縦框52,53、上框54、下框55は、それぞれの室内に臨む見付け面が内戸当り見付け面41b,42b,43b,44bに装着した気密材30に同時に当接する大きさに構成してある。また、縦框52,53、上框54、下框55には、それぞれの室外側に位置する部分に当接ヒレ部52a,53a,54a,55aが設けてある。当接ヒレ部52a,53a,54a,55aは、外周側に向けて延在したもので、室内に臨む見付け面が外戸当り見付け面41a,42a,43a,44aに装着した気密材30に同時に当接する大きさに構成してある。枠体40を構成する縦枠41,42、上枠43、下枠44及び障子50を構成する縦框52,53、上框54、下框55は、いずれもアルミニウム等の金属もしくは樹脂によって成形した押し出し形材であり、それぞれ長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。
【0019】
この実施の形態2の建具においても、枠体40と障子50との間に気密材30が介在するため、室外の空気や水が室内側に進入する事態を防止することが可能となる。しかも、気密材30として熱膨張性部材からなるものを適用しているため、火災発生時等において建具が高温に晒された場合に気密材30の基部31及び当接部32の双方が膨張することになり、枠体40と障子50との間に火炎の貫通口が生じる事態をより確実に防止することができる。さらに、建具が高温に晒された場合には、枠体40と障子50との間に介在する当接部32がより早く、かつより大きく膨張することになる。従って、枠体40と障子50との間に生じる隙間をより早く確実に塞ぐことができ、防火性の点できわめて有利となる。この間、装着部45に収容された基部31については、膨張開始温度が高く、かつ膨張倍率が小さいため、気密材30が装着部45から不用意に脱落するような事態が招来される懸念もない。加えて、膨張倍率を適宜調整することにより、同一の形状の気密材30を異なる箇所に共通して適用した場合にも、膨張量を適宜調整することができ、熱膨張性部材の膨張不足や過剰に膨張する事態を防止することができる等の利点がある。
【0020】
(実施の形態3)
図7、
図8は、本発明の実施の形態3である建具を示したものである。ここで例示する建具は、FIX窓と称されるもので、枠体60にパネル(面材)70が直接支持してある。枠体60は、左右の縦枠61,62、上枠63、下枠64を四周組することによって構成したものである。縦枠61,62、上枠63、下枠64には、それぞれ室外側となる部分及び室内側となる部分から内周側に向けて面材支持壁部61a,62a,63a,64aが互いに対向するように設けてある。面材支持壁部61a,62a,63a,64aには、延在縁部にそれぞれアリ溝状の装着部65が設けあり、個々の装着部65に基部31を介して気密材30が装着してある。気密材30としては実施の形態1のものと同様のものを適用している。パネル70は、外形が四角形の平板状を成すもので、四周の縁部がそれぞれ気密材30の間に挟持してある。枠体60を構成する縦枠61,62、上枠63、下枠64は、いずれもアルミニウム等の金属もしくは樹脂によって成形した押し出し形材であり、それぞれ長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。
【0021】
この実施の形態3の建具においても、枠体60とパネル70との間に気密材30が介在するため、室外の空気や水が室内側に進入する事態を防止することが可能となる。しかも、気密材30として熱膨張性部材からなるものを適用しているため、火災発生時等において建具が高温に晒された場合に気密材30の基部31及び当接部32の双方が膨張することになり、枠体60とパネル70との間に火炎の貫通口が生じる事態をより確実に防止することができる。さらに、建具が高温に晒された場合には、枠体60とパネル70との間に介在する当接部32がより早く、かつより大きく膨張することになる。従って、枠体60とパネル70との間に生じる隙間をより早く確実に塞ぐことができ、防火性の点できわめて有利となる。この間、装着部65に収容された基部31については、膨張開始温度が高く、かつ膨張倍率が小さいため、気密材30が装着部65から不用意に脱落するような事態が招来される懸念もない。加えて、膨張倍率を適宜調整することにより、同一の形状の気密材30を異なる箇所に共通して適用した場合にも、膨張量を適宜調整することができ、熱膨張性部材の膨張不足や過剰に膨張する事態を防止することができる等の利点がある。
【0022】
(実施の形態4)
FIX窓としては、実施の形態3で示したように直接パネル70を枠体60に支持させるものに限らない。例えば、
図9、
図10に示す実施の形態4の建具のように、パネル70aの四周に框71,72,73,74を備えた障子(面材)80を枠体60に支持させてFIX窓を構成するものであっても構わない。すなわち、実施の形態4の建具では、パネル70aの四周に縦框71,72、上框73、下框74が配設してあり、枠体60に設けた面材支持壁部61a,62a,63a,64aの気密材30がそれぞれの框71,72,73,74の見付け面に当接した状態で障子80が枠体60に支持してある。気密材30としては実施の形態1のものと同様のものを適用している。なお、実施の形態4において実施の形態3と同様の構成には同一の符号が付してある。
【0023】
この実施の形態4の建具においても、枠体60と障子80との間に気密材30が介在するため、室外の空気や水が室内側に進入する事態を防止することが可能となる。しかも、気密材30として熱膨張性部材からなるものを適用しているため、火災発生時等において建具が高温に晒された場合に気密材30の基部31及び当接部32の双方が膨張することになり、枠体60と障子80との間に火炎の貫通口が生じる事態をより確実に防止することができる。さらに、建具が高温に晒された場合には、枠体60と障子80との間に介在する当接部32がより早く、かつより大きく膨張することになる。従って、枠体60と障子80との間に生じる隙間をより早く確実に塞ぐことができ、防火性の点できわめて有利となる。この間、装着部65に収容された基部31については、膨張開始温度が高く、かつ膨張倍率が小さいため、気密材30が装着部65から不用意に脱落するような事態が招来される懸念もない。加えて、膨張倍率を適宜調整することにより、同一の形状の気密材30を異なる箇所に共通して適用した場合にも、膨張量を適宜調整することができ、熱膨張性部材の膨張不足や過剰に膨張する事態を防止することができる等の利点がある。
【0024】
なお、上述した実施の形態1~実施の形態4では、基部31の膨張倍率が当接部32の膨張倍率よりも小さくなるように設定した気密材30を例示しているが、基部の膨張黒鉛が当接部の膨張倍率よりも大きくなるように設定した気密材を構成しても良い。また、気密材30に膨張開始温度が異なる部分を有するように構成しているが、本発明は必ずしもこれに限定されず、例えば基部31と当接部32とで膨張開始温度が同一となるように気密材30を構成しても良い。
【0025】
さらに、適用する気密材30の形状としては、基部31のベース体31aから当接部32が唯一傾斜するように延在するものを例示しているが、気密材30の形状は実施の形態1のものに限らず、例えば、
図11に示す形状変形例1~
図17に示す形状変形例7のように、種々の形状の気密材30を適用することができる。すなわち、
図11に示す形状変形例1の気密材30では、当接部32がベース体31aの一側縁部から直角方向に向けて延在した後に傾斜するように設けてある。
図12に示す形状変形例2の気密材30では、当接部32がベース体31aの両端縁部に設けてある。
図13に示す形状変形例3の気密材30では、当接部32がベース体31aの一端縁部及び中央となる部分に設けてある。
図14に示す形状変形例4の気密材30では、当接部32がベース体31aの両端縁部及び中央となる部分に設けてある。
図15に示す形状変形例5の気密材30では、当接部32がベース体31aの表面に半円筒状に設けてある。
図16に示す形状変形例6の気密材30では、ベース体31aが中空の角筒状に設けてある。
図17に示す形状変形例7の気密材30では、基部31としてベース体31aのみを有し、その中央となる部分に当接部32が設けてある。それぞれの形状変形例においては、膨張倍率について具体的に示していないが、基部31及び当接部32が互いに同じ膨張倍率となるように構成しても良いし、膨張倍率が異なる部分を有して気密材を構成しても良い。
【0026】
以上のように、本発明に係る気密材は、枠体と前記枠体に配設された面材とを備えた建具に適用される気密材であって、前記枠体もしくは前記面材に装着される基部と、前記枠体もしくは前記面材に当接される当接部とを有し、前記基部及び前記当接部の双方が熱膨張性部材によって成形されていることを特徴としている。
この発明によれば、火災発生時等において高温に晒されると、気密材の基部及び当接部の双方が膨張することになる。従って、枠体に対して面材が湾曲するように熱変形した場合にも隙間が生じる事態を防止することができ、防火性の向上を図ることが可能となる。
【0027】
また本発明は、上述した気密材において、膨張倍率が互いに異なる部分を有していることを特徴としている。
この発明によれば、膨張倍率が異なる部分を有しているため、これらを適宜混合させることにより、熱膨張性部材の膨張不足や過剰に膨張する事態を防止することができる等の利点がある。
【0028】
また本発明は、上述した気密材において、前記基部は、第1の膨張倍率に調整した第1膨張部を有し、かつ前記当接部は、第2の膨張倍率に調整した第2膨張部を有し、前記第1の膨張倍率が前記第2の膨張倍率よりも低く設定されていることを特徴としている。
この発明によれば、枠体もしくは面材に装着される基部に比べて気密対象となる相手側に当接する当接部の膨張倍率が大きく設定してあるため、気密材が脱落する事態を防止しつつ、火炎の貫通口が生じる事態をより確実に防止することが可能となる。
【0029】
また本発明は、上述した気密材において、前記第1膨張部よりも前記第2膨張部の膨張開始温度が低く設定されていることを特徴としている。
この発明によれば、枠体もしくは面材に装着される基部に比べて当接部の膨張倍率が大きく、かつ膨張開始温度が低いため、気密対象となる相手側との間をより早く確実に塞ぐことができ、防火性の点で有利となる。
【0030】
また本発明に係る建具は、上述した気密材が前記基部を介して枠体もしくは面材に装着されていることを特徴としている。
この発明によれば、火災発生時等において高温に晒されると、気密材の基部及び当接部の双方が膨張することになる。従って、枠体に対して面材が湾曲するように熱変形した場合にも隙間が生じる事態を防止することができ、防火性の向上を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
10,40,60 枠体、20A 外障子、20B 内障子、30 気密材、31 基部、32 当接部、50,80 障子、70 パネル