(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067968
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】圧油給排システム
(51)【国際特許分類】
F15B 11/076 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
F15B11/076
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178425
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(72)【発明者】
【氏名】大久保 芳樹
【テーマコード(参考)】
3H089
【Fターム(参考)】
3H089AA88
3H089BB15
3H089BB28
3H089CC01
3H089DA02
3H089DA05
3H089DA15
3H089DB43
3H089GG02
3H089GG03
(57)【要約】
【課題】 緊急停止時の状態が維持できる圧力給排システムを提供する。
【解決手段】 油圧シリンダ(10)に圧油を給排する圧力給排システムは、圧油を吐出するポンプ(1)とその圧油を前記油圧シリンダ(10)に対して給排の切り換えする三方弁(2)とを備える。前記ポンプ(10)を駆動させる圧縮エア源(7)と前記ポンプ(10)とを接続する圧縮エアの第1流路(86)の途中部に第1給排弁(4)が設けられる。前記第1流路(86)の途中部から分岐されて前記三方弁(2)に接続される第2流路(87)の途中部に第2圧縮エア給排弁(5)が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧によって軸方向の一方へ移動すると共にバネ(69)によって軸方向の他方に移動するピストン(64)を有する油圧シリンダ(10)に圧油を給排する圧油給排システムにおいて、
圧縮エア源(7)から圧縮エアが供給されることにより圧油を吐出するポンプ(1)と、
前記ポンプ(1)からの圧油を前記油圧シリンダ(10)に給排する流路の途中部に設けられる三方弁(2)であって、前記ポンプ(1)から前記油圧シリンダ(10)に圧油が供給される供給状態と前記油圧シリンダ(10)内から外部に圧油が排出される排出状態とに切り換える三方弁(2)と、
前記圧縮エア源(7)と前記ポンプ(10)とを接続する圧縮エアの第1流路(86)の途中部に設けられる第1圧縮エア給排弁(4)であって、前記圧縮エア源(7)からポンプ(1)へ圧縮エアを供給する流れとポンプ(1)から大気中へ圧縮エアを排出する流れとを切り換える第1圧縮エア給排弁(4)と、
前記第1圧縮エア給排弁(4)と前記ポンプ(10)との間の前記第1流路(86)から分岐されて前記三方弁(2)に接続される第2流路(87)の途中部に設けられる第2圧縮エア給排弁(5)であって、前記第1流路(87)と前記三方弁(2)との間で圧縮エアを給排する流れと前記三方弁(2)から大気中へ圧縮エアを排出する流れとを切り換えることにより前記三方弁(2)を前記供給状態と前記排出状態とに切り換える前記第2圧縮エア給排弁(5)と、を備える、
ことを特徴とする圧油給排システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、油圧シリンダに圧油を給排するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の圧油給排システムの一部を構成する三方弁は、従来では、特許文献1(日本国・特開平3-181682号公報)に記載されたものがある。その従来技術は、次のように構成されている。
その三方弁は、ポンプからの圧油を油圧シリンダに供給する状態と、油圧シリンダの圧油を油タンクに排出する状態とを切換えるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術は次の問題がある。
上記の三方弁やエア駆動式の圧油ポンプなどによって構成される油圧給排システムは、所定の圧力に保たれた圧油を油圧シリンダに安定して給排できる点で優れる。その油圧給排システムから圧油を油圧シリンダに給排することにより、油圧シリンダをロック駆動もしくはリリース駆動させる。その油圧シリンダの駆動途中で、その動作を緊急停止させることが望まれることがある。その緊急停止を実現させるために、例えば、油圧給排システムの三方弁と油圧シリンダとを接続する流路の途中に切換え弁を設けることが提案される。この場合、切換え弁によって流路が開放から遮断に切り換えられて、油圧シリンダ内への圧油の供給を停止し、または、油圧シリンダ内からの圧油の排出を停止する。これにより、油圧シリンダを緊急停止させることができる。しかしながら、緊急停止後においても圧油給排システムは、通常通りに運転し続けているので、切換え弁によって遮断された三方弁側の流路内の圧力が時間経過とともに変化していく。このため、緊急停止後に油圧給排システムを再稼働させようとしたときに、油圧シリンダ側の流路内と圧油給排システム側の流路内との間で圧力差が生じていることがある。その圧力差によって油圧シリンダが所望する方向とは逆方向に動き出したり、急加速で動作したりする。そのような油圧シリンダの動作によって、作業者が負傷したり、周辺機器が損傷したりするおそれがあった。
本発明の目的は、緊急停止時の状態が維持できる圧力給排システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば、
図1から
図3に示すように、圧油給排システムを次のように構成した。
その圧油給排システムは、油圧によって軸方向の一方へ移動すると共にバネ69によって軸方向の他方に移動するピストン64を有する油圧シリンダ10に圧油を給排するものである。その圧油給排システムは、ポンプ1と三方弁2と第1圧縮エア給排弁4と第2圧縮エア給排弁5とを備える。そのポンプ1は、圧縮エア源7からの圧縮エアの供給によって駆動されることにより、圧油を吐出する。上記の三方弁2は、前記ポンプ1からの圧油を前記油圧シリンダ10に給排する流路の途中部に設けられる。その三方弁2は、前記ポンプ1から前記油圧シリンダ10に圧油が供給される供給状態と前記油圧シリンダ10内から外部に圧油が排出される排出状態とに切り換える。上記の第1圧縮エア給排弁4は、前記圧縮エア源7と前記ポンプ10とを接続する圧縮エアの第1流路86の途中部に設けられる。その第1圧縮エア給排弁4は、前記圧縮エア源7からポンプ1へ圧縮エアを供給する流れとポンプ1から大気中へ圧縮エアを排出する流れとを切り換える。上記の第2圧縮エア給排弁5は、前記第1圧縮エア給排弁4と前記ポンプ10との間の前記第1流路86から分岐されて前記三方弁2に接続される第2流路87の途中部に設けられる。その第2圧縮エア給排弁5は、前記第1流路87と前記三方弁2との間で圧縮エアを給排する流れと前記三方弁2から大気中へ圧縮エアを排出する流れとを切り換えると共に、その圧縮エアの流れを切り換えることにより前記三方弁2を前記供給状態と前記排出状態とに切り換える。
【0006】
上記の本発明は次の作用効果を奏する。
緊急停止の電気信号によって、又は、作業者による手動によって第1圧縮エア給排弁が操作されて、ポンプから圧縮エアが排出されると共に、三方弁から圧縮エアが排出される。これにより、ポンプからの圧油の供給および三方弁からの圧油の排出が停止される。このため、緊急停止中において、三方弁から油圧シリンダの作動室までの圧油の圧力が緊急停止前の状態に維持される。その結果、緊急停止状態が解除された油圧システムが再稼働するときに、油圧シリンダを誤動作や急加速動作させることなく、緊急停止直前の状態から引き続いて動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態を示し、圧油給排システムの一部断面視した模式図である。
【
図2】
図2は、上記圧油給排システムのポンプを示す断面図である。
【
図3】
図3は、上記圧油給排システムの三方弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を
図1によって説明する。
上記圧油給排システムは、ポンプ1と三方弁2と第1圧縮エア給排弁4と第2圧縮エア給排弁5を備える。
【0009】
上記ポンプ1には、圧縮エア源7からの圧縮エアが圧力レギュレータ8を通って供給される。その圧縮エアの圧力によって駆動されるポンプ1は、油タンク9内の油を油圧シリンダ(圧油給排対象物)10に圧油として供給する。
【0010】
上記ポンプ1は、
図2に示すように、次のように構成される。
そのポンプ1のケーシング11の右壁に、圧縮エア供給ポート12が設けられると共に、ケーシング11の上端部にエア排出孔13が設けられる。その圧縮エア供給ポート12に、圧縮エア源7からの圧縮エアが供給される。その圧縮エアが、ケーシング11内に設けられるピストン15を上下方向に往復駆動させた後、エア排出孔13から外部に排出される。
【0011】
上記ケーシング11内に形成されるプランジャ室16には、ケーシング11の下壁に形成される給油ポート17と、左壁に形成される吐出ポート18とが連通される。油タンク9が流路20を介して給油ポート17に連通される。また、吐出ポート18が流路を介して三方弁2に連通される。上記ピストン15に連結されるプランジャ21が保密状にプランジャ室16に挿入される。そのプランジャ21が上昇されると、プランジャ室16内の油圧が低下して、油タンク9の油が流路20を通って給油ポート17からプランジャ室16に流入される。プランジャ21が下降されると、プランジャ室16内の油圧が上昇して、圧油が吐出ポート18から三方弁2に送り出される。
【0012】
本実施形態の圧油給排システムは、
図3に示す三方弁2を備える。その三方弁2は、ポンプ1から油圧シリンダ10への圧油の流れと、油圧シリンダ10から油タンク9への圧油の流れとを切り換える。
【0013】
上記の三方弁2は、ハウジング26内に上側から順に設けられる方向切換え弁機構27とパイロット弁機構28とを有する。
【0014】
上記の方向切換え弁機構27は、次のように構成される。そのハウジング26内に弁室29が上下方向に形成される。その弁室29は、その内部に形成される仕切り壁30によって第1室31と第2室32とに上下に分けられる。第1室31と第2室32とは、仕切壁30を貫通する連通孔33によって接続されている。ハウジング26の右壁に供給ポート34が形成される。その供給ポート34は、ポンプ1の吐出ポート18に接続されている。また、供給ポート34が、ハウジング26内に上下方向に形成される入口路35を介して第1室31に連通される。その入口路35が第1室31の天井面に開口される。上記の第1室31の天井面であって、入口路35の開口孔の周縁に逆止弁座36が形成される。その逆止弁座36に当接可能な逆止弁体37が、第1室31に上下方向に移動可能となるように挿入される。その逆止弁体37の下面に収容孔が開口され、その収容孔に閉弁バネ38が挿入される。その閉弁バネ38が仕切り壁30に対して逆止弁体37を逆止弁座36に向けて上方に付勢する。その逆止弁体37の上面に装着溝が環状に開口される。その装着溝には、ゴムまたは樹脂によって構成される封止部材が装着される。その封止部材の上面に逆止弁面37aが形成される。その逆止弁面37aが逆止弁座36に係合可能になっている。このため、供給ポート34から、逆止弁面37aと逆止弁座36との間の開弁隙間を通って第1弁室31への圧縮エアの流れが許容されると共に、その逆の流れが逆止弁体37と逆止弁座36とによって制限される。
【0015】
上記の連通孔33の第2室32側の開口部周縁に短絡防止弁座39が環状に形成される。また、第2室32の底面に出口路40が開口され、その開口部の周縁に排出弁座41が環状に形成される。上記の短絡防止弁座39に当接可能な短絡防止弁体42が第2室32に上下方向に移動可能となるように挿入される。その短絡防止弁体42の弁本体部42aの上部に装着孔が形成され、その装着孔にボールが挿入される。そのボールの上面に形成される環状の弁面42bが、上記の短絡防止弁座39に係合可能となっている。
【0016】
上記の短絡防止弁体42の下部に形成される収容孔43に、排出弁体44が封止部材を介して保密状で上下方向に移動可能となるように挿入される。その排出弁体44の上部に装着孔が形成され、その装着孔に離間バネ45が装着される。その離間バネ45の上端部が短絡防止弁体42の収容孔43の天井壁に当接されると共に、離間バネ45の下端部が排出弁体44の装着孔の底壁に当接される。これにより、離間バネ45が短絡防止弁体42と排出弁体44とを離間する方向へ付勢する。その離間バネ45は、短絡防止弁体42を短絡防止弁座39に向けて付勢し、排出弁体44を排出弁座41に向けて付勢する。排出弁体44の装着孔と出口路40とは、排出弁体44の底壁に形成される連通孔によって連通されている。
【0017】
上記の第2室32は、作動ポート46を介して油圧シリンダ10の作動室66に連通される。また、上記の出口路40は、ハウジング26の右壁に形成される排出ポート48を通って油タンク9に連通されている。このため、出口路40内の油の圧力は、油タンク9の油の圧力と同じ程度であり、第2室32の圧油の圧力に比べて同じかそれよりも低くなっている。従って、排出弁体44が排出弁座41に係合されて閉弁されると、第2室32の圧油の圧力によって排出弁体44の排出弁面44aが排出弁座41に押圧されて閉弁状態が維持される。これにより、ポンプ1からの圧油の脈動により第2室32の圧力が変動しても、短絡防止弁体42にはチャタリングが起こらない。その結果、騒音の発生が防止されるとともに、短絡防止弁体42の弁面42bの摩耗や破損が防止される。
【0018】
上記の排出弁体42と排出弁座41とが係合される環状部分の内方側の第1受圧面積は、短絡防止弁体42の収容孔43に装着される封止部材と排出弁体44の外周面とが係合される円形部分の内方側の第2受圧面積よりも僅かに広く設定されている。また、出口路40に連通される収容孔43内の圧力は、油タンク9内の圧力と同程度(大気圧程度)に保たれている。このため、閉弁状態の排出弁体44が第2室32の圧油から受ける圧力は、前記の第1受圧面積から第2受圧面積を引いた狭い面積の受圧部分に作用する。このため、圧縮エア源7から供給される圧縮エアが、(後述する)出力部材52を介して排出弁体44を排出弁座41から容易に開弁させることができる。よって、出力部材52を小型に作ることができる。
【0019】
上記ハウジング26内に設けられるパイロット弁機構28は、次のように構成される。そのハウジング26内にパイロット弁機構28のシリンダ孔51が上下方向に形成される。そのシリンダ孔51が、出口路40を介して第2室32に連通される。そのシリンダ孔51に出力部材52が保密状で上下方向に移動可能となるように挿入される。その出力部材52は、ピストン部53とそのピストン部53から上方に突設される操作ロッド54とを有する。その操作ロッド54は、出口路40に保密状に上下方向に移動可能に挿入され、排出弁体44の下面から所定の間隔をあけて対面されると共に当接可能となっている。ピストン部53の下側に進出用の作動室55が形成され、ピストン部53の上側に退入用の作動室56が形成される。その進出用の作動室55には、ハウジング26の下壁に形成される給排路57が連通される。上記の圧縮エア源7からの圧縮エアが給排路57を通して進出用の作動室55に給排される。また、退入用の作動室56内に後退バネ58が装着され、その後退バネ58が出力部材52を下方に付勢する。
【0020】
本実施形態の圧油給排システムは、単動式の油圧シリンダ10に圧油を給排するものである。その油圧シリンダ10のハウジング60内にシリンダ孔61が形成され、そのシリンダ孔61に出力部材63が上下方向に移動可能に挿入される。その出力部材63が、ピストン64とそのピストン64から上方に突設されるピストンロッド65とを有する。そのピストン64の下側に進出作動室66が形成されると共に、ピストン64の上側に後退作動室67が形成される。その進出作動室66は、三方弁2の作動ポート46に連通される。また、退出作動室67内にリリースバネ69が装着される。そのリリースバネ69がハウジング60に対してピストン64を下方に付勢する。
【0021】
本実施形態の圧油給排システムは、圧力補償弁70を三方弁2のハウジング26の上側に備える。その圧力補償弁70は、三方弁2の作動ポート46内の圧力が、圧油の熱膨張や外力などによって異常上昇したときに、その異常上昇圧を外部に逃がして、作動ポート46内を設定圧力以下となるようにするものである。
【0022】
上記の圧力補償弁70は、弁ケース71内に、左側から順に同軸状に連通される弁座室72とリリーフ弁室73とバネ室74とを有する。その弁座室72は、流路75を通って三方弁2の作動ポート46に接続されている。また、リリーフ弁室73は、流路76を通って三方弁2の排出ポート48に接続されている。
【0023】
上記の弁座室72に弁座部材77が左右方向へ進退可能に保密状に挿入される。その弁座部材77の右端面と下側面とに開口される連通孔78が当該弁座部材77内に形成される。その弁座部材77の外周面と弁座室72の内周面との間の嵌合隙間によって絞り路79が構成される。その弁座部材77の右端部に弁座80が構成される。
【0024】
上記のリリーフ弁室73に弁部材81が左右方向へ進退可能で保密状に挿入される。弁部材71の左端部に形成される環状溝に、樹脂等からなる弾性部材が装着される。その弾性部材の左端部に環状の弁面82が形成され、その弁面82が弁座80に当接可能に対面する。
【0025】
前記バネ室74の右端部と弁部材81との間に、リリーフバネ84とバネ受け85とが装着される。そのリリーフバネ84が弁部材81を左方に付勢する。
【0026】
上記の圧力補償弁70では、弁座室72の油圧力が、リリーフバネ84の付勢力に相当する圧力を上回ると、弁面82を弁座80から離間させ、圧力補償弁70が開弁される。これに対し、弁座室72の油圧力が、リリーフバネ84の付勢力に相当する圧力を下回ると、そのリリーフバネ84が弁面82を弁座80に押圧して、圧力補償弁70が閉弁される。
【0027】
上記圧力補償弁70は、次のように作動する。
図3の初期状態において、三方弁2の作動ポート46内に供給される圧油の油圧が上昇されると、弁座室72の圧油の圧力が上昇される。その弁座室72の油圧による押圧力が弁座部材77を右方へ移動させていき、その弁座部材77が弁部材81を右方に移動させていく。これにより、弁座部材77の左端部に形成されるフランジ部が弁座室72内の段差部に受止められる。また、弁座室72の圧油が、絞り路79と連通路78とを通って弁部材81を右方へ押圧するが、リリーフバネ84によって弁部材81の弁面82が弁座部材77の弁座80に封止接当され、圧力補償弁70は閉弁されたままである。
【0028】
上記の弁座室72の油圧力がリリーフバネ84の付勢力に相当する圧力を上回ると、圧力補償弁70が開弁され、弁座室72の圧油がリリーフ弁室73と流路76と三方弁2の排出ポート48から油タンク9に排出されていく。すると、弁座室72の油圧力が低下してその圧油力がリリーフバネ84の付勢力に相当する圧力を下回る。すると、圧力補償弁70が閉弁される。
【0029】
本実施形態の圧油給排システムでは、圧縮エア源7とポンプ1とを接続する流路86の途中部に第1圧縮エア給排弁4が設けられる。この第1圧縮エア給排弁4は、圧縮エア源7の圧縮エアをポンプ1に供給する圧縮エアの流れと、ポンプ1内の圧縮エアを大気中に排出する圧縮エアの流れとを切り換えるものである。この第1圧縮エア給排弁4は、CPUやROMやRAMを含むコンピュータ等の制御機器や他の機器からの電気信号を受けることにより操作され、または、作業者によって手動操作される。また、電気信号の1つである緊急停止の電気信号を周辺機器から第1圧縮エア給排弁4が受けて、上記の圧油給排システムを緊急停止させることがある。このときに、第1圧縮エア給排弁4が電気信号によって操作されて、圧縮エア源7からポンプ1への圧縮エアの流れが、ポンプ1から大気中に排出する流れに切り換えられる。なお、第1圧縮エア給排弁4は、例えば、電磁弁や手動切換弁などである。
【0030】
上記第1圧縮エア給排弁4とポンプ1とを接続する流路(圧縮エア源7とポンプ1とを接続する流路86の一部)86aから圧縮エアの流路(分岐路)87が分岐される。その分岐路87が三方弁2の作動室55に接続される。その分岐路の途中部に第2圧縮エア給排弁5が設けられる。その第2圧縮エア給排弁5が前述の電気信号によって操作され、又は、作業者の手動により操作される。そのように第2圧縮エア給排弁5が操作されることにより、圧縮エア源7側から三方弁2の作動室側への圧縮エアの流れと、三方弁2の作動室57から圧縮エアを大気中へ排出する流れとが切り換えられる。なお、第2圧縮エア給排弁4は、例えば、電磁弁や手動切換弁などである。
【0031】
上記実施形態の圧油給排システムは、次のように作動する。
図1に示す圧油給排システムの初期状態では、三方弁2の供給ポート34と作動ポート46に圧油の圧力が作用しておらず、かつ作動室55から圧縮エアが排出された無負荷状態となっている。この場合、逆止弁体37が閉弁バネ38の付勢力によって閉弁されると共に、排出弁体44及び短絡防止弁体42が離間バネ45の付勢力によって閉弁されている。
【0032】
上記の油圧シリンダ10をロック駆動するときには、まず、上記の圧縮エア源7からの圧縮エアがポンプ1の圧縮エア供給ポート12を通ってポンプ1内に供給される。すると、その圧縮エアがピストン15を上下方向に往復移動させる。ピストン15に連結されるプランジャ21がプランジャ室16の圧油を三方弁2の供給ポート34を介して入口路35に向けて吐出する。
【0033】
前記の供給ポート34に供給された圧油が三方弁2の逆止弁体37を付勢力の弱い閉弁バネ38の付勢力に抗して下方へ移動させて、逆止弁体37を開弁させる。次いで、供給ポート34の圧油が弁室29の第1室31に流入する。すると、第1弁室31内の圧力が高まる。その第1室31の圧油が短絡防止弁体42を離間バネ45の付勢力に抗して下方に移動させると共に、排出弁体44を閉弁させる。このとき、三方弁2の方向切換え機構28の進出用の作動室55には圧縮エアが供給されていない。引き続いて、第1室31の圧油が連通路33と第2室32と作動ポート46とを通って油圧シリンダ10の作動室66に供給される。
【0034】
上記の油圧シリンダ10の進出作動室66の圧油によってピストン64が、リリースバネ69の下方への付勢力に抗して上方へ進出していく。次いで、ピストン64が上限位置で停止される。このとき、進出作動室66から三方弁2の第1室31までの圧油がポンプ1の吐出ポート18の圧油と略同じ圧力に上昇する。これにより、油圧シリンダ10がリリース状態からロック状態に切り換えられる。このとき、三方弁2の閉弁バネ38が逆止弁体37を逆止弁座36に向けて閉弁移動させる。また、ポンプ1の吐出ポート18の圧力が、ポンプ1のプランジャ室16内の圧力とほぼ同じ圧力になる。これにより、ポンプ1が圧油をプランジャ室16から吐出ポート18に押し出せなくなる。その結果、ポンプ1が停止状態となる。
【0035】
上記の油圧シリンダ10をリリース駆動するときには、まず、第2圧縮エア給排弁5が(図示しない)制御装置により操作される。その操作によって三方弁2の作動室55から大気中へ排出する圧縮エアの流れが、圧縮エア源7から三方弁2の作動室55への圧縮エアの流れに切り換えられる。すると、三方弁2の作動室55の圧縮エアがパイロット弁機構28の出力部材52を上昇させて、その出力部材52のピストンロッド54が排出弁体44を排出弁座41から上方に離間させて開弁させる。また、ピストンロッド54が排出弁体44を介して短絡防止弁体42を短絡防止弁座39に係合させて閉弁させる。次いで、油圧シリンダ10の作動室66の圧油が三方弁2の作動ポート46と第2室32と出口路40と排出ポート48とを通って油タンク9に排出される。すると、油圧シリンダ10のリリースバネ69がピストン64を下方に移動させていき、ピストン64がハウジング62の下壁に受け止められる。これにより、油圧シリンダ10がロック状態からリリース状態に切り換えられる。
【0036】
上記油圧シリンダ10のリリース状態からロック状態にロック駆動中に、油圧シリンダ10を緊急停止することがある。この場合には、作業者の手動操作によって、又は、(図示しない)制御装置からの電気信号等によって第1圧縮エア給排弁4が操作される。このため、圧縮エア源7からの圧縮エアをポンプ1に供給する流れが、ポンプ1内の圧縮エアを大気中へ排出する流れに第1圧縮エア給排弁4によって切り換えられる。すると、ポンプ1に圧縮エアが供給されなくなって、ポンプ1のピストン15およびプランジャ16が停止する。このため、プランジャ室16から圧油が吐出ポート18を介して三方弁2の入口路35に供給が停止される。これにより、ポンプ1の吐出ポート18から油圧シリンダ10の進出作動室66までの圧油の圧力の上昇も停止される。それらの圧力による油圧シリンダ10のピストン64を上方に押す力が、油圧シリンダ10のリリースバネ69の下方への付勢力とほぼ等しくなる。その結果、油圧シリンダ10の作動室の圧力による下方への押圧力と、リリースバネ69の下方への付勢力とが釣り合って、油圧シリンダ10の出力部材63がロック駆動工程の途中位置で停止される。このとき、三方弁2内では、閉弁バネ38が逆止弁体37を逆止弁座36に向けて押し上げて、閉弁させる。また、離間バネ45が短絡防止弁体42を押し上げて、その短絡防止弁体42が短絡防止弁座39に係合されて閉弁されている。その第2室32の圧油の圧力によって排出弁体44が排出弁座39に係合されて閉弁されている。
【0037】
また、ロック状態からリリース状態にリリース駆動中の油圧シリンダ10が緊急停止するときは、次のように作動する。まず、第1圧縮エア給排弁4が制御装置によって操作されて、圧縮エア源7からポンプ1への圧縮エアの流れがポンプ1から大気へに排出する圧縮エアの流れに切り換えられる。リリース駆動中では、ポンプ1はもともと停止されており、上記圧縮エアの流れが切り換えられる前後においてその停止状態は変化しない。また、リリース駆動中に、圧縮エア源7の圧縮エアが第1圧縮エア給排弁4と分岐路87と第2圧縮エア給排弁5を通って三方弁2の作動室55に供給されていた。上記第1圧縮エア給排弁4が操作されることにより、分岐路や三方弁2の作動室55内の圧縮エアが大気中に排出される。このため、三方弁2の後退バネ58が出力部材52を下方に押していく。すると、離間バネ45が排出弁体44を下方に押し下げて、排出弁体44が閉弁される。このため、油圧シリンダ10の作動室66内および三方弁2の弁室29内から出口室40を通って油タンク9への圧油の流出が停止される。このとき、逆止弁体37が閉弁バネ38によって逆止弁座36に係合されて閉弁されていると共に、短絡防止弁体42が離間バネ45によって短絡防止弁座39に係合させて閉弁されている。このため、弁室29や油圧シリンダ10の作動室66内の圧油の圧力は、第1圧縮エア給排弁4の操作後に一定圧力に保たれる。その作動室66の圧力がピストン64を上方に押す力と、油圧シリンダ10のリリースバネ69の下方に押す付勢力とが釣り合って、ピストン64が上限位置と下限位置との間の途中位置で停止する。
【0038】
上記の実施形態は次の長所を奏する。
本実施形態の圧油給排システムは、圧縮エア源7とポンプ1とを接続する流路の途中部に設けられる第1圧縮エア給排弁4を備える。油圧シリンダを緊急停止させるときに、第1圧縮エア給排弁4が操作されて、ポンプ1から圧縮エアが排出されると共に、圧縮エア源7から三方弁2から圧縮エアが(第2圧縮エア給排弁5が緊急停止前にすでに操作されていて)もともと排出された状態を含めて排出される。これにより、三方弁2の弁室29内から油圧シリンダ10の作動室66の圧油の圧力が緊急停止時の状態で維持される。つまり、緊急停止中に圧油給排システム内の圧力が変動しないことで、復旧作業後の動作開始時に油圧シリンダ10が誤動作や急加速動作などの想定しない動作をすることが防止される。その結果、緊急停止が解除されて油圧シリンダ10が再稼働されるときに、緊急停止直前状態から引き続いて動作させることができる。
【0039】
上記の各実施形態は次のように変更可能である。
上記の油圧シリンダ10は、進出用の作動室に供給される圧油によってロック駆動すると共に後退用の作動室のリリースバネ69によってリリース駆動する構成に代えて、進出用の作動室に設けられるロックバネによってロック駆動すると共に後退用の作動室に供給される圧油によってリリース駆動する構成であってもよい。
当業者が推測できる範囲で種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
1:ポンプ,2:三方弁,4:第1圧縮エア給排弁,5:第2圧縮エア給排弁,7:圧縮エア源,10:油圧シリンダ,69:バネ,64:ピストン,86:第1流路,87:第2流路,(87)