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特開2024-67969配線基板のフラックス洗浄装置、配線基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067969
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】配線基板のフラックス洗浄装置、配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240510BHJP
   B08B 3/12 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H01L21/304 642E
B08B3/12 B
B08B3/12 C
H01L21/304 642D
H01L21/304 642A
H01L21/304 647A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178428
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000123491
【氏名又は名称】化研テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】富田 季宏
(72)【発明者】
【氏名】中司 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】赤松 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】上土井 太治
【テーマコード(参考)】
3B201
5F157
【Fターム(参考)】
3B201AA01
3B201AB03
3B201AB38
3B201AB42
3B201BB02
3B201BB83
3B201BB92
5F157AA02
5F157AA09
5F157AA75
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB96
5F157AC01
5F157BB73
5F157BF22
5F157BF23
5F157BF32
5F157BH17
(57)【要約】
【課題】配線基板の表面や配線基板に搭載されている部品に与えるダメージを低減可能であると共に、洗浄性のばらつきを低減可能な配線基板のフラックス洗浄装置を提供する。
【解決手段】本配線基板のフラックス洗浄装置は、配線基板を洗浄する洗浄液を貯留する洗浄槽と、前記配線基板を保持した状態で前記洗浄液に浸漬可能に構成された基板保持部材と、前記基板保持部材に保持されて前記洗浄液に浸漬された前記配線基板の部品実装面と同一方向を向く第1面を備え、前記部品実装面に向けて750KHz以上3MHz以下の超音波を発振する複数の振動子が前記第1面に互いに離隔して2次元に配置された振動板と、前記基板保持部材を、前記部品実装面に平行な面内で互いに交差する2つの方向に揺動する揺動機構と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板を洗浄する洗浄液を貯留する洗浄槽と、
前記配線基板を保持した状態で前記洗浄液に浸漬可能に構成された基板保持部材と、
前記基板保持部材に保持されて前記洗浄液に浸漬された前記配線基板の部品実装面と同一方向を向く第1面を備え、前記部品実装面に向けて750KHz以上3MHz以下の超音波を発振する複数の振動子が前記第1面に互いに離隔して2次元に配置された振動板と、
前記基板保持部材を、前記部品実装面に平行な面内で互いに交差する2つの方向に揺動する揺動機構と、を有する、配線基板のフラックス洗浄装置。
【請求項2】
複数の前記振動子は、行方向を第1方向、列方向を第2方向に向けて行列状に配置され
前記揺動機構は、前記基板保持部材を、前記部品実装面に平行な面内で前記第1方向及び前記第2方向に揺動する、請求項1に記載の配線基板のフラックス洗浄装置。
【請求項3】
前記第1方向に隣接する前記振動子の間隔を第1間隔、前記第2方向に隣接する前記振動子の間隔を第2間隔としたときに、
前記揺動機構に揺動される前記基板保持部材の前記第1方向の振幅は前記第1間隔以上であり、前記第2方向の振幅は前記第2間隔以上である、請求項2に記載の配線基板のフラックス洗浄装置。
【請求項4】
前記揺動機構に揺動される前記基板保持部材の前記第1方向及び前記第2方向の揺動周波数は、0.01Hz以上10Hz以下である、請求項2又は3に記載の配線基板のフラックス洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄液は、グリコールエーテル系化合物及びアルコール系化合物のいずれか1種類以上を含むフラックス洗浄液である、請求項1に記載の配線基板のフラックス洗浄装置。
【請求項6】
配線基板を洗浄液で洗浄する工程を有する配線基板の製造方法であって、
前記洗浄する工程は、
前記配線基板を保持した基板保持部材を、洗浄槽が貯留する前記洗浄液に浸漬させ、前記配線基板の部品実装面を振動板の第1面と同一方向を向くように配置する工程と、
前記第1面に互いに離隔して2次元に配置された複数の振動子から前記部品実装面に向けて750KHz以上3MHz以下の超音波を発振させると共に、揺動機構により前記基板保持部材を前記部品実装面に平行な面内で互いに交差する2つの方向に揺動する工程と、を含む、配線基板の製造方法。
【請求項7】
複数の前記振動子は、行方向を第1方向、列方向を第2方向に向けて行列状に配置され
前記揺動機構は、前記基板保持部材を、前記部品実装面に平行な面内で前記第1方向及び前記第2方向に揺動する、請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記第1方向に隣接する前記振動子の間隔を第1間隔、前記第2方向に隣接する前記振動子の間隔を第2間隔としたときに、
前記揺動機構に揺動される前記基板保持部材の前記第1方向の振幅は前記第1間隔以上であり、前記第2方向の振幅は前記第2間隔以上である、請求項7に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記揺動機構に揺動される前記基板保持部材の前記第1方向及び前記第2方向の揺動周波数は、0.01Hz以上10Hz以下である、請求項7又は8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記洗浄液は、グリコールエーテル系化合物及びアルコール系化合物のいずれか1種類以上を含むフラックス洗浄液である、請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板のフラックス洗浄装置、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板において、表面にフラックス等が付着する場合がある。そのため、配線基板の製造工程では、配線基板の表面を洗浄する洗浄工程が設けられる(例えば、特許文献1参照)。洗浄工程では、例えば、配線基板の表面に対して20kHz~40kHz程度の低周波帯の超音波を発振し、キャビテーション作用による気泡破裂の衝撃力で、フラックス等の除去を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-31535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の方法では、気泡破裂の衝撃力により、配線基板の表面や配線基板に搭載されている部品にダメージが生じるおそれがある。例えば、バンプの狭ピッチ化や微細化により、バンプと配線基板の接合強度が脆弱となり、気泡破裂の衝撃力によりバンプが剥離することが挙げられる。一方、配線基板のフラックス洗浄装置には、洗浄対象となる配線基板の表面に対する洗浄性のばらつきを低減することが求められている。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、配線基板の表面や配線基板に搭載されている部品に与えるダメージを低減可能であると共に、洗浄性のばらつきを低減可能な配線基板のフラックス洗浄装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本配線基板のフラックス洗浄装置は、配線基板を洗浄する洗浄液を貯留する洗浄槽と、前記配線基板を保持した状態で前記洗浄液に浸漬可能に構成された基板保持部材と、前記基板保持部材に保持されて前記洗浄液に浸漬された前記配線基板の部品実装面と同一方向を向く第1面を備え、前記部品実装面に向けて750KHz以上3MHz以下の超音波を発振する複数の振動子が前記第1面に互いに離隔して2次元に配置された振動板と、前記基板保持部材を、前記部品実装面に平行な面内で互いに交差する2つの方向に揺動する揺動機構と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、配線基板の表面や配線基板に搭載されている部品に与えるダメージを低減可能であると共に、洗浄性のばらつきを低減可能な配線基板のフラックス洗浄装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る配線基板のフラックス洗浄装置を例示する模式図である。
図2】本実施形態に係る配線基板を洗浄する工程を例示する図(その1)である。
図3】本実施形態に係る配線基板を洗浄する工程を例示する図(その2)である。
図4】本実施形態に係る配線基板を洗浄する工程を例示する図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
[配線基板のフラックス洗浄装置]
図1は、本実施形態に係る配線基板のフラックス洗浄装置を例示する模式図であり、図1(a)は全体図、図1(b)は振動板近傍の平面図である。
【0011】
図1を参照すると、フラックス洗浄装置1は、洗浄槽10と、基板保持部材20と、振動板30と、揺動機構40と、移動機構50とを有する。100は、フラックス洗浄装置1が洗浄する対象物である配線基板を示している。なお、図1では、参考のため、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を規定している。X軸方向及びY軸方向は、振動板30の第1面30aに平行な面内で互いに直交する。Z軸方向は、振動板30の第1面30aの法線方向である。
【0012】
洗浄槽10は、例えば、平面視で円形や矩形とすることができる。なお、平面視とは、Z軸方向から対象物を視ることである。洗浄槽10の上部は、開放されている。洗浄槽10は、例えば、ステンレス製とすることができる。洗浄槽10には、配線基板100を洗浄する洗浄液60が貯留されている。洗浄液60は、例えば、配線基板100に付着したフラックスを洗浄するフラックス洗浄液である。フラックス洗浄液としては、例えば、グリコールエーテル系化合物及びアルコール系化合物のいずれか1種類以上を含むフラックス洗浄液等が挙げられる。
【0013】
基板保持部材20は、配線基板100を着脱可能である。基板保持部材20は、配線基板100を保持した状態で洗浄液60に浸漬可能に構成されている。具体的には、基板保持部材20は、基板配置部21と、基板押え部22とを有する。基板配置部21は、Z軸方向から視たときに枠状であり、配線基板100の部品実装面100aの外周部が配置される。基板配置部21は、XZ平面に平行な断面で視たときに略L字型である。
【0014】
基板押え部22は、例えば、Y軸方向に沿って互いに対向するように設けられる。基板押え部22は、さらに、X軸方向に沿って互いに対向するように設けられてもよい。基板押え部22は、ワイヤ71を介してばね72と接続されている。ばね72を矢印Aの方向に移動させると、基板押え部22は、ワイヤ71に引かれて矢印B及びCの方向に回動し、配線基板100を開放する。
【0015】
一方、ばね72を矢印Aと反対の方向に移動させると、基板押え部22は、矢印B及びCとは反対の方向に回動し、配線基板100の外周部をZ軸方向+側から押さえる。これにより、配線基板100の外周部が基板配置部21と基板押え部22とに挟まれ、配線基板100は基板保持部材20に保持される。
【0016】
なお、ワイヤ71は基板配置部21の下面の下方に配置され、平面視で基板配置部21により形成される枠内には露出していない。したがって、ワイヤ71は超音波洗浄の妨げにはならない。
【0017】
振動板30は、例えば、ステンレスから形成されている。振動板30は、第1面30aを備えている。振動板30の第1面30aは、例えば、平面視で、X軸方向に平行な2辺と、Y軸方向に平行な2辺とを有する矩形状である。振動板30の第1面30aは、基板保持部材20に保持されて洗浄液60に浸漬された配線基板100の部品実装面100aと同一方向を向く。ここで、同一方向を向くとは、第1面30aと部品実装面100aとが平行である場合には限らず、第1面30aと部品実装面100aとのなす角度が±30deg以下の場合を含むものとする。
【0018】
振動板30の第1面30aには、複数の振動子35が互いに離隔して2次元に配置されている。図1の例では、振動子35を備えた振動板30は、洗浄槽10の底面10aの外側に配置されており、振動板30の第1面30aの反対面(図1では上面)は洗浄槽10の底面10aの外側に接している。しかし、この構造には限定されず、振動子35を備えた振動板30は、洗浄槽10の内側に配置されてもよい。
【0019】
複数の振動子35は、例えば、平面視で、X軸方向を行方向、Y軸方向を列方向として行列状に配置することができる。図1の例では、8個の振動子35が、4行2列の行列状に配置されているが、振動子35の個数は8個でなくてもよい。X軸方向に隣接する振動子35の第1間隔Xgは、例えば、1mm~15mm程度である。また、Y軸方向に隣接する振動子35の第2間隔Ygは、例えば、1mm~15mm程度である。なお、複数の振動子35が互いに離隔して2次元に配置されていれば、複数の振動子35は必ずしも行列状に配置されなくてもよい。例えば、複数の振動子35は、千鳥状に配置されてもよい。
【0020】
各々の振動子35は、配線基板100の部品実装面100aに向けて750KHz以上3MHz以下の超音波を発振することができる。超音波の周波数を750KHz以上とすることで、加速度が上がり、キャビテーションの発生が抑制され、はんだバンプ等へのダメージを抑えることができる。また、超音波の周波数を3MHz以下とすることで、必要な洗浄力を確保することができる。各々の振動子35が発振する超音波の周波数は、はんだバンプ等へのダメージの抑制及び高洗浄性の観点から、950KHz以上1MHz以下であることが好ましい。
【0021】
振動子35としては、例えば、電歪型振動子を用いることができる。電歪型振動子は、電圧を加えると伸び縮みし、超音波を発振することができる。電歪型振動子の主材料には、例えば、交流電圧を加えると振動する圧電セラミックスを用いることができる。圧電セラミックスの一例としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が挙げられる。
【0022】
揺動機構40は、基板保持部材20と機械的に接続されている。揺動機構40は、基板保持部材20を、配線基板100の部品実装面100aに平行な面内で互いに交差する2つの方向(第1方向D及び第2方向E)に揺動することができる。言い換えれば、揺動機構40は、基板保持部材20を第1方向Dに沿って往復させ、かつ第2方向Eに沿って往復させることができる。
【0023】
図1の例では、第1方向DはX軸方向であり、第2方向EはY軸方向である。この場合、第1方向Dと第2方向Eは直交する。ただし、第1方向DはX軸方向でなくてもよく、第2方向EはY軸方向でなくてもよい。また、第1方向Dは第2方向Eと交差していればよく、必ずしも直交しなくてもよい。
【0024】
揺動機構40に揺動される基板保持部材20の第1方向Dの振幅は第1間隔Xg以上であり、第2方向Eの振幅は第2間隔Yg以上であることが好ましい。揺動機構40に揺動される基板保持部材20の第1方向D及び第2方向Eの揺動周波数は、0.01Hz以上10Hz以下とすれば十分である。
【0025】
揺動機構40は、例えば、第1方向Dに伸びるボールねじ、第2方向Eに伸びるボールねじ、これらのボールねじと基板保持部材20とを接続するギア機構、これらのボールねじを独立に駆動するモータ、及びモータを駆動する駆動回路等により構成することができる。
【0026】
移動機構50は、基板保持部材20と機械的に接続されている。移動機構50は、基板保持部材20を、例えば、Z軸方向に移動することができる。つまり、移動機構50は、基板保持部材20を例えばZ軸方向に沿って移動させ、基板保持部材20を洗浄槽10に浸漬させたり、基板保持部材20を洗浄槽10から取り出したりすることができる。
【0027】
移動機構50は、例えば、Z軸方向に伸びるボールねじ、このボールねじと基板保持部材20とを接続するギア機構、このボールねじを駆動するモータ、及びモータを駆動する駆動回路等により構成することができる。移動機構50は、さらに、基板保持部材20をX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる機構を備えていてもよい。
【0028】
[配線基板の製造方法]
次に、本実施形態に係る配線基板の製造方法について説明する。本実施形態に係る配線基板の製造方法は、配線基板100を準備する工程、配線基板100の部品実装面100aに部品を実装する工程、配線基板100を洗浄液60で洗浄する工程を含む。さらに、洗浄する工程の後に、周知のリンス工程や乾燥工程を含んでもよい。ここでは、特に、配線基板100を洗浄する工程に着目して説明する。図2(a)~図4(b)は、配線基板100を洗浄する工程である。
【0029】
まず、図2(a)に示す工程の前に、部品実装面100aに部品が実装された配線基板100を準備する。配線基板100は、例えば、複数の配線層と複数の絶縁層が交互に積層されたビルドアップ基板である。ビルドアップ基板は、周知のビルドアップ工法により作製することができる。
【0030】
配線基板100の部品実装面100aに部品を実装するには、例えば、部品実装面100aに配置されたパッドにクリームはんだを印刷後、部品を配置し、リフローする。配線基板100に実装される部品には、例えば、半導体チップ、抵抗、コンデンサ、金属ポスト、はんだバンプの1種以上が含まれる。リフロー後、配線基板100の部品実装面100aや、部品下などにフラックスが付着する。
【0031】
なお、部品実装面100aに部品が実装された配線基板100は、自ら作製する必要はなく、第三者から購入することにより準備してもよい。また、配線基板100はビルドアップ基板には限定されず、フラックス洗浄装置1は、部品が実装された各種の配線基板を洗浄の対象物とすることが可能である。また、フラックス洗浄装置1は、部品実装面100aに部品が実装される前の配線基板100の洗浄も可能である。
【0032】
次に、図2(a)に示す工程では、部品実装面100aを洗浄槽10側に向けて、配線基板100を基板保持部材20の基板配置部21上に配置する。そして、図2(b)に示すように、ばね72を洗浄槽10側に移動させて基板押え部22を回動させ、配線基板100を基板保持部材20で保持する。
【0033】
次に、図3(a)に示す工程では、配線基板100を保持した基板保持部材20を、洗浄槽10が貯留する洗浄液60に浸漬させ、配線基板100の部品実装面100aを振動板30の第1面30aと同一方向を向くように配置する。基板保持部材20は、移動機構50の制御により下降させ、洗浄槽10が貯留する洗浄液60に浸漬させることができる。
【0034】
次に、図3(b)に示す工程では、振動板30の第1面30aに互いに離隔して2次元に配置された複数の振動子35から部品実装面100aに向けて750KHz以上3MHz以下の超音波Sを発振させる。そして、超音波Sを発振させている間に、揺動機構40により基板保持部材20を部品実装面100aに平行な面内で互いに交差する2つの方向に揺動する。例えば、図4(a)に示すように、基板保持部材20を第1方向DのX軸-側に移動させた後、図4(b)に示すように、第1方向DのX軸+側に移動させ、第1方向Dに揺動する。続いて、基板保持部材20を第2方向EのY軸-側に移動させた後、第2方向EのY軸+側に移動させ、第2方向Eに揺動する。これを、例えば、0.01Hz以上10Hz以下の揺動周波数で繰り返す。これにより、部品実装面100aの洗浄ばらつきを低減することができる。この効果について、以下に補足する。
【0035】
前述のように、配線基板の表面に対して20kHz~40kHz程度の低周波帯の超音波を発振し、キャビテーション作用による気泡破裂の衝撃力で、フラックス等の除去を行うと、気泡破裂の衝撃力により、配線基板の表面や配線基板に搭載されている部品にダメージが生じるおそれがある。
【0036】
そこで、フラックス洗浄装置1では、部品実装面100aに向けて750KHz以上3MHz以下の高周波帯の超音波を発振している。高周波帯の超音波は、低周波帯の超音波と比較してキャビテーション作用が小さいため、配線基板の表面や配線基板に搭載されている部品にダメージが生じるおそれを低減可能である。
【0037】
高周波帯の超音波を用いた洗浄では、洗浄液中の分子を細かく振動させ、その振動エネルギーを利用する。これにより、低周波帯の超音波を用いる場合に比べてキャビテーション作用が小さくても洗浄力が劣ることはなく、搭載部品の下側などの狭スペース部分のフラックス除去も可能である。
【0038】
一方、高周波帯の超音波の特性上、指向性が非常に強いため、何らの対策も施さないと、隣接する振動子間に位置する振動板と同一方向を向く配線基板の表面に対する洗浄性が著しく低下する。この部分には、超音波がほとんど照射されないからである。
【0039】
そこで、フラックス洗浄装置1では、この問題の対策として揺動機構40を備えている。そして、各々の振動子35から超音波Sを発振させると共に、揺動機構40により基板保持部材20を部品実装面100aに平行な面内で互いに交差する2つの方向に揺動する。これにより、隣接する振動子35間に位置する振動板30と同一方向を向く部品実装面100aの位置が時間とともに移動するため、部品実装面100aの特定の位置に超音波Sが照射されにくい問題を回避できる。その結果、部品実装面100aの洗浄性のばらつきを低減可能となる。
【0040】
すなわち、フラックス洗浄装置1では、部品実装面100aに向けて750KHz以上3MHz以下の超音波を発振させると共に、揺動機構40により基板保持部材20を部品実装面100aに平行な面内で互いに交差する2つの方向に揺動する。これにより、配線基板100の部品実装面100aや配線基板100に搭載されている部品に与えるダメージを低減可能であると共に、洗浄性のばらつきを低減可能となる。
【0041】
また、複数の振動子35が行方向を第1方向D、列方向を第2方向Eに向けて行列状に配置され、揺動機構40が基板保持部材20を部品実装面100aに平行な面内で第1方向D及び第2方向Eに揺動する場合がある。この場合は、揺動機構40に揺動される基板保持部材20の第1方向Dの振幅を第1方向Dに隣接する振動子35の第1間隔Xg以上とし、第2方向Eの振幅を第2方向Eに隣接する振動子35の第2間隔Yg以上とすることが好ましい。これにより、部品実装面100aの特定の位置に超音波Sが照射されにくい問題をより確実に回避できる。
【0042】
なお、20kHz~40kHz程度の低周波帯の超音波は指向性が低く拡散するため、従来のように20kHz~40kHz程度の低周波帯の超音波を用いるフラックス洗浄装置では、振動板に対して平行なXY平面方向に配線基板を揺動させる機構は不要である。低周波帯の超音波洗浄において、定在波の影響により、洗浄槽内のキャビテーション効果に強弱ができるため、振動子に対して被洗浄物をZ軸方向に揺動させることで、洗浄性の均一化を図ることは一般的に行われる。一方で、高周波帯の場合は波長が非常に短く、定在波の影響による洗浄性のばらつきは少ないため、振動子に対して被洗浄物をZ軸方向に揺動する必要はない。ただし前述の通り、指向性の高さによる偏りを防ぎ、洗浄性の均一化を図るためにXY平面方向に揺動する必要がある。
【0043】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 フラックス洗浄装置
10 洗浄槽
10a 底面
20 基板保持部材
21 基板配置部
22 基板押え部
30 振動板
30a 第1面
35 振動子
40 揺動機構
50 移動機構
60 洗浄液
71 ワイヤ
72 ばね
100配線基板
100a 部品実装面
図1
図2
図3
図4