(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067971
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】安全稼働制御装置及び制御対象装置の安全稼働制御方法
(51)【国際特許分類】
H04B 13/00 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
H04B13/00 500
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178433
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】叶 志涛
(72)【発明者】
【氏名】永井 辰憲
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 杏子
(72)【発明者】
【氏名】大武 令
(57)【要約】
【課題】人体の伝送路を用いて、比較的容易な構成で制御対象装置の安全稼働制御を行えるようにできる。
【解決手段】第1の電極11に接続され、設定されている個人識別情報を人体の伝送路Wによって送信する送信部21と、前記送信部21に設定されている個人識別情報と同一の個人情報が設定され、第2の電極12に接続され、この第2の電極12から到来する個人識別情報を前記人体の伝送路Wによって受信し、設定されている個人識別情報と一致するか否かを検出する受信部22と、前記受信部22の検出結果に基づき、当該検出結果が一致となったときに制御対象装置30を稼働可能状態とする指示を出力し、当該検出結果が不一致となった場合に前記制御対象装置30を稼働不可能状態とする指示を出力する稼働制御部補助18とを具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極に接続され、設定されている個人識別情報を人体の伝送路によって送信する送信部と、
前記送信部に設定されている個人識別情報と同一の個人情報が設定され、第2の電極に接続され、この第2の電極から到来する個人識別情報を前記人体の伝送路によって受信し、設定されている個人識別情報と一致するか否かを検出する受信部と、
前記受信部の検出結果に基づき、当該検出結果が一致となったときに制御対象装置を稼働可能状態とする指示を出力し、当該検出結果が不一致となった場合に前記制御対象装置を稼働不可能状態とする指示を出力する稼働制御部と
を具備し、前記送信部と前記受信部を1ブロックの筐体に備えることを特徴とする安全稼働制御装置。
【請求項2】
前記稼働制御部は、受信部に個人識別情報が得られない場合も前記制御対象装置を稼働不可能状態とする指示を出力することを特徴とする請求項1に記載の安全稼働制御装置。
【請求項3】
前記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出し、前記稼働制御部の制御に反映させる稼働制御補助部を備えることを特徴とする請求項2に記載の安全稼働制御装置。
【請求項4】
前記第1の電極と前記第2の電極とに接続される人から個人識別情報を取得する個人識別情報取得手段と、
この個人識別情報を前記送信部及び前記受信部に設定する設定手段と、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の安全稼働制御装置。
【請求項5】
前記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出し、前記稼働制御部の制御に反映させる稼働制御補助部を備えることを特徴とする請求項4に記載の安全稼働制御装置。
【請求項6】
前記個人識別情報取得手段は、人の生体認証情報を取得するセンサであることを特徴とする請求項5に記載の安全稼働制御装置。
【請求項7】
前記稼働制御補助部は、予め特定の一人が前記第1の電極と前記第2の電極に接続される人体部位間のインピーダンスを測定して統計的データとして保持し、前記送信部と前記受信部間における通信の際に前記第1の電極と前記第2の電極に接続される人体部位間のインピーダンスを測定して前記保持してある統計的データと比較して前記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出することを特徴とする請求項6に記載の安全稼働制御装置。
【請求項8】
前記稼働制御補助部は、
前記第1の電極の近傍に設けられた第1の生体認証情報取得手段と、
前記第2の電極の近傍に設けられた第2の生体認証情報取得手段と、
一人から前記第1の生体認証情報取得手段により得られるべき第1の生体認証情報と前記一人から前記第2の生体認証情報取得手段により得られるべき第2の生体認証情報とが記憶された本来生体認証情報記憶手段と、
前記第1の生体認証情報取得手段により得られた第1の生体認証情報と前記本来生体認証情報記憶手段に記憶されている第1の生体認証情報とを比較した第1の比較結果と、前記第2の生体認証情報取得手段により得られた第2の生体認証情報と前記本来生体認証情報記憶手段に記憶されている第2の生体認証情報とを比較した第2の比較結果と、を得る比較結果取得手段と、
を具備し、伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出することを特徴とする請求項6に記載の安全稼働制御装置。
【請求項9】
第1の電極に接続され、設定されている個人識別情報を人体の伝送路によって送信する送信部と、前記送信部に設定されている個人識別情報と同一の個人情報が設定され、第2の電極に接続され、この第2の電極から到来する個人識別情報を前記人体の伝送路によって受信し、設定されている個人識別情報と一致するか否かを検出する受信部と、前記受信部の検出結果に基づき、制御対象装置を稼働可能状態または稼働不可能状態とする指示を出力する稼働制御部とを備え、前記送信部と前記受信部を1ブロックの筐体に備える安全稼働制御装置による前記制御対象装置の安全稼働制御方法において、
前記稼働制御部によって、前記受信部の検出結果が一致となったときに前記制御対象装置を稼働可能状態とする指示を出力し、当該検出結果が不一致となった場合に前記制御対象装置を稼働不可能状態とする指示を出力することを特徴とする制御対象装置の安全稼働制御方法。
【請求項10】
前記受信部に個人識別情報が得られない場合も前記稼働制御部によって、前記制御対象装置を稼働不可能状態とする指示を出力することを特徴とする請求項9に記載の制御対象装置の安全稼働制御方法。
【請求項11】
前記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出し、前記稼働制御部の制御に反映させる稼働制御補助部を備え、この稼働制御補助部によって前記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものであることが検出された場合に、前記制御対象装置を稼働可能状態とすることを特徴とする請求項10に記載の制御対象装置の安全稼働制御方法。
【請求項12】
前記稼働制御補助部は、予め特定の一人が前記第1の電極と前記第2の電極に接続される人体部位間のインピーダンスを測定して統計的データとして保持しているものであり、
この稼働制御補助部によって、前記送信部と前記受信部間における通信の際に前記第1の電極と前記第2の電極に接続される人体部位間のインピーダンスを測定して前記保持してある統計的データと比較して前記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出することを特徴とする請求項11に記載の制御対象装置の安全稼働制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、安全稼働制御装置及び制御対象装置の安全稼働制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、制御対象装置を稼働可能状態へ移行させる場合には、所要の識別情報などを知っている人による操作であることを確認して、制御対象装置を稼働可能状態とするものが知られている。このような装置においては、人体通信を利用した装置もあり、送信機と受信機は別々の場所に設置されて、人が受信機を携帯していることが多い。
【0003】
このような装置では、使用者が常に人体通信装置を携帯する必要があるため、紛失、破損などのリスクが高くなる。また、送信機と受信機の配置場所が離れることがあるため、操作者が一人で相互の稼働状況の把握が困難である。また、人体通信成立を判定するためのID情報などを事前に人為的に決める装置では、安全性が低くなる。送信機と受信機をそれぞれ独立して構成する必要があるため、一つの装置に比べてそれぞれのコストが必要となる他、メンテナンスも個別に必要となる。
【0004】
特許文献1には、ステアリングホイール、シフトノブ、および、ブレーキペダルが操作されたことを検出して検出結果を出力する操作検出手段と、その検出結果に基づき電源供給状態または駆動源の始動を制御する制御手段と、を備える車両制御装置が開示されている。この装置においては、ステアリングホイール、シフトノブ、および、ブレーキペダル毎に人体通信手段を備え、検出結果を出力した操作検出手段に対応する人体通信手段同士で情報の送受信を行う。制御手段は、人体通信手段同士で情報の送受信が成立したことを条件に電源供給状態または前記駆動源の始動を制御する。この構成によって、意図しない駆動源の始動等の車両制御を適切に防止することが可能な車両制御装置を提供することができるというものである。
【0005】
特許文献2には、機械等とこれに関係する人との間において、機械等に関係して繋がる人の姿勢または行為等が、機械等が求める条件を満たすか否かを検知することができるようにした電界通信システムおよび電界通信機器が開示されている。
この電界通信システムは、機械、機器、装置等のいずれかの対象物に装備され、この対象物の操作入力部と人との間における当該人を介在させる操作関係の繋がり領域で、対象物が人に求める所要の姿勢または行為を人がとっているか否かを対象物の側が検知し得るための人体検知手段(電界通信機14,15)を備えるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-178298号公報
【特許文献2】特開2017-34475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示の装置は、ステアリングホイール、シフトノブ、および、ブレーキペダル毎に人体通信手段を備える必要があり、構成が大掛かりとなり易く、コストも高くつく問題がある。
【0008】
また、特許文献2のものでは、繋がり領域で、対象物が人に求める所要の姿勢または行為を人がとっているか否かをどの程度の精度で検出するかに問題があり、コストの点で問題となり易いものである。
【0009】
本発明の実施形態の目的は、人体の伝送路を用いて、比較的容易な構成で制御対象装置の安全稼働制御を行えるようにできる安全稼働制御装置及び制御対象装置の安全稼働制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置は、第1の電極に接続され、設定されている個人識別情報を人体の伝送路によって送信する送信部と、前記送信部に設定されている個人識別情報と同一の個人情報が設定され、第2の電極に接続され、この第2の電極から到来する個人識別情報を前記人体の伝送路によって受信し、設定されている個人識別情報と一致するか否かを検出する受信部と、前記受信部の検出結果に基づき、当該検出結果が一致となったときに制御対象装置を稼働可能状態とする指示を出力し、当該検出結果が不一致となった場合に前記制御対象装置を稼働不可能状態とする指示を出力する稼働制御部とを具備し、前記送信部と前記受信部を1ブロックの筐体に備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置では、前記稼働制御部は、受信部に個人識別情報が得られない場合も前記制御対象装置を稼働不可能状態とする指示を出力することを特徴とする。
【0012】
本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置では、前記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出し、前記稼働制御部の制御に反映させる稼働制御補助部を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置では、前記第1の電極と前記第2の電極とに接続される人から個人識別情報を取得する個人識別情報取得手段と、この個人識別情報を前記送信部及び前記受信部に設定する設定手段と、を具備することを特徴とする。
【0014】
本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置では、前記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出し、前記稼働制御部の制御に反映させる稼働制御補助部を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置では、前記個人識別情報取得手段は、人の生体認証情報を取得するセンサであることを特徴とする。
【0016】
本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置では、前記稼働制御補助部は、予め特定の一人が前記第1の電極と前記第2の電極に接続される人体部位間のインピーダンスを測定して統計的データとして保持し、前記送信部と前記受信部間における通信の際に前記第1の電極と前記第2の電極に接続される人体部位間のインピーダンスを測定して前記保持してある統計的データと比較して前記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出することを特徴とする。
【0017】
本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置では、前記稼働制御補助部は、前記第1の電極の近傍に設けられた第1の生体認証情報取得手段と、前記第2の電極の近傍に設けられた第2の生体認証情報取得手段と、一人から前記第1の生体認証情報取得手段により得られるべき第1の生体認証情報と前記一人から前記第2の生体認証情報取得手段により得られるべき第2の生体認証情報とが記憶された本来生体認証情報記憶手段と、前記第1の生体認証情報取得手段により得られた第1の生体認証情報と前記本来生体認証情報記憶手段に記憶されている第1の生体認証情報とを比較した第1の比較結果と、前記第2の生体認証情報取得手段により得られた第2の生体認証情報と前記本来生体認証情報記憶手段に記憶されている第2の生体認証情報とを比較した第2の比較結果と、を得る比較結果取得手段と、を具備し、伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出することを特徴とする。
【0018】
本発明の実施形態に係る制御対象装置の安全稼働制御方法は、第1の電極に接続され、設定されている個人識別情報を人体の伝送路によって送信する送信部と、前記送信部に設定されている個人識別情報と同一の個人情報が設定され、第2の電極に接続され、この第2の電極から到来する個人識別情報を前記人体の伝送路によって受信し、設定されている個人識別情報と一致するか否かを検出する受信部と、前記受信部の検出結果に基づき、制御対象装置を稼働可能状態または稼働不可能状態とする指示を出力する稼働制御部とを備え、前記送信部と前記受信部を1ブロックの筐体に備える安全稼働制御装置による前記制御対象装置の安全稼働制御方法において、前記稼働制御部によって、前記受信部の検出結果が一致となったときに前記制御対象装置を稼働可能状態とする指示を出力し、当該検出結果が不一致となった場合に前記制御対象装置を稼働不可能状態とする指示を出力することを特徴とする。
【0019】
本発明の実施形態に係る制御対象装置の安全稼働制御方法では、前記受信部に個人識別情報が得られない場合も前記稼働制御部によって、前記制御対象装置を稼働不可能状態とする指示を出力することを特徴とする。
【0020】
本発明の実施形態に係る制御対象装置の安全稼働制御方法では、前記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出し、前記稼働制御部の制御に反映させる稼働制御補助部を備え、この稼働制御補助部によって前記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものであることが検出された場合に、前記制御対象装置を稼働可能状態とすることを特徴とする。
【0021】
本発明の実施形態に係る制御対象装置の安全稼働制御方法では、前記稼働制御補助部は、予め特定の一人が前記第1の電極と前記第2の電極に接続される人体部位間のインピーダンスを測定して統計的データとして保持しているものであり、この稼働制御補助部によって、前記送信部と前記受信部間における通信の際に前記第1の電極と前記第2の電極に接続される人体部位間のインピーダンスを測定して前記保持してある統計的データと比較して前記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る安全稼働制御装置のブロック図。
【
図2】本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置をコンピュータにより構成した場合のブロック図。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る安全稼働制御装置の要部の動作を説明するためのフローチャート。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る安全稼働制御装置の要部の動作を説明するためのフローチャート。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る安全稼働制御装置の要部の動作を説明するためのフローチャート。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る安全稼働制御装置のブロック図。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る安全稼働制御装置のブロック図。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る安全稼働制御装置の要部の動作を説明するためのフローチャート。
【
図9】本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置を自動車に応用した例を示すブロック図。
【
図10】本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置を自動車に応用した例を示すブロック図。
【
図11】本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置を自動車に応用した例を示すブロック図。
【
図12】本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置をベビーカーに応用した例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態に係る安全稼働制御装置及び制御対象装置の安全稼働制御方法を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図1には、第1の実施形態に係る安全稼働制御装置のブロック図を示す。本装置は、第1の電極11に接続された送信部21と、第2の電極12に接続された受信部22とを備えている。送信部21は、設定されている個人識別情報を第1の電極11を介して人体Hによる伝送路Wによって送信する。個人識別情報は、文字や画像であってもよく、また、指紋や顔画像などの個人認証情報であってもよい。本実施形態では、第1の電極11を手によって触れることで、人体Hによる伝送路Wによって送信が実現される。
【0024】
受信部22は、第2の電極12から到来する個人識別情報を上記人体Hの伝送路Wによって受信し、設定されている個人識別情報と一致するか否かを検出する。即ち、受信部22には上記送信部21と同じ個人識別情報が設定されており、一致するか否かを検出する。本実施形態では、第2の電極12を手によって触れることで、人体Hによる伝送路Wから手を介して個人識別情報が受信部22へ到り受信が実現される。
【0025】
送信部21と受信部22とは稼働制御部13に接続されている。送信部21と受信部22とは、稼働制御部13から電源供給されている。稼働制御部13には、制御対象装置30が接続されている。
【0026】
稼働制御部13は、上記受信部の検出結果に基づき、当該検出結果が一致となったときに制御対象装置30を稼働可能状態とする指示を出力し、当該検出結果が不一致となった場合に上記制御対象装置30を稼働不可能状態とする指示を出力する。制御対象装置30は、例えば、工場などに置かれた各種機械装置、自動車や自転車、ベビーカーなどのように、人体の2か所で電極に触れているとき、動かすこと(稼働状態にすること)を可能とすべき装置であることが望ましい。即ち、工場などに置かれた各種機械装置は、各種事故などが起こらない環境のときだけに稼働可能状態とすることが必須であり、自動車や自転車は、両手等がハンドルを握っているとき以外は稼働可能状態とすべきではなく、ベビーカーにおいても両手で押す状態でなければ(片手では)動かせないようにすることが望ましいもののである。本実施形態の安全稼働制御装置は、制御対象装置30が安全に運転されることを確保するものである。
【0027】
上記送信部21と受信部22と稼働制御部13とは、1ブロックの筐体10に備えられている。本実施形態では、上記人体Hの伝送路Wが一人の人体Hにより構成されたものか否かを検出し、上記稼働制御部13の制御に反映させる稼働制御補助部18を備えていても良い。
【0028】
本実施形態の安全稼働制御装置は、
図2に示すようなコンピュータにより構成することができる。コンピュータ100は、CPU110が主メモリ111内のプログラムやデータを用いて各部を制御して安全稼働制御装置として機能する。CPU110はバス112を介して外部記憶インタフェース113、入力インタフェース114、表示インタフェース115、I/Oインタフェース116~118が接続されている。
【0029】
外部記憶インタフェース113には、外部記憶装置123が接続され、入力インタフェース114には、キーボードやタッチパネルなどの入力装置124とマウスなどのポインティングデバイス122が接続されている。また、表示インタフェース115には、LCDなどの表示装置125が接続されており、画像を表示することが可能である。I/Oインタフェース116は第1の電極11と接続される送信部21が接続されており、I/Oインタフェース117は第2の電極12と接続される受信部22が接続されている。また、I/Oインタフェース118には稼働制御補助部18が接続されている。
【0030】
以上のように構成された本実施形態の安全稼働制御装置においては、送信部21が
図3に示すフローチャートに示すように動作し、受信部22が
図4に示すフローチャートに示すように動作し、稼働制御補助部18及び稼働制御部13が
図5に示すフローチャートに示すように動作する。まず、送信部21は、第1の電極11に人体Hの一部に触れたかを検出して(S11)、YESとなるまで検出を続ける。ステップS11においてYESへ分岐すると、設定されている個人識別情報を人体伝送路へ送信する(S12)。
【0031】
上記に対し、受信部22は、第2の電極12に人が接触し、個人識別情報が到来したかを検出している(S21)。このステップS21においてNOへ分岐すると、制御対象装置30を稼働不能状態とする通知を稼働制御部13へ送る(S22)。上記ステップS21においてYESへ分岐すると、人体伝送路から到来する個人識別情報を受信して、この受信部22に設定されている個人識別情報と比較し(S23)、一致したか否かを検出する(S24)。このステップS24において、NOとなると制御対象装置30を稼働不能状態とする通知を稼働制御部13に対して送る(S22)。一方、ステップS24においてYESへ分岐すると、制御対象装置30を稼働可能状態とする通知を稼働制御部13に対して送る(S25)。
【0032】
また、稼働制御補助部18は、第2の電極12に人が接触し、個人識別情報が到来したかを検出している(S31)。このステップS31においてNOへ分岐すると、受信部22の判定に関係なく稼働制御部13が制御対象装置30を稼働不能状態とする(S32)。ステップS31においてYESへ分岐すると、人体の伝送路が一人の人体により構成されたものであるかを検出する(S33)。このステップS33においてNOへ分岐すると、受信部22の判定に関係なく稼働制御部13が制御対象装置30を稼働不能状態とする(S32)。ステップS33においてYESへ分岐すると、受信部22の判定に従って、稼働制御部13が、制御対象装置30を稼働不能状態とするかまたは制御対象装置30を稼働可能状態とする(S34)。
【0033】
以上のようにして、本実施形態の安全稼働制御装置によれば、一人の人体の伝送路を用いて個人識別情報が伝送されない限り制御対象装置30が稼働可能状態となることがなく、工場などに置かれた各種機械装置が、不十分な注意状態において動作し各種事故などが起こることがなく、自動車や自転車が、片手運転では稼働可能状態となることがなく、ベビーカーにおいても両手で押す状態でなければ(片手では)動かせないようになる。
【0034】
図6は、第2の実施形態に係る安全稼働制御装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る安全稼働制御装置は、第1の実施形態に係る安全稼働制御装置の構成(
図1)に対して、個人識別情報取得手段14と設定手段15とを備える点で構成が異なる。
【0035】
個人識別情報取得手段14は、上記第1の電極11と上記第2の電極12とに接続される人から個人識別情報を取得するものであり、例えば、文字や数字など、写真や画像などを入力するものであっても良い。また、生体認証情報である指紋、掌、虹彩、眼球血管、静脈などの情報を取得するもの、生体認証情報取得用の例えばセンサなどであってもよい。個人識別情報取得手段14については、
図2に示したコンピュータ構成の安全稼働制御装置において、バスに接続したI/Oインタフェースに必要なセンサなどを接続して実現することができる。
【0036】
この第2の実施形態では、安全稼働制御装置を動作させる前の適宜なときに、個人識別情報取得手段14を動作させて稼働制御部13内の設定手段15へ個人識別情報を送り、設定手段15によって、この個人識別情報を上記送信部21及び上記受信部22に設定するように構成する。この設定以降においては、安全稼働制御装置は、
図3~
図5のフローチャートに示したように動作するものとする。
【0037】
実施形態における安全稼働制御装置の稼働制御補助部18は、例えば、次のように第1の構成とすることができる。すなわち、予め特定の一人が上記第1の電極11と上記第2の電極12に接続される人体部位間のインピーダンスを測定して統計的データとして保持しておく。上記送信部21と上記受信部22間における通信の際(実際の人体通信の際)に上記第1の電極11と上記第2の電極12に接続される人体部位間のインピーダンスを測定して上記保持してある統計的データと比較して上記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出するように構成する。
【0038】
また、
図6に示すように第2の構成とすることができる。稼働制御補助部18は、上記第1の電極11の近傍に設けられた第1の生体認証情報取得手段83と、上記第2の電極の近傍に設けられた第2の生体認証情報取得手段84と、一人から上記第1の生体認証情報取得手段83により得られるべき第1の生体認証情報と上記一人から上記第2の生体認証情報取得手段84により得られるべき第2の生体認証情報とが記憶された本来生体認証情報記憶手段82とを備える。
【0039】
稼働制御補助部18は、受信部22が個人識別情報の受信を行ったときに、上記第1の生体認証情報取得手段83により得られた第1の生体認証情報と上記本来生体認証情報記憶手段82に記憶されている第1の生体認証情報とを比較した第1の比較結果と、前記第2の生体認証情報取得手段84により得られた第2の生体認証情報と上記本来生体認証情報記憶手段82に記憶されている第2の生体認証情報とを比較した第2の比較結果とを得る比較結果取得手段を含む中央制御手段81とを備える。第1比較結果と、第2の比較結果とは、稼働制御部へ送られ、両方が一致したとき上記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものとする。
【0040】
図8には、上記
図6の稼働制御補助部18を用いた場合の動作が示されている。このフローチャートにより動作を説明する。送信部21からの送信を行う直前には、第1の生体認証情報取得手段83により、人Hから、第1の生体認証情報を取得し、第2の生体認証情報取得手段84により人Hから、第2の生体認証情報を取得する(S41)。次に、上記で取得した第1の生体認証情報と第2の生体認証情報を中央制御手段81が本来生体認証情報記憶手段82に記憶する(S42)。
【0041】
次に、送信部21からの送信が開始時及びその後には、第1の生体認証情報取得手段83により、人Hから、第1の生体認証情報を取得し、第2の生体認証情報取得手段84により人Hから、第2の生体認証情報を取得する(S43)。取得した、第1及び第2の生体認証情報を中央制御手段(比較結果取得手段)81が保持する(S44)。次に、中央制御手段(比較結果取得手段)81は、取得及び保持した第1及び第2の生体認証情報を、本来生体認証情報記憶手段82に記憶してある第1及び第2の生体認証情報と比較し、比較結果を稼働制御部13へ通知する(S45)。これによって、稼働制御部13は、上記人体の伝送路が一人の人体により構成されたものか否かを検出することができる。
【0042】
図9と
図10には、本実施形態に係る安全稼働制御装置の応用例を示す。この例では、自動車のシート61に、第1の電極11と第2の電極12とを埋め込んで人Hに接触するように構成する。本実施形態に係る安全稼働制御装置40の表示部50を、安全稼働制御装置40の外部に示している。本実施形態に係る安全稼働制御装置40では、第1の電極11と第2の電極12と間で人体の伝送路Wを介して通信が行われ、個人識別情報の一致が得られない限り、シートベルトに関するアラームの表示が行われない。従って
図9に示すように、シート61に重たい荷物62が置かれたとしても、表示部50にはアラームの表示が行われない。このため、適切なアラーム発生を実現できる。
【0043】
上記に対し、人Hがシート61に座った状態であって、第1の電極11と第2の電極12との間で伝送路Wを介して通信が行われ、個人識別情報の一致が得られた
図10に示す場合には、表示部50にはアラームの表示が行われる。つまり、シートベルト装着を促す図形と「シートベルトを着用してください。」などの文字列によるアラーム表示が行われる。勿論、音声により上記文字列文章の発生を行っても良い。本実施形態により、適切にアラームを表示することができる。
図9と
図10の実施形態は、
図10のように第1の電極11と第2の電極12との間で伝送路Wを介して通信が行われ、個人識別情報の一致が得られたときに運転を可能とし、第1の電極11と第2の電極12との間で伝送路Wを介して通信が行われないとき、個人識別情報の一致が得られないときに自動車の動作か停止されるように構成することができる。
【0044】
図11は、
図9と
図10の変形例である。この実施形態では、ハンドルに第1の電極11を設け、アクセルペダルに第2の電極12を設けたものである。その他の構成と動作は
図9と
図10のものに等しい。
【0045】
図12は、ベビーカーの把手71に、第1の電極11と第2の電極12とを埋め込んで人Hに接触するように構成する。人Hがベビーカーの把手71における第1の電極11と第2の電極12を掴んだ状態では、第1の電極11と第2の電極12との間で伝送路を介して通信が行われ、個人識別情報の一致が得られた
図12に示す場合には、安全稼働制御装置40からの制御が制御対象装置であるブレーキまたはモータに対して行われ、稼働可能状態に移行される。これにより、一人の人が両手で把手71を掴んだ運転可能な状態でブレーキの解除やモータの回転動作が行われる。
【符号の説明】
【0046】
10 筐体 11 第1の電極
12 第2の電極 13 稼働制御部
14 個人識別情報取得手段 15 設定手段
18 稼働制御補助部 21 送信部
22 受信部 30 制御対象装置
40 安全稼働制御装置 50 表示部
61 シート 62 荷物
71 把手 81 中央制御手段(比較結果取得手段)
82 本来生体認証情報記憶手段 83 第1の生体認証情報取得手段
84 第2の生体認証情報取得手段 100 コンピュータ
110 CPU 111 主メモリ
112 バス 113 外部記憶インタフェース
114 入力インタフェース 115 表示インタフェース
116~118 I/Oインタフェース 122 ポインティングデバイス
123 外部記憶装置 124 入力装置
125 表示装置