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特開2024-67979ブレードユニット、心なし研削盤及び研削砥石とブレード本体との衝突防止方法
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  • 特開-ブレードユニット、心なし研削盤及び研削砥石とブレード本体との衝突防止方法 図1
  • 特開-ブレードユニット、心なし研削盤及び研削砥石とブレード本体との衝突防止方法 図2
  • 特開-ブレードユニット、心なし研削盤及び研削砥石とブレード本体との衝突防止方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067979
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ブレードユニット、心なし研削盤及び研削砥石とブレード本体との衝突防止方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 5/307 20060101AFI20240510BHJP
   B24B 5/18 20060101ALI20240510BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20240510BHJP
   B24B 49/08 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B24B5/307
B24B5/18 A
B24B41/06 J
B24B49/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178446
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】391048245
【氏名又は名称】株式会社東振テクニカル
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 司
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 翔真
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
【Fターム(参考)】
3C034AA01
3C034BB79
3C034BB94
3C034CA13
3C034DD20
3C043AA08
3C043CC03
3C043CC11
3C043DD02
3C043DD05
3C043DD06
(57)【要約】
【課題】 研削砥石とブレード本体との衝突を防止するブレードユニット、このブレードユニットを備える心なし研削盤及び研削砥石とブレード本体との衝突防止方法を提供する。
【解決手段】 本発明のブレードユニット10は、ワークWの外周面を下方から支持するブレード本体20と、ブレード本体を上下方向に移動させる昇降機構110と、研削砥石からブレード本体までの距離Dを測定するエアマイクロセンサ120とを備える。エアマイクロセンサのノズル121がブレード本体の研削砥石と対向する面に設けられており、昇降機構によりノズルを研削砥石の回転中心Oを通る水平線L上に位置させた状態で距離を測定する。研削砥石の表面のうち最もブレード本体側に突出している箇所の位置を測定することになるので、研削砥石とブレード本体との衝突を未然に効果的に防止することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの外周面を左右方向から支持しながら回転する研削砥石及び調整車を備える心なし研削盤用のブレードユニットにおいて、
前記ワークの外周面を下方から支持するブレード本体と、
前記ブレード本体を上下方向に移動させる昇降機構と、
前記研削砥石から前記ブレード本体までの距離を測定するエアマイクロセンサとを備えており、
前記エアマイクロセンサのノズルが前記ブレード本体の前記研削砥石と対向する面に設けられており、
前記昇降機構により前記ノズルを前記研削砥石の回転中心を通る水平線上に位置させた状態で前記距離を測定することを特徴とするブレードユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のブレードユニットと、
前記ブレード本体を左右方向に移動させる送り装置とを備えることを特徴とする心なし研削盤。
【請求項3】
ワークの外周面を左右方向から支持しながら回転する研削砥石及び調整車と、前記ワークの外周面を下方から支持するブレード本体とを備える心なし研削盤における前記研削砥石と前記ブレード本体との衝突防止方法であり、
前記ブレード本体の前記研削砥石と対向する面にエアマイクロセンサのノズルが設けられており、
前記ノズルを前記研削砥石の回転中心を通る水平線上に移動させるステップと、
前記ノズルからエアを噴射して前記研削砥石から前記ブレード本体までの距離を測定するステップと、
前記ブレード本体を前記研削砥石側に移動させている間に、前記研削砥石から前記ブレード本体までの距離が予め設定している閾値に至ったタイミングで前記ブレード本体の移動を停止するステップを備えることを特徴とする研削砥石とブレード本体との衝突防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削砥石とブレード本体との衝突を防止するブレードユニット、このブレードユニットを備える心なし研削盤及び研削砥石とブレード本体との衝突防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円柱状、円筒状等のワークの外周を研削する研削盤として、ワークの進行方向を前後方向とした場合に、ワークの外周面を研削砥石と調整車で左右方向から支持し、ワークレストに取り付けたブレードで下方から支持する心なし研削盤が知られている。
心なし研削ではワークの側面(研削する面)をブレードの側面から僅かに研削砥石側に突き出させる必要がある。例えばワークの直径が5ミリの場合、突き出し量をワーク直径の15%とすると0.75ミリと極めて小さい値になる。
【0003】
通常、突き出し量の調整は作業者が目視で行ったり、ブレードの位置を数字で表示する画面を見ながら行ったりしているが、調整作業中に作業者の誤判断や誤操作により調整車を研削砥石に近づけ過ぎて両者が衝突してしまうことがある。また、自動制御によりブレードの位置を調節している場合、作業者の数値入力ミスにより研削砥石の回転中にブレードが衝突してしまうこともある。
【0004】
このような衝突を防止するべく、研削砥石とブレードの距離を正確に測定したいというニーズは存在するものの、研削砥石の直径は研削、ドレッシング、ツルーイング等の作業中に時々刻々と変化するためシミュレーション等の計算により予測することは困難である。また、研削砥石とブレードの隙間には研磨粉や研削油が存在するためレーザや超音波を用いたセンサでの測定も困難である。
【0005】
例えば特許文献1には回転中の研削砥石の表面位置を空気マイクロメータで測定することでワークの加工寸法を精度よく一定に保つことを目的とした技術が開示されている。具体的には、ブレードの研削砥石と対向する面にノズルを設けて、ノズルに空気マイクロメータを接続している(特許文献1の第2図参照)。また、ノズルをブレードの研削砥石と対向する面だけでなく、調整車と対向する面にも設ける技術も開示されている(特許文献1の第3図参照)。ノズルは研削砥石の回転中心を通る水平線よりも低い位置に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実全昭56-104855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
心なし研削盤では研削砥石の回転中心を通る水平線よりも高い位置にワークを配置し、当該水平線よりも低い位置に配置したブレードでワークを下方から支持して研削加工を行う。
特許文献1ではブレードは上記水平線よりも低い位置に存在し、ノズル及び空気マイクロメータも上記水平線よりも低い位置に存在しており、空気マイクロメータでノズルから研削砥石の表面までの距離を測定する。
研削砥石とブレードとの衝突を防止するには研削砥石の表面のうち最もブレード側に突出している箇所の位置を正確に測定することが必要であり、特許文献1に係る技術では対応できなかった。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑み、研削砥石とブレード本体との衝突を防止するブレードユニット、このブレードユニットを備える心なし研削盤及び研削砥石とブレード本体との衝突防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のブレードユニットは、ワークの外周面を左右方向から支持しながら回転する研削砥石及び調整車を備える心なし研削盤用のブレードユニットにおいて、前記ワークの外周面を下方から支持するブレード本体と、前記ブレード本体を上下方向に移動させる昇降機構と、前記研削砥石から前記ブレード本体までの距離を測定するエアマイクロセンサとを備えており、前記エアマイクロセンサのノズルが前記ブレード本体の前記研削砥石と対向する面に設けられており、前記昇降機構により前記ノズルを前記研削砥石の回転中心を通る水平線上に位置させた状態で前記距離を測定することを特徴とする。
【0010】
本発明の心なし研削盤は、上記ブレードユニットと、前記ブレード本体を左右方向に移動させる送り装置とを備えることを特徴とする。
本発明の研削砥石とブレード本体との衝突防止方法は、ワークの外周面を左右方向から支持しながら回転する研削砥石及び調整車と、前記ワークの外周面を下方から支持するブレード本体とを備える心なし研削盤における前記研削砥石と前記ブレード本体との衝突防止方法であり、前記ブレード本体の前記研削砥石と対向する面にエアマイクロセンサのノズルが設けられており、前記ノズルを前記研削砥石の回転中心を通る水平線上に移動させるステップと、前記ノズルからエアを噴射して前記研削砥石から前記ブレード本体までの距離を測定するステップと、前記ブレード本体を前記研削砥石側に移動させている間に、前記研削砥石から前記ブレード本体までの距離が予め設定している閾値に至ったタイミングで前記ブレード本体の移動を停止するステップを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では昇降機構によりブレード本体に設けたノズルを研削砥石の回転中心を通る水平線上に位置させた状態でエアマイクロセンサにより研削砥石からブレード本体(ノズル)までの距離を測定する。これにより、研削砥石の表面のうち最もブレード本体側に突出している箇所の位置を測定することになるので、研削砥石とブレード本体との衝突を未然に効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】心なし研削盤の正面図
図2】研削砥石、調整車及びブレードユニットを概略的に示す正面図
図3】ブレードユニットの動作を概略的に示す正面図(a)及び(b)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のブレードユニット及び心なし研削盤の実施の形態について説明する。
図1に示すように心なし研削盤100はベッド101上に研削砥石102、研削砥石台103、調整車104、調整車台105、ブレード本体20、研削砥石102にドレッシングを行うドレス装置106、調整車104用のドレス装置107、研削砥石台103を移動させる送り装置108、調整車台105を移動させる送り装置109、ブレード本体20を左右方向に移動させる送り装置(図示略)、ブレード本体20を上下方向に昇降させる昇降機構110、これら各装置の駆動を統括制御する制御部111(図2参照)等を備えている。周知技術であるため詳細な説明は省略するが、研削加工作業はまず送り装置108,109を駆動して研削砥石台103及び調整車台105を適宜左右方向に移動させ、研削砥石102と調整車104でワークWを左右から支持し、ブレード本体20の高さを昇降機構110で調節してワークWの外周面を下方から支持する。そして、研削砥石102と調整車104を軸回りに回転させてワークWを研削する。研削加工終了後はワークWを取り出して次のワークWを供給する。ワークWの供給/排出方式はどのようなやり方でも構わない。
【0014】
図2に示すように本発明のブレードユニット10はブレード本体20、昇降機構110及びエアマイクロセンサ120で構成される。
エアマイクロセンサ120はノズル121、流路122、演算部123及び表示部124を備える。
ノズル121はブレード本体20の研削砥石102と対向する面に設けられている。
流路122はノズル121から噴出させる空気の通り道であり、ブレード本体20の下方から上方にのびている。空気は周知のエアコンプレッサ等で演算部123を経由して流路122内に送り込まれる。
演算部123はノズル121から噴出した空気を研削砥石102に衝突させた際に生じる背圧を空-電変換部で電気信号に変換し、演算処理を施すことでノズル121(ブレード本体20の側面)から研削砥石102の表面までの距離Dを算出し、制御部111に送信する。制御部111は当該距離を表示部124に表示する。
【0015】
次に、研削砥石102とブレード本体20との衝突防止方法について説明する。
まず、作業者はブレード本体20の側面に設けたノズル121の位置から研削砥石102の回転中心Oを通る水平線Lまでの高さを心なし研削盤100の制御部111に入力する。
次に、作業者は入力されたノズル121の位置と、予め入力されている研削砥石102の回転中心Oの位置に基づいて、図3(a)中の矢印A1で示すようにノズル121を研削砥石102の回転中心Oを通る水平線L上まで移動させる。
【0016】
次に、作業者は図3(b)中の矢印A2で示すように送り装置を駆動させてブレード本体20を研削砥石102に近づけていき、ブレード本体20が研削砥石102と衝突する前の所定の距離で停止させ、その時点での研削砥石102からノズル121(ブレード本体20の側面)までの距離を閾値とする。閾値は制御部111に入力される。
制御部111はブレード本体20を研削砥石102側に移動させている間に演算部123から送信される研削砥石102からノズル121までの距離を監視し続けており、当該距離が閾値に至った時点でブレード本体20の研削砥石102側への移動を停止する。
【0017】
図2に示すように研削加工中やドレッシング中のブレード本体20の大部分は研削砥石102の回転中心Oを通る水平線Lよりも下方に位置している。研削加工中やドレッシング中にもノズル121から空気を噴出し続けることにすれば、ノズル121内に研磨粉や研削油が進入してノズル121が詰まってしまう事態を防止できる。
上記のようにノズル121を研削砥石102の回転中心Oを通る水平線L上に位置させるのは例えばワークWの側面をブレード本体20の側面から僅かに研削砥石102側に突き出させるための突き出し量の調整作業中が挙げられるが、これに限られない。
【0018】
本発明では昇降機構110によりノズル121を研削砥石102の回転中心Oを通る水平線L上に位置させた状態でエアマイクロセンサ120により研削砥石102からブレード本体20(ノズル121)までの距離Dを測定する。研削砥石102の表面のうち最もブレード本体20側に突出している箇所の位置を測定することになるので、研削砥石102とブレード本体20との衝突を未然に効果的に防止することができる。
また、仮にノズル121が水平線Lよりも大幅に下方に位置している状態でノズル121から研削砥石102の表面までの距離を測定するものとすると測定誤差が大きくなるという問題があるが、本発明では昇降機構110を利用してノズル121を水平線L上まで上昇させるので測定誤差を限りなくゼロに近づけることができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、研削砥石とブレード本体との衝突を防止するブレードユニット、このブレードユニットを備える心なし研削盤及び研削砥石とブレード本体との衝突防止方法であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0020】
D ノズルから研削砥石の表面までの距離
L 研削砥石の回転中心を通る水平線
O 研削砥石の回転中心
W ワーク
10 ブレードユニット
20 ブレード本体
100 心なし研削盤
101 ベッド
102 研削砥石
103 研削砥石台
104 調整車
105 調整車台
106 ドレス装置
107 ドレス装置
108 送り装置
109 送り装置
110 昇降機構
111 制御部
120 エアマイクロセンサ
121 ノズル
122 流路
123 演算部
124 表示部
図1
図2
図3