IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本サーモエナーの特許一覧

<>
  • 特開-先混合型水素ガスバーナ 図1
  • 特開-先混合型水素ガスバーナ 図2
  • 特開-先混合型水素ガスバーナ 図3
  • 特開-先混合型水素ガスバーナ 図4
  • 特開-先混合型水素ガスバーナ 図5
  • 特開-先混合型水素ガスバーナ 図6
  • 特開-先混合型水素ガスバーナ 図7
  • 特開-先混合型水素ガスバーナ 図8
  • 特開-先混合型水素ガスバーナ 図9
  • 特開-先混合型水素ガスバーナ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067981
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】先混合型水素ガスバーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/22 20060101AFI20240510BHJP
   F23D 14/84 20060101ALI20240510BHJP
   F23C 99/00 20060101ALI20240510BHJP
   F23Q 9/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F23D14/22 E
F23D14/84 D
F23C99/00 323
F23C99/00 315
F23Q9/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178448
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】505229472
【氏名又は名称】株式会社日本サーモエナー
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 智郎
(72)【発明者】
【氏名】正野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】青木 芳文
【テーマコード(参考)】
3K019
3K065
【Fターム(参考)】
3K019AA06
3K019BA02
3K019BB04
3K019CA03
3K065TA01
(57)【要約】
【課題】 NOx排出量を低減し、水素燃料に適した先混合型水素ガスバーナを提供する。
【解決手段】 先混合型水素ガスバーナ1は、円筒状の送風管2と、送風管2内にはみ出さないように設けられた円板状の整流板3と、整流板3を貫通し、先端が閉じられた筒状先端部の周壁に複数のガスポート4bを有するガスノズル4と、送風管2の外側に配設されたパイロットバーナ5と、ガスノズル4の外周面と整流板3との間に設けられた一次空気通路7と、整流板3に放射状に配列された複数の通孔8aの列からなる二次空気通路8と、整流板3の外周縁と送風管2の内周面との間に設けられた円環状の三次空気通路9と、を備え、ガスポート4bは、二次空気通路8の隣り合う列の方向の間の方向を向くように設けられ、パイロットバーナ5の噴出口5aは、送風管2の先端2aと隣り合うとともに二次空気通路8の隣り合う列間に配置され、且つ、ガスノズル4の中心軸4Yに向く。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の送風管と、
前記送風管の噴出口内に、前記噴出口からはみ出さないように設けられた円板状の整流板と、
前記整流板を貫通し、先端が閉じられた筒状先端部の周壁に複数のガスポートを有するガスノズルと、
前記送風管の外側に配設されたパイロットバーナと、
前記ガスノズルの外周面と前記整流板との間に設けられた間隙からなる一次空気通路と、
前記整流板に放射状に配列された複数の通孔の列からなる二次空気通路と、
前記整流板の外周縁と前記送風管の内周面との間に設けられた円環状の間隙からなる三次空気通路と、
を備え、
前記複数のガスポートは、前記二次空気通路の前記通孔の隣り合う列の方向の間の方向を向くように設けられ、
前記パイロットバーナの噴出口は、前記送風管の先端と隣り合うとともに、前記二次空気通路の通孔の隣り合う列間に配置され、且つ、前記ガスノズルの中心軸に向くように設けられている、
先混合型水素ガスバーナ。
【請求項2】
前記一次空気通路、前記二次空気通路、前記三次空気通路の順に、通路面積が大きくなるように構成されている、請求項1に記載の先混合型水素ガスバーナ。
【請求項3】
前記整流板の外側面と前記送風管の先端との距離が0~15mmである、請求項1に記載の先混合型水素ガスバーナ。
【請求項4】
前記ガスノズルの外径が前記送風管の内径の15~25%であり、前記整流板から前記ガスポートの中心迄の距離が、前記送風管の内径の25~35%である、請求項1に記載の水素ガス用先混合式ガスバーナ。
【請求項5】
前記一次空気通路の通路面積の全空気通路面積に対する比率が15~25%であり、前記二次空気通路の通路面積の全空気通路面積に対する比率が25~35%であり、前記三次空気通路の通路面積の全空気通路面積に対する比率が45~55%である、請求項2に記載の先混合型水素ガスバーナ。
【請求項6】
前記送風管が連通状に設けられるウィンドボックスを更に備え、
前記ウィンドボックスは、燃焼用空気が供給される空気供給口を備え、
前記パイロットバーナが、前記ウィンドボックスの空気供給口と前記送風管の軸線を挟んで反対側に配設されている、
請求項1に記載の先混合型水素ガスバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先混合型の水素ガスバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
水素は燃焼の際に二酸化炭素を生じないため、ボイラ等の燃焼装置に用いる燃料として注目されている(特許文献1)。水素は、プロパン等の炭化水素ガスと比べ、燃焼速度が速く、火炎温度も高いため、NOxの排出量が増加する傾向にある。
【0003】
ボイラ等では、燃焼室に蒸気を吹き込んだり、燃焼中に水分を添加し、火炎温度を低下させてNOxの低減を図る方法(特許文献1等)があるが、排ガス量が増えるため熱損失が増える(ボイラ効率が低下する。)。
【0004】
また、排ガスの一部を燃焼空気に混入して酸素分圧を下げるとともに、燃焼ガスの熱容量を増加させ、火炎温度を低下させてNOx低減を図る方法(非特許文献1等)もあるが、送付機が大型化することや、燃焼が不安定になる等の問題がある。そのため、先混合型ガスバーナの構造を改良し、自己排ガス再循環や分割火炎等の処置を施し、NOx低減を図る方法(特許文献2、3等)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-26921号公報
【特許文献2】特開平5-113206号公報
【特許文献3】特開2003-254512号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本マリンエンジニアリング学会誌 第46巻 第6号(2011)、「舶用機関におけるEGR(排ガス再循環)によるNOx低減技術」、古東文哉著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の先混合型ガスバーナの構造を改良したものは、燃焼速度の遅い都市ガス等を燃料に想定した構造であるため、燃焼速度が速い水素燃料に使用すると、水素が拡散する前に燃焼が一気に進んで火炎温度が高温となるためNOxの排出量が増加するとともに、バーナ近傍で高温の火炎を形成してバーナを損傷するため、水素燃料の使用に適さない。
【0008】
そこで、本発明は、NOx排出量を低減し、水素燃料に適した先混合型水素ガスバーナを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る先混合型水素ガスバーナは、円筒状の送風管と、前記送風管の噴出口内に、前記噴出口からはみ出さないように設けられた円板状の整流板と、前記整流板を貫通し、先端が閉じられた筒状先端部の周壁に複数のガスポートを有するガスノズルと、前記送風管の外側に配設されたパイロットバーナと、前記ガスノズルの外周面と前記整流板との間に設けられた間隙からなる一次空気通路と、前記整流板に放射状に配列された複数の通孔の列からなる二次空気通路と、前記整流板の外周縁と前記送風管の内周面との間に設けられた円環状の間隙からなる三次空気通路と、を備え、前記複数のガスポートは、前記二次空気通路の前記通孔の隣り合う列の方向の間の方向を向くように設けられ、前記パイロットバーナの噴出口は、前記送風管の先端と隣り合うとともに、前記二次空気通路の通孔の隣り合う列間に配置され、且つ、前記ガスノズルの中心軸に向くように設けられている。
【0010】
前記一次空気通路、前記二次空気通路、及び、前記三次空気通路は、その順に、通路面積が大きくなるように構成され得る。
【0011】
前記整流板の外側面と前記送風管の先端との距離は、0~15mmとし得る。
【0012】
前記ガスノズルの外径を前記送風管の内径の15~25%とし、前記整流板から前記ガスポートの中心迄の距離を、前記送風管の内径の25~35%とし得る。
【0013】
前記一次空気通路の通路面積の全空気通路面積に対する比率を15~25%、前記二次空気通路の通路面積の全空気通路面積に対する比率を25~35%、前記三次空気通路の通路面積の全空気通路面積に対する比率を45~55%とし得る。
【0014】
前記送風管が連通状に設けられるウィンドボックスを更に備え、前記ウィンドボックスは、燃焼用空気が供給される空気供給口を備え、前記パイロットバーナが、前記ウィンドボックスの空気供給口と前記送風管の軸線を挟んで反対側に配設され得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記構成を採用したことにより、一次空気通路から流出した一次空気は、ガスノズルの周囲をガスノズルに沿って流れ、ガスポートから噴出した水素ガスと混合しながら水素ガスを前方へ押し出し、二次空気通路から流出した二次空気は、放射状に噴出する水素ガスを分断するように流れ、三次空気通路から噴出した三次空気は、整流板の二次空気通路の通孔の隣り合う列の方向の間に沿うように中心軸方向に巻き込むような流れを形成し、その後一部の三次空気は一次空気と合流する。また、三次空気の中心軸方向に巻き込むような流れは、燃焼ガスの循環流(図5)を形成するため、一部の三次空気は、燃焼ガスと合流する。この一次~三次空気の一連の流れが、ガスノズルの先端側での最適な分割火炎の形成と、自己排ガス再循環を形成し、局所的な高温部を作ることなく緩慢な燃焼となるため、NOxが抑制される。
【0016】
また、パイロットバーナの先端がメインバーナの火炎に衝突しないように配置されているため、焼損のおそれがない。従来の化石燃料用のガスバーナでパイロットバーナをこのように配置するとメインバーナへの火移りが悪くなるが、水素燃料は化石燃料に比べて着火性が良い(燃焼範囲が広い)ことと、燃焼用空気が三次空気通路の側から一次空気通路の側へ巻込むような流れが生じるため、パイロットバーナの火炎が整流板に沿い、ガスポートの近傍で火炎を形成するため火移りが良くなるため、本発明におけるパイロットバーナの配置構成が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る先混合型水素ガスバーナの一実施形態を示す縦断側面図である。
図2図1の先混合型水素ガスバーナの正面図である。
図3】本発明に係る先混合型水素ガスバーナの流体解析画像である。
図4】本発明に係る先混合型水素ガスバーナの流体解析画像である。
図5】本発明に係る先混合型水素ガスバーナの流体解析画像である。
図6】本発明に係る先混合型水素ガスバーナの流体解析画像である。
図7】本発明に係る先混合型水素ガスバーナの流体解析画像である。
図8】本発明に係る先混合型水素ガスバーナの流体解析画像である。
図9】本発明に係る先混合型水素ガスバーナの流体解析画像である。
図10】本発明に係る先混合型水素ガスバーナの流体解析画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る先混合型水素ガスバーナの一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、全図及び全実施形態を通じて同一又は類似の構成部分には同符号を付している。
【0019】
図1及び図2を参照して、先混合型水素ガスバーナ1は、燃焼用空気Aを送る送風管2と、送風管2の噴出口2a内に噴出口2aからはみ出さないように設けられた整流板3と、整流板3を貫通し先端4aが閉じられた筒状先端部の周壁に複数のガスポート4bを有するガスノズル4と、送風管2の外側に配設されたパイロットバーナ5と、を備える。
【0020】
送風管2は、円筒状であり、ウィンドボックス6に連通接続されている。送風管2は、ブラスト管とも呼ばれる。ウィンドボックス6には、燃焼用空気の空気供給口6aにエアダンパ6bが設けられ、エアダンパ6bによって燃焼用空気Aの供給量を調節することができる。水素ガスHGが供給されるガスノズル4は、ウィンドボックス6を貫通し、ウィンドボックス6及び送風管2の内部を通っている。ガスノズル4は、図1に示すようにウィンドボックス6の底面を貫通させてウィンドボックス6内を真っ直ぐ伸びて整流板3の中心部を貫通する態様とするほか、ウィンドボックス6の側面を貫通してウィンドボックス6内で直角に曲がり、整流板3を貫通する態様とすることもできる(図4参照)。ガスノズル4の中心軸Yは、整流板3の中心を通っている。
【0021】
ガスノズル4の外周面と整流板3の内周縁との間に、一次空気通路7を構成する環状の間隙が設けられている。整流板3は、円板状であり、放射状に配列された複数の通孔8aの列により構成される二次空気通路8が設けられている。複数の通孔8aは、同心円上に形成されている。円板状の整流板3の外周縁と円筒状の送風管2の内周面との間に、三次空気通路9を構成する円環状の間隙が設けられている。整流板3の内周縁と外周縁には、心出しのための突起3a、3bが形成され得る。これらの心出しの突起3a、3bは、整流板3の中心を中心軸Yに一致させることができればよく、微小な突起とされる。
【0022】
ウィンドボックス6に供給された燃焼用空気Aは、一次空気通路7、二次空気通路8、及び三次空気通路9からそれぞれ噴出する。整流板3は、ブラケット10によりガスノズル4に固定することができる。
【0023】
整流板3は、送風管2の噴出口2a内に噴出口2aからはみ出さないように、送風管2の噴出口2aの端縁と面一になるか、噴出口2aの端縁の近傍に配置される。整流板3が、送風管2の噴出口2aよりはみ出していると、三次空気通路9から噴出する三次空気が送風管2の半径方向外側に噴出するため、好ましくない。
【0024】
整流板3の外側面と送風管2の先端との距離Hは、好ましくは0~15mm、より好ましくは0~5mmである。距離Hが15mmを超えると、送風管2内で保炎するようになり、NOxの排出量が増加し、整流板3も焼損し易くなるため好ましくない。
【0025】
ガスポート4bは、ガスノズル4の閉鎖された先端4aの近傍に設けられ、各ガスポート4bの中心軸4X、即ち、水素ガスHGの噴射方向が、二次空気通路8の通孔8aの隣り合う列の方向の間の方向を向くように設けられている。図示例のガスポート4bは、ガスノズル4の中心軸4Yを中心として等角度間隔(60°間隔)で6個形成されている。また、ガスポート4bは、図2に示すように、通孔8aの隣り合う列の中間位置、好ましくは、通孔8aの隣り合う列の中心角αを2等分する位置に設けられている。ガスノズル4の先端部は、パイプの先端を塞いだだけのシンプルな構造である。ガスポート4bの個数及び配置間隔は適宜設定することができる。
【0026】
図示例では、整流板3には、3個の通孔8aの列が放射状に6列、整流板3の中心を中心角として等角度間隔(60°間隔)で形成されている。二次空気通路8の通孔8aの列は、ガスポート4bの数に応じて設けられ、ガスポート4bの噴射方向と交互に設けられている。
【0027】
ガスノズル4の外径φdは、送風管2の内径φDの15~25%とすることが好ましく、より好ましくは15~20%である。φd/φDが15%より小さいと、隣り合うガスポート4bからの水素ガスHGの噴射が近づき、最適な分割火炎を形成できなくなり、NOxの発生量が上昇する。一方、φd/φDが25%を超えると、隣り合うガスポート4bからの水素ガスHG噴射が離れ、水素と燃焼用空気との混合が悪くなり、未燃水素が発生しやすくなる。
【0028】
整流板3からガスポート4bの中心迄の距離hは、送風管2の内径φDの25~35%とすることが好ましく、より好ましくは、25~30%である。距離hが内径φDの25%より小さくなると、火炎が整流板3の近傍で保炎するようになり、燃焼が一機に進むため、NOxの排出量が増加し、整流板3も損傷するからである。一方、距離hが内径φDの35%より大きくなると、水素と燃焼用空気との混合が悪くなり、未燃水素が発生しやすくなるからである。
【0029】
ガスノズル4のノズル内部に送られた水素ガスは、閉鎖された先端4aに衝突して、ガスノズル4の中心軸4Yを中心とする半径方向外側に噴出する。一次空気通路7から流出した一次空気は、ガスノズル4の周囲をガスノズル4に沿って流れ、ガスポート4bから噴出した水素ガスと直角に近い角度で衝突して急速に混合しながら水素ガスを前方へ押し出し、二次空気通路8から流出した二次空気は、放射状に噴出する水素ガスHGを仕切るエアカーテンを形成するように流れ、薄い円環状の三次空気通路9から噴出した三次空気は、二次空気通路8から流出した二次空気の流れの間を、一次空気通路7から流出した一次空気の流れの方へ引き寄せられ、整流板3に沿うようにガスノズル4の中心軸方向に巻き込むような流れを形成し、その後、一部の三次空気は、一次空気と合流する。また、三次空気の中心軸方向に巻き込むような流れは、火炉(図示せず。)の内部において、燃焼ガスの循環流(図5参照)を形成するため、一部の三次空気は、燃焼ガスと合流する。この一次~三次空気の一連の流れが、ガスノズル4の先端側での綺麗な分割火炎の形成と、自己排ガス再循環を形成し、局所的な高温部を作ることなく緩慢な燃焼となるため、NOxが抑制される。この一連の流れは、燃焼負荷が低下した場合であっても変わらないため、ガスバーナの特殊な構造は不要となる。ここで、自己排ガス再循環とは、燃焼用空気の噴出エネルギにより炉内の燃焼ガスを誘引し燃焼用空気と混合させることである。
【0030】
一次空気通路7、二次空気通路8、三次空気通路9は、その順に通路面積が大きくなるように構成されている。好ましくは、一次空気通路7の通路面積S1の全空気通路面積Sに対する比率S1/Sが15~25%、二次空気通路8の通路面積S2の全空気通路面積Sに対する比率S2/Sが25~35%、三次空気通路9の通路面積S3の全空気通路面積Sに対する比率S3/Sが45~55%である。
【0031】
一次空気通路7、二次空気通路8、三次空気通路9は、その順に通路面積を大きくすることで、一気に燃焼が進むことなく、且つ、全通路面積の約半分を占める三次空気通路9から噴出して中心軸Y方向に向かう流れが、火炎外側に形成される燃焼ガスの循環流を促進する(排ガス再循環する)ことにより、緩慢な燃焼となり、また、二次空気通路8がガスポート4bの数に応じて放射状に分割配置されているため分割火炎を促進し、更に、ガスノズル4の先端部は、保炎板のようなガスの流れを遮るものが無く、ストレートな筒状で保炎し難い構造であるため、局所的な高温部も発生しないためNOxの排出量を低減することができる。
【0032】
パイロットバーナ5は、点火用の元混合式バーナであり、ノズル内で燃料ガスPGと燃焼用空気PAとが混合された混合ガスに、内蔵された点火装置11によって点火し、火炎を噴出させる。パイロットバーナ5の燃料ガスPGは、化石燃料(都市ガス13A、プロパンガス等)としてもよいし、水素燃料としてもよい。
【0033】
パイロットバーナ5の噴出口5aは、図1に示されるように送風管2の先端と隣り合って配置されるとともに、図2に示されるように二次空気通路8の隣り合う通孔8aの列間に配置され、且つ、ガスノズル4の中心軸4Yに向けられている。パイロットバーナ5の先端の噴出口5aがメインバーナの火炎に衝突しないように配置されているため、パイロットバーナ5の焼損のおそれがない。従来の化石燃料用のガスバーナでパイロットバーナをこのように配置するとメインバーナへの火移りが悪くなるが、水素燃料は化石燃料に比べて着火性が良い(燃焼範囲が広い)ことと、本発明に係る先混合式水素ガスバーナの上記構成を採用することにより、燃焼用空気が三次空気通路9の側から一次空気通路の側へ巻込むような流れが生じるため、パイロットバーナ5の火炎が整流板3に沿い、ガスポート4bの近傍で火炎を形成するため火移りが良くなるため、本発明におけるパイロットバーナ5の配置構成が実現できる。
【0034】
パイロットバーナ5は、図示例のように、ウィンドボックス6の空気供給口6aと送風管2の軸線(ガスノズル4の中心軸4Yと一致する。)を挟んで反対側に配設されることが好ましい。ウィンドボックス6内の空気の編流により、燃焼用空気Aの三次空気通路9側から一次空気通路7側へ巻込む流れが強く形成されるためである。
【0035】
整流板3からガスポート4bの中心軸4X迄の距離hと送風管2の内径φDとについて行った流体解析の解析結果を図3図8に示す。図3及び図4はh/φD=25%、図5及び図6はh/φD=30%、図7及び図8はh/φD=35%である。図3図5及び図7は、図2のM-M断面に相当し、図4図6、及び図8は、図2のN-N断面に相当する。図3図8の結果から、h/φD=25%になると三次空気の巻込みがガスポートから噴出した水素の流れに干渉してくることにより混合が良化し、整流板の近傍で保炎し始めるため部分的な高温部が生じ、NOxが上昇し、整流板も損傷し易くなることから、h/φD≧25%が好ましい。また、h/φD=35%になると、三次空気の巻込みとガスポートから噴出した水素の流れが離れすぎることで混合が悪化し、水素の未燃分が発生し易くなるため、h/φD≦35%とすることが好ましい。
【0036】
次にメイン燃焼の燃焼負荷を20%について行った流体解析の解析結果を図9及び図10に示す。図9図2のM-M断面に相当し、図10図2のN-N断面に相当する。h/φD=30%とした。図9及び図10の結果は、燃焼負荷を20%迄下げた場合でも、局所的な高温部を発生させることがないため、バーナを赤熱させることによる損傷を防ぎ、NOxの発生も抑制し得ることを示す。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限定解釈されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 先混合型水素ガスバーナ
2 送風管
3 整流板
4 ガスノズル
5 パイロットバーナ
6 ウィンドボックス
7 一次空気通路
8 二次空気通路
9 三次空気通路
HG 水素ガス
A 燃焼用空気

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10