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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024067999
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】真空脱ガス装置の浸漬管
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/10 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
C21C7/10 C
C21C7/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178473
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】原田 滉平
(72)【発明者】
【氏名】牧野 正隆
【テーマコード(参考)】
4K013
【Fターム(参考)】
4K013BA07
4K013CA01
4K013CA02
4K013CE01
4K013CE05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の環流ガス配管からの不活性ガスの吐出量のバラツキを低減することによって、内部を環流する溶融鋼の不均一な流れに起因して生ずる還流不足により溶鋼の品質が低下してしまう事態を防止することが可能な真空脱ガス装置の浸漬管を提供する。
【解決手段】浸漬管1の本体2は、芯金3、芯金の内側に設けられた内側耐火物層4、芯金の外側に設けられた外側耐火材層5等によって構成されており、当該本体の外周には、SGP製のパイプからなる16本の環流ガス配管6,6・・が設置されている。また、それらの環流ガス配管の基端は、集合管8に接続されており、その集合管に、不活性ガスを送り込むための3本の導入管9a,9b,9cが接続されている。導入管の総断面積(S1)と、前記集合管の断面積(S2)との比(S1/S2)が0.03以上であることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製で円筒状の芯金の内周および外周に耐火材層が形成されているとともに、前記芯金の外周の耐火材層の内側に、内部を流れる溶鋼に不活性ガスを吐出するための同一の断面積を有する複数の環流ガス配管が付設された真空脱ガス装置の浸漬管であって、
前記各環流ガス配管の基端が、それらの環流ガス配管より断面積の大きい集合管に接続されており、その集合管に、不活性ガスを送り込むための導入管が2本以上接続されているとともに、
それらの導入管の総断面積(S)と、前記集合管の断面積(S)との比(S/S)が0.03以上であることを特徴とする真空脱ガス装置の浸漬管。
【請求項2】
前記導入管の断面積の和が1,000mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の真空脱ガス装置の浸漬管。
【請求項3】
前記各環流ガス配管が、基端を前記集合管の長手方向に沿って直線状に、かつ、等間隔に配置させた状態で集合管に接続されているとともに、
前記各導入管が、先端を前記集合管の中心軸に対して前記各環流ガス配管の基端と反対側に位置させた状態で集合管に接続されていることを特徴とする請求項1、または2に記載の真空脱ガス装置の浸漬管。
【請求項4】
前記各導入管の内の最も外側に位置したものから前記集合管の端縁までの長さと、前記各導入管同士の間隔の半分の長さとが等しくなっていることを特徴とする請求項3に記載の真空脱ガス装置の浸漬管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空脱ガス装置等に用いられる溶鋼処理用の浸漬管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼の二次精錬の工程においては、真空脱ガス装置(真空脱ガス炉)を利用して、真空炉部分の下部に連設された一対の環流管の下側に、それぞれ浸漬管を接続し、それらの浸漬管を取鍋内の溶融鋼中へ浸漬し、上昇管として機能する片側の浸漬管に設けた環流ガス配管から不活性ガスを上昇管の内部へ吹き込みながら、溶鋼を循環させることによって、脱ガス処理が行われる。
【0003】
かかる浸漬管としては、特許文献1の如く、鉛直軸に沿った円筒状の芯金と、その芯金の内側に複数の直方体状のレンガを多段に組み付けることによって形成された肉厚な円筒状のレンガ層(内側耐火物層)と、流動性を有する不定形耐火物を固化させることによって芯金の外周に形成された肉厚な円筒状の不定形耐火物層(外側耐火物層)とを備えたものが知られている。
【0004】
また、真空脱ガス装置において効率良く溶融鋼の脱ガス処理を行うためには、不活性ガスによって溶融鋼の均一な流れを形成することが必要である。そのため、特許文献2の如く、不活性ガスの吹き込み口として機能する環流ガス配管が、複数に分割され、それらの環流ガス配管の先端が、内側耐火物層の同一の高さ位置において円周状に等間隔で並ぶように、浸漬管の本体の外周に配置される。さらに、それらの分割された環流ガス配管は、浸漬管を真空脱ガス装置へ装着する際の作業性から、それぞれの基端部分が一個所に集められて、集合管(ヘッダー管)に接続され、当該集合管を介して、外部から不活性ガスを供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-259415号公報
【特許文献2】特開2013-76141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2の如き従来の浸漬管は、集合管への不活性ガスの供給が一箇所しかないので(すなわち、集合管へ不活性ガスを供給する導入管が一本しかないので)、不活性ガスを外部から集合管を介して各環流ガス配管へ供給する際に、各環流ガス配管へ圧力差を生じさせることなく供給することが困難であるため、各環流ガス配管の先端から浸漬管の内部への不活性ガスの吐出量がばらついてしまう。そして、そのように各環流ガス配管の先端からの不活性ガスの吐出量がばらつくと、ガス吐出量の少ない環流ガス配管に溶鋼が侵入して詰まってしまう結果、溶鋼の流れが不均一となって還流不足が起こってしまい、溶鋼の品質が低下する虞がある。
【0007】
本発明の目的は、上記従来の真空脱ガス装置の浸漬管が有する問題点を解消し、外周に設置された複数の環流ガス配管からの不活性ガスの吐出量のバラツキを低減することによって、不均一な溶鋼の流れに起因して生ずる還流不足により溶鋼の品質が低下してしまう事態を防止することが可能な真空脱ガス装置の浸漬管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、金属製で円筒状の芯金の内周および外周に耐火材層が形成されているとともに、前記芯金の外周の耐火材層の内側に、内部を流れる溶鋼に不活性ガスを吐出するための同一の断面積を有する複数の環流ガス配管が付設された真空脱ガス装置の浸漬管であって、前記各環流ガス配管の基端が、それらの環流ガス配管より断面積の大きい集合管に接続されており、その集合管に、不活性ガスを送り込むための導入管が2本以上接続されているとともに、それらの導入管の総断面積(S)と、前記集合管の断面積(S)との比(S/S)が0.03以上であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記導入管の断面積の和が1,000mm以上であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1、または2に記載された発明において、前記各環流ガス配管が、基端を前記集合管の長手方向に沿って直線状に、かつ、等間隔に配置させた状態で集合管に接続されているとともに、前記各導入管が、先端を前記集合管の中心軸に対して前記各環流ガス配管の基端と反対側に位置させた状態で集合管に接続されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載された発明において、前記各導入管の内の最も外側に位置したものから前記集合管の端縁までの長さと、前記各導入管同士の間隔の半分の長さとが等しくなっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の真空脱ガス装置の浸漬管(以下、単に浸漬管という)によれば、集合管内の不活性ガスの圧力が均一で安定したものとなり易いので、外周に設置された複数の環流ガス配管からの不活性ガスの吐出量のバラツキを低減することが可能となるため、内部を環流する溶融鋼の不均一な流れに起因して溶鋼の品質が低下してしまう事態を防止することができる。
【0013】
請求項2に記載の浸漬管によれば、導入管から各環流ガス配管へ導かれる不活性ガスの流れがスムーズなものとなるので、外周に設置された複数の環流ガス配管からの不活性ガスの吐出量のバラツキを効果的に低減することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の浸漬管によれば、導入管から各環流ガス配管へ導かれる不活性ガスの流れがよりスムーズなものとなるため、複数の環流ガス配管からの不活性ガスの吐出量のバラツキを一層効果的に低減することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の浸漬管によれば、導入管から各環流ガス配管へ導かれる不活性ガスの流れがより直線状に近いものとなるため、複数の環流ガス配管からの不活性ガスの吐出量のバラツキをきわめて効果的に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】浸漬管の正面図である。
図2】浸漬管の平面図である。
図3】浸漬管の鉛直断面図(図2におけるA-A線断面図)である。
図4】実施例1の浸漬管のガス分配機構を示す説明図(平面図)である(aは平面図であり、bはaにおけるB-B線断面図である)。
図5】浸漬管を装着した真空脱ガス装置を示す説明図(鉛直断面図)である。
図6】実施例2の浸漬管のガス分配機構を示す説明図(平面図)である(aは平面図であり、bはaにおけるC-C線断面図である)。
図7】比較例1の浸漬管のガス分配機構を示す説明図(平面図)である(aは平面図であり、bはaにおけるD-D線断面図である)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る浸漬管は、内部を流れる溶鋼に不活性ガスを吐出するための同一の断面積を有する複数の環流ガス配管が付設されており、それらの各環流ガス配管の基端が、それらの環流ガス配管より断面積の大きい集合管(ヘッダー管)に接続されているとともに、その集合管に、不活性ガスを送り込むための導入管が2本以上接続されたものである。そして、本発明に係る浸漬管においては、導入管の総断面積(S)と集合管の断面積(S)との比(S/S)が、0.03以上(すなわち、3%以上)であることが必要である。そのように導入管の総断面積と集合管の断面積との比(S/S)を調整することによって、各環流ガス配管からの不活性ガスの吐出量のバラツキを低減することが可能となる。なお、導入管の総断面積と集合管の断面積との比(S/S)は、4%以上であると、より好ましく、5%以上であると、特に好ましい。なお、集合管(ヘッダー管)や導入管の形状や大きさ(径、厚み、長さ等)自体は、特に限定されない。
【0018】
また、本発明に係る浸漬管においては、導入管の断面積の和が(すなわち、総断面積)が1,000mm以上であると好ましい。そのように導入管の総断面積を1,000mm以上にすることによって、各環流ガス配管からの不活性ガスの吐出量のバラツキをより効率的に低減することが可能となる。なお、導入管の総断面積は、1,500mm以上であると、より好ましい。
【0019】
加えて、本発明に係る浸漬管においては、環流ガス配管、集合管、集合管(ヘッダー管)、導入管の材質は、特に限定されず、鋼鉄、ステンレス、合金等の耐熱性の金属で形成されたもの等を好適に用いることができる。また、環流ガス配管としては、先端の部分(浸漬管の本体の内部へ突出させる部分)の材質を他の部分の材質と異ならせたもの(たとえば、先端の部分がSUS管からなり、その他の部分がSGP管からなるもの)等も、好適に用いることができる。
【0020】
以下、本発明に係る浸漬管の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
[実施例1]
<浸漬管の構造>
図1図3は、実施例1の浸漬管を示したものであり、浸漬管1の本体2は、金属によって円筒状に形成された芯金3、その芯金3の内側に設けられた内側耐火物層4、芯金3の外側に設けられた外側耐火材層5等によって構成されている。外側耐火材層5は、不定形耐火材(たとえば、アルミナ-マグネシア質材)を施工することによって肉厚な円筒状に形成されている。また、内側耐火材層4は、耐火材(たとえば、マグネシア-クロム質材)からなる32個の縦長な直方体状の定形耐火物4a,4a・・を組み付けることによって肉厚な円筒状に形成されている(図2参照)。
【0021】
そして、本体2の外周には、所定の内径(3mmφ)を有するSGP製のパイプからなる16本の環流ガス配管6,6・・が設置されている。それらの環流ガス配管6,6・・は、基端の部分を一箇所に集合させており、それらの環流ガス配管6,6・・の基端の部分が集合部7を形成した状態になっている。そして、当該集合部7において、円筒状のヘッダー管(集合管)8に接続された状態になっている。
【0022】
また、各環流ガス配管6,6・・の先端側の部分は、本体2の内部において芯金3の外周に沿うように円弧状に折り曲げられており、先端を、同一の高さ位置において、芯金3の周囲を16等分するように等間隔に配置させた状態になっている。なお、各環流ガス配管6,6・・は、集合部7から先端までの長さが最小になるように屈曲した状態になっている。そして、各環流ガス配管6,6・・の先端は、図2図3の如く、芯金3を貫通し、内側耐火材層4を構成している定形耐火物4a,4a・・の中央(円周方向の中央)を貫通して、本体2の内部に至っている。
【0023】
一方、図4は、環流ガス配管6,6・・の基端の部分を示したものであり、環流ガス配管6,6・・の集合部7に接続されたヘッダー管8は、所定の内径(80mmφ)で所定の長さ有するSGP製で円筒状のパイプ(前後を閉栓したパイプ)によって形成されている。したがって、ヘッダー管8の断面積(S)は、31.2mm になっている。そして、そのヘッダー管8の片側に、各環流ガス配管6,6・・の集合部7が接続されており、ヘッダー管8の長手方向に沿って、各環流ガス配管6,6・・の基端が、等間隔の直線状に、かつ、ヘッダー管8の長手方向に対して直交するように配置された状態になっている。
【0024】
また、ヘッダー管8の各環流ガス配管6,6・・の集合部7との接続部分の反対側(ヘッダー管8の中心軸に対して反対側)には、3本の導入管9a,9b,9cが、ヘッダー管8の長手方向に対して直交するように等間隔に接続されており、各環流ガス配管6,6・・の基端と各導入管9a,9b,9cの先端とが、同一面上に配置された状態になっている。そして、それらの各環流ガス配管6,6・・、ヘッダー管8および導入管9a,9b,9cによって、ガス分配機構Dが構成された状態になっている。
【0025】
各導入管9a,9b,9cは、所定の内径(27.6mmφ)で所定の長さを有するSGP製で円筒状のパイプによって形成されている。そのため、導入管9a,9b,9cの総断面積(S)は、1,795mmになっている。したがって、導入管9a,9b,9cの総断面積(S)とヘッダー管(すなわち、集合管)8の断面積(S)との比(S/S)が0.058(5.8%)になっている。そして、それらの導入管9a,9b,9cを接続したヘッダー管8においては、右側の導入管9aからヘッダー管8の右端までの長さLと、右側の導入管9aから中央の導入管9bまでの距離の半分の長さLとが等しくなっており、左側の導入管9cから環流ガス配管6,6・・の集合部7の左端までの長さLと、左側の導入管9cから中央の導入管9bまでの距離の半分の長さLとが等しくなっている。
【0026】
<浸漬管の作用>
図5は、上記の如く構成された浸漬管1を真空脱ガス装置Mに装着した状態を示したものであり、浸漬管1は、真空脱ガス装置Mの下端際に固着されている環流管Cに接続され、下端際の部分を取鍋P内の溶湯(溶融させた鉄)Sに浸漬させた状態で使用される。そして、そのように設置された浸漬管1,1の内の片方(図5の左側の浸漬管1)は、環流管Cとともに上昇管として機能する。
【0027】
そして、真空脱ガス装置Mにおいては、上部槽および下部槽を真空状態にし、外部のガスタンク等から3本の導入管9a,9b,9cを介して不活性ガス(アルゴンガス等)をヘッダー管8内に送り込むと、送り込まれた不活性ガスが、各環流ガス配管6,6・・の集合部7から先端へと導かれて上昇管である浸漬管1の本体2の内部へと導かれる。そのように各環流ガス配管6,6・・を介して浸漬管1に不活性ガスが吹き込まれると、取鍋P内の溶湯(溶融鋼)が、下部槽側に引き込まれて浸漬管1の本体2の内部を上昇し、その後、下降管(図5における右側の環流管および浸漬管)内を下降して取鍋Pに戻って環流する。かかる環流の過程において、溶湯の脱ガスが行われて外部に排出される。
【0028】
<各環流ガス配管の流量のバラツキの測定>
上記構造を有する実施例1の浸漬管1において、各環流ガス配管6,6・・の流量のバラツキがどの程度になるのかを調べるため、導入管9a,9b,9cから一定の圧力で不活性ガスを導入した場合の各環流ガス配管6,6・・の流量(理論的な流量)を、電子計算機によって計算(シミュレーション)した。なお、計算には、ソルバーとして定常解析用計算プログラム(SimpleFoam)を用い、ソフトウェアとして「OpenFOAM v8(オープンソースソフトウェア)」を使用した。また、計算においては、出口の圧力が一定(0.3MPa)であるものとし、計算条件は、以下の通りとした。
・メッシュ数:約50万
・ガス流量:130Nm/h
・動粘性係数:1.34×10-5/s(20℃におけるArの物性値と同等)
その結果、バラツキを示す標準偏差σの数値は、0.029となり、各環流ガス配管6,6・・の流量のバラツキがきわめて小さくなることが分かった。各環流ガス配管6,6・・の流量の計算結果を、ガス分配機構Dの構造とともに、表1に示す。
【0029】
[実施例2]
<浸漬管の構造>
実施例2の浸漬管は、環流ガス配管6,6・・の基端に設けられたガス分配機構の構造が実施例1の浸漬管1と異なっている。図6は、実施例2の浸漬管のガス分配機構を示したものであり、当該ガス分配機構Dにおいては、2本の導入管10a,10bが所定の距離を隔てて実施例1と同一のヘッダー管8に接続されている。それらの各導入管10a,10bは、所定の内径(41.6mmφ)で所定の長さ有するSGP製で円筒状のパイプによって形成されている。そのため、導入管10a,10bの総断面積は、2,718mmになっている。したがって、10a,10bの総断面積(S)とヘッダー管(すなわち、集合管)8の断面積(S)との比(S/S)が0.087(8.7%)になっている。そして、それらの導入管10a,10bを接続したヘッダー管8においては、右側の導入管10aからヘッダー管8の右端までの長さLと、右側の導入管10aから左側の導入管10bまでの距離の半分の長さLと、左側の導入管10bから環流ガス配管6,6・・の集合部7の左端までの長さLとが等しくなっている。なお、実施例2の浸漬管におけるガス分配機構D以外の構造は、実施例1の浸漬管と同じである。
【0030】
<各環流ガス配管の流量のバラツキの測定>
上記構造を有する実施例2の浸漬管において、各環流ガス配管6,6・・の流量のバラツキがどの程度になるのかを調べるため、実施例1と同様な手法により、導入管10a,10bから一定の圧力で不活性ガスを導入した場合の各環流ガス配管6,6・・の流量を計算した。その結果、バラツキを示す標準偏差σの数値は、0.029となり、各環流ガス配管6,6・・の流量のバラツキがきわめて小さくなることが分かった。各環流ガス配管6,6・・の流量の計算結果を、ガス分配機構Dの構造とともに、表1に示す。
【0031】
[比較例]
<浸漬管の構造>
比較例の浸漬管は、環流ガス配管6,6・・の基端に設けられたガス分配機構の構造が実施例1,2の浸漬管と異なっている。図7は、比較例の浸漬管のガス分配機構を示したものであり、当該ガス分配機構Dにおいては、1本の導入管11のみがヘッダー管8の中央(長手方向の中央)に接続されている。当該導入管11は、所定の内径(27.6mmφ)で所定の長さ有するSGP製で円筒状のパイプによって形成されたものである。そのため、導入管11の総断面積は、598mmになっている。したがって、導入管11の総断面積(S)とヘッダー管(すなわち、集合管)8の断面積(S)との比(S/S)が0.019(1.9%)になっている。なお、比較例の浸漬管におけるガス分配機構D以外の構造は、実施例1,2の浸漬管と同じである。
【0032】
<各環流ガス配管の流量のバラツキの測定>
上記構造を有する比較例の浸漬管において、各環流ガス配管6,6・・の流量のバラツキがどの程度になるのかを調べるため、実施例1と同様な手法により、導入管11から一定の圧力で不活性ガスを導入した場合の各環流ガス配管6,6・・の流量を計算した。その結果、バラツキを示す標準偏差σの数値は、0.123となり、実施例1,2の各環流ガス配管6,6・・の流量のバラツキに比べてかなり大きくなることが分かった。各環流ガス配管6,6・・の流量の計算結果を、ガス分配機構Dの構造とともに、表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
上記した表1から、本発明の要件を満たした実施例1,2の浸漬管は、本発明の要件を満たさない比較例の浸漬管に比べて、各環流ガス配管からの不活性ガスの吐出量のバラツキが非常に小さいことが分かる。したがって、本発明の要件を満たした実施例1,2の浸漬管は、内部を環流する溶融鋼の不均一な流れに起因して溶鋼の品質が低下してしまう事態が起こりにくいことが分かる。
【0035】
<浸漬管の変更例>
本発明に係る浸漬管は、上記した実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、芯金、内側耐火物層、外側耐火物層、環流ガス配管、集合管(ヘッダー管)、導入管等の材質、形状、構造、大きさ等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0036】
たとえば、本発明に係る浸漬管は、上記実施形態の如く、集合管が円筒状であるものに限定されず、角筒状であるもの等に変更することも可能である。また、本発明に係る浸漬管は、上記実施形態の如く、環流ガス配管、集合管(ヘッダー管)および導入管の材質がSGPであるものに限定されず、各環流ガス配管、集合管および導入管の材質を鋼鉄、ステンレスや合金等に変更することも可能である。さらに、本発明に係る浸漬管は、環流ガス配管、集合管および導入管の材質が同一であるものに限定されず、必要に応じて、各環流ガス配管、集合管および導入管の内のいずれかの材質を他のものと異ならせることも可能である。さらに、本発明に係る浸漬管は、上記実施形態の如く、16本の環流ガス配管を設置したものに限定されず、環流ガス配管の本数を、必要に応じて適宜変更することができる。加えて、本発明に係る浸漬管は、上記実施形態の如く、導入管が2本あるいは3本であるものに限定されず、導入管の本数が4本以上であるものに変更することも可能である。
【0037】
加えて、本発明に係る浸漬管は、上記実施形態の如く、内側耐火物層、外側耐火物層がアルミナ-マグネシア質材、マグネシア-クロム質材からなるものに限定されず、内側耐火物層、外側耐火物層の材質を、マグネシア材、マグネシア-カーボン質材、マグネシア-アルミナ-ジルコニア質材、マグネシア-アルミナ-チタニア質材、マグネシア-スピネル質材、アルミナ-クロム質材、アルミナ-カーボン質材、アルミナ-マグネシア-カーボン質材、アルミナ-スピネル-カーボン質材、マグネシア-アルミナ-カーボン質材等の他の耐火材に変更することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る浸漬管は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、溶鋼を二次精錬する際に真空脱ガス装置に装着して上昇管として機能させる部材等として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1・・浸漬管
2・・本体
3・・芯金
4・・内側耐火物層
5・・外側耐火物層
6・・環流ガス配管
7・・集合部
8・・ヘッダー管(集合管)
9(9a,9b,9c),10(10a,10b)・・導入管
,D・・ガス分配機構
M・・真空脱ガス装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7