(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000680
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20231226BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231226BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20231226BHJP
G01R 31/388 20190101ALI20231226BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231226BHJP
B60L 58/16 20190101ALI20231226BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20231226BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/48 P
H01M10/42 P
G01R31/388
H02J7/00 S
H02J7/00 Q
B60L58/16
B60L3/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099518
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003502
【氏名又は名称】弁理士法人芳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 保生
(72)【発明者】
【氏名】小山 和晃
(72)【発明者】
【氏名】堀田 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】永守 由子
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮太
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA23
2G216BA26
2G216CB22
2G216CB44
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA10
5G503EA09
5G503FA06
5G503FA17
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF43
5H030FF44
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BC09
5H125CD04
5H125EE23
5H125EE29
(57)【要約】
【課題】単体でバッテリの劣化診断を行うことができるバッテリパックを提供すること。
【解決手段】バッテリパック40は、ハイブリッドシステム10のモータ2に電力を供給するバッテリ50と、電気回路によりバッテリ50に電気的に接続される抵抗45と、バッテリ50と抵抗45との間における電気回路174に設けられ、バッテリ50と抵抗45との間における電気回路174の開閉を行うスイッチ46と、入力信号86に応じてスイッチ46を閉じる制御を実行し、電流がバッテリ50から抵抗45に向かって流れたときのバッテリ50の電圧変動に基づいてバッテリ50の劣化度合いを診断する制御部85と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッドシステムに搭載されるバッテリパックであって、
前記ハイブリッドシステムのモータに電力を供給するバッテリと、
電気回路により前記バッテリに電気的に接続される抵抗と、
前記バッテリと前記抵抗との間における前記電気回路に設けられ、前記バッテリと前記抵抗との間における前記電気回路の開閉を行うスイッチと、
入力信号に応じて前記スイッチを閉じる制御を実行し、電流が前記バッテリから前記抵抗に向かって流れたときの前記バッテリの電圧変動に基づいて前記バッテリの劣化度合いを診断する制御部と、
を備えたことを特徴とするバッテリパック。
【請求項2】
前記制御部は、前記スイッチを閉じてから所定時間が経過すると、前記スイッチを自動的に開く制御を実行することを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項3】
前記制御部は、前記バッテリの電圧値を検出する内部回路を内蔵することを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項4】
前記バッテリの正極端子と前記抵抗との間における前記電気回路に設けられ、前記正極端子と前記抵抗との間における前記電気回路の開閉を行う正極側コンタクタと、
前記バッテリの負極端子と前記抵抗との間における前記電気回路に設けられ、前記負極端子と前記抵抗との間における前記電気回路の開閉を行う負極側コンタクタと、
をさらに備え、
前記スイッチは、前記正極側コンタクタと前記抵抗との間における前記電気回路および前記負極側コンタクタと前記抵抗との間における前記電気回路の少なくともいずれかに設けられたことを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【請求項5】
前記電気回路に設けられ、前記電気回路を流れる電流値を検出する電流値検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記電流値検出部から取得した電流値に基づいて過電流異常を検出すると、前記スイッチを開く制御を実行するとともに、前記正極側コンタクタおよび前記負極側コンタクタの少なくともいずれかを開く制御を実行することを特徴とする請求項4に記載のバッテリパック。
【請求項6】
前記制御部は、前記電圧変動のデータを蓄積する記憶部を有し、前記記憶部に蓄積された前記データに基づいて前記劣化度合いを診断することを特徴とする請求項1に記載のバッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッドシステムに搭載されるバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータとバッテリとを併用するハイブリッドシステムは、低公害化と化石燃料の省資源化との要求に伴って、産業機械や自動車等のために開発されている。ハイブリッドシステムは、例えば化石燃料を使用し動力を発生する内燃式エンジンと、内燃式エンジンを補助するモータと、モータに電力を供給する例えばリチウムイオン電池等のバッテリと、を備えている。
【0003】
ハイブリッドシステムでは、例えばリチウムイオン電池を含むバッテリパックが、モータを駆動するための電源として用いられている。リチウムイオン電池では、長期の保管や長期の使用によって満充電容量が減少していく劣化現象が生ずる。例えば、ハイブリッドシステムを有する乗用車等の自動車では、車検の時に、劣化診断装置を用いて定期的にリチウムイオン電池の劣化度合いを容易に診断することができる。
【0004】
しかし、ハイブリッドシステムを有する産業機械では、車検のような定期検査の機会がないので、リチウムイオン電池の劣化度合いの診断を定期的に行うことが困難である。例えば、ハイブリッドシステムを有する産業機械を使用するユーザは、リチウムイオン電池の劣化度合いの診断をユーザ自身で行うためには、別途高価なバッテリ劣化診断装置等のバッテリ評価装置を用意する必要がある。このように、ハイブリッドシステムを有する産業機械においてリチウムイオン電池の劣化度合いの診断を定期的に行うことが困難であるため、リチウムイオン電池の交換をするタイミングがユーザにとって不明確であるという問題がある。
【0005】
特許文献1には、車両用バッテリーのセル劣化診断方法が開示されている。特許文献2には、車両に搭載されたバッテリの劣化状態の判定を、サーバ装置において行うことができるバッテリ状態判定システムおよびバッテリ状態判定方法が開示されている。特許文献3には、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に搭載されるECU(Engine Control Unit:エンジンコントロールユニット)により実現される二次電池の劣化判定装置および劣化判定方法が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載された技術では、バッテリの状態に関する物理量(電流や電圧など)を検出するための制御装置や検出装置などが、車両に搭載されており、バッテリパックとは別に必要である。そのため、バッテリパック単体でバッテリの劣化診断を行うことが困難であるという問題がある。すなわち、バッテリパックがハイブリッドシステムに搭載されている時にしか、バッテリの劣化診断を行うことができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-257372号公報
【特許文献2】特開2021-86654号公報
【特許文献3】国際公開第2011/125213号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、単体でバッテリの劣化診断を行うことができるバッテリパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様は、ハイブリッドシステムに搭載されるバッテリパックであって、前記ハイブリッドシステムのモータに電力を供給するバッテリと、電気回路により前記バッテリに電気的に接続される抵抗と、前記バッテリと前記抵抗との間における前記電気回路に設けられ、前記バッテリと前記抵抗との間における前記電気回路の開閉を行うスイッチと、入力信号に応じて前記スイッチを閉じる制御を実行し、電流が前記バッテリから前記抵抗に向かって流れたときの前記バッテリの電圧変動に基づいて前記バッテリの劣化度合いを診断する制御部と、を備えたことを特徴とするバッテリパックである。
【0010】
本発明の第1態様によれば、抵抗が、バッテリパックに備えられており、電気回路によりバッテリに電気的に接続されている。また、スイッチが、バッテリと抵抗との間における電気回路に設けられており、バッテリと抵抗との間における電気回路の開閉を行う。そのため、スイッチがバッテリと抵抗との間における電気回路を閉じると、電流がバッテリから抵抗に向かって流れる。ここで、バッテリパックに備えられた制御部は、入力信号に応じてスイッチを閉じる制御を実行し、電流がバッテリから抵抗に向かって流れたときのバッテリの電圧変動に基づいてバッテリの劣化度合いを診断する。これにより、本発明の第1態様に係るバッテリパックは、バッテリパック単体でバッテリパックに備えられたバッテリの劣化診断を行うことができる。また、本発明の第1態様に係るバッテリパックは、バッテリパック単体でバッテリの劣化診断を行うことができるため、任意のタイミングで制御部に入力された信号によりバッテリの劣化診断を行うことができ、例えば車検等の定期検査の機会がない場合であっても、バッテリの劣化度合いを任意のタイミングで診断することができる。これにより、バッテリパックに備えられたバッテリの交換タイミングがより明確になる。
【0011】
本発明の第2態様は、本発明の第1態様において、前記制御部は、前記スイッチを閉じてから所定時間が経過すると、前記スイッチを自動的に開く制御を実行することを特徴とするバッテリパックである。
【0012】
本発明の第2態様によれば、制御部は、バッテリの過放電異常の発生を抑えることができる。
【0013】
本発明の第3態様は、本発明の第1態様または第2態様において、前記制御部は、前記バッテリの電圧値を検出する内部回路を内蔵することを特徴とするバッテリパックである。
【0014】
本発明の第3態様によれば、バッテリの電圧値を検出する検出部が別途設けられていなくとも、制御部は、制御部自体が内蔵する内部回路によりバッテリの電圧値を検出することができる。これにより、バッテリパックの構造を簡易化することができ、バッテリパックの小型化を図ることができる。
【0015】
本発明の第4態様は、本発明の第1態様~第3態様のいずれかにおいて、前記バッテリの正極端子と前記抵抗との間における前記電気回路に設けられ、前記正極端子と前記抵抗との間における前記電気回路の開閉を行う正極側コンタクタと、前記バッテリの負極端子と前記抵抗との間における前記電気回路に設けられ、前記負極端子と前記抵抗との間における前記電気回路の開閉を行う負極側コンタクタと、をさらに備え、前記スイッチは、前記正極側コンタクタと前記抵抗との間における前記電気回路および前記負極側コンタクタと前記抵抗との間における前記電気回路の少なくともいずれかに設けられたことを特徴とするバッテリパックである。
【0016】
本発明の第4態様によれば、バッテリと抵抗との間における電気回路の開閉を行うスイッチが、正極側コンタクタと抵抗との間における電気回路および負極側コンタクタと抵抗との間における電気回路の少なくともいずれかに設けられている。そのため、例えば過電流異常などの異常が電気回路に生じた場合であっても、正極側コンタクタおよび負極側コンタクタの少なくともいずれかが開くことで、バッテリからみてスイッチの上流側の電気回路が遮断される。これにより、バッテリパックの安全性を高めることができる。
【0017】
本発明の第5態様は、本発明の第4態様において、前記電気回路に設けられ、前記電気回路を流れる電流値を検出する電流値検出部をさらに備え、前記制御部は、前記電流値検出部から取得した電流値に基づいて過電流異常を検出すると、前記スイッチを開く制御を実行するとともに、前記正極側コンタクタおよび前記負極側コンタクタの少なくともいずれかを開く制御を実行することを特徴とするバッテリパックである。
【0018】
本発明の第5態様によれば、制御部は、電流値検出部から取得した電流値に基づいて過電流異常を検出すると、スイッチを開く制御を実行する。さらに、制御部は、電流値検出部から取得した電流値に基づいて過電流異常を検出すると、正極側コンタクタおよび負極側コンタクタの少なくともいずれかを開く制御を実行する。これにより、例えばスイッチが溶着して開くことができない場合であっても、制御部は、正極側コンタクタおよび負極側コンタクタの少なくともいずれかを開くことで電気回路をより確実に遮断できる。これにより、バッテリパックの安全性をより一層高めることができる。
【0019】
本発明の第6態様は、本発明の第1態様~第5態様のいずれかにおいて、前記制御部は、前記電圧変動のデータを蓄積する記憶部を有し、前記記憶部に蓄積された前記データに基づいて前記劣化度合いを診断することを特徴とするバッテリパックである。
【0020】
本発明の第6態様によれば、制御部は、記憶部に蓄積されたバッテリの電圧変動のデータに基づいて劣化度合いを診断するため、バッテリの劣化度合いをより高い精度で推定することができ、バッテリの交換タイミングをより明確にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、単体でバッテリの劣化診断を行うことができるバッテリパックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るバッテリパックが搭載されたハイブリッドシステムを表すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係るバッテリパックが実行するバッテリ劣化診断の動作例を表すフローチャートである。
【
図3】電流がバッテリから抵抗に向かって流れたときのバッテリの電圧変動の挙動例を示すグラフである。
【
図4】バッテリの使用年数に応じたバッテリの劣化度合いの推移例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るバッテリパックが搭載されたハイブリッドシステムを表すブロック図である。
図1に表したハイブリッドシステム10は、エンジン1と、モータジェネレータ2と、バッテリパック40と、を備える。本実施形態のモータジェネレータ2は、本発明の「モータ」の一例である。
【0025】
エンジン1は、例えばターボチャージを有する過給式の高出力な3気筒エンジンや4気筒エンジン等の多気筒ディーゼルエンジンである。但し、エンジン1は、ディーゼルエンジンに限定されるわけではない。エンジン1は、ECU(Engine Control Unit:エンジンコントロールユニット)150を有する。ECU150は、エンジン1の動作を制御するとともに、例えばCAN(Controller Area Network)によりモータジェネレータ2と通信を行いモータジェネレータ2を制御する。
【0026】
モータジェネレータ2は、ハイブリッドシステム10が搭載される産業機械等の発進時や加速時などパワーが必要な時に、バッテリパック40から供給される電力により稼動しエンジン1をサポートする。なお、ハイブリッドシステム10は、例えばフォークリフト等の建設機械およびトラクタ等の農業機械を含む産業機械等に搭載される。また、モータジェネレータ2は、回生ブレーキなどを利用し、ハイブリッドシステム10が搭載される産業機械等の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する。モータジェネレータ2は、インバータを内蔵している。但し、インバータは、必ずしもモータジェネレータ2に内蔵されていなくともよく、モータジェネレータ2とは別体として設けられていてもよい。
【0027】
バッテリパック40は、バッテリ50と、抵抗45と、スイッチ46と、BMU(Battery Management Unit:バッテリマネージメントユニット)85と、を有する。バッテリ50は、モータジェネレータ2の駆動電源として設けられ、モータジェネレータ2に電力を供給する。バッテリ50は、正極端子51と、負極端子52と、を有する。バッテリ50としては、例えば48Vの高電圧型のリチウムイオン電池(LiB)などが挙げられる。但し、バッテリ50は、リチウムイオン電池に限定されるわけではない。また、バッテリ50の電圧は、48Vに限定されるわけではなく、48V以上であってもよい。
【0028】
抵抗45は、電気回路によりバッテリ50に電気的に接続されている。具体的には、
図1に表したように、抵抗45は、バッテリ50の正極端子51に接続された正極配線174に接続されているとともに、バッテリ50の負極端子52に接続された負極配線175に接続されている。つまり、正極配線174は、バッテリ50の正極端子51と抵抗45とを電気的に接続する配線である。負極配線175は、バッテリ50の負極端子52と抵抗45とを電気的に接続する配線である。なお、モータジェネレータ2は、正極配線174から分岐した正極分岐配線176に接続されるとともに、負極配線175から分岐した負極分岐配線177に接続される。つまり、
図1に表したように、抵抗45およびモータジェネレータ2がバッテリ50に接続される電気回路は、並列回路を構成する。
【0029】
抵抗45は、BMU85がバッテリ50の劣化度合いを診断するときにバッテリ50を放電させるため、すなわちバッテリ50から電流を流すために用いられる。この詳細については、後述する。本実施形態のBMU85は、本発明の「制御部」の一例である。
【0030】
スイッチ46は、バッテリ50と抵抗45との間における電気回路に設けられている。具体的には、
図1に表したように、スイッチ46は、正極配線174に設けられている。つまり、バッテリ50と抵抗45との間における電気回路は、正極配線174を含む。より具体的には、スイッチ46は、正極側コンタクタ75と抵抗45との間における正極配線174に設けられている。なお、スイッチ46は、負極配線175に設けられていてもよい。この場合には、バッテリ50と抵抗45との間における電気回路は、負極配線175を含む。より具体的には、スイッチ46は、負極側コンタクタ76と抵抗45との間における負極配線175に設けられていてもよい。
【0031】
スイッチ46は、信号線185によりBMU85に電気的に接続されており、BMU85から信号線185を通して送信される制御信号に基づいて、バッテリ50と抵抗45との間における電気回路すなわち正極配線174の開閉を行う。
【0032】
バッテリパック40は、正極側コンタクタ75と、負極側コンタクタ76と、電流値検出部65と、ヒューズ95と、をさらに有する。正極側コンタクタ75は、バッテリ50の正極端子51と抵抗45との間における電気回路すなわち正極配線174に設けられている。正極側コンタクタ75は、信号線181によりECU150に電気的に接続されており、ECU150から信号線181を通して送信される制御信号に基づいて正極配線174の開閉を行う。
【0033】
なお、正極側コンタクタ75は、BMU85に電気的に接続されていてもよい。この場合には、正極側コンタクタ75は、BMU85から送信される制御信号に基づいて正極配線174の開閉を行う。
【0034】
負極側コンタクタ76は、バッテリ50の負極端子52と抵抗45との間における電気回路すなわち負極配線175に設けられている。負極側コンタクタ76は、信号線182によりBMU85に電気的に接続されており、BMU85から信号線182を通して送信される制御信号に基づいて負極配線175の開閉を行う。
【0035】
なお、負極側コンタクタ76は、ECU150に電気的に接続されていてもよい。この場合には、負極側コンタクタ76は、ECU150から送信される制御信号に基づいて負極配線175の開閉を行う。
【0036】
BMU85は、信号線183によりバッテリ50に電気的に接続されており、バッテリ50から信号線183を通して送信される信号に基づいてバッテリ50の電圧値を検出する。具体的には、BMU85は、BMU85自体に内蔵された内部回路を用いて、バッテリ50に内蔵された各セルの電圧値を検出し、各セルの電圧値の総和をバッテリ50の電圧値として検出する。BMU85は、バッテリ50の状態を監視しており、バッテリ50から信号線183を通して送信される信号に基づいてバッテリ50の異常を検出することができる。例えば、BMU85は、バッテリ50から信号線183を通して送信される信号に基づいてバッテリ50の電圧値を検出し、過充電異常および過放電異常を検出する。
【0037】
BMU85は、信号線184により電流値検出部65に電気的に接続されており、信号線184を通して電流値検出部65から電流値を取得する。電流値検出部65は、正極配線174に設けられており、正極配線174を流れる電流値を検出する。つまり、BMU85は、正極配線174を流れる電流値を、信号線184を通して電流値検出部65から取得する。BMU85は、信号線184を通して電流値検出部65から取得した電流値に基づいて過電流異常を検出する。あるいは、BMU85は、CMU(Cell Management Unit:セルマネージメントユニット;図示せず)から取得したセル温度に基づいて過温度異常を検出する。
【0038】
また、BMU85は、信号線193によりECU150に電気的に接続され、ECU150から信号線193を通して送信される制御信号に基づいて負極側コンタクタ76を制御する。ECU150およびBMU85は、例えばCANにより互いに通信し互いの状態を監視する。
BMU85は、記憶部851を有する。
【0039】
ヒューズ95は、電流値検出部65と正極側コンタクタ75との間における正極配線174に設けられている。ヒューズ95は、過電流が正極配線174に流れると、電気回路すなわち正極配線174を遮断する。
【0040】
ここで、バッテリパックが産業機械に搭載される場合には、車検のような定期検査の機会がないため、バッテリ(例えばリチウムイオン電池)の劣化度合いの診断を定期的に行うことが困難である。そのため、バッテリの交換をするタイミングがユーザにとって不明確である。また、バッテリの状態に関する物理量(電流や電圧など)がバッテリパックとは異なる別の制御装置や検出装置によって検出される場合には、バッテリパック単体でバッテリの劣化診断を行うことが困難である。例えば、バッテリパックがハイブリッドシステムに搭載されている時にしか、バッテリの劣化診断を行うことができない。
【0041】
これに対して、本実施形態に係るバッテリパック40のBMU85は、バッテリ50の劣化診断指示に関する入力信号86に応じてスイッチ46を閉じる制御を実行する。入力信号86は、CANやアナログスイッチなどにより任意のタイミングでサービスマンあるいはユーザからBMU85に入力される。「任意のタイミング」の例としては、例えば、バッテリパック40が工場から出荷される前の生産工程あるいは検査工程におけるタイミングが挙げられる。また、「任意のタイミング」の例としては、例えば、バッテリパック40がハイブリッドシステム10に組み込まれて実機に搭載された後の定期検査あるいは不定期検査のタイミングが挙げられる。
【0042】
なお、バッテリパック40が実機に搭載された後における「任意のタイミング」は、モータジェネレータ2が稼動していないタイミングであることが望ましい。これによれば、
BMU85は、バッテリ50の電圧が比較的安定したタイミングで、バッテリ50の劣化度合いを診断することができる。これにより、BMU85は、より安定的に、より高い精度で、バッテリ50の劣化度合いを診断することができる。
【0043】
続いて、BMU85がスイッチ46を閉じてから所定時間が経過すると、BMU85は、スイッチ46を自動的に開く制御を実行する。「所定時間」は、例えば約8秒以上、12秒以下程度である。但し、「所定時間」は、8秒以上、12秒以下に限定されるわけではない。続いて、BMU85は、電流がバッテリ50から抵抗45に向かって流れたときのバッテリ50の電圧変動に基づいてバッテリ50の劣化度合いを診断する。なお、BMU85がバッテリ50の劣化度合いを診断するタイミングは、必ずしもBMU85がスイッチ46を開いた後でなくともよく、BMU85がスイッチ46を開く前であってもよい。すなわち、BMU85は、スイッチ46を閉じているときに、バッテリ50の劣化度合いを診断してもよい。
本実施形態のバッテリ劣化診断シーケンスは、BMU85の記憶部851に予め記憶されている。
【0044】
次に、本実施形態に係るバッテリパック40がバッテリ50の劣化度合いを診断する動作例を、図面を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係るバッテリパックが実行するバッテリ劣化診断の動作例を表すフローチャートである。
図3は、電流がバッテリから抵抗に向かって流れたときのバッテリの電圧変動の挙動例を示すグラフである。
図4は、バッテリの使用年数に応じたバッテリの劣化度合いの推移例を示すグラフである。
【0045】
図2に表したステップS1において、BMU85は、バッテリ50の劣化診断指示に関する信号(すなわち入力信号86:
図1参照)がBMU85に入力されたか否かを判断する。入力信号86がBMU85に入力されるタイミングの例は、
図1に関して前述した通りである。
【0046】
バッテリ50の劣化診断指示に関する信号がBMU85に入力された場合には(ステップS1:YES)、ステップS2において、BMU85は、スイッチ46を閉じる制御を実行する。続いて、ステップS3において、BMU85は、電流値検出部65から取得した電流値に基づいて過電流異常を検出したか否かを判断する。
【0047】
BMU85は、電流値検出部65から取得した電流値に基づいて過電流異常を検出した場合には(ステップS3:YES)、ステップS7において、スイッチ46を開く制御を実行するとともに、正極側コンタクタ75および負極側コンタクタ76の少なくともいずれかを開く制御を実行する。これにより、BMU85は、電気回路をより確実に遮断できる。例えば、スイッチ46が溶着して開くことができない場合であっても、BMU85は、正極側コンタクタ75および負極側コンタクタ76の少なくともいずれかを開くことで電気回路をより確実に遮断できる。これにより、バッテリパック40の安全性をより一層高めることができる。
【0048】
一方で、BMU85が過電流異常を検出しない場合には(ステップS3:NO)、ステップS4において、BMU85は、スイッチ46を閉じてから所定時間が経過したか否かを判断する。「所定時間」は、
図1に関して前述した通り、例えば約8秒以上、12秒以下程度である。但し、「所定時間」は、8秒以上、12秒以下に限定されるわけではない。
【0049】
BMU85がスイッチ46を閉じてから所定時間が経過していない場合には(ステップS4:NO)、BMU85は、ステップS3に関して前述した処理を実行する。
一方で、BMU85がスイッチ46を閉じてから所定時間が経過した場合には(ステップS4:YES)、ステップS5において、BMU85は、スイッチ46を自動的に開く制御を実行する。
【0050】
続いて、ステップS6において、BMU85は、電流がバッテリ50から抵抗45に向かって流れたときのバッテリ50の電圧変動に基づいてバッテリ50の劣化度合いを診断する。
【0051】
例えば
図3に表したように、電流がバッテリ50から抵抗45へ向かって所定時間だけ流れると、BMU85により検出されるバッテリ50の電圧値が変動する。BMU85は、電流がバッテリ50から抵抗45へ向かって流れたときのバッテリ50の電圧変動データをマップM1として記憶部851に蓄積する。
【0052】
図3に例示したマップM1では、SOH(State Of Health)100%のバッテリ50のセル電圧の例と、SOH95%のバッテリ50のセル電圧の例と、が表されている。ここで、SOHとは、バッテリの劣化度合い(すなわち、健全度や劣化状態)を示す指標であり、
SOH=劣化時の満充電容量(Ah)/初期の満充電容量(Ah)×100
で表される。すなわち、SOHは、バッテリの初期の満充電容量を100%としたときの、劣化時の満充電容量の割合(容量変化率)である。
【0053】
また、例えば、
図4に示すように、BMU85は、記憶部851に蓄積されたマップM1におけるバッテリ50の電圧変動データに基づいて、バッテリ50の劣化度合いHを推定する。BMU85が推定したバッテリ50の劣化度合いHは、
図4に例示するようにグラフ化される。
図4に例示したグラフでは、縦軸がバッテリの容量変化率(パーセント)を表し、横軸が使用年数を表している。
図4に例示したグラフの縦軸の「容量変化率」は、前述したSOH(State Of Health)に相当する。
【0054】
これにより、サービスマンまたはユーザは、必要に応じて、バッテリパック40に設けられた表示部(図示せず)あるいは外部ディスプレイ等により、バッテリ50の劣化度合いHをグラフ、数値あるいは報知光などとして確認することが可能である。例えば、BMU85は、バッテリ50の容量変化率が予め定められた値以下になった場合に、バッテリ50の交換タイミングを示す表示ランプを点灯させる処理を実行し、バッテリ50の交換タイミングを報知することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係るバッテリパック40によれば、抵抗45が、バッテリパック40に備えられており、電気回路によりバッテリ50に電気的に接続されている。また、スイッチ46が、バッテリ50と抵抗45との間における正極配線174に設けられており、バッテリ50と抵抗45との間における正極配線174の開閉を行う。そのため、スイッチ46がバッテリ50と抵抗45との間における正極配線174を閉じると、電流がバッテリ50から抵抗45に向かって流れる。ここで、バッテリパック40に備えられたBMU85は、入力信号86に応じてスイッチ46を閉じる制御を実行し、電流がバッテリ50から抵抗45に向かって流れたときのバッテリ50の電圧変動に基づいてバッテリ50の劣化度合いを診断する。これにより、本実施形態に係るバッテリパック40は、バッテリパック40単体でバッテリパック40に備えられたバッテリ50の劣化診断を行うことができる。また、本実施形態に係るバッテリパック40は、バッテリパック40単体でバッテリ50の劣化診断を行うことができるため、任意のタイミングでBMU85に入力された信号(すなわち入力信号86)によりバッテリ50の劣化診断を行うことができ、例えば車検等の定期検査の機会がない場合であっても、バッテリ50の劣化度合いを任意のタイミングで診断することができる。これにより、バッテリパック40に備えられたバッテリ50の交換タイミングがより明確になる。
【0056】
また、BMU85は、スイッチ46を閉じてから所定時間が経過すると、スイッチ46を自動的に開く制御を実行するため、バッテリ50の過放電異常の発生を抑えることができる。
【0057】
また、本実施形態に係るバッテリパック40によれば、バッテリ50の電圧値を検出する検出部が別途設けられていなくとも、BMU85は、BMU85自体が内蔵する内部回路によりバッテリ50の電圧値を検出することができる。これにより、バッテリパック40の構造を簡易化することができ、バッテリパック40の小型化を図ることができる。
【0058】
また、バッテリ50と抵抗45との間における電気回路の開閉を行うスイッチ46が、正極側コンタクタ75と抵抗45との間における正極配線174および負極側コンタクタ76と抵抗45との間における負極配線175の少なくともいずれかに設けられている。そのため、例えば過電流異常などの異常が電気回路に生じた場合であっても、正極側コンタクタ75および負極側コンタクタ76の少なくともいずれかが開くことで、バッテリ50からみてスイッチ46の上流側の電気回路が遮断される。これにより、バッテリパック40の安全性を高めることができる。
【0059】
また、BMU85は、記憶部851に蓄積されたバッテリ50の電圧変動のデータに基づいて劣化度合いを診断するため、バッテリ50の劣化度合いをより高い精度で推定することができ、バッテリ50の交換タイミングをより明確にすることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0061】
1:エンジン、 2:モータジェネレータ、 10:ハイブリッドシステム、 40:バッテリパック、 45:抵抗、 46:スイッチ、 50:バッテリ、 51:正極端子、 52:負極端子、 65:電流値検出部、 75:正極側コンタクタ、 76:負極側コンタクタ、 85:BMU、 86:入力信号、 95:ヒューズ、 150:ECU、 174:正極配線、 175:負極配線、 176:正極分岐配線、 177:負極分岐配線、 181:信号線、 182:信号線、 183:信号線、 184:信号線、 185:信号線、 193:信号線、 851:記憶部