(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068006
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/69 20200101AFI20240510BHJP
D06F 33/43 20200101ALI20240510BHJP
D06F 105/58 20200101ALN20240510BHJP
【FI】
D06F33/69
D06F33/43
D06F105:58
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178484
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】季 恒
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA02
3B167AA05
3B167AA12
3B167AA15
3B167AB23
3B167AB29
3B167AB32
3B167AB42
3B167AE05
3B167AE07
3B167AE11
3B167BA70
3B167BA74
3B167BA78
3B167HA16
3B167HA22
3B167HA32
3B167HA34
3B167HA53
3B167HA54
3B167HA56
3B167HA57
3B167JA01
3B167JA72
3B167JB03
3B167JB15
3B167JC22
3B167JC24
3B167JC29
3B167KA12
3B167KA18
3B167LA06
3B167LA09
3B167LA10
3B167LA22
3B167LC02
3B167LC08
3B167LC09
3B167LC19
3B167LC20
3B167LC25
3B167LE01
3B167LF30
3B167LG11
(57)【要約】
【課題】ユーザが、洗濯機の使用状況に応じて、適正なタイミングで槽洗浄運転を行え得る洗濯機を提供する。
【解決手段】ドラム式洗濯乾燥機1は、筐体内に配置された外槽と、外槽内に回転可能に配置され、洗濯物が収容されるドラムと、表示部204と、洗濯運転と、槽洗浄液により外槽およびドラムを洗浄する槽洗浄運転とを実行する制御部201と、を備える。制御部201は、洗濯運転が終了する度に、バイオフィルムの生成に影響する運転条件に基づいて、槽洗浄運転を実行するタイミングを決めるための数値を決定し、洗濯運転毎の数値を積算して総数値を求め、総数値が閾値を超えたことに基づいて、槽洗浄運転の実行タイミングが到来したことを知らせる報知を表示部204に行わせる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置された外槽と、
前記外槽内に回転可能に配置され、洗濯物が収容される内槽と、
報知部と、
洗濯運転と、槽洗浄液により前記外槽および前記内槽を洗浄する槽洗浄運転とを実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記洗濯運転が終了する度に、バイオフィルムの生成に影響する運転条件に基づいて、前記槽洗浄運転を実行するタイミングを決めるための数値を決定し、
前記洗濯運転毎の前記数値を積算して総数値を求め、
前記総数値が閾値を超えたことに基づいて、前記槽洗浄運転の実行タイミングが到来したことを知らせる報知を前記報知部に行わせる、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記バイオフィルムの生成に影響する運転条件には、すすぎ工程の回数が含まれ、
前記制御部は、前記すすぎ工程の回数が多いほど前記数値を小さくする、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記バイオフィルムの生成に影響する運転条件には、洗い工程において前記外槽内に溜められた洗剤水の水温が含まれ、
前記制御部は、前記水温が高いほど前記数値を大きくする、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記バイオフィルムの生成に影響する運転条件には、乾燥工程の実行の有無が含まれ、
前記制御部は、前記乾燥工程が実行される場合、前記乾燥工程が実行されない場合に比べて前記数値を小さくする、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項1に記載の洗濯機において、
基礎値と、当該基礎値を調整するための調整値とが記憶される記憶部を、さらに備え、
前記調整値には、洗い工程において前記外槽内に溜められた洗剤水の水温に応じた複数の第1調整値と、すすぎ工程の回数に応じた複数の第2調整値とが含まれ、
前記制御部は、
実行された前記洗濯運転における前記洗剤水の水温および前記すすぎ工程の回数に基づいて、ぞれぞれ、前記第1調整値および前記第2調整値を決定し、
決定した前記第1調整値および前記第2調整値により前記基礎値を調整して前記数値を求める、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項6】
請求項5に記載の洗濯機において、
前記調整値には、乾燥工程の実行の有無に応じた2つの第3調整値が含まれ、
前記制御部は、
実行された前記洗濯運転における前記乾燥工程の有無に基づいて前記第3調整値を決定し、
決定した前記第3調整値により前記基礎値を調整して前記数値を求める、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の洗濯機において、
前記制御部は、実行された前記槽洗浄運転の回数が増加するに従い、前記閾値を小さくする、
ことを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関する。洗濯機は、洗濯物の洗濯を行う機能のみを備えていてもよく、洗濯の機能に加えて洗濯物の乾燥を行う機能を備えていてもよい。乾燥機能を有する洗濯機は、洗濯乾燥機と称され得る。
【背景技術】
【0002】
従来、外槽と、外槽内に配置された内槽(縦軸型の洗濯脱水槽、横軸型のドラム)とを、専用の槽洗浄クリーナを用いて洗浄する槽洗浄運転を実行可能な洗濯機が知られている。槽洗浄運転が実行されることにより、内槽の外壁面や外槽の内壁面に付着した黒カビ、洗剤カス等が除去される。
【0003】
特許文献1には、洗濯機の運転回数が予め定められた回数に達したときに、清掃ランプによる表示を行うことにより、使用者が、その表示に気づいて槽洗浄コースの運転を実行できるようにした洗濯機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
黒カビは、外槽や内槽において、洗剤カスや汚れの付着よりバイオフィルムが生成され、当該バイオフィルムが栄養とされることにより繁殖し得る。バイオフィルムの生成状況や黒カビの発生状況は、洗濯機の使用状況、即ち、日ごろ、如何なる運転条件により洗濯運転(洗濯乾燥乾燥を含む)が行われているかによって異なってくる。
【0006】
たとえば、洗い工程に用いられる洗剤を含む水(以下、「洗剤水」と称する)が温かい場合、バイオフィルムが生成されやすく、黒カビが発生しやすくなる。一方で、すすぎ工程の回数が多くなると、洗剤カスなどの付着が少なくなるので、バイオフィルムが生成されにくく、黒カビが発生しづらくなる。また、乾燥工程が行われた場合、外槽や内槽が乾燥して湿気が少なくなるので、バイオフィルムが生成されにくく、黒カビが発生しづらくなる。
【0007】
よって、従来のように、洗濯機の使用状況を考慮することなく、運転回数が所定回数に達したときに槽洗浄運転の実行を促す報知が行われるような場合、清掃が必要なほど黒カビ等が発生しているにもかかわらず、ユーザにより槽洗浄運転が行われないことが起こりやすい。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、ユーザが、洗濯機の使用状況に応じて、適正なタイミングで槽洗浄運転を行え得る洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の主たる態様に係る洗濯機は、筐体内に配置された外槽と、前記外槽内に回転可能に配置され、洗濯物が収容される内槽と、報知部と、洗濯運転と、槽洗浄液により前記外槽および前記内槽を洗浄する槽洗浄運転とを実行する制御部と、を備える。ここで、前記制御部は、前記洗濯運転が終了する度に、バイオフィルムの生成に影響する運転条件に基づいて、前記槽洗浄運転を実行するタイミングを決めるための数値を決定し、前記洗濯運転毎の前記数値を積算して総数値を求め、前記総数値が閾値を超えたことに基づいて、前記槽洗浄運転の実行タイミングが到来したことを知らせる報知を前記報知部に行わせる。
【0010】
本態様に係る洗濯機によれば、洗濯機の使用状況によって変化し得るバイオフィルムの生成状況を考慮して槽洗浄運転を実行すべきタイミングが決定され、当該タイミングにおいて、槽洗浄運転の実行タイミングが到来したことを知らせる報知が行われる。よって、ユーザは、洗濯機の使用状況に応じて、適正なタイミングで槽洗浄運転を行うことが可能となる。
【0011】
なお、特許請求の範囲において、「洗濯運転」との文言は、広義の洗濯運転を意味し、洗濯物の洗濯のみを行う洗濯運転と、洗濯物の洗濯に加えて乾燥を行う洗濯乾燥運転とを含んでいる。
【0012】
本態様に係る洗濯機において、前記バイオフィルムの生成に影響する運転条件には、すすぎ工程の回数が含まれ得る。この場合、前記制御部は、前記すすぎ工程の回数が多いほど前記数値を小さくするような構成とされ得る。
【0013】
上記の構成によれば、すすぎ工程の回数が多くなるとバイオフィルムが生成されにくくなることを考慮して、槽洗浄運転を実行すべきタイミングを決めることができる。
【0014】
本態様に係る洗濯機において、前記バイオフィルムの生成に影響する運転条件には、洗い工程において前記外槽内に溜められた洗剤水の水温が含まれ得る。この場合、前記制御部は、前記水温が高いほど前記数値を大きくするような構成とされ得る。
【0015】
上記の構成によれば、洗剤水の水温が高くなるとバイオフィルムが生成されやすくなることを考慮して、槽洗浄運転を実行すべきタイミングを決めることができる。
【0016】
本態様に係る洗濯機において、前記バイオフィルムの生成に影響する運転条件には、乾燥工程の実行の有無が含まれ得る。この場合、前記制御部は、前記乾燥工程が実行される場合、前記乾燥工程が実行されない場合に比べて前記数値を小さくするような構成とされ得る。
【0017】
上記の構成によれば、乾燥工程が実行される場合には乾燥工程が実行されない場合に比べてバイオフィルムが生成されやすくなることを考慮して、槽洗浄運転を実行すべきタイミングを決めることができる。
【0018】
本態様に係る洗濯機において、基礎値と、当該基礎値を調整するための調整値とが記憶される記憶部を、さらに備えるような構成が採られ得る。この場合、前記調整値には、洗い工程において前記外槽内に溜められた洗剤水の水温に応じた複数の第1調整値と、すすぎ工程の回数に応じた複数の第2調整値とが含まれ得る。そして、前記制御部は、実行された前記洗濯運転における前記洗剤水の水温および前記すすぎ工程の回数に基づいて、ぞれぞれ、前記第1調整値および前記第2調整値を決定し、決定した前記第1調整値および前記第2調整値により前記基礎値を調整して前記数値を求めるような構成とされ得る。
【0019】
上記の構成によれば、バイオフィルムの生成に影響する洗剤水の水温およびすすぎ工程の回数に応じてそれぞれ決定された第1調整値および第2調整値により基礎値が調整されて数値が求められる結果、バイオフィルムの生成状況を的確に反映させた、槽洗浄運転を実行すべきタイミングの決定を行うことが可能となる。
【0020】
上記の構成とされた場合、さらに、前記調整値には、乾燥工程の実行の有無に応じた2つの第3調整値が含まれ得る。この場合、前記制御部は、実行された前記洗濯運転における前記乾燥工程の有無に基づいて前記第3調整値を決定し、決定した前記第3調整値により前記基礎値を調整して前記数値を求めるような構成とされ得る。
【0021】
このような構成とされれば、バイオフィルムの生成に影響する第3調整値により基礎値が調整されて数値が求められる結果、バイオフィルムの生成状況を的確に反映させた、槽洗浄運転を実行すべきタイミングの決定を行うことが可能となる。
【0022】
本態様に係る洗濯機において、前記制御部は、実行された前記槽洗浄運転の回数が増加するに従い、前記閾値を小さくするような構成とされ得る。
【0023】
上記の構成によれば、槽洗浄運転の回数が増加するに従って槽洗浄運転により除去できなかった黒カビ等が内槽や外槽に残っていき、清掃が必要な汚れ状態になる期間が短くなっていっても、それに対応して、槽洗浄運転の実行タイミングの到来を知らせる報知を行うタイミングを早くできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ユーザが、洗濯機の使用状況に応じて、適正なタイミングで槽洗浄運転を行え得る洗濯機を提供できる。
【0025】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る、ドラム式洗濯乾燥機の構成を模式的に示す側面断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る、ドラム式洗濯乾燥機の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る、点数表の構成を示す図である。
【
図4】
図4(a)および(b)は、実施の形態に係る、槽洗浄タイミング通知機能のために制御部が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る、槽洗浄タイミング通知機能のために制御部が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、変更例1に係る、槽洗浄タイミング通知機能のために制御部が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の洗濯機の一実施形態であるドラム式洗濯乾燥機について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、ドラム式洗濯乾燥機1の構成を模式的に示す側面断面図である。
【0029】
ドラム式洗濯乾燥機1は、方形箱状の筐体10を備える。筐体10の前面には、洗濯物が投入される円形の投入口11が形成される。投入口11は、開閉自在なドア12により覆われる。
【0030】
筐体10内には、外槽20が配置される。外槽20は、複数のダンパー21とスプリング22とにより弾性的に支持される。外槽20内には、ドラム23が回転自在に配置される。ドラム23は、水平軸の周りに回転する。ドラム23は、前面に円形の開口部23aを有する。投入口11および開口部23aを通じてドラム23内に洗濯物が投入される。ドラム23は、本発明の内槽に相当する。
【0031】
外槽20は、ドラム23の開口部23aの前方に、図示しない水封用のパッキンを介して投入口11に繋がる円形の開口部20aを有する。
【0032】
ドラム23の周面壁には、多数の脱水孔23bが形成される。また、ドラム23内には、周面壁に、洗濯物を掻き揚げるためのバッフル24が設けられる。なお、ドラム23は、横軸型であれば、水平方向に対して傾斜した回転軸の周りに回転するものであってもよい。
【0033】
外槽20の後方には、ドラム23を回転させるためのトルクを発生させる駆動モータ30が配置される。駆動モータ30は、たとえば、アウターロータ型のDCブラシレスモータである。駆動モータ30は、洗い工程、すすぎ工程および乾燥工程時には、ドラム23内の洗濯物に加わる遠心力が重力より小さく、洗濯物がタンブリングする回転数でドラム23を回転させる。一方、駆動モータ30は、脱水工程時には、ドラム23内の洗濯物に加わる遠心力が重力よりはるかに大きく、洗濯物がドラム23の周面壁に張り付く回転数でドラム23を回転させる。
【0034】
外槽20の底部には、排水口20bが形成される。排水口20bには、排水ホース等により構成される排水路40が接続される。排水路40には、排水バルブ41と排水フィルタ42が設けられる。排水バルブ41は、たとえば、バルブと、バルブを開閉させるトルクモータとを含む。
【0035】
排水バルブ41が開放されると、外槽20内に溜められた水が排水路40を通じて機外に排出される。排水フィルタ42により、排水に含まれるリント等の異物が捕獲される。
【0036】
筐体10内の上部には、給水部50が配置される。給水部50は、給水バルブ51と、給水路52とを含む。給水路52は、一端が給水バルブ51に接続され、他端が外槽20の背面に設けられた注水口20cに接続される。給水バルブ51が開放されると、水道栓からの水道水が給水路52を流れて注水口20cから外槽20内に供給される。
【0037】
なお、給水部50は、液体洗剤や液体柔軟剤を外槽20内に自動投入する自動投入装置を含んでもよい。自動投入装置は、たとえば、液体洗剤や液体柔軟剤が貯められる液剤タンクと、液剤タンク内の液体洗剤や液体柔軟剤を給水路52内に送り出すポンプとを含む。この場合、給水路52内へ排出された液体洗剤や液体柔軟剤が給水路52を流れる水により外槽20内へ送られる。
【0038】
外槽20内の底部には、ヒータ60が配置される。ヒータ60は、外槽20内に溜められた水を加熱することにより、水温を上昇させる。
【0039】
筐体10内の上部には、加熱された空気、即ち温風によりドラム23内の洗濯物を乾燥させるための乾燥装置100が配置される。乾燥装置100は、循環路110と、送風器120と、第1熱交換器131と、第2熱交換器132と、を備える。
【0040】
循環路110は、空気が流れる風路であり、外槽20に接続される。循環路110は、導出ダクト111と、ファンケーシング112と、熱交換器ハウジング113と、導入ダクト114とを含む。循環路110は、筐体10内において、外槽20の上方に配置される。
【0041】
導出ダクト111は、一端が外槽20の背面に設けられた排気口20dに接続され、他端がファンケーシング112の吸込口に接続される。排気口20dは、外槽20の周面後部に設けられてもよい。
【0042】
熱交換器ハウジング113は、前後方向に長い箱状を有し、外槽20の上方であって、ファンケーシング112の前方に配置される。熱交換器ハウジング113は、後端がファンケーシング112の吐出口に接続される。導入ダクト114は、熱交換器ハウジング113の前端から延びて、外槽20の前上部に形成された導入口20eに接続される。
【0043】
送風器120は、たとえば、遠心ファンであり、ファンケーシング112内に収容されたファン121と、ファン121を回転駆動するためのファンモータ122とを含む。送風器120は、外槽20と循環路110との間で空気を循環させる。排気口20dを通じて外槽20内から排出された空気は、導出ダクト111、ファンケーシング112、熱交換器ハウジング113、導入ダクト114の順に循環路110内を流れ、導入口20eを通じて外槽20内に戻る。
【0044】
第1熱交換器131および第2熱交換器132は、それぞれ、熱交換器ハウジング113内の上流側および下流側に配置される。第1熱交換器131および第2熱交換器132は、それぞれ、蒸発器(冷却器)および凝縮器(加熱器)であり、ヒートポンプ装置130に含まれる。
【0045】
ヒートポンプ装置130は、第1熱交換器131および第2熱交換器132の他、コンプレッサ133と、冷媒循環路134と、減圧器135とを含む。コンプレッサ133は、冷媒を圧縮する。冷媒循環路134は、第1熱交換器131および第2熱交換器132と、コンプレッサ133との間を接続し、冷媒を循環させる。減圧器135は、たとえば、膨張弁であり、冷媒循環路134の第1熱交換器131と第2熱交換器132との間に配置され、冷媒を減圧する。
【0046】
コンプレッサ133が動作すると、コンプレッサ133で圧縮されて高温高圧となった冷媒が第2熱交換器132へと流れる。第2熱交換器132を流れる高温の冷媒との熱交換により循環路110を流れる空気が加熱される。空気により冷やされた冷媒は、減圧器135を通って減圧され、低温低圧となり、第1熱交換器131へと流れる。第1熱交換器131を流れる低温の冷媒との熱交換により循環路110を流れる空気が冷却され、除湿される。空気により温められた冷媒は、コンプレッサ133へと戻る。
【0047】
図2は、ドラム式洗濯乾燥機1の構成を示すブロック図である。
【0048】
ドラム式洗濯乾燥機1は、上述した構成に加え、制御部201と、記憶部202と、操作部203と、表示部204と、水位センサ205と、水温センサ206と、モータ駆動部207と、給水駆動部208と、排水駆動部209と、ファン駆動部210と、コンプレッサ駆動部211と、を備える。
【0049】
操作部203は、機器に対する電源の投入および遮断を行う電源ボタンと、洗濯運転、洗濯乾燥運転等の運転に係る複数のコースの中から任意のコースを選択するためのコース選択ボタンと、運転を開始させるためのスタートボタンと、を含む。操作部203は、ユーザに操作されたボタンに応じた入力信号を制御部201に出力する。
【0050】
表示部204は、LED等の発光素子や液晶パネル等のディスプレイを含み、制御部201からの制御信号に従って、選択されたコースの表示、運転の進行状況の表示、異常の報知などを行う。表示部204は、本発明の報知部に相当する。
【0051】
なお、操作部203および表示部204が、タッチパネルにより、操作表示部として構成されてもよい。この場合、電源ボタン以外の操作ボタンは、ソフトキーとして、操作表示部に表示され得る。
【0052】
水位センサ205は、外槽20内の水位を検出し、水位に応じた水位信号を制御部201に出力する。
【0053】
水温センサ206は、外槽20内に溜められた水の温度を検出し、水温に応じた温度信号を制御部201に出力する。
【0054】
モータ駆動部207は、制御部201からの制御信号に従って、駆動モータ30を駆動する。モータ駆動部207は、駆動モータ30の回転数を検出する回転センサ、インバータ回路等を含み、制御部201により設定された回転数で駆動モータ30が回転するよう、駆動電力を調整する。
【0055】
給水駆動部208は、制御部201からの制御信号に従って、給水バルブ51を駆動する。排水駆動部209は、制御部201からの制御信号に従って、排水バルブ41を駆動する。
【0056】
ファン駆動部210は、制御部201からの制御信号に従って、送風器120のファンモータ122を駆動する。コンプレッサ駆動部211は、制御部201からの制御信号に従って、コンプレッサ133を駆動し、第1熱交換器131および第2熱交換器132を動作させる。
【0057】
記憶部202は、EEPROM、RAM等を含む。記憶部202には、各種コースの運転を実行するためのプログラムが記憶される。また、記憶部202には、これらプログラムの実行に用いられる各種パラメータや各種制御フラグが記憶される。
【0058】
制御部201は、CPU等を含み、操作部203、水位センサ205、水温センサ206等からの各信号に基づいて、記憶部202に記憶されたプログラムに従い、表示部204、モータ駆動部207、給水駆動部208、排水駆動部209、ファン駆動部210、コンプレッサ駆動部211等を制御する。
【0059】
さて、ドラム式洗濯乾燥機1では、ユーザによる操作部203の操作に基づき、制御部201による制御の下、各種コースの洗濯乾燥運転、洗濯運転および乾燥運転が行われる。洗濯乾燥運転では、洗い工程、中間脱水工程、すすぎ工程、最終脱水工程および乾燥工程が順番に行われる。洗濯運転では、洗い工程から最終脱水工程までが行われ、乾燥工程が行われない。乾燥運転では、乾燥工程のみが行われる。運転コースによって、すすぎ工程と中間脱水工程とが2回以上行われる場合がある。
【0060】
洗い工程では、ドラム23内に収容された洗濯物の負荷量に応じた洗い水位まで、外槽20内に洗剤を含む水、即ち洗剤水が溜められ、洗剤水の中に浸された洗濯物が、ドラム23の正回転および逆回転が繰り返されることにより、ドラム23内でタンブリングする。洗濯物の内部まで洗剤水が浸透し、洗剤の力とタンブリングによる機械力とにより洗濯物の汚れが落とされる。
【0061】
すすぎ工程では、外槽20内にすすぎ水位まで水が溜められた状態でドラム23が正回転および逆回転し、ドラム23内で洗濯物がタンブリングする。これにより、洗濯物に含まれた洗剤が水とともに排出され、洗濯物がすすがれる。
【0062】
中間脱水工程および最終脱水工程では、駆動モータ30が一方向に高速回転し、ドラム23が、ドラム23内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転数で一方向に回転する。遠心力の作用により、洗濯物が、ドラム23の周面壁に押し付けられ、脱水される。
【0063】
乾燥工程では、送風器120の動作により外槽20と循環路110との間で空気が循環し、第2熱交換器132の動作により外槽20に導入される空気が加熱され、温風となる。さらに、ドラム23が正回転および逆回転し、ドラム23内で洗濯物がタンブリングする。
【0064】
導入口20eから外槽20およびドラム23内に導入された温風がタンブリングする洗濯物に当たり、洗濯物が乾燥する。洗濯物から水分を奪った温風は、排気口20dから循環路110へ戻る。循環路110内において、温風は、第2熱交換器132で加熱される前に第1熱交換器131を通過して、第1熱交換器131により除湿される。
【0065】
洗濯運転および洗濯乾燥運転の多くの運転コースにおいて、ユーザは、所定の操作により、すすぎ工程の回数を変更できる。さらに、ユーザは、所定の操作により、洗い工程における外槽20内の洗剤水の水温を設定できる。たとえば、ユーザは、水温の設定温度を、20℃、30℃、40℃および50℃の中から選択できる。給水時の水温が設定温度より低い場合、設定温度までヒータ60による加熱が行われる。
【0066】
ドラム式洗濯乾燥機1は、専用の槽洗浄クリーナを含む水を、槽洗浄液として用い、ドラム23および外槽20の洗浄を行う槽洗浄運転を行うことができる。ドラム式洗濯乾燥機1には、槽洗浄運転を実行する槽洗浄コースが、運転コースの一つとして、用意されている。
【0067】
操作部203において、コース選択ボタンにより槽洗浄コースが選択され、スタートボタンが押されると、槽洗浄運転が開始される。このとき、外槽20内には、槽洗浄クリーナが投入されている。
【0068】
給水部50により給水が行われ、外槽20内に最高水位まで槽洗浄液が溜められる。その後、ドラム23が予め設定された槽洗浄時間だけ回転する。これにより、ドラム23の外壁面や外槽20の内壁面が洗浄されて、これら壁面に付着した黒カビ、バイオフィルム等が除去される。槽洗浄時間の経過によりドラム23の回転が停止すると、外槽20内からの排水が行われる。除去された黒カビ等が槽洗浄液とともに機外へ排出される。排水が完了すると、槽洗浄運転が終了する。
【0069】
なお、外槽20内からの排水が完了した後に、所定時間、ドラム23が高速回転されてもよい。これにより、ドラム23に付着した水を切ることができる。さらに、乾燥装置100により温風が、所定時間、外槽20内に供給されてもよい。これにより、ドラム23および外槽20を乾燥させることができる。
【0070】
さらに、ドラム式洗濯乾燥機1は、ユーザに槽洗浄運転の実行タイミングの到来を知らせる槽洗浄タイミング通知機能を備える。
【0071】
図2に示すように、記憶部202には、槽洗浄タイミング通知機能に利用するため、データテーブルである点数表202aが記憶されている。
【0072】
【0073】
槽洗浄タイミング通知機能では、後述するように、洗濯運転または洗濯乾燥運転が終了する度に、槽洗浄運転を実行するタイミングを決めるための点数が算出される。点数表202aには、上記点数の算出に利用するために、基礎点と、基礎点を調整するための調整点とが登録されている。調整点には、洗い工程において外槽20内に溜められた洗剤水の水温に応じた2つの第1調整点と、すすぎ工程の回数、即ちすすぎ回数に応じた5つの第2調整点と、乾燥工程の実行の有無に応じた2つの第3調整点とが含まれる。
【0074】
基礎点は、槽洗浄運転を実行するタイミングを決めるための点数の基礎となる値であり、正の所定値(たとえば、10)とされる。
【0075】
洗剤水の水温の範囲が、基準水温である30℃を境界として2つに分けられる。第1調整点は、水温が30℃未満であれば、相対的に小さい正の所定値(たとえば、+12)となり、水温が30℃以上であれば、相対的に大きな正の所定値(たとえば、+18)となる。即ち、洗剤水の水温が高くなるほど、第1調整点は大きくなる。
【0076】
なお、洗剤水の水温の範囲が3つ以上に分けられることにより、3つ以上の第1調整点が点数表202aに登録されてもい。
【0077】
ドラム式洗濯乾燥機1において実行可能なすすぎ回数は、0回~4回とされている。第2調整点は、0または負の所定値(たとえば、-4,-8,-10,-12)となり、すすぎ回数が多くなるほど、小さな値(大きな負の値)となる。
【0078】
なお、実行可能なすすぎ回数は、4回未満あるいは5回以上とされてもよい。第2調整点の個数は、実行可能なすすぎ回数に合わせられる。
【0079】
第3調整点は、乾燥工程が実行される場合は0の値となり、乾燥工程が実行されない場合は負の所定値(たとえば、-8)となる。即ち、第3調整点は、乾燥工程が実行される場合、乾燥工程が実行されない場合に比べて小さな値となる。
【0080】
なお、基礎点は、本発明の基礎値に相当する。第1調整点、第2調整点および第3調整点は、それぞれ、本発明の第1調整値、第2調整値および第3調整値に相当する。
【0081】
洗い工程に用いられる洗剤水が温かい場合、たとえば、水温が30℃~40℃の場合、バイオフィルムが生成されやすく、黒カビが発生しやすくなる。一方で、すすぎ工程の回数が多くなると、洗剤カスなどの付着が少なくなるので、バイオフィルムが生成されにくく、黒カビが発生しづらくなる。また、乾燥工程が行われた場合、外槽20やドラム23が乾燥して湿気が少なくなるので、バイオフィルムが生成されにくく、黒カビが発生しづらくなる。
【0082】
このように、洗剤水の水温、すすぎ回数および乾燥工程の実行の有無は、バイオフィルムの生成に影響する運転条件である。
【0083】
図4(a)、(b)および
図5は、槽洗浄タイミング通知機能のために制御部201が実行する制御処理を示すフローチャートである。これら3つの制御処理は、ドラム式洗濯乾燥機1に電源が投入されたときに開始され、並行して実行される。
【0084】
図4(a)の制御処理では、洗濯運転または洗濯乾燥運転の終了時に、槽洗浄運転の実行タイミングを決めるための点数が算出され、各運転での点数を積算した総点数が更新される。点数は、本発明の数値に相当し、総点数は、本発明の総数値に相当する。
【0085】
図4(a)を参照して、制御部201は、洗濯運転または洗濯乾燥運転が終了したか否かを監視する(S101)。これら運転の終了には、運転が完了する前にユーザの操作により終了された場合、即ち運転が中止された場合が含まれる。
【0086】
制御部201は、運転中、洗い工程において、外槽20内に溜められた洗剤水の水温を水温センサ206により検出し、記憶部202に記憶させる。このとき、洗剤水の水温が設定されることによりヒータ60が動作する場合は、ヒータ60により加熱された洗剤水の水温が検出される。また、制御部201は、1回のすすぎ工程が終了する都度、カウンタ等により回数をカウントし、その回数を保持する。さらに、制御部201は、乾燥工程が実行されると、フラグをセットするなどして、実行有の情報を記憶する。
【0087】
制御部201は、洗濯運転または洗濯乾燥運転が終了すると(S101:YES)、点数表202aから、基礎点を取得するとともに、運転中に取得した洗剤水の水温、すすぎ回数および乾燥工程の実行の有無に該当する第1調整点、第2調整点および第3調整点を取得する(S102)。そして、制御部201は、基礎点に第1調整点、第2調整点および第3調整点を加算することにより、今回の運転における、槽洗浄運転の実行タイミングを決めるための点数を算出する(S103)。
【0088】
上述の通り、洗剤水の水温が高いほど、第1調整点は大きくなる。また、すすぎ回数が多いほど、第2調整点は小さくなる。さらに、乾燥工程が実行される場合、乾燥工程が行われない場合に比べて第3調整点は小さくなる。
【0089】
よって、制御部201は、洗浄水の水温が高いほど点数を大きくすることになり、すすぎ回数が多いほど点数を小さくすることになる。さらに、制御部201は、乾燥工程が実行される場合、乾燥工程が実行されない場合に比べて点数を小さくすることになる。このため、点数は、バイオフィルムが生成されやすく、黒カビが発生しやすいほど、大きな値をとることになる。
【0090】
次に、制御部201は、運転毎の点数を積算した前回の運転までの総点数に今回の点数を加算することより、総点数を更新する(S104)。そして、制御部201は、更新した総点数を記憶部202に記憶させる(S105)。
【0091】
総点数は、ドラム式洗濯乾燥機1の使用状況によって変化し得るバイオフィルムの生成状況を考慮した値となり、バイオフィルムが生成されやすく、黒カビが発生しやすい状況であるほど、速く増加して、少ない運転回数で大きくなる。
【0092】
【0093】
なお、本実施の形態では、洗濯運転または洗濯乾燥運転が途中で終了された場合でも、終了されるまでの運転条件に基づいて点数が算出される。たとえば、すすぎ工程が全回数終了するまでに運転が終了された場合、運転終了までの行われたすすぎ工程の回数により点数が算出される。また、洗濯乾燥運転が実行されたが、乾燥工程の開始前に運転が終了された場合、乾燥工程の実行無として点数が算出される。このように、途中で終了した運転も、槽洗浄運転の実行タイミングの決定に加味される。
【0094】
図4(b)の制御処理では、洗濯運転または洗濯乾燥運転の開始時に、
図4(a)の制御処理で運転終了ごとに更新される総点数に基づいて、槽洗浄運転の実行タイミングの到来を知らせる報知が行われる。
【0095】
図4(b)を参照して、制御部201は、洗濯運転または洗濯乾燥運転が開始されると(S201:YES)、記憶部202から総点数を読み出す(S202)。そして、制御部201は、総点数が規定点数(たとえば、800点)以上であるか否かを判定する(S203)。規定点数は、実験等を行うことにより予め定められる。規定点数は、本発明の閾値に相当する。
【0096】
制御部201は、総点数が規定点数未満であれば(S203:NO)、
図4(b)の制御処理を終了する。一方、制御部201は、総点数が規定点数以上であれば(S203:YES)、表示部204に、槽洗浄運転の実行タイミングが到来したことを知らせる報知として、槽洗浄サインを表示させる(S204)。表示部204がディスプレイを含む場合、槽洗浄サインは、たとえば、槽洗浄の文字を含むアイコンで構成され、ディスプレイに表示される。
【0097】
槽洗浄サインは、たとえば、運転が終了した後、ドラム式洗濯乾燥機1の電源が遮断されるまで表示され続ける。槽洗浄サインは、運転の途中に消されてもよい。この場合、運転が終了すると、再び、槽洗浄サインが表示されてもよい。
【0098】
なお、表示部204による報知に加えて、図示しないスピーカから音声により、槽洗浄運転の実行タイミングの到来を知らせる報知が行われてもよい。
【0099】
ユーザは、表示部204による報知、即ち槽洗浄サインに気づくことにより、槽洗浄運転を行う必要が生じたことを把握できる。そして、ユーザは、今回の洗濯運転または洗濯乾燥運転が終了すると、槽洗浄運転を行い得る。
【0100】
バイオフィルムが生成されやすく、黒カビが発生しやすいほど、総点数が速く増加し、少ない運転回数で表示部204による報知が行われる。このため、ドラム式洗濯乾燥機1の使用状況が異なっても、ユーザは、適正なタイミングで槽洗浄運転を行うことが可能となる。
【0101】
なお、一度、表示部204による報知が行われれば、その後、槽洗浄運転が行われない限り、毎回、洗濯運転または洗濯乾燥運転が開始されたときに報知が繰り返される。
【0102】
次に、
図5を参照して、制御部201は、槽洗浄運転が実行されたか否かを監視する(S301)。そして、制御部201は、槽洗浄運転が実行されると(S301:YES)、記憶部202に記憶された総点数をリセットして0にする(S302)。槽洗浄運転の実行タイミングの到来を知らせる報知の後に槽洗浄運転が行われた場合だけでなく、当該報知の前に槽洗浄運転が行われた場合も、総点数はリセットされる。
【0103】
次に、制御部201は、
図4(b)の制御処理のステップS203で総点数と比較される規定点数を所定値だけ低減させる(S303)。たとえば、800点であった規定点数が780点に減らされる。
【0104】
槽洗浄運転によりドラム23や外槽20の黒カビ等を完全に除去することは困難である。このため、今回の槽洗浄運転の後は、前回の槽洗浄運転の後よりもドラム23や外槽20に黒カビ等が残った状態となり得る。よって、その後の黒カビ等の発生状況が同じであっても、清掃が必要な状態に早くなり得る。
【0105】
上記のように、規定点数が減らされると、総点数が同じように増加しても早く総点数が規定点数以上となり、それまでよりも短い期間で槽洗浄運転の実行タイミングの到来を知らせる報知が行われる。よって、槽洗浄の回数が増加していくに従い、早く清掃が必要な状態となることに対応して、早いタイミングでユーザに槽洗浄運転を行わせることが可能となる。
【0106】
なお、
図5の制御処理では、槽洗浄運転が1回行われる度に規定点数が減らされるが、槽洗浄運転が所定回数(2回以上の回数)行われる度に規定点数が減らされるようにしてもよい。
【0107】
<実施の形態の効果>
本実施の形態によれば、洗濯運転または洗濯乾燥運転が終了する度に、バイオフィルムの生成に影響する運転条件に基づいて、槽洗浄運転を実行するタイミングを決めるための点数が算出され、運転毎の点数を積算して総点数が求められる。そして、総点数が規定点数以上になったことに基づいて、槽洗浄運転の実行タイミングが到来したことを知らせる報知が表示部204により行われる。
【0108】
この構成によれば、ドラム式洗濯乾燥機1の使用状況によって変化し得るバイオフィルムの生成状況を考慮して槽洗浄運転を実行すべきタイミングが決定され、当該タイミングにおいて、槽洗浄運転の実行タイミングが到来したことを知らせる報知が行われる。よって、ユーザは、ドラム式洗濯乾燥機1の使用状況に応じて、適正なタイミングで槽洗浄運転を行うことが可能となる。
【0109】
さらに、本実施の形態によれば、バイオフィルムの生成に影響する運転条件には、すすぎ工程の回数が含まれる。そして、すすぎ工程の回数が多いほど、槽洗浄運転を実行するタイミングを決めるための点数が小さくされる。
【0110】
この構成によれば、すすぎ工程の回数が多くなるとバイオフィルムが生成されにくくなることを考慮して、槽洗浄運転を実行すべきタイミングを決めることができる。
【0111】
さらに、本実施の形態によれば、バイオフィルムの生成に影響する運転条件には、洗い工程において外槽20内に溜められた洗剤水の水温が含まれる。そして、洗剤水の水温が高いほど、槽洗浄運転を実行するタイミングを決めるための点数が大きくされる。
【0112】
この構成によれば、洗剤水の水温が高くなるとバイオフィルムが生成されやすくなることを考慮して、槽洗浄運転を実行すべきタイミングを決めることができる。
【0113】
さらに、本実施の形態によれば、バイオフィルムの生成に影響する運転条件には、乾燥工程の実行の有無が含まれる。そして、乾燥工程が実行される場合には、乾燥工程が実行されない場合に比べて槽洗浄運転を実行するタイミングを決めるための点数が小さくされる。
【0114】
この構成によれば、乾燥工程が実行される場合には乾燥工程が実行されない場合に比べてバイオフィルムが生成されやすくなることを考慮して、槽洗浄運転を実行すべきタイミングを決めることができる。
【0115】
さらに、本実施の形態によれば、基礎点と、当該基礎点を調整するための調整点とが記憶部202に記憶される。調整点には、洗い工程において外槽20内に溜められた洗剤水の水温に応じた複数の第1調整点と、すすぎ工程の回数に応じた複数の第2調整点と、乾燥工程の実行の有無に応じた2つの第3調整点とが含まれる。そして、実行された洗濯運転または洗濯乾燥運転における洗剤水の水温、すすぎ工程の回数および乾燥工程の有無に基づいて、ぞれぞれ、第1調整点、第2調整点および第3調整点が決定され、決定された第1調整点、第2調整点および第3調整点により基礎点が調整されて槽洗浄運転を実行するタイミングを決めるための点数が算出される。
【0116】
この構成によれば、バイオフィルムの生成に影響する洗剤水の水温、すすぎ工程の回数および乾燥工程の有無に応じてそれぞれ決定された第1調整点、第2調整点および第3調整点により基礎点が調整されて点数が求められる結果、バイオフィルムの生成状況を的確に反映させた、槽洗浄運転を実行すべきタイミングの決定を行うことが可能となる。
【0117】
さらに、本実施の形態によれば、実行された槽洗浄運転の回数が増加するに従い、規定点数が小さくされる。
【0118】
この構成によれば、槽洗浄運転の回数が増加するに従って槽洗浄運転により除去できなかった黒カビ等がドラム23や外槽20に残っていき、清掃が必要な汚れ状態になる期間が短くなっていっても、それに対応して、槽洗浄運転の実行タイミングの到来を知らせる報知を行うタイミングを早くできる。
【0119】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0120】
<変更例1>
図6は、変更例1に係る、槽洗浄タイミング通知機能のために制御部201が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【0121】
上記実施の形態では、
図4(b)に示す制御処理が実行されることにより、洗濯運転または洗濯乾燥運転の開始時に、槽洗浄運転が必要か否かの判定が行われ、その判定結果に基づいて、槽洗浄運転の実行タイミングの到来を知らせる報知が行われる。
【0122】
これに対し、本変更例では、洗濯運転または洗濯乾燥運転の開始時に加え、終了時にも、槽洗浄運転が必要か否かの判定が行われ、その判定結果に基づいて槽洗浄運転の実行タイミングの到来を知らせる報知が行われる。
【0123】
即ち、
図6に示すように、本変更例では、制御部201は、ステップS105において、更新された総点数を記憶部202に記憶させると、その後、総点数が規定点数以上であるか否かを判定する(S111)。そして、制御部201は、総点数が規定点数以上であれば(S111:YES)、表示部204に、槽洗浄運転の実行タイミングの到来を知らせる報知として、槽洗浄サインを表示させる(S112)。
【0124】
このようにすれば、槽洗浄運転が必要となったとき、その回の洗濯運転の終了時に、槽洗浄運転が必要であることをユーザに知らせることができ、ユーザは、次回の洗濯運転の前に槽洗浄運転を行うことができる。
【0125】
<その他の変更例>
上記実施の形態では、点数表202aに、調整点(負の値を含む)として、洗剤水の水温に応じた第1調整点と、すすぎ工程の回数に応じた第2調整点と、乾燥工程の実行の有無に応じた第3調整点とが登録され、基礎点にこれら調整点が加算されることにより、槽洗浄運転の実行タイミングを決めるための点数が算出される。しかしながら。点数表202aに、調整係数(1未満の値を含む)として、洗剤水の水温に応じた第1調整係数と、すすぎ工程の回数に応じた第2調整係数と、乾燥工程の実行の有無に応じた第3調整係数とが登録され、基礎点にこれら調整係数が乗算されることにより、上記点数が算出されるようにしもよい。この場合、第1調整係数、第2調整係数および第3調整係数が、それぞれ、本発明の第1調整値、第2調整値および第3調整値に相当する。
【0126】
さらに、上記実施の形態では、槽洗浄運転を実行するタイミングの決定に、バイオフィルムの生成に影響する運転条件として、洗剤水の水温、すすぎ工程の回数および乾燥工程の実行の有無が考慮される。しかしながら、洗剤水の水温、すすぎ工程の回数および乾燥工程の実行の有無の全ての運転条件が考慮される必要はなく、上記3つの運転条件の中の2つあるいは1つが考慮されるようにしてもよい。この場合、第1調整点、第2調整点および第3調整点のうち、考慮されない運転条件の調整点が、点数表202aから削除される。さらに、上記3つ以外のバイオフィルムの生成に影響する運転条件が槽洗浄運転を実行するタイミングの決定に考慮されてもよい。この場合、新たな運転条件に対応する第4調整点が点数表202aに登録される。
【0127】
さらに、バイオフィルムに影響する運転条件である洗剤水の水温、すすぎ回数および乾燥工程の実行の有無に基づいて、槽洗浄運転を実行するタイミングを決めるための点数を決定する方法は、上記実施の形態のような、基礎点を調整点(第1調整点、第2調整点、第3調整点)により調整して点数を求める方法に限られない。即ち、上記点数を決定する方法は、洗剤水の水温が高いほど上記点数が大きくなり、すすぎ工程の回数が多いほど上記点数が小さくなり、乾燥工程が実行される場合に乾燥工程が実行されない場合に比べて上記点数が小さくなるような方法であれば、他の方法であってもよい。
【0128】
さらに、上記実施の形態において、制御部201が、総点数が規定点数未満である場合に、規定点数と総点数との差分値に基づいて、槽洗浄運転の実行タイミングが到来するまでの洗濯運転の回数を予測し、予測した回数を、表示部204、たとえば、ディスプレイに表示させてもよい。さらに、槽洗浄サインの表示(槽洗浄運転の実行タイミングを知らせる報知)が行われた後も槽洗浄運転が行われることなく洗濯運転が幾度か行われ、総点数が規定点数よりも所定値以上大きくなると、槽洗浄サインを点滅させるなど、より強い報知が行われるようにされてもよい。
【0129】
さらに、上記実施の形態では、槽洗浄運転は、専用の槽洗浄クリーナを用いて槽洗浄を行うものである。しかしながら、ドラム式洗濯乾燥機1は、機器自体が生成した槽洗浄液(オゾン水、次亜塩素酸水等)を用いた槽洗浄運転を行うような構成とされてもよい。たとえば、ドラム式洗濯乾燥機1は、オゾン発生器を備え、オゾン発生器が発生したオゾンを外槽20内に溜められた水あるは給水路52を流れる水に混入させてオゾン水を生成し、生成したオゾン水を槽洗浄運転に用いるような構成とされ得る。
【0130】
さらに、上記実施の形態において、
図4(b)の制御処理により表示部204に槽洗浄サインの表示(槽洗浄運転の実行タイミングを知らせる報知)が行われたときに、槽洗浄運転の実行タイミングなったことを示すフラグがセットされ、その後は、
図4(a)および(b)の制御処理が行われず、洗濯運転等の開始時に、フラグがセットされていることに基づいて、槽洗浄サインの表示が行われるようにされてもよい。この場合、槽洗浄運転が実行されると、フラグがリセットされ、
図4(a)および(b)の制御処理が再開される。
【0131】
さらに、上記実施の形態では、横軸型のドラム23を備えるドラム式洗濯乾燥機1が例示された。しかしながら、本発明は、外槽内に、内槽として、パルセータを有する縦軸型の洗濯脱水槽を備える、いわゆる縦型の洗濯乾燥機(全自動洗濯乾燥機)に適用することもできる。さらに、本発明は、乾燥機能を有しないドラム式洗濯機および縦型の洗濯機(全自動洗濯機)に適用することもできる。
【0132】
ドラム式洗濯機または縦型の洗濯機に、本発明が適用される場合、これら洗濯機は乾燥機能を有さないため、槽洗浄運転を実行するタイミングの決定に乾燥工程の実行の有無が考慮されない。よって、点数表202aから第3調整点が削除される。そして、制御部201は、第1調整値および第2調整値により基礎点を調整して槽洗浄運転を実行するタイミングを決めるための点数を求める。この場合であっても、バイオフィルムの生成に影響する洗剤水の水温およびすすぎ工程の回数に応じてそれぞれ決定された第1調整点および第2調整点により基礎点が調整されて点数が求められる結果、バイオフィルムの生成状況を的確に反映させた、槽洗浄運転を実行すべきタイミングの決定を行うことが可能となる。
【0133】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 ドラム式洗濯乾燥機(洗濯機)
10 筐体
20 外槽
23 ドラム(内槽)
201 制御部
202 記憶部
204 表示部(報知部)