(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068027
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】入浴介護補助装置
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20240510BHJP
A61G 7/10 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61H33/00 310M
A61G7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022186920
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】500527649
【氏名又は名称】村田 鉄雄
(72)【発明者】
【氏名】村田 鉄雄
【テーマコード(参考)】
4C040
4C094
【Fターム(参考)】
4C040AA13
4C040HH02
4C040JJ03
4C040JJ09
4C094AA01
4C094CC03
4C094CC09
4C094DD14
4C094EE20
4C094GG02
4C094GG14
(57)【要約】
【課題】一般家庭の浴室にも簡便に設置して利用することができる汎用性を有すると共に、要介護者及び介護者双方に対して不安感なく浴槽内への入出移送ができるばかりでなく、浴槽内でも自然な着座した状態のままで洗浄することができる入浴介護補助装置を提供する。
【解決手段】浴室の床Gに立設された支柱1と、この支柱1に減速機3を介して回転するように取り付けられた回転軸2と、その一端4aがこの回転軸2に取り付けられた第1アーム体4と、回転軸2と同軸に固定されたプーリー(滑車)5と、第1アーム体4の他端4bに回動可能に軸支された第2アーム体6と、第2アーム体6に折り畳み可能に取り付けられた椅子取付レバー6と、椅子取付レバー6に着脱可能に固定された椅子8とから構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の床に立設された支柱と、この支柱に減速機を介して回転するように取り付けられた回転軸と、その一端がこの回転軸に取り付けられた少なくとも1本のアーム体と、前記回転軸と同軸に固定されたプーリー(滑車)と、前記アーム体の他端に回動可能に軸支された椅子取付レバーと、当該椅子取付レバーに着脱可能に固定された椅子かなる入浴介護補助装置において、前記プーリーに椅子の振止機構を設けたことを特徴とする入浴介護補助装置。
【請求項2】
椅子の振れ止機構が、プーリーの溝条とこの溝条内に出没可能に設けられたロックピンを有するロックレバーとからなることを特徴とする請求項1記載の入浴介護補助装置。
【請求項3】
アーム体がその一端が回転軸に連結される第1のアーム体と、当該第1アーム体の自由端部に垂直方向で回動時自在に連結されると共に、前記プーリーを含み、椅子取付レバーが設けられた第2のアーム体とからなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の入浴介護補助装置。
【請求項4】
座席取付レバーが、折り畳み可能にされていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の入浴介護補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴補助装置に関し、特に、介護を要する病人や高齢者や身体障害者等の要介護者用として好適な入浴介護補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病人、高齢者などの身体障害者で、自力で入浴できない要介護者の入浴補助を行うために、要介護者を吊るして移動させる方法がある。例えば、浴室に、電動チェーン式の昇降と旋回が可能な所謂「ハンモックリフト式」の吊り下げ装置が使用されることがある。しなしながら、こうした吊り下げ式の装置は大仕掛けで設置コストが嵩むばかりでなく、大型の浴室でないと使用できない。
【0003】
また、自力で下肢を動かすことのできない要介護者に対してはそのような方法もいたしかたないが、歩行が不可能でも自身の下肢で立つことのできる要介護者のために、より簡便な装置が求められている。
【0004】
例えば、車椅子等で浴室に運ばれた要介護者は、脱衣後、入浴用リフトの椅子部に移され、洗い場側で身体を洗われた後、浴槽側へ椅子部ごと旋回させられ、浴槽に下降して入浴することになるが、要介護者の入浴はその介護者にとっても大きなリスクや負担が伴う。また、こうしたリフトの設置は健常な家族も使用する一般家庭の浴室には不向きである。
【0005】
そもそも、狭小な浴槽内でのリフトによる入浴補助作業は、リフトへの移乗時に要介護者の足が床から離反するため、介護者にも要介護者を落下させてしまうのではないかという不安があり、曳いては介護放棄にもつながる要因になると考察される。
【0006】
そこで、例えば、車椅子を使用した高齢者や身体障害者等のための入浴補助装置として、上下方向に延在して設けられた中空状の支柱と、この支柱内に立設されかつ下端を固定されたシリンダと、このシリンダを伸縮操作する操作手段と、支柱の外周に昇降自在かつ水平方向に旋回不能に嵌合され、支柱側部に形成したスリットを通し、連結部材によりシリンダの上端と連結される昇降部材と、この昇降部材の外周に水平方向に設けられた旋回部材と、この旋回部材によって支持される入浴用乗用部とを具備した入浴用リフトが提案されている(特許文献1参照。)。
【0007】
他にも、入浴者が着座する座席と、座席を吊り下げるアームと、アームの吊下荷重に対応してこの吊下荷重を相殺するような力を発生するばねと、吊下荷重とばねの力の差を制するようアームに作用し、操作によりアームを回動させ座席を昇降させるウォームアンドホイール機構を備え、介護者の労力を軽減し、入浴者と介護者の双方の安全性を高めることを目的とした入浴者介護補助装置が提案されている(特許文献2参照。)。また、立脚する支柱体と、この支柱体の上端において回動可能に軸支された動作部と、この動作部に駆動装置の駆動力を減速機を介して連動回転する回転出力軸と、末端部が回転出力軸と一体的に取り付けられたアーム体と、回転出力軸と同軸に固定されたスプロケット(歯車)と、アーム体の先端部に回動可能に軸支されたスプロケットと同一規格のスプロケットと、アーム体先端部のスプロケットと同軸に固定された椅子体取付部と、椅子体取付部に固定された椅子体とからなり、要介護者に対して不安感なく安心して腰掛け姿勢を保ちつつ浴槽内に入出移送ができる外、そのままの姿勢でボティ洗いに加え、しもの部分(陰部)も洗浄ができるようにされた入浴介護補助装置が提案されている(特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公平2-44748号公報
【特許文献2】特開2005-118105号公報
【特許文献3】特開2009-6093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明もまた、上記従来技術の課題に鑑み、一般家庭の浴室にも簡便に設置して利用することができる汎用性を有すると共に、要介護者及び介護者双方に対して不安感なく浴槽内への入出移送ができるばかりでなく、浴槽内でも自然な着座した状態のままで洗浄することができる入浴介護補助装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本発明は浴室の床に立設された支柱と、この支柱に減速機を介して回転するように取り付けられた回転軸と、その一端がこの回転軸に取り付けられたアーム体と、前記回転軸と同軸に固定されたプーリー(滑車)と、前記アーム体の他端に回動可能に軸支された椅子取付レバーと、当該椅子取付レバーに着脱可能に固定された椅子とからなる入浴介護補助装置において、前記プーリーに椅子の振れ止機構を設けたことを第1の特徴とする。また、椅子の振れ止機構が、プーリーの溝条とこの溝条内に出没可能に設けられたロックピンを有するロックレバーとからなることを第2の特徴とする。さらに、アーム体がその一端が回転軸に連結される第1のアーム体と、当該第1アーム体の自由端部に垂直方向で回動時自在に連結されると共に、前記プーリーを含み、椅子取付レバーが設けられた第2のアーム体とからなることを第3の特徴とするさらに、椅子取付レバーが、折り畳み可能にされていることを第4の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の優れた効果がある。
(1)介護者の労力を軽減できる。
(2)要介護者を腰掛けた姿勢のまま浴槽に安全に入出移送ができる。
(3)狭小な一般家庭の浴室にも簡便に設置することができ、汎用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る入浴介護補助装置の一実施例を示す(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図2】(a)は
図1の入浴介護補助装置の側面図、(b)は椅子取付けレバーの折り畳み状態を示す要部側面図である。
【
図3】本発明に係る入浴介護補助装置の他の実施例を示す(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図4】本発明に係る入浴介護補助装置による要介護者の移送状態を示す(a)は入浴時の側面図、(b)は椅子折畳み時の側面図である。
【
図5】本発明に係る入浴介護補助装置の着座から入浴までの作動状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【実施例0014】
図1乃至
図2に示すように、本発明一実施例の基本的構成の概略以下の4つの構成要素である支柱1、回転軸2、ウォーム減速機3及び第1アーム体(回転ケース)4、プーリー(滑車)5及び第2アーム体(垂直バランスケース)6から構成されている。
【0015】
支柱1は、支持束1aにより浴室の床面Gに立ち上げられて装置全体を支えると共に要介護者Pが移動する高さを調整する。回転軸2は、支柱1の上部に設置されて要介護者Pの昇降及び下降を行うための動作部を含んでいる。ウォーム減速機3は、モーター11により回転駆動される出力軸となる回転軸2を中心として所定角度の範囲で回転し、それにより振り子のように揺振運動する第1アーム体(回転ケース)4を含み、第1アーム体4の自由端部4aの回転軌跡は円弧を描いて、最下位置と最上位置との間を往復円弧運動する。第2アーム体(垂直バランスケース)6は、第1アーム体4の自由端部4aに取り付けられ、その下端に取り付けられる椅子8を含み、椅子8に着座させた介護者Pに対して、最下位置と最上位置との間で上昇及び降下する運動を与えると共に、第1アーム体4の回転による方向変換運動に連動して所要角度の範囲で垂直方向に回転する。
【0016】
すなわち、本実施例では、浴室の床Gに立設された支柱1と、この支柱1に減速機3を介して回転するように取り付けられた回転軸2と、その一端4aがこの回転軸2に取り付けられた第1アーム体4と、回転軸2と同軸に固定されたプーリー(滑車)5と、第1アーム体4の他端4bに回動可能に軸支された第2アーム体6と、第2アーム体6に折り畳み可能に取り付けられた椅子取付レバー6と、椅子取付レバー6に着脱可能に固定された椅子8とからなる。
【0017】
そして、付設されたモーター11の回転駆動力はウォーム減速機3を介して回転軸2に出力される。この場合、回転軸2の所定の回転角度の位置において回転停止させるスイッチが付備される。
【0018】
回転軸2には第1アーム体4の一端部4aが固定されると共に第1アーム体4の他端側である自由端部4bに第2アーム体6が軸受けを介して回転可能に軸支されている。そして、第2アーム体6の下端には要介護者Pの座席となる椅子8を取り付けるための椅子取付用レバー7が固着されている。
【0019】
椅子8は、背凭れ8aと、背凭れ8aに連結支持された座板8bと、座板8bの両側に取り付けた手摺り8cとから構成されており、座板8bの中央部には、介護者Sが要介護者Pの臀部や陰部(局所)の洗浄作業ができるように略U字状に切り取られた開口8dが形成されている。
【0020】
また、第2アーム体(垂直バランスケース)6には、椅子振れ止機構10が設けられている。この椅子振れ止機構10は、第2アーム体(垂直バランスケース)6内に設けられたプーリー(滑車)5の周縁の溝条5aとこの溝条5a内に出没可能に設けられたロックレバー9のロックピン9aとから構成される。そして、介護者Sが任意位置でロックレバー9を作動させることにより、第1アーム4及び第2アーム6の回動を停止させて、椅子8を任意の位置に停止した状態に保持することができるようにされている。さらに、椅子取付レバー7は折り畳み可能にされ、椅子8の不使用時には、浴室あるいは浴槽13内のスペースを拡張することができるようにされている。
支柱1の下端には支持束1aが設けられ、浴室の床面Gに立設されている。ホイール状のハンドル12はハンドルシャフト12a及びこれを支承するハンドルステー12bを介してウォーム減速機3に連結されていて、回転軸2が支柱1の上端部において回転可能に軸支され、これによって第1アーム体4及び第2アーム体6は、支柱1に対して首振可能に連結され、ハンドル12の適切な回転操作で、第1アーム体4及び第2アーム体6、すなわち、第2アーム体6の下端に吊り下げられた椅子8を任意位置で固定することができるようにされている。
すなわち、第1アーム体4がその一端部4aを中心に回転すると、その自由端部4b側は円弧を描きながら昇降動作する、したがって、第1アーム体4の自由端部4bに第2アーム体6及び椅子取付レバー7を介して取り付けられている椅子8は、浴槽13の内外を昇降移動する。
つまり、第1アーム体4の揺動角度に相当する角度分だけ椅子8の回転軸も回転するので、当初に椅子8を水平状態に設定しておけば、椅子8が上昇するときも水平を保った状態で移動する。すなわち、表面的には、椅子8は、第1アーム体4及び第2アーム体6がどの回転位置にあっても、見掛け上、無自転の水平を保った状態で全く揺振することなく昇降する。
そこで、第1アーム体4を上昇する方向にハンドル12を回転あるいはモーター11のスイッチをオンすれば、回転軸2が回転し、その回転に伴って同軸の第1アーム体4が同一方向に回転する。第1アーム体4回動するとプーリー5を介して第2アーム体6も同一方向に回転する。
すなわち、第1アーム体4がその一端部4aを中心に回転すると、その自由端部4b側は円弧を描きながら上昇する。したがって、第2アーム体6に取り付けられている椅子8も上昇する。そして、第2アーム6の揺動角度に相当する角度分だけ椅子体8の回転軸が逆回転するので、椅子8が上昇するときも水平を保った状態で最上位置まで移動する。つまり、表面的には、着座した要介護者Pを第2アーム体6がどの回転位置にあっても水平を保った状態で安全に上昇させることができる。